説明

ネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物、及びこれを用いたパターン形成方法

【課題】本発明はヒドロシリレーションにより架橋反応して硬化するネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物およびネガ型パターン形成方法を提供することを目的とする
【解決手段】次の(i)、(ii)および(iv)の成分を含有するか、または次の(iii)および(iv)の成分を含有する、ネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物:(i)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン;(ii)オルガノヒドロジェンポリシロキサン又はヒドロシラン化合物;(iii)アルケニル基と水素原子を有するオルガノポリシロキサン;(iv)ヒドロシリレーション用触媒成分であって、(2)ヒドロシリレーション用触媒と(R1R2R3R4P)+Y-または(R1R2R3R4N)+Y-で表されるオニウム塩との反応生成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリレーションにより硬化可能なネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物に関し、さらに詳しくは光導波路の製作、プリント配線基板、半導体チップ製造の際のパターン形成に有用であり、製造が簡便であり、パターニング特性、塗布性及び安定性が共に優れた感光性を有する硬化可能なネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物に関するものである。又本発明は、ヒドロシリレーション用触媒に、抑制剤であるオニウム塩を反応させた触媒成分を光反応に使用することによる、任意のネガ型のパターン形成の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微細なパターンを高精度で形成するフォトレジストの開発を目的として、オルガノポリシロキサンを用いたレジストに関する研究が活発に行われている。例えば、シリコーンに直結したメチル基及びシラノール基を有するアルカリ可溶性オルガノポリシロキサンが提案されており(特許文献1参照)、露光又は酸触媒などの添加によってアルカリ可溶性となるフェノール誘導体を有するオルガノポリシロキサンが開示されている(特許文献2参照)。しかし、これらのオルガノポリシロキサンは感光性を持たせるために、感光性有機官能基を導入するか、酸や塩基に分解しやすい有機官能基を導入しなくてはならず、合成も複雑であって、更にパターン形成までに、基板上に一般的レジスト層のパターン形成、酸素又はフッ素反応性イオンエッチング及びレジスト層の除去などの工程が必要である。既知の多くの感光性オルガノポリシロキサンの硬化物は、耐熱性及び機械的特性が悪く、基板材料としては不適であった。特に有機官能基を多く含むことによる光伝達の損失が大きく、光学材料として用いることは困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−246960号公報
【特許文献2】特開2001−154366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はヒドロシリレーションにより架橋反応して硬化するネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物において、光照射によるヒドロシリレーションが、露光部分と非露光部分との硬化をある温度で区別し、現像することによってネガ型パターンが形成させることを目的とするものである。 この方法では、従来汎用のポリシロキサンを用いつつも、基板上にパターン形成までの長い複雑な工程が必要でなく、直接のパターン形成が可能であり、耐熱性、機械的特性および光学特性に優れたパターン形成が可能である。特に光伝達の損失が少なく、光学材料、例えば光導波路などに応用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、次の(i)、(ii)および(iv)の成分を含有するか、または次の(iii)および(iv)の成分を含有する硬化性シリコーン組成物を提供するものである。
(i)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン;
(ii)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノヒドロジェンポリシロキサン、又はヒドロシラン化合物;
(iii)ケイ素原子と結合したアルケニル基と水素原子とを有するオルガノポリシロキサン;
(iv)ヒドロシリレーション用触媒成分であって、(2)ヒドロシリレーション用触媒と該オニウム塩との反応生成物から選ばれるもの。
【0006】
基板上に前記(2)ヒドロシリレーション用触媒と該オニウム塩との反応生成物からなる触媒成分(2)を含有する硬化性シリコーン組成物からなる層を形成し、前記と同様に光を照射し、光が非照射の未硬化部分を溶媒で除去し、前記基板上にネガ型の凹凸パターンを生じるパターン形成方法を提供するものである。
【0007】
理論に拘束されるものではないが、ヒドロシリレーション用触媒成分(2)を含有する硬化性シリコーン組成物の場合は、ヒドロシリレーション用触媒とオニウム塩との配位結合が、光を照射することにより分解し、触媒活性が復活して光照射部分のシリコーンが硬化するからであろうと思われる。
【0008】
本発明において光という場合、紫外線や可視光線で例示することがあるが、これらに限定されるものではなく、赤外線、X線、α線、β線及びγ線など、化学反応を励起するエネルギーを有するものを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
((i)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン)
本発明の(i)成分のオルガノポリシロキサンは、1個のケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有することが必要である。
【0010】
このオルガノポリシロキサンは少量の水酸基又はアルコキシ基を含んでもよい。このオルガノポリシロキサンの化学構造は、直線状あるいは分岐状のポリマーである。これらのポリマーは単一重合体又は共重合体もしくは2種類以上の重合体の混合物でもよい。このオルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されず、液状のものから粘度の非常に高い生ゴム状又は固体までが含まれ、特に限定されないが、通常は25℃における粘度が10〜100000cpのものが使用される。
【0011】
このようなオルガノポリシロキサンとしては以下のようなものが挙げられる:両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルアルケニルシロキサン・ジメチルシロキサンの共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるポリシロキサン;R1SiO3/2単位とR2SiO2/2単位;R3SiO1/2とRSiO3/2単位;R3SiO1/2単位とR1SiO3/2単位とR2SiO2/2単位が含まれるポリシロキサンあるいはR3SiO1/2単位とR1SiO3/2単位とR2SiO2/2単位とSiO4/2単位;RSiO3/2単位とSiO4/2単位;R3SiO1/2単位とSiO4/2単位が含まれ(ここに、Rはアルキル、アリール、フルオロアルキル又はアルケニルであり、1分子中に少なくとも2個のケイ素と結合したアルケニル基を有する)、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン。
【0012】
((ii)成分:オルガノヒドロジェンポリシロキサン)
本発明の(ii)成分のオルガノヒドロジェンポリシロキサンは、(i)成分の架橋剤であり、(iv)成分の触媒作用により、ケイ素原子に結合した水素原子が(i)成分の低級アルケニル基と付加反応して硬化する。従って、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有することが必要である。水素原子以外にケイ素原子に共有結合する有機基としては、前記(i)成分のオルガノポリシロキサンの項で例示したものと同様である。この有機基は1種類のみでなく、2種類以上が混在してもよい。このオルガノヒドロジェンポリシロキサンの化学構造は直線構造、環状構造、網状構造又は三次元構造を含んでもよく、これらの単一重合体又は共重合体又は2種類以上の重合体の混合物でもよい。又、低分子量のSiH基を有する単一分子、つまりシラン化合物でもよい。
【0013】
前記の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノヒドロジェンポリシロキサンが、同一の分子内で構成されたオルガノポリシロキサンも使用できる。
【0014】
本成分の分子量は特に限定しないが、(i)成分との相溶性を良好にするためには、このオルガノヒドロジェンポリシロキサンの粘度は、通常25℃において0.5〜100000cp、好ましくは1〜10000cpである。添加量は(ii)成分のケイ素原子に結合した水素原子の合計数と(i)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数とのモル比が0.5:1〜20:1であることが好ましい。このモル比が0.5:1より小さいか、あるいは大きい場合、硬化物の物性に悪影響があるからである。
【0015】
(ii)成分の具体例としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルヒドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヒドロジェンポリシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルヒドロジェンシロキサン環状共重合体、(CH3)3SiO1/2単位、(CH3)2HSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位及びR'SiO3/2単位からなる共重合体(R'=アリール、ビニル、ヘキセニル、アリル、メチル、エチル及び水素原子)が挙げられる。
単一分子のシラン化合物としては1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、ビス(p−ジメチルシリルフェニル)エーテル、1、2−ビス(ジメチルジシリル)エタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0016】
((iii)成分:ケイ素原子と結合したアルケニル基と水素原子とを有するオルガノポリシロキサン)
本発明の(iii)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子の両方を有することが必要である。ケイ素原子結合のアルケニル基が他のオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合の水素原子と付加反応して硬化することとなる。このとき(ii)成分の架橋剤の配合が必ずしも必要とならない。
このオルガノポリシロキサンは、直鎖状または分岐状のポリマーであり、性状も液体から固体のものまで各種ある。また、分子量も特に限定されるものでもない。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルハイドロジェン・ジメチルシロキサンの共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェン・ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位とH(CH3)2SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるポリシロキサン、CH2=CHSiO3/2単位とH(CH3)2SiO1/2単位からなるポリシロキサン等を例示することができる。さらに、R''SiO3/2単位とR''2SiO2/2単位;R''3SiO1/2単位とR''SiO3/2単位;R''3SiO1/2単位とR''SiO3/2単位とR''2SiO2/2単位;R''3SiO1/2単位とR''SiO3/2単位とR''2SiO2/2単位とSiO4/2単位;R''SiO3/2単位とSiO4/2単位;R''3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなる1分子中にケイ素原子結合アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(R''は、アルケニル基、水素原子以外でアルキル基、アリール基又はフルオロアルキル基を表す)である。
【0017】
((iv)成分:ヒドロシリレーション用触媒成分)
ヒドロシリレーション用触媒成分(iv)とは、(2)ヒドロシリレーション用触媒とオニウム塩との反応生成物であり、光照射下にこの触媒作用を復活させるものをさす。
(ヒドロシリレーション用触媒)
(iv)成分で使用するヒドロシリレーション用触媒は、(i)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基と(ii)成分のケイ素原子に結合した水素原子との付加反応により、架橋させることが出来るすべての触媒である。例えば白金系触媒、パラジウム系触媒又はロジウム系触媒であり、具体的には塩化白金酸、アルコ−ル変性塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ケトン錯体(Pt(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)、Pt(II)ビス(2,4-ヘキサンジオエート)、Pt(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオエート)、Pt(II)ビス(1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオエート))、シクロペンタジエン及びその誘導体からなる白金錯体(シクロペンタジエニルトリフェニル白金、シクロペンタジエニルトリメチル白金、シクロペンタジエニルトリエチル白金)あるいは1,5-シクロオクタジエンの白金錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、アルミナ、シリカ及びカーボンブラックなどで担持された白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが例示される。本成分の添加量は(i)成分と(ii)成分との合計量100万重量部に対して、白金系金属として0.1〜1000重量部、好ましくは1.0〜100重量部であるが、0.1重量部未満の添加量では、得られる白金触媒もしくは白金系化合物含有シリコーン硬化物の物性が悪化し、100重量部以上の添加量では、本発明組成物の保存安定性が低下することもあるためである。
【0018】
中でも白金触媒活性の高さから、例えば次の化学式で示される白金とビニルシロキサンとの錯体が好ましい。この白金触媒については米国特許第3419593号及び米国特許第5175325号に記載されており、米国特許第3775452号にはこの触媒の安定性の改善について述べられている。
【0019】
【化1】

【0020】
硬化性シリコーン組成物の保存や塗布の工程中に好ましくない硬化が起こることを防ぐために、触媒と通常のヒドロキシケトン系、ヒドロキシアルキン系及びジエニル系などの硬化抑制剤を併用してもよい。
【0021】
(iv)ヒドロシリレーション用触媒成分(2):
光照射によりヒドロシリレーション用触媒活性を復活する、ヒドロシリレーション用触媒及び抑制剤としての、オニウム塩との反応生成物。
本発明に使用される(iv)成分の、光照射によりヒドロシリレーションを活性化するヒドロシリレーション用触媒成分(2)は、一定の光照射によってオニウム塩の遅延効果が失われ、ヒドロシリレーションを活性化するものであり、具体的には光照射によって、ヒドロシリレーションの抑制剤と白金との錯体の相互作用が失われ、あるいはヒドロシリレーション用触媒抑制剤と白金との錯体が分解されることにより、白金の触媒活性種を生成し、これがヒドロシリレーションを促進するものと思われる。
【0022】
オニウム塩及び白金触媒を加熱処理することにより、あるいは加熱する必要がなく室温中放置し、あるいはオニウム塩及び白金触媒をシリコーン組成物中に混合し、適当な加熱処理をすることで同じ光触媒活性を有する組成物が得られる。
【0023】
前記オニウム塩は下記aまたはbのオニウム塩である。
a (R1R2R3R4P)+Y-
d (R1R2R3R4N)+Y-
式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、炭素数1〜30の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基から選ばれ、Y−はハロゲン化物イオン(F-、Cl-、Br-又はI-)またはRO-、RCOO-であるアニオンである。
【0024】
特に、光反応抑制剤として用いられるオニウム塩は(R1R2R3R4P)+Y-型の化合物で、リン原子に結合している芳香環に、アルコキシ基、アルキルアミノ基などの電子供与性の置換基を有する化合物が好適である。例えばアルコキシ置換ベンジル基、アルキルアミノ基などである。使用量は一般的に白金に対して0.1〜500倍が好適であるが、硬化効率及び硬化後の物性を考慮すると3〜50倍がより望ましい。
【0025】
本発明に使用されるオニウム塩として、ホスホニウム塩、アンモニウム塩が挙げられ、以下の通り例示される。
【0026】
ホスホニウム塩として、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、四フッ化ホウ素ベンジルトリフェニルホスホニウム、六フッ化アンチモンベンジルトリフェニルホスホニウム、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(p−メトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(ジメトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(p−ジメチルアミノベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、四フッ化ホウ素(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウム、六フッ化アンチモン(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホウ素(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウム、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムアセテート、テトラ(パーフルオロフェニル)ホウ素(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウム、ヨウ化(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウム、フェナシルトリフェニルホスホニウムブロミド、フェナシルトリフェニルホスホニウムクロリド、エトキシカルボニルメチルトリフェニルホスホニウム、ナフタレニルメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、フルオレニルトリフェニルホスホニウムクロリド、アントラセニルメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、アントラセニルメチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ピレニルメチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ピレニルメチルトリフェニルホスホニウムクロリドなどが挙げられる。
【0027】
アンモニウム塩としては、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルアンモニウムブロミド、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルアンモニウムクロリド、四フッ化ホウ素(p−ブトキシベンジル)トリフェニルアンモニウム、六フッ化アンチモン(p−ブトキシベンジル)トリフェニルアンモニウム、テトラフェニルホウ素(p−ブトキシベンジル)トリフェニルアンモニウム、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルアンモニウムアセテート、ヨウ化ベンジルトリメチルアンモニウム、四フッ化ホウ素ベンジルジフェニルメチルアンモニウム、ヨウ化ベンジルジフェニルメチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリフェニルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロミド、ヨウ化ジ(3−メチル−2−ブテニル)テトラメチレンアンモニウム、六フッ化アンチモンジ(2−ブテニル)テトラメチレンアンモニウム、ジメチルオクチルフェナシルアンモニウムブロミド、ベンジルジメチルオクチルアンモニウムブロミド、ヨウ化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ヨウ化ベンジルジメチルドデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0028】
(iv)成分の添加量は特に制限されないが、(i)成分と(ii)成分との合計量100万重量部に対して、通常は1〜10000重量部が好ましい。(iv)成分の添加量が1.0重量部未満となると光硬化性に与える効果が低下し、充分な光パターン化が得られない傾向がある。一方10000重量部を越えると、得られる硬化物の耐候性や熱安定性が低下する傾向がある。従って光パターン化の硬化性と、得られる耐候性や熱安定性などのバランスに鑑み、(iv)成分の添加量を白金系金属触媒に対して1.0〜500倍重量部とすることがより望ましい。
【0029】
硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、ラジカル発生剤(光重合開始剤、イニシエーター)、光増感剤、反応性希釈剤、シリカ粒子(無機充填剤)、酸化チタン、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤及び高分子添加剤などを含有させることも好ましい。以下、主要な添加剤について詳述する。
【0030】
(ラジカル発生剤)
ラジカル発生剤は、紫外線などの放射線により分解してラジカルを発生させ、このラジカルが、ラジカル重合性基の重合反応を開始させる化合物である。例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、2−ヒドロキシ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4' −ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3' −ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−(p−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(p−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンジル)ホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3',4,4' −テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、ジアルキルパーオキシド系化合物、パークミルD、トリメチルシリルパーオキシドなどが挙げられる。このようなラジカル発生剤は、1種類を単独で使用するか、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
(光増感剤)
光増感剤は、光などのエネルギー線を吸収し、光の感度の向上、又は長波長の紫外光あるいは可視光にもヒドロシリレーション用触媒としての活性を持たせるために用いる。光増感剤を露光させると、ヒドロシリレーションにおいて光効果を発揮するように、光エネルギーを白金錯体あるいはヒドロシリレーション用触媒抑制剤に伝達することができる。これらの光増感剤は多環式芳香族化合物、例えばアントラセン及びその誘導体、ピレン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体が挙げられる。又はケトン発色団を有する芳香族化合物、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン及びチオキサントン誘導体;アントラキノン、ブロモアントラキノン及びアントラキノン誘導体;アントラセン、ブロモアントラセン及びアントラセン誘導体;ペリレン及びペリレン誘導体;キサンテン、チオキサンテン及びチオキサンテン誘導体;クマリン及びケトクマリンなどを挙げることができる。より好ましい光増感剤は、ジエチルチオキサントン及びブロモアントラセンである。
【0032】
(シリカ粒子)
硬化性シリコーン組成物には、シリカ粒子を配合することにより、得られる硬化膜の硬化収縮を逓減することができる。シリカ粒子の添加量は特に制限されないが、例えば前記(A)成分100重量部に対して10〜250重量部が好ましく、特に20〜200重量部、さらに30〜150重量部が好ましい。
【0033】
シリカ粒子は、シリカを主成分とする粒子であればよく、シリカ以外の成分を含んでいてもよい。シリカ以外の成分としてはアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及びTi、Zr、Al、B、Sn、Pなどの酸化物を挙げることができる。シリカ粒子の平均粒子径は0.001〜20μmが好ましいが、特に透明な硬化膜が形成される点から、平均粒子径0.001〜0.2μmが好ましく、より好ましくは0.001〜0.01μmである。
【0034】
さらに、シリカ粒子の形状も特に制限されないが、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状もしくは不定形状の群から選ばれる少なくとも1種類の形状であることが好ましい。ただし、分散性をより良好とするために、球状のシリカ粒子を使用することが好ましい。シリカ粒子の使用方法も特に制限されないが、例えば乾燥状態でも使用することができ、水もしくは有機溶媒中に分散した状態で使用することもできる。
【0035】
コロイダルシリカとして知られている微粒子状のシリカ粒子の分散液を直接用いることもできる。特に高い透明性が得られることから、コロイダルシリカの使用が好ましい。コロイダルシリカの分散溶媒が水の場合、pH2〜13であることが好ましく、3〜7であることがより好ましい。コロイダルシリカの分散溶媒が有機溶媒の場合、有機溶媒としてメタノール、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド(DMF)などを使用することができ、これらと均一系を形成する有機溶媒又は水との混合溶媒を用いてもよい。好ましい有機溶媒はメタノール、イソプロピルアルコ−ル、メチルエチルケトン、キシレンなどである。
【0036】
高分子添加剤として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリクロロプレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリスルフィド系ポリマーなどの有機樹脂(ポリマーあるいはオリゴマー)もしくはこれらの有機樹脂(ポリマーあるいはオリゴマー)が、加水分解性シリル基で修飾された化合物を有することが好ましい。
【0037】
本発明で使用される硬化性シリコーン組成物には、必要によって特定の有機溶媒を配合することがある。特定の有機溶媒を配合することにより、硬化性シリコーン組成物の保存安定性が向上すると共に、適当な粘度を得ることができ、均一な厚さを有するパターン化した膜を形成することができる。また、照射後の現像液として用いることが出来る。
【0038】
このような有機溶媒としては、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒、アルコ−ル系有機溶媒、含窒素系溶媒、含硫系溶媒、シロキサン系有機溶媒からなる群から少なくとも1つ選ぶことができるが、通常、大気圧下での沸点が50〜200℃であり、各成分を均一に溶解する有機溶媒が好ましい。例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、フェノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコ−ル、メチルフェニルカルビノール、ジアセトンアルコ−ル、クレゾールなどのモノアルコ−ル系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコ−ル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレンオキシド、1,4−ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸n−プロピル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエステル、シュウ酸ジエチル、乳酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒;N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒;硫化ジメチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどの含硫系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルジメチルフェニルジシロキサン、1,5−ジビニルテトラメチルジフェニルトリシロキサン、フェニルトリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、(PhSiO3/2)および(Me2ViSiO1/2)からなるメチルビニルフェニルシロキサンオリゴマーなどのシロキサン系有機溶媒の1種類単独あるいは2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
【0039】
これらの有機溶媒の中で、より好ましい例として、アルコ−ル系有機溶媒及びケトン系有機溶媒が挙げられる。硬化性シリコーン組成物の保存安定性をより向上させることができるためである。特に好ましい有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、トルエン、キシレン及びメタノールからなる群から選択される、少なくとも1種類の有機溶媒が挙げられる。
【0040】
有機溶媒の種類は、硬化性シリコーン組成物の塗布方法を考慮して選択することも好ましい。例えば、均一な厚さを有する薄膜が容易に得られることからスピンコート法を用いることが好ましいが、使用する有機溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;乳酸エチル及び2−ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類;メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン及びメチルアミルケトンなどのケトン類を用いることが好ましく、特にエチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルイソブチルケトン及びメチルアミルケトンを使用することが好ましい。
【0041】
(パターンの製造工程の説明)
硬化性シリコーン組成物を半導体基板上に塗布する手段としてはスピンコート法、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、クラピヤ印刷法、シルクスリーン法又はインクジェット法などを用いることが出来る。これらのうち均一な厚さを有する塗布膜が得られることから、スピンコート法を用いることが好ましい。スピンの速度、時間及び組成量、つまり、用いる組成の成分により無溶媒あるいは有機溶媒を用いて粘度の調整を行い、塗布膜の厚さを0.1〜200μmにすることが出来る。
【0042】
次にこの塗布膜を40〜120℃で乾燥させ、必要に応じて温度を上下させることにより、0〜5分間加熱してシリコーン膜を形成し、そこにフォトマスクを適用して、遠紫外線、真空紫外線、極紫外線、電子線、X線又はイオン線により所望のパターンが得られるように選択的に露光し、パターン露光後のシリコーン膜を現像して、非露光域の未硬化シリコーン材料を溶解除去する。
【0043】
現像したあとパターン形成したシリコーン膜を40〜250℃で、必要に応じて温度をさらに上げ、1〜30分間加熱し、シリコーン膜を完全に硬化させる。
【0044】
使用される放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線及びγ線などが挙げられるが、特に紫外線が好ましい。放射線を照射する手段については特に制限されず、種々の一般的手段を利用することが出来る。例えば光源としては高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどの光源ランプを用いることができる。波長150〜800nm、好ましくは200〜460nm、照度1〜500mW/cm2の条件下で所定時間照射することにより、照射量を10〜5000mJ/cm2とすることが好ましい。
以下の実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例において、表中の使用成分の構造又は特性は、それぞれ次のとおりである。
【0045】
(i)成分の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:シロキサンポリマー2:ビニル含量1.8w%
(SiO2)58(Me3SiO1/2)35(HO1/2)3(ViMe2SiO1/2)5
シロキサンポリマー3:ビニル含量5.15w%
(ViMe2SiO1/2)25(PhSiO3/2)75
【0046】
(ii)成分の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノヒドロジェンポリシロキサン:
架橋剤2:水素含量0.12w%、25℃での粘度135cst
(Me3SiO)(Me2SiO)103(MeHSiO)9.5(SiMe3)
架橋剤3:水素含量0.76w%、25℃での粘度5cst
(Me3SiO)(Me2SiO)3(MeHSiO)5(SiMe3)
架橋剤4:水素含量0.54w%、25℃での粘度70cst
(Me2HSiO1/2)0.53(PhSiO3/2)0.47
【0047】
(iii)成分の、ケイ素原子と結合したアルケニル基と水素原子とを有するオルガノポリシロキサン:
1)シロキサンポリマー4:水素含量0.32w%、ビニル含量26.6w%
(Me2HSiO1/2)25(ViSiO3/2)75
【0048】
(iv)成分のヒドロシリレーション用触媒:米国特許第5175325号記載の製造方法にて、ジビニルテトラメチルジシロキサンと塩化白金(II)との錯化合物を、ジビニルテトラメチルジシロキサンにて希釈した57%溶液。
【0049】
(iv)成分のオニウム塩:
反応抑制剤2:(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミドのアルコ−ル溶液(固形分20重量%)
[(p-BuOC6H4CH2)(C6H5)3P]+Br
上記「ヒドロシリレーション用触媒」と「オニウム塩(=反応抑制剤2)の反応物が、本発明の実施例のネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物の、光照射によりヒドロシリレーション反応を触媒する成分である。
【0050】
溶媒1:トルエン
溶媒2:メシチレン
【0051】
光増感剤1:2−イソプロピルチオキサントン
光増感剤2:アントラセン
光増感剤3:アセトフェノン
光増感剤4:ベンゾフェノン
光増感剤5:ピレン
【0052】
(iv)ヒドロシリレーション用触媒成分(2):
ヒドロシリレーション用触媒及びオニウム塩を反応させたものの製造。
(配合例2)
米国特許第5175325号記載の製造方法にて、ジビニルテトラメチルジシロキサンと塩化白金(II)との錯化合物を、ジビニルテトラメチルジシロキサンにて希釈した57%溶液10gに、(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミドのメトキシエタノール溶液(固形分43%)を、白金に対して10モル比の割合で加え、60〜70℃で30分間加熱する。得られた反応生成物をヒドロシリレーション用触媒成分(2)として、以下の実施例及び比較例において用いる。
【0053】
この触媒組成物の製造工程を省略し、硬化組成物の配合段階で直接(p−ブトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミドのメタノール溶液(固形分20%)と白金を加え、50〜60℃で2〜3時間加熱をすることで同様な効果が得られる。
スルホニウムの場合も、ホスホニウムの場合と同様である。
ヨードニウムの場合には加熱せず、モル比1〜50が望ましい。
【0054】
(実施例及び比較例
(i)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(ii)成分のオルガノヒドロジェンポリシロキサン、上記配合例2で得られたヒドロシリレーション用触媒成分(2)及び所望により光増感剤などを、それぞれ下記の表に示す割合で配合し、実施例7のネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物及び比較例の硬化性シリコーン組成物を調製し、保存安定性の試験及びパターン形成の試験を行った。結果を表に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
比較例の組成物は室温においての保存安定性が悪く、1時間以内に硬化が進行した。これに対して実施例の組成物は室温下1ヶ月以上保存安定性を示したことから、オニウム塩化合物がヒドロシリレーション用触媒抑制剤として効果的であることが判る。
【0058】
(パターン形成工程の実施例)
典型例として、実施例に示したネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物を用いてパターン形成工程を説明する。0.45μmのフィルターを通じ、シリコーンウエハー上に500rpmで10秒間、2000rpmで30秒間スピンコートを行った。次に塗布膜を110℃で1分間加熱し乾燥させ、タックフリーの状態の層を形成した後、そこにフォトマスクを適用して低圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2照射し、さらに140℃で3分間加熱した。その後トルエン溶液でエッチングを行い、ネガ型のパターン化した膜を得た。さらにその膜を200℃で30分間焼成し硬化を完成させた。
実施例については表に示したネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物を用いて、表に示す条件でパターン形成を行った。得られた製品についての評価結果も表に示す。
【0059】
比較例では、実施例類似の硬化性シリコーン組成物を用い、ヒドロシリレーション用触媒抑制剤であるオニウム塩を含まない、硬化性シリコーン組成物を用いたが、上記のパターン形成工程でパターン化した膜は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(i)、(ii)および(iv)の成分を含有するか、または次の(iii)および(iv)の成分を含有する、ネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物:
(i)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン;
(ii)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノヒドロジェンポリシロキサン又はヒドロシラン化合物;
(iii)ケイ素原子と結合したアルケニル基と水素原子を有するオルガノポリシロキサン;
(iv)ヒドロシリレーション用触媒成分であって、(2)ヒドロシリレーション用触媒と下記aもしくはdのオニウム塩との反応生成物であるもの
a (R1R2R3R4P)+Y-
d (R1R2R3R4N)+Y-
式中、R1、R2、R3及びR4は独立に、炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、又は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基から選ばれ、Y-は、ハロゲン化物イオン(F-、Cl-、Br-、もしくはI-)、又は、RO-もしくはRCOO-(Rは、水素原子、アリール、もしくはアルキル)であるアニオンである
【請求項2】
該触媒成分(2)が光照射下でヒドロシリレーションを促進する、請求項1記載のネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1記載の(i)オルガノポリシロキサンは、RSiO3/2単位とR3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、RSiO3/2単位とR2SiO2/2単位;R3SiO1/2とRSiO3/2単位;R3SiO1/2とR2SiO2/2単位;R3SiO1/2単位とR1SiO3/2単位とR2SiO2/2単位が含まれるオルガノポリシロキサンあるいはR3SiO1/2単位とR1SiO3/2単位とR2SiO2/2とSiO4/2が含まれるオルガノポリシロキサン、RSiO3/2単位とSiO4/2単位;R3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサンである(ここに、Rはアルキル、アリール、フルオロアルキル又はアルケニルであり、1分子中に少なくとも2個のケイ素と結合したアルケニル基を有する)。
【請求項4】
請求項1記載の(ii)オルガノヒドロジェンポリシロキサンあるいはオルガノポリシロキサンは、R'SiO3/2単位とR'3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、R'SiO3/2単位とR'2SiO2/2単位;R'3SiO1/2とR'SiO3/2単位;R'3SiO1/2とR'2SiO2/2単位;R'3SiO1/2単位とR'1SiO3/2単位とR'2SiO2/2単位が含まれるオルガノポリシロキサンあるいはR'3SiO1/2単位とR'1SiO3/2単位とR'2SiO2/2とSiO4/2が含まれるオルガノポリシロキサン、R'SiO3/2単位とSiO4/2単位;R'3SiO1/2単位とSiO4/2単位が含まれるオルガノポリシロキサンである(ここに、R'は水素原子、アルキル、アリール又はフルオロアルキルであり、1分子中に、少なくとも2個のケイ素と結合した水素原子を有する)請求項1記載のネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1記載の(iii)成分のオルガノポリシロキサンは、R''SiO3/2単位とR''2SiO2/2単位;R''3SiO1/2単位とR''SiO3/2単位;R''3SiO1/2単位とR''SiO3/2単位とR''2SiO2/2単位;R''3SiO1/2単位とR''SiO3/2単位とR''2SiO2/2単位とSiO4/2単位;R''SiO3/2単位とSiO4/2単位;R''3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなる1分子中にケイ素原子結合アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(R''は、アルケニル基、水素原子以外でアルキル基、アリール基又はフルオロアルキル基を表す)である。
【請求項6】
さらに、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アントラキノン、ブロモアントラキノン、アントラセン、ブロモアントラセン、ペリレン、キサンテン、チオキサンテン、クマリン及びケトクマリンから選択される光増感剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物
【請求項7】
板上に請求項1〜6のいずれか1項記載のネガ型パターン形成用硬化性シリコーン組成物を塗布して、シリコーン層を形成させ、光を照射するか、又はパターン形成部分にのみ直接照射し、次に当該シリコーン層を加熱硬化させた後、未硬化部分を取り除くことからなるネガ型パターン形成方法。
【請求項8】
請求項記載のパターン形成方法において、未硬化シリコーン層を除去後、更に加熱して強度を向上させた、ネガ型パターン形成方法。

【公開番号】特開2009−276777(P2009−276777A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188517(P2009−188517)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2003−279264(P2003−279264)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】