説明

ヌクレオシド系抗生物質誘導体

【課題】抗菌活性を示す化合物、より好ましくはMraYの作用を阻害することによって抗菌活性を示す抗菌ヌクレオシド化合物、特にMraY阻害剤であるMuraymycinの新規誘導体を提供する。
【解決手段】本発明に示されるMuraymycinの新規誘導体またはその薬学的に許容される塩を提供することによって上記課題が解決された。本発明に係る化合物は、既存の核酸系抗生物質と比較して、同程度またはそれ以上の活性を有しながら、合成化学的に容易に供給することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性を有する物質に関する。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオシドは最も重要な生体物質の1つである。これらは遺伝情報の保存・発現をつかさどるDNA・RNAの構成成分であるばかりでなく、補酵素や細胞内情報伝達物質などとして機能したり、細胞内代謝やエネルギー供与にも関与し、多彩かつ重要な役割を担っている。古くからヌクレオシドは創薬化学研究を行う上でよいリードとして認識されており、様々なヌクレオシド系化合物が臨床使用されている。
【0003】
一方、天然には、ヌクレオシドを構造中に含む化合物が存在する。これは、実に多種多様な生物活性、特に抗がん、抗ウイルス、抗菌、抗真菌活性等の有用な活性を有するものがある。したがって、ヌクレオシド系天然物も創薬開発のよいリードとなりうる。
【0004】
これらの創薬リードとしての潜在的な価値を創薬研究における成果体として具現化するためには、物理的・化学的安定性や活性の向上、構造の単純化、新たな機能の付加などの改変が必要とされ、それには有機合成化学を基盤とした化学修飾が用いられる。
【0005】
しかし、ヌクレオシド誘導体を合成する方法には、いくつかの克服すべき問題が存在する。例えば、含窒素芳香環である核酸塩基が基質に含まれているため、その高い配位能から使用できる試薬が限定され、また糖部へ増炭反応を行う際の原料となるアルデヒド、ケトン体が、各種反応条件において不安定であることが挙げられる。これらの問題を克服するために、発明者らは新規作用機序を有する抗菌ヌクレオシドの合成研究を行ってきた。
【0006】
ペプチドグリカンは細胞壁の主要構成成分であり、その生合成経路において、MraY(細胞内膜酵素トランスロカーゼ I)が必須な酵素として作用している。よって、細胞壁合成阻害剤となりうるMraY阻害剤は、近年抗菌剤開発の新たな標的として注目されており、薬剤耐性菌を含む細菌に対して広く有効な薬剤の創製に繋がることが期待されている。現在臨床で広く利用されているグリコペプチド系(バンコマイシン、テイコプラニン)やβ−ラクタム系抗生物質の標的よりも生合成経路において上流に位置するため、MraY阻害剤は、MRSAやVREといった薬剤耐性菌を含む細菌に対して広く有効な薬剤の創製につながることが期待される(非特許文献1、非特許文献2を参照のこと)。
【0007】
これまでに新規作用機序を有し、抗菌作用を有するヌクレオシド系化合物の単離や誘導体の合成研究が行なわれてきた。
【0008】
FR−900493は、1989年に藤沢薬品工業株式会社によって木枯菌から単離された広い抗菌スペクトルを有するヌクレオシド天然物である(特許文献1および2を参考のこと)。またMuraymycin類は、2002年にWyeth社によって単離された天然物であり、強力なMraY阻害活性と黄色ブドウ球菌感染マウスを用いたin vivo活性試験で優れた治療効果を示した。またin vivo実験において毒性等の副作用は報告されておらず、新規抗菌剤開発のリードとして期待されている(特許文献3〜6、非特許文献3および4を参照のこと)。その他の抗菌作用を有するヌクレオシド系化合物の例としては、特許文献3〜20、非特許文献5〜9に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−296992号明細書
【特許文献2】特開平5−78385号明細書
【特許文献3】国際公開第2002/085310号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2002/085867号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2002/086139号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2001/12643号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2004/067544号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2008/020560号パンフレット
【特許文献9】特開2003−12687号明細書
【特許文献10】国際公開第97/41248号パンフレット
【特許文献11】特開平5−47560号明細書
【特許文献12】国際公開第2004/046368号パンフレット
【特許文献13】特開2005−247725号明細書
【特許文献14】特開2008−74710号明細書
【特許文献15】特開2004−196780号明細書
【特許文献16】特開2005−247725号明細書
【特許文献17】特開2006−111594号明細書
【特許文献18】特開2008−74710号明細書
【特許文献19】特表2007−518723号明細書
【特許文献20】特開平2−306992号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】薬学雑誌 2008, 128(10) p1403-1430
【非特許文献2】Expert Opin. Ther. Patents 2007, 17(5) P487-498
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 10260-10261
【非特許文献4】Bioorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 2341-2344
【非特許文献5】J. Org. Chem. 2008, 73, 569-577
【非特許文献6】Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 1854-1856
【非特許文献7】Bioorg. Med. Chem. 2008, 16, 428-436
【非特許文献8】Bioorg. Med. Chem. 2008, 16, 5123-5133
【非特許文献9】Nucleic Acids Symposium Series No. 52 557-558
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、抗菌活性を有する化合物を提供することである。より好ましくは、MraYの作用を阻害することによって抗菌活性を示す抗菌ヌクレオシド化合物、特にMraY阻害剤であるMuraymycinの新規誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
式(I):
【0013】
【化1】



【0014】
(式中、Rは−OH、−O−低級アルキル、または−NRであり、
は、C4−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、またはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールであり、
は、水素または低級アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式基、複素環式基、炭素環アルキル、複素環アルキル、またはRもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成していてもよく、
およびRは、それぞれ独立して水素または低級アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式基、複素環式環、炭素環アルキル、複素環アルキル、またはRおよびRが一緒になって複素環を形成していてもよく、
mは0−3の整数である。)
で示される化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目2)
が−OH、または−O−低級アルキルである項目1に記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目3)
が−NRである項目1に記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目4)
およびRが、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式基、複素環式環、またはRおよびRが一緒になって複素環を形成していてもよい項目1または3に記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目5)
がC4−C20アルキル、C9−C20アルケニル、C3−C20アルキニル、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールである項目1〜4のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目6)
がC11−C20アルキル、C9−C20アルケニル、またはC1−C10アルキル、もしくはC2−C10アルケニルで置換されているアリールである項目1〜4のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目7)
がC11−C20アルキル、またはC9−C20アルケニルである項目1〜4のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目8)
が水素である項目1〜7のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目9)
およびRが、それぞれ独立して水素、低級アルキル、またはRもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成していてもよい項目1〜8のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目10)
およびRが、いずれも水素である項目1〜9のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
(項目11)
項目1〜10のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を含有する医薬組成物。
(項目12)
MraY阻害作用を有する項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
抗菌活性を有する項目11に記載の医薬組成物。
【0015】
以上から、本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳細な説明を読めば、明白である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る化合物は、既存の核酸系抗生物質と比較して、同程度またはそれ以上の活性を有しながら、合成化学的に容易に供給することが可能である。既存の化合物群の供給では、フラノース環シントンの合成およびそのグリコシル化反応の工程を必要とするが、本発明に係る化合物は、これらの工程を経ることなく短工程で供給可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される全ての専門用語および科学技術用語は、特に言及しない限り、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0018】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は、統一した意味で使用し、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わされて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
【0019】
「アルキル」とは、直鎖または分枝鎖の1価の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノナニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラでシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル等が挙げられる。
【0020】
「低級アルキル」とは、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分枝状のアルキルを包含し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、およびイソヘキシル等が挙げられる。
【0021】
「アルケニル」とは、任意の位置に1以上の二重結合を有する直鎖または分枝状のアルケニルを包含する。具体的にはビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、プレニル、ブタジエニル、ペンテニル、イソペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、イソヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル等を包含する。
【0022】
「アルキニル」とは、直鎖または分枝状のアルキニルを包含する。具体的には、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等を包含する。これらはさらに任意の位置に二重結合を有していてもよい。
【0023】
「炭素環式基」としては、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールおよび非芳香族縮合炭素環式基等を包含する。
【0024】
具体的に「シクロアルキル」とは炭素数3〜10、好ましくは炭素数3〜8、より好ましくは炭素数4〜8の炭素環式基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシル等を包含する。
【0025】
具体的に「シクロアルケニル」とは、上記シクロアルキルの環中の任意の位置に1以上の二重結合を有しているものを包含し、具体的にはシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロへプチニル、シクロオクチニルおよびシクロヘキサジエニル等が挙げられる。
【0026】
具体的に「アリール」とは、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル等を包含し、特にフェニルが好ましい。
【0027】
具体的に「非芳香族縮合炭素環式基」とは、上記「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」および「アリール」から選択される2個以上の環状基が縮合した基を包含し、具体的にはインダニル、インデニル、テトラヒドロナフチルおよびフルオレニル等が挙げられる。
【0028】
「C1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリール」とは、その数の範囲の炭素数を有するアルキル、アルケニルまたはアルキニルで置換されているアリールであり、アリール部分は、上記「アリール」と同様である。好ましい態様としては、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニルまたはC2−C20アルキニルで置換されているフェニルである。さらに好ましい態様としては、C1−C10アルキル、またはC2−C10アルケニルで置換されているフェニルである。
【0029】
「炭素環アルキル」の炭素環部分も上記「炭素環式基」と同様である。
【0030】
「炭素環アルキル」のアルキル部分も上記「アルキル」と同様である。
【0031】
「複素環式基」としては、O、SおよびNから任意に選択される同一または異なるヘテロ原子を環内に1以上有するヘテロアリール、非芳香族複素環式基、2環の縮合複素環式基、3環の縮合複素環式基等の複素環式基を包含する。
【0032】
具体的に「ヘテロアリール」とは、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等の5〜6員の芳香族環式基が挙げられる。
【0033】
具体的に「非芳香族複素環式基」とは、ジオキサニル、チイラニル、オキシラニル、オキセタニル、オキサチオラニル、アゼチジニル、チアニル、チアゾリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジニル、ヘキサヒドロアゼピニル、テトラヒドロジアゼピニル、テトラヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニル等が挙げられる。
【0034】
具体的に「2環の縮合複素環式基」とは、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンゾピラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、チエノピリジル、チエノピロリル、チエノピラゾリル、チエノピラジニル、フロピロリル、チエノチエニル、イミダゾピリジル、ピラゾロピリジル、チアゾロピリジル、ピラゾロピリミジニル、ピラゾロトリアニジル、ピリダゾロピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンズオキサジニル、ジヒドロベンズイミダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、テトラヒドロベンゾフリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキソニル、クロマニル、クロメニル、オクタヒドロクロメニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾオキセジニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、ジヒドロチエノジオキシニル等が挙げられる。
【0035】
具体的に「3環の縮合複素環式基」とは、カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル、イミダゾキノリル、テトラヒドロカルバゾリル等が挙げられる。
【0036】
「複素環式基」の好ましい態様としては5〜6員のヘテロアリールまたは非芳香族複素環式基である。
【0037】
「置換もしくは非置換の炭素環式基」および「置換もしくは非置換の複素環式基」の置換基としては、低級アルキルおよび置換基群αからなる群から選択される1以上の基が挙げられる。
【0038】
「複素環アルキル」の複素環部分も上記「複素環式基」と同様である。
【0039】
「複素環アルキル」のアルキル部分も上記「アルキル」と同様である。
【0040】
「RもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成し」および「RおよびRが一緒になって複素環を形成し」の複素環も上記「複素環」と同様である。
【0041】
「溶媒和物」とは、例えば有機溶媒との溶媒和物(例えば、アルコール(例:エタノール)和物)、水和物等を包含する。水和物を形成する時は、任意の数の水分子と配位していてもよい。
【0042】
製薬上許容されるプロドラッグとしては、当該分野において公知の任意の形態を採用することができる。プロドラッグは生体の代謝機構を逆手にとり、もとのままの形では薬作用を示さないかまたは非常に弱い活性を示すのみであるが、生体内で代謝されることで、初めて薬理活性を示すか薬理活性が増大されるように修飾されているもののことをいう。塩、溶媒和物などのほか、エステル、アミドなどもプロドラッグの一例として挙げることができる。
【0043】
本発明の化合物は製薬上許容される塩を包含する。例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウムまたはカリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウムまたはカルシウム等)、アンモニウム、有機塩基およびアミノ酸との塩、または無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸またはヨウ化水素酸等)、および有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特に塩酸、リン酸、酒石酸またはメタンスルホン酸等が好ましい。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0044】
また、本発明の化合物は特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(ケト−エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体および回転異性体等)やラセミ体を含むものである。
【0045】
本発明に係る化合物の特徴は、Muraymycin類が有するアミノフラノース部分を、式(I)における部分構造式(I’)
【0046】
【化2】

【0047】
(式中、R、R、R、R、Rおよびmは、上記と同義である。)
に変換したことである。
【0048】
本発明に係る化合物の別の特徴は、式(I)のRに対して、C4−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニルまたはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールを適用したことである。
【0049】
の好ましい態様は、C4−C20アルキル、C9−C20アルケニル、C3−C20アルキニルまたはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールである。
【0050】
のより好ましい態様は、C11−C20アルキル、C9−C20アルケニル、またはC1−C10アルキル、もしくはC2−C10アルケニルで置換されているアリールである。
【0051】
のさらに好ましい態様は、RがC11−C20アルキル、またはC9−C20アルケニルである。
【0052】
本発明化合物は、上記の構造を有することで合成上有利である。また細胞内移行性や抗菌活性等が改善されている。
【0053】
(本発明の化合物の製造法)
本発明の化合物の一般的製造法を以下に例示する。また、抽出、精製などは、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。
【0054】
本発明の化合物の合成は、当該分野において公知の手法を参酌しながら実施することができる。
【0055】
原料化合物は、市販の化合物であるか、非特許文献5または6に記載されたもの、このほか本明細書において記載されたものならびに本明細書において他に引用された文献に記載されるものならびに他に公知の化合物を利用することができる。
【0056】
本発明の化合物の中には、互変異性体が存在し得るものがあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0057】
本発明の化合物の塩を取得したいとき、本発明の化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸または塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0058】
また、本発明の化合物およびその製薬上許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物(水和物ないし溶媒和物)の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明に包含される。
【0059】
本発明の化合物の例は、実施例において種々列挙されており、当業者はこれらを参考にして、本発明の例示されていない化合物をも製造、使用することができる。
【0060】
実施例に記載した本発明の化合物の代表的な一般合成法を、下記の一般合成法に示した。実施例に記載の化合物は、概ねこれらに従って合成したが、特にこれらの方法に限定はされるものではない。化合物の製造にあたり利用可能な反応溶媒、塩基、還元剤等を下記に記載した。下記一般合成法においては、それらの中でも好ましいものを提示したが、特にそれらに限定されるものではない。
(1)反応溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、飽和炭化水素類(例、シクロヘキサン、ヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(例、アセトニトリルなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、t−ブタノールなど)、水およびそれらの混合溶媒等。
(2)塩基:金属水素化物(例、水素化ナトリウムなど)、金属水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、金属炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムなど)、金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなど)、炭酸水素ナトリウム、金属ナトリウム、有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、2,6−ルチジンなど)、ピリジン、アルキルリチウム(n−ブチルリチウム(n−BuLi)、sec−ブチルリチウム(sec−BuLi)、tert−ブチルリチウム(tert−BuLi))等。
(3)還元剤:H2雰囲気下で使用するPd炭素などの担持金属、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ボラン錯体、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、シアン化水素化ほう素ナトリウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red−AlTM)、水素化アルミニウムリチウム等。
【0061】
本発明に係る化合物(I)は、下記方法により製造することができる。
【0062】
一般合成例A:化合物(A3)の合成
【0063】
【化3】

【0064】
(式中、R、Ra1およびRaは、各々独立して置換もしくは非置換の低級アルキルであり、Pgは、tert−ブトキシカルボニル(t−Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基などのアミノ保護基であり、その他の各記号は前記と同義)
非特許文献5にも同様の合成法が開示されている。開示されている方法と同様の合成法を用いて、化合物(A3)を以下の工程により合成することができる。
【0065】
第一工程
市販または公知の方法により調製できる化合物(A1)をトルエン、クロロホルム、ジクロロメタン等の溶媒中、濃硫酸などの酸の存在下で、RC(=O)で示されるケトンと0℃〜150℃、好ましくは0℃以下で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、アセタール保護された化合物を得ることができる。
【0066】
第二工程
上記で得られたアセタール保護された化合物を、アセトニトリル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、2−ヨードキシ安息香酸(IBX)などの酸化剤の存在下で、0℃〜150℃、好ましくは還流条件下で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、アルデヒド化合物を得ることができる。
【0067】
第三工程
上記で得られたアルデヒド化合物を、アセトニトリル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、PhP=CHCOで(RO)P(O)CHCO)示される化合物または(RO)P(O)CHCO)を塩基処理して得られるイリド(式中、Rは低級アルキルなどのリン酸保護基)と、−80℃〜50℃、好ましくは−80〜−20℃で、0.1時間〜24時間、好ましくは0.5時間〜12時間反応させることにより、化合物(A2)を得ることができる。
【0068】
第四工程
化合物(A2)を、アルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の溶媒中、t−BuOCl/NaOHの存在下、ならびにKOsO(OH)触媒および[DHQD]AQNなどのキラル配位子の存在下、Pg’NHで示される化合物を、−80℃〜50℃、好ましくは0〜25℃で、0.1時間〜24時間、好ましくは0.5時間〜12時間反応させること(いわゆる、シャープレス不斉アミノヒドロキシ化反応)により、化合物(A3)を得ることができる。
【0069】
一般合成例B:化合物(A9)の合成
【0070】
【化4】

【0071】
(式中、Pgは、トリメチルシリル(TMS)基、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基などのヒドロキシ保護基であり、その他の各記号は前記と同義)
第一工程
化合物(A3)をテトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水などの溶媒中またはエタノール−水等の混合溶媒中、トリフルオロ酢酸などの酸の存在下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、アセタール保護基のみを脱保護した化合物を得ることができる。
【0072】
第二工程
上記脱保護した化合物を、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、イミダゾールなどの塩基存在下、Pg−X(Xは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素などのハライドまたはトリフルオロメタンスルホニル基を示す)で示される化合物と、−80℃〜100℃、好ましくは0〜25℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間、反応させることにより、化合物(A4)を得ることができる。
【0073】
第三工程
化合物(A4)を、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水などの溶媒中またはエタノール−水等の混合溶媒中、例えばH2雰囲気下で水酸化パラジウム/炭素などの金属を用いる還元条件下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、Pg基部分のみを還元し、化合物(A5)を得ることができる。
【0074】
第四工程
化合物(A5)を、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、
【0075】
【化5】



【0076】
で示される化合物と、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、中間体(A6)を生成することができる。
【0077】
第五工程
上記の中間体(A6)を、トリエチルアミンなどの塩基存在下、RC(=O)X(Xは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素などのハライドを示す)で示されるアシルハライドと、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、化合物(A7)を得ることができる。
【0078】
第六工程
化合物(A7)を、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、チオフェノール(PhSH)およびチオアセテートナトリウム(NaSMe)などを用いる還元条件下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜数日間、好ましくは1時間〜3日間反応させることにより、R基を脱保護し、ならびにアジド基部分を還元して、化合物(A8)を得ることができる。
【0079】
第七工程
化合物(A8)を、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中またはこれらの混合溶媒中、3HF・EtN錯体、HF・ピリジン錯体などフッ化水素塩の存在下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜数日間、好ましくは1時間〜3日間反応させることにより、Pg基を脱保護し、化合物(A9)を得ることができる。
【0080】
一般合成法Bにおける別の態様において、以下の一般合成法B’の方法で、化合物(A7)から化合物(A10)を経て、化合物(A8)を得ることができる。
【0081】
一般合成法B’:化合物(A8)の合成
【0082】
【化6】

【0083】
(式中、各記号は前記と同義)
第一工程
a)化合物(A7)を、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、チオフェノール(PhSH)およびチオアセテートナトリウム(NaSMe)で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜数日間、好ましくは1時間〜3日間反応させることにより、R基を脱保護し、化合物(A10)を得ることができる。または、b)化合物(A7)を、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、ヨウ化リチウム(LiI)で、0.5時間〜数日間、好ましくは1時間〜3日間加熱(40℃〜150℃)することにより、R基のみを脱保護し、化合物(A10)を得ることができる。
【0084】
第二工程
化合物(A10)を、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水などの溶媒中またはエタノール−水等の混合溶媒中、例えばH2雰囲気下で水酸化パラジウム/炭素などの金属を用いる還元条件下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、アジド基部分を還元して、化合物(A8)を得ることができる。
【0085】
一般合成法Bにおける別の態様において、以下の一般合成法B’’の方法で、化合物(A10)から化合物(A9)を得ることができる。
【0086】
一般合成法B’':化合物(A9)の合成
【0087】
【化7】



【0088】
(式中、各記号は前記と同義)
第一工程
化合物(A10)を、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中またはこれらの混合溶媒中、3HF・EtN錯体、HF・ピリジン錯体などなどフッ化水素塩の存在下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜数日間、好ましくは1時間〜3日間反応させることにより、Pg基のみを脱保護した化合物(A13)を得ることができる。
【0089】
第二工程
得られた化合物(A13)を、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水などの溶媒中またはエタノール−水等の混合溶媒中、例えばH2雰囲気下で水酸化パラジウム/炭素などの金属を用いる還元条件下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、アジド基部分を還元して、化合物(A9)を得ることができる。
【0090】
一般合成法C:化合物(A11)の合成
【0091】
【化8】



【0092】
(式中、各記号は前記と同義)
第一工程
化合物(A7)を、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中またはこれらの混合溶媒中、3HF・EtN錯体、HF・ピリジン錯体などなどフッ化水素塩の存在下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜数日間、好ましくは1時間〜3日間反応させることにより、Pg基のみを脱保護した化合物(A14)を得ることができる。
【0093】
第二工程
得られた化合物(A14)を、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水などの溶媒中またはエタノール−水等の混合溶媒中、例えばH2雰囲気下で水酸化パラジウム/炭素などの金属を用いる還元条件下で、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、アジド基部分を還元して、化合物(A11)を得ることができる。
【0094】
一般合成法D:化合物(A12)の合成
【0095】
【化9】

【0096】
(式中、各記号は前記と同義)
化合物(A11)を、ジメチルホルムアミド、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、R−X(Xは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素などのハライド、および適切な脱離基を示す)で示される化合物と、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、化合物(A12)を得ることができる。
【0097】
または化合物(A11)を、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒中、酢酸などの酸とトリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH(OAc)), シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム(NaBHCN)などの還元剤共存下で、R−CHO(ここで、R=R−CH−であり、式中Rは水素または低級アルキルを示す)で示される化合物と、0℃〜150℃、好ましくは20℃〜60℃で、0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることにより、化合物(A12)を得ることができる。
【0098】
上記すべての工程において、反応の障害となる置換基(例えば、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、ホルミル、カルボニル、カルボキシル等)を有する場合には、Protective Groups in Organic Synthesis, Theodora W Green(John Wiley & Sons)等に記載の方法で予め保護し、望ましい段階でその保護基を除去すればよい。
【0099】
また、上記すべての工程について、実施する工程の順序を適宜変更することができ、各中間体を単離して次の工程に用いてもよい。
【0100】
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を、以下に例示する。各記号は上記記載と同義である。
【0101】
本発明に係る化合物のうち、以下の化合物が好ましい。
【0102】
各置換基の定義は、特に断りのない限り、上記項目1と同義である。
【0103】
一般式(I):
【0104】
【化10】

【0105】
において、
(A1)
(A1−1)Rとしては、−OH、−O−低級アルキル、または−NRである基が挙げられる。
(A1−2)Rとして好ましくは、−NRである基が挙げられる。
(A1−3)Rとしてさらに好ましくは、−OH、または−O−低級アルキルである基が挙げられる。
【0106】
(A2)
(A2−1)Rとしては、C4−C20アルキル、C2−C20アルケニル、またはC2−C20アルキニル、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールが挙げられる。
(A2−2)Rとして好ましくは、C4−C20アルキル、C9−C20アルケニル、C3−C20アルキニル、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールである基が挙げられる。
(A2−3)Rとしてさらに好ましくは、C11−C20アルキル、C9−C20アルケニル、またはC1−C10アルキル、もしくはC2−C10アルケニルで置換されているアリールである基が挙げられる。
(A2−4)Rとして最も好ましくは、C11−C20アルキル、またはC9−C20アルケニルである基が挙げられる。
【0107】
(A3)
(A3−1)Rとしては、水素または低級アルキルである基が挙げられる。
(A3−2)Rとして好ましくは、水素が挙げられる。
【0108】
(A4)
(A4−1)RおよびRとしては、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式基、複素環式基、炭素環アルキル、複素環アルキルである基が挙げられ、またはRもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成していてもよい。
(A4−2)RおよびRとして好ましくは、それぞれ独立して水素または低級アルキルである基が挙げられ、またはRもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成していてもよい。
【0109】
(A6)
(A6−1)RおよびRとしては、それぞれ独立して水素または低級アルキルである基が挙げられる。
(A6−2)RおよびRとして好ましくは、RおよびRがいずれも水素である。
【0110】
(A8)
(A8−1)RおよびRとしては、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式基、複素環式環、炭素環アルキル、複素環アルキルである基が挙げられ、またはRおよびRが一緒になって複素環を形成していてもよい。
(A8−2)RおよびRとして好ましくは、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式基、複素環式環である基が挙げられ、またはRおよびRが一緒になって複素環を形成していてもよい。
【0111】
(Am)
mとしては、0−3の整数が挙げられる。
【0112】
本発明の実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの置換基、ならびにmの組み合わせが以下のものである化合物が好ましい:
は(A1−1)〜(A1−3)のうちのいずれかであり、
は(A2−1)〜(A2−4)のうちのいずれかであり、
は(A3−1)〜(A3−2)のうちのいずれかであり、
は(A4−1)〜(A4−2)のうちのいずれかであり、
は(A4−1)〜(A4−2)のうちのいずれかであり、
は(A6−1)〜(A6−2)のうちのいずれかであり、
は(A6−1)〜(A6−2)のうちのいずれかであり、
は(A8−1)〜(A8−2)のうちのいずれかであり、
は(A8−1)〜(A8−2)のうちのいずれかであり、
mは(Am)である、化合物。
【0113】
(医薬)
本発明の化合物またはその製薬上許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが好ましい。また、それら医薬製剤は、動物および人に使用される。
【0114】
本発明に係る化合物は、核酸系抗生物質である。本発明化合物はスペクトルの広い抗菌活性を有し、人を含む各種哺乳動物における病原性細菌により生ずる種々の疾病、例えば気道感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、敗血症、腎炎、胆嚢炎、口腔内感染症、心内膜炎、肺炎、骨髄膜炎、中耳炎、腸炎、蓄膿、創傷感染、日和見感染等の予防又は治療のために使用され得る。
【0115】
本発明に係る化合物は、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ペニシリン耐性肺炎ブドウ球菌(PRSP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)等を含むグラム陽性菌に対して高い抗菌活性を示す。また、緑膿菌、大腸菌、インフルエンザ菌等を含むグラム陰性菌に対しても抗菌活性を示す。MraYの阻害作用を有する化合物は、β−ラクタム系抗生物質の標的よりも生合成経路において上流の位置で作用するため、β−ラクタム系抗生物質に耐性を有する菌、例えばβ−ラクタム耐性緑膿菌に対しても有効性が期待される。
【0116】
本発明に係る化合物は、既存の核酸系抗生物質と比較して、同程度またはそれ以上の活性を有しながら、合成化学的に容易に供給できる。既存の化合物群の供給では、フラノース環シントンの合成およびそのグリコシル化反応の工程を必要とするが、本発明に係る化合物は、これらの工程を経ることなく短工程で供給可能である。具体的には、上記グリコシル化反応は導入時に二種類の異性体(αおよびβ体)が生成し、この立体異性体分離がしばしば困難であるが、本発明ではこのグリコシル化工程が不要であるため、化合物を短工程で供給可能である。また、既存の化合物群の供給工程では、しばしば困難なウレアジペプチド中間体合成を含むが、本発明ではこの工程を必要としないため、化合物をより容易に供給可能である。さらに、最終生成物である化合物(I)は、例えばHPLC分取による立体異性体の分離が不要であり、合成化学的な利点を有する。さらに本発明に係る化合物は、経口吸収性が高い、良好なバイオアベイラビリティーを示す、半減期が長い、および細胞内移行性等の利点を有する。以上から、本発明に係る化合物は優れた医薬品になりうる。
【0117】
投与量は疾患の状態、投与ルート、患者の年齢、または体重によっても異なるが、成人に経口で投与する場合、通常0.1μg〜1g/日であり、好ましくは0.01〜200mg/日であり、非経口投与の場合には通常1μg〜10g/日であり、好ましくは0.1〜2g/日である。投与回数は、1日1回または分割して投与するのが好ましい。
【0118】
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口または例えば、直腸内、口腔内、皮下、筋肉内、静脈内等の非経口をあげることができる。
投与形態としては、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤等がある。経口投与に適当な、例えば乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビット、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。また、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニット等の賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。
【0119】
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性製剤からなる。例えば、注射剤の場合、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
【0120】
局所製剤は、活性化合物を1種もしくはそれ以上の媒質、例えば鉱油、石油、多価アルコール等または局所医薬製剤に使用される他の基剤中に溶解または懸濁させて調製する。
腸内投与のための製剤は、通常の担体、例えばカカオ脂、水素化脂肪、水素化脂肪カルボン酸等を用いて調製し、座剤として提供される。
【0121】
本発明の化合物は、医薬としての有用性を備えた化合物である。ここで、医薬としての有用性としては、細胞内移行性が向上するため、強い抗菌活性を有するという点、および血中のエステラーゼ等の酵素に耐性である点、クリアランスが小さい点、または、半減期が薬効を発現するために十分長い点などが含まれる。
【0122】
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、市販されているものを使用した。
【実施例】
【0123】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0124】
実施例中、各略号の意味は以下の通りである。
Me メチル
Et エチル
i−Pr イソプロピル
t−Bu t−ブチル
Ph フェニル
Bn ベンジル
Boc t−ブトキシカルボニル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
DMF ジメチルホルムアミド。
【0125】
実施例1 化合物(2)の合成
【0126】
【化11】

【0127】
(式中、HSOは硫酸を示し、IBXはo−ヨードキシ安息香酸を示し、MeCNはアセトニトリルを示し、CHClはジクロロメタンを示し、[DHQD]AQNはビス(ジヒドロキニジノ)アントラキノンを示し、t−BuOClはt−ブチルハイポクロライトを示し、NaOHは水酸化ナトリウムを示す。)
化合物(2)を、Hirano, S., Ichikawa, S., Matsuda, A., J. Org. Chem., 2007, 72, 9936に記載の方法(スキーム1)によって合成した。
【0128】
実施例2 化合物(8a)の合成
【0129】
【化12】

【0130】
化合物(8a)をスキーム2に従い、合成した。各工程を以下に詳細に示す。
【0131】
実施例2−1 化合物(3)の合成
【0132】
【化13】

【0133】
化合物(2)(1.4g, 3.0 mmol) をトリフルオロ酢酸 (24 mL) と水 (6 mL) の混合溶媒に溶解し、室温で 1 時間撹拌した。反応液を濃縮して得られた残渣をN,N−ジメチルホルムアミド (30 mL) に溶解し、0 ℃ でイミダゾール (1.8 g, 27 mmol)、ターシャリーブチルジメチルシリルクロライド(1.4 g, 9.0 mmol) を順に加えて室温で 3 日間撹拌した。反応完結後、メタノール (3 mL) を加えて反応を停止し、反応液を酢酸エチル(300 mL) と 水 (200 mL × 4) で分配した。有機層を 0.2 N 塩酸 (200 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (200mL)、飽和食塩水(200 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (移動層:ヘキサン/酢酸エチル = 2/1) で精製し、化合物(3)(1.6g, 2.3 mmol, 75%) を 白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.57(br s, 1H, -NH), 7.34-7.26 (m, 6H, -Ph, H-6, J6, 5= 8.0 Hz), 5.72 (d, 1H, H-5 J5, 6 = 8.0 Hz), 5.64 (br s, 1H,-CONH-), 5.31 (d, 1H, H-1’, J1’, 2’ = 5.7 Hz), 5.09 (m,2H, -CO2CH2-), 4.64 (br s, 1H, H-2’), 4.48 (br s,1H, H-6’), 4.36 (br s, 1H, -OH), 4.12, (br s, 3H, H-3’, H-4’, H-5’),3.75 (s, 3H, -CO2Me), 0.89 (s, 9H, t-ブチル), 0.85 (s,9H, t-ブチル), 0.07 (s, 3H, Si-Me), 0.04 (s, 3H, Si-Me), 0.03(s, 3H, Si-Me), 0.00 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 716[(M+Na)+]; ESIMS-HR 計算値 716.3011, 実測値 716.2993。
【0134】
実施例2−2 化合物(4)の合成
【0135】
【化14】

【0136】
化合物(3)(100mg, 0.14 mmol) をメタノール (3 mL) に溶解し、水酸化パラジウム/炭素 (22 mg) を加えた後、水素ガス雰囲気下室温で 1 時間撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動層:クロロホルム/メタノール = 99/1) で精製して化合物(4)(80.9 mg, 0.14 mmol, 定量) を白色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.95(d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz), 5.85 (d, 1H, H-1’, J1’,2’ = 5.2 Hz), 5.76 (d, 1H, H-5, J 5, 6 = 8.0 Hz), 4.29(dd, 1H, H-2’, J2’, 1’ = 5.2, J2’, 3’ = 4.6Hz), 4.18 (dd, 1H, H-3’, J3’, 2’ = 4.6, J3’, 4’= 4.0 Hz), 4.08 (dd, 1H, H-4’, J4’, 3’ = 4.0, J4’,5’ = 1.2 Hz), 3.80 (s, 3H, -CO2Me), 3.71 (d, 1H, H-5’, J5’,6’ = 7.5 Hz), 3.67 (d, 1H, H-6’, J6’, 5’ = 7.5 Hz),0.93 (s, 9H, t-ブチル), 0.90 (s, 9H, t-ブチル), 0.10 (s, 3H, Si-Me),0.09 (s, 3H, Si-Me), 0.09 (s, 3H, Si-Me), -0.08 (s, 3H, Si-Me);ESIMS-LR m/z 560 [(M+H)+]; ESIMS-HR 計算値 560.2823, 実測値 560.2808。
【0137】
実施例2−3 化合物(6a)の合成
【0138】
【化15】

【0139】
化合物(4)(210mg, 0.38 mmol) をジクロロメタン (5 mL) に溶解し、2−アジドアセトアルデヒド (260 mg, 3.0 mmol) を加え、室温で 30分撹拌した後、トリエチルアミン (130 mg, 1.3 mmol)、パルミトイルクロライド (310 mg, 1.1 mmol) を順に加えて室温で 15 時間撹拌した。反応液をクロロホルム(10 mL) と水 (10 mL)で分配した。有機層を0.2 N 塩酸 (10 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (10mL)、飽和食塩水 (10mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (移動層:ヘキサン/酢酸エチル = 5/1) で精製し、化合物(6a)(280mg, 0.32 mmol, 84%) を黄色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.24(br s, 1H, -NH), 7.52 (d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz),5.87 (br s, 1H, H-1’), 5.83 (br s, 1H, H-1”), 5.75 (d, 1H, H-5, J5,6 = 8.0 Hz), 4.76 (d, 1H, H-5’, J5’, 6’ = 5.8 Hz), 4.66(d, 1H, H-6’, J6’, 5’ = 5.8 Hz), 4.22 (br s, 1H, H-3’), 4.13(m, 2H, H-2’, H-4’), 3.88 (s, 3H, -CO2Me), 3.60 (t, 2H, H-2”),2.24 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.56 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.27 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.93 (s, 9H, t-ブチル), 0.91 (s, 9H, t-ブチル), 0.88 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz), 0.14 (s, 3H, Si-Me), 0.13 (s, 3H, Si-Me),0.12 (s, 3H, Si-Me), 0.10 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 887[(M+Na)+]; ESIMS-HR 計算値 887.5110, 実測値 887.5133。
【0140】
実施例2−4 化合物(6b)の合成
【0141】
【化16】

【0142】
実施例2−3に準じて、化合物(4)(130 mg, 0.22 mmol)、3−アジドプロパナール (180 mg, 1.8 mmol)、ジクロロメタン (3.0mL)、トリエチルアミン (160 mg, 1.6 mmol)、パルミトイルクロライド (440 mg, 1.6 mmol) より、化合物(6b)(68mg, 0.078 mmol, 35%) を黄色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.96(br s, 1H, -NH), 7.49 (d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz),5.87 (br s, 1H, H-1’), 5.87 (br s, 1H, H-1”), 5.74 (d, 1H, H-5, J5,6 = 8.0 Hz), 4.63 (d, 1H, H-5’, J5’, 6’ = 5.7 Hz), 4.51(d, 1H, H-6’, J6’, 5’ = 5.7 Hz), 4.21 (br s, 1H, H-3’), 4.10(m, 2H, H-2’, H-4’), 3.85 (s, 3H, -CO2Me), 3.43 (t, 2H, H-3”,J3”, 2” = 6.9 Hz), 2.14 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),2.10-1.92 (m, 2H, H-2”), 1.56 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.21 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.90 (s, 9H, t-ブチル), 0.87 (s, 9H, t-ブチル), 0.88 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz), 0.12 (s, 3H, Si-Me), 0.11 (s, 3H, Si-Me),0.09 (s, 3H, Si-Me), 0.07 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 901[(M+Na)+]; ESIMS-HR 計算値 901.5267, 実測値 901.5249。
【0143】
実施例2−5 化合物(6c)の合成
【0144】
【化17】



【0145】
実施例2−3に準じて、化合物(4)(200 mg, 0.35 mmol)、4−アジドブタナール (320 mg, 2.8 mmol,)、ジクロロメタン (5.0 mL)、トリエチルアミン(320 mg, 3.2 mmol)、パルミトイルクロライド (860 mg, 3.2 mmol) より、化合物(6c)(170 mg, 0.21 mmol,61%) を黄色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.37(br s, 1H, -NH), 7.59 (d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.2 Hz),5.89 (d, 1H, H-1’, J1’, 2’ = 2.6 Hz), 5.84 (d, 1H, H-5, J5,6 =8.2 Hz), 5.74 (br s, 1H, H-1”), 4.65 (d, 1H, H-5’, J5’, 6’= 6.4 Hz), 4.53 (d, 1H, H-6’, J6’, 5’ = 6.4 Hz), 4.25 (br s,1H, H-3’), 4.10 (m, 2H, H-2’, H-4’), 3.88 (s, 3H, 3.44, -CO2Me),3.38 (t, 2H, H-4”, J4”, 3” = 7.2 Hz), 2.80 (t, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),2.49-2.29 (m, 2H, H-2”), 1.95 (m, 2H, H-3”), 1.73 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.26 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.92 (s, 9H, t-ブチル), 0.90 (s, 9H, t-ブチル), 0.89 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz), 0.11 (s, 3H, Si-Me), 0.09 (s, 3H, Si-Me),0.05 (s, 3H, Si-Me), 0.03 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 915[(M+Na)+]; ESIMS-HR 計算値 915.5423, 実測値 915.5417。
【0146】
実施例2−6 化合物(7a)の合成
【0147】
【化18】

【0148】
化合物(6a)(120mg, 0.14 mmol) をテトラヒドロフラン (3 mL) に溶解し、ナトリウムメチルチオラート (32 mg, 0.35 mmol)、チオフェノール(38 mg, 0.35 mmol) を順に加えて 65 ℃ で 3 日間加熱還流した。反応液をクロロホルム (5 mL) と0.2 N 塩酸 (5 mL) で分配した。有機層を飽和食塩水(5 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (移動層:クロロホルム/メタノール = 99/1) で精製し、化合物(7a)(69mg, 0.084 mmol, 60%) を黄色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.53(d, 1H, H-6, J6,5 = 8.0 Hz), 5.75 (d, 1H, H-1’, J1’,2’ = 4.6 Hz), 5.73 (d, 1H, H-5, J5, 6 = 8.0 Hz), 5.68(t, 1H, H-1”, J1”, 2” = 2.2 Hz), 4.62 (dd, 1H, H-5’, J5’,6’ = 2.3, J5’, 4’ = 2.8 Hz), 4.45 (d, 1H, H-6’, J6’,5’ = 2.3 Hz), 4.44 (dd, 1H, H-3’, J3’, 2’ = 5.2, J3’,4’ = 5.2 Hz), 4.40 (dd, 1H, H-2’, J2’, 3’ = 5.2, J2’,1’ = 4.6 Hz), 4.14 (dd, 1H, H-4’, J4’, 3’ = 5.2, J4’,5’ = 2.8 Hz), 3.52 -3.24 (m, 1H, H-2”), 2.38-2.18 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.59 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.28 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.95 (s, 9H, t-ブチル), 0.91 (s, 9H, t-ブチル), 0.89 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz), 0.18 (s, 3H, Si-Me), 0.15 (s, 3H, Si-Me),0.10 (s, 3H, Si-Me), 0.05 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 823[(M-H)-]; ESIMS-HR 計算値 823.5073, 実測値 823.5051。
【0149】
実施例2−7 化合物(8a)の合成
【0150】
【化19】

【0151】
化合物(7a)(12mg, 0.015 mmol) をアセトニトリル (0.5 mL) とジクロロメタン (0.5 mL) の混合溶液に溶解し、三フッ化水素トリエチルアミン塩(16 mg, 0.10 mmol) を加え、室温で 7.5 時間撹拌した。反応液を濃縮後、得られた残渣を HPLC (YMC-Pack R&D ODS,250 × 4.6 mm, 移動層:メタノール/水 = 90/10, 保持時間:9.7 分) で精製し、化合物(8a)(7.5 mg, 0.013 mmol,86%) を白色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.61(d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz), 5.83 (br s, 1H, H-1’), 5.70 (d,1H, H-5, J5, 6 = 8.0 Hz), 5.58 (br s, 1H, H-1”), 4.63 (dd, 1H,H-5’, J5’, 4’ = 4.0, J5’, 6’ = 3.5 Hz),4.47 (br s, 1H, H-6’), 4.31 (dd, 1H, H-3’, J3’, 2’ = 5.8, J3’,4’ = 4.6 Hz), 4.23 (dd, 1H, H-2’, J2’, 1’ = 4.0, J2’,3’ = 5.8 Hz), 4.11 (dd, 1H, H-4’, J4’, 3’ = 4.6, J4’,5’ = 4.0 Hz), 3.38-3.12 (m, 1H, H-2”) 2.36-2.24 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.59 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.28 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2l),0.90 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz): ESIMS-LR m/z 595 [(M-H)-]; ESIMS-HR 計算値595.3343, 実測値 559.3331。
【0152】
実施例3 化合物(8b)および(8c)の合成
【0153】
【化20】

【0154】
化合物(8b)および(8c)をスキーム3に従い、合成した。各工程を以下に詳細に示す。
【0155】
実施例3−1 化合物(9b)の合成
【0156】
【化21】

【0157】
化合物(6b)(44mg, 0.050 mmol) をテトラヒドロフラン (2 mL) に溶解し、ナトリウムメチルチオラート (11 mg, 0.13 mmol)、チオフェノール(14 mg, 0.13 mmol) を順に加えて 65 ℃ で 3 日間加熱還流した。反応液をクロロホルム (5 mL) と0.2 N 塩酸 (5 mL) で分配した。有機層を飽和食塩水(5 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (移動層:クロロホルム/メタノール = 99/1) で精製し、化合物(9b)(29mg, 0.033 mmol, 67%) を無色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.43(br s, 1H, -NH), 7.58 (d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.1 Hz),5.90 (t, 1H, H-1”, J1”, 2” = 6.3 Hz), 5.76 (br s, 1H, H-1’),5.73 (d, 1H, H-5, J5, 6 = 8.1 Hz), 4.64 (d, 1H, H-5’, J5’,6’ = 5.8 Hz), 4.61 (d, 1H, H-6’, J6’, 5’ = 5.8 Hz),4.28 (br s, 1H, H-3’), 4.11 (m, 2H, H-2’, H-4’), 3.44 (t, 2H, H-3”, J3”,2” = 6.9 Hz), 2.32 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),2.13-1.96 (m, 2H, H-2”), 1.59 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.24 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.91 (s, 9H, t-ブチル), 0.90 (s, 9H, t-ブチル), 0.86 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz), 0.13 (s, 3H, Si-Me), 0.11 (s, 3H, Si-Me),0.10 (s, 3H, Si-Me), 0.09 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 863[(M-H)-]; ESIMS-HR 計算値 863.5134, 実測値 863.5142。
【0158】
実施例3−2 化合物(9c)の合成
【0159】
【化22】

【0160】
実施例3−1に準じて、化合物(6c)(160 mg, 0.17 mmol)、テトラヒドロフラン (3 mL)、ナトリウムメチルチオラート (40 mg, 0.43mmol)、チオフェノール (48 mg, 0.43 mmol)より、化合物(9c)(110 mg, 0.13 mmol, 75%) を白色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.67(d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz), 5.95 (d, 1H, H-1’, J1’,2’ = 5.9 Hz), 5.76 (m, 2H, H-5, H-1”, J5, 6 = 8.0Hz), 4.64 (d, 1H, H-5’, J5’, 6’ = 6.3 Hz), 4.59 (d, 1H, H-6’,J6’, 5’ = 6.3 Hz), 4.32 (m, 3H, H-2’, H-3’, H-4’), 3.37 (t,2H, H-4”, J4”, 3” = 6.9 Hz), 2.34 (m, 2H, H-2”), 2.24 (t, 2H,-COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 7.2), 1.76 (m, 2H, H-3”), 1.61 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.28 (brs, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.95 (s, 9H, t-ブチル), 0.94 (s, 9H, t-ブチル), 0.90 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz), 0.14 (s, 3H, Si-Me), 0.13 (s, 3H, Si-Me),0.11 (s, 3H, Si-Me), 0.09 (s, 3H, Si-Me); ESIMS-LR m/z 901[(M+Na)+]; ESIMS-HR 計算値 901.5267, 実測値 887.5282。
【0161】
実施例3−3 化合物(8b)の合成
【0162】
【化23】

【0163】
化合物(9b)(12mg, 0.014 mmol) をアセトニトリル (0.5 mL) とジクロロメタン (0.5 mL) の混合溶液に溶解し、三フッ化水素トリエチルアミン塩(16 mg, 0.10 mmol) を加え、室温で 3 日間撹拌した。反応液をクロロホルム (3 mL) と0.1 N 塩酸 (3 mL) で分配した。有機層を飽和食塩水(5 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣をメタノール (1 mL) に溶解し、水酸化パラジウム/炭素 (4.4 mg) を加えた後、水素雰囲気下室温で1 時間撹拌した。反応液をろ過後、ろ液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を HPLC (YMC-Pack R&D ODS, 250 × 4.6 mm, 移動層:メタノール/水= 90/10, 保持時間:9.9 分) で精製し、化合物(8b)(5.5 mg, 0.0090 mmol, 64 %) を白色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.59(d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz), 5.85 (d, 1H, H-1’, J1’,2’ = 4.6 Hz), 5.69 (d, 1H, H-5, J5, 6 = 8.0 Hz), 5.65(t, 1H, H-1”, J1”, 2” = 5.2 Hz), 4.63 (dd, 1H, H-5’, J5’,4’ = 3.4, J5’, 6’ = 5.6 Hz), 4.48 (d, 1H, H-6’, J6’,5’ = 4.6 Hz), 4.28 (dd, 1H, H-3’, J3’, 2’ = 5.9, J3’,4’ = 5.9 Hz), 4.22 (dd, 1H, H-2’, J2’, 1’ = 4.6, J2’,3’ = 5.9 Hz), 4.13 (dd, 1H, H-4’, J4’, 3’ = 5.9, I4’,5’ = 3.4 Hz), 3.06 (m, 2H, H-3”), 2.31 (m, 2H, H-2”), 1.58 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.34 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.29 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.90 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz); ESIMS-LR m/z 609 [(M-H)-]; ESIMS-HR 計算値609.3500, 実測値 609.3502。
【0164】
実施例3−4 化合物(8c)の合成
【0165】
【化24】

【0166】
実施例3−3に準じて、化合物(9c)(26 mg, 0.029 mmol)、アセトニトリル (0.5 mL)、ジクロロメタン (0.5 mL)、三フッ化水素トリエチルアミン塩(48 mg, 0.29 mmol)、メタノール (1 mL)、水酸化パラジウム/炭素 (8.8 mg) より得られた残渣を HPLC (YMC-PackR&D ODS, 250 × 4.6 mm, 移動層:メタノール/水 = 85/15, 保持時間:17 分) で精製し、化合物(8c)(4.1 mg,0.0066 mmol, 23%) を白色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.60(d, 1H, H-6, J6, 5 = 8.0 Hz), 5.94 (d, 1H, H-1’, J1’,2’ = 4.5 Hz), 5.68 (d, 1H, H-5, J5, 6 = 8.0 Hz), 5.66(t, 1H, H-1”, J1”, 2” = 6.0 Hz), 4.93 (br s, 1H, H-5’), 4.47(d, 1H, H-6’, J6’, 5’ = 5.7), 4.22 (m, 2H, H-2’, H-3’), 4.18(dd, 1H, H-4’, J4’, 3’ = 5.2, J4’, 5’ = 2.9Hz), 2.29 (m, 2H, H-4”), 2.29 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),2.01 (m, 2H, H-2”), 1.80 (m,2H, H-3”), 1.60 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.29 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.90 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz); ESIMS-LR m/z 623 [(M-H)-]; ESIMS-HR 計算値623.3656, 実測値 623.3664。
【0167】
実施例4 化合物(10)の合成
【0168】
【化25】

【0169】
実施例3−3に準じて、上記スキーム4の方法で、化合物(6c)(20 mg, 0.022 mmol)、アセトニトリル (0.5 mL)、ジクロロメタン (0.5 mL)、三フッ化水素トリエチルアミン塩(36 mg, 0.22 mmol)、メタノール (1 mL)、水酸化パラジウム/炭素 (6.7 mg) より得られた残渣を HPLC (YMC-PackR&D ODS, 250 × 4.6 mm, 移動層:メタノール/水 = 85/15, 保持時間:4.5 分) で精製し、化合物(10)(7.2mg, 0.011 mmol, 51%) を白色泡状物質として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.55(d, 1H, H-6, J6,5 = 8.0 Hz), 5.84 (d, 1H, H-1’, J1’,2’ = 4.0 Hz), 5.69 (d, 1H, H-5, J5, 6 = 8.0 Hz), 5.63(brs, 1H, H-1”, J1”, 2” = 6.9 Hz), 4.93 (dd, 1H, H-5’, J5’,4’ = 4.0, J5’, 6’ = 3.5 Hz), 4.47 (br s, 1H, H-6’), 4.31(dd, 1H, H-3’, J3’, 2’ = 5.8, J3’, 4’ = 4.6Hz), 4.23 (dd, 1H, H-2’, J2’, 1’ = 4.0, J2’, 3’= 5.8 Hz), 4.11 (dd, 1H, H-4’, J4’, 3’ = 4.6, J4’,5’ = 4.0 Hz), 3.38-3.03 (m, 1H, H-2”), 2.36-2.24 (m, 2H, H-3”), 1.89 (m,2H, H-4”), 1.74 (m, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.59 (br s, 2H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),1.28 (br s, 24H, -COCH2CH2(CH2)12CH2),0.90 (t, 3H, -COCH2CH2(CH2)12CH2,J = 6.9 Hz); ESIMS-LR m/z 639 [(M+H)+]; ESIMS-HR 計算値639.3969, 実測値 639.3961。
【0170】
試験例1 抗菌活性のインビトロ測定
(試験方法)
NCCLSに準拠した微量液体希釈法により最小発育阻止濃度(MIC:μg/ml)を求めた。用いた菌種は以下の通りである。
(1)Staphylococcus aureus
(2)Enterococcus faecalis
(3)Enterococcus faecium
MIC測定のために用いた菌の前培養にはBrain Heart Infusion Agarを用いた。またMIC測定用培地にはMuller Hinton Brothを用いた。MIC測定のための接種菌量は5x10CFU/mlとし、35℃、20時間培養後に判定した。
試験結果を以下表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
製剤例1
以下の成分を含有する顆粒剤を製造する。
【0173】
成分 式(I)で表わされる化合物 10mg
乳糖 700mg
コーンスターチ 274mg
HPC-L 16mg
1000mg
式(I)で表わされる化合物と乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらをV型混合機にて混合する。混合末にHPC-L(低粘度ヒドロキシプロピルセルロース)水溶液を添加し、練合、造粒(押し出し造粒 孔径0.5〜1mm)、乾燥工程する。得られた乾燥顆粒を振動ふるい(12/60メッシュ)で櫛過し顆粒剤を得る。
【0174】
製剤例2
以下の成分を含有するカプセル充填用顆粒剤を製造する。
【0175】
成分 式(I)で表わされる化合物 15mg
乳糖 90mg
コーンスターチ 42mg
HPC-L 3mg
150mg
式(I)で表わされる化合物、乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらを混合し、混合末にHPC-L溶液を添加して練合、造粒、乾燥する。得られた乾燥顆粒を整粒後、その150mgを4号硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0176】
製剤例3
以下の成分を含有する錠剤を製造する。
【0177】
成分 式(I)で表わされる化合物 10mg
乳糖 90mg
微結晶セルロース 30mg
CMC-Na 15mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
150mg
式(I)で表わされる化合物、乳糖、微結晶セルロース、CMC-Na(カルボキシメチルセルロース ナトリウム塩)を60メッシュのふるいに通し、混合する。混合末にステアリン酸マグネシウム混合し、製錠用混合末を得る。本混合末を直打し、150mgの錠剤を得る。
【0178】
製剤例4
以下の成分を加温混合後、滅菌して注射剤とした。
【0179】
成分 式(I)で示される化合物 3mg
非イオン界面活性剤 15mg
注射用精製水 1ml
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明に係る化合物は、抗菌剤等の医薬品になりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化26】



(式中、Rは−OH、−O−低級アルキル、または−NRであり、
は、C4−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、またはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールであり、
およびRは、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式環、複素環式環、炭素環アルキル、複素環アルキル、またはRもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成していてもよく、
およびRは、それぞれ独立して水素または低級アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式環、複素環式環、炭素環アルキル、複素環アルキル、またはRおよびRが一緒になって複素環を形成していてもよく、
mは0−3の整数である。)
で示される化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
が−OH、または−O−低級アルキルである請求項1に記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項3】
が−NRである請求項1に記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項4】
およびRが、それぞれ独立して水素、低級アルキル、炭素環式環、複素環式環、またはRおよびRが一緒になって複素環を形成していてもよい請求項1または3に記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項5】
がC4−C20アルキル、C9−C20アルケニル、C3−C20アルキニル、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニルもしくはC2−C20アルキニルで置換されているアリールである請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項6】
がC11−C20アルキル、C9−C20アルケニル、またはC1−C10アルキル、もしくはC2−C10アルケニルで置換されているアリールである請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項7】
がC11−C20アルキル、またはC9−C20アルケニルである請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項8】
が水素である請求項1〜7のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項9】
およびRが、それぞれ独立して水素、低級アルキル、またはRもしくはRのいずれかがRと一緒になって複素環を形成していてもよい請求項1〜8のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項10】
およびRが、いずれも水素である請求項1〜9のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の化合物、もしくはその製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を含有する医薬組成物。
【請求項12】
MraY阻害作用を有する請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗菌活性を有する請求項11に記載の医薬組成物。



【公開番号】特開2012−102019(P2012−102019A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49963(P2009−49963)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】