説明

ナビゲーションシステムおよび経路探索方法並びに経路探索サーバおよびナビゲーション端末装置

【課題】電車を利用した経路の探索、案内が可能なナビゲーションシステムにおいて、着席できる確率の高い最適乗乗降位置を適切に探索および案内する。
【解決手段】ナビゲーション端末装置20から入力された経路探索条件に基づいて経路を探索し、配信する経路探索サーバ30を備えたナビゲーションシステム10において、ナビゲーション端末装置20は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、経路探索サーバ30は、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベース37を備え、着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、ナビゲーション端末装置20に配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車などの交通機関を利用した移動経路を探索できる歩行者用のナビゲーションシステムおよび方法並びに経路探索サーバおよびナビゲーション端末装置に関するものであり、特に、電車を利用した経路の探索、案内を可能とした歩行者用のナビゲーションシステムにおいて、前記着席できる確率の高い最適乗換え位置を適切に探索および案内することができるようにしたナビゲーションシステム、および方法並びに経路探索サーバおよびナビゲーション端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車の運転者に出発地から目的地までの最適な経路を案内する車載用のナビゲーション装置が提供されている。従来のナビゲーション装置は、地図データを記録したCD−ROM又はICカード等の地図データ記憶装置と、ディスプレイ装置と、ジャイロ、GPS(Global Positioning System)及び車速センサ等の車両の現在位置及び現在方位を検出する車両移動検出装置等を備えている。
【0003】
このナビゲーション装置は、車両の現在位置を含む地図データを地図データ記憶装置から読み出し、該地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像をディスプレイ装置上に描画すると共に、車両位置マーク(ロケーション)をディスプレイ画面に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示したり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させたりして、車両が現在どこを走行しているのかを一目で判るようにしている。
【0004】
通常、このような車載用ナビゲーション装置には、運転者が所望の目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるようにした経路案内機能が搭載されている。この経路案内機能によれば、地図データを用いて出発地から目的地までを結ぶ最もコストが小さい経路をダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って経路探索する。
【0005】
そして探索した経路を案内経路として記憶しておき、走行中、地図画像上に案内経路を他の道路とは色を変えて太く描画して画面表示したり、車両が案内経路上の進路を変更すべき交差点に一定距離内に近づいたときに、地図画像上の進路を変更すべき交差点に進路を示す矢印を描画して画面表示したりする。これにより目的地までの最適な経路を運転者が簡単に把握できるようにしている。
【0006】
上記の車載用のナビゲーション装置は、経路探索機能や地図データを持つスタンドアロン型のナビゲーション装置であるが、このようなナビゲーション装置はナビゲーションに必要な全ての機能を備えている必要があり、装置が大型化し価格も高いものとなっていた。近年の通信、情報処理技術の発展により車載用のナビゲーション装置にネットワークを介した通信機能を付加し経路探索サーバとデータ通信して案内経路データや地図データを取得するいわゆる通信型のナビゲーションシステムも普及してきている。更には、歩行者用のナビゲーションシステムとして携帯電話をナビゲーション端末としたシステムも実用化されている。
【0007】
歩行者ナビゲーションシステムやカーナビゲーションシステムにおける経路探索のための地図データは道路ネットワークデータと呼ばれる。このような道路ネットワークのデータを経路探索用のデータベースとして経路探索を行う場合、出発地のノードから目的地のノードまで連結されたリンクをたどりそのリンクコストを累積し、累積リンクコストの最少になる経路を探索して案内する。この手法は、例えば、ダイクストラ法と呼ばれる周知の手法によって行われる。
【0008】
車載用のナビゲーションシステムにおける道路ネットワークのデータは、自動車の通行可能な道路のみによって構成され、歩行者専用の道路や車両の進入が禁止されている公園内や駅前広場の通路などの歩行者用道路ネットワークデータは不要である。一方、歩行者用のナビゲーションシステムにおいては、自動車の通行可能な道路ネットワークに加えて前述の歩行者専用の道路や車両の進入が禁止されている公園内や駅前広場の通路などの歩行者用道路ネットワークデータを含んで構成されるが、高速道路など歩行が禁止されている道路のネットワークデータは必要としない。
【0009】
携帯電話をナビゲーション端末としたナビゲーションシステムにおいては、ユーザが携帯電話を自動車内に置きカーナビと同様に使用する態様があることから、経路探索サーバは、自動車用の経路探索のための道路ネットワークデータと歩行者用の経路探索のための歩行者用道路ネットワークデータの双方を備え、ユーザが経路探索の条件として指定する移動手段(徒歩か自動車か)により適切な道路ネットワークデータを経路探索に使用するように構成される。
【0010】
また、歩行者用のナビゲーションシステムにおいては、歩行者が交通機関を併用することも多く、そのため、経路探索サーバは、更に、交通機関の路線ネットワークのデータおよび各路線を運行する列車、電車、バス等の運行時刻データを備え、移動手段として交通機関が指定された場合は路線ネットワークデータ、運行時刻データを用いて経路探索を行う。
【0011】
交通機関を併用する歩行者用のナビゲーションシステムは、例えば、下記の特許文献1(特開2003−182579号公報)に「最適経路探索装置、最適経路探索方法」として本出願人により開示されている。このナビゲーションシステムは、出発駅、目的駅、出発予定日時または到着予定日時から成る指定探索条件に従い、交通機関の路線網データを含む時刻表データを用いて交通機関により、指定探索条件に応じて出発駅から目的駅迄最短距離で移動できる最適な経路を探索するようにしたものである。
【0012】
このナビゲーションシステムにおいては、交通機関の路線網データに、路線間の乗換えができる各駅につき、入線側路線及び入線方向と、出線側路線及び出線方向の組み合わせ別に、入線側路線での最適乗換え車両位置情報を含めておき、探索した最適な経路に路線間で乗換えを行うべき駅があるとき、交通機関の路線網データから最適な経路上での当該乗換え駅での入線側路線及び入線方向と、出線側路線及び出線方向を判別し、入線側路線での最適乗換え車両位置情報を検索し、最適路線情報に付加して案内するものである。
【0013】
このようなナビゲーションシステムによれば、探索した最適経路の途中に、或る路線から他の路線への乗換え駅があった場合、電車の入線番号を考慮して実際に乗車する電車に適した最適乗換え車両位置情報を提供することによって、この乗換え駅で一番早く乗換えができるこの或る路線の電車での乗車車両位置を探索し、ユーザに案内するように構成されている。
【0014】
また、下記の特許文献2(特開平10−134108号公報)には、駅構内の情報に基づいて最適乗車位置を決定する鉄道乗換えナビゲーションシステムが開示されている。この特許文献2に開示された鉄道乗換えナビゲーションシステムは、入力手段と、複数の駅を結ぶ鉄道経路に関する情報を登録した経路情報テーブルと、前記入力手段から入力された出発駅から目的駅へ最短時間で到達できる経路を前記経路情報テーブルを参照して検索する経路候補探索手段を備えて構成されている。
【0015】
このシステムにおいては、複数の駅について、改札に最も近い位置に停車する車両番号を路線毎に登録し、かつ、前記複数の駅のうちの乗換え駅になり得る駅について、乗換えに最も便利な位置に停車する車両番号を登録した、駅構内情報テーブルと、該駅構内情報テーブルを検索し、前記経路候補探索手段が探索した経路に含まれる駅に対応する情報から最適乗車車両を決定する乗車車両位置決定手段とを備えおり、各経路について駅構内情報テーブルを参照して、電車が駅に停車する位置と改札口の関係から乗換え位置に近い乗車位置を車両番号で示すことで利用する各鉄道の最適車両を求め、最短経路を決定する。
【0016】
通常、このようなナビゲーションシステムにおいては、電車の乗換え案内において乗換えを最短距離で行えるように最適乗車位置を提示するのが一般的であった。
【0017】
【特許文献1】特開2003−182579号公報(図1)
【特許文献2】特開10−134108号公報(図1、図2、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、歩行者用ナビゲーションシステムを利用するユーザの中には、電車に乗る場合になるべく座席に座りたいという要求もあり、空席のある車両までの経路をナビゲーションシステムにより探索して経路案内を受けたいという要求が存在する。
【0019】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2と同様の手法を適用したナビゲーション方法では、乗換えに便利なホームの階段に近い車両を案内経路として探索してしまうことになり、この車両に乗車した場合、同じ目的駅に向かう乗客で混み合う傾向にあり、着席するには不適当であるため、このような経路探索ではユーザの要求に合致しない経路探索になってしまうという問題点があった。
【0020】
また、降車客が多いと座れる確率も高いため、通勤で毎日利用している路線では、途中駅で降車する人数の多い車両を経験的に見つけて、あらかじめそこに乗車しておくという工夫を行うこともあった。しかしながら、不慣れな路線ではそのような情報を得ることは難しいので、どこに乗車したらよいか分からないという問題点があった。
【0021】
上記特許文献1や特許文献2では、乗車駅および降車駅にのみ注目していたので、途中駅で座れる可能性については考慮されていなかったため、ユーザの要求に合致した適切な経路探索ができないという問題点が生じていた。
【0022】
本願の発明者は前述の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、各駅毎、各路線毎の乗換え乗車位置や乗降最適位置(乗降に便利な車両位置)を乗降位置データとして蓄積し、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置を優先する着席推奨モードを設け、着席推奨モードの経路探索においては、目的駅までの各駅における乗降位置データとのマッチング度を駅毎に積算し、積算値の大きい乗降位置を案内すれば着席の確率が高くなることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0023】
すなわち、本発明は、前述の問題点を解消することを課題とし、電車を利用した経路の探索、案内が可能なナビゲーションシステムにおいて、前記着席できる確率の高い最適乗乗降位置を適切に探索および案内することができるようにしたナビゲーションシステム、および経路探索方法並びに経路探索サーバおよびナビゲーション端末装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
ナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて交通機関を利用した出発地から目的地までの経路を探索し、案内経路を前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバを備えたナビゲーションシステムにおいて、
前記ナビゲーション端末装置は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースを備え、前記着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信することを特徴とする。
【0025】
本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、
前記経路探索サーバは、前記マッチング度の積算の際に乗車駅に近い駅ほどマッチング度の重み付けを高くすることを特徴とする。
【0026】
本願の請求項3にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、
前記経路探索サーバは、前記着席推奨モードが有効な場合に、乗換え時間を通常より長く設定して探索を行うことを特徴とする。
【0027】
本願の請求項4にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、
前記経路探索サーバは、乗車駅が始発駅である場合、または、乗車電車が座席指定の電車である場合に、前記着席推奨モードを有効としないことを特徴とする。
【0028】
本願の請求項5にかかる発明は、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、
前記ナビゲーション端末装置は、更に、前記経路探索条件として、乗車電車における乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードを有し、前記着席推奨モードあるいは乗換推奨モードを指定するモード指定手段を備え、
前記経路探索サーバは、前記モード指定手段により指定された着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードに応じて、出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信することを特徴とする。
【0029】
また、本願の請求項6にかかる発明は、
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有するナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバにおける経路探索方法であって、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースと、出発地、目的地を含む経路探索条件に基づいて経路探索を行う経路探索手段と、交通機関の路線ネットワークデータを含む時刻表データを蓄積した時刻表DBと、を備え、
前記経路探索手段が着席推奨モードにおける経路を探索する際、出発地から目的地までの経路を探索するステップと、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信するステップとを有することを特徴とする。
【0030】
また、本願の請求項7にかかる発明は、
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有するナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて出発地から目的地までの経路を探索して案内経路とし前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバであって、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースと、出発地、目的地を含む経路探索条件に基づいて経路探索を行う経路探索手段と、交通機関の路線ネットワークデータを含む時刻表データを蓄積した時刻表DBと、を備え、
前記経路探索手段は、着席推奨モードにおける経路を探索際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信することを特徴とする。
【0031】
本願の請求項8にかかる発明は、請求項7にかかる経路探索サーバにおいて、
前記マッチング度の積算の際に乗車駅に近い駅ほどマッチングの重み付けを高くすることを特徴とする。
【0032】
本願の請求項9にかかる発明は、請求項7にかかる経路探索サーバにおいて、
前記経路探索手段は、前記着席推奨モードが有効な場合に、乗換え時間を通常より長く設定して探索を行うことを特徴とする。
【0033】
本願の請求項10にかかる発明は、請求項7にかかる経路探索サーバにおいて、
前記経路探索手段は、乗車駅が始発駅である場合、または、乗車電車が座席指定の電車である場合に、前記着席推奨モードを有効としないことを特徴とする。
【0034】
本願の請求項11にかかる発明は、請求項7にかかる経路探索サーバにおいて、
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードと、乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードと、を有するナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて出発地から目的地までの経路を探索して案内経路とし前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバであって、
前記経路探索手段は、前記ナビゲーション端末装置により指定された着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードに応じて、前記時刻表DBまたは乗降位置データベースを参照して出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信するように構成したことを特徴とする。
【0035】
また、本願の請求項12にかかる発明は、
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードと、乗車電車における乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードと、を有し、前記着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードを指定するモード指定手段を備え、モード指定手段により指定されたモードとともに経路探索条件を経路探索サーバに送信することを特徴とする。
【0036】
また、本願の請求項13にかかる発明は、
入力した経路探索条件に基づいて交通機関を利用した出発地から目的地までの経路を探索し、案内経路を出力するナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースを備え、前記着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1にかかる発明においては、ナビゲーション端末装置は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースを備え、前記着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信する。
従って、経路探索条件として着席推奨モードを指定しておけば、交通機関の乗車車両の内で着席できる確率が高い乗車位置を探索して案内することかできるようになる。
【0038】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、マッチング度の積算の際に、乗車駅に近い駅ほどマッチング度の重み付けを高くする構成としたものであるから、交通機関の乗車車両の内で着席できる確率が高い乗車位置の探索を精度良く行うことが可能な利便性の高いナビゲーションシステムを実現できる。
【0039】
請求項3にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、経路探索サーバは、着席推奨モードが有効な場合に、乗換え時間を通常より長く設定して探索を行う構成としたものであるから、探索された交通機関の乗車車両の内で着席できる確率が高い乗車位置へ移動することが容易に行なえる利便性の高いナビゲーションシステムを実現できる。
【0040】
請求項4にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、経路探索手段は、乗車駅が始発駅である場合、あるいは乗車電車が座席指定の電車である場合に、着席推奨モードを有効としない構成としたものであるから、乗車駅が始発駅である場合あるいは乗車電車が座席指定の電車である場合は、着席推奨モードを適用せずに最短乗換え推奨モードに自動的に切り換えられるので利便性の高いナビゲーションシステムを実現できる。
【0041】
請求項5にかかる発明においては、請求項1にかかるナビゲーションシステムにおいて、
ナビゲーション端末装置は、更に、前記経路探索条件として、乗車電車における乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードを有し、前記着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードを指定するモード指定手段を備え、経路探索サーバは、前記モード指定手段により指定された着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードに応じて、出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信する。
従って、経路探索条件として着席推奨モードを指定しておけば、交通機関の乗車車両の内で着席できる確率が高い乗車位置が探索されるようになり、経路探索条件として乗換え推奨モードを指定しておけば、最短乗換えが可能な乗車位置が探索されるようになるため、利便性の高いナビゲーションシステムを実現できる。
【0042】
請求項6にかかる発明においては、経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースと、出発地、目的地を含む経路探索条件に基づいて経路探索を行う経路探索手段と、交通機関の路線ネットワークデータを含む時刻表データを蓄積した時刻表DBと、を備え、経路探索手段が着席推奨モードにおける経路を探索する際、出発地から目的地までの経路を探索するステップと、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信するステップと、を有する。
従って、経路探索条件として着席推奨モードを指定しておけば、交通機関の乗車車両の内で着席できる確率が高い乗車位置が探索されるようになる。
【0043】
また、請求項7〜請求項11にかかる発明においては、それぞれ請求項1〜請求項5にかかるナビゲーションシステムを構成する経路探索サーバを提供することができるようになる。また、請求項12にかかる発明においては、請求項5にかかるナビゲーションシステムを構成するナビゲーション端末装置を提供することができるようになる。
【0044】
また、本願の請求項13にかかる発明においては、
ナビゲーション装置は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースを備え、前記着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、出力する。
従って、サーバと通信することなく、スタンドアロンタイプの機器を用いることができ、経路探索条件として着席推奨モードを指定しておけば、交通機関の乗車車両の内で着席できる確率が高い乗車位置を探索して案内することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーションシステムを例示するものであって、本発明をこのナビゲーションシステムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーションシステムにも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0046】
図1は、本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図であり、図2は、本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムにおける経路探索サーバの動作手順を示すフローチャートである。本発明の実施例にかかるナビゲーションシステム10は、図1に示すように、インターネットなどのネットワーク11を介して通信するナビゲーション端末装置20と、経路探索サーバ30と、を備えて構成されている。
【0047】
ナビゲーション端末装置20は、経路探索サーバ30に出発地と目的地などの経路探索条件を設定して経路探索要求を送信し、経路探索サーバ30は経路探索条件に従って、道路ネットワークデータ等を参照し最適経路を探索し、その最適経路を案内経路データに編集してナビゲーション端末装置20に配信する。
【0048】
経路探索サーバ30は、経路探索のための探索用の時刻表データベース(DB)36と、乗降位置データベース(DB)37と、探索用の道路ネットワークデータベース(DB)38と、を備えている。時刻表DB36は、電車時刻表のみならず、各駅における電車の到着番線のデータも含んでいる。また、乗降位置DB37は、従来の最適乗車位置の検索に用いたように、電車編成ごとに各駅で乗換えに便利な車両位置、例えば、階段やエスカレータの位置や改札に近い場所の位置のデータを含んでいる。このデータは乗換えだけでなく、当該駅で乗降する場合にも便利な車両位置でもあり、本発明ではこれらの車両位置を最適車両位置といい、乗降位置DB37にデータを蓄積してある。
【0049】
なお、最適車両位置のデータは車両位置を単位としたデータであってもよく、あるいは最適車両の乗降ドアの位置までブレークダウンしたデータであってもよい。本発明においては最適乗降ドアを示すデータを含め、単に乗降位置ということとする。
【0050】
経路探索のための道路ネットワークDB38のデータは、以下のように構成されている。例えば、道路が図6に示すように道路A、B、Cからなる場合、道路A、B、Cの端点、交差点、屈曲点などをノードとし、各ノード間を結ぶ道路を有向性のリンクで表し、ノードデータ(ノードの緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)と各リンクのリンクコスト(リンクの距離またはリンクを走行するのに必要な所要時間)をデータとしたリンクコストデータとで構成される。
【0051】
すなわち、図6において、Nn(○印)、Nm(◎印)がノードを示し、Nm(◎印)は道路の交差点を示している。各ノード間を結ぶ有向性のリンクを矢印線(実線、点線、2点鎖線)で示している。リンクは、道路の上り、下りそれぞれの方向を向いたリンクが存在するが、図6では図示を簡略化するため矢印の向きのリンクのみを図示している。
【0052】
このような道路ネットワークのデータを経路探索用のデータベースとして経路探索を行う場合、出発地のノードから目的地のノードまで連結されたリンクをたどりそのリンクコストを累積し、累積リンクコストの最少になる経路を探索して案内する。すなわち、図6において出発地をノードAX、目的地をノードCYとして経路探索を行う場合、ノードAXから道路Aを走行して2つ目の交差点で右折して道路Cに入りノードCYにいたるリンクを順次たどりリンクコストを累積し、リンクコストの累積値が最少になる経路を探索して案内する。
【0053】
図6ではノードAXからノードCYに至る他の経路は図示されていないが、実際にはそのような経路が他にも存在するため、ノードAXからノードCYに至ることが可能な複数の経路を同様にして探索し、それらの経路のうちリンクコストが最少になる経路を最適経路として決定するものである。この手法は、例えば、ダイクストラ法と呼ばれる周知の手法によって行われる。
【0054】
これに対して、交通機関の経路探索のためのネットワークデータは以下のように構成されている。例えば、図7に示すように交通路線A、B、Cからなる場合、各交通路線A、B、Cに設けられた各駅(航空機の路線においては各空港)をノードとし、各ノード間を結ぶ区間を有向性のリンクで表し、ノードデータ(緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)をネットワークデータとしている。
【0055】
図7において、Nn(○印)、Nm(◎印)がノードを示し、Nm(◎印)は交通路線の乗り継ぎ点(乗換え駅など)を示し、各ノード間を結ぶ有向性のリンクを矢印線(実線、点線、2点鎖線)で示している。リンクは、交通路線の上り、下りそれぞれの方向を向いたリンクが存在するが、図7では図示を簡略化するため矢印の向きのリンクのみを図示している。
【0056】
しかしながら、交通ネットワークは道路ネットワークと比べリンクコストが基本的に異なる。すなわち、道路ネットワークではリンクコストは固定的、静的なものであったが、交通ネットワークでは、図7に示すように交通路線を運行する列車や航空機(以下個々の列車や航空機などの各経路を交通手段と称する)が複数ある。
【0057】
各交通手段毎にあるノードを出発する時刻と次のノードに到着する時刻とが定まっており(時刻表データ、運行データで規定される)、かつ、個々の経路が必ずしも隣接するノードにリンクしない場合がある。例えば、急行と各駅停車の列車のような場合である。このような場合には同じ交通路線上に異なる複数のリンクが存在することになり、またノード間の所要時間が交通手段により異なる場合もある。
【0058】
図7に例示する交通ネットワークにおいては、交通路線Aの同じリンクに複数の交通手段(経路)Aa〜Ac・・・、交通路線Cに複数の交通手段(経路)Ca〜Cc・・・が存在することになる。従って、交通機関の運行ネットワークは、単純な道路ネットワークと異なり、ノード、リンク、リンクコストの各データは交通手段(個々の航空機や列車などの経路)の総数に比例したデータ量になる。このため交通ネットワークのデータは道路ネットワークのデータ量に比べて膨大なデータ量になる。従って、それに応じて、経路探索に要する時間も多くの時間が必要になる。
【0059】
このような交通ネットワークデータを用いて、ある出発地からある目的地までの経路を探索するためには、出発地から目的地まで到達する際に使用(乗車)できる全ての交通手段を探索して探索条件に合致する交通手段を特定する必要がある。
【0060】
例えば、図7において、出発地を交通路線AのノードAXとしてある特定の出発時刻を指定して、交通路線CのノードCYを目的地とする経路探索を行う場合、交通路線A上を運行する交通手段Aa〜Ac・・・のうち出発時刻以降の全ての交通手段を順次出発時の経路として選択する。そして交通路線Cへの乗り継ぎノードへの到着時刻に基づいて、交通路線C上を運行する各交通手段Ca〜Cc・・・のうち、乗り継ぎノードにおいて乗車可能な時刻以降の交通手段の全ての組み合わせを探索して各経路の所要時間や乗換え回数などを累計して案内することになる。
【0061】
このため、探索用の時刻表DB36には、各路線の時刻表データとともに図7に説明したような交通ネットワークのデータが蓄積されている。
【0062】
なお、図1のシステム構成においては、ナビゲーション端末装置20に対して経路探索サーバ30からマルチモーダルな経路案内を行う構成としたものであるが、時刻表DB36に加え、電車ごとの乗降位置DB37も必要なため、スタンドアロンなナビゲーション端末装置で実施するよりも、サーバ側に大きなデータベースを備えて管理する方が良い。
また、電車はダイヤが定期的に更新されるので、経路探索サーバ30が、乗車日に対応した時刻表DBを参照する方式が適している。
【0063】
経路探索サーバ30は、制御手段31、経路案内手段32、表示手段33、通信手段34、経路探索手段35を備えている。制御手段31は、マイクロプロセッサを中心に構成され、一般的なコンピュータ装置と同様にRAM、ROMなどの記憶手段を備えており、これらの記憶手段に蓄積されたプログラムによって各部を制御する。通信手段34は、ナビゲーション端末装置20から経路探索要求を受信し、また、経路探索の結果である案内経路データをナビゲーション端末装置20に配信するためのものであり、表示手段33は経路探索サーバ30のモニタ表示を行う液晶表示ユニットなどの表示部である。
【0064】
経路案内手段32は経路探索手段35が探索した最適な案内経路のデータに基づいて案内経路データを作成してナビゲーション端末装置20に配信するものである。案内経路データには、経路探索手段35で探索された案内経路上の出発地、経路の屈曲点、交差点、目的地などのガイドポイントが設定され、それらのガイドポイントの位置座標(緯度・経度)、各ガイダンスポイントに関連する案内情報(直進や右左折のガイダンス情報が含まれる。ナビゲーション端末装置20は、この案内経路データを受信し、経路を表示し、ガイダンスポイントにおける案内を表示または音声で出力する。
【0065】
一方、ナビゲーション端末装置20は、すでに実用化されている携帯電話等に搭載することができるものであり、制御手段21、通信手段22、位置検出手段23、経路探索要求編集手段24、案内データ記憶手段25、操作・表示手段26を備えて構成されている。
位置検出手段23は、GPS受信機を備え、GPS衛星信号を受信、処理してナビゲーション端末装置20の現在位置(緯度・経度)を測位する。
【0066】
通信手段22は、無線通信ユニットを含み、経路探索サーバ30と通信するためのものである。操作・表示手段26は、キー、ダイヤル、液晶表示装置等からなりナビゲーション端末装置20を操作するための入力、出発地、目的地などの入力、経路探索サーバ30から配信された案内経路データの案内経路、地図の表示に使用されるものである。
【0067】
ナビゲーション端末装置は、経路探索要求に際して、従来と同じく最短乗換え位置の
案内を要求する最短乗換えモードと、着席できる確率が高い乗車位置の案内を要求する着席モードとを有している。このため、操作・表示手段26は、モード指定手段として機能し、最短乗換えモードか、着席モードの何れかを選択できる選択ボタンを備え、あるいは、選択メニュー画面を表示するように構成されている。
【0068】
経路探索要求編集手段24は、操作・表示手段26を使用して入力された探索モード(最短乗換えモード、着席モードの何れか)、出発地、目的地を指定し、あるいは、位置検出手段23で測位したナビゲーション端末装置20の現在位置を出発地として、これらの情報に基づいて、経路探索サーバ30に送信する経路探索要求を作成するものである。
【0069】
案内データ記憶手段25は、経路探索サーバ30から配信された経路探索結果である案内経路データ、地図データ、ガイダンスなどを記憶するものであり、これらのデータは必要に応じて案内データ記憶手段25から読み出され、操作・表示手段26に表示される。
【0070】
これにより、ユーザは、出発地から出発駅までの徒歩による所要時間、出発駅の駅名、路線名、出発駅で出発地に最寄りの出入口の名称、出発駅での発車時間、出発駅で電車に乗るのに適した車両位置(次の乗換え駅での乗換えが便利な乗車位置あるいは着席できる確率が高い乗車位置)、乗換え駅の駅名、乗換え先の路線名と駅名、乗換え先の路線での発車時間、目的駅の駅名、路線名、目的駅での到着時間、目的駅で目的地に最寄りの出入口の名称、目的駅から目的地までの徒歩による所要時間などを知ることができる。
【0071】
また、位置検出手段23で測位したナビゲーション端末装置20の現在位置を含む一定の縮尺、一定の範囲の地図に、案内経路と、ナビゲーション端末装置20の現在位置を示すマークを重ね合わせて該現在位置マークが表示画面の中心になるように表示する。測位した位置情報には誤差が含まれるため、現在位置が案内経路からずれている場合には現在位置を案内経路上に補正するルートマッチング処理が行われる。さらに、経路探索サーバ30から配信される案内経路データに音声ガイド(例えば、「この先、300m交差点です。左折して下さい」などの音声メッセージ)のデータが付加されている場合は、スピーカを介して音声メッセージを再生出力してユーザをガイドする。
【0072】
図2は、本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムにおける経路探索サーバ30の動作手順を示すフローチャートである。なお、図2に示す動作手順は制御手段31が記憶手段に蓄積された制御プログラムを実行することで実現される。
【0073】
経路探索サーバ30は、ステップS21の処理において、ナビゲーション端末装置20から経路探索要求を受信すると、経路探索条件として設定された出発地と目的地のデータに基づいて、経路探索手段35が探索用の時刻表DB36のデータを参照して探索した電車が特急電車など座席指定のある編成であるかどうかを判定する。
【0074】
ステップS21の判定処理において、探索された電車に座席指定がなされていなければ、ステップS22の処理に進み、乗車位置案内の対象となるのでモードを判定する。また、ステップS21の判定処理において、探索された電車に座席指定がなされていれば、駅の階段位置などを考慮して乗車している人は少ないので、乗車位置案内の処理を行わずに処理を終了する。なお、ステップS21の判定処理において、乗換え位置データが無い電車についても乗車位置案内の処理を行わずに処理を終了してもよい。
【0075】
ステップS22の判定処理において、着席モードが選択されたのであれば、ステップS23の処理に進み、経路探索手段35が探索用の時刻表DB36のデータを参照して探索した乗車駅が始発駅であるかどうか判定する。
【0076】
ステップS23の判定処理において、乗車駅が始発駅であれば、始発駅では降車客がいないので各車両とも同一条件となり、実際の電車待ちの様子などを見て判断することが可能なため、着席モードを適用せずに最短乗換えモードとし、ステップS24の処理に進み、経路探索手段35は、乗降位置DB37のデータを参照して最短乗換え処理を行う。
【0077】
このとき、ナビゲーション端末装置20の操作・表示手段26には、経路探索結果として乗車駅が「始発駅」である旨を表示するとユーザにとって分かりやすい。同様に、ステップS22の判定処理において、最短乗換えモードが選択されたのであれば、ステップS24の処理に進み、経路探索手段35は、乗降位置DB37のデータを参照して最短乗換え処理を行う。
【0078】
なお、本実施例では、ステップS22で判定処理されるモードの選択はナビゲーション端末装置20からのユーザ設定によって実現できるように構成されているが、歩行速度の設定と連動して、速く歩く人には「最短乗換えモード」、ゆっくり歩く人には「着席モード」が自動的に選択されるように構成されていてもよい。
【0079】
一方、ステップS23の判定処理において、乗車駅が始発駅でなければ、ステップS25の処理に進み、着席モードの処理に移る。そして、制御手段31は、ステップS25の処理において、経路探索手段35が探索用の時刻表DB36および乗降位置DB37のデータを参照して探索した経路探索結果の1つの電車について乗車駅から降車駅までの降車位置テーブルの作成を行う。
【0080】
図3は、降車位置テーブルの作成方法を説明するための説明図であり、図3Aは探索された最適路線の説明図であり、図3Bは図3Aに示された路線を運行する電車の最適乗降位置の説明図である。図4は、降車位置テーブルの内容を示す説明図である。
具体的には、図3Aに示すように、探索用の時刻表DB36に基づく経路探索結果として、路線Iが最適経路として決定されると、乗車駅(A駅)から降車駅(F駅)までの各駅A〜Fについて各駅で階段や改札口に近い場所を降車位置として乗降位置DB37から読み出す。
【0081】
読み出される降車位置としては、図3Bに示すように、A駅からF駅まで乗車する電車を6両編成とし、各車両の乗降ドアを3つドアの場合には車両を前方(F)、中間(M)、後方(R)の3つに分けると、A駅では階段との位置関係から2両目のMドアと4両目のRドアが降車位置としてピックアップされる。
【0082】
同様に、B駅では6両目のRドア、C駅では3両目のMドアと5両目のMドア、D駅では1両目のFドアと4両目のFドア、E駅およびF駅では1両目のFドアが降車位置としてピックアップされる。
【0083】
そして、図4に示すように、各停車駅ごとにピックアップされた降車位置には「1」がセットされる。すなわち、降車位置テーブルは、図4に示すように、乗車駅(A駅)から降車駅(F駅)までの路線上にある各停車駅につき、降車位置にフラグ「1」を対応付けて構成されている。例えば、A駅では2両目のMドアと4両目のRドアが降車位置としてピックアップされて、フラグ「1」がセットされている。同様に、B駅では6両目のRドア、C駅では3両目のMドアと5両目のMドア、D駅では1両目のFドアと4両目のFドア、E駅では1両目のFドアが降車位置としてピックアップされて、対応する欄に「1」がセットされている。
【0084】
なお、快速電車のように通過駅がある場合には、通過駅についてはテーブル作成の対象外とする。また、駅の階段位置に近い最適降車位置であっても、その車両がグリーン車や女性専用車の場合には、データが存在すれば一般向けにはこれらの車両を避けて近くの車両を採用する。もちろん、グリーン車利用可の設定や、ナビゲーション端末装置20に利用者の性別情報がある場合には、それらの条件に適合させてもよい。
【0085】
次に、ステップS26の処理において各車両に対応して降車位置のマッチング度を積算する。このとき、なるべく早く座れた方が価値があるので、乗車駅に近いほどマッチング度の重み付けが高くなるように駅によって重み係数を用意する。すなわち、図4に示すように、乗車駅Aから降車駅Fのひとつ手前の駅Fまでに停車駅が5駅あるので、降車駅の手前の駅(ここでは、E駅)から乗車駅(ここでは、A駅)まで数えてN番目の停車駅の係数をN/5とする。ただし、乗車駅は、すでに乗車している乗客が先に空席を埋めてしまう可能性があるので、乗車駅だけは特別な扱いとし、係数は1/2程度にとどめておくとよい。
【0086】
次に、各車両の各ドアごとにこの重み付けの係数をピックアップされた降車位置の値「1」に掛け合わせてA駅からE駅分まで合計した値(マッチング度積算値)を求める。さらに、各車両ごとにFドア、Mドア、およびRドアの値を合計する。
【0087】
図4に示すように、各ドアおよび各車両単位にマッチング度を比較してみると、ドア単位に集計した結果では、6両目後方のRドアが「0.8」で最もポイントが高い。これは、この6両目後方のRドアがB駅で降車位置となっていることが効いている。また、車両単位で見ると、4両目が「0.9」で最高値である。これは、A駅とD駅が降車位置なっており、座席が空くチャンスが2回あることが効いている。
【0088】
以上の処理により、経路探索手段35による経路探索の結果が得られると、ステップS27の処理において経路案内手段32は、案内経路の表示データを作成し、通信手段34を介してナビゲーション端末装置20に案内経路データを送信して処理を終了する。
【0089】
図5は、案内経路の表示データの内容を示す説明図である。図5に示すように、着席モードによる乗車案内としては、「18:30 A駅 ○○線6両目後方」などの表示を付け加えるようにする。
【0090】
なお、重み付けの係数は停車駅の順番で行ったが、乗車時間や距離を反映しても良い。また、階段やエスカレータが複数箇所あって降車位置が複数ある場合は、もともとピックアップする際に降車位置テーブルにセットする値を「1」とするのではなくて、降車位置の数に応じた重み付けにしても良い。更に、さらに、各駅の利用者数の統計があれば、その利用者数の比率を反映しても良く、詳細なデータがあれば適宜利用するように変形が可能である。
【0091】
なお、着席モードを使用すると最短乗換え位置とは異なる乗車位置を使う可能性が生じるので、駅での乗車・下車時の所要時間および乗換え時間を最短乗換えモードより多少長めに設定するのが良い。例えば、最短乗換えモードの標準乗換え時間が4分である乗換え箇所に対して2分余裕を持たせた6分の乗換え時間で経路探索を行う。これによって乗換えの階段から離れた位置の乗車口への移動も可能になるし、駆け込み乗車のようなことが回避できる。さらに、乗車待ちの列でも先頭あるいはそれに近いポジションを取ることができるため、着席に有利になる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかるナビゲーションシステムによれば、なるべく座りたいという要望に答えて、座れる確率の高い乗車位置を提供することが出来る。不慣れな場所は経路探索する機会が多いので、経路探索の結果と同時に表示するのが最適である。
【0093】
また、従来は最短乗換え位置のためだけに用意していた降車位置データも、さらに用途が広がって利用価値が高まる。さらに、本発明は、階段近くの位置に集中しがちな乗客を分散する効果もある。
【0094】
なお、上記実施例では、通信型の携帯端末とサーバを組み合わせたシステムとしたが、時刻表や乗換え位置データベースの更新が管理可能であれば、ミュージックプレーヤーのような携帯情報端末にデータをダウンロードして、携帯情報端末単独で乗換え案内を行う際に本発明を適用しても良い。この場合には、交通ネットワークのデータや乗降位置データの容量が問題となるが、携帯情報端末のデータ記憶容量も急速に大容量化しているので十分実現可能である。また、交通ネットワークのデータも時刻表を用いるのではなく平均移動コストデータに限定したり、車両の編成も各駅停車に限定するなどしてデータを簡略化することもできる。それでも本発明による着席確率の高い乗降位置案内が適用できる路線は数多く存在する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムにおける経路探索サーバ30の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】降車位置テーブルの作成方法を説明するための説明図であり、図3Aは探索された最適路線の説明図であり、図3Bは図3Aに示された路線を運行する電車の最適乗降位置の説明図である。
【図4】降車位置テーブルの内容を示す説明図である。
【図5】案内経路の表示データの内容を示す説明図である。
【図6】道路の経路探索に用いられるネットワークデータの構成を説明するための模式図である。
【図7】交通機関の経路探索に用いられるネットワークデータの構成を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0096】
10・・・・ナビゲーションシステム
11・・・・ネットワーク
20・・・・ナビゲーション端末装置
21・・・・制御手段
22・・・・通信手段
23・・・・位置検出手段
24・・・・経路探索要求編集手段
25・・・・案内データ記憶手段
26・・・・操作・表示手段
30・・・・経路探索サーバ
31・・・・制御手段
32・・・・経路案内手段
33・・・・表示手段
34・・・・通信手段
35・・・・経路探索手段
36・・・・時刻表データベース
37・・・・乗降位置データベース
38・・・・道路ネットワークデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて交通機関を利用した出発地から目的地までの経路を探索し、案内経路を前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバを備えたナビゲーションシステムにおいて、
前記ナビゲーション端末装置は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースを備え、前記着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記経路探索サーバは、前記マッチング度の積算の際に乗車駅に近い駅ほどマッチング度の重み付けを高くすることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記経路探索サーバは、前記着席推奨モードが有効な場合に、乗換え時間を通常より長く設定して探索を行うことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記経路探索サーバは、乗車駅が始発駅である場合、または、乗車電車が座席指定の電車である場合に、前記着席推奨モードを有効としないことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記ナビゲーション端末装置は、更に、前記経路探索条件として、乗車電車における乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードを有し、前記着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードを指定するモード指定手段を備え、
前記経路探索サーバは、前記モード指定手段により指定された着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードに応じて、出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有するナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバにおける経路探索方法であって、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースと、出発地、目的地を含む経路探索条件に基づいて経路探索を行う経路探索手段と、交通機関の路線ネットワークデータを含む時刻表データを蓄積した時刻表DBと、を備え、
前記経路探索手段が着席推奨モードにおける経路を探索する際、出発地から目的地までの経路を探索するステップと、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信するステップとを有することを特徴とする経路探索サーバにおける経路探索方法。
【請求項7】
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有するナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて出発地から目的地までの経路を探索して案内経路とし前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバであって、
前記経路探索サーバは、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースと、出発地、目的地を含む経路探索条件に基づいて経路探索を行う経路探索手段と、交通機関の路線ネットワークデータを含む時刻表データを蓄積した時刻表DBと、を備え、
前記経路探索手段は、着席推奨モードにおける経路を探索する際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、前記ナビゲーション端末装置に配信することを特徴とする経路探索サーバ。
【請求項8】
前記マッチング度の積算の際に乗車駅に近い駅ほどマッチングの重み付けを高くすることを特徴とする請求項7に記載の経路探索サーバ。
【請求項9】
前記経路探索手段は、前記着席推奨モードが有効な場合に、乗換え時間を通常より長く設定して探索を行うことを特徴とする請求項7に記載の経路探索サーバ。
【請求項10】
前記経路探索手段は、乗車駅が始発駅である場合、または、乗車電車が座席指定の電車である場合に、前記着席推奨モードを有効としないことを特徴とする請求項7に記載の経路探索サーバ。
【請求項11】
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードと、乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードと、を有するナビゲーション端末装置から入力された経路探索条件に基づいて出発地から目的地までの経路を探索して案内経路とし前記ナビゲーション端末装置に配信する経路探索サーバであって、
前記経路探索手段は、前記ナビゲーション端末装置により指定された着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードに応じて、前記時刻表DBまたは乗降位置データベースを参照して出発地から目的地までの経路を探索し、前記ナビゲーション端末装置に配信するように構成したことを特徴とする請求項7に記載の経路探索サーバ。
【請求項12】
経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードと、乗車電車における乗換えに最適な乗車位置を優先する乗換え推奨モードと、を有し、前記着席推奨モードあるいは乗換え推奨モードを指定するモード指定手段を備え、モード指定手段により指定されたモードとともに経路探索条件を経路探索サーバに送信することを特徴とするナビゲーション端末装置。
【請求項13】
入力した経路探索条件に基づいて交通機関を利用した出発地から目的地までの経路を探索し、案内経路を出力するナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、経路探索条件として着席できる確率が高い乗車位置の案内を優先する着席推奨モードを有し、各駅ごとの最適車両位置を蓄積した乗降位置データベースを備え、前記着席推奨モードにおける経路探索の際、出発地から目的地までの経路を探索するとともに、乗車駅から降車駅の一つ手前までの各停車駅について乗降位置データとのマッチング度を積算し、マッチング度の積算値が大きい車両の位置を識別し、出力することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−210507(P2007−210507A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33821(P2006−33821)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】