説明

ナビゲーションシステム

【課題】測位開始までの時間を短縮できるナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】電源オフ直前の現在地および衛星配置を表す情報をバックアップする現在地・衛星配置情報バックアップ部11と、電源オフ直前の時刻をバックアップする終了時刻バックアップ部12と、外部から現在時刻を取得する外部時刻取得部13と、バックアップされた電源オフ直前の時刻から現在時刻までの経過時間を算出する経過時間算出部14と、GPS(Global Positioning System)を用いて現在地を測位するGPS測位部15と、測位開始に必要な初期情報をGPS測位部に設定する初期情報設定部16と、経過時間算出部で算出された経過時間が所定時間より小さければ、現在地・衛星配置情報バックアップ部によりバックアップされた現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部に設定するように初期情報設定部に指示する制御部17を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GPS(Global Positioning System)を利用して現在位置を測位し、この測位結果を用いてユーザを目的地まで誘導するナビゲーションシステムに関し、特に現在位置の測位を開始するまでの時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS衛星から送信されるGPS信号を利用して現在地を測位し、この測位結果を用いてユーザを目的地まで誘導するナビゲーションシステムが知られている。このようなナビゲーションシステムにおいて、GPSを利用して現在地を測位するためには、初期情報として、時刻、各衛星の軌道情報(エフェメリスデータ)、衛星群の情報(アルマナックデータ)および電離層の補正データなどが必要である。
【0003】
ところで、従来のナビゲーションシステムにおいては、電源オフ時においても、バックアップ電源または電池を用いて、上述したGPS測位に必要なデータを常時バックアップしており、再起動時には、このバックアップしたデータを初期情報としてGPS衛星をサーチするといった、所謂「ホットスタート」が行われる。これにより、バックアップしたデータを利用しないで起動する「コールドスタート」に比べて、測位開始を短時間で行うことができる。また、このような従来のナビゲーションシステムに内蔵されている時計は、電源オフ状態であっても、バックアップ電源または電池によって動作し、計時を行っている。
【0004】
このような測位開始までの時間を短縮する技術として、特許文献1は、電源投入時に効率よく短時間で位置検出を行うことができる位置検出装置を開示している。この位置検出装置においては、GPS受信機は、GPS衛星を識別するための衛星識別データ、アルマナックデータおよびエフェメリスデータを含むGPS信号を受信するRF受信部と、GPS信号に基づき位置検出を行う位置検出手段と、電源がオフされるとき、観測可能であったGPS衛星を識別するための衛星識別データ、アルマナックデータおよびエフェメリスデータを保存するバックアップメモリと、電源が投入されたときに観測可能であるGPS衛星とバックアップメモリに保存された衛星識別データによって識別されるGPS衛星とが一致するか否かを調べ、一致しているときはバックアップメモリに保存されたアルマナックデータおよびエフェメリスデータが有効であると判定する判定手段を備えている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−106720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年は環境負荷に対する取り組みが活発であり、ナビゲーションシステムヘの電池の搭載、または、電源オフ時に流れる暗電流による電力消費に対する制約が厳しくなっている。特に、欧州などにおいては、ナビゲーションシステムに電池を搭載できない状況にある。このような制約から、電源オフ時にはナビゲーションシステムに電力が供給されないため時計が停止し、計時できない。その結果、ナビゲーションシステムの再起動時には必ずコールドスタートすることになり、測位開始までに時間がかかるという問題がある。
【0007】
この発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、測位開始までの時間を短縮できるナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るナビゲーションシステムは、上記課題を解決するために、電源オフ直前の現在地および衛星配置を表す情報をバックアップする現在地・衛星配置情報バックアップ部と、電源オフ直前の時刻をバックアップする終了時刻バックアップ部と、外部から現在時刻を取得する外部時刻取得部と、終了時刻バックアップ部によってバックアップされた電源オフ直前の時刻から外部時刻取得部で取得された現在時刻までの経過時間を算出する経過時間算出部と、GPS(Global Positioning System)を用いて現在地を測位するGPS測位部と、測位開始に必要な初期情報をGPS測位部に設定する初期情報設定部と、経過時間算出部で算出された経過時間が所定時間より小さければ、現在地・衛星配置情報バックアップ部によりバックアップされた現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部に設定するように初期情報設定部に指示する制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るナビゲーションシステムによれば、電源オフ直前の時刻と、電源オン直後の時刻を比較し、所定時間以上が経過していなければ、衛星配置が大幅に変化していないということを前提に、電源オフ直前にバックアップされた現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部に設定し、所謂ホットスタートを行うように構成したので、測位開始までの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの概略の構成を示す図である。このナビゲーションシステムは、ナビゲーションユニット1と時計内蔵ユニット2とを備えている。これらナビゲーションユニット1と時計内蔵ユニット2との間は、例えばCAN(Controller Area Network)またはMOST(Media Oriented Systems Transport)などといった車内ネットワークにより接続されている。
【0011】
ナビゲーションユニット1は、バックアップ電源または電池を備えておらず、電源オフの直前に、例えばフラッシュメモリなどといった不揮発性メモリによって、現在地および衛星配置を表す情報、電源オフ直前の時刻である終了時刻を表す情報などをバックアップする。このバックアップ終了後は、給電が停止されて電源オフ状態になるので、ナビゲーションユニット1は電力を消費しない。また、このナビゲーションユニット1は、常に電力を供給する必要がある時計を備えていない。ナビゲーションユニット1の詳細は後述する。
【0012】
時計内蔵ユニット2は、計時機能を有する別体の装置である。一般に、車両は、センターコンソールまたはメーターパネル内などに時刻を表示するために、時計を内蔵したユニットを搭載している。時計内蔵ユニット2としては、この時計を内蔵したユニットが使用される。時計内蔵ユニット2は、ナビゲーションシステムの電源のオン・オフにかかわらず、常に計時を行っている。
【0013】
次に、ナビゲーションユニット1の詳細を説明する。図2は、ナビゲーションユニット1の機能的な構成を示すブロック図である。このナビゲーションユニット1は、現在地・演算配置情報バックアップ部11、終了時刻バックアップ部12、外部時刻取得部13、経過時間算出部14、GPS測位部15、初期情報設定部16および制御部17から構成されている。
【0014】
現在地・演算配置情報バックアップ部11は、制御部17からの指示に応じて、電源オフ直前の現在地および衛星位置を表す情報を、例えばフラツシユメモリなどといった不揮発性メモリ(図示しない)に格納し、バックアップを行う。この現在地・演算配置情報バックアップ部11によって不揮発性メモリにバックアップされた現在地および衛星位置を表す情報は、電源オン時に、制御部17によって読み出される。
【0015】
終了時刻バックアップ部12は、制御部17からの指示に応じて、電源オフ直前の時刻を、終了時刻として、例えばフラッシュメモリなどといった不揮発性メモリ(図示しない)に格納し、バックアップを行う。この終了時刻バックアップ部12によって不揮発性メモリにバックアップされた終了時刻は、電源オン時に、制御部17によって読み出される。
【0016】
外部時刻取得部13は、制御部17からの指示に応じて、時計内蔵ユニット2から車内ネットワークを介して現在時刻を取得する。この外部時刻取得部13で取得された現在時刻は、経過時間算出部14に送られる。
【0017】
経過時間算出部14は、制御部17からの指示に応じて、外部時刻取得部13で取得された現在時刻と、終了時刻バックアップ部12でバックアップされた終了時刻とを比較し、経過時間を算出する。この経過時間算出部14で算出された経過時間は、制御部17に送られる。
【0018】
GPS測位部15は、制御部17からの指示に応じて、図示しないGPSチューナを制御することにより、現在地を測位する。この場合、GPS測位部15は、制御部17からの指示に応じて、初期情報設定部16から初期情報が設定されている場合はホットスタートを行い、初期情報が設定されていない場合は、コールドスタートを行う。
【0019】
初期情報設定部16は、制御部17からの指示に応じて、現在地・演算配置情報バックアップ部11によってバックアップされた現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部15に設定する。
【0020】
制御部17は、ナビゲーションユニット1の全体を制御する。例えば、制御部17は、経過時間算出部14によって算出された経過時間が所定時間(例えば15分)よりも小さい場合には、初期情報設定部16に対してGPS測位部15へ初期情報を設定するよう指示する。
【0021】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの動作を、再起動時の処理を中心に、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0022】
再起動は、電源オンによって開始される。再起動時は、まず、終了時刻が取得される(ステップST11)。すなわち、制御部17は、終了時刻バックアップ部12によって不揮発性メモリに格納された終了時刻を読み出し、経過時間算出部14に送る。
【0023】
次いで、外部から時刻が取得される(ステップST12)。すなわち、制御部17は、現在時刻の取得を外部時刻取得部13に指示する。外部時刻取得部13は、この指示に応答して、時計内蔵ユニット2から車内ネットワークを介して現在時刻を取得し、経過時間算出部14に送る。
【0024】
次いで、時差dが15分以上であるかどうかが調べられる(ステップST13)。すなわち、制御部17は、経過時間算出部14に経過時間の算出を指示する。経過時間算出部14は、この指示に応答して、外部時刻取得部13から送られてきた現在時刻と、制御部17から送られてきた終了時刻とを比較して経過時間を算出し、時差dとして制御部17に送る。制御部17は、経過時間算出部14で算出された時差dが15分以上であるかどうかを調べる。
【0025】
このステップST13において、時差dが15分以上でない(15分より小さい)ことが判断されると、不揮発性メモリにバックアップされている衛星配置を表す情報によって示される衛星の配置と、その時点での衛星の配置との間に大きな差がないと認識し、ホットスタートを開始するべく、初期情報設定が行われる(ステップST14)。すなわち、制御部17は、初期情報設定部16に対し、不揮発性メモリにバックアップされている現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部15に設定するように指示する。初期情報設定部16は、この指示に応答して、不揮発性メモリにバックアップされている現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部15に設定する。
【0026】
その後、シーケンスはステップST15に進み、GPS測位が行われる。すなわち、制御部17は、GPS測位部15に対して測位の開始を指示する。GPS測位部15は、この指示に応答して、図示しないGPSチューナを制御することにより、初期情報を用いて現在地の測位を開始する。これにより、ホットスタートが行われる。
【0027】
一方、ステップST13において、時差dが15分以上であることが判断されると、バックアップされている衛星配置の情報を再利用できないと認識され、コールドスタートによるGPS測位が行われる。すなわち、制御部17は、GPS測位部15に対して測位の開始を指示する。GPS測位部15は、この指示に応答して、図示しないGPSチューナを制御することにより、初期情報を用いないで現在地の測位を開始する。これにより、コールドスタートが行われる。これにより、不正確な初期情報を用いてGPS測位を開始することによって、コールドスタートよりも測位開始が遅くなってしまうという事態を回避することができる。
【0028】
なお、上述した例では、時差dが15分以上であるかどうかに応じてホットスタートを行うかコールドスタートを行うかを判断するように構成したが、時差dとしては、15分に限らず、その近傍の任意の値を用いることができる。
【0029】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムによれば、電源オフ直前の時刻と、電源オン直後の時刻を比較し、時差d以上が経過していなければ、衛星配置が大幅に変化していない旨を認識し、電源オフ直前にバックアップされた現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報としてGPS測位部に設定し、所謂ホットスタートを行うように構成したので、測位開始までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの概略の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムのナビゲーションユニットの機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るナビゲーションシステムの動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 ナビゲーションユニット、2 時計内蔵ユニット、11 現在地・衛星配置情報バックアップ部、12 終了時刻バックアップ部、13 外部時刻取得部、14 経過時間算出部、15 GPS測位部、16 初期情報設定部、17 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源オフ直前の現在地および衛星配置を表す情報をバックアップする現在地・衛星配置情報バックアップ部と、
電源オフ直前の時刻をバックアップする終了時刻バックアップ部と、
電源オンの直後に外部から現在時刻を取得する外部時刻取得部と、
前記終了時刻バックアップ部によってバックアップされた電源オフ直前の時刻から前記外部時刻取得部で取得された現在時刻までの経過時間を算出する経過時間算出部と、
GPS(Global Positioning System)を用いて現在地を測位するGPS測位部と、
測位開始に必要な初期情報を前記GPS測位部に設定する初期情報設定部と、
前記経過時間算出部で算出された経過時間が所定時間より小さければ、前記現在地・衛星配置情報バックアップ部によりバックアップされた現在地および衛星配置を表す情報を、初期情報として前記GPS測位部に設定するように前記初期情報設定部に指示する制御部
とを備えたナビゲーションシステム。
【請求項2】
制御部は、経過時間算出部で算出された経過時間が所定時間以上であれば、初期情報を用いないでGPS測位部に測位を開始させる
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−230309(P2010−230309A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197763(P2007−197763)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】