説明

ナビゲーション装置および山並み表示方法

【課題】 自車位置から遠方までの鳥瞰図にて山並みを表示する際に、描画の処理時間を短くしてパフォーマンスを向上させることが可能な「ナビゲーション装置および山並み表示方法」を提供する。
【解決手段】 メッシュ状に区画された複数の領域ごとに標高値を持ち、スケールごとにメッシュの大きさが異なる地図データ51,52,53を用意して、各スケールの地図に含まれる複数の領域61,62,63に対して標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により複数の領域を描画することによって山並みを表示することにより、自車位置近傍から遠方までの全てのエリアで同じ大きさのメッシュを使う従来技術に比べて、自車位置から離れたエリアにて大きなメッシュを使う分だけ区画領域の数を少なくすることができるようにして、処理すべきデータ量を少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置および山並み表示方法に関し、特に、俯瞰地図を立体的に表示する機能を備えたナビゲーション装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の走行案内を行うナビゲーション装置は、単に現在地周辺の地図を表示するのみでなく、目的地を指定することにより、現在地から目的地までの誘導経路を自動設定して案内する機能を備えている。この経路誘導機能では、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶ最もコストが小さな経路を、幅優先探索(BFS)法あるいはダイクストラ法などのシミュレーションを行って自動探索し、その探索した経路を誘導経路として設定する。
【0003】
誘導経路の設定後は、車両の走行中に地図画像上で誘導経路を他の道路と識別可能なように色を変えて太く描画する。そして、その誘導経路に沿って、特に交差点において右左折を指示する(交差点拡大図を表示したり、進行方向を音声で案内したりする)ことにより、運転者を目的地まで速く、安全に、また確実に誘導することができるようになされている。
【0004】
この種のナビゲーション装置では、運転者がより利用しやすく、目的地までより確実に案内することができるように、種々の研究開発が行われている。そのための技術の1つとして、遠近感を出すために自車位置の後方上空から見下ろした状態で地図を表示する鳥瞰図表示や、建物等の3次元的な立体画像を鳥瞰図の地図上に表示する立体表示の機能が存在する。鳥瞰図において遠方の山並みを表示するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3468656号公報
【0005】
写真や絵などから成る画像で山並みを表示しようとすると、多くの画像データを記憶するために大容量のメモリが必要となる。そのため、この特許文献1に記載の技術では、山並みの画像データは持たず、二次元地図データをもとに演算によって山並みを描画するように成されている。すなわち、一定間隔の経度線および緯度線により画定された複数の標準地域メッシュごとに二次元地図データを構成し、メッシュの四隅に標高データを持たせる。そして、この標高データをもとに、立体的な地図を見たときに得られる三次元的な山並みを表示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術によれば、一定間隔で区切られた領域ごとに四隅の標高データを記憶することによって山並みを表示できるので、山並みの画像データを記憶する場合に比べてデータ量を削減することが可能である。しかしながら、自車位置から遠方までの鳥瞰図を表示する際には、その表示範囲内には非常に多くの区画領域が含まれることとなり、二次元地図データといえどもデータ量は多くなってしまう。その多くのデータを処理して山並みを描画しなくてはならないので、必然的に描画処理に時間がかかり、描画のパフォーマンスが低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、自車位置から遠方までの鳥瞰図を表示する際には、スケールの大きい地図データを用いるので、自車位置近傍の地図を詳細に表示することができないという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、自車位置から遠方までの鳥瞰図にて山並みを表示する際に、描画の処理時間を短くしてパフォーマンスを向上できるようにすることを目的とする。
また、本発明は、画面の手前(下側)で自車位置近傍の地図を詳細に表示すると共に画面の奥(上側)で遠方の山並みも分かりやすく表示できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、メッシュ状に区画された複数の領域ごとに標高値を持たせた地図データについて、地図のスケールごとにメッシュの大きさを変えたものを用意する。そして、このような複数のスケールの地図データに基づいて、各スケールの地図に含まれる複数の領域に対して標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により複数の領域を描画することによって、山並みを表示するようにしている。
【0010】
本発明の他の態様では、複数のスケールの地図データを用いて山並みを描画することに加えて、複数のスケールの地図データを用いて、一画面を分割したそれぞれのエリアごとに異なるスケールの地図を描画するようにしている。
【0011】
本発明の他の態様では、複数のスケールの地図が持つそれぞれのメッシュとは別に、複数のスケールの地図を横断する共通メッシュを定義し、複数のメッシュの各領域に含まれる標高値をもとに共通メッシュの各領域における標高値を求めて、当該共通メッシュを利用して各領域を描画するようにしている。
【0012】
本発明の他の態様では、メッシュの各領域における標高値に基づく高さ情報に加え、自車位置からの距離情報に照応する色情報によりメッシュの各領域を描画するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、自車位置から遠方までの鳥瞰図にて山並みを表示する際に、自車位置に近い一定のエリアではスケールの小さい地図のメッシュを使って描画し、自車位置から離れたエリアではスケールの大きい地図のメッシュを使って描画することにより、自車位置近傍から遠方までの全てのエリアで同じ大きさのメッシュを使う従来技術に比べて、自車位置から離れたエリアにて大きなメッシュを使う分だけ区画領域の数を少なくすることができる。これにより、処理すべきデータ量を少なくすることができ、描画の処理時間を短くしてパフォーマンスを向上させることができる。
【0014】
また、一画面を分割したそれぞれのエリアごとに異なるスケールの地図を描画するようにした本発明によれば、自車位置に近い一定のエリアではスケールの小さい地図を使って描画することで自車位置周辺の地図を詳細に表示し、自車位置から離れたエリアではスケールの大きい地図を使って描画することでかなり遠方の山並みまで表示することができる。これにより、自車位置近傍の詳細地図と遠方の山並みとを一画面内にて分かりやすく表示することができる。
【0015】
共通メッシュの標高値を利用して各領域を描画するようにした発明によれば、1つの共通メッシュが持つ連続的な各領域に対して描画が行われることとなるので、複数のスケールのメッシュを利用して各スケールの領域を描画した場合にスケール間の境界に出てしまう不連続な部分をなくすことができ、スケールのつなぎ目においても山並みの画像を滑らかにつなげた状態で表示することができる。
【0016】
メッシュの各領域における標高値に基づく高さ情報と自車位置からの距離情報とに照応する色情報によりメッシュの各領域を描画するようにした発明によれば、山の高さに応じて色を変えるだけでなく、自車位置から山までの距離に応じても色を変えて山並みを表示することができ、近い山と遠い山とを明確に区別できるように分かりやすく表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。図1において、100はナビゲーション制御装置であり、ナビゲーション装置の全体を制御する。11はDVD−ROM等の記録媒体であり、地図表示や経路探索等に必要な各種の地図データを記憶している。ここでは地図データを記憶する記録媒体としてDVD−ROM11を用いているが、CD−ROM、ハードディスク等の他の記録媒体を用いても良い。
【0018】
DVD−ROM11に記録された地図データは、広い地域を一望するための上位レベル(広域スケール)の地図から、狭い地域を詳細に記述した下位レベル(狭域スケール)の地図まで、レベルと呼ばれる単位に階層化して管理されている。各スケールの地図は、所定の経度および緯度で区切られた区画と呼ばれる矩形領域を単位として分割されている。また、各スケールの地図データは、そのスケールに応じた所定の間隔でメッシュ状に区切られており、当該メッシュにより区画される複数の領域ごとに標高値を有している。例えば、メッシュの各交点(各領域の四隅)に対して標高値が付与されている。
【0019】
12はリモコン、タッチパネル、操作スイッチ等の操作部であり、ユーザがナビゲーション制御装置100に対して各種の情報(例えば、経路誘導の目的地や経由地)を設定したり、各種の操作(例えば、メニュー選択操作、拡大/縮小操作、手動地図スクロール、平面地図や鳥瞰図あるいは3D地図などの表示ビューの選択操作、数値入力など)を行ったりするためのものである。
【0020】
13は車両の現在位置を測定するための自立航法センサであり、所定走行距離毎に1個のパルスを出力して車両の移動距離を検出する距離センサ(車速センサ)13aと、車両の回転角度(移動方位)を検出する振動ジャイロ等の角速度センサ(相対方位センサ)13bとを含んでいる。自立航法センサ13は、これらの距離センサ13aおよび角速度センサ13bによって車両の相対位置および方位を検出し、その情報をナビゲーション制御装置100に出力する。
【0021】
14は車両の現在位置を測定するためのGPS受信機であり、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナ15で受信し、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および方位を計算する(車両方位は、現時点における自車位置と1サンプリング時間ΔT前の自車位置とに基づいて計算する)。そして、これらの計算した車両の絶対位置および方位の情報を、測位時刻と共にナビゲーション制御装置100に出力する。
【0022】
16は画像表示装置であり、ナビゲーション制御装置100の制御によって生成された画像を表示する。この画像表示装置16の画面上には、自車周辺の地図情報が車両位置マーク等と共に表示される。また、鳥瞰図表示を指示したときは、自車周辺の地図情報と遠方の山並みとが車両位置マーク等と共に俯瞰的に表示される。さらに、誘導経路を設定したときは、この地図上に誘導経路が表示されるとともに、車両の位置が案内交差点近傍に近づいたときに交差点拡大図が表示される。
【0023】
次いで、ナビゲーション制御装置100の内部構成において、21は地図バッファであり、DVD−ROM11から読み出された地図データを一時的に格納する。この地図バッファ21は、本発明の地図記憶手段に相当する。ここで地図バッファ21には、図2に示すような複数のスケール(例えば3つの異なるスケール)の地図データ51,52,53が格納される。
【0024】
各スケールの地図データ51,52,53は、自車位置54を中心としてそれぞれ所定の矩形範囲の地図を表すものであり、格納される所定範囲の大きさはスケールごとに異なっている。例えば、100mスケールの地図データ51の場合は1km四方の範囲、1kmスケールの地図データ52の場合は10km四方の範囲、10kmスケールの地図データ53場合は40km四方の範囲が地図バッファ21に格納される。
【0025】
上述したように、各スケールの地図データ51,52,53は、そのスケールに応じた所定の間隔でメッシュ状に区切られている。本実施形態では、各スケールの地図データ51,52,53を何れも縦横80分割してメッシュを形成している。したがって、そのメッシュにより区画される複数の領域61,62,63の大きさは、スケールが小さい地図データ51ほど小さくなり、スケールが大きい地図データ53ほど大きくなる。そして、各スケールの地図データ51,52,53が持つそれぞれのメッシュにより区画される複数の領域61,62,63ごとに標高値が格納されている。
【0026】
22はROM読出制御部であり、DVD−ROM11からの地図データの読み出しを制御する。このROM読出制御部22は、後述するマップマッチング制御部26からマップマッチング処理後の車両現在位置情報を入力する。そして、その車両現在位置を含む所定範囲の地図データの読み出し指示を出力する。これにより、地図表示や山並み表示に必要な複数のスケールの地図データをそれぞれ所定範囲だけDVD−ROM11から読み出して、地図バッファ21に格納する。
【0027】
23は外部信号入力部であり、操作部12からその操作状態に応じた操作信号を入力する。24は車両位置・方位計算部であり、自立航法センサ13から出力される自車の相対的な位置および方位のデータに基づいて、絶対的な自車位置(推定車両位置)および車両方位を計算する。25はデータ記憶部であり、GPS受信機14から出力される自車の絶対的な位置および方位のデータを順次格納する。
【0028】
上述のマップマッチング制御部26は、地図バッファ21に読み出されている地図データと、車両位置・方位計算部24により計算された自立航法センサ13に基づく推定車両位置および車両方位のデータと、データ記憶部25に格納されたGPS受信機14による自車位置および車両方位のデータとを用いて、車両走行距離毎に投影法等によるマップマッチング処理を行って、自車の走行位置を地図データの道路上に位置修正する。
【0029】
上述した自立航法センサ13、GPS受信機14、車両位置・方位計算部24、データ記憶部25およびマップマッチング制御部26により本発明の自車位置検出手段が構成される。
【0030】
27は地図描画部であり、地図バッファ21に格納された地図データに基づいて、画像表示装置16への地図表示に必要な地図画像データを生成する。この地図描画部27は、鳥瞰図を表示するモードが指定されているときには、地図バッファ21に格納された複数のスケールの地図データに基づいて地図を描画する。このとき、画面の手前(下側)となる部分では自車位置近傍の地図を狭域スケールの地図データに基づいて詳細に描画する。画面の奥(上側)となる部分では広域スケールの地図データに基づいて地図を描画する。
【0031】
また、地図描画部27は、鳥瞰図を表示するモードが指定されているときは、地図データのメッシュにより区画される複数の領域に対して標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報によりメッシュの各領域を描画する。このとき、地図描画部27は、複数のスケールの地図データを用いて、各スケールに応じた複数のメッシュが持つ複数の領域を、それぞれの高さ情報に応じた色情報によって描画する。さらに、各領域に対して付した色が滑らかに変化するようにグラデーション処理を行うことにより、山並みを描画する。この地図描画部27は、本発明の描画手段に相当する。
【0032】
この地図描画部27による山並み描画処理の内容を、図3を用いて具体的に説明する。図3(a)に示すように、地図データはメッシュ状に区画されており、メッシュにより画定される各領域の四隅(図3(a)では1つの領域の四隅を●で示している)には標高値が与えられている。まず、地図描画部27は、図3(b)に示すように、領域の四隅に対して標高値に比例した高さ情報を与え、その領域を三次元的に描く。これをメッシュ内の全ての領域について行う。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、各領域に対して高さ情報に照応する色情報を与え、その色によって各領域を描画する。具体的には、山を表示するので基本的には緑系の色情報を与えるのであるが、高さに応じて明度を変える。例えば、高いところほど暗い緑を、低いところほど明るい緑を与える。より具体的には、高さ情報に応じて明度を変えたRGBの値を決定し、そのRGB値により特定される色で各領域を描画する。最後に、図3(d)に示すように、各領域に対して付した色が滑らかに変化するようにグラデーション処理を行うことにより、山並み表示の品位を高める。
【0034】
次いで、28はVRAM(ビデオRAM)であり、地図描画部27により生成された地図画像データを一時的に格納する。29は読出制御部であり、VRAM28からの地図画像データの読み出しを制御する。すなわち、地図描画部27によって生成された地図画像データは、VRAM28に一時的に格納され、読出制御部29によって1画面分の地図画像データが読み出される。
【0035】
30は操作画面発生部であり、操作部12を用いて各種の操作を行う際に必要な操作画面を生成して出力する。31は各種マーク発生部であり、マップマッチング処理された後の自車位置に表示する車両位置マークや、ガソリンスタンドやコンビニエンスストア等を表示する各種ランドマーク等を生成して出力する。
【0036】
32は画像合成部であり、読出制御部29によって読み出された地図画像データに、操作画面発生部30および各種マーク発生部31のそれぞれから出力される各画像データを重ねて画像合成を行い、画像表示装置16に出力する。これにより、合成された画像が画像表示装置16の画面上に表示される。
【0037】
次に、上記のように構成したナビゲーション装置による山並み表示の動作について説明する。図4は、第1の実施形態による山並み表示方法の処理手順を示すフローチャートである。この図4に示すフローチャートは、鳥瞰図表示が指示されているときの動作を示すものである。
【0038】
図4において、まず、ROM読出制御部22は、マップマッチング制御部26から入力される車両現在位置情報をもとに、複数のスケールの地図データを、それぞれ車両現在位置を含む所定範囲の分だけDVD−ROM11から読み出して、地図バッファ21に格納する(ステップS1)。次に、地図描画部27は、地図バッファ21に格納された複数のスケールの地図データ(図2の例では地図データ51,52,53)に基づいて、各スケールに応じた複数のメッシュが持つ複数の領域61,62,63に対して標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により複数の領域を描画する(ステップS2)。
【0039】
さらに、地図描画部27は、色の付された各領域61,62,63に付したグラデーション処理を行うことにより、色が滑らかに変化するようにする(ステップS3)。なお、このフローチャート中には図示しないが、複数スケールの地図データに基づいて自車位置近傍から遠方までの地図が描画される。このようにして描かれた鳥瞰図による地図画像データは、VRAM28に格納される(ステップS4)。そして、読出制御部29の制御により、VRAM28に格納された描画データから一画面分の大きさを切り出して、画像表示装置16に出力する(ステップS5)。以上の処理により、画像表示装置16の表示画面には、図5のような山並みを含む地図が表示される。
【0040】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態によれば、メッシュの大きさが異なる複数のスケールの地図データ51,52,53を用いて山並みを表示するようにしたので、自車位置の近傍から遠方までの全てのエリアで同じスケールの地図データ(同じ大きさのメッシュ)を使う従来技術に比べて、自車位置から離れたエリアにて大きなメッシュを使う分だけ区画領域の数を少なくすることができる。これにより、処理すべきデータ量を少なくすることができ、描画の処理時間を短くしてパフォーマンスを向上させることができる。
【0041】
また、第1の実施形態によれば、自車位置に近い一定のエリアではスケールの小さい地図データ51を使って地図を描画することで、自車位置周辺の地図を詳細に表示することができる。しかも、自車位置から離れたエリアではスケールの大きい地図データ52,53のメッシュを使って山並みを描画することで、かなり遠方の山並みまで表示することができる。これにより、自車位置近傍の詳細地図と遠方の山並みとを一画面内にて表示することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態によるナビゲーション装置の機能構成は、図1に示したものと同様である。ただし、地図描画部27による山並みの描画方法が第1の実施形態と異なる。これを、図6を用いて説明する。図6は、第2の実施形態による複数スケールの地図データとメッシュとの関係を示すイメージ図である。
【0043】
図6に示すように、第2の実施形態では、地図描画部27は、複数のスケールの地図データ51,52,53が持つそれぞれのメッシュとは別に、複数のスケールの地図データ51,52,53を横断する共通メッシュ71を定義する。この共通メッシュ71の大きさ(各区画領域の大きさ)は、例えば、最もスケールの大きい地図データ53が持つメッシュの大きさとほぼ同じか、それより若干大きく設定する。
【0044】
そして、地図描画部27は、複数のスケールの地図データ51,52,53が持つ複数のメッシュの各交点における標高値をもとに、共通メッシュ71の各交点における標高値を演算によって求める。具体的には、共通メッシュ71の或る1つの交点の標高値を求める際には、地図データ51,52,53が持つメッシュの各交点のうち、共通メッシュ71の求める交点を囲んでいる複数の交点の標高値を用いて補間演算を行うことにより、共通メッシュ71の交点における標高値を求める。各スケールの地図データ51,52,53の境界付近にある共通メッシュ71の交点の標高値を求める際には、双方のスケールの地図データが持つメッシュの交点における標高値を用いて補間演算を行う。
【0045】
このようにして共通メッシュ71の各交点における標高値を求めたら、その標高値を用いて、第1の実施形態と同様の演算によって共通メッシュ71の各領域を描画する。すなわち、共通メッシュ71の各領域に対して、共通メッシュ71の標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により共通メッシュ71の各領域を描画する。
【0046】
上述した第1の実施形態では、3つの異なるスケールのメッシュを用いて山並みを表示するので、異なるメッシュの境界部分で描画領域に不連続が生じ、山並みの表示が不連続になる。これに対して、第2の実施形態では、3つの異なるスケールのメッシュから1つの共通メッシュを求め、当該共通メッシュが持つ連続的な各領域に対して描画を行うようにしている。これにより、複数のスケールの地図データを用いて自車位置近傍の詳細地図と遠方の山並みとを一画面に同時に表示しつつも、山並みに関しては各スケールの境界における不連続な部分をなくすことができる。
【0047】
図7は、共通メッシュの他の例を示す図である。共通メッシュは、図6に示した格子状のメッシュの他に、図7に示すような蜘蛛の巣状のメッシュでも良い。この図7に示す共通メッシュは、自車位置に近いほど区画領域が狭く、自車位置から遠いほど区画領域が広く設定されている。例えば、自車位置に最も近い区画領域の大きさは、図6に示した最もスケールの小さい地図データ51の区画領域とほぼ同じ大きさであり、例えば50m四方の大きさである。また、自車位置に最も遠い区画領域の大きさは、図6に示した最もスケールの大きい地図データ53の区画領域とほぼ同じ大きさであり、例えば1km四方の大きさである。
【0048】
鳥瞰図表示や3D表示の場合は、自車位置に近い手前の方ほど見える範囲が狭く、自車位置から遠い奥の方ほど見える範囲が広くなる。したがって、このような実際の視界に合わせて蜘蛛の巣状に共通メッシュを設定することにより、よりリアルに山並みを表示することができる。また、読出制御部29が一画面分の領域を切り取るときも、単純に矩形領域を切り取れば良いので、処理を簡素化することができる。また、自車位置に近いほど区画領域を狭く、自車位置から遠いほど区画領域を広く設定することにより、処理に使用する領域の数を少なくすることができる。
【0049】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。なお、この図8において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0050】
第3の実施形態では、地図描画部27は、マップマッチング制御部26から車両現在位置情報を入力している。そして、地図バッファ21に格納されている地図データと、マップマッチング制御部26から入力される自車位置情報とに基づいて、メッシュ内の複数の領域に対して標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報および自車位置からの距離情報に照応する色情報により複数の領域を描画する。
【0051】
具体的には、山を表示するので基本的には緑系の色情報を与えるのであるが、高さに応じて明度を変えるとともに、自車位置からの距離に応じて彩度を変える。例えば、高いところほど暗い緑を、低いところほど明るい緑を与える。また、自車位置から近いところほど濃い緑を、自車位置から遠いところほど淡い緑を与える。より具体的には、高さ情報および距離情報に応じて明度と彩度とを変えたRGBの値を決定し、そのRGB値により特定される色で各領域を描画する。
【0052】
このように、メッシュの各領域における標高値に基づく高さ情報に加え、自車位置からの距離情報に照応する色情報によりメッシュの各領域を描画するようにした場合は、山の高さに応じて色を変えるだけでなく、自車位置から山までの距離に応じても色を変えて山並みを表示することができる。これにより、図9に示すように、近い山と遠い山とを明確に区別できるように山並みを分かりやすく表示することができる。このとき、遠くの山を淡い色で表現することにより、遠くにあるように見せることができる。
【0053】
以上、第1〜第3の実施形態について説明したが、これらは何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0054】
例えば、上記第1〜第3の実施形態では、3つの異なるスケールの地図データを用いる例について説明したが、2つあるいは4つ以上の異なるスケールの地図データを用いて地図と山並みを表示するようにしても良い。
【0055】
また、上記第3の実施形態では、山の高さに応じて明度を変えるとともに、自車位置からの距離に応じて彩度を変える例について説明したが、逆に、山の高さに応じて彩度を変えるとともに、自車位置からの距離に応じて明度を変えるようにしても良い。また、山の高さまたは自車位置からの距離に応じて色相を変えるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、俯瞰地図を立体的に表示する機能を備えたナビゲーション装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態による複数スケールの地図データの構成例を示すイメージ図である。
【図3】山並み描画処理の内容を説明するための図である。
【図4】山並み表示方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態により表示されるナビゲーション画面の例を示す図である。
【図6】第2の実施形態による複数スケールの地図データと共通メッシュとの関係を示すイメージ図である。
【図7】第2の実施形態による共通メッシュの他の例を示す図である。
【図8】第3の実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】第3の実施形態により表示されるナビゲーション画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
13 自立航法センサ
14 GPS受信機
21 地図バッファ
24 車両位置・方位計算部
25 データ記憶部
26 マップマッチング制御部
27 地図描画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で区画されたメッシュの複数の領域ごとに標高値を有した地図データを記憶する地図記憶手段と、
上記地図記憶手段に記憶されている地図データに基づいて、上記複数の領域に対して上記標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により上記複数の領域を描画する描画手段とを備え、
上記地図データは複数のスケールの地図を含み、各スケールの地図は、そのスケールに応じた所定の間隔でメッシュ状に区切られており、
上記描画手段は、上記複数のスケールの地図データを用いて、各スケールに応じた複数のメッシュが持つ複数の領域を上記色情報により描画することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記描画手段は、上記複数のスケールの地図データを用いて、一画面を分割したそれぞれのエリアごとに異なるスケールの地図を描画することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記描画手段は、上記複数のスケールの地図が持つそれぞれのメッシュとは別に、上記複数のスケールの地図を横断する共通メッシュを定義し、上記複数のスケールの地図が持つ複数のメッシュの各領域に含まれる標高値をもとに、上記共通メッシュの各領域における標高値を求め、上記共通メッシュの各領域に対して上記標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により上記共通メッシュの各領域を描画することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記共通メッシュは格子状のメッシュであることを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記共通メッシュは蜘蛛の巣状のメッシュであることを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
上記蜘蛛の巣状のメッシュは、自車位置に近いほど領域が狭く、自車位置から遠いほど領域が広く設定されたものであることを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
自車位置を検出する自車位置検出手段を備え、
上記描画手段は、上記地図記憶手段に記憶されている地図データおよび上記自車位置検出手段により検出される自車位置に基づいて、上記複数の領域に対して上記標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報および上記自車位置からの距離情報に照応する色情報により上記複数の領域を描画することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
各スケールの地図がそれぞれスケールに応じた所定の間隔でメッシュ状に区切られており、上記メッシュの複数の領域ごとに標高値を有した複数のスケールの地図データに基づいて、各スケールに応じた複数のメッシュが持つ複数の領域に対して上記標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により上記複数の領域を描画する第1のステップと、
上記第1のステップで得られた描画データから一画面分の大きさを切り出して表示画面に山並みを表示する第2のステップとを有することを特徴とする山並み表示方法。
【請求項9】
上記第1のステップでは、上記複数のスケールの地図が持つそれぞれのメッシュとは別に、上記複数のスケールの地図を横断する共通メッシュを定義し、上記複数のスケールの地図が持つ複数のメッシュの各領域に含まれる標高値をもとに、上記共通メッシュの各領域における標高値を求め、上記共通メッシュの各領域に対して上記標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報に照応する色情報により上記共通メッシュの各領域を描画することを特徴とする請求項8に記載の山並み表示方法。
【請求項10】
自車位置を検出する第3のステップを有し、
上記第1のステップでは、上記地図データおよび上記自車位置に基づいて、上記複数の領域に対して上記標高値に基づく高さ情報を与え、当該高さ情報および上記自車位置からの距離情報に照応する色情報により上記複数の領域を描画することを特徴とする請求項8または9に記載の山並み表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−39014(P2006−39014A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215628(P2004−215628)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】