説明

ナフトキノン系化合物の微粒化粒子を含有する医薬組成物

所定のナフトキノン系化合物の微粒化粒子を組み入れることにより、やや溶けにくいナフトキノン系化合物の溶解度および吸収率を増加させることによって、優れたインビボ吸収特性を有する医薬組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子を含んでなる医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、所定のナフトキノン系化合物の微粒化粒子を組み入れることにより、やや溶けにくいナフトキノン系化合物の溶解度および吸収率を増加させることによって、優れたインビボ吸収特性を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナフトキノン系化合物の1つであるβ−ラパコンおよびその誘導体は、抗癌剤、抗生物質および抗真菌剤として使用することができることが公知であり(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6)、そして抗癌薬として公知の類似の化合物が特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11に掲載されている。
【0003】
本発明者らは、タンシノンを含む1,2−ナフトキノン系化合物を合成し、そしてタンシノンを含む1,2−ナフトキノン系化合物が肥満、糖尿病、再狭窄、インポテンス、前立腺疾患、高血圧症、心疾患、腎疾患および緑内障のような代謝疾患の予防および治療に有効であることを確かめた(例えば、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19を参照のこと)。
【0004】
しかし、前記のナフトキノン系化合物は、やや溶けにくい材料であり、これは、CHCl、CHCl、CHClCHCl、CHCCl、モノグリム、およびジグリムのような高溶解度の溶媒にのみ約2〜10%の低い程度でやや溶けやすいが、他の通常の極性または非極性溶媒には溶けにくい。これらの理由のため、ナフトキノン系化合物には、それらの優れた薬理効果にもかかわらず、インビボ投与のための調製物の処方に関連する様々な難点がある。
【0005】
従って、これらの薬物化合物を、それら自体だけで投与するかまたは経口経路を介する従来の簡単な処方物の形態で投与する場合、身体への薬物の吸収が実質的に認められず、即ち、薬物のバイオアベイラビリティが極めて低く、そのため、薬物固有の効力を及ぼすことができない。特に、これらの薬物化合物は、それらが所定の濃度を超える量で身体に吸収されるまで、治療効果を及ぼさない。これらの理由のため、これらのナフトキノン系化合物の固有な薬理学的特性を十分かつ満足に活用するために、これらの薬物のバイオアベイラビリティを最大にすることが可能な方法の開発および導入が早急に求められている。
【0006】
これに関して、Boothmanらは、特許文献20において、β−ラパコンを、β−シクロデキストリンのようなポリマー内に含有させて、それによって溶解度を増加させる技術を示唆した。
【0007】
しかし、この技術は、薬物がポリマー内に含有されるため、薬物の量が、ポリマーの量に依存して制限されるという問題を有する。従って、経口用調製物、特に、高用量の経口用調製物の場合、経口用調製物の全量が過度に増加し、場合によってこの用量調製物の使用が制限される。
【0008】
また、特許文献21および特許文献22では、ポリマーまたはアミノ酸のような分子と結合させて、それによって溶解度を増加させることにより、ナフトキノン系化合物をプロドラッグに変換する技術が示唆された;しかし、この技術は、化合物の構造を維持することができないという問題を有する。
【0009】
また、やや溶けにくい化合物に通常利用することができる分散剤の使用も、ナフトキノン系化合物の溶解度を増加させるための方法として考えられたが、それには大量の分散剤が必要であり、それ故、高用量の調製の場合、上記の問題が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5969163号明細書
【特許文献2】米国特許第5824700号明細書
【特許文献3】米国特許第5763625号明細書
【特許文献4】米国特許第5641773号明細書
【特許文献5】米国特許第4898870号明細書
【特許文献6】米国特許第5985331号明細書
【特許文献7】国際公開第06/128120号パンフレット
【特許文献8】国際公開第04/045557号パンフレット
【特許文献9】国際公開第96/033988号パンフレット
【特許文献10】国際公開第94/004145号パンフレット
【特許文献11】国際公開第97/031936号パンフレット
【特許文献12】KR2004−0116339号明細書
【特許文献13】KR2006−14541号明細書
【特許文献14】PCT/KR2007/006012号明細書
【特許文献15】PCT/KR2007/006013号明細書
【特許文献16】PCT/KR2007/006011号明細書
【特許文献17】KR2007−0136105号明細書
【特許文献18】KR2007−0139740号明細書
【特許文献19】KR2007−0141303号明細書
【特許文献20】米国特許第689050号明細書
【特許文献21】国際公開第06/20719号パンフレット
【特許文献22】国際公開第06/20722号パンフレット
【特許文献23】韓国特許出願第2004−0116339号明細書
【特許文献24】韓国特許出願第2006−0014541号明細書
【特許文献25】韓国特許出願第2007−0136105号明細書
【特許文献26】韓国特許出願第2007−0139740号明細書
【特許文献27】韓国特許出願第2007−0141303号明細書
【特許文献28】韓国特許第10−818586号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解決するための多様な広範かつ集中的研究および実験の結果として、本発明者らは、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子を含んでなる医薬組成物を発見し、ここで、ナフトキノン系化合物は、式1および2:
【化1】

[式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルコキシカルボニル、置換または非置換C〜C10アシル、置換または非置換C〜Cシクロアルキル、置換または非置換C〜C10アリール、置換または非置換−(CH−アリール、置換または非置換−(CH−ヘテロ環および置換または非置換−(CHn−10−フェニルであるか、或いはそれらのうちの2個の置換基が一緒になって、二重結合を形成し得るか、或いは飽和または部分的若しくは完全に不飽和であり得る置換または非置換C〜C環状構造を形成し得、ここで、置換基は、水素、ヒドロキシル、C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニルおよびC〜C10アルキルアミノからなる群から選択される少なくとも1つのものであり得る;
〜R10は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルコキシカルボニル、置換または非置換C〜C10アシル、置換または非置換C〜C10アリール、および置換または非置換−(CHn−10−フェニルであるか、或いはそれらのうちの2個の置換基が一緒になって、二重結合を形成し得るか、或いは飽和または部分的若しくは完全に不飽和であり得る置換または非置換C〜C環状構造を形成し得、ここで、置換基は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニル、C〜C10アルキルアミノ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜C10アリールおよびC〜C10ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つのものであり得る;
Xは、O、SまたはNR’であり、ここで、R’は、水素若しくはC〜Cアルキルである;
Yは、C、S、N、またはOであって、但し、YがS若しくはOである場合、RおよびRは存在せず、そしてYがNである場合、Rは水素若しくはC〜C低級アルキルであり、そしてRは存在せず;そして
mは0若しくは1であって、但し、mが0である場合、mに隣接する炭素原子は直接結合を介して環状構造を形成し、そしてnは0〜10の整数である]
によって表される化合物、或いはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物または異性体から選択される1つ以上のものである。
【0012】
好ましくは、XはOまたはSであり、そしてYはCまたはOである。
【0013】
1つの好適な例では、R〜Rは、それぞれ、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、置換または非置換C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルコキシおよび−(CH−フェニルからなる群から独立して選択され得るか、或いはRおよびRまたはRおよびRは一緒になって、二重結合を形成するか、または置換または非置換C〜C環状構造を形成し得、ここで、置換基は水素若しくはC〜C10アルキルであり得る。
【0014】
別の好適な例では、R〜R10は、それぞれ、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換C〜C10アルキルおよび置換または非置換C〜C10アルコキシからなる群から独立して選択され得る。
【0015】
本発明の式1または2の化合物のうち、XがOであり、そしてYがCである式1−1または2−1で表される化合物、またはXがSである式1−2若しくは2−2で表される化合物が好適である。
【0016】
ナフトキノン系化合物のうち、以下の式3〜7
【化2】

[式中、R〜R10、Yおよびmは、式1におけるように定義される]
の化合物が好適である。
【0017】
別の例では、式1または2の化合物は、式中、mが0である式1−3または2−3
【化3】

[式中、R〜R10およびXは上記のように定義される]
の化合物であり得、そして隣接する炭素原子はそれらの間の直接結合を介して環状構造(フラン環)を形成し、以後、「フラノ−o−ナフトキノン誘導体」と称される。
【0018】
更に、式1または式2の化合物は、式中、mが1である式1−4または式2−4
【化4】

[式中、R〜R18、X、Yおよびmは上記のように定義される]
の化合物であり得、以後、しばしば、「チオピラノ−1,2−ナフトキノン誘導体」と称される。
【0019】
別の例では、RおよびRがそれらの間で直接結合を介して環状構造を形成した式1の化合物は、式1−5または1−6の構造を有し得、そして式1の化合物は、化合物2−5または2−6であり得る。
【化5】

[式中、R〜R18、X、Yおよびmは上記のように定義される]。好ましくは、R〜R18は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜Cシクロアルキルおよびフェニルから選択される少なくとも1つのものであり得る。
【0020】
本発明の医薬組成物において、ナフトキノン系化合物の範囲には、すべて、薬学的に許容できるその塩、溶媒和物または異性体が含まれる。
【0021】
本明細書において使用する用語「医薬組成物」は、式1または2の化合物と、希釈剤またはキャリアのような他の化学成分との混合物を意味する。医薬組成物は、化合物の生物体への投与を容易にする。化合物を投与する様々な技術が当該技術分野において公知であり、そして経口、注入、エアゾル、非経口および局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。また、医薬組成物は、目的の化合物と、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような酸とを反応させることによって、得ることができる。
【0022】
本開示物において使用する用語「薬学的に許容できる塩」は、化合物が投与される生物体に有意な刺激を生じず、そして化合物の生物活性および特性を排除しない化合物の処方を意味する。薬学的塩の例として、化合物と、薬学的に許容できるアニオン、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸のような無機酸;酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸のような有機炭酸;またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸のようなスルホン酸を含有する非毒性酸付加塩を形成することが可能な酸との酸付加塩を挙げることができる。具体的には、薬学的に許容できるカルボン酸塩の例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩、リジン、アルギニン、およびグアニジンのようなアミノ酸との塩、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジエタノールアミン、コリンおよびトリエチルアミンのような有機塩との塩が挙げられる。本発明の式1の化合物は、当該技術分野において周知の従来の方法によって、その塩に変換することができる。
【0023】
本明細書において使用する用語「溶媒和物」は、非共有分子間力によって結合した化学量論的若しくは非化学量論的量の溶媒を更に含む本発明の化合物またはその塩を意味する。好適な溶媒は、揮発性、非毒性、および/またはヒトへの投与に許容可能である。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物を指す。
【0024】
本明細書において使用する用語「異性体」は、同じ化学式または分子式を有するが、光学的または立体的に異なる本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0025】
他で特定しない限り、用語「式1若しくは2の化合物」または「ナフトキノン系化合物」は、化合物自体、および薬学的に許容できるその塩、溶媒和物および異性体を包含することが意図される。
【0026】
本明細書において使用する用語「アルキル」は、不飽和を伴わずに炭素および水素を含有するラジカルを指す。アルキルラジカルは、直鎖であってもよく、または分岐していてもよい。アルキルラジカルの例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、t−ブチルおよびsec−ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
低級アルキルは、C〜C10アルキル(例えば、その直鎖または分岐アルキル主鎖において1〜10個の炭素原子を有するアルキル)である。アルキルは、場合により置換することができる。置換する場合、アルキルを、任意の特定の結合点(任意の炭素原子)において、4個以下の置換基として置換することができる。
【0028】
一方、アルキルが別のアルキル基によって置換される場合、それは、「分岐アルキル」と同じ意味として使用し得る。
【0029】
用語「アルケニル」は、長さおよび置換可能性のような上記のアルキルに類似するが、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含有する不飽和脂肪族を意味する。
【0030】
例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、分岐アルケニル、シクロアルケニル(脂環式化合物、例えば、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニルによって置換されるシクロアルケニル、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニルによって置換されるアルケニルを含む。用語「アルケニル」はまた、酸素、窒素、イオウまたはリンによって置換された1つ以上のカーボハイドロゲン主鎖の炭素原子を有する更なるアルケニル基を含む。具体例として、直鎖または分岐アルケニル基は、その主鎖において6個以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC〜C、分岐鎖ではC〜C)を有する。同様に、シクロアルケニルは、環系に3〜8個の炭素原子、より好ましくは、5〜6個の炭素原子を有し得る。
【0031】
用語「アルキニル」は、長さおよび置換可能性のような上記のアルキルに類似するが、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含有する不飽和脂肪族を意味する。例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、分岐アルキニル(アルキルまたはアルケニルによって置換されるアルキニルを含む)およびシクロアルキルまたはシクロアルケニルによって置換されるアルキニルを含む。用語「アルキニル」はまた、酸素、窒素、イオウまたはリンによって置換された1つ以上のカーボハイドロゲン主鎖の炭素原子を有する更なるアルキニル基を含む。具体例として、直鎖または分岐アルキニル基は、その主鎖において6個以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC〜C、分岐鎖ではC〜C)を有する。
【0032】
アルキル、アルキニルまたはアルケニルを置換する場合、それらは、ヒドロキシル、カルボキシレート、オキソ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、ハロアルキル(例えば、CClまたはCF)、アルキルオキシカルボニル(−C(O)R)、アルキルカルボニルオキシ(−OCOR)、カルバモイル(−NHCOOR−または−OCONHR−)、尿素(−NHCONHR−)、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、C〜Cアルキルチオ、アリールチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、アミノカルボニル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cシクロアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cシクロアルキルオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロシクリルのような置換基によって置換することができる。
【0033】
好ましくは、置換基は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニル、C〜C10アルキルアミノ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜C10アリールおよびC〜C10ヘテロアリールから選択される少なくとも1つのものである。
【0034】
用語「シクロアルキル」は、任意の別の結合もまたは共鳴二重結合も伴わない3〜15個の炭素原子、好ましくは、3〜8個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。シクロアルキルは、1〜4個の環を含んでもよい。シクロアルキルの例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびアダマンチルが挙げられる。シクロアルキルの置換基の例には、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルキルヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオールまたはC〜C10アルキルチオがある。
【0035】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、1つ以上の環炭素原子が、窒素(N)、イオウ(S)または酸素(O)のようなヘテロ原子で置換される炭素環基を意味し、そして飽和若しくは非飽和7〜11員環の二環式ヘテロ環または化学的に安定な非芳香属性3〜8員環の単環式ヘテロ環を意味し、そして縮合、スピロ、架橋を介して更なる環を形成してもよい。各ヘテロ環は、少なくとも1つの炭素原子および1〜4個のヘテロ原子からなる。ヘテロシクリルラジカルは、環内のいずれかの部分(any endocyclic ring)と結合して、安定な構造を生じる。好適なヘテロ環として、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソチアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジンおよびトリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロ環は、3〜7員環の単環式ヘテロ環、例えば、限定されないが、ピペリジニル、ピラニル、ピペラジニル、モルホリニル、チアモルホリニルおよびテトラヒドロフラニル、より好ましくは、5〜7員環の単環式ヘテロ環を含む。
【0036】
本明細書において使用する用語「アリール」は、共役パイ(π)電子系を有する少なくとも1つの環を有し、そして炭素環アリール(例えば、フェニル)およびヘテロ環アリール(例えば、ピリジン)基の両方を含む芳香族置換基を指す。本用語は、単環式または縮合多環(即ち、炭素原子の隣接する対を共有する環)基を含む。アリールは、炭素環化合物であってもよく、または場合により、その芳香環系において1〜4個のヘテロ原子(例えば、窒素(N)、イオウ(S)若しくは酸素(O))を有してもよい。
【0037】
アリールまたはヘテロアリールの例として、フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キナゾリニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル、フラニル、イミダゾリルおよびチオフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、置換基、限定されないが、例えば、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、C〜Cアルキルチオ、アリールチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、カルボキシレート、アミノカルボニル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cシクロアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cシクロアルキルオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールスルホニル、およびヘテロシクリルによって、場合により置換されていてもよい。
【0039】
本発明の式1または2の置換基R〜Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニルおよびC〜C10アルキルアミノから選択される1つ以上のものである置換基によって、場合により置換されていてもよい。更に、置換基R〜R10もまた置換されていてもよく、そして置換基は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニル、およびC〜C10アルキルアミノ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜C10アリール並びにC〜C10ヘテロアリールから選択される1つ以上のものである。
【0040】
用語「アルコキシ」は、−O−アルキル(ここで、アルキルは上記で定義されるとおりである)を意味する。アルコキシは、オキソ架橋を介して、主鎖のアリールまたはヘテロアリールに結合する。アルコキシは直鎖であってもよく、または分岐であってもよいが、直鎖の方が好適である。例えば、メトキシ、エチルオキシ、プロポキシ、ブチルオキシ、t−ブチルオキシまたはi−プロポキシが含まれる。好適なアルコキシは1〜4個の炭素原子を含む;特に好適なアルコキシは1〜3個の炭素原子を含む。
【0041】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、VIIa属の元素、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br)、フッ素(F)、ヨウ素(I)を含む。
【0042】
用語「アミン」または「アミノ」は、1つ以上の炭素またはヘテロ原子と共有結合した窒素原子を有する化合物を含む。
【0043】
本発明の化合物のうち、以下の表1の化合物が特に好ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【0045】
ナフトキノン系化合物は疎水性物質であり、そして粗薬物から抽出、単離および精製してもよく、またはそうでなければ有機合成によって合成してもよい。ナフトキノン系化合物が結晶状態で存在する場合、それは、水に対する溶解性を実質的に示さない。
【0046】
これに対し、本発明のナフトキノン系化合物を微粒化すると、薬物化合物の溶解度を有意に増加させることができ、結果的に、それらのインビボ吸収率が改善される。
【0047】
ナフトキノン系化合物は、上記のように、水に対して低い溶解度を示す。本明細書において使用する用語「水に対して低い溶解度」は、化合物が、中性または酸性の水溶液において10mg/mL以下、より好ましくは、1mg/mL以下の溶解度を有することを意味する。
【0048】
本発明のナフトキノン系化合物では、有効成分は、高い程度の結晶度を伴う結晶構造を有してもよく、または低い程度の結晶度を伴う結晶構造を有してもよい。好ましくは、有効成分は低い結晶化度を伴う結晶構造からなり、これにより、式1または2の化合物の低い溶解度に関連する問題を解決し、そしてそれらの溶解度を増加させることができる。本明細書において使用する用語「低い程度の結晶度」は50%以下の結晶度を指し、そして材料の固有な結晶度が完全に消失した非晶質構造を包含する。
【0049】
好ましくは、本発明の組成物は、乾燥剤を更に含んでなり得る。乾燥剤を組み入れると、ナフトキノン系化合物の再結晶を経時的に阻害し、従って、粒子の微粒化による薬物化合物の溶解度の増加を維持することが可能である。後に例示するように、これらの事実は、ケイ酸カルシウムを組成物に添加することにより、体重の有意な消失がもたらされることを示す実施例9から明確に確認することができる。更に、乾燥剤は、医薬組成物のフロキュレーションおよび凝集を抑制する役割を果たす一方、ナフトキノン系化合物の治療効果に有害な影響を及ぼすことがない。
【0050】
乾燥剤の好適な例として、コロイダルシリカ、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸カリウム、アルミノケイ酸カルシウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの材料は、単独またはそれらの任意の組み合わせで使用し得る。
【0051】
乾燥剤の添加は、組成物調製プロセスのいずれの工程において行ってもよい。例えば、乾燥剤は、ナフトキノン系化合物の微粒化プロセス中に添加してもよく、またはそうでなければ、組成物の調製プロセス中に添加してもよい。
【0052】
本明細書において使用する用語「微粒化粒子」は、粒度が1000μm以下である粒子を意味し、そしてナノ粒子およびマイクロ粒子を包含する。用語「ナノ−」は1〜1000nmの範囲として定義され、そして「マイクロ−」は1〜1000μmの範囲として定義される。粒子、好ましくは、球体または中空を伴う粒子の形態は、特に制限されない。
【0053】
本発明の微粒化粒子の粒径を減少させると、比表面積が増加し、それによって溶解率および溶解度が増加する。しかし、粒径が過度に小さいと、そのようなサイズを有する細密な粒子を調製することが困難になり、そしてまた溶解度の悪化を生じ得る粒子の凝塊形成または凝集が生じ得る。
【0054】
従って、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子の粒度は、90%以上の粒子の平均粒子径(X90)が30μm以下、より好ましくは、1mm〜20μm、そして特に好ましくは、1nm〜10μmである場合が望ましい。別の実施形態では、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子の粒度は、50%以上の粒子の平均粒子径(X50)が10μm以下、より好ましくは、1mm〜5μm、そして特に好ましくは、1nm〜3μmである場合が望ましい。
【0055】
更に、微粒化粒子は、均等な溶解度を考慮すると、狭い分布の粒径を有する場合が好ましい。望ましい例では、90%以上の微粒化粒子が、平均粒径から10%範囲内、好ましくは、平均粒径から5%の範囲内、特に、平均粒径から2%の範囲内にある。
【0056】
本明細書において使用する用語「直径」、「粒径」および「平均粒子径」は、個数基準平均粒径を意味する。
【0057】
本明細書において使用するように、微粒化ナフトキノン系化合物は、化合物のみの微粒化形態、および化合物の混合物の微粒化形態、および界面活性剤のような添加物を含むことが意図される。
【0058】
本発明は、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子による罹患した動物の治療を介して、薬物のバイオアベイラビリティの増加による薬物の活性および治療効果を提示する。
【0059】
好ましくは、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子の調製のための粒子微粒化方法は、ミリング、沈殿、高圧均質化、および超臨界微粒化を含み得る。これらの方法は、極めて細かく分割した粒子を得るために、単独で使用してもよく、またはそれらの任意の組み合わせで使用してもよい。
【0060】
ミリングは、強力な物理的な力を有効成分の粒子に適用することによって、有効成分を細かい粒子に粉砕する方法である。機械的ミリングは、ジェットミリング、ボールミリング、振動ミリング、ハンマーミリングなどのような多様なミリングプロセスを使用することによって、行ってもよい。40℃以下の温度で空気圧を使用して行うことができるジェットミリングが、特に好適である。
【0061】
好ましくは、界面活性剤を更に添加して、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子の調製中に生じ得る粒子の凝塊形成または凝集を防止してもよい。界面活性剤の添加の時間を、特に制限するものはない。例えば、界面活性剤は、微粒化プロセス前、中および/または後に混合してもよい。
【0062】
これらの上記の一連のプロセスを介して、本発明者は、ナフトキノン系化合物のようなやや溶けにくい薬物を微小粒子に容易に粉砕することができたが、これは、従来のミリング方法だけでは、達成することが困難であった。更に、界面活性剤を組み入れることによって、より細かい粒度により効率的に微粒化することができ、粒子の相互作用による凝塊形成および凝集に関与せず、そして粒子の封入またはカプセル化を必要としない、小サイズ化された、安定かつ容易に分散可能なナフトキノン系化合物が生成される。更に、ナフトキノン系化合物のそのようにして調製された微粒化粒子は、僅かな量の界面活性剤を含有するため、そのような粒子は、安定な懸濁液またはエマルジョンを形成するために水に比較的容易に分散可能であり、吸収率の増加を認めることができ、そして経口用調製物に処方することができる。従って、有効成分として同じ量のナフトキノン系化合物を使用したとき、そのようにして処方された経口用調製物は、他の投与処方物と比較して、比較的上位のバイオアベイラビリティを発揮することができる。
【0063】
本発明において、界面活性剤は、ナフトキノン系化合物表面に化学的に結合する材料を除く、ナフトキノン系化合物の表面に物理的に結合する材料であり、そして乳化剤およびポリマーを含む従来の薬学的処方に使用されるビヒクルを包含する概念である。好ましくは、界面活性剤は、当該技術分野において公知の有機性薬物ビヒクルであってもよく、または無機性薬物ビヒクルであってもよく、そして例えば、高分子量のポリマー、低分子量のオリゴマー、および天然に存在する界面活性剤を含んでもよい。
【0064】
乳化剤に特に制限はなく、例えば、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル−セリン、ホスファチジルイノシトール、それらの誘導体のような脂質;ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ソルビタンのような脂肪酸のエステル誘導体;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)、モノラウリン酸ソルビタン(Span20)、モノラウリン酸ソルビタン(Span20)、モノステアリン酸ソルビタン(Span60)、モノオレイン酸ソルビタン(Span80)などのようなソルビタンベースの乳化剤がある。
【0065】
界面活性剤として、カゼイン、ゼラチン、リン脂質、トラガント、レシチン、アカシアガム、コレステロール、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリンカルシウム、モノステアリン酸グリセリル、天然のリン脂質、蝋、腸溶性樹脂、パラフィン、アカシアのような天然に存在する界面活性剤;ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ソルビタンエステル、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポロキサマー、ポロキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶セルロース、合成リン脂質のような非イオン性界面活性剤;ラウリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、硫酸アルキルポリオキシエチレン、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、負に荷電したホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシット、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、負に荷電したグリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムのようなアニオン性界面活性剤;および第四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジル−アンモニウム、コロイド粘土、ベントナイト、ビーガム、天然の合成リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵またはダイズリン脂質のようなカチオン性界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されない。界面活性剤の好適な例として、ラウリル硫酸ナトリウム、リン酸化脂質、ケイ酸カルシウム、キトサン、またはパルミチン酸スクロースを挙げることができる。
【0066】
界面活性剤の含有量は、ナフトキノン系化合物および界面活性剤の全重量に基づいて、好ましくは、0.1〜50%、より好ましくは、0.5〜30%、そして特に好ましくは、0.5〜15%の範囲であり得る。
【0067】
微粒化粒子のサイズは、粉砕時間または界面活性剤含有量を制御することによって、調整してもよい。
【0068】
上記の粉砕プロセスを使用して、粒子の縮小を行う場合、好ましくは、微粒化プロセスを冷蔵条件下で行って、粒度成長および粒子凝集を減少させてもよい。更に、粒度成長および粒子凝集は、低温での微粒化粒子の貯蔵によって、最小限にすることができる。
【0069】
一方、水溶液は、直接乾燥、またはビヒクルに対するスプレーコーティング、または流動床スプレーコーターを使用するビヒクルに対するスプレーによって、乾燥してもよい。
【0070】
必要であれば、医薬組成物は、水溶性ポリマーおよび/または溶解剤を更に含んでなり得る。
【0071】
水溶性ポリマーは、式1または2の化合物の分子或いは粒子の周囲を親水性にして、結果的に水溶性を増強し、そして好ましくは、有効成分としての式1または2の化合物の非晶質状態を維持することによって、粒子の有効成分の凝集を防止することを援助する。
【0072】
好ましくは、水溶性ポリマーはpH依存的ポリマーであり、そして胃腸pHの個体間および個体内のばらつき下であっても、有効成分の結晶殿消失および親水性の増強を生じ得る。
【0073】
水溶性ポリマーの例として、セルロース誘導体、ポリビニルベースのポリマー、ポリグリコールベースのポリマー、ポリアルケンオキシド、ポリアルケングリコール、メタクリル酸−エチルアクリレートコポリマー、トウモロコシタンパク質抽出物、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ペクチン、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ゲランガム、アラビアガム、シェラックなどを挙げることができる。
【0074】
水溶性ポリマーの含有量が所与のレベルより過度に高くなると、溶解度の更なる増加は認められないが、溶出剤への暴露時に水溶性ポリマーが過度に膨潤するため、処方物の周りにフィルムが形成されることによって、処方物の硬さが全体的に増加すること、および溶出剤が処方物に浸透しないことのような様々な問題が不利に生じる。従って、好ましくは、溶解剤を添加して、ナフトキノン系化合物の物理特性を改変することによって、処方物の溶解度を最小限にする。
【0075】
この点に関して、溶解剤は、やや溶けにくい化合物の可溶化および湿潤性を増強する役割を果たし、そして食事、および食事摂取後の薬物投与の時間差に由来するナフトキノン系化合物のバイオアベイラビリティのばらつきを有意に減少させることができる。溶解剤は、従来の広範に使用される界面活性剤または両親媒性物質から選択してもよく、そして溶解剤の具体例として、上記で定義した界面活性剤を参照にし得る。
【0076】
崩壊促進剤は、薬物放出速度を改善するのに役立ち、そして標的部位における薬物の迅速な放出を可能にして、それによって、薬物のバイオアベイラビリティを増加させることが可能である。崩壊促進剤の好適な例として、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよび低置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つのものを挙げることができるが、これらに限定されない。クロスカルメロースナトリウムが好適である。
【0077】
上記の様々な要因を考慮すると、有効成分の100重量部に基づいて、10〜1000重量部の水溶性ポリマー、1〜30重量部の崩壊促進剤、および0.1〜20重量部の溶解剤を添加するのが好適である。
【0078】
必要であれば、上記の成分に加えて、処方物に関連して当該技術分野において公知の他の材料も場合により添加してよい。
【0079】
必要であれば、更に、医薬組成物は、薬学的に許容できるキャリア、希釈剤、ビヒクルまたはそれらの任意の組み合わせを更に含んでなり得る。乾燥剤の添加において例示されるように、これらの付随的成分もまた、様々な工程において添加し得る。
【0080】
用語「キャリア」は、細胞または組織への化合物の組みいれを容易にする化学化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞または組織への多くの有機化合物の取り込みを容易にするため、一般的に利用されるキャリアである。
【0081】
用語「希釈剤」は、目的の化合物を溶解し、そして化合物の生物学的に活性な形態を安定化する水に希釈される化学化合物を定義する。緩衝化溶液に溶解される塩は、当該技術分野において希釈剤として利用される。リン酸緩衝食塩水(PBS)はヒト体液のイオン強度条件を模倣するため、これは、1つの一般的に使用される緩衝溶液である。緩衝液塩は、低濃度で溶液のpHを制御することができるため、緩衝液希釈剤が、化合物の生物活性を改変することは稀である。
【0082】
キャリアの種類は特に制限されないが、キャリアは、所望される処方物に依存して、当該技術分野において従来使用される好適なもの、例えば、デンプン、ラクトース、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプンおよび無機塩のような個体キャリア;蒸留水、生理食塩水、グルコース水溶液のような液体キャリア、エタノール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールのようなアルコール;並びに様々な動物および植物油、白色ワセリン、パラフィンおよび蝋のような油性キャリアからなる群から選択される少なくとも1つのものであってもよい。
【0083】
ビヒクルの例として、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはセルロース材料、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)を挙げることができる。
【0084】
好ましくは、本発明の組成物は、1つ以上の化粧品若しくは食品に許容できるキャリアまたはビヒクルを含有する組成物に処方することができる。即ち、組成物は、化粧品または化粧品添加物、飲料若しくは飲料添加物、食品若しくは食品添加物、または機能性健康食品の形態で処方物に調製することができる。
【0085】
本明細書において使用する用語「機能性健康食品」は、本発明の組成物を一般の食品に添加して、それによってその機能を改善する食品を指す。この目的のために、本発明の組成物は、一般の食品に添加してもよく、またはカプセル、粉末、懸濁液などの形態で調製してもよい。本発明の組成物を含有するそのような機能性健康食品の摂取は、健康に有益な効果をもたらし、そして食品が原材料として使用されるため、従来の薬物とは異なり、薬物の長期投与時に生じ得る有害な副作用が認められないという利点がある。
【0086】
食品添加物として本発明の組成物を使用することを所望する場合、組成物を単独で添加してもよく、またはそうでなければ、他の食品若しくは食品成分と共同して使用してもよく、または任意の従来の方法に従って適切に使用してもよい。有効成分の混合量は、所望する用途および適用(予防、健康または治療的処置)に依存して適切に決定してもよい。上記の食品の種類に特に制限はない。
【0087】
化粧品の原材料として本発明の組成物を使用することを所望する場合、組成物を、それ自体で添加することができるか、または他の化粧品成分と共同して使用することができるか、または他の従来の方法に従って、適切に使用してもよい。有効成分の混合量は、その使用の目的に依存して、適切に決定してもよい。
【0088】
本発明に従う医薬組成物は、好ましくは、腸を標的にした処方物に調製される経口医薬組成物であってもよい。
【0089】
一般的に、経口医薬組成物は、経口投与時に胃を通過し、主として小腸で吸収され、次いで、進退のすべての組織に拡散され、それによって標的組織に治療効果を及ぼす。
【0090】
これに関して、本発明の経口医薬組成物は、有効成分の腸を標的にした処方物を介する有効成分として、式1または2の化合物の生体吸収およびバイオアベイラビリティを増強する。より具体的には、本発明の医薬組成物の有効成分が主として胃および小腸の上部において吸収される場合、身体に吸収された有効成分は、肝臓の代謝を直接受けて、次いで、有効成分の実質的な分解に至るため、所望するレベルの治療効果を発揮することが不可能である。これに対し、有効成分が主に小腸下部の周囲および下流で吸収される場合、吸収された有効成分は、リンパ管を介して標的組織に移動して、それによって高い治療効果を発揮することが予想される。
【0091】
更に、本発明の医薬組成物が消化プロセスの最終目的である結腸を標的にするようにそれを構築する場合、薬物のインビボ保持時間を増加させることが可能であり、そしてまた、薬物の身体への投与時の身体での代謝により生じ得る薬物の分解を最小限にすることが可能である。結果として、疾患の治療に必要な有効成分の臨界有効量(critical effective dose)を有意に低下させるために薬物の薬物動態特性を改善し、そして微量の有効成分の投与であっても所望される治療効果を得ることが可能である。更に、経口医薬組成物では、胃内のpHの変化および食事の取り込みパターンから生じ得るバイオアベイラビリティの個体間および個体内のばらつきを減少させることによって、薬物の吸収のばらつきを最小限にすることもまた可能である。
【0092】
従って、本発明の腸を標的にした処方物は、有効成分が、主に小腸および大腸、より好ましくは、空腸、並びに小腸下部に対応する回腸および結腸、特に好ましくは、回腸または結腸において吸収されるように構成される。
【0093】
腸を標的にした処方物は、多様な方法を介して消化管の多数の生理学的パラメータを利用することによって、設計し得る。本発明の1つの好適な実施形態では、腸を標的にした処方物は、(1)pH感受性ポリマーに基づく処方方法、(2)腸特異的細菌酵素によって分解可能な生分解性ポリマーに基づく処方方法、(3)腸特異的細菌酵素によって分解可能な生分解マトリックスに基づく処方方法、または(4)所与の遅延時間後の薬物の放出を可能にする処方方法、およびそれらの任意の組み合わせによって調製し得る。
【0094】
具体的には、(1)pH感受性ポリマーを使用する腸を標的にした処方物は、消化管のpH変化に基づく薬物送達システムである。胃のpHは1〜3の範囲であるが、小腸および大腸のpHは7以上の値を有し、胃のpHと比較して高い。この事実に基づいて、医薬組成物が消化管のpH変動の影響を受けることなく、腸の下部に到達することを確実にするために、pH感受性ポリマーを使用してもよい。pH感受性ポリマーの例として、メタクリル酸−エチルアクリレートコポリマー(Eudragit:Registered Trademark of Rohm Pharma GmbH)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのものを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0095】
好ましくは、pH感受性ポリマーは、コーティングプロセスによって添加してもよい。例えば、ポリマーの添加は、溶媒中でポリマーを混合して、水溶性コーティング懸濁液を形成させ、得られるコーティング懸濁液をスプレーして、フィルムコーティングを形成させ、そしてフィルムコーティングを乾燥することによって、行ってもよい。
【0096】
腸特異的細菌酵素によって分解可能な生分解性ポリマーを使用する腸を標的にした処方物(2)は、腸内細菌によって産生させることができる特異的酵素の分解能の利用に基づく。特異的酵素の例として、アゾ還元酵素、細菌のヒドロラーゼ、グリコシダーゼ、エステラーゼ、ポリサッカリダーゼなどを挙げることができる。
【0097】
標的としてアゾ還元酵素を使用する腸を標的にした処方物を設計することを所望する場合、生分解性ポリマーは、アゾ芳香族連結を含有するポリマー、例えば、スチレンおよびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のコポリマーであってもよい。ポリマーを有効成分を含有する処方物に添加する場合、腸内細菌、例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)およびユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum)によって特異的に分泌されるアゾ還元酵素の作用を介するポリマーのアゾ基の還元によって、有効成分を腸に放出してもよい。
【0098】
標的としてグリコシダーゼ、エステラーゼ、またはポリサッカリダーゼを使用して、腸を標的にした処方物を設計する場合、生分解性ポリマーは、天然に存在する多糖またはその置換誘導体であってもよい。例えば、生分解性ポリマーは、デキストランエステル、ペクチン、アミラーゼ、エチルセルロースおよびその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つのものであってもよい。ポリマーを有効成分に添加する場合、腸内細菌、例えば、ビフィズス菌(Bifidobacteria)およびバクテロイデス属(Bacteroides spp.)によって特異的に分泌される各酵素の作用を介するポリマーの加水分解によって、有効成分を腸に放出させてもよい。これらのポリマーは、天然の材料であり、そしてインビボでの毒性の危険性が低い利点を有する。
【0099】
腸特異的細菌酵素によって分解可能な生分解性マトリックスを使用する腸を標的にした処方物(3)は、生分解性ポリマーが相互に架橋し、そして有効成分または有効成分含有処方に添加される形態であってもよい。生分解性ポリマーの例として、コンドロイチン硫酸、グァーガム、キトサン、ペクチンなどのような天然に存在するポリマーを挙げることができる。薬物放出の程度は、マトリックスを構成するポリマーの架橋の程度に依存して変動し得る。
【0100】
天然に存在するポリマーに加えて、生分解性マトリックスは、N−置換アクリルアミドに基づく合成ハイドロゲルであってもよい。例えば、マトリックスとして、N−tert−ブチルアクリルアミドとアクリル酸との架橋、または2−ヒドロキシエチルメタクリレートと4−メタクリロイルオキシアゾベンゼンとのコポリマー化によって合成されるハイドロゲルを使用してもよい。架橋は、例えば、上記のような、アゾ連結であってもよく、そして処方物は、腸の薬物送達に最適な条件を提供するために架橋が維持され、そして薬物が腸に送達される場合、腸粘膜と相互作用するために連結が分解される形態であってもよい。
【0101】
更に、遅延時間後の薬物の時間経過放出による腸を標的にした処方物(4)は、pH変化に関わらず、予め決定された時間後に有効成分を放出させる機構を利用する薬物送達システムである。有効な薬物の腸溶性放出を達成するために、処方物は、胃のpH環境に耐性であるべきであり、そして有効成分を腸へ放出する前の、身体から腸への薬物の送達に要する期間に対応する5〜6時間は、静穏期(silent phase)の状態であるべきである。時間特異的遅延放出処方物は、ポリエチレンオキシドとポリウレタンとのコポリマー化から調製されるハイドロゲルの添加によって、調製してもよい。
【0102】
具体的には、遅延放出処方物は、薬物を不溶性ポリマーに適用した後に上記の組成物を有するハイドロゲルを添加すると、処方物が胃内および小腸の消化管上部に滞留している間、処方物が水を吸収して膨潤し、次に、消化管下部である小腸の下部に移動してから薬物を放出するような構成を有してもよく、そして薬物の遅延時間は、ハイドロゲルの長さに依存して決定される。
【0103】
ポリマーの別の例として、遅延放出処方に、エチルセルロース(EC)を使用してもよい。ECは不溶性のポリマーであり、そして水の浸透による膨潤媒体の膨潤または蠕動運動による腸の内圧の変化に応答して、薬物放出時間を遅延するための因子としての役割を果たし得る。遅延時間は、ECの厚さによって制御され得る。更なる例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)はまた、ポリマーの厚さの制御による所与の期間後、薬物放出を可能にする遅延剤として使用してもよく、そして5〜10時間の遅延時間を有してもよい。
【0104】
活性成分としてのナフトキノン系化合物の微粒化粒子は、治療有効量まで含有することができ、ここで、用語「治療有効量」は、化合物が投与される場合、治療が必要な疾患の症状の1つ以上をある程度緩和若しくは減少させるか、または予防が必要な疾患の化学的マーカーまたは症状の開始を遅延するのに有効な有効成分の量を意味する。
【0105】
それ故、治療有効量は、(i)疾患の進行の速度を反転する;(ii)疾患の更なる進行をある程度阻害する;および/または(iii)疾患に伴う1つ以上の症状をある程度緩和する(または好ましくは、排除する)効果を示す有効成分の量を指す。治療が必要な疾患の既知のインビボおよびインビトロモデル系に関する化合物で実験することによって、治療有効量を実験的に決定してもよい。
【0106】
本発明の医薬組成物を単位剤形に処方する場合、好ましくは、有効成分の式Iの化合物は、約0.1〜5,000mgの単位用量で含有される。投与する化合物の量は、治療する患者の体重、および年齢、疾患の特徴的性質および重症度に依存して、担当医が決定する。しかし、成人の患者では、患者に投与しようとする有効成分の用量は、投与の回数および強度に依存するが、典型的に、1日あたり約1〜1000mg/kgの範囲内にある。成人患者への筋肉内または静脈内投与のために、単回用量として1日あたり計約1〜500mgが十分であり、好ましくは、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子が、1日あたり少なくとも10mgを超えて投与されるように設計され得る。
【0107】
本発明の医薬組成物は、代謝疾患、再狭窄、インポテンス、前立腺疾患、高血圧症、心疾患、腎疾患および緑内障、変性疾患、並びにミトコンドリア機能障害関連疾患の予防または治療に有効であり、ここで、代謝疾患として、肥満、肥満合併症、肝疾患、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、循環器系疾患、虚血性疾患、糖尿病、糖尿病関連合併症または炎症性疾患を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0108】
本発明のナフトキノン系化合物およびその治療効果については、特許出願に付与された次の番号:特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献14、特許文献15および特許文献16(これらの開示内容は、それらの全体が本明細書において参考として援用される)に開示されている。
【0109】
上記および他の目的、特徴並びに他の利点は、添付の図面とあわせて、後に記載の詳細な説明からより明確に理解されよう。図面について:
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】超臨界流体を使用した時の微粒化クリプトタンシノンの粒度分布を示す。
【図2】超臨界流体を使用する前の微粒化クリプトタンシノンの粒度分布を示す。
【図3】実施例15に従う時間経過に対する化合物1の微粒化粒子の溶解率の変化を示すグラフである。
【図4】実施例15に従う時間経過に対する化合物58抽出物の微粒化粒子の溶解率の変化を示すグラフである。
【図5】実施例15に従う時間経過に対する化合物5の微粒化粒子の溶解率の変化を示すグラフである。
【図6】実施例15に従う時間経過に対する化合物44および51の微粒化粒子の溶解率の変化を示すグラフである。
【図7】実施例16に従う時間経過に対する化合物1の微粒化粒子および顆粒化粒子の溶解率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0111】
これより、以下の実施例を参考に、本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するためのみに提供され、本発明の範囲および趣旨を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0112】
実施例1:超臨界微粒化を使用する化合物58(クリプトタンシノン)の微粒化粒子の調製
超臨界微粒化プロセスを開発するために、1〜100μmの粒度分布および30μmの平均粒度を有する5gのクリプトタンシノン、並びに0.5gのラウリル硫酸ナトリウムを、45mLの塩化メチレンに溶解した。その後、得られたクリプトタンシノンの塩化メチレン溶液を、1/16インチの直径を有するノズルオリフィスを介して、1〜2mL/分の流速で、30℃の温度、80バール、および2,000rpmに設定した反応容器に注入し、そして液化二酸化炭素を充填した一方、ISCOポンプを使用して、1/16インチの直径を有するノズルオリフィスを介し、10〜20mL/分の流速で二酸化炭素を注入した。
【0113】
反応容器において、不溶性溶媒として液体二酸化炭素溶液から小サイズ化粒子の沈殿物を回収するために、反応容器の15倍の容積の二酸化炭素を流し込んで残りの有機溶媒を取り出し、そして反応容器の圧力を低下させて、クリプトタンシノンの微粒化粒子を回収した。超臨界液体を使用した場合のクリプトタンシノンの微粒化粒子のサイズおよび超臨界微粒化の適用前の微粒化粒子のサイズを、それぞれ図1および2に示す。図1および2に示すように、95%を超える粒子は、0.1〜2μmの体積直径を有する粒子からなる。
【0114】
実施例2:Jet millを使用する化合物58(クリプトタンシノン)の微粒化粒子の調製
Jet mill(SJ−100,Nisshin,Japan)を使用して、クリプトタンシノンの微粒化を行った。0.65Mpaの供給圧、および50〜100g/時間の供給速度で操作を行った。0.2gのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)および10gのクリプトタンシノンを混合および粉砕した。微粒化粒子を回収し、そしてゼータ電位測定による粒径について、粒度を決定した。平均粒度は1500nmであった。
【0115】
実施例3:高圧ホモジナイザーを使用する化合物58(クリプトタンシノン)の微粒化粒子の調製
0.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウムと混合した15gのクリプトタンシノンを、600mLの水溶液に分散させ、次いで、Ultra−Turrax T25 Basicホモジナイザー(IKA−Werke GmbH,Germany)中、24,000rpmで10分間処理して、粒度分布を狭くした。まず、マイクロフルイダイザープロセッサ(M−110EH,Microfluidics Corporation)を介し、15℃および7,000psiでの低圧均質化の1または2回通過、それに続く、15,000psiにおける高圧均質化の3回通過によって、粒子のサイズを均質にした。すべての操作において、熱交換装置を使用して、装置の温度を15℃に維持した。クリプトタンシノンサンプルを回収し、次いで、粒度をアッセイした。サンプルのいくつかを、効力の評価に使用した。上記のマイクロフルイダイザーを通過した95%を超える粒子は、0.1〜2μmの体積直径を有する粒子からなった。
【0116】
実施例4:高圧ホモジナイザーを使用する化合物60(15,16−ジヒドロタンシノン)の微粒化粒子の調製
0.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウムと混合した15gの15,16−ジヒドロタンシノンを、600mLの水溶液に分散させ、次いで、Ultra−Turrax T25 Basicホモジナイザー(IKA−Werke GmbH,Germany)中、24,000rpmで10分間処理して、粒度分布を狭くした。まず、マイクロフルイダイザープロセッサ(M−110EH,Microfluidics Corporation)を介し、15℃および7,000psiでの低圧均質化の1または2回通過、それに続く、15,000psiにおける高圧均質化の3回通過によって、粒子のサイズを均質にした。すべての操作において、熱交換装置を使用して、装置の温度を15℃に維持した。15,16−ジヒドロタンシノンサンプルを回収し、次いで、粒度をアッセイした。サンプルのいくつかを、効力の評価に使用した。上記のマイクロフルイダイザーを通過した95%を超える粒子は、0.1〜2μmの体積直径を有する粒子からなった。
【0117】
実施例5:高圧ホモジナイザーを使用する化合物59(タンシノンIIA)の微粒化粒子の調製
0.2%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウムと混合した15gのタンシノンIIAを、600mLの水溶液に分散させ、次いで、Ultra−Turrax T25 Basicホモジナイザー(IKA−Werke GmbH,Germany)中、24,000rpmで10分間処理して、粒度分布を狭くした。まず、マイクロフルイダイザープロセッサ(M−110EH,Microfluidics Corporation)を介し、15℃および7,000psiでの低圧均質化の5回通過、それに続く、24,000psiにおける高圧均質化の50回通過によって、粒子のサイズを均質にした。すべての操作において、熱交換装置を使用して、装置の温度を15℃に維持した。タンシノンIIAサンプルを回収し、次いで、粒度をアッセイした。サンプルのいくつかを、効力の評価に使用した。上記のマイクロフルイダイザーを通過した95%を超える粒子は、0.1〜2μmの体積直径を有する粒子からなった。
【0118】
実施例6:動物に対する化合物58(クリプトタンシノン)の微粒化粒子の効果
実施例1〜3の手順に従って、1gのクリプトタンシノンの単純に粉砕した粉末、および1gのクリプトタンシノン化合物の各微粒化粒子を、10mLの蒸留水と混合し、そして得られた混合物を、超音波処理装置中で30分間処理して、クリプトタンシノン化合物の懸濁液を調製した。クリプトタンシノン含有量が400mg/kgのこれらの懸濁液を、ob/obマウスに1日1回投与し、そして動物の体重(BW)の変化を調べた。
【0119】
この目的のために、2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢のob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化させた動物を、無作為に5つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:ラウリル硫酸ナトリウム(10mg/kg)の投与を伴うコントロール群、クリプトタンシノン(400mg/kg)の単純に粉砕した粉末の投与を伴う群、超臨界微粒化に供されたクリプトタンシノンの投与を伴う群(実施例1)、ジェットミル粉砕したクリプトタンシノンの投与を伴う群(実施例2)、およびマイクロフルイダイザーでミリング粉砕したクリプトタンシノンの投与を伴う群(実施例3)。各群の動物に、400mg/kgの薬物サンプルを経口的に(PO)投与した。動物に、固形飼料ペレットおよび水を自由に摂取させた。動物の体重の変化の結果を、以下の表1に示す。表1から分かるように、クリプトタンシノンの微粒化粒子の各投与は、単純に粉砕したクリプトタンシノン粉末を投与した群と比較して、微粒化方法および装置にかかわらず、同じ用量の化合物において有意な体重の減少を示したことが確認された。
【0120】
【表2】

【0121】
実施例7:様々な用量のクリプトタンシノンの微粒化粒子による薬物の治療有効量の決定
25mg/kg、50mg/kgおよび100mg/kgにおけるJet mill−微粒化クリプトタンシノンと0.2%(w/w)ラウリル硫酸ナトリウムとの混合物からなる処方物のそれぞれを、4週間の高脂肪の食餌によって肥満を生じさせたDIO(食餌誘導性肥満)SDラットに、連日28日間、投与した。コントロールとして、0.2%の濃度の界面活性剤SLSを蒸留水に懸濁し、次いで、懸濁液を動物に投与した。結果として、以下の表3から分かるように、コントロール群と比較して、体重の有意な減少が確認され、そして体重の減少は濃度依存的であった。
【0122】
【表3】

【0123】
実施例8:クリプトタンシノンの微粒化粒子の効力の増強に対するリン脂質の効果
リン脂質であるホスファチジルコリン(PC)が、クリプトタンシノンの微粒化粒子の粒度を維持し、粒子の凝塊形成または凝集を防止し、そしてクリプトタンシノンの治療効力を増強するかどうかを確かめるために、以下のような動物実験を行った。
【0124】
この目的のために、5週齢のC57BL/6雄性マウスを、Orient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物高脂肪の食餌を8週間、供給することによって、DIO(食餌誘導性肥満)マウスモデルを確立した。体重40gの13週齢の雄性マウスを実験に使用した。実験動物用の食餌として、動物に高脂肪の飼料(45kcal%脂肪)(D12451,Research Diets Inc.,New Brunswick,NJ)を与えた。DIOマウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化させた動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:何ら薬物サンプルの投与を伴わないコントロール群、ビヒクル(PC)のみの投与を伴う群、クリプトタンシノン(150mg/kg)の投与を伴う群、およびクリプトタンシノン(150mg/kg)+PCの投与を伴う群。各群の動物に、薬物サンプルを経口的に(PO)40日間、投与した。動物に、自由に、固形飼料ペレットおよび水を摂取させた。
【0125】
【表4】

【0126】
表4から分かるように、クリプトタンシノンとホスファチジルコリン(PC)との組み合わせを投与した群では、コントロール群、ビヒクル投与群およびクリプトタンシノン投与群と比較して、有意な体重の減少が認められたことが確認された。
【0127】
実施例9:クリプトタンシノンの微粒化粒子の効力の増強に対するケイ酸カルシウムの効果
ケイ酸カルシウムが、クリプトタンシノンの微粒化粒子の粒度を維持し、粒子の凝塊形成または凝集を防止し、そしてクリプトタンシノンの治療効力を増強するかどうかを確かめるために、以下のような動物実験を行った。
【0128】
2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢ob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化された動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:何ら薬物サンプルの投与を伴わないコントロール群、ビヒクル(ケイ酸カルシウム)のみの投与を伴う群、クリプトタンシノン(400mg/kg)の投与を伴う群、およびクリプトタンシノン(400mg/kg)+ケイ酸カルシウムの投与を伴う群。各群の動物に、飼料と混合した薬物サンプルを20日間、投与した。研究期間全体をとおして、すべての動物に、水および標準的な実験動物用の食餌を自由に摂取させた。
【0129】
動物の体重の変化の結果を、以下の表5に示す。表5から分かるように、クリプトタンシノンとケイ酸カルシウムとの組み合わせを投与した群では、コントロール群、ビヒクル投与群およびクリプトタンシノン投与群と比較して、有意な体重の減少が認められたことが確認された。
【0130】
【表5】

【0131】
実施例10:クリプトタンシノンの微粒化粒子の効力の増強に対するキトサンの効果
キトサンが、クリプトタンシノンの微粒化粒子の粒度を維持し、粒子の凝塊形成または凝集を防止し、そしてクリプトタンシノンの治療効力を増強するかどうかを確かめるために、以下のような動物実験を行った。
【0132】
2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢ob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化された動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:何ら薬物サンプルの投与を伴わないコントロール群、ビヒクル(キトサン)のみの投与を伴う群、クリプトタンシノン(400mg/kg)の投与を伴う群、およびクリプトタンシノン(400mg/kg)+キトサンの投与を伴う群。各群の動物に、飼料と混合した薬物サンプルを20日間、投与した。研究期間全体をとおして、すべての動物に、水および標準的な実験動物用の食餌を自由に摂取させた。
【0133】
動物の体重の変化の結果を、以下の表6に示す。表6から分かるように、クリプトタンシノンとキトサンとの組み合わせを投与した群では、コントロール群、ビヒクル投与群およびクリプトタンシノン投与群と比較して、有意な体重の減少が認められたことが確認された。
【0134】
【表6】

【0135】
実施例11:クリプトタンシノンの微粒化粒子の効力の増強に対するパルミチン酸スクロースの効果
乳化剤であるパルミチン酸スクロースが、クリプトタンシノンの微粒化粒子の粒度を維持し、粒子の凝塊形成または凝集を防止し、そしてクリプトタンシノンの治療効力を増強するかどうかを確かめるために、以下のような動物実験を行った。
【0136】
2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢ob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化された動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:何ら薬物サンプルの投与を伴わないコントロール群、ビヒクル(パルミチン酸スクロース)のみの投与を伴う群、クリプトタンシノン(400mg/kg)の投与を伴う群、およびクリプトタンシノン(400mg/kg)+パルミチン酸スクロースの投与を伴う群。各群の動物に、飼料と混合した薬物サンプルを20日間、投与した。研究期間全体をとおして、すべての動物に、水および標準的な実験動物用の食餌を自由に摂取させた。
【0137】
動物の体重の変化の結果を、以下の表7に示す。表7から分かるように、クリプトタンシノンとパルミチン酸スクロースとの組み合わせを投与した群では、コントロール群、ビヒクル投与群およびクリプトタンシノン投与群と比較して、有意な体重の減少が認められたことが確認された。
【0138】
【表7】

【0139】
実施例12:動物に対する15,16−ジヒドロタンシノンの微粒化粒子の効果
15,16−ジヒドロタンシノンの微粒化粒子の治療効力を確認するために、以下のような動物実験を行った。
【0140】
この目的のために、2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢のob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化された動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:何ら薬物サンプルの投与を伴わないコントロール群、ビヒクル(ラウリル硫酸ナトリウム)のみの投与を伴う群、15,16−ジヒドロタンシノン(マイクロ粒子化前、400mg/kg)+ラウリル硫酸ナトリウムの投与を伴う群、および15,16−ジヒドロタンシノン(400mg/kg)+ラウリル硫酸ナトリウムの微粒化粒子の投与を伴う群。各群の動物に、飼料と混合した薬物サンプルを20日間、投与した。研究期間全体をとおして、すべての動物に、水および標準的な実験動物用の食餌を自由に摂取させた。
【0141】
動物の体重の変化の結果を、以下の表8に示す。表8から分かるように、15,16−ジヒドロタンシノンの微粒化粒子とラウリル硫酸ナトリウムとの組み合わせを投与した群では、コントロール群、ビヒクル投与群および15,16−ジヒドロタンシノンの非微粒化粒子投与群と比較して、有意な体重の減少が認められたことが確認された。
【0142】
【表8】

【0143】
実施例13:動物に対するタンシノンIIAの微粒化粒子の効果
タンシノンIIAの微粒化粒子の治療効力を確認するために、以下のような動物実験を行った。
【0144】
この目的のために、2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢のob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化された動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:何ら薬物サンプルの投与を伴わないコントロール群、ビヒクル(ラウリル硫酸ナトリウム)のみの投与を伴う群、タンシノンIIA(マイクロ粒子化前、400mg/kg)+ラウリル硫酸ナトリウムの投与を伴う群、およびタンシノンIIA(400mg/kg)+ラウリル硫酸ナトリウムの微粒化粒子の投与を伴う群。各群の動物に、飼料と混合した薬物サンプルを20日間、投与した。研究期間全体をとおして、すべての動物に、水および標準的な実験動物用の食餌を自由に摂取させた。
【0145】
動物の体重の変化の結果を、以下の表9に示す。表9から分かるように、タンシノンIIAの微粒化粒子とラウリル硫酸ナトリウムとの組み合わせを投与した群では、コントロール群、ビヒクル投与群およびタンシノンIIAの非微粒化粒子投与群と比較して、有意な体重の減少が認められたことが確認された。
【0146】
【表9】

【0147】
実施例14:動物に対する化合物1(β−ラパコン)の微粒化粒子の腸を標的にした処方物の効果
β−ラパコンの微粒化粒子を、腸を標的にした薬物送達システムの処方物に調製した場合のβ−ラパコン{7,8−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト(2,3−b)ジヒドロピラン−7,8−ジオン}の治療効力を確認するために、以下のような動物実験を行った。
【0148】
0.2gのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)および10gのβ−ラパコンを混合および粉砕した。得られた混合物に、β−ラパコンに対しておよそ等量の水溶性ポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、並びにクロスカルメロースナトリウムおよび軽質無水ケイ酸のようなビヒクルを添加し、続いて、スプレー乾燥を行った。次いで、スプレー乾燥生成物を、pH感受性ポリマーとして約20重量%のEudragit S−100および可塑剤として約2重量%のPEG#6,000を含有するエタノール溶液に添加し、次いで、混合物をスプレー乾燥して、腸を標的にした処方物を調製した。
【0149】
各処方物の効力を確認するために、β−ラパコン含有量が200mg/kgの処方物を、ob/obマウスに1日1回投与し、そして動物の体重(BW)の変化を調べた。
【0150】
この目的のために、2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週齢のob/ob雄性マウス(Jackson Lab)をOrient Co.,Ltd.,Koreaより購入し、そして実験の前に、10日間、飼育室の新たな環境に順応させた。動物に、実験動物用の食餌として、固形飼料(P5053,Labdiet)を与えた。ob/ob雄性マウスを収容し、そして22±2℃の温度、55±5%の湿度、および12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8:00〜午後8:00の明期)で維持した飼育室において、10日間、新たな環境に順応させた。乱塊法に従って、上記のように順応化された動物を、無作為に4つの群に分け、次の各群は、7匹の動物で構成された:ラウリル硫酸ナトリウム(10mg/kg)の投与を伴うコントロール群、β−ラパコン(200mg/kg)の単純に粉砕した粉末の投与を伴う群、ジェットミル粉砕したβ−ラパコンの投与を伴う群、およびミリングプロセスに供されたβ−ラパコンの腸を標的にした処方物の投与を伴う群。動物の各群に、200mg/kgの薬物サンプルを経口的に(PO)投与した。動物に、固形飼料ペレットおよび水を自由に摂取させた。動物の体重の変化の結果を、以下の表10に示す。
【0151】
【表10】

【0152】
表10から分かるように、腸を標的にした処方物の投与を伴う群は、体重の最大の減少(%)を示し、それ故、これは、優れたバイオアベイラビリティが得られることを表す。
【0153】
実施例15:溶解試験
溶解試験は、一般に以下の条件下で行った。
【0154】
溶解試験は、Korean Phramacopeiaのパドル法に従って行った。パドル速度は75rpmであり、流出液の温度は37℃であり、そして試験溶液は、pH6.8、1.5%Tween80の混合溶液であった。まず、試験溶液を、35μmのMembraneフィルターを通してろ過し、そして遠心分離を行った。上清の液体を採取し、そして薬物の含有量をHPLCによって分析し、そして放出した薬物の量を、異なる時点で測定した。溶解試験に使用した薬物は、表1に掲載の化合物1、5、44および51、および60wt%を超える化合物58(「化合物58抽出物」)を含有する特許文献28に記載の抽出物である。何ら界面活性剤を伴わずに、Jet millまたはボールミルを使用して、マイクロ粒子化を行った。化合物の粒度を、HELOS測定によって決定した。
【0155】
粒度測定のために細胞に約3mlのサンプルを入れ、そして1サンプルあたり60秒の間、粒度を測定することによって、粒度の測定を行った。微粒化の前および後の粒度を以下に示す。
【0156】
【表11】

【0157】
各化合物の微粒化の前および後の溶解率を、以下の表12に示す。表12において認められるように、すべての溶解率並びに溶解度は微粒化後に増加することが確かめられた。
【0158】
【表12】

【0159】
更に、溶解率の変化をそれぞれ異なる時点で測定し、そして結果を図3〜6に示す。
【0160】
図3〜6を参考にして、化合物1、5、58、44および51の微粒化粒子の溶解率は、微粒化前の溶解率と比較して有意に増加し、特に、化合物44および51並びに化合物58抽出物の微粒化粒子の溶解率は、150%を超えるまで増加した。
【0161】
実施例16:化合物1(β−ラパコン)の微粒化粒子の溶解率および顆粒化調製物の溶解率
5.4wt%の軽質無水ケイ酸、30.4wt%のクロスカルメロースナトリウム、および5.4wt%のラウリル硫酸ナトリウムをβ−ラパコンの微粒化粒子に添加し、次いで、均一に混合した。このように調製した混合物を6.25%HPMCエタノール溶液でコーティングし、次いで、10%HPMC/エタノール溶液で顆粒化した。
【0162】
上記で得られたβ−ラパコンの顆粒化調製物、および微粒化粒子の溶解率を図7に示す。実施例15と同じ様式で、溶解率を決定するための試験を行った。
【0163】
図7を参考にして、適切なアジュバントを使用して、微粒化粒子を顆粒化する場合、12時間まで溶解率は有意に変化しないが、溶解開始時間は短くなることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0164】
上記の説明から明らかなように、本発明は、代謝疾患の治療および予防に対して治療効果を有するやや溶けにくい物質である式1または2のナフトキノン系化合物の微粒化粒子を組み入れることで、水溶液または非極性溶媒における安定性および容易な分散性から生じる薬物の溶解度および生体吸収率の増強を介して、ナフトキノン系化合物のバイオアベイラビリティを増加させることにより、有効な薬物の利用可能性および効力を改善することができる。更に、ナフトキノン系化合物の微粒化粒子を含んでなる組成物は、経口用調製物に処方することができるため、本発明は、ナフトキノン系化合物の経口用製剤をはじめて提供する。
【0165】
例示を目的として、本発明の好適な実施形態について開示してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲において開示した本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な変更、付加および置換が可能であることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフトキノン系化合物の微粒化粒子を含んでなる医薬組成物であって、
前記ナフトキノン系化合物は、式1および2:
【化1】

[式中、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルコキシカルボニル、置換または非置換C〜C10アシル、置換または非置換C〜Cシクロアルキル、置換または非置換C〜C10アリール、置換または非置換−(CH−アリール、置換または非置換−(CH−ヘテロ環および置換または非置換−(CHn−10−フェニルであるか、或いはそれらのうちの2個の置換基が一緒になって、二重結合、或いは飽和または部分的若しくは完全に不飽和であり得る置換または非置換C〜C環状構造を形成してよく、ここで、置換基は、水素、ヒドロキシル、C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニルおよびC〜C10アルキルアミノからなる群から選択される少なくとも1つのものであってよく;
〜R10は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルキニル、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルコキシカルボニル、置換または非置換C〜C10アシル、置換または非置換C〜C10アリール、および置換または非置換−(CHn−10−フェニルであるか、或いはそれらのうちの2個の置換基が一緒になって、二重結合、或いは飽和または部分的若しくは完全に不飽和であり得る置換または非置換C〜C環状構造を形成してよく、ここで、置換基は、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルコキシカルボニル、C〜C10アルキルアミノ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cヘテロシクロアルキル、C〜C10アリールおよびC〜C10ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つのものであってよく;
Xは、O、SまたはNR’であり、ここで、R’は、水素若しくはC〜Cアルキルであり;
Yは、C、S、NまたはOであって、但し、YがS若しくはOである場合、RおよびR6は存在せず、YがNである場合、Rは水素若しくはC〜C低級アルキルであり、かつRは存在せず;
mは0若しくは1であって、但し、mが0である場合、mに隣接する炭素原子は直接結合を介して環状構造を形成し、そしてnは0〜10の整数である]
によって表される化合物、或いは薬学的に許容できるそれらの塩、溶媒和物または異性体から選択される1つ以上のものであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記XはOまたはSであり、YはCまたはOであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記式1の化合物は、式1−1または式1−2:
【化2】

[式中、R〜R10、Yおよびmは、請求項1に記載のとおりである]
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記式1の化合物は、式1−3〜式1−6:
【化3】

[式中、R〜R18、X、Yおよびmは、請求項1に記載のとおりである]
の化合物のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記R〜Rは、それぞれ、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、置換または非置換C〜C10アルキル、置換または非置換C〜C10アルケニル、置換または非置換C〜C10アルコキシおよび−(CH−フェニルからなる群から独立して選択されるか、或いはRおよびRまたはRおよびRが一緒になって、二重結合、または置換または非置換C〜C環状構造を形成し、ここで、置換基は水素若しくはC〜C10アルキルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記R〜R10は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換または非置換C〜C10アルキル、および置換または非置換C〜C10アルコキシからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ナフトキノン系化合物は、以下の化合物:
【化4−1】

【化4−2】

【化4−3】

或いは薬学的に許容できるそれらの塩、溶媒和物または異性体から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ナフトキノン系化合物の微粒化粒子のサイズは、粒度の90%(X90)が1nm〜30μmの範囲内にあるサイズであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ナフトキノン系化合物の微粒化粒子のサイズは、粒度の50%(X50)が1nm〜10μmの範囲内にあるサイズであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
界面活性剤を更に含んでなることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤を、前記ナフトキノン系化合物の微粒化粒子および界面活性剤の全重量に基づいて0.1〜50重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
水溶性ポリマーおよび/または溶解剤を更に含んでなることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容できるビヒクルおよび/またはキャリアを更に含んでなることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物は、腸を標的にした処方物に調製される経口医薬組成物であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記腸を標的にした処方物は、pH感受性ポリマーの添加によって調製されることを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記腸を標的にした処方物は、腸特異的細菌酵素によって分解可能な生分解性ポリマーの添加によって調製されることを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記腸を標的にした処方物は、腸特異的細菌酵素によって分解可能な生分解性マトリックスの添加によって調製されることを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記腸を標的にした処方物は、予め決定された遅延時間後の薬物の放出を可能にする形態で構築されることを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記ナフトキノン系化合物の微粒化粒子は、ミリング、沈殿、高圧均質化または超臨界微粒化を含む微粒化プロセスによって調製されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ナフトキノン系化合物の微粒化粒子は、1日あたり少なくとも10mgを超えて投与されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記ナフトキノン系化合物の微粒化粒子は、顆粒化されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物は、代謝疾患、再狭窄、インポテンス、前立腺疾患、高血圧症、心疾患、腎疾患および緑内障、変性疾患並びにミトコンドリア機能障害関連疾患からなる群から選択される1つ以上のものの予防および治療に使用されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
メタボリックシンドロームは、肥満、肥満合併症、肝疾患、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、循環器系疾患、虚血性疾患、糖尿病、糖尿病関連合併症および炎症性疾患からなる群から選択される1つ以上のものであることを特徴とする請求項22に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−500557(P2011−500557A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528797(P2010−528797)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005885
【国際公開番号】WO2009/048251
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(509010436)マゼンス インコーポレイテッド (11)
【出願人】(506222797)ケーティ アンド ジー カンパニー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】