説明

ニトロキシルラジカル重合により得られるポリマー

ニトロキシル媒介制御フリーラジカル重合により得られ、それによって過剰量のアクリレートが存在する、式(I):In−[(A)x−(B)y−(A′)x′−(E)z]n〔式中、Inは、重合反応を開始する開始剤フラグメントであり:A及びA′は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、アクリル酸(C〜C22)ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、メタクリル酸(C〜C22)ヒドロキシアルキルエステル、アミノ、(C〜C22)アルキルアミノ、(C〜C22)ジアルキルアミノ、−SOH、エポキシ、フルオロ、ペルフルオロ若しくはシロキサン基で置換されているアクリル酸(C〜C22)アルキルエステル又はメタクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、スチレン、置換スチレン、アクリルアミド及びメタクリルアミド、N−モノ(C〜C22)アルキルアクリルアミド、N,N−ジ(C〜C22)アルキルアクリルアミドからなる群より選択される同一又は異なるモノマーであるが、但し、非置換アクリル酸(C〜C22)アルキルエステル及び/又はメタクリル酸(C〜C22)アルキルエステルの量は、モノマー混合物全体の重量に基づいて30重量%を越えており;Bは、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つの多官能モノマーであるが、但し、これらのエチレン性不飽和結合の少なくとも一方は、高反応性二重結合であり、他方は、低反応性二重又は三重結合であり;Eは、酸素原子を介してポリマー若しくはコポリマーに結合している少なくとも1つの安定したフリーニトロキシルラジカルを担持する基、又は結合している安定したフリーニトロキシルラジカルの置換若しくは脱離反応によりもたらされる基であり;x及びx′は、独立して0又は5〜5000の数であり;yは、5〜5000の数であり;zは、モノマー配列(A)−(B)に結合している末端基Eの平均数を示す、1又は1を越える数であり、好ましくは、zは1であり;nは、1〜20の数、好ましくは1である〕で示されるポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリマーに関する。
【0002】
米国特許第6,353,107号は、a)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー及びb)1−アルコキシ−ポリアルキル−ピペリジン誘導体を含む重合性組成物に関する。エチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーは、エチレン、プロピレン、n−ブチレン、i−ブチレン、スチレン、置換スチレン、共役ジエン、アクロレイン、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、無水マレイン酸、(アルキル)アクリル酸無水物、(アルキル)アクリル酸塩、(アルキル)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(アルキル)アクリルアミド、ビニルハロゲン化物又はビニリデンハロゲン化物からなる群より選択される。有意な不飽和レベルを有するポリマーは特に記載されていない。
【0003】
反応性中間体ポリマーとして、又は顔料分散剤、湿潤剤、均展剤などとして使用される、有意な不飽和レベルを有するが、有意な架橋のないポリマーを形成する方法を持つことは有益であろう。
【0004】
特に、アミン無含有分散剤及び改善された顔料親和性を有する分散剤を持つことは有益であろう。
【0005】
ニトロキシル媒介制御フリーラジカル重合を使用して多官能不飽和モノマーを重合すると、高反応性二重結合の選択的重合及び低反応性二重又は三重結合の非重合をもたらすことが見出された。
【0006】
したがって、本発明は、ニトロキシル媒介制御フリーラジカル重合により得られ、それによって過剰量のアクリレートが存在する、式(I):
【0007】
【化11】

【0008】
〔式中、
Inは、重合反応を開始する開始剤フラグメントであり:
A及びA′は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、アクリル酸(C〜C22)ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、メタクリル酸(C〜C22)ヒドロキシアルキルエステル、アミノ、(C〜C22)アルキルアミノ、(C〜C22)ジアルキルアミノ、−SOH、エポキシ、フルオロ、ペルフルオロ若しくはシロキサン基で置換されているアクリル酸(C〜C22)アルキルエステル又はメタクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、スチレン、置換スチレン、アクリルアミド及びメタクリルアミド、N−モノ(C〜C22)アルキルアクリルアミド、N,N−ジ(C〜C22)アルキルアクリルアミドからなる群より選択される同一又は異なるモノマーであるが、但し、非置換アクリル酸(C〜C22)アルキルエステル及び/又はメタクリル酸(C〜C22)アルキルエステルの量は、モノマー混合物全体の重量に基づいて30重量%を越えており;
Bは、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つの多官能モノマーであるが、但し、これらのエチレン性不飽和結合の少なくとも一方は、高反応性二重結合であり、他方は、低反応性二重又は三重結合であり;
Eは、酸素原子を介してポリマー若しくはコポリマーに結合している少なくとも1つの安定したフリーニトロキシルラジカルを担持する基、又は結合している安定したフリーニトロキシルラジカルの置換若しくは脱離反応によりもたらされる基であり;
x及びx′は、独立して0又は5〜5000の数であり;
yは、5〜5000の数であり;
zは、モノマー配列(A)−(B)に結合している末端基Eの平均数を示す、1又は1を越える数であり、好ましくは、zは1であり;
nは、1〜20の数、好ましくは1である〕
で示されるポリマーに関する。
【0009】
本発明の文脈において、用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーを含むあらゆる種類のポリマーを意味する。用語「コポリマー」は、ランダム、ジブロック及びマルチブロック微細構造を有する2つ以上のモノマーから誘導される基又は単位を含有するポリマーを含むことを意味する。コポリマーは、ブロック(コ)ポリマー、櫛形(コ)ポリマー、星型(コ)ポリマー、樹枝状(コ)ポリマー又は超分岐鎖状(コ)ポリマーであることができる。ジブロック、トリブロックのようなブロック構造が好ましい。
【0010】
x及びx′が0の場合、ホモポリマーが得られる。
x′が0であり、そしてxが5〜5000の数である場合、ジブロックポリマーABが得られる。
x及びx′が5〜5000の数である場合、トリブロックポリマーABAが得られる。
ランダムポリマーは、モノマーが一緒に重合される場合に得ることができる。
【0011】
換言すると、第1のポリマー「ブロック」の形成が望まれる程度で第1のモノマーの重合が完了した後、第2のポリマーが反応塊に導入され、第2のモノマーの重合を実施して、第1のブロックの末端に結合される第2のポリマー「ブロック」を形成する。この連続添加法を使用して、広範囲のジブロック、トリブロックなどのコポリマーを調製することができる。
【0012】
用語「コポリマー」は、勾配コポリマー又はテーパードコポリマーも含み、これらは、例えば個別の鎖において鎖に沿ってモノマー単位の分布が勾配している2つのモノマー又はモノマー混合物A及びBから構成されるコポリマーである。鎖の一方の末端はA単位が、他方はB単位が豊富である。そのようなコポリマーは、ポリマー鎖に沿って1つのモノマー又はモノマー混合物Aから別のモノマー又はモノマー混合物Bへの連続的な移行を示す。
【0013】
ポリマーは、好ましくは、ホモポリマー(x及びx′は0である)、又はジブロック、トリブロック、マルチブロックコポリマー、又は勾配コポリマーである。
【0014】
「B」ブロック(例えば、プロパルギル(メタ)アクリレート)の存在が、特定の有機又は無機顔料に対する顔料親和性の基礎である。
【0015】
〜C22アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であることができる。そのようなアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びエイコシルである。C〜C18アルキルが好ましい。
【0016】
好ましくは、モノマーAは、スチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert.ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アリクリアミド、メタクリルアミド若しくはジメチルアミノプロピル−メタクリルアミド、又はこれらの混合物である。
【0017】
特に好ましいモノマーAは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、スチレン、ビニルピリジンである。
【0018】
多官能モノマーBの例は、プロパルギル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチニル(メタ)アクリレートのような多官能(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート若しくはリノレニル(メタ)アクリレートのような多不飽和脂肪アルコールの(メタ)アクリレートエステル、又はジアリルマレエートである。
【0019】
制御フリーラジカル重合を使用するために、過剰量のアクリレートが存在することが必須である。
【0020】
既に記述されているように、ポリマーは、ニトロキシル媒介制御フリーラジカル重合(CFRP)により得られる。SolomonらのUS4,581,429では、最初にそのような方法を記載している。
【0021】
U.S.4,581,429は、ブロック及びグラフトコポリマーを含む定義されたオリゴマーホモポリマー及びコポリマーを生成する、ポリマー鎖の制御された又は「リビング」成長によるフリーラジカル重合プロセスを開示する。開示されているものは、部分式:R′R″N−O−Xの開始剤の使用である。重合プロセスにおいて、フリーラジカル種R′R″N−O・及び・Xが生じる。・Xは、エチレン基を含有するモノマー単位を重合することができるフリーラジカル基、例えば、tert−ブチル又はシアノイソプロピルラジカルである。
【0022】
上記のプロセスの変形がUS5322912に開示されており、ホモポリマー及びブロックコポリマーの合成における、フリーラジカル開始剤と、塩基構造:R′R″N−O・の安定したフリーラジカル剤とを組み合わせた使用が記載されている。
【0023】
式(I)のポリマーを調製する実質的に2つの適切な経路が存在し、
a)構造要素:
【0024】
【化12】

【0025】
を有するアルコキシアミン開始剤/調節剤の存在下で重合すること、及び
b)構造要素:
【0026】
【化13】

【0027】
を有する安定したニトロキシルフリーラジカル及びラジカル開始剤(フリーラジカルの供給源)の存在下で重合することである。
【0028】
例えば、構造要素:
【0029】
【化14】

【0030】
は、環式の環系の一部であることができるか、又は置換されて非環式構造を形成することができる。
【0031】
安定したニトロキシルエーテル及びニトロキシルラジカルは、主にUS−A−4 581 429又はEP−A−621 878によって既知である。特に有用なものは、WO98/13392(AKZO)、WO99/03894及びWO00/07981(両方ともCiba)に記載されている開鎖化合物、WO99/67298及びGB2335190(両方ともCiba)に記載されているピペリジン誘導体、又はGB2342649(Ciba)及びWO96/24620に記載されている複素環式化合物である。
更なる適切なニトロキシルエーテル及びニトロキシルラジカルは、WO02/4805及びWO02/100831(両方ともCiba)に記載されている。
分子に1つ以上のニトロキシル基を有するニトロキシルエーテル及びニトロキシルラジカルは、例えば、US6,573,347、WO01/02345及びWO03/004471(全てCiba)に記載されている。これらの化合物は、分岐鎖状、星形又は櫛形の(コ)ポリマーが調製される場合に理想的に適合している。この場合、上記式(I)のy及び/又はnは、1を越える。
【0032】
本発明の文脈において、アルコキシアミン及びニトロキルシエーテルという用語は、同等なものとして使用される。
【0033】
構造要素:
【0034】
【化15】

【0035】
を有する適切なフリーラジカルは、例えばEP−A−621 878(Xerox)に開示されている。
【0036】
下記式:
【0037】
【化16】

【0038】
のような例は、WO96/24620(Elf Atochem)に提示されている。
【0039】
好ましくは、構造要素:
【0040】
【化17】

【0041】
は、5〜7員複素環の一部であり、これらは場合により追加の窒素又は酸素原子を環系に有する。置換ピペリジン、モルホリン及びピペラジン誘導体が特に有用である。
【0042】
好ましくは、構造要素:
【0043】
【化18】

【0044】
は、式(II)の構造要素であり、そして構造要素:
【0045】
【化19】

【0046】
は、式(II′):
【0047】
【化20】

【0048】
〔式中、
、G、G、Gは、独立してC〜Cアルキルであるか、又はGとG若しくはGとG若しくはG、G、G、Gは、一緒になってC〜C12シクロアルキル基を形成し;
、Gは、独立して、H、C〜C18アルキル、フェニル、ナフチル又は基COOC〜C18アルキルであり;
Xは、−CH−ファニル、CHCH−フェニル、(CHC−フェニル、(C〜Cシクロアルキル)CCN、(CHCCN、下記式:
【0049】
【化21】

【0050】
−CHCH=CH、CHCH−CH=CH、(C〜Cアルキル)CR20−C(O)−フェニル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−N−ジ(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NH(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NHからなる群より選択され、ここでR20は、水素又は(C〜C)アルキルであり、そしては、原子価を示す〕
で示される構造要素である。
【0051】
とりわけ、式(II)の構造要素は、式:A、B又はO:
【0052】
【化22】

【0053】
〔式中、
mは、1であり、
Rは、水素、非中断であるか、若しくは1個以上の酸素原子で中断されているC〜C18アルキル、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジルか、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の、7〜15個の炭素原子を有する脂環式カルボン酸の、3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の、若しくは7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸の一価ラジカルであり;
pは、1であり;
101は、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアラルキル、C〜C18アルカノイル、C〜Cアルケノイル又はベンゾイルであり;
102は、C〜C18アルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換であるか又はシアノ、カルボニル若しくはカルバミド基で置換されているC〜Cアルケニルであるか、又はグリシジルであるか、式:−CHCH(OH)−Zの、又は式:−CO−Z若しくは−CONH−Zの基であり、ここでZは、水素、メチル又はフェニルであり;
は、水素であり、Gは、水素又はC〜Cアルキルであり、
及びGは、メチルであり、G及びGは、エチル若しくはプロピルであるか、又はG及びGは、メチルであり、G及びGは、エチル若しくはプロピルであり;そして
Xは、−CH−ファニル、CHCH−フェニル、(CHC−フェニル、(C〜Cシクロアルキル)CCN、(CHCCN、下記式:
【0054】
【化23】

【0055】
−CHCH=CH、CHCH−CH=CH、(C〜Cアルキル)CR20−C(O)−フェニル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−N−ジ(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NH(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NHからなる群より選択され、ここでR20は、水素又は(C〜C)アルキルである〕
で示されるものである。
【0056】
上記の化合物及びそれらの調製は、GB2335190及びGB2361235、並びにUS6,353,107に記載されている。
【0057】
ニトロキシルエーテルの別の好ましい群は、式:(IIc)、(IId)、(IIe)、(IIf)、(IIg)又は(IIh):
【0058】
【化24】

【0059】
〔式中、R201、R202、R203及びR204は、互いに独立して、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C18アルキニルか、OH、ハロゲン若しくは基−O−C(O)−R205により置換されているC〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C18アルキニル、少なくとも1つのO原子及び/若しくはNR205基により中断されているC〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル、又はC〜C10アリールであるか、或いはR201とR202、及び/又はR203とR204は、結合炭素原子と一緒になって、C〜C12シクロアルキルラジカルを形成し;
205、R206及びR207は、独立して、水素、C〜C18アルキル又はC〜C10アリールであり;
208は、水素、OH、C〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C18アルキニルか、1つ以上のOH、ハロゲン若しくは基−O−C(O)−R205により置換されているC〜C18アルキル、C〜C18アルケニル、C〜C18アルキニル、少なくとも1つのO原子及び/若しくはNR205基により中断されているC〜C18アルキル、C〜C12シクロアルキル若しくはC〜C10アリール、C〜Cフェニルアルキル、C〜C10ヘテロアリール、−C(O)−C〜C18アルキル、−O−C〜C18アルキル、又は−COOC〜C18アルキルであり;
209、R210、R211及びR212は、独立して、水素、フェニル又はC〜C18アルキルであり;そして
Xは、−CH−ファニル、CHCH−フェニル、(CHC−フェニル、(C〜Cシクロアルキル)CCN、(CHCCN、下記式:
【0060】
【化25】

【0061】
−CHCH=CH、CHCH−CH=CH、(C〜Cアルキル)CR20−C(O)−フェニル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−N−ジ(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NH(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NHからなる群より選択され、ここでR20は、水素又は(C〜C)アルキルである〕
で示されるものである。
【0062】
より好ましくは、式:(Ic)、(Id)、(Ie)、(f)、(Ig)及び(Ih)において、R201、R202、R203及びR204のうちの少なくとも2つは、エチル、プロピル又はブチルであり、残りはメチルであるか、或いは
201とR202、又はR203とR204は、結合炭素原子と一緒になって、C〜Cシクロアルキルラジカルを形成し、残りの置換基のうちの1つは、エチル、プロピル又はブチルである。
【0063】
最も好ましくは、XはCHCH−フェニルである。
【0064】
上記の化合物及びそれらの調製は、GB2342649に記載されている。
【0065】
更なる適切な化合物は、式(III):
【0066】
【化26】

【0067】
〔式中、
11、G12、G13及びG14は、独立してC〜Cアルキルであるか、或いはG11とG12は共に、及びG13とG14は共に、又はG11とG12は共に、若しくはG13とG14は共に、ペンタメチレンであり;
15及びG16は、互いに独立して、水素又はC〜Cアルキルであり;
Xは、上記で定義されたとおりであり;
kは、1、2、3又は4であり;
Yは、O、NR302であるか、或いはnが1であり、そしてR301がアルキル又はアリールを表す場合、Yは、追加的に直接結合であり;
302は、H、C〜C18アルキル又はフェニルであり;
kが1の場合、
301は、H、非置換であってもよいか又は1つ以上のOH、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルにより置換されていてもよい、直鎖又は分岐鎖のC〜C18アルキル、C〜C18アルケニル又はC〜C18アルキニルであるか;
〜C12シクロアルキル又はC〜C12シクロアルケニルであるか;
非置換であってもよいか又は1つ以上のC〜Cアルキル、ハロゲン、OH、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルにより置換されていてもよい、フェニル、C〜Cフェニルアルキル又はナフチルであるか;
−C(O)−C〜C36アルキル、又は3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の、若しくは7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸のアシル部分であるか;
−SO、−PO(O、−P(O)(OR、−SO−R、−CO−NH−R、−CONH、COOR又はSi(Me)であり、ここでQは、H、アンモニウム又はアルカリ金属カチオンであり;
kが2の場合、
301は、非置換であってもよいか、若しくは1つ以上のOH、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルにより置換されていてもよい、C〜C18アルキレン、C〜C18アルケニレン若しくはC〜C18アルキニレンであるか;又は
キシリレンであるか;或いは
301は、2〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸のビスアシルラジカル、又は8〜14個の炭素原子を有する脂環式若しくは芳香族ジカルボン酸であり;
kが3の場合、
{ R301は、脂肪族、脂環式又は芳香族トリカルボン酸の三価ラジカルであり;そして
kが4の場合、R301は、脂肪族、脂環式又は芳香族テトラカルボン酸の四価ラジカルである〕
で示される4−イミノ化合物である。
【0068】
好ましくは、G16は、水素であり、G15は、水素又はC〜Cアルキル、特にメチルであり、そして
11及びG13は、メチルであり、G12及びG14は、エチル若しくはプロピルであるか、又はG11及びG12は、メチルであり、G13及びG14は、エチル若しくはプロピルである。
【0069】
式Vの4イミノ化合物は、例えば、ヒドロキシルアミンとの縮合反応、続くOH基との反応において対応する4−オキソニトロキシドから出発する、E.G. Rozantsev, A.V. Chudinov, V.D.Sholle.:Izv. Akad. Nauk. SSSR, Ser. Khim. (9), 2114 (1980)に従って調製することができる。化合物は、WO02/100831(Ciba)に記載されている。
【0070】
好ましいものは、式(II′)の構造要素が、式:A′、B′又はO′:
【0071】
【化27】

【0072】
〔式中、
mは、1であり、
Rは、水素、非中断であるか、若しくは1個以上の酸素原子で中断されているC〜C18アルキル、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジルか、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の、7〜15個の炭素原子を有する脂環式カルボン酸の、3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の、若しくは7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸の一価ラジカルであり;
pは、1であり;
101は、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアラルキル、C〜C18アルカノイル、C〜Cアルケノイル又はベンゾイルであり;
102は、C〜C18アルキル、C〜C18シクロアルキル、非置換であるか又はシアノ、カルボニル若しくはカルバミド基で置換されているC〜Cアルケニルであるか、又はグリシジルであるか、式:−CHCH(OH)−Zの、又は式:−CO−Z若しくは−CONH−Zの基であり、ここでZは、水素、メチル又はフェニルであり;
G{は、水素であり、Gは、水素又はC〜Cアルキルであり、
及びGは、メチルであり、G及びGは、エチル若しくはプロピルであるか、又はG及びGは、メチルであり、そしてG及びGは、エチル若しくはプロピルである〕
で示される化合物である。
【0073】
また適しているものは、構造要素:
【0074】
【化28】

【0075】
が、式(III′):
【0076】
【化29】

【0077】
〔式中、
11、G12、G13及びG14は、独立してC〜Cアルキルであるか、或いはG11とG12は共に、及びG13とG14は共に、又はG11とG12は共に、若しくはG13とG14は共に、ペンタメチレンであり;
15及びG16は、互いに独立して、水素又はC〜Cアルキルであり;
kは、1、2、3又は4であり;
Yは、O、NR302であるか、或いはnが1であり、そしてR301がアルキル又はアリールを表す場合、Yは、追加的に直接結合であり;
302は、H、C〜C18アルキル又はフェニルであり;
kが1の場合、
301は、H、非置換であってもよいか又は1つ以上のOH、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルにより置換されていてもよい、直鎖又は分岐鎖のC〜C18アルキル、C〜C18アルケニル又はC〜C18アルキニルであるか;
〜C12シクロアルキル又はC〜C12シクロアルケニルであるか;
非置換であってもよいか又は1つ以上のC〜Cアルキル、ハロゲン、OH、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルにより置換されていてもよい、フェニル、C〜Cフェニルアルキル又はナフチルであるか;
−C(O)−C〜C36アルキル、又は3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の、若しくは7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸のアシル部分であるか;
−SO、−PO(O、−P(O)(OR、−SO−R、−CO−NH−R、−CONH、COOR又はSi(Me)であり、ここでQは、H、アンモニウム又はアルカリ金属カチオンであり;
kが2の場合、
301は、非置換であってもよいか、若しくは1つ以上のOH、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニルにより置換されていてもよい、C〜C18アルキレン、C〜C18アルケニレン若しくはC〜C18アルキニレンであるか;又は
キシリレンであるか;或いは
301は、2〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸のビスアシルラジカル、又は8〜14個の炭素原子を有する脂環式若しくは芳香族ジカルボン酸であり;
kが3の場合、
301は、脂肪族、脂環式又は芳香族トリカルボン酸の三価ラジカルであり;そして
kが4の場合、R301は、脂肪族、脂環式又は芳香族テトラカルボン酸の四価ラジカルである〕
で示されている化合物である。
【0078】
種々の置換基におけるアルキルラジカルは、直鎖又は分岐鎖であることができる。1〜18個の炭素原子を含むアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルである。
【0079】
3〜18個の炭素原子を有するアルケニルは直鎖又は分岐鎖ラジカルであり、例としては、プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、n−2,4−ペンタジエニル、3−メチル−2−ブテニル、n−2−オクテニル、n−2−ドデセニル、イソドデセニル、オレイル、n−2−オクタデセニル又はn−4−オクタデセニルである。
好ましいものは、3〜12個、特に好ましいものは、3〜6個の炭素原子を有するアルケニルである。
【0080】
3〜18個を有するアルキニルは、直鎖又は分岐鎖ラジカルであり、例としては、プロピニル(−CH2−C≡CH)、2−ブチニル、3−ブチニル、n−2−オクチニル又はn−2−オクタデシニルである。好ましいものは、3〜12個、特に好ましいものは、3〜6個の炭素原子を有するアルキニルである。
【0081】
ヒドロキシ置換アルキルの例は、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシヘキシルである。
【0082】
ハロゲン置換アルキルの例は、ジクロロプロピル、モノブロモブチル又はトリクロロヘキシルである。
【0083】
少なくとも1個のO原子で中断されているC〜C18アルキルは、例えば、−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH−O−CH−又は−CH−CH−O−CH−CH−CH−O−CH−CH−である。好ましくはポリエチレングリコールから誘導される。一般的な記載は、−((CH−O)−H/CHであり、ここで、aは1〜6の数であり、そしてbは2〜10の数である。
【0084】
少なくとも1個のNR基で中断されているC〜C18アルキルは、一般に−((CH−NR−H/CHとして記載されることができ、ここで、a、b及びRは、上記で定義されたとおりである。
【0085】
〜C12シクロアルキルは、典型的には、シクロプロピル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル又はトリメチルシクロヘキシルである。
【0086】
〜C10アリールは、例えば、フェニル又はナフチルであるが、また含まれるものは、C〜Cアルキル置換フェニル、C〜Cアルコキシ置換フェニル、ヒドロキシ、ハロゲン又はニトロ置換フェニルである。アルキル置換フェニルの例は、エチルベンゼン、トルエン、キシレン及びその異性体、メシチレン又はイソプロピルベンゼンである。ハロゲン置換フェニルは、例えばジクロロベンゼン又はブロモトルエンである。
【0087】
アルコキシ置換基は、典型的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシ及びこれらの対応する異性体である。
【0088】
〜Cフェニルアルキルは、ベンジル、フェニルエチル又はフェニルプロピルである。
【0089】
〜C10ヘテロアリールは、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、2,4−ジメチルピロール、1−メチルピロール、チオフェン、フラン、フルフラール、インドール、クマロン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピリジン、α−ピコリン、ピリダジン、ピラジン又はピリミジンである。
【0090】
Rがカルボン酸の一価ラジカルである場合、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレロイル、カプロイル、ステアロイル、ラウロイル、アクリロイル、メタクリロイル、ベンゾイル、シンナモイル又はβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルラジカルである。
【0091】
〜C18アルカノイルは、例えば、ホルミル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ドデカノイルであるが、好ましくはアセチルであり、C〜Cアルケノイルは、特にアクリロイルである。
【0092】
とりわけ、重合工程a)が非常に適している。工程a)が使用される場合、上記で概説された構造のニトロキシルエーテルは、O−X結合の間で開裂する。ここで、式(I)のフラグメント(E)はO−Nフラグメントに相当し、開始フラグメント(In)は、基XのC中心ラジカルに相当する。
【0093】
特に適切なニトロキシルエーテル及びニトロキシルラジカルは、下記式;
【0094】
【化30】

【0095】
で示されるものである。
【0096】
本発明の極めて特定の実施態様において、ポリマー又はコポリマーは、式(O1):
【0097】
【化31】

【0098】
で示される化合物により調製される。
【0099】
この場合、式(I)の開始フラグメント(In)は、下記式:
【0100】
【化32】

【0101】
で示されるものであり、基(E)は、下記式:
【0102】
【化33】

【0103】
で示されるものである。
【0104】
経路bの工程が選択される場合、開始フラグメント(In)は、フリーラジカル開始剤から誘導されるラジカルに相当する。経路b)のフリーラジカル開始剤は、好ましくは、アゾ化合物、過酸化物、ペルエステル(perester)又はヒドロペルオキシドである。
【0105】
特定の好ましいラジカル供給源は、2,2′−アゾビスイソブチルニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、遊離塩基又は塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)、遊離塩基又は塩酸塩、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド}又は2,2′−アゾビス−{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド;アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボネート、t−アミルペルネオデカノエート、t−ブチルペルネオデカノエート、t−ブチルペルピバレート、t−アミルペルピバレート、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス−(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジコハク酸過酸化物、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ビス−(4−クロロベンゾイル)−ペルオキシド、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペルマレイネート、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルペルイソノナオエート、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジベンゾエート、t−ブチルペルアセテート、t−アミルペルベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス−(t−ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシド、3−t−ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、ジ−t−アミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシン−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド又はt−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0106】
基Eは、必ずしも、酸素原子を介してポリマー又はコポリマーに結合している安定したフリーニトロキシルラジカルである必要はない。結合している安定したフリーニトロキシルラジカルの置換又は脱離反応によりもたらされる基であることも可能である。
【0107】
鎖末端に別の基を導入するために、又はニトロキシルを末端基とするポリマーを非反応性とするために、ニトロキシド(NO)を除去又は交換する幾つかの可能性が存在する。幾つかの特定の例を下記に提示する。
【0108】
ニトロキシド鎖末端を、例えば、均一開裂でラジカルを生じることができる化合物、例えばテトラフェニルエタン系生成物の使用により交換することができる。ニトロキシド鎖末端の交換は、ポリマーを、例えばテトラフェニルエタン誘導体の存在下で、開鎖と閉鎖の末端が活性である平衡の温度まで加熱することによって実施される。ニトロキシドと均一に開裂されたテトラフェニルエタン誘導体との交換が起こる。これは、例えば、Beyou, E.; Jarroux, N.; Zydowicz, N.; Chaumont, P. Macromol. Chem. Phys. 2001, 202, 974-79 (Functional End-Group Exchange of Nitroxide- or Bromo-Terminated Polystyrene)に記載されている。
【0109】
ニトロキシド鎖末端は、鎖末端にOH基を形成しながらZn/酢酸を使用することによって除去することもできる。これは、Chessa, G.; Scrivanti, A.; Matteoli, U.; Castelvetro, V. Polymer 2001, 42, 9347-53 (Synthesis of three- and six-arms polystyrene via living/controlled free radical polymerisation)に記載されている。
【0110】
更なる可能性は、ラジカル重合により容易にホモポリマー化することができない不飽和化合物の使用である。例は、無水マレイン酸、マレイミド、n−置換マレイミド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、α−メチルスチレン、ジアルキルフマレートのようなモノマー、又はイソブテン、シクロヘキセン、1−オクテン若しくは異性体、アルキルアリルエーテル、アリルエステルのような非活性化アルケンである。そのような不飽和化合物は、ニトロキシル媒介重合で反応性があるモノマーの消費及び/又は除去の後で、NOを末端基とするポリマーに優先的に添加される。次に、NOを末端基とするポリマー及び非重合反応性不飽和化合物は、ポリマーを更なる連鎖成長に対して不活性するのに十分な時間、高温で、例えば100〜150℃で加熱される。あらゆる理論に束縛されることなく、そのような非反応性モノマーによる後処理によって、NO基の全て又は大部分がポリマーから分離され、非反応性不飽和化合物の1つ又は僅か数単位が、ポリマー鎖末端に挿入されると考えられる。そのような後処理官能化の特定の例は、Harth, E.; Hawker, C.J.; Fan, W.; Waymouth, R.M. Macromolecules 2001, 34(12), 3856-62 (Chain End Functionalization in Nitroxide-Mediated "Living" Free Radical Polymerizations)に記載されているように、二重結合の形成下での無水マレイン酸及びマレイミドとの反応である。
【0111】
なお別の可能性は、鎖末端においてフラグメンテーションを誘発することができる化合物の使用、例えばニトロキシド仲介フリーラジカル重合においてメタクリレートを使用することである。アクリルポリマーのニトロキシド鎖末端は、例えば過剰量のメタクリル酸メチルを用いて、開鎖と閉鎖の末端が活性である平衡の温度で加熱することによって除去することができる。Cheng, C.; Yang, N.-L. Polymer Preprints 2003, 41(1), 1010-11 C. Burguiere, M.-A. Dourges, B. Charleux, J.-P. Vairon, Macromolecules, 1999, 32, 3883-3890に記載されているように、鎖末端での二重結合の形成及びニトロキシドの除去を観察することができる。
【0112】
ニトロキシド媒介制御フリーラジカル重合により行われるポリマーからのNOの脱離の簡単な方法は、反応性モノマーの除去の後で高温に加熱することによるものである。これは、更なるニトロキシル媒介重合に不活性なポリマーをもたらす。理論に束縛されることなく、そのような熱後処理によって、ポリマーからNO基が脱離されるか又は交換されると考えられる。
【0113】
好ましくは、式Iのポリマーは、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%のn−ブチルメタクリレート、及び0.5〜50%、より好ましくは1〜20%の、プロパルギル(メタ)アクリレート、好ましくはプロパルギルアクリレートからなる群より選択される多官能モノマーから構成される。
【0114】
本発明のポリマーは、好ましくは、1.0〜2の多分散性を有する。
【0115】
使用
ポリマーを、顔料湿潤剤及び/又は分散剤として使用することができる。更に、ポリマーを、アルキンにより開始する全ての反応(例えば、レッペ法)における出発物質として、又はヒドロシリル化反応における出発物質として使用することができる。
【0116】
実施例
ポリ−(n−ブチルアクリレート)−コ−(プロパルギルアクリレート)の調製
【0117】
【化34】

【0118】
重合調節剤1−(1−フェニルエトキシ)−2,3,6−トリメチル−2,6−ジエチル−4−オキソピペリジン〔US6,353,107を参照すること〕及びn−ブチルアクリレートの混合物を、温度計、冷却器及び電磁式撹拌機を備えた250mlの三つ首フラスコの中に入れ、2回脱ガスした。得られた明澄な溶液を窒素下で125℃に加熱し、重合を、固形分が約45%になるまで実施した。残りのモノマーを、真空下で蒸発することによって除去した。
【0119】
プロパルギルアクリレートを加えた。明澄な混合物を2回脱ガスし、窒素下で130℃に加熱し、重合を、固形分が約77%になるまで実施した。残りのプロパルギルアクリレートを、真空下で蒸留することによって除去した。
【0120】
明澄で黄色を帯びた粘性流体を得た。詳細なモル比及び生成物のデータについては、表を参照すること。
【0121】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロキシル媒介制御フリーラジカル重合により得られ、それによって過剰量のアクリレートが存在する、式(I):
【化1】


〔式中、
Inは、重合反応を開始する開始剤フラグメントであり:
A及びA′は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、アクリル酸(C〜C22)ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、メタクリル酸(C〜C22)ヒドロキシアルキルエステル、アミノ、(C〜C22)アルキルアミノ、(C〜C22)ジアルキルアミノ、−SOH、エポキシ、フルオロ、ペルフルオロ若しくはシロキサン基で置換されているアクリル酸(C〜C22)アルキルエステル又はメタクリル酸(C〜C22)アルキルエステル、スチレン、置換スチレン、アクリルアミド及びメタクリルアミド、N−モノ(C〜C22)アルキルアクリルアミド、N,N−ジ(C〜C22)アルキルアクリルアミドからなる群より選択される同一又は異なるモノマーであるが、但し、非置換アクリル酸(C〜C22)アルキルエステル及び/又はメタクリル酸(C〜C22)アルキルエステルの量は、モノマー混合物全体の重量に基づいて30重量%を越えており;
Bは、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つの多官能モノマーであるが、但し、これらのエチレン性不飽和結合の少なくとも一方は、高反応性二重結合であり、他方は、低反応性二重又は三重結合であり;
Eは、酸素原子を介してポリマー若しくはコポリマーに結合している少なくとも1つの安定したフリーニトロキシルラジカルを担持する基、又は結合している安定したフリーニトロキシルラジカルの置換若しくは脱離反応によりもたらされる基であり;
x及びx′は、独立して0又は5〜5000の数であり;
yは、5〜5000の数であり;
zは、モノマー配列(A)−(B)に結合している末端基Eの平均数を示す、1又は1を越える数であり、好ましくは、zは1であり;
nは、1〜20の数、好ましくは1である〕
で示されるポリマー。
【請求項2】
ポリマーが、ホモポリマー(x及びx′が0である)、ジブロック、トリブロック、マルチブロックコポリマー、勾配コポリマー、又はテーパードコポリマーである、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
Aが、スチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アリクリアミド、メタクリルアミド若しくはジメチルアミノプロピル−メタクリルアミド、又はこれらの混合物であり、そして
Bが、プロパルギル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチニル(メタ)アクリレート、多不飽和脂肪アルコールの(メタ)アクリレートエステル、又はジアリルマレエートである、
請求項1又は2記載のポリマー。
【請求項4】
Aが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、スチレン、ビニルピリジンであり、そしてBがプロパルギルアクリレートである、請求項3記載のポリマー。
【請求項5】
式(I)のポリマーが、
a)構造要素:
【化2】


を有するアルコキシルアミン開始剤/調節剤の存在下で重合すること、又は
b)構造要素:
【化3】


を有する安定したニトロキシルフリーラジカル及びラジカル開始剤(フリーラジカルの供給源)の存在下で重合すること
により得られる、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項6】
構造要素:
【化4】


が、式(II)の構造要素であり、そして構造要素:
【化5】


が、式(II′):
【化6】


〔式中、
、G、G、Gは、独立してC〜Cアルキルであるか、又はGとG若しくはGとG若しくはG、G、G、Gは、一緒になってC〜C12シクロアルキル基を形成し;
、Gは、独立して、H、C〜C18アルキル、フェニル、ナフチル又は基COOC〜C18アルキルであり;
Xは、−CH−ファニル、CHCH−フェニル、(CHC−フェニル、(C〜Cシクロアルキル)CCN、(CHCCN、下記式:
【化7】


−CHCH=CH、CHCH−CH=CH、(C〜Cアルキル)CR20−C(O)−フェニル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−N−ジ(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NH(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル−CR20−C(O)−NHからなる群より選択され、ここで
20は、水素又は(C〜C)アルキルであり、そしては、原子価を示す〕
で示される構造要素である、請求項5記載のポリマー。
【請求項7】
Eが、式A′、B′又はO′:
【化8】


〔式中、
mは、1であり、
Rは、水素、非中断であるか若しくは1個以上の酸素原子で中断されているC〜C18アルキル、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジルか、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の、7〜15個の炭素原子を有する脂環式カルボン酸の、3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の、若しくは7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸の一価ラジカルであり;
pは、1であり;
101は、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアラルキル、C〜C18アルカノイル、C〜Cアルケノイル又はベンゾイルであり;
102は、C〜C18アルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換であるか又はシアノ、カルボニル若しくはカルバミド基で置換されているC〜Cアルケニルであるか、又はグリシジルであるか、式:−CHCH(OH)−Zの、又は式:−CO−Z若しくは−CONH−Zの基であり、ここでZは、水素、メチル又はフェニルであり;
は、水素であり、Gは、水素又はC〜Cアルキルであり、
及びGは、メチルであり、G及びGは、エチル若しくはプロピルであるか、又はG及びGは、メチルであり、そしてG及びGは、エチル若しくはプロピルである〕
で示されるものである、請求項1のポリマー。
【請求項8】
Eが、下記式:
【化9】


で示され、そして式(I)の開始フラグメント(In)が、下記式:
【化10】


で示される、請求項1記載のポリマー。
【請求項9】
顔料湿潤剤及び/又は分散剤としての、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリマーの使用。
【請求項10】
アルキンにより開始する全ての反応(例えば、レッペ法)における出発物質としての、又はヒドロシリル化反応における出発物質としての、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリマーの使用。

【公表番号】特表2009−508976(P2009−508976A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528465(P2008−528465)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065480
【国際公開番号】WO2007/025885
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】