説明

ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を調製するための方法

本発明は、ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を調製するための方法であって、原材料としてのニオブ酸化物を還元剤と混合し、減圧又は不活性ガス又は水素ガスの雰囲気中において600〜1300℃の範囲の温度で反応を行い、反応生成物を浸出させて残留した還元剤と還元剤の酸化物と他の不純物を除去し、減圧又は不活性ガスの雰囲気中において1000〜1600℃の範囲の温度で熱処理し、そしてふるいにかけてコンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を得ることを含む前記方法に関する。本発明にしたがえば、ニオブ酸化物は、鉱酸により容易に除去することができる還元剤により、直接、コンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブへと還元され、その際、反応の速度を制御することができ、反応により直接ニオブ酸化物をコンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブの粉末へと還元することができる。本発明にしたがえば、本方法は簡単であり、収率が高く、生産性が高い。得られる生成物は、流動性がよく、不純物が少なく、酸素の分布が均一であり、電気特性がよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ亜酸化物はセラミック材料の一種である。Nb誘電体酸化物膜は、その金属導電性のために、その表面上に形成することができるので、その電解コンデンサを製造することができる。
【0003】
電解コンデンサを製造するための凝集したニオブ亜酸化物粉末は、不純物含量が低く、比表面積が大きく、孔寸法が大きく、流動性が良好である。
上述のようなニオブ亜酸化物及びニオブの粉末を調製するために利用することができる利用可能な手法がいくつか存在する。
【0004】
中国特許出願公開第1587066号明細書(特許文献1)は、ニオブ酸化物とコンデンサグレードのニオブ粉末の混合物を熱処理することによりニオブ亜酸化物粉末を調製するための方法を開示している。当該方法において、ニオブ亜酸化物は、コンデンサグレードのニオブ粉末をニオブ酸化物により酸化することにより調製される。この方法の問題は、コンデンサグレードのニオブ粉末を事前に調製しなければならないことである。更に、ニオブ酸化物によりコンデンサグレードのニオブ粉末を酸化した後、一部の酸素が失われ、残ったものはコンデンサを製造するためには適していない。結果として、方法に要する時間は長い。加えて、出発材料としてのコンデンサグレードのニオブ粉末に関する要件は厳しいことから、この方法は、工業的規模の生産には適していない。
【0005】
国際公開第00/15555号(特許文献2)は、タンタル又はニオブのフレーク、粒子、又は粉末を用いることにより、五酸化ニオブを水素ガスの存在下、酸素原子を五酸化物から還元剤へと移して五酸化ニオブを還元することを可能とするのに充分な時間、充分な温度、還元することを含む方法を開示している。この方法には、以下のような問題がある:フレーク又は粒子の形状のタンタル又はニオブを還元剤に使用することにより、表面積が小さく、酸化物との接触面積が小さくなる。結果として、反応は均一には進まず、生成物中の酸素の分布が不均一となり、生成物の特性が損なわれる。タンタル又はニオブの還元剤は酸中において溶解しないので、タンタル又はニオブの残留物は除去することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第1587066号明細書
【特許文献2】国際公開第00/15555号
【発明の概要】
【0007】
従来比術の不都合を克服するために、本発明の目的は、安定した生成物の特性を有しかつ収率が高いことを特徴とする、ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を調製するための簡単な方法を提供することである。
【0008】
本発明の技術的解決は以下のとおりである。
原材料としてのニオブ酸化物を還元剤と混合し、減圧又は不活性ガス又は水素ガスの雰囲気中、600〜1300℃の範囲の温度で反応を行い、反応生成物を浸出させて、残留した還元剤と、還元剤の酸化物と、他の不純物を除去し、生成物を減圧又は不活性ガスの雰囲気中、1000〜1600℃の温度で熱処理し、そしてふるい分けしてコンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を得ることを含む、ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を調製するための方法。
【0009】
本発明の好ましい態様において、原材料としてのニオブ酸化物は、五酸化ニオブ又は酸素部分還元(oxygen-partially-reduced)ニオブ酸化物である。
本発明の好ましい態様において、原材料としての前記ニオブ酸化物は、20メッシュ、好ましくは60メッシュのふるいを通過する。
【0010】
本発明の好ましい態様において、原材料としての前記ニオブ酸化物は、0.2〜1.1g/cmの密度を有する。
本発明の好ましい態様において、前記還元剤の量は、重量基準で、原材料としてのニオブ酸化物の5〜6倍である。
【0011】
本発明の好ましい態様において、前記還元剤は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、又はこれらの水素化物、又はこれらの合金、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0012】
本発明の好ましい態様において、前記還元剤の形状は、バルク、フレーク、粒子、又は粉末、又はこれらの任意の組み合わせである。
本発明の好ましい態様において、前記還元剤は、硝酸又は塩酸中に溶解可能である。
【0013】
本発明の好ましい態様において、前記還元剤の各原子価状態の酸化物は、硝酸又は塩酸中に溶解することができる。
本発明の好ましい態様において、前記還元剤は、還元の間、固体の状態である。
【0014】
本発明の好ましい態様において、前記反応の生成物は、還元中において固体の状態である。
本発明の好ましい態様において、前記熱処理の時間は、1〜600分である。
【0015】
本発明の好ましい態様において、前記ニオブ亜酸化物粉末の酸素含量は、13.0〜17.0重量%、好ましくは13.8〜15.9重量%の範囲である。
本発明の好ましい態様において、前記ニオブ粉末の酸素含量は、0〜4.0重量%の範囲である。
【0016】
本発明の好ましい態様において、前記ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末の直径は、350μm未満(−40メッシュ)である。
本発明の好ましい態様において、前記ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末の比静電容量は、40,000〜250,000μFV/gである。
【0017】
本発明にしたがえば、原材料としてのニオブは、鉱酸により容易に除去することができる還元剤により、直接、コンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブへと還元された。本発明は、使用される還元剤を鉱酸により除去することができ、反応の速度を制御することができ、原材料としてのニオブ酸化物を直接コンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブの粉末へと還元することができるという特徴を有する。本発明にしたがえば、この方法は簡単であり、収率が高く生産性が高い。得られる生成物は、流動性がよく、不純物含量が低く、酸素の分布が均一であり、電気特性がよい。本発明の粉末の外観は、多孔性のスポンジ状、又は多孔性のサンゴ(coral)状、又はフレーク状である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例1にしたがった生成物の10000倍のSEM写真である。
【図2】図2は、本発明の実施例2にしたがった生成物の10000倍のSEM写真である。
【図3】図3は、本発明の実施例3にしたがった生成物の10000倍のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中に開示されるデータは以下のとおりに測定した:
−粉末のバルク密度(SBD)は、中国国定基準GB 5060−85の方法にしたがって測定した;
−粉末の平均粒径(FSSS)は、中国国定基準GB 3249−82の方法にしたがって測定した;
−粉末の比表面積(BET)は、米国のMicromerities Corporation製の比表面積分析器ASAP2010により、BET法にしたがって試験した;
−粉末の流動性は、ASTM−B−213−90にしたがって試験した;
−SEM写真は、JSM−561−OLV走査型電子顕微鏡により撮影した。
【0020】
本発明にしたがったニオブ亜酸化物又はニオブの粉末は、コンデンサを製造するのに適しており、その電気特性を以下のように作ったコンデンサアノードブロックに関して試験する。
【0021】
150mgの粉末を用いて、ペレットを直径5.0mm、密度3.0g/cmへとプレスし、このペレットを減圧炉中で10分間焼結した。焼結したペレットを60℃の0.1容積%HPO溶液中で30Vの電圧をかけて陽極酸化処理を施して、アノードブロックを形成した。
【実施例】
【0022】
実施例1
1キログラムの量の−60メッシュ(60メッシュのふるいを通過し、250μm未満の粒径を有する)の五酸化ニオブ粉末を、1.01キログラムの−60メッシュのイットリウム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルト中に充填し、水素ガスを満たして陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。この混合物を900℃に加熱し、360分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。圧力は、反応の間、0.15MPa以下に制御した。
【0023】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.80kgである。
【0024】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1250℃まで加熱して、30分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンガスを充てんした後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.79kgである。
【0025】
生成物の10000倍のSEM写真を図1に示す。生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例2
1キログラムの量の−60メッシュ(250μm未満)の五酸化ニオブ粉末を、1.4キログラムの−20メッシュの水素化ネオジム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルト中に充填し、アルゴンガスを満たして陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。この混合物を920℃に加熱し、480分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。圧力は、反応の間、0.15MPa以下に制御した。
【0026】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.76kgである。
【0027】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1240℃まで加熱して、30分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンガスを充てんした後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.76kgである。
【0028】
生成物の10000倍のSEM写真を図2に示す。生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例3
1キログラムの量の−60メッシュの、24.7重量%の酸素含量を有するニオブ酸化物を、0.9キログラムの−20メッシュ(850μm未満)のネオジム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルト中に充填し、水素ガスを満たして陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。この混合物を920℃に加熱し、480分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。圧力は、反応の間、0.15MPa以下に制御した。
【0029】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.84kgである。
【0030】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1200℃まで加熱して、120分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンガスを充てんした後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.83kgである。
【0031】
生成物の5000倍のSEM写真を図3に示す。生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例4
1キログラムの量の−60メッシュの、24.45重量%の酸素含量を有するニオブ酸化物を、0.65キログラムの−60メッシュのイットリウム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルト中に充填し、水素ガスを満たして陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。この混合物を860℃に加熱し、600分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。圧力は、反応の間、0.15MPa以下に制御した。
【0032】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.86kgである。
【0033】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1200℃まで加熱して、60分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンガスを充てんした後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.84kgである。
【0034】
生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例5
1キログラムの量の−60メッシュの五酸化ニオブ粉末を、1.05キログラムの−60メッシュの水素化イットリウム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルト中に充填し、水素ガスを満たして陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。この混合物を880℃に加熱し、600分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。圧力は、反応の間、0.15MPa以下に制御した。
【0035】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.78kgである。
【0036】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1200℃まで加熱して、90分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンガスを充てんした後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.75kgである。
【0037】
生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例6
1キログラムの量の−60メッシュの五酸化ニオブ粉末を、0.36キログラムの−60メッシュのカルシウム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を減圧炉に充填した。減圧は、0.08MPaより低く制御した。この混合物を700℃に加熱し、900分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。
【0038】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.81kgである。
【0039】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1100℃まで加熱して、270分間浸漬させた。粉末を室温まで冷やした後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.80kgである。
【0040】
生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例7
1キログラムの量の−60メッシュの五酸化ニオブ粉末を、1.47キログラムの−60メッシュのランタン−サマリウム合金(ランタン−サマリウム重量比 6:4)粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルトに充填した。まず、アルゴンを0.02MPaの圧力まで充填し、水素ガスを0.06MPaまで充填した。圧力は、反応の間0.15MPa以下に制御した。この混合物を1000℃に加熱し、300分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。
【0041】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.77kgである。
【0042】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1450℃まで加熱して、30分間浸漬させ、室温まで冷やした。粉末を室温まで冷やした後、アルゴンを充填し、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.73kgである。
【0043】
生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例8
1キログラムの量の−60メッシュの五酸化ニオブ粉末を、1.7キログラムの−20メッシュのエルビウム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を反応レトルトに充填し、アルゴンを充填して、陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。圧力は、反応の間0.15MPa以下に制御した。この混合物を1000℃に加熱し、120分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。
【0044】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.77kgである。
【0045】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1340℃まで加熱して、30分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンを充填した後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.76kgである。
【0046】
生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
実施例9
1キログラムの量の−60メッシュの五酸化ニオブ粉末を、2.0キログラムの−60メッシュのイットリウム粉末と均一に混合した。この混合物粉末を減圧炉に充填し、水素ガスを充填して、陽圧(0.02MPaより高い圧力)に到達させた。この混合物を920℃に加熱し、720分間浸漬させ、室温まで冷やした後取り出した。
【0047】
処理した粉末を60メッシュのふるいにかけ、−60メッシュの粉末を、1:4の粉末:溶液の重量比で10%塩酸溶液により浸出させ、その後脱イオン水で洗浄し、乾燥させた。回収した粉末は0.65kgである。
【0048】
炉を必要とする圧力(0.1Pa未満)まで減圧した後、回収した粉末を減圧炉中に充填し、充填した粉末を1050℃まで加熱して、60分間浸漬させ、室温まで冷やした。アルゴンを充填した後、この粉末を排出した。粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの生成物は、0.63kgである。
【0049】
生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
上記の9つの実施例において、実施例1〜8ではコンデンサグレードのニオブ亜酸化物粉末を準備し、実施例9ではコンデンサグレードのニオブ粉末を準備した。
比較例1
中国特許出願公開第1587066号明細書の方法にしたがい、中国特許出願公開第1410209号明細書にしたがって生成した90gの量のコンデンサグレードのニオブ粉末を、200gの−60〜+400メッシュ(60メッシュのふるいを通過するが400メッシュのふるいは通過しない、粒径38〜250μm)のNb粉末と均一に混合した。混合物粉末を脱イオン水により粒状化し、その後乾燥させた。粒状にした粒子を減圧炉に充填した。炉を必要とする圧力まで減圧し、次いでアルゴンガスを充填した。充填した材料を900℃まで加熱して、120分間浸漬させ、室温まで冷やし、次いで取り出した。
【0050】
熱処理した粉末を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュの粉末を、90gのコンデンサグレードのニオブ粉末と混合した。混合物粉末を減圧炉に充填した。炉を必要とする圧力まで減圧した。充填した材料を1300℃まで加熱して、60分間浸漬させ、室温まで冷やし、アルゴンガスを充てんし、次いで取り出した。生成物を60メッシュのふるいにかけた。−60メッシュのニオブ亜酸化物粉末は380gである。生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
比較例2
国際公開第00/15555号にしたがって、200gの量のコンデンサグレードのニオブ粉末を、200gの−60メッシュ(250μm未満)のNb粉末と均一に混合した。混合物粉末を1250℃まで加熱し、水素ガス雰囲気中で30分間浸漬させた。その後の処理方法は、当該出願に記載されるとおりに行う。生成物の酸素含量を表1に列挙し、物理特性を表2にまとめ、電気特性を表3にまとめた。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を調製するための方法であって、原材料としてのニオブ酸化物を還元剤と混合し、減圧又は不活性ガス又は水素ガスの雰囲気中で600℃〜1300℃の範囲の温度で反応を行い、反応生成物をろ過して残余の還元剤及び還元剤の酸化物及び他の不純物を除去し、減圧又は不活性ガスの雰囲気中で1000℃〜1600℃の範囲の温度で熱処理し、ふるい分けしてコンデンサグレードのニオブ亜酸化物又はニオブの粉末を得ることを含む、前記方法。
【請求項2】
原材料としての前記ニオブ酸化物が五酸化ニオブ又は酸素部分還元ニオブ酸化物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
原材料としてのニオブ酸化物が20メッシュ、好ましくは60メッシュのふるいを通過する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
原材料としての前記ニオブ酸化物が0.2〜1.1g/cmのバルク密度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤の量が、重量基準で原材料としての前記ニオブ酸化物の0.5〜6倍である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤が、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、又はこれらの水素化物、又はこれらの合金、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤の形状が、バルク、フレーク、粒子、又は粉末、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤が、硝酸又は塩酸中に溶解可能である、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤の各原子価状態での酸化物が、硝酸又は塩酸中に溶解可能である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤が、還元の間、固体の状態である、請求項1又は5に記載の方法。
【請求項11】
前記反応の生成物が、還元中において固体の状態である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理の時間が、1〜600分である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
コンデンサグレードの前記ニオブ亜酸化物粉末の酸素含量が、13.0〜17.0重量%、好ましくは13.8〜15.9重量%の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
コンデンサグレードの前記ニオブ粉末の酸素含量が、0〜4.0重量%の範囲である、請求項14記載の方法。
【請求項15】
前記ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末の直径が、350μm未満(−40メッシュ)である、請求項1又は13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記ニオブ亜酸化物又はニオブの粉末の比静電容量が、40,000〜250,000μFV/gである、請求項1又は13又は14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−536708(P2010−536708A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522165(P2010−522165)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/CN2008/001522
【国際公開番号】WO2009/026789
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(507313113)ニンシア オリエント タンタル インダストリー カンパニー、 リミテッド (4)
【Fターム(参考)】