説明

ナースコールシステム

【課題】 呼出子機から子機プレートへの呼出信号の送信を無線により実施してコネクタ部や伝送線の破損の問題を無くすこと、更には従来のナースコールシステムを大きく変更すること無く無線化に対応できるナースコールシステムを提供する。
【解決手段】 ナースコール子機1を、呼出信号を無線発信する第1の無線通信部12を備えた呼出子機1aと、呼出子機1aから発信された呼出信号を受信する第2の無線通信部32、受信した呼出信号をナースコール親機2へ送信するアダプタCPU37を備えた子機プレート1bとで構成し、子機プレート1bを更に壁面に設置される埋込型子機5と、この埋込型子機5に装着される子機アダプタ4とで構成し、子機アダプタ4に第2の無線通信部32、アダプタCPU37を設け、呼出子機1aと子機アダプタ4とを着脱容易な紐17で連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナースコールシステムに関し、特に患者が呼出操作するナースコール子機を無線化したナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナースコールシステムは、患者が操作するナースコール子機が、壁面に設置される埋込型子機(子機プレート)と、呼出ボタンを備えたベッド子機(呼出子機)とで構成されたものが普及している(例えば、特許文献1参照)。このようなナースコール子機は、子機プレートに呼出子機を接続するコンセントを設ける一方、呼出子機に伝送線を介して子機プレートのコンセントに接続するためのプラグを設け、子機プレートに呼出子機を接続することで、呼出子機から呼出信号を子機プレートに伝送し、子機プレートから、廊下灯を介してナースコール親機に呼出信号を伝送した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−348149号公報
【特許文献2】特願2005−236437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のナースコールシステムにおいて、呼出子機はプラグをコンセントに差し込む取り付け形態となっているため、正面方向の強い引っ張りに対してはプラグが抜けることで破損し難い。しかしながら、呼出子機をベッドにくくりつけた状態でベッド移動が行われたりすると、コンセント及びプラグに想定外の方向の強い力が加わり、コンセントやプラグが破損したり、伝送線に断線が発生してしまうことがあった。こうなると、子機プレートや呼出子機を交換するしか対応策は無く、改善が望まれていた。
そのため、伝送線による呼出信号の送信をやめて、呼出子機と子機プレートの間を無線通信させる構成が考えられる(例えば、特許文献2参照)が、単純に無線化する場合、システムの交換が必要であるためコスト高の問題があるし、呼出子機が携行可能となることで新たに紛失してしまう問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、呼出子機から子機プレートへの呼出信号の送信を無線により実施してコネクタ部や伝送線の破損の問題を無くすと共に呼出子機を紛失し難くし、更には従来のナースコールシステムを大きく変更すること無く無線化を実現できるナースコールシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、病室に設置されて看護師を呼び出す機能を備えた複数のナースコール子機と、ナースステーションに設置されてナースコール子機の呼び出しに応答する機能を備えたナースコール親機とを有するナースコールシステムにおいて、ナースコール子機は、呼出信号を出力させる呼出ボタン及び出力した呼出信号を無線発信する第1の無線通信部を備えた呼出子機と、呼出子機から発信された呼出信号を受信する第2の無線通信部、及び第2の無縁通信部が受信した呼出信号をナースコール親機へ送信する子機通信制御部を備えた子機プレートとを有し、呼出子機は、子機プレートに連結するための連結部を有する一方、子機プレートは連結部を保持する保持部を有することを特徴とする。
この構成によれば、呼出子機と子機プレートとが無線通信して呼出信号を伝送するので、呼出子機と子機プレートとを信号を伝送する電気コード等の伝送線で接続する必要が無い。よって、断線やコネクタ部の破損の問題が生じない。そして、呼出ボタンは連結部により子機プレートに保持されるので紛失し難い。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、壁面に設置されてナースコール親機に伝送線を介して接続される子機プレート本体と、子機プレート本体に装着される子機アダプタとで構成され、子機アダプタは、第2の無線通信部、子機通信制御部、保持部、更に子機プレート本体に接続するコネクタを備えて、子機プレート本体に設けられた接続端子にコネクタを接続することで装着され、子機プレート本体を介してナースコール親機と通信を行うことを特徴とする。
この構成によれば、子機プレートを子機プレート本体と子機アダプタとに分割することで、従来のナースコール子機を構成する壁面に設置される埋込型子機を子機プレート本体として使用することが可能となり、子機プレート本体を新たに設置すること無くナースコール子機を無線式にすることが可能となる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、呼出子機は、紐状絶縁材を介して連結部が設けられて成ることを特徴とする。
この構成によれば、連結部は呼出信号を伝送する必要がないため、呼出子機本体と連結部の間は紐状絶縁材が使用できる。また所謂紐を使用することで、交換部品を安価に入手でき曲げや引っ張り等過酷な使用条件で断線に気を遣う必要がない。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、連結部と保持部とは、少なくとも一方に永久磁石が設けられ、磁力により連結されることを特徴とする。
この構成によれば、磁力で連結部が保持部に保持されるので、どの方向から大きな引っ張り力が発生しても無理なく分離させることが可能となり、連結部や保持部の破損を防止できる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、呼出子機は、呼出信号に添付するIDを設定する第1ID設定部を有すると共に、子機プレートは受信対象となる呼出子機に設定されたIDに合わせてIDを設定する第2ID設定部を有し、子機通信制御部は、第2ID設定部で設定されたIDと異なるIDの呼出信号を受信した場合は、呼出信号をナースコール親機に送信しないことを特徴とする。
この構成によれば、呼出子機と子機プレートとを1対1で対応させることができ、呼出子機の呼び出し操作が他のナースコール子機に影響を与えることがないので、ナースコール親機で対応する看護師が混乱するようなことがない。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の構成において、子機通信制御部は、第2ID設定部の設定内容をナースコール親機に送信すると共に、ナースコール親機は、第2ID設定部の設定内容を記憶する親機ID記憶部を有することを特徴とする。
この構成によれば、ナースコール親機に呼出子機のID設定情報が記憶されるので、呼出子機のID情報と患者情報や場所情報を関連付けでき、ナースコール親機において呼出元の患者や場所を特定することが可能となる。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の構成において、呼出子機は、設定されたID情報を子機プレートに確認させるための通信確認信号を生成して出力する信号生成部を有し、子機通信制御部は、呼出子機から通信確認信号を受信したら、通信確認信号に含まれるID情報と、親機ID記憶部に記憶された第2ID設定部の設定情報とを比較し、通信確認信号に含まれるID情報が既に親機ID記憶部に登録されている場合はエラーと判断し、子機プレートはエラー発生を報知する子機報知部を有することを特徴とする。
この構成によれば、IDを設定する際に、同一のIDを複数の子機プレートで登録するのを防止できる。即ち、全ての呼出子機のIDを異なるIDで設定でき、設定ミスを防ぐことができる。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の構成において、子機プレートは、第1の無線通信部からの電波強度を測定する電波強度測定部を備えると共に、信号生成部は定期的に通信確認信号を生成して出力し、子機通信制御部は、受信した通信確認信号の電波強度が所定の閾値以下である場合に、子機報知部を報知動作させることを特徴とする。
この構成によれば、通信設定を行なった呼出子機の信号が弱くなったら、それを報知するので、例えば呼出子機が病室外へ持ち出されようとした場合、或いは呼出子機の電源が減少してきた場合等の異常を看護師に通知でき、呼び出しがナースコール親機に通知できない事態を防止できる。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載の構成において、子機通信制御部は、通信確認信号を正しく受信できない場合に、通信異常発生と判断して子機報知部を報知動作させることを特徴とする。
この構成によれば、通信確認信号を正しく受信できなくなるとそれを報知するので、呼出子機の故障等を速やかに認識でき、呼出操作しても呼出信号がナースコール親機に送信されないような事態を防止できる。
【0015】
請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかに記載の構成において、子機通信制御部は、第2ID設定部で設定されていない呼出子機から通信確認信号を受信したら、受信したID情報をナースコール親機に送信し、ナースコール親機は、受信したID情報が親機ID記憶部に登録されていなければ、その旨を報知する親機報知部を有することを特徴とする。
この構成によれば、何れの子機プレートにおても設定されていない呼出子機が存在する場合は、それをナースコール親機が報知するので、看護師は設定エラーが発生したことを認識できる。
【0016】
請求項11の発明は、請求項10に記載の構成において、ナースコール親機は、受信した通信確認信号のID情報が親機ID記憶部に登録されていなければ、通信確認信号を受信した子機プレートの位置情報を表示する親機表示部を有することを特徴とする。
この構成によれば、設定されていない呼出子機を検知した子機プレートの位置がナースコール親機で確認できるので、容易に対応できる。
【0017】
請求項12の発明は、請求項11に記載の構成において、ナースコール親機は、親機ID記憶部に登録されていないIDの通信確認信号を受信した子機プレートが複数の場合、受信した複数の子機プレートの位置情報を親機表示部に表示させる表示制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば、未登録の呼出子機を検知した複数の子機プレートの位置をナースコール親機で確認できるので、呼出子機の位置を高精度に特定することができる。
【0018】
請求項13の発明は、請求項7乃至12の何れかに記載の構成において、子機報知部での報知動作がLEDの発光動作であり、子機通信制御部は、子機報知部を報知動作させる際にナースコール親機に警報通知信号を送信し、ナースコール親機において警告の報音或いは警告表示を実施させることを特徴とする。
この構成によれば、子機プレートは発光表示し、ナースコール親機が警報を鳴動するため、病室では静寂が保たれるし、異常の発生は看護者に知らせることができるので、患者は安心できる。
【0019】
請求項14の発明は、請求項1乃至13の何れかに記載の構成において、子機プレートは、連結部の保持部への連結/脱落を検出する連結検出部と、脱落を報知する脱落報知部を有し、連結検出部が脱落を検出したら、子機通信制御部は、脱落報知部を報知動作させることを特徴とする。
この構成によれば、子機プレートから連結部が脱落したら、子機プレートがそれを報知するため、脱落したことを認識し易い。
【0020】
請求項15の発明は、請求項14に記載の構成において、子機通信制御部は、連結検出部が脱落を検出したらナースコール親機に脱落信号を送信し、ナースコール親機に脱落を報知動作させることを特徴とする。
この構成によれば、子機プレートから連結部が脱落したらナースコール親機でその報知動作が成されるため、看護師に確実に通知できる。よって、呼出子機がベッド下等の操作不可能な場所へ移動したり、紛失してしまうのを防ぐことができる。
【0021】
請求項16の発明は、請求項14又は15に記載の構成において、子機通信制御部は、連結検出部が脱落を検出したら第2ID設定部の設定を受け付けないことを特徴とする。
この構成によれば、保持部に連結部が保持されていなければID設定ができないため、設定ミスを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、呼出ボタンと子機プレートとが無線通信して呼出信号を伝送するので、呼出ボタンと子機プレートとを信号を伝送する電気コード等の伝送線で接続する必要が無い。よって、断線やコネクタ部の破損の問題が生じないし、呼出ボタンは連結部により子機プレートに保持されるので紛失し難い。
そして、子機プレートを接続端子を備えた子機プレート本体と呼出子機と無線通信を行う子機アダプタとに分割することで、従来のナースコール子機を構成する埋込型子機を子機プレート本体として使用することが可能となり、子機プレート本体を新たに設置すること無くナースコール子機を無線式にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図である。
【図2】ナースコール子機とナースコール親機を回路ブロック図で示したナースコールシステムの構成図である。
【図3】システム起動時の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】呼出操作を受けたシステムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係るナースコールシステムの一例を示す構成図である。本発明のナースコールシステムは、ベッド毎に設置されて看護師を呼び出す機能を備えた複数のナースコール子機1と、ナースステーションに設置されてナースコール子機1からの呼び出しに応答する機能を備えたナースコール親機2とを有し、双方は伝送線L1で接続されている。そして、ナースコール子機1は、患者が呼出操作する呼出子機1aと、壁面に設置される子機プレート1bとで構成され、子機プレート1bは更に子機アダプタ4と埋込型子機5(子機プレート本体)とに分離可能に構成されている。また、ナースコール親機2は、呼び出しに応答するためのハンドセット親機7とパーソナルコンピュータから成るPC親機8とで構成されている。
【0025】
尚、ナースコール子機1を使用した呼び出しを病室毎に表示するための廊下灯が設けられているが、ここでは省略してある。
【0026】
図2は、ナースコール子機1とナースコール親機2を回路ブロック図で示している。図2に示すように、ナースコール子機1の呼出子機1aは、呼出ボタン11、呼出信号を無線送信するための第1の無線通信部12、呼出子機のID(子機ID)を設定して記憶するための第1ID設定部13、呼出子機1aを制御する子機CPU14、呼出子機1aの紛失を防ぐために子機プレート1bに連結しておくための永久磁石を備えた連結部15、蓄電池から成る電源部16等を備えている。連結部15は、呼出子機1aの本体に一端が連結された絶縁材から成る紐17の先端に取り付けられ、子機プレート1bに磁力のみで着脱容易に連結される。
【0027】
子機アダプタ4は、埋込型子機5に接続するためのプラグ31、第1の無線通信部12と通信をするための第2の無線通信部32、第2の無線通信部32が受信する電波の強度を測定する信号測定部33、受信対象の呼出子機1aで設定されたIDの入力等の通信の条件を設定するための第2ID設定部34、呼出子機1aの連結部15を密着させる磁性板を備えた保持部35を有し、連結された連結部15を検知する磁気検出部36、子機アダプタ6を制御するアダプタCPU37、発光して報知動作するLED38等を備えている。
【0028】
埋込型子機5は、子機アダプタ4を接続するコンセント51、警報音の報音や通話のためのスピーカ52、通話のためのマイク53、スピーカ52及びマイク53を制御し、また警報音等を生成する音響回路54等を有している。
【0029】
尚、埋込型子機5はナースコール親機2から伝送線L1を介して電力の供給を受け、子機アダプタ4はプラグ31を介して埋込型子機5から電力の供給を受けている。また埋込型子機5は、伝送線L1を介して呼出信号を伝送する従来の呼出子機をコンセント51に直接接続してナースコール親機2に呼出信号を伝送することが可能となっている。また、連結部15と保持部35は、逆の構成、即ち連結部15に磁性板を設け、保持部35に磁石を配置しても良い。
【0030】
ナースコール親機2は、呼出子機1aを使用して呼出操作した患者を特定するために、ナースコール子機1に設定されたIDに関連付けた患者情報、各ナースコール子機1,1,・・の場所情報、病室レイアウト情報等を記憶する患者関連情報記憶部21、各ナースコール子機1のID情報を記憶する設定ID記憶部22、待受時に患者の位置を病室レイアウトとともに表示したり、呼出情報や警報情報を表示する表示部23、各種警告音等の鳴動形態、鳴動の有無等を設定する警告設定部24、ナースコール親機2を制御する親機CPU25、警報音等を報音する報音部26、呼び出しに応答するための図示しない通話部等を備えている。
【0031】
このように構成されたナースコールシステムの動作を次に説明する。最初にシステム起動時の動作について説明する。図3はシステム起動時の動作の流れを示すフローチャートを示し、この図を基に説明する。
起動したシステムは、まず呼出子機1aと子機プレート1bの組を設定する初期設定が行われる(S1)。呼出子機1aの第1ID設定部13と、子機アダプタ4の第2ID設定部34で同一のIDが設定される(S2)。例えば、IDは4桁の数字により設定され、第1ID設定部13及び第2ID設定部34は4桁の数字を入力可能に構成されている。
呼出子機1aは、子機CPU14の制御で定期的に通信確認信号が子機アダプタ4に対して発信され、IDが設定されるとこのID情報を添付して発信する。
【0032】
尚、このIDの設定は別途パーソナルコンピュータを使用して行っても良く、呼出子機1a及び子機アダプタ4にパーソナルコンピュータとの接続端子を設ければ良い。この場合、双方のID設定部13、34を簡略化できる。
更に、呼出子機1a毎に予め有している固有のIDを使用すれば、別途IDを設定する必要がなくなる。この場合、通信確認信号や呼出信号にこの固有のID情報を含ませ、このIDを受信した子機アダプタ4にID情報を記憶させれば、別途IDを設定することなく呼出子機1aと子機プレート4の組合せを設定することができる。
【0033】
次に連結部15を保持部35に連結して、設定確認作業に入る。アダプタCPU37は、磁気検出部36において磁気が検出されたら、呼出子機1aの連結部15が保持部35に連結されていると判断し(S3でY)、第1の無線通信部12から送信される通信確認信号を受信し、受信処理に入る。この連結部15の連結確認により、保持部35に連結部15が保持されていなければID設定ができないため、呼出子機1aと子機プレート1bの組合せを明確にでき設定ミスを防ぐことができる。
【0034】
受信処理に入ったアダプタCPU37は、第2の無線通信部32が同一IDの第1の無線通信部12から発信された通信確認信号を受信したら(S4でY)、設定されたIDが他の呼出子機1aと子機プレート1bとの組合せの認識に使用されていないか、即ち他のナースコール子機1のIDとして使われていないか問い合わせ信号をナースコール親機2に対して送信し、通信設定確認を行う(S5)。問い合わせを受けたナースコール親機2は、親機CPU25が設定ID記憶部22の設定内容を検索(S6)し、問い合わせを受けたIDが他のナースコール子機1において使用されていないことを確認すると、その旨を子機アダプタ4に回答する(S7)。
【0035】
このナースコール親機2からの回答が、他のナースコール子機1において同一のIDが使用されていないことを確認(S8でN)した設定可の回答である場合、アダプタCPU37は、設定されたIDを確定する(S9)。具体的に、呼出子機1aとの通信を確立したことを第2の無線通信部32を介して第1の無線通信部12に送信し、設定したIDを第1ID設定部13に記憶させると共に、第2ID設定部34でも記憶する(S10)。
【0036】
一方、ナースコール親機2からの回答が、既に他のナースコール子機1において同一のIDが設定されていると判断した(S8でY)設定不可の場合、回答を受けた子機プレート1bは警報制御を実施する。このとき、アダプタCPU37の制御でLED38が点滅し、埋込型子機5のスピーカ52において警報音が報音される。この結果、IDを変更しなければいけないことを通知する。
【0037】
このIDの確定作業は、各ナースコール子機1,1,・・に対して実施され、全てのID設定が完了したら初期設定は完了する(S11)。呼出子機1aと子機プレート1bの組が決定されたナースコール子機1は、その後呼出子機1aから発信される呼出信号は組を成す子機プレート1bで受信されて、ナースコール親機2に伝送される。
【0038】
この結果、子機プレート1bは、異なるIDが設定されている他の呼出子機1aとは通信を確立せず、呼出信号を受け付けない。例えば、設定されたIDの異なる他の子機プレート1bに呼出子機1aの連結部15が連結されても、呼出子機1aから発信された呼出信号は、受信対象のIDではないため子機アダプタ4は通信を確立せず、認識されない。
そして、この初期設定はシステム起動時に行われ、一度設定したID情報はナースコール親機2の設定ID記憶部22に記憶され、その後同様の設定作業は必要ない。
【0039】
また、この初期設定操作において子機アダプタ4が複数の呼出子機1a,1a,・・のいずれの電波(通信確認信号)も受信しなかった場合(S4でN)、連結部15が保持部35から外れた状態(S3でN)、設定したIDが他のナースコール子機1で登録済みである状態(S8でY)等が、通信確認信号の発信間隔より長い一定時間が経過しても継続している場合(S12でY)は、アダプタCPU37からナースコール親機2に対して接続異常発生信号が送信され(S13)、ナースコール親機2の報音部26から警報音が発報される(S14)。この報知動作により、看護師はナースコール子機1側に難らかの異常が発生したことを認識できる。
【0040】
更に、初期設定が完了して通信が確立した後に保持部35に連結されていた連結部15が脱落した場合、磁気検出部36によって非連結を検知したアダプタCPU37は、LED38を点滅させ、埋込型子機5のスピーカ52から注意音を鳴動させる。更に、ナースコール親機2に対して呼出子機1aが脱落したことを通知する。この通知を受けたナースコール親機2は、親機CPU25が報音部26から子機脱落の発生を報音させる。この報音動作により、子機プレート1bから連結部15が脱落したことを、子機プレート1bやナースコール親機2が報知するため、看護師は脱落したことを速やかに認識でき、呼出子機1aがベッド下等の操作不可能な場所へ移動したり紛失してしまうのを防ぐことができる。
【0041】
但し、連結部15が保持部35から外れた場合は、呼出子機1aからの呼び出しは引き続き受信することができるため、非連結状態を報知する警報音は他の警報音とは異なるオルゴール音等の柔らかい音で鳴動させると良く、看護師は容易に緊急度の識別を行なうことができる。
【0042】
また、通信確立後も呼出子機1aは通信確認信号を定期的に発信し、子機アダプタ4はそれを受信する。この時、アダプタCPU37は、通信状態を信号測定部33で定期的に確認し、呼出子機1aからの電波の信号強度が一定の閾値以下になった、あるいは電波が受信できなくなった場合には、埋込型子機5のスピーカ52から警告音を鳴動させる。同時に、ナースコール親機2に対して呼出子機1aと通信できないことを通知して、ナースコール親機2において警告音を鳴動させる。
この結果、通信設定を行なった呼出子機の信号が弱くなったら、それを報知するので、例えば呼出子機1aが病室外へ移動した場合、或いは呼出子機1aの電源部16の残量が足りない場合等の異常を看護師に通知でき、呼び出しがナースコール親機2に通知できなくなる事態を防止できる。
【0043】
このように、無線を使用した呼び出しとしても呼出子機1aと子機プレート1bとを1対1で対応させることができ、呼出子機1aの呼び出し操作が他のナースコール子機1に影響を与えることがないので、ナースコール親機2で呼び出しに対応する看護師が混乱するようなことがない。また、ナースコール親機2に呼出子機1のID設定情報が記憶されるので、呼出子機1のID情報と患者情報や場所情報を関連付けでき、ナースコール親機2において呼出元の患者や場所を特定することが可能となる。
また、ナースコール子機1のIDを設定する際に、同一のIDを複数の子機プレート1bで登録するのを防止できる。即ち、全ての呼出子機のIDを異なるIDで設定でき、設定ミスを防ぐことができる。
更に、呼出子機1aは連結部15の磁力で子機プレート1bに連結されるので、どの方向から大きな引っ張り力が発生しても無理なく分離させることができ、連結部15や保持部35が破損することがない。
また、通信確認信号を正しく受信できなくなるとそれを報知するので、呼出子機1aの故障等を速やかに認識でき、呼出操作しても呼出信号がナースコール親機2に送信されないような事態を防止できる。
【0044】
尚、連結部15の脱落や電波強度の低下等、初期設定が完了してからの各種警報の発報は患者が居る場合に行われるため、警報音の発報はナースコール親機のみで実施し、ナースコール子機1での警報の発報はLEDの点滅のみとしてスピーカによる報音は行わないよう構成しても良い。また、図示しない廊下灯においても、警報の表示、鳴動を行なっても良い。こうすれば、病室では静寂が保たれるし、異常の発生は看護者に知らせることができるので、患者は安心できる。この場合、警報を発報する機器、警報の種類はナースコール親機2の警報設定部で設定できる。
【0045】
次に、呼出操作時の動作を説明する。図4は呼出操作を受けたシステムの動作の流れを示すフローチャートであり、この図をもとに説明する。
患者が呼出子機1aの呼出ボタン11を押下すると(S21)、第1の無線通信部12から設定されたIDが付加された呼出信号が発信される。子機アダプタ4のアダプタCPU37が、第2の無線通信部32を介してこの呼出信号を受信し、IDを確認する(S22のY)。IDを確認したアダプタCPU37は、埋込型子機5のスピーカ52から呼出確認音を鳴動させ、呼出信号を伝送線L1を介してナースコール親機2に送信する。
呼出信号を受信したナースコール親機2は、呼出音を鳴動する(S30)。また、親機CPU25は、呼出信号に含まれるID情報と患者関連情報記憶部21の情報を基に、表示部23に呼出元の場所情報や患者情報を表示させる(詳述せず)。
【0046】
ここで、子機アダプタ4が、IDが異なり通信確立していない呼出子機1aから呼出信号を受信した場合(S22でN)の動作を説明する。IDが一致しないと判断したアダプタCPU37は、ナースコール親機2に対して呼出信号を送信しないが、代わりに、IDを問い合わせる問い合わせ信号を送信し、通信設定確認を行う(S23)。
問い合わせ信号を受けたナースコール親機2は、親機CPU25が設定ID記憶部22の設定内容を検索し(S24)、他のナースコール子機1において使用されているIDであれば、通信設定が確立して正常動作であると判断できるため(S25でY)、問い合わせ元の子機アダプタ4に対して放置する旨の返信信号を送る(S26)。
【0047】
しかし、信号発信元の呼出子機1aが何れの子機プレート1bとも通信を確立してないと判断すると(S25でN)、親機CPU25は全ての子機アダプタ4に対して該当する呼出子機1aから発信される電波の受信強度情報を要求する(S27)。他の子機アダプタ4は、信号が弱いためにナースコール親機2に問い合わせる受信処理を行わなかったが、この要求を受けた各子機アダプタ4は、アダプタCPU37が信号測定部33によって測定した該当する呼出子機1aから発信された電波の信号強度情報をナースコール親機2に送信する(S28)。
親機CPU25は、こうして入手した1台ないし複数の子機アダプタ4(子機プレート1b)の位置を表示部23に表示する(S29)。同時に報音部26から呼出音を報音させる。この結果、設定されていない呼出子機1aから呼出信号が発信された場合、看護師はそれを認識でき、設定ミスや何らかの異常が発生しても呼出操作を放置することがない。
【0048】
尚、電波の強度情報を複数の子機アダプタ4,4,・・から入手した場合は、呼出子機1aの位置を推定し、その推定位置を表示部23に表示しても良い。
【0049】
このように、呼出子機1aと子機プレート1bとが無線通信して呼出信号を伝送するので、呼出子機1aと子機プレート1bとを信号を伝送する電気コード等の伝送線で接続する必要が無い。よって、断線やコネクタ部の破損の問題が生じない。そして、呼出子機1aは連結部15が子機プレート1bに保持されるので紛失し難い。
また、子機プレート1bを子機アダプタ4と埋込型子機5とに分割することで、従来のナースコール子機1を構成する壁面に設置される埋込型子機を使用することが可能となり、埋込型子機を交換すること無くナースコール子機1を無線式にすることが可能となる。
更に、連結部15は呼出信号を伝送する必要がないため、呼出子機1aの本体と連結部15の間は所謂紐を使用することができ、交換部品を安価に入手でき曲げや引っ張り等過酷な使用条件で断線に気を遣う必要がない。
また、設定されていない呼出子機1aを検知した子機プレート1bの位置がナースコール親機2で確認できるので、容易に対応できるし、未登録の呼出子機1aを検知した子機プレート1bが複数の場合は、その位置をナースコール親機2で確認できるので、呼出子機1aの位置を高精度に特定することができる。
【0050】
尚、上記実施形態では、呼出信号を受信する際にIDが異なる呼出信号を子機アダプタ4が受信した場合は、ナースコール親機2に問い合わせ信号を送信したが、子機アダプタ4がIDが異なる通信確認信号を受信した場合も、同様に問い合わせ信号を送信しても良い。即ち、ナースコール親機2に対して通信設定確認を行い、他のナースコール子機1において通信設定が確立している場合が正常であると判断し、何れのナースコール子機1にも設定されていないIDである場合は、各子機プレート4から信号強度情報を入手し、その結果を表示部23に表示させ、警報音を報音させても良い。こうすることで、何れの子機アダプタ4においても設定されていない呼出子機1aの存在を把握でき、看護師は設定エラーの発生を認識できる。
【符号の説明】
【0051】
1・・ナースコール子機、1a・・呼出子機、1b・・子機プレート、4・・子機アダプタ、5・・埋込型子機(子機プレート本体)、11・・呼出ボタン、12・・第1の無線通信部、13・・第1ID設定部、14・・子機CPU(信号生成部)、15・・磁石(連結部)、17・・紐、22・・設定ID記憶部、23・・表示部、24・・警告設定部、25・・親機CPU(表示制御部)、26・・報音部(親機報知部)、31・・プラグ(コネクタ)、32・・第2の無線通信部、33・・信号測定部(電波強度測定部)、34・第2ID設定部、35・・保持部、36・・磁気検出部、37・・アダプタCPU(子機通信制御部)、38・・LED(子機報知部、脱落報知部)、51・・コンセント(接続端子)、52・・スピーカ(子機報知部、脱落報知部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病室に設置されて看護師を呼び出す機能を備えた複数のナースコール子機と、ナースステーションに設置されて前記ナースコール子機の呼び出しに応答する機能を備えたナースコール親機とを有するナースコールシステムにおいて、
前記ナースコール子機は、呼出信号を出力させる呼出ボタン及び出力した呼出信号を無線発信する第1の無線通信部を備えた呼出子機と、前記呼出子機から発信された呼出信号を受信する第2の無線通信部、及び前記第2の無縁通信部が受信した前記呼出信号を前記ナースコール親機へ送信する子機通信制御部を備えた子機プレートとを有し、
前記呼出子機は、前記子機プレートに連結するための連結部を有する一方、前記子機プレートは前記連結部を保持する保持部を有することを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
前記子機プレートは、壁面に設置されて前記ナースコール親機に伝送線を介して接続される子機プレート本体と、前記子機プレート本体に装着される子機アダプタとで構成され、
前記子機アダプタは、前記第2の無線通信部、前記子機通信制御部、前記保持部、更に前記子機プレート本体に接続するコネクタを備えて、前記子機プレート本体に設けられた接続端子に前記コネクタを接続することで装着され、前記子機プレート本体を介して前記ナースコール親機と通信を行うことを特徴とする請求項1記載のナースコールシステム。
【請求項3】
前記呼出子機は、紐状絶縁材を介して前記連結部が設けられて成ることを特徴とする請求項1又は2記載のナースコールシステム。
【請求項4】
前記連結部と前記保持部とは、少なくとも一方に永久磁石が設けられ、磁力により連結されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のナースコールシステム。
【請求項5】
前記呼出子機は、呼出信号に添付するIDを設定する第1ID設定部を有すると共に、前記子機プレートは受信対象となる前記呼出子機に設定された前記IDに合わせてIDを設定する第2ID設定部を有し、
前記子機通信制御部は、前記第2ID設定部で設定されたIDと異なるIDの呼出信号を受信した場合は、呼出信号を前記ナースコール親機に送信しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のナースコールシステム。
【請求項6】
前記子機通信制御部は、前記第2ID設定部の設定内容を前記ナースコール親機に送信すると共に、前記ナースコール親機は、前記第2ID設定部の設定内容を記憶する親機ID記憶部を有することを特徴とする請求項5記載のナースコールシステム。
【請求項7】
前記呼出子機は、設定されたID情報を前記子機プレートに確認させるための通信確認信号を生成して出力する信号生成部を有し、
前記子機通信制御部は、前記呼出子機から通信確認信号を受信したら、通信確認信号に含まれるID情報と、前記親機ID記憶部に記憶された前記第2ID設定部の設定情報とを比較し、通信確認信号に含まれるID情報が既に前記親機ID記憶部に登録されている場合はエラーと判断し、前記子機プレートはエラー発生を報知する子機報知部を有することを特徴とする請求項6記載のナースコールシステム。
【請求項8】
前記子機プレートは、前記第1の無線通信部からの電波強度を測定する電波強度測定部を備えると共に、前記信号生成部は定期的に前記通信確認信号を生成して出力し、
前記子機通信制御部は、受信した前記通信確認信号の電波強度が所定の閾値以下である場合に、前記子機報知部を報知動作させることを特徴とする請求項7記載のナースコールシステム。
【請求項9】
前記子機通信制御部は、前記通信確認信号を正しく受信できない場合に、通信異常発生と判断して前記子機報知部を報知動作させることを特徴とする請求項7又は8記載のナースコールシステム。
【請求項10】
前記子機通信制御部は、前記第2ID設定部で設定されていない前記呼出子機から前記通信確認信号を受信したら、受信したID情報を前記ナースコール親機に送信し、
前記ナースコール親機は、受信したID情報が前記親機ID記憶部に登録されていなければ、その旨を報知する親機報知部を有することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載のナースコールシステム。
【請求項11】
前記ナースコール親機は、受信した通信確認信号のID情報が前記親機ID記憶部に登録されていなければ、通信確認信号を受信した前記子機プレートの位置情報を表示する親機表示部を有することを特徴とする請求項10記載のナースコールシステム。
【請求項12】
前記ナースコール親機は、前記親機ID記憶部に登録されていないIDの通信確認信号を受信した前記子機プレートが複数の場合、受信した複数の前記子機プレートの位置情報を前記親機表示部に表示させる表示制御部を有することを特徴とする請求項11記載のナースコールシステム。
【請求項13】
前記子機報知部での報知動作がLEDの発光動作であり、
前記子機通信制御部は、前記子機報知部を報知動作させる際に前記ナースコール親機に警報通知信号を送信し、
前記ナースコール親機において警告の報音或いは警告表示を実施させることを特徴とする請求項7乃至12の何れかに記載のナースコールシステム。
【請求項14】
前記子機プレートは、前記連結部の前記保持部への連結/脱落を検出する連結検出部と、脱落を報知する脱落報知部を有し、
前記連結検出部が脱落を検出したら、前記子機通信制御部は、前記脱落報知部を報知動作させることを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載のナースコールシステム。
【請求項15】
前記子機通信制御部は、前記連結検出部が脱落を検出したら前記ナースコール親機に脱落信号を送信し、前記ナースコール親機に脱落を報知動作させることを特徴とする請求項14記載のナースコールシステム。
【請求項16】
前記子機通信制御部は、前記連結検出部が脱落を検出したら前記第2ID設定部の設定を受け付けないことを特徴とする請求項14又は15記載のナースコールシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−49623(P2012−49623A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187313(P2010−187313)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】