説明

ネガ型輻射線感受性組成物及び画像形成材料

輻射線感受性組成物およびネガ型画像形成性要素は、疎水性主鎖と、当該疎水性主鎖に共有結合したカチオンおよび当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基とを有するポリマーバインダーを含む。これらの特定のポリマーの使用は、露光と現像の間に通常用いられる予熱工程をなくした場合でも、速いデジタルスピード(高イメージング感度)および良好な印刷適性(良好な保存寿命)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上したデジタルスピード及び良好な印刷適性を示すネガ型輻射線感受性組成物及び画像形成性要素、例えばネガ型印刷平版印刷版前駆体に関する。本発明は、これらの画像形成性要素を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
輻射線感受性組成物は、平版印刷版前駆体などを含む画像形成性材料(imageable material)の製造に日常的に使用されている。かかる組成物は、一般的に、輻射線感受性成分、遊離基重合性成分、開始剤系及びバインダーを含み、これらはそれぞれ、物理的特性、画像形成性能及び画像特性の様々な改善をもたらすべく研究の対象になってきた。
【0003】
印刷版前駆体の分野での最近の発展は、レーザー又はレーザーダイオードにより画像形成できる、特に印刷機上で画像形成及び/又は現像できる輻射線感受性組成物の使用に関係する。レーザー露光は、レーザーをコンピューターにより直接制御できるため、中間情報キャリヤ(又は「マスク」)としてコンベンショナルなハロゲン化銀グラフィックアーツフィルムを必要としない。市販のイメージセッターにおいて使用されている高性能レーザー又はレーザーダイオードは一般的に700nmからの波長を有する輻射線を放出するため、輻射線感受性組成物は、電磁スペクトルの近赤外又は赤外領域において感受性であることが求められる。しかしながら、他の有用な輻射線感受性組成物は、紫外線又は可視光により画像形成するように設計される。
【0004】
印刷版の製造のために放射感受性組成物を使用する2つの可能な方法がある。ネガ型印刷版の場合、輻射線感受性組成物の露光領域が硬化し、非露光領域が現像中に洗い落とされる。ポジ型印刷版の場合、露光領域が現像液中に溶解し、非露光領域が画像となる。
【0005】
反応性ポリマーバインダーを含む様々なネガ形輻射線組成物及び画像形成性要素が当該技術分野で知られている。これらの組成物及び要素のいくつかは、例えば米国特許第6,569,603号(Furukawa)、米国特許第6,309,792号(Hauckら)、米国特許第6,582,882号(Pappasら)、米国特許第6,893,797号(Munnellyら)及び米国特許第6,787,281号(Taoら)、米国特許出願公開第2003/0118939号(Westら)、ならびに欧州特許出願公開第1,079,276A1号(Lifkaら)、欧州特許出願公開第1,182,033A1号(Fujimakiら)及び欧州特許出願公開第1,449,650A1号(Goto)に記載されている。
【0006】
「印刷機上(on−press)」現像技術は、伝統的な現像液の使用を避けるべく、近年より顕著になってきた。この目的のために設計された印刷機上で現像可能な画像形成要素は、例えば米国特許第6,582,882号(Hayashiら)、米国特許第6,899,994号(Huangら)及び米国特許第7,005,234号(Hoshiら)、並びに米国特許出願公開第2005/003285号(Hayashiら)、米国特許出願公開第2005/026302号(Mitsumotoら)及び米国特許出願公開第2005/0057492号(Kunitaら)に記載されている。かかる要素は、画像形成後に印刷機上に直接取り付け、平版印刷インク、湿し水又はこれらの両方との接触を通じて現像される。そのため、画像形成後の伝統的な現像液を使用する別個の現像工程が回避される。画像形成性要素を印刷機上で画像形成及び現像の両方を行う印刷機上画像形成(on−press imaging)では、要素を別個の画像形成装置に取り付ける必要がなくなる。
【0007】
例えば同時係属の本願と同じ出願人による米国特許出願第11/138,026号(Knightらにより2005年5月26日に出願)、米国特許出願第11/356,518号(Taoらにより2006年2月17日に出願)、及び米国特許出願第11/349,376号(Taoらにより2006年2月7日に出願)に記載されているように、幾つかのネガ型組成物及び画像形成性要素は、開始剤組成物中にホウ酸ヨードニウム塩を含む。
【0008】
日本国特開2002−116539号及び特開2005−062482号には、平版印刷版を製造するためのネガ型組成物及び画像形成性要素における開始剤としてテトラアリールボレートなどのボレートの使用が記載されている。これらの化合物は、ポリマーに意図的に結合されていないという意味で「遊離塩」として存在する。ポリボレートが、米国特許第6,087,062号(Cunninghamら)に光重合性組成物における共開始剤として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,569,603号
【特許文献2】米国特許第6,309,792号
【特許文献3】米国特許第6,582,882号
【特許文献4】米国特許第6,893,797号
【特許文献5】米国特許第6,787,281号
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0118939号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1,079,276A1号
【特許文献8】欧州特許出願公開第1,182,033A1号
【特許文献9】欧州特許出願公開第1,449,650A1号
【特許文献10】米国特許第6,899,994号
【特許文献11】米国特許第7,005,234号
【特許文献12】米国特許出願公開第2005/003285号
【特許文献13】米国特許出願公開第2005/026302号
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0057492号
【特許文献15】米国特許出願第11/138,026号
【特許文献16】米国特許出願第11/356,518号
【特許文献17】米国特許出願第11/349,376号
【特許文献18】特開2002−116539号
【特許文献19】特開2005−062482号
【特許文献20】米国特許第6,087,062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術の様々な輻射線感受性組成物を、開始剤組成物中にボレートを含むものなどのネガ型画像形成性要素を製造するために容易に使用できる。ほとんどの場合に、既知の画像形成性要素は、像様露光され、そして、画像形成性層(1又は複数)の露光領域における架橋を促進するために、現像前に予熱工程にかけられる。この予熱工程をなくす試みは成功していない。なぜなら、この手法は、通常、デジタルスピードの損失をもたらすからである。
【0011】
デジタルスピード及び印刷適性を維持又は高めつつ予熱工程なしで使用できるネガ型画像形成性要素を開発することが必要とされている。かかる画像形成性要素を、様々なタイプの露光輻射線に対して感受性であるように、また、印刷機上又は印刷機外(off−press)で現像可能であるように設計することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
遊離基重合性成分と、
画像形成輻射線への暴露によって遊離基重合性成分の重合を開始させるのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物と、
疎水性主鎖と、当該疎水性主鎖に共有結合的に結合したカチオン及び当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基とを有するポリマーバインダーと、
を含む輻射線感受性組成物を提供する。
【0013】
本発明は、
遊離基重合性成分と、
画像形成輻射線への暴露によって遊離基重合性成分の重合を開始させるのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物と、
疎水性主鎖と、当該疎水性主鎖に共有結合的に結合したカチオン及び当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基とを有するポリマーバインダーと、
を含む画像形成性層をその上に有する基材を含んで成るネガ型画像形成性要素も提供する。
【0014】
さらに、本発明は、画像形成され要素を提供する方法であって、
A)上記ネガ型画像形成性要素を像様露光して露光領域及び非露光領域を形成する工程、及び
B)予熱工程を行って又は行わずに、前記像様露光された要素を現像して前記非露光領域のみを除去する工程、
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明の画像形成性要素は、速いデジタルスピード(高い感度)及び良好な印刷適性(良好な保存寿命)などを含む多くの利点を提供することを見出した。これらの利点は、露光と現像の間で通常用いられる予熱工程を省いた好ましい実施態様でも達成できる。これらの利点は、ホウ素含有アニオン(以下に定義)がポリマーバインダー主鎖に結合したカチオンとともに塩ペンダント基を形成している塩ペンダント基を有する本明細書に記載の特定のポリマーバインダーを使用して達成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
特に断らない限り、本明細書で使用する場合には、「輻射線感受性組成物」、「画像形成性要素」及び「印刷版前駆体」は、本発明の実施態様を指すことを意図する。
【0017】
さらに、特に断らない限り、例えば「遊離基重合性成分」、「輻射線吸収性化合物」、「ポリマーバインダー」、「さらなるポリマーバインダー」、「開始剤」、「共開始剤」、及び類似の用語などの本明細書に記載の各種の成分は、かかる成分の混合物も意味する。従って、冠詞「a」、「an」又は「the」の使用は、必ずしも単一成分だけを意味しない。
【0018】
さらに、特に断らない限り、百分率は乾燥質量での百分率を意味する。
【0019】
本発明の画像形成性要素は、一般的に、「単層」の画像形成性要素である。「単層」の画像形成性要素とは、要素が、画像形成に必須の1つの画像形成性層のみを含むことを意味するが、かかる要素は、様々な目的に応じて画像形成性層の下方又は上方に1又は2以上の層(上方の場合にトップコート)が存在していてもよい。
【0020】
ポリマーに関連するあらゆる用語の定義を明らかにするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)によって発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science(ポリマー科学における基礎用語の解説)」, Pure Appl. Chem. 68, 2287-2311 (1996)を参照されたい。しかし、本明細書中のあらゆる定義が支配的なものと見なされるべきである。
【0021】
「グラフト」ポリマー又はコポリマーは、少なくとも200の分子量を有する側鎖を有するポリマーを意味する。
用語「ポリマー」は、オリゴマーを包含する高分子量及び低分子量のポリマーを意味し、ホモポリマーとコポリマーも包含する。
【0022】
用語「コポリマー」は、2種又は3種以上の異なるモノマーから誘導されたポリマーを意味する。
【0023】
用語「主鎖」は、複数のペンダント基(pendant group)が結合したポリマー中の複数の原子から構成される鎖を意味する。かかる主鎖の一例は、1種又は2種以上のエチレン系不飽和重合性モノマーを重合させることによって得られる「全炭素(all carbon)」の主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ポリマーが縮合反応又は他の方法で形成される場合に、ヘテロ原子を含むことがある。
【0024】
輻射線感受性組成物
本発明の一態様は、好適な電磁輻射線を使用して重合可能であるコーティングに必要である限り、特にコートされ画像形成された組成物の非露光領域を除去することが望ましい場合に、いかなる有用性も有することができる輻射線感受性組成物である。当該輻射線感受性組成物は、集積回路用の印刷回路板(印刷回路板)、ペイント組成物、成形用組成物、カラーフィルター、化学増幅レジスト、インプリントリソグラフィ、マイクロエレクトロニック及びマイクロオプティカル装置、及びフォトマスクリソグラフィーとして、好ましくは以下により詳しく定義する平版印刷版前駆体及び画像形成された印刷版などの印刷された形態のものとして使用するための画像形成性要素を製造するために使用できる。
【0025】
輻射線感受性組成物において使用される遊離基重合性成分は、遊離基開始を用いて重合又は架橋させることができる1又は2個以上のエチレン性不飽和の重合性又は架橋性基を有する1又は2種以上の化合物からなる。例えば、遊離基重合性成分は、エチレン性不飽和のモノマー、オリゴマー及び架橋性ポリマー、又はかかる化合物の組み合わせであることができる。
【0026】
従って、重合又は架橋させることのできる好適なエチレン性不飽和化合物としては、例えばアルコールの不飽和エステル、例えばポリオールの(メタ)アクリレートエステルなどを包含する1又は2個以上の重合性基を有するエチレン性不飽和重合モノマーなどが挙げられる。オリゴマー及び/又はプレポリマー、例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシド(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、遊離基架橋性ポリマーならびに不飽和ポリエステル樹脂なども使用できる。実施態様によっては、遊離基重合性成分はカルボキシ基を含んでもよい。
【0027】
特に有用なラジカル重合性成分としては、複数のアクリレート及びメタクリレート基ならびにそれらの組み合わせなどの付加重合性エチレン性不飽和基を含む遊離基重合性モノマー又はオリゴマー、又は遊離基架橋性ポリマー、あるいはこれらの種類の材料の組み合わせが挙げられる。より一層有用な遊離基重合性化合物としては、複数の重合性基を有するウレアウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートから誘導されたものが挙げられる。例えば、非常に好ましい遊離基重合性成分は、DESMODUR(登録商標)N100、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂(コネチカット州ミルフォード所在のBayer Corp.)をヒドロキシアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートと反応させることにより調製できる。他の好ましい遊離基重合性化合物は、Sartomer Company,Inc.から入手可能であり、例えばSR399(ジペンタエリトリトールペンタアクリレート)、SR355(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)、SR295(ペンタエリトリトールテトラアクリレート)及び当業者であれば容易に分かる他のものがある。
【0028】
米国特許第6,582,882号(上掲)及び米国特許第6,889,994号(上掲)並びに同時係属の本願と同一出願人による米国特許出願第11/196,124号(Saraiyaらにより2005年8月3日に出願)記載されているウレアウレタン(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートも有用である。
【0029】
多くの他の遊離基重合性化合物が当業者に知られており、例えばPhotoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists, A. Reiser, Wiley, New York, 1989, 第102-177頁に、B. M. MonroeによりRadiation Curing: Science and Technology, S.P. Pappas編,Plenum, New York, 1992の第399-440頁に、及びImaging Processes and Material J.M. Sturge他編, Van Nostrand Reinhold, New York, 1989, 第226-262頁のA.B. Cohen及びP. Walker による"Polymer Imaging"などの多数の文献に記載されている。例えば、有用な遊離基重合性成分は、欧州特許出願公開第1,182,033 A1号(上掲)の段落[0170]から記載されている。
【0030】
実施態様によっては、遊離基重合性成分は、重合性成分1グラム当たり0mg KOHよりも高い酸価、一般的には重合性成分1グラム当たり0から200mg KOH以下の酸価を提供するのに十分な量のカルボキシ基を含む。好ましくは、酸価は、重合性成分1グラム当たり0から100mg KOH以下であり、より好ましくは、重合性成分1グラム当たり0から60mg KOH以下である。
【0031】
カルボキシ基を含有する遊離基重合性成分は多くの方法で製造できる。例えば、カルボキシ基を含有するオリゴマーは、米国特許第4,228,232号(Rousseau)の第4欄(第42行)〜第5欄(第19行)及び第7欄(第14行)〜第8欄(第45行)の教示に記載されているように製造できる。カルボキシ基を、好ましくは遊離基重合性部分の付加の後、オリゴマー主鎖上の残りのヒドロキシ基と遊離カルボキシ基を有する化合物(例えばジカルボン酸又はジカルボン酸無水物など)との反応によって、オリゴマーに付加させることができる。得られたオリゴマーを、所望のカルボキシ置換ポリマーが得られるように重合させることができる。
【0032】
代わりに、米国特許第5,919,600号(Huangら)に記載のアリル官能性ポリウレタンの製造と同様に、ジイソシアネートと遊離カルボキシ基を有するジオールとの反応からポリ(ウレアウレタン)アクリレート又はポリ(ウレタン)アクリレートを製造することができる。
【0033】
遊離基重合性成分は、輻射線感受性組成物中に、輻射線への暴露後に当該組成物を水性現像液に不溶性にするのに十分な量で存在する。この量は、一般的には、輻射線感受性組成物の乾燥質量を基準として10〜70質量%、好ましくは20〜50質量%である。例えば、遊離基重合性成分とポリマーバインダー(下記)との質量比は、一般的に5:95〜95:5であり、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは30:70〜70:30である。
【0034】
輻射線感受性組成物は、画像形成輻射線への当該組成物の暴露によって遊離基重合性成分の重合を開始させるのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物も含む。開始剤組成物は、例えば、少なくとも150nmかつ1500nm以下のスペクトル範囲に対応する紫外、可視及び/又は赤外スペクトル領域の画像形成用の電磁輻射線に対して感応性であることができる。紫外線(UV)及び可視光感度は、一般的に、少なくとも150nmかつ700nm以下であり、実施態様によっては、輻射線感受性組成物は、少なくとも250nmかつ450nm以下(好ましくは少なくとも375nmかつ450nm以下)の画像形成用又は露光用輻射線に対して感応性であり、その画像形成領域のために適切な開始剤組成物を含む。別の実施態様において、開始剤組成物は、少なくとも600nmかつ1500nmの画像形成又は露光赤外線又は近赤外線に対して、より好ましくは700nmかつ1200nmの画像形成赤外線に対して感応性であり、開始剤組成物はその画像形成範囲に対して適切であるものが使用される。
【0035】
一般的に、好適な開始剤組成物は、アミン類(例えばアルカノールアミン類など)、チオール化合物、アニリノ二酢酸もしくはそれらの誘導体、N−フェニルグリシン及びその誘導体、N,N−ジアルキルアミノ安息香酸エステル、N−アリールグリシン類及びそれらの誘導体(例えばN−フェニルグリシンなど)、芳香族スルホニルハライド類、トリハロゲノメチルスルホン類、イミド類(例えばN−ベンゾイルオキシフタルイミドなど)、ジアゾスルホネート類、9,10−ジヒドロアントラセン誘導体;少なくとも2個のカルボキシ基を有し、それらカルボキシ基のうちの少なくとも1つがアリール部分の窒素、酸素又は硫黄原子に結合しているN−アリール、S−アリール又はO−アリールポリカルボン酸(例えば、Westらの米国特許第5,629,354号に記載されているアニリン二酢酸及びその誘導体並びに他の「共開始剤」など);オキシムエーテル類及びオキシムエステル類(例えばベンゾインから誘導されたものなど);α−ヒドロキシ又はα−アミノアセトフェノン類;アルキルトリアリールボレート類、トリハロゲノメチルアリールスルホン類、ベンゾインエーテル類及びベンゾインエステル類、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイルなど)、ヒドロペルオキシド類(例えばクミルヒドロペルオキシドなど)、アゾ化合物(例えばアゾビス−イソブチロニトリル)、例えば米国特許第4,565,769号(Dueberら)に開示されている2,4,5−トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビスイミダゾール類又は「HABI類」としても知られている);米国特許第6,562,543号(Ogataら)に記載されているものなどのボレート類及び有機ホウ酸塩、並びにオニウム塩(例えばアンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩及びN−アルコキシピリジニウム塩など)などの化合物(これらに限定されない)を含む。他の公知の開始剤組成物成分は、例えば米国特許出願公開第2003/0064318号(Huangら)に記載されている。
【0036】
紫外線及び可視光感受性の輻射線感受性組成物に特に有用な開始剤組成物成分としては、ヘキサアリールビイミダゾール類(2,4,5−トリアリールイミダゾリル二量体としても知られている)、例えば2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−ビイミダゾール及び2,2’−ビス(o−クロロフェニル−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール)が挙げられる。後述するトリアジン類は、紫外線及び可視光露光を包含するいかなる波長でも画像形成輻射線への露光に使用できる。他の紫外線感受性の遊離基生成化合物としては、例えば米国特許第4,997,745号(Kawamuraら)に記載されているようなトリクロロメチルトリアジン類、及びジアリールヨードニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
共開始剤(co−initiator)、例えば、メタロセン類(例えばチタノセン類及びフェロセン類)、ポリカルボン酸、ハロアルキルトリアジン類、チオール類又はメルカプタン類(例えばメルカプトトリアゾール類)、ボレート塩、及び米国特許第5,942,372号(Westら)に記載されているようなアルコキシ又はアシルオキシ基により置換された複素環窒素を含む光オキシダントなども使用できる。
【0038】
赤外線(IR)感受性の輻射線感受性組成物の場合、好ましい開始剤組成物は、限定はされないが、スルホニウム、オキシスルホキソニウム、オキシスルホニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、セレノニウム、アルソニウム、ホスホニウム、ジアゾニウム又はハロニウム塩などのオニウム塩を含む。代表例などの有用なオニウム塩についてのさらなる詳細は、米国特許出願公開2002/0068241(Oohashiら)、国際公開WO2004/101280(Munnellyら)及び米国特許第5,086,086号(Brown−Wensleyら)、第5,965,319号(Kobayashi)及び第6,051,366号(Baumannら)に記載されている。例えば、好適なホスホニウム塩は、4つの有機置換基を有する正電荷を帯びた超原子価リン原子を含む。トリフェニルスルホニウム塩などの好適なスルホニウム塩は、3つの有機置換基を有する正電荷を帯びた超原子価硫黄を含む。好適なジアゾニウム塩は、正電荷を帯びたアゾ基(すなわち−N=N+ )を有する。好適なアンモニウム塩は、4つの有機置換基を有する置換4級アンモニウム塩、及びN−アルコキシピリジニウム塩などの4級窒素複素環などの正電荷を帯びた窒素原子を含む。好適なハロニウム塩は、2つの有機置換基を有する正電荷を帯びた超原子価ハロゲン原子を含む。オニウム塩は、一般的に、ハライド、ヘキサフルオロホスフェート、チオスルフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、スルホネート、水酸化物、パークロレート、n−ブチルトリフェニルボレート、テトラフェニルボレート、及び当業者に明らかな他のものなどの負電荷を帯びた好適な数の対イオンを含む。
【0039】
ハロニウム塩はより好ましく、ヨードニウム塩は非常に好ましい。好ましい一実施形態において、オニウム塩は、正電荷を帯びたヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−部分及び好適な負電荷を帯びた対イオンを有する。かかるヨードニウム塩の代表例は、Irgacure(登録商標)250としてCiba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリータウン)から入手可能であり、Irgacure(登録商標)250は、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり、75%プロピレンカーボネート溶液で供給されている。
【0040】
特に有用なホウ素成分としては、上掲の米国特許第6,569,603号に記載されているものなどの有機ホウ素アニオン(例えばアルカリ金属イオン、オニウム、又はカチオン増感色素などの好適なカチオンと対になった)を含む有機ホウ素塩が挙げられる。有用なオニウムカチオンとしては、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ヨードニウム及びジアゾニウムカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。ヨードニウム塩、特にヨードニウムボレートが、「印刷機上」現像(以下でより詳しく説明する)用に設計された輻射線感受性配合物中の開始剤化合物として特に有用である。本発明において有用な代表的なヨードニウムボレートとしては、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−ヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2−メチル−4−t−ブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレートが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物の混合物も開始剤組成物において使用できる。
【0041】
輻射線感受性組成物は、共開始剤として、例えばメルカプトトリアゾールなどのメルカプタン誘導体を含むことができる。かかる化合物としては、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール及び5−(p−アミノフェニル)−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。他のものは米国特許第6,884,568号(Timpeら)に記載されている。種々のメルカプトベンゾイミダゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類及びメルカプトベンゾオキサゾール類が存在してもよい。
【0042】
他の有用な開始剤組成物は、例えば米国特許第6,936,384号(Munnellyら)に記載されているような1種又は2種以上のアジン化合物を含む。これらの化合物は、炭素及び窒素原子から形成された6員環を含む有機複素環式化合物である。アジン化合物としては、複素環基、例えばピリジン、ジアジン及びトリアジン基を含むもの、並びに炭素環式芳香族環などの1又は2個以上の芳香環に縮合したピリジン、ジアジン又はトリアジン置換基を有する多環式化合物が挙げられる。例えば、アジン化合物としては、例えば、キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン又はナフトジアジン置換基を有する化合物が挙げられる。単環式及び多環式アジン化合物の両方が有用である。
【0043】
特に有用なアジン化合物は、例えば米国特許第6,309,792号(Hauckら)、第6,010,824号(Komanoら)、第5,885,746号(Iwaiら)、第5,496,903号(Watanabeら)及び第5,219,709号(Nagasakaら)に記載されているものなどの、3個の炭素原子と3個の窒素原子を含む6員環を含むトリアジン化合物である。
【0044】
アジニウム形態のアジン化合物も所望により使用できる。アジニウム化合物では、アジン環中の窒素原子の第4級化置換基は遊離基として遊離することができる。アジニウム核の環窒素原子を第4級化しているアルコキシ置換基は、様々なアルコキシ置換基の中から選択できる。
【0045】
ハロメチル置換トリアジン、例えばトリハロメチルトリアジン類などが開始剤組成物において特に有用である。このタイプの代表的な化合物としては、ポリハロメチル置換トリアジン類及び他のトリアジン類、例えば2,4−トリクロロメチル−6−メトキシフェニルトリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−[4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−2−トリアジン、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)−2−トリアジン及び2,4,6−トリ(トリブロモメチル)−2−トリアジンなどの、例えば1〜3個の−CX3 基を有する1,3,5−トリアジン誘導体(Xは独立に塩素又は臭素原子を表す)などの1,3,5−トリアジン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
アジン化合物、特にトリアジン化合物は、単独で、又は1又は2種以上の共開始剤、例えば、米国特許第4,997,745号(Kawamuraら)に記載されているような、チタノセン類、モノ−及びポリカルボン酸、ヘキサアリールビスイミダゾール類と組み合わせて使用できる。
【0047】
従って、いくつかの開始剤/共開始剤の組み合わせ、すなわち、
a)少なくとも2個のカルボキシ基を含み、それらのうちの少なくとも1つがアリール部分の窒素、酸素又は硫黄原子に結合しているN−アリール、S−アリール又はO−アリールポリカルボン酸(例えばアニリン二酢酸及びその誘導体)である共開始剤と組み合わせて、上記のようなトリアジン類、
b)上記のようなメルカプタン誘導体である共開始剤と組み合わせて、上記のようなトリアジン類、
c)例えば米国特許第6,936,384号(上掲)に記載されているようなメタロセン類である共開始剤と組み合わせて、上記のようなヨードニウム塩(例えばヨードニウムボレート)、及び
d)上記のようなメルカプトトリアゾール類である共開始剤と組み合わせて、上記のようなヨードニウム塩(例えばヨードニウムボレート)、
を本発明の様々な実施態様において使用できる。
【0048】
1又は2種以上の開始剤化合物を含む開始剤組成物は、一般的に、輻射線感受性組成物の総固形分又はコートされた画像形成性層の乾燥質量を基準として0.5%〜30%の量で輻射線感受性組成物中に存在する。好ましくは、開始剤組成物は、2質量%〜20質量%の量で存在する。好ましい実施態様において、1又は2種以上のジアリールヨードニウムボレート化合物が、一般的には、開始剤組成物の10〜100%を構成する。画像形成性要素のコートされた画像形成性層において、開始剤組成物は、一般的には、少なくとも0.01g/m2 、好ましくは0.03〜0.3g/m2 の量で存在する。
【0049】
輻射線感受性組成物中に使用されるポリマーバインダーは、疎水性主鎖と、当該疎水性主鎖に共有結合的に結合したカチオン及び当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基とを有する。一般的に、かかるカチオンとしては、アンモニウム、スルホニウムもしくはホスホニウムイオン又はこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、カチオンはアンモニウム又はホスホニウムイオンであり、最も好ましくはアンモニウムイオンである。
【0050】
より具体的には、ホウ素含有アニオンは、下記構造(I):
【0051】
【化1】

【0052】
により表すことができる。ここで、R1 、R2 、R3 及びR4 は独立に、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜12のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル、全てのペンチル異性体、2−メチルペンチル、全てのヘキシル異性体、2−エチルヘキシル、全てのオクチル異性体、2,4,4−トリメチルフェニル、全てのノニル異性体、全てのデシル異性体、全てのウンデシル異性体、全てのドデシル異性体、メトキシメチル及びベンジルなど)、芳香環中に6〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の炭素環式アリール基(例えばフェニル、p−メチルフェニル、2,4−メトキシフェニル、ナフチル及びペンタフルオロフェニル基など)、2〜12個の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルケニル基(例えば、エテニル、2−メチルエテニル、アリル、ビニルベンジル、アクリロイル及びクロトノチル基など)、炭素原子数2〜12の置換もしくは非置換アルキニル基(例えばエチニル、2−メチルエチニル及び2,3−プロピニル基など)、環構造中に3〜8個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル基(例えば置換もしくは非置換のシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル及びシクロオクチル基など)、又は5〜10個の炭素、酸素、硫黄及び窒素原子を有する置換もしくは非置換複素環式基(置換もしくは非置換のピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、オキサジアゾリル及びベンゾオキサゾリル基などの芳香族及び非芳香族基を包含する)である。あるいは、R1 、R2 、R3 及びR4 のうちの2又は3つ以上が一緒になってホウ素原子とともに複素環を形成していてもよい。かかる環は7個以下の炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有する。
【0053】
好ましくは、R1 、R2 、R3 及びR4 は、独立に、先に定義した置換もしくは非置換のアルキルもしくはアリール基であり、より好ましくは、R1 、R2 、R3 及びR4 のうちの少なくとも3つは同じ又は異なる置換又は非置換アリール基(例えば置換又は非置換フェニル基など)である。最も好ましくは、R1 、R2 、R3 及びR4 の全てが同じ又は異なる置換又は非置換アリール基であり、最も好ましくは、これらの基の全てが同じ又は異なる置換又は非置換フェニル基である。より好ましくは、ホウ素含有アニオンの置換基は、全て置換又は非置換アリール基であるか、又はそれらのうちの1つがアルキルであるもの、例えばアルキルトリアリールボレート又はテトラアリールボレートである。
【0054】
より具体的には、ポリマーバインダーは下記構造(II):
【0055】
【化2】

【0056】
により表すことができる。ここでAは、カチオン及びホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基を含む反復単位を表し、BはAにより表される反復単位以外の反復単位を表す。
【0057】
構造(II)において、xは0.5〜30モル%であり、yは70〜99.5モル%である。より好ましくは、xは0.5〜15モル%であり、yは85〜99.5モル%である。
【0058】
一般的には、Bは、1又は2以上の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ポリ(アルキレンオキシド)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン及びスチレン誘導体、N−置換マレイミド、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、1−ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸、ビニルポリアルキルシラン並びにこれらの組み合わせから誘導された反復単位を表す。
【0059】
好ましくは、Bは、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン及びスチレン誘導体、ビニルカルバゾール、並びに(メタ)アクリル酸、又はこれらのモノマーのうちの2種もしくは3種以上の組み合わせから誘導された反復単位を表す。
【0060】
構造(I)及び(II)により表される幾つかの特に有用なポリマーバインダーを実施例でポリマーB及びDとして以下に示す。
【0061】
構造(I)により表されるポリマーバインダーは、一般的に、組成物又は画像形成性層の総固形分を基準として20〜70質量%の量で輻射線感受性組成物(及び画像形成性層)中に存在する。好ましくは、その量は20〜50質量%である。
【0062】
構造(I)のポリマーバインダーは、一般的に、2,000〜1,000,000の分子量、好ましくは10,000〜200,000の分子量を有する。ポリマーバインダーの酸価(mg KOH/g)は、既知の方法を使用して求めた場合に、一般的に、0〜400である。
【0063】
これらのポリマーバインダーは、実施例の前に示す合成例B及びDに記載の調製方法を用いて調製できる。重合は、多くの入手可能な出発原料及び既知の反応条件を用いて行われる。疎水性主鎖に共有結合的に結合したカチオンと当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンとを含むモノマーは、一般的に下記合成例1に示すのと同じ条件及び手順を用いて調製できる。かかるポリマーを調製することについての他の詳細は、例えばSarker et al. Macromolecules 1996, 29, 8047-8052に示されている。
【0064】
ネガ型輻射線感受性組成物に使用されることが当業界で知られているものなどの様々なポリマーバインダーのうちのいずれも輻射線感受性組成物において使用できる。ポリマーバインダーは、一般的に、2,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜200,000の分子量を有する。ポリマーバインダーの酸価(mg KOH/g)は、一般的に、周知の方法を使用して求めた場合に20〜400である。しかしながら、ポリマーバインダーの混合物が使用される場合、全ポリマーバインダーの少なくとも25質量%(好ましくは少なくとも40質量%)は先に定義した構造(II)により表されるものから構成される。
【0065】
さらなるポリマーバインダーの例としては、例えば欧州特許第1,182,033号(上掲)並びに米国特許第6,309,792号(上掲)、第6,352,812号(Shimazuら)、第6,569,603号(上掲)及び第6,893,797号(上掲)などに記載されているものなどの、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリビニルアセタール、フェノール系樹脂、スチレン、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸から誘導されたポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。同時係属の本願と同じ出願人による米国特許出願第11/356,518号(Taoらにより2006年2月17日に出願)に記載されているようなペンダントN−カルバゾール部分を有するビニルカルバゾールポリマー、並びに同時係属の本願と同じ出願人による米国特許出願第11/349,376号(Taoらにより2006年2月7日に出願)に記載されているようなペンダント反応性ビニル基を有するポリマーも有用である。
【0066】
他の有用なさらなるポリマーバインダーは、水又は水/溶剤混合物、例えば湿し水などの中に分散可能、生成可能又は可溶である。かかるポリマーバインダーは、画像形成性要素を「印刷機上」で現像可能なものにするポリマーエマルジョン、分散体、又はポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有するグラフトポリマーを含む。かかるポリマーバインダーは、例えば、米国特許第6,582,882号及び第6,899,994号(両方とも上に記載)に記載されている。場合によっては、これらのさらなるポリマーバインダーは、離散粒子として画像形成性層中に存在する。
【0067】
本発明に有用なポリマーバインダーは、疎水性骨格を有し、以下のa)及びb)の反復単位の両方又はb)の反復単位のみを含んでなる:
a)疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有する反復単位、及び
b)ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなるペンダント基を有する反復単位。
【0068】
これらのポリマーバインダーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメント、好ましくはポリ(エチレンオキシド)セグメントを含んでなる。これらのポリマーは、主鎖ポリマー及びポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有するグラフトコポリマーでも、(アルキレンオキシド)含有反復単位のブロックと非(アルキレンオキシド)含有反復単位のブロックとを有するブロックコポリマーでもよい。グラフトコポリマー及びブロックコポリマーのどちらも、さらに、疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有していてもよい。アルキレンオキシド構成単位は、一般的にC1〜C6アルキレンオキシド基、より典型的にはC1〜C3アルキレンオキシド基である。アルキレン部分は、直鎖状でも、分岐状でも、それらの置換体でもよい。ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)セグメントが好ましく、ポリ(エチレンオキシド)セグメントが最も好ましい。
【0069】
実施形態によっては、ポリマーバインダーはポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなる反復単位のみを含むが、他の実施形態では、ポリマーバインダーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなる反復単位と、疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有する反復単位とを含んでなる。たんに一例として、かかる反復単位は、シアノ、シアノ置換又はシアノ末端アルキレン基を含んでなるペンダント基を含んでいてもよい。反復単位は、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート又はこれらの組み合わせなどのエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導できる。しかし、他の従来手段によりシアノ基をポリマー中に導入することができる。かかるシアノ含有ポリマーバインダーの例は、例えば、米国特許出願公開2005/003285(Hayashiら)に記載されている。
【0070】
一例として、ポリマーバインダーは、以下の好適なエチレン性不飽和重合性モノマー又はマクロマーの組み合わせ又は混合物の重合により形成できる:
A)アクリロニトリル、メタクリロニトリル又はこれらの組み合わせ、
B)アクリル酸又はメタクリル酸のポリ(アルキレンオキシド)エステル、例えばポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエステルメタクリレート又はこれらの組み合わせ、及び
C)必要に応じて、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ヒドロキシスチレン、アクレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのモノマー、又はかかるモノマーの組み合わせ。
【0071】
かかるポリマーバインダー中のポリ(アルキレンオキシド)セグメントの量は、0.5〜60質量%、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、最も好ましくは5〜20質量%である。ブロックコポリマー中の(アルキレンオキシド)セグメントの量は、一般的に5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。ポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有するポリマーバインダーが離散粒子の形態で存在することも可能である。
【0072】
上記のポリマーバインダーは、一般的に、輻射線感受性組成物の総固形分又はそれらから作製された画像形成性層の乾燥質量を基準にして10〜75%、好ましくは20〜50%の量で存在する。
【0073】
実施態様によっては、上記のポリマーバインダーと組み合わせて「2次」バインダーを含めることが有用なことがある。かかる2次ポリマーバインダーとしては、Air Products and Chemicals,Inc.(ペンシルベニア州アレンタウン)から分散液で、商標Hybridur、例えばHybridur 540、560、570、580、870及び878で市販されているアクリル−ウレタン混成ポリマーが挙げられる。付加的な2次ポリマーバインダーは、輻射線感受性組成物中に、当該組成物の総固形分又は画像形成性層の乾燥被覆質量を基準にして5〜40%の量で存在する。
【0074】
輻射線感受性組成物は、一般的に、画像形成輻射線を吸収するか又は当該組成物を電磁スペクトルのUVからIR領域まで、すなわち少なくとも150nmから1500nmまでにλmaxを有する画像形成輻射線に対して増感する1又は2種以上の輻射線吸収性化合物又は増感剤を含む。いくつかの増感剤は、いかなる波長でも使用できるが、ほとんどの増感剤は、特定の波長範囲で最適に有用である。例えば、幾つかの増感剤は少なくとも250nmから650nm以下(UVから可視)の露光波長で使用するのに最適である。少なくとも250nmから450nmまでの紫外線への露光に使用するために最適な他の増感剤もあれば、少なくとも650nmから1500nmまでの露光波長(近赤外及び赤外)で使用するのに最適なさらに別の増感剤もある。
【0075】
実施態様によっては、輻射線感受性組成物は、遊離基生成化合物が紫外線に感受性(すなわち250nmから450nm以下)であるUV増感剤を含むことにより光重合を促進する。典型的なUV線感受性遊離基生成化合物は先に記載したとおりである。いくつかの好ましい実施態様において、輻射線感受性組成物は、少なくとも375nmかつ450nm以下の範囲内の「紫」の輻射線に感受性である。かかる組成物に有用な増感剤としては、特定のピリリウム及びチオピリリウム染料並びに3−ケトクマリン類(特に、アニリノ−N,N−二酢酸などのポリカルボン酸遊離基生成化合物との組み合わせ)が挙げられる。
【0076】
電磁スペクトルの可視領域(すなわち少なくとも400nm、かつ、650nm以下)に吸収を示す増感剤も使用できる。かかる増感剤の例は当業界でよく知られており、例えば米国特許第6,569,603号(上掲)の第17〜22欄に記載の化合物が挙げられる。他の有用な可視及びUV感受性の増感組成物としては、米国特許第5,368,990号(Kawabata他)に記載されているような、シアニン染料、ジアリールヨードニウム塩、及び共開始剤(上掲)が挙げられる。
【0077】
紫/可視領域の増感のための他の有用な増感剤は、国際公開第2004/074930号(Baumannら)に記載されているような2,4,5−トリアリールオキサゾール誘導体である。これらの化合物は、単独で又は上記の共開始剤、特に上記の1,3,5−トリアジン類、又はチオール化合物とともに使用できる。有用な2,4,5−トリアリールオキサゾール誘導体は、構造G−(Ar13により表すことができる。ここで、Ar1 は同じ又は異なる、環中に6〜12個の炭素原子を有する置換又は非置換の炭素環式アリール基であり、Gはフラン、オキサゾール又はオキサジアゾール環である。Ar1 基は、1又は2個以上のハロ基、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、アミノ(第1級、第2級又は第3級)、又は置換もしくは非置換のアルコキシもしくはアリールオキシ基により置換されていてもよい。例えば、アリール基は、1又は2個以上のR'1〜R'3基によりそれぞれ置換されていてもよく、R'1〜R'3基は独立に水素又は炭素原子数1〜20の置換もしくは非置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、n−ヘキシル、ベンジル、及びメトキシメチル基など)、環中の6〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換炭素環式アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、4−メトキシフェニル及び3−メチルフェニル基)、環中に5〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル基、−N(R'4)(R'5)基、又はOR'6基である。ここで、R'4〜R'6は独立に、先に定義した置換又は非置換のアルキル又はアリール基を表す。好ましくは、R'1〜R'3の少なくとも1つは−N(R'4)(R'5)基(R'4及びR'5は同じ又は異なるアルキル基である)である。各Ar1 基に対して好ましい置換基としては同じ又は異なる第1級、第2級及び第3級アミンが挙げられ、より好ましくは、それらは同じジアルキルアミンである。
【0078】
さらに別の部類の有用な紫/可視輻射線増感剤としては、構造Ar1−G−Ar2 により表される化合物が挙げられる。ここで、Ar1 及びAr2 は同じ又は異なる、環中に6〜12個の炭素原子を有する置換又は非置換アリール基であるか、あるいはAr2 はアリーレン−G−Ar1 又はアリーレン−G−Ar2 基であり、Gはフラン、オキサゾール又はオキサジアゾール環である。Ar1 は先に定義したのと同じであり、Ar2 はAr1 のように同じ又は異なるアリール基であることができる。「アリーレン」は、Ar1 について定義したアリール基のいずれであってもよいが、それらが2価になるように水素原子が除かれている。
【0079】
さらに有用な「紫」−可視輻射線増感剤は国際公開2004/074929号(Baumannら)に記載されている化合物である。これらの化合物は、芳香族複素環基と共役する少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含むスペーサー基に結合された同じ又は異なる芳香族複素環式基を含み、当該公開公報の式(I)によってより詳しく表される。
【0080】
赤外線に対して感受性である本発明の実施態様において、輻射線感受性組成物は、一般的に、少なくとも700nmかつ1500nm以下、好ましくは少なくとも750nmかつ1200nm以下の輻射線を吸収する赤外線吸収性化合物(「IR吸収性化合物」)を含む。印刷機上現像用に設計された画像形成性要素の場合、重合性成分の重合を促進させるため、及びより耐久性のある印刷版を製造するために、かかるIR吸収性化合物をオニウム塩と組み合わせて使用することが好ましい。
【0081】
有用なIR感受性の輻射線吸収性化合物としては、カーボンブラックその他のIR吸収性顔料及び様々なIR感受性染料(「IR染料」)が挙げられる。好適な赤外線(IR)染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チオアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、メロシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン染料及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、及び上記の染料の部類の置換形態物又はイオン性形態物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な染料は、例えば米国特許第5,208,135号(Patelら)に記載されている。シアニン染料も、例えば米国特許第5,496,903号(Watanabeら)に記載されているようなトリハロメチルトリアジン及び有機ホウ素塩との組み合わせで有用なことがある。
【0082】
好適なシアニン染料のある部類についての概要が、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)の段落[0026]中に式で示されており、有用なIR吸収性化合物の2つの具体例を実施例でIR染料1及び2として示されている。
【0083】
低分子量IR吸収性染料に加えて、ポリマーに結合されたIR染料部分も利用できる。さらに、IR染料カチオンも利用できる。すなわち、このカチオンは、カルボキシ、スルホ、ホスホ又はホスホノ基を側鎖に有するポリマーと、イオン的に相互作用する染料塩のIR吸収性部分である。
【0084】
近赤外線吸収性シアニン染料も有用であり、例えば米国特許第6,309,792号(Hauckら)、米国特許第6,264,920号(Achilefuら)、米国特許第6,153,356号(Uranoら)及び米国特許第5,496,903号明細書(Watanateら)に記載されている。好適な染料は、通常の方法と出発物質を使って製造することができ、あるいは、American Dye Source(カナダ国ケベック州べ・ウルフェ)及びFEW Chemicals(ドイツ国)などの様々な商業的供給源から入手可能である。近赤外ダイオードレーザービーム用の他の有用な染料は、例えば、米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)に記載されている。
【0085】
有用な赤外線吸収性化合物としては、例えば可溶化基により表面官能化されたカーボンブラックなどのカーボンブラックを包含する様々な顔料が挙げられ、当該技術分野でよく知られている。親水性の非イオン性ポリマーにグラフト化したカーボンブラック、例えばFX−GE−003(Nippon Shokubai製)など、または、陰イオン性基により表面官能化されたカーボンブラック、例えばCAB−O−JET(登録商標)200もしくはCAB−O−JET(登録商標)300(Cabot Corporation製)も有用である。
【0086】
輻射線吸収性化合物は、画像形成性層の総乾燥質量にも対応する輻射線感受性組成物の総固形分を基準として、一般的に、少なくとも0.5%〜30%、好ましくは2〜15%の量で輻射線感受性組成物中に存在することができる。あるいは、この量は、反射UV−可視分光光度計により求めた場合に、乾燥フィルムにおいて、0.05〜3、好ましくは0.1〜1.5の範囲内の吸光度により規定することができる。この目的に必要な具体的な量は、使用される個々の化合物に応じて、当業者であれば容易に分かるであろう。
【0087】
輻射線感受性組成物は、各々一般的に250を超える、好ましくは少なくとも300で、1000以下の分子量を有する1または2種以上の非イオン性ホスフェートアクリレートをさらに含んでよい。「非イオン性」とは、ホスフェートアクリレートが電荷の点で中性であるのみならず、ホスフェートアクリレートが正または負の内部電荷を持たないことを意味する。従って、ホスフェートアクリレートは、外部カチオンまたはアニオンと形成された内部塩ではない。さらに、「ホスフェートアクリレート」とは、「ホスフェートメタクリレート」と、アクリレート部分中のビニル基上に置換基を有する他の誘導体も包含することを意図する。
【0088】
各ホスフェート部分がアルキレンオキシ鎖、すなわち少なくとも1つのアルキレンオキシ単位から構成される−(アルキレン−O)m−鎖(アルキレン部分は2〜6個の炭素原子を有し、直鎖または分岐鎖であることができ、mは1〜10である)によりアクリレート部分に連結されていることも好ましい。好ましくは、アルキレンオキシ鎖は、エチレンオキシ単位を含み、mは2〜8であり、より好ましくは、mは3〜6である。個々の化合物中のアルキレンオキシ鎖は、長さが同じであっても異なっていてもよく、同じまたは異なるアルキレン基を有してもよい。
【0089】
この態様で有用な代表的な非イオン性ホスフェートアクリレートとしては、エチレングリコールメタクリレートホスフェート(Aldrich Chemical Co.から入手可能)、Nippon Kayaku(日本国)からKayamer PM−2として入手可能な2−ヒドロキシエチルメタクリレートのホスフェート、Kayamer PM−21(Nippon Kayaku、日本国)として入手可能なカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートのホスフェート、及びUni−Chemical Co.,Ltd.(日本国)からPhosmer PEとして入手可能な4〜5個のエトキシ基を有するエチレングリコールメタクリレートホスフェートが挙げられる。
【0090】
輻射線感受性組成物は、ポリ(アルキレングリコール)又はそのエーテル若しくはエステルであって、200〜4000(好ましくは500〜2000)の分子量を有するものを含んでもよい。この添加剤は、組成物の総固形分を基準として、又は画像形成性層の総乾燥質量を基準として、2〜50質量%(好ましくは5〜30質量%)の量で存在することができる。このタイプの特に有用な添加剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノメタクリレートのうちの1種または2種以上が挙げられるが、これらに限定されない。SR9036(エトキシル化(30)ビスフェノールAジメタクリレート)、CD9038(エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート)及びSR494(エトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレート)並びに類似の化合物も有用であり、これらの全てがSartomer Company,Inc.から入手可能である。
【0091】
輻射線感受性組成物は、また、組成物の総固形分を基準として、又は画像形成性層の総乾燥質量を基準として、20質量%以下の量でポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルイミダゾール)またはポリエステルを含んでもよい。
【0092】
輻射線感受性組成物は、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、コーティング適性または他の性質のための界面活性剤、粘度上昇剤、書き込まれた画像の可視化を可能にする染料または着色剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調製剤、またはこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷分野で通常使用されている他の添加剤などの種々の添加剤を従来の量で含んでもよい。有用な粘度上昇剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びポリ(ビニルピロリドン)が挙げられる。
【0093】
画像形成性要素
画像形成性要素は、上記のとおりの輻射線感受性組成物の好適な基材への好適な適用により画像形成性層を形成することにより形成される。この基材は、輻射線感受性組成物の適用前に下記の様々な方法で処理またはコートされていてもよい。本発明の輻射線感受性組成物を含む画像形成性層が1層だけ存在することが好ましい。基材が、密着性または親水性の改善のための「中間層」をもたらすように処理された場合には、適用される輻射線感受性組成物は、一般的に、「トップ」又は最上層であると見なされる。しかしながら、これらの中間層は「画像形成性層」とは見なされない。国際公開第99/06890号(Pappasら)に記載されているように、画像形成性層(1または2以上)に「オーバーコート」(例えば酸素不透過性トップコート)として従来知られていたものを適用する必要はないであろうが、必要に応じて使用できる。かかるオーバーコート層は、1または2種以上の水溶性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)及びポリ(ビニルミダゾール)を含むことができ、一般的に、0.1〜4g/m2 の乾燥コーティング質量で存在する。
【0094】
基材は、一般的に、親水性表面を有するか又は画像形成側の適用された画像形成用配合物よりも高い親水性を有する表面を有する。基材は支持体を含み、その支持体は、平版印刷版などの画像形成性要素を製造するため通常使用されているいかなる材料から構成されたものであってもよい。支持体は、通常、シート、フィルム又は箔の形態にあり、色記録がフルカラー画像を記録するように使用条件下で、強力で安定であり、可撓性でかつ寸法の変化に対して抵抗性がある。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー及びポリスチレンのフィルムなど)、ガラス、セラミック類、金属シートもしくは箔、または剛性紙(樹脂コート紙及び金属化紙など)、またはこれら材料のいずれかの積層体(例えば、ポリエステルフィルム上にアルミニウム箔を積層したもの)などのいかなる自立性材料でもよい。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びこれらの合金のシートまたは箔が挙げられる。
【0095】
ポリマーフィルム支持体は、親水性を高めるために片面または両面が「下引き」層で改質されていてもよく、また、紙製支持体は、平坦性を高めるために同様にコートされていてもよい。下引き層の材料の例としては、アルコキシシラン類、アミノ−プロピルトリエトキシシラン類、グリシジオキシプロピル−トリエトキシシラン類及びエポキシ官能性ポリマー類、並びにハロゲン化銀写真フィルムに使用されるコンベンショナルな親水性下引き材料(例えば、ゼラチン及び他の天然に産出する及び合成の親水性コロイド、並びに塩化ビニリデンコポリマーなどのビニルポリマー類)が挙げられ、これらに限定されない。
【0096】
好ましい基材は、アルミニウム支持体で構成され、このアルミニウム支持体は、物理的粗面化、電気化学的粗面化及び化学的粗面化などの当該技術分野で知られている方法を用いてコーティングまたは処理され、その後、陽極酸化処理(例えば硝酸、硫酸又はリン酸などを用いて)されていてもよい。好ましくは、アルミニウムシートは、電気化学的に粗面化され、次いで、リン酸または硫酸とコンベンショナルな手順を用いて陽極酸化される。
【0097】
アルミニウム支持体を、例えばシリケート、デキストリン、フッ化ジルコニウムカルシウム、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ナトリウムなどのフッ化物を含むホスフェート溶液、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリアクリル酸またはアクリル酸コポリマー溶液で処理することによって、中間層を形成できる。好ましくは、アルミニウム支持体は、表面の親水性を改善すために、既知の手順を用いて、機械的に粗面化し、リン酸により陽極酸化処理し、そしてポリアクリル酸により処理されたものである。
【0098】
基材の厚さは、変えることができるが、印刷による摩耗に耐えるように十分厚く、かつ、印刷版を巻けるように十分薄くなければならない。好ましい実施態様としては、100〜600μmの厚さを有する処理されたアルミニウム箔が挙げられる。
【0099】
画像形成性要素の取扱いと「触感」を改善するために、基材の裏面(非画像形成側)に帯電防止剤及び/またはスリップ層もしくは艶消し層をコートしてもよい。
【0100】
基材は、適用された輻射線感受性組成物を上に有する円筒形表面であってもよく、従って、印刷機の一体部分であってもよい。かかる画像形成された円筒状物の使用については、例えば、米国特許第5,713,287号明細書(Gelbart)に記載されている。
【0101】
輻射線感受性組成物は、任意の好適な装置及び方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティングまたは押出ホッパーコーティングを使用して、コーティング液中の溶液または分散液として基材に適用できる。輻射線感受性組成物は、好適な基材(例えば機上印刷胴(on−press printing cylinder))上に吹き付けることによっても適用できる。好ましくは、輻射線感受性組成物は、最外層として適用される。
【0102】
かかる製造法の例は、遊離基重合性成分、開始剤組成物、輻射線吸収性化合物、ポリマーバインダー及び輻射線感受性組成物の任意の他の成分を好適な有機溶剤[例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、iso−プロピルアルコール、アセトン、γ−ブチロラクトン、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、及び当業界で容易にわかる他のもの、並びにこれらの混合物]中で混合し、得られた溶液を基材に適用し、適切な乾燥条件下で蒸発により溶剤(1または2種以上)を除去することである。好ましいコーティング溶剤及び代表的な画像形成性層配合物は下記実施例に記載する。適切な乾燥後、画像形成層のコーティング質量は一般的には0.1〜5g/m2 、好ましくは0.5〜3.5g/m2 、より好ましくは0.5〜1.5g/m2 である。
【0103】
現像性を高めるために、または熱絶縁層として作用するように、画像形成性層の下方に層が存在してもよい。下層は、現像液中に可溶性であるかまたは少なくとも分散性であるべきであり、好ましくは相対的に低い熱伝導係数を有する。
【0104】
画像形成性要素は、限定されないが、印刷版前駆体、印刷胴、印刷スリ−ブ及び印刷テープ(可撓性印刷ウエブを包含する)などのいかなる有用な形態を有してもよい。画像形成性部材は、好ましくは、平版印刷版を形成するための印刷版前駆体である。印刷版前駆体は、必要な画像形成性層が適切な基材上に配置された任意の有用な大きさ及び形状(例えば正方形または長方形)を有するものであることができる。印刷胴及びスリ−ブは、円筒形の、基材及び画像形成性層を有する輪転印刷部材として知られている。中空または中実の金属コアを、印刷スリーブ用の基材として使用できる。
【0105】
画像形成条件
使用の際、画像形成性要素は、150〜1500nmの波長で、輻射線感受性組成物中に存在する輻射線吸収性化合物に応じて、紫外線、可視光、近赤外線または赤外線などの輻射線の適切な供給源に暴露される。好ましくは、350〜450nmのλmaxを有する紫外線の供給源を使用して、または700〜1400nmの波長で赤外レーザーを使用して、画像形成が行われる。ダイオードレーザー装置は、信頼性が高くかつ保守費が低いので、本発明の画像形成性要素を露光するのに使用されるレーザーとしては、ダイオードレーザーが好ましい。しかしながら、例えばガスレーザーまたは固体レーザーなどの他のレーザーも使用できる。レーザーで画像形成する場合の出力、強度及び暴露時間の組合せは、当業者であれば容易に分かるであろう。市販されているイメージセッターに使用されている高性能のレーザーまたはレーザーダイオードは、現在、800〜850nmまたは1060〜1120nmの波長の赤外線を放射する。
【0106】
画像形成装置は、平台記録器(flatbed recorder)、またはドラムの内部もしくは外部の円筒状表面に取り付けられた画像形成性部材を備えたドラム記録器として構成できる。有用な紫外線画像形成装置の例は、405nmの波長の輻射線を放出するレーザーダイオードを含むFuji(日本国)から入手可能なLuxel V及びVxイメージセッターのモデルである。他の好適な画像形成源としては、Advantage、及びAvalonイメージセッター(Agfa−Gevaert(ベルギー国)から入手可能)、及びMAKO NEWS(マサチューセッツ州テュークスバリーのECRMから入手可能)が挙げられる。
【0107】
画像形成装置は、単独でプレートセッターとして機能することができ、あるいは画像形成装置を平版印刷機中に直接組み込むことができる。後者の場合、画像形成直後に印刷を開始できるので、印刷機のセットアップ時間をかなり短縮することができる。画像形成装置は、平台記録器、またはドラムの内部もしくは外部の円筒状表面に取り付けられた画像形成性部材を備えたドラム記録器として製造できる。有用な画像形成装置の例は、Eastman Kodak Companyから入手可能な各種モデルのCreo Trendsetter(登録商標)イメージセッターとして入手可能なものであり、当該イメージセッターは830nmの波長の近赤外線を放射するレーザーダイオードを備える。他の好適な画像形成源としては、波長1064nmで動作するCrescent 42Tプレートセッター(米国イリノイ州シカゴ所在のGerber Scientificから入手可能)及びScreen PlateRite 4300シリーズもしくは8600シリーズのプレートセッター(米国イリノイ州シカゴ所在のScreenから入手可能)が挙げられる。さらなる有用な輻射線源としては、印刷版胴に要素が取り付けられている間にその要素に画像を形成するのに使用できるダイレクトイメージング印刷機が挙げられる。好適なダイレクトイメージング印刷機の例としては、Heidelberg SM74−DI印刷機(米国オハイオ州デイトン所在のHeidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0108】
赤外線による画像形成速度は、画像形成性層の感度に応じて、一般的に、少なくとも20mJ/cm2かつ500mJ/cm2 以下、好ましくは少なくとも50mJ/cm2かつ300mJ/cm2 以下の画像形成エネルギーで行うことができる。
【0109】
スペクトルのUVから可視領域の画像形成輻射線、特にUV領域(例えば少なくとも250nmかつ450nm以下)の画像形成輻射線は、少なくとも0.01mJ/cm2かつ0.5mJ/cm2の、好ましくは少なくとも0.02mJ/cm2かつ0.1mJ/cm2のエネルギーを使用して一般的に実施できる。少なくとも0.5kW/cm2かつ50kW/cm2以下、好ましくは少なくとも5kW/cm2かつ30kW/cm2以下の範囲の出力密度でUV/可視光感受性の画像形成性要素を画像形成することが望ましいであろう。
【0110】
本発明を実施するのにレーザー画像形成が好ましい場合は、熱エネルギーを像様方式で提供する他の手段により画像形成をもたらすことができる。例えば、米国特許第5,488,025号明細書(Martinら)に記載され、「熱印刷法(thermal printing)」として知られている方法で熱抵抗ヘッド(サーマルプリントヘッド)を使用して画像形成を達成できる。サーマルプリントヘッドは市販されている(例えば、Fujitsu Thermal Head FTP−040 MCS001及びTDK Thermal Head F415 HH7−1089として)。
【0111】
現像及び印刷
画像形成後に予熱工程を必要とせずに、画像形成された要素を、従来の現像液を使用して「印刷機外」で現像できる。
【0112】
印刷機外現像の場合、現像液は、通常、界面活性剤、キレート化剤(例えばエチレンジアミン四酢酸の塩など)、有機溶剤(例えばベンジルアルコールなど)、またはアルカリ性成分(例えば無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物、及び炭酸水素塩など)を含む。水性アルカリ性現像液のpHは、好ましくは7〜14であり、好ましくは12を超える。画像形成された要素は一般的に、従来の処理条件を使用して現像される。
【0113】
有用なアルカリ性の水性現像液としては、3000ディベロッパー、9000ディベロッパー、GOLDSTARディベロッパー、GREENSTARディベロッパー、ThermalProディベロッパー、PROTHERM(登録商標)ディベロッパー、MX1813ディベロッパー及びMX1710ディベロッパー(これらはすべて、Eastman Kodak Companyから入手可能)が挙げられる。これらの組成物は、一般的に、界面活性剤、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸の塩)及びアルカリ性成分(例えば、無機メタケイ酸塩類、有機メタケイ酸塩類、水酸化物類及び重炭酸塩類)も含む。
【0114】
有機溶剤を含有する現像液は、一般的に、水と混和性である1種または2種以上の有機溶剤の単相溶液である。有用な有機溶剤としては、フェノールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物[例えば、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)];ベンジルアルコール;炭素原子数6以下の酸とのエチレングリコールのエステル及び炭素原子数6以下の酸とのプロピレングリコールのエステル;並びに炭素原子数6以下のアルキル基を有するエチレングリコールのエーテル類、炭素原子数6以下のアルキル基を有するジエチレングリコールのエーテル類及び炭素原子数6以下のアルキル基を有するプロピレングリコールのエーテル類、例えば2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。1種または2種以上のこれら有機溶剤が、一般的に、現像液の総質量を基準として0.5〜15%の量で存在する。かかる有機溶剤含有現像液は中性、アルカリ性、またはわずかに酸性のpHを有するものであることができ、6.5〜9.5のpHを有する。好ましくは、有機溶剤含有現像液はアルカリ性であり、7.5〜約9.5のpHを有する。
【0115】
代表的な溶剤系のネガ型アルカリ性現像液としては、ND−1ディベロッパー、955ディベロッパー及び956ディベロッパー(Eastman Kodak Companyから入手可能)が挙げられる。
【0116】
印刷機外現像の場合に、現像液は、一般的に、当該現像液を含むアプリケーターを用いて外層にこすりつけるまたは塗りつけることにより、画像形成された要素に適用される。代わりに、画像形成された要素に現像液をはけ塗りすることができ、又は露光領域を除去するのに十分な力で外層に吹き付けることによって現像液を適用してもよい。画像形成された要素を現像液中に浸すこともできる。全ての場合に、印刷機用の薬剤に対して優れた耐性を有する平版印刷版に現像画像が生じる。
【0117】
この印刷機外現像の次に、画像形成された要素を、好適な様式で水で濯ぎ、乾燥させる。乾燥させた要素を、従来のガム引き用溶液(好ましくはアラビアゴム)で処理することもできる。さらに、UV又は可視光へのブランケット露光有り又は無しで、ポストベーク工程を実施することができる。あるいは、ポストUVフラッド様式露光(熱を用いず)を使用して、画像形成された要素の性能を高めることができる。
【0118】
代わりに、画像形成された要素を、実質的に水(好ましくは温水)から成り、任意選択的にアルコール又はアルコール代替物を含む現像液(水が現像液の主な部分を構成する)を使用して印刷機外で現像を行うことができる。この単純化された現像液は、界面活性剤を含んでもよい。実質的に水を使用する現像は、布、スポンジ又はブラシを使用して適度にこすることにより促進することができる。
【0119】
加熱された現像液は、実施態様によっては、現像を促進することができる。例えば、実質的に水から成る現像液を、加熱して、30℃を超える温度で、好ましくは35℃を超える温度で使用できる。かかる現像は、Precision Lithograining(マサチューセッツ州サウスハドレイ)から入手可能な市販のAquascrubber 34版処理機を使用して行うことができる。
【0120】
他の実施態様において、画像形成された要素を、Prisco LPC(ニュージャージー州ニューアーク所在のPrinter’s Serviceから入手可能)などの市販の版クリーナー(plate cleaner)に接触させることにより印刷機外現像を達成できる。かかる溶液による現像も、布、スポンジ又はブラシで適度にこすることにより促進することができる。さらに、この現像を印刷機上で行うことができ、その場合に、画像形成性要素は印刷機上で現像されるか又は画像形成され現像される(下記参照)。
【0121】
実質的に水又は版クリーナーによる印刷機外現像の次に、画像形成された要素を、好適な様式で水で濯ぎ、乾燥させる。乾燥させた要素を、さらなる水を用いて又は用いずに、従来のガム引き用溶液(好ましくはアラビアゴム)で処理することもできる。さらに、UV又は可視光へのブランケット露光有り又は無しで、ポストベーク工程を実施することができる。
【0122】
平版印刷インクと湿し水を画像形成された要素の印刷面に適用することにより印刷を行うことができる。インクは、外層の非画像形成(非露光又は非除去)領域によって吸収され、湿し水は、画像形成と現像の工程で露出した基材の親水性表面により取り込まれる。次に、インクは、好適な受容材料(例えば、布、紙、金属、ガラス又はプラスチック)に転写され、これら材料上に望ましい刷り上がりの画像を提供する。必要に応じて、中間の「ブランケット」ローラーを使用して、インクを画像形成された部材から受容材料に転移させることができる。画像形成された部材は、刷り上げている間、必要に応じて、従来のクリーニング方法を使用して清浄にすることができる。
【0123】
本発明の幾つかの画像形成性要素は、「印刷機上」で現像できる。このタイプの現像はで、上記の現像液の使用が回避される。画像形成された要素は、印刷機上に直接取り付けられ、画像形成性層の非露光領域が、印刷の初期印象中に、好適な湿し水、平版印刷インク又は任意の順序でこれらの両方を適用により除去される。水性湿し水の典型的な成分としては、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶剤、殺生物剤、消泡剤及び金属封鎖剤が挙げられる。湿し水の代表例はVarn Litho Etch 142W及びVarn PAR(イリノイ州アディソン所在のVarn Internationalから入手可能)である。
【0124】
代わりに、画像形成性要素に対し、印刷機上で画像形成及び現像の両方を行うことができる。
【0125】
以下の例により本発明の実施を例示するが、決して本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0126】
実施例で使用した成分及び材料並びに評価に用いた分析法は以下のとおりである。特に断らない限り、化学物質は、Aldrich Chemical Co.(ワイオミング州ミルウォーキー)などの商業的供給元から得ることができる。
AIBNはアゾイソブチロニトリルを表し、例えばDuPont(デラウェア州ウィルミントン)製のVazo−64がある。
Byk(登録商標)307は、10質量%PGME溶液の形態のBYK Chemie(コネチカット州ウォリングフォード所在)から入手したポリエトキシル化ジメチルポリシロキサンコポリマーである。
Byk(登録商標)336は、BYK Chemieから入手した変性ジメチルポリシロキサンコポリマーのキシレン/メトキシプロピルアセテート中25質量%溶液である。
Elvacite(登録商標)4026は、Lucite International,Inc.(テネシー州コードバ)から入手したメタノール中の高度に分岐したポリ(メチルメタクリレート)のMEK中10質量%溶液である。
Equinoxプロセスブラックインク#15は、Graphic Ink Company(ユタ州ソルトレイクシティー)から入手した。
開始剤Aは、Ciba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリータウン)から入手したヨードニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロホスフェートの炭酸プロピレン中の75質量%溶液である。
Irganox(登録商標)1035は、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)であり、Ciba Specialty Chemicals Companyから入手した。
IR染料1は下記式により表される。
【0127】
【化3】

【0128】
IRTは、Showa Denko(日本国)から入手したIR染料である。
Klucel(登録商標)MはHercules(ベルギー国ヘバーリー)から入手したヒドロキシプロピルセルロース増粘剤であり、1質量%水溶液として使用した。
MEKはメチルエチルケトンを表す。
メルカプト−3−トリアゾールは、PCAS(フランス国ロンジュモー)から入手したメルカプト−トリアゾール−1H,2,4を表す。
オリゴマーAは、Desmodur(登録商標)N100をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートと反応させることにより調製されたウレタンアクリレートである(MEK中80質量%)。
PEGDAはポリエチレングリコールジアクリレート(MW=700)である。
PEGMAはポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、50質量%水溶液、典型的にはMnは2,080である。
PGMEは1−メトキシ−2−プロパノールを表し、これはDowanol(登録商標)PMとしても知られている。
Phosmer PEは、Uni−Chemical Co.,Ltd.(日本国)から入手した4〜5個のエチレングリコール単位を有するエチレングリコールメタクリレートである。
【0129】
顔料A(951)は、アセトアルデヒドによりアセタール化されたポリ(ビニルアルコール)、ブチルアルデヒド及び4−ホルミル安息香酸から誘導されたポリビニルアセタール7.7部、Irgalith Blue GLVO(Cu−フタロシアニンC.I.ピグメントブルー15:4)76.9部、及びDisperbyk(登録商標)167分散剤(Byk Chemie)15.4部の1−メトキシ−2−プロパノール中の固形分27%の分散液である。
SR399はSartomer Company,Inc.(ペンシルベニア州エクストン)から入手したジペンタエリトリトールペンタアクリレートであり、40質量%MEK溶液の形態にある。
Varn Litho Etch 142Wは湿し水の一成分であり、Varn International(イリノイ州アディソン)から入手した。
Varn PAR(アルコール下引き)は湿し水の一成分であり、これもVarn Internationalから入手した。
955ディベロッパーは、Eastman Kodak Company(ニューヨーク州ロチェスター)から入手可能な溶剤系現像液である。
【0130】
合成例1:モノマーA、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレートの調製
容器Aの印を付けた500mlビーカー中の300gの水にテトラフェニルホウ酸ナトリウム(13.68g、Aldrich Chemical Co.)を溶解させた。容器Bの印を付けた1000mlビーカー中の500gの水で[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロライド(17.64g、水中50%、Aldrich Chemical Co.)を希釈した。Silverson L4Rにより激しく攪拌しながら容器A中の溶液を容器Bの溶液に徐々に加えた(約10分間かけて)。白色沈殿物が形成され、混合物を冷蔵庫内に2時間貯蔵した。最初の濾過後、白色沈殿物を集め、100mlの水で洗浄した。第2の濾液から生成物を得、週末にかけて周囲温度で乾燥させ、次に、オーブン内で35℃で4時間乾燥させ、20gの白色固形物を得た。
【0131】
合成例2:ポリマーAの調製
AIBN(1.6g)、メチルメタクリレート(20g)、アクリロニトリル(24g)、ビニルカルバゾール(18g、Polymer Dajac製)、メタクリル酸(18g)及びDMAC(320g)を、磁気攪拌機、コンデンサー、温度制御装置及びN2 入り口を備えた1000mlの3つ口フラスコに入れた。混合物を60℃に加熱し、N2 保護下で一晩(約16時間)攪拌した。不揮発分(%)は約20%と求められた。窒素保護を除去後、40gの水中の5.2gのKOHを加えた。粘性液体が形成された。この混合物を10分間攪拌後、13.3gの臭化アリルを加え、混合物を55℃で3時間攪拌した。40gのDMAC中のHCl(12g)の36%溶液をフラスコに加え、さらに3時間攪拌した。反応混合物を濾過して、形成された無機塩を除去した。濾液を、次に、12リットルの水と20gの36%HCl溶液の混合物中に攪拌しながら徐々に滴下した。得られた沈殿物を濾過し、2000mlのプロパノールで洗浄し、次に別の2000mlの水で洗浄した。濾過後に細かい白色粉末が得られ、この粉末を40℃で5時間乾燥させると63gのポリマー固形物が得られた。
【0132】
合成例3:ポリマーBの調製
AIBN(0.8g)、合成例1から得られたモノマーA(5g)、メチルメタクリレート(8.4g)、アクリロニトリル(10g)、ビニルカルバゾール(7.6g、Polymer Dajac製)、メタクリル酸(9g)及びDMAC(160g)を、磁気攪拌機、コンデンサー、温度制御装置及びN2 入り口を備えた500mlの3つ口フラスコに入れた。混合物を60℃に加熱し、N2 保護下で一晩(約16時間)攪拌した。不揮発分(%)は約20%と求められた。窒素保護を除去後、20gの水中の2.6gのKOHを加えた。粘性液体が形成された。この混合物を10分間攪拌後、6.65gの臭化アリルを加え、混合物を55℃で3時間攪拌した。20gのDMAC中のHCl(6g)の36%溶液をフラスコに加え、さらに3時間攪拌した。反応混合物を濾過して、形成された無機塩を除去した。濾液を、次に、6リットルの水と10gの36%HCl溶液の混合物中に攪拌しながら徐々に滴下した。得られた沈殿物を濾過し、1000mlのプロパノールで洗浄し、次に別の1000mlの水で洗浄した。濾過後に細かい白色粉末が得られ、この粉末を40℃で5時間乾燥させると30.5gのポリマー固形物が得られた。
【0133】
合成例4:ポリマーCの調製
脱イオン水(74.8g)とn−プロパノール(241.4g)の混合物中に溶解させたPEGMA(20g)の溶液を1000mlの4つ口フラスコに入れ、徐々に加熱してN2 雰囲気下でわずかに還流(76℃)させた。スチレン(20g)、アクリロニトリル(70g)及びVazo−64(0.7g)の予備混合物を2時間かけて加えた。6時間後、別のアリコートのVazo−64(0.5g)を加えた。温度を80℃に上昇させた。その後、さらに2つのアリコートのVazo−64(それぞれ0.35g)を6時間かけて加えた。19時間反応後、コポリマーへの転化率は、不揮発分の百分率の測定値に基づいて98%超であった。PEGMA/スチレン/アクリロニトリルの質量比は10:20:70であり、n−プロパノール/水の比は76:24であった。溶液中の残留アクリロニトリルは、1H−NMRによる測定に基づいて0.5%であった。
【0134】
合成例5:ポリマーDの調製
PEGMA(10g、MW=2000、水中50%)、合成例1から得られたモノマーA(5g)、脱イオン水(35g)及びn−プロパノール(120g)を500mlの3つ口フラスコに入れた。このフラスコをN2 雰囲気下で75℃に徐々に加熱した。均等化漏斗内のスチレン(9g)、アクリロニトリル(31g)及びAIBN(0.35g)を2時間かけて加えた(溶液は30分で濁った)。2時間後、反応混合物を水浴に漬けることにより室温に冷却し、次いで、反応混合物を攪拌せずに一晩放置した。次の日、反応温度を75℃に上昇させた後、AIBN(0.2g)を加え、反応混合物の攪拌をN2 雰囲気下で4時間続けた。さらに0.2gのAIBNを加え、反応をさらに3時間続けた。固形分が24.3%に達したとき、フラスコを室温にすることにより反応を停止させ、得られた分散液を、さらに使用するために琥珀色のボトル内に保存した。
【0135】
比較例1:
0.41gのポリマーA、0.28gのオリゴマーA、0.47gのSR399、0.1gの開始剤A、0.013gのPhosmer PE、0.16gのByk(登録商標)307、0.12gのピグメント951、0.09gのPEGDA、0.43gのIrganox(登録商標)1035、10.13gのPGME、及び4.83gのMEKを混合することにより画像形成性層コーティング溶液を得た。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ポリ(ビニルリン酸)により後処理されたものに、上記溶液を、巻線ロッドを使用してコートし、次に、90℃に設定されたRanarコンベヤーオーブン内で約90秒間の滞留時間で乾燥させると、乾燥コーティング質量で約1.0g/m2となった。
【0136】
得られた画像形成性要素(印刷版前駆体)を、T−14スケールを有するマスクを通して紫外線に60秒間暴露した。次に、画像形成された要素を、25℃でトレイ内に水中33%の955ディベロッパーにより処理し、次に、相応の量の、Equinoxプロセスブラック平版印刷インクと、3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のVarn Litho Etch 142W及び3オンス/ガロン(22.g/リットル)のPARアルコール代替物を含む湿し水とによりインク付けした。露光領域には画像は保持されず、印刷版はインクを受容しなかった。
【0137】
実施例1:
0.41gのポリマーB、0.28gのオリゴマーA、0.47gのSR399、0.1gの開始剤A、0.013gのPhosmer PE、0.16gのByk(登録商標)307、0.12gのピグメント951、0.09gのPEGDA、0.43gのIrganox(登録商標)1035、10.13gのPGME、及び4.83gのMEKを混合することにより画像形成性層コーティング溶液を得た。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ポリ(ビニルリン酸)により後処理されたものに、上記溶液を、巻線ロッドを使用してコートし、次に、90℃に設定されたRanarコンベヤーオーブン内で約90秒間の滞留時間で乾燥させると、乾燥コーティング質量で約1.0g/m2となった。
【0138】
得られた画像形成性要素(印刷版前駆体)を、T−14スケールを有するマスクを通して紫外線に60秒間暴露した。次に、画像形成された要素を、25℃でトレイ内に水中33%の955ディベロッパーにより処理し、次に、相応の量の、Equinoxプロセスブラック平版印刷インクと、3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のVarn Litho Etch 142W及び3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のPARアルコール代替物を含む湿し水とによりインク付けした。得られた印刷版は、スケールT−14対照でステップ3の十分にインク受容性であった。
【0139】
比較例2:
29.9gのPGME及び15.0gのMEK中に1.20gのポリマーA、0.83gのオリゴマーA、1.28gのSR399、0.22gの開始剤A、0.094gのIRT、0.50gのIrganox(登録商標)1035(MEK中5%)、0.34gのピグメント951、0.28gのPEGDE、0.038gのPhosmer PE、及び0.32gの10%Byk(登録商標)307を溶解させることにより画像形成性層コーティング溶液を得た。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムにより後処理されたものに、回転ドラム上で170°F(約77℃)で約2分間適切に乾燥させた場合に約1.3g/m2 の乾燥コーティング質量となるように上記溶液をコートした。
【0140】
得られた単層の画像形成性要素(印刷版前駆体)を、CREO(登録商標)トレンドセッター3244xイメージセッター(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー所在のEastman Kodak Company)上に載せ、出力4.5W及び可変ドラム速度(250〜60RPM)で830nmのIRレーザーに暴露し、次にトレイ内の水中の33%の955ディベロッパーを使用して25℃で現像した。安定したべた濃度画像を達成するには、211mJ/cm2の画像形成露光量は十分でなかった。同じ印刷版に対して60秒間のUV露光を行い、T−14スケールでべた濃度ステップ1が得られた。48℃又は38℃/湿度80%で5日間インキュベートした印刷版は、同様なデジタルスピード及びクリーンなバックグラウンドを示した。
【0141】
これらの画像形成性要素に、水中9.7%のAirvol(登録商標)203ポリ(ビニルアルコール)16.3g、水中20%のポリ(ビニルイミダゾール)1.4g、1.2gの2−プロパノール及び11.1gの水を含むオーバーコート配合物を塗布した。巻線ロッドを使用して上記のオーバーコート配合物を適用し、100℃に設定されたRanarコンベヤーオーブン内で約1分間乾燥させた後、約0.35g/m2 の乾燥被覆量を有するオーバーコートがもたらされた。オーバーコートを有する得られた画像形成性要素を180mJ/cm2で830nmのIRレーザーに露光し、25℃でトレイ内の水中の33%の955ディベロッパーにより現像し、1.5%の炭酸カルシウムを含む摩耗インクを使用してMiehleシート供給印刷機上に設置し、使用すると、約28,000刷りの良好な印刷物を生じた。
【0142】
実施例2:
29.9gのPGME及び15.0gのMEK中に1.20gのポリマーB、0.83gのオリゴマーA、1.28gのSR399、0.22gの開始剤A、0.094gのIRT、0.50gのIrganox(登録商標)1035(MEK中5%)、0.34gのピグメント951、0.28gのPEGDE、0.038gのPhosmer PE、及び0.32gの10%Byk(登録商標)307を溶解させることにより画像形成性層コーティング溶液を得た。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムにより後処理されたものに、回転ドラム上で170°F(約77℃)で約2分間適切に乾燥させた場合に約1.3g/m2 の乾燥コーティング質量となるように上記溶液をコートした。
【0143】
得られた単層の画像形成性要素(印刷版前駆体)を、CREO(登録商標)トレンドセッター3244xイメージセッター上に載せ、出力4.5W及び可変ドラム速度(250〜60RPM)で830nmのIRレーザーに暴露し、次にトレイ内の水中の33%の955ディベロッパーを使用して25℃で現像した。安定したべた濃度画像及びクリーンなバックグラウンドを達成するための最低エネルギーは約140mJ/cm2であった。同じ印刷版に対して60秒間のUV露光を行い、T−14スケールでべた濃度ステップ6が得られた。48℃又は38℃/湿度80%で5日間インキュベートした印刷版は、同様なデジタルスピード及びクリーンなバックグラウンドを示した。
【0144】
これらの画像形成性要素に、水中9.7%のAirvol(登録商標)203ポリ(ビニルアルコール)16.3g、水中20%のポリ(ビニルイミダゾール)1.4g、1.2gの2−プロパノール及び11.1gの水を含むオーバーコート配合物を塗布した。巻線ロッドを使用して上記のオーバーコート配合物を適用し、100℃に設定されたRanarコンベヤーオーブン内で約1分間乾燥させた後、約0.35g/m2 の乾燥被覆量を有するオーバーコートがもたらされた。オーバーコートを有する得られた画像形成性要素を180mJ/cm2で830nmのIRレーザーに露光し、25℃でトレイ内の水中の33%の955ディベロッパーにより現像し、1.5%の炭酸カルシウムを含む摩耗インクを使用するMiehleシート供給印刷機上に設置し、使用すると、約30,000刷りの良好な印刷物を生じた。
【0145】
比較例3:
21.81gのn−プロパノール、13.23gのMEK及び6.89gの水中で3.19gのポリマーC(固形分24%)、0.69gのオリゴマーA、0.20gのSR399、0.09gの開始剤A、0.09gの染料1、0.03gのPhosmer PE、0.99gのElvacite(登録商標)4026、0.20gのByk(登録商標)336、2.20gのKlucel(登録商標)M、0.04gのメルカプト−3−トリアゾール及び0.13gのPEGDAを混合することにより画像形成性層コーティング溶液を調製した。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ポリ(ビニルリン酸)により後処理されたものに、回転ドラム上で170°F(約77℃)で約2分間適切に乾燥させた場合に約1.0g/m2 の乾燥コーティング質量となるように上記溶液をコートした。
【0146】
得られた画像形成性要素(印刷版前駆体)を、CREO(登録商標)トレンドセッター3244xイメージセッター上に載せ、出力5.0W及び可変ドラム速度(240〜40RPM)で830nmのIRレーザーに暴露し、次に、相応の量の、Equinoxプロセスブラック平版印刷インクと、3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のVarn Litho Etch 142W及び3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のPARアルコール代替物を装填したA.B.Dick印刷機上に直接取り付けた。良好な画像が100mJ/cm2で生じた。
【0147】
このタイプの別の画像形成性要素を100mJ/cm2で露光し、1.5%の炭酸カルシウムを含む摩耗インクを使用するMiehleシート供給印刷機上に設置すると、約10,000刷りの良好な印刷物を生じた。
【0148】
実施例3:
21.81gのn−プロパノール、13.23gのMEK及び6.89gの水中で3.19gのポリマーD(固形分24%)、0.69gのオリゴマーA、0.20gのSR399、0.09gの開始剤A、0.09gの染料1、0.03gのPhosmer PE、0.99gのElvacite(登録商標)4026、0.20gのByk(登録商標)336、2.20gのKlucel(登録商標)M、0.04gのメルカプト−3−トリアゾール及び0.13gのPEGDAを混合することにより画像形成性層コーティング溶液を調製した。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ポリ(ビニルリン酸)により後処理されたものに、回転ドラム上で170°F(約77℃)で約2分間適切に乾燥させた場合に約1.0g/m2 の乾燥コーティング質量となるように上記溶液をコートした。
【0149】
得られた画像形成性要素(印刷版前駆体)を、CREO(登録商標)トレンドセッター3244xイメージセッター上に載せ、出力5.0W及び可変ドラム速度(240〜40RPM)で830nmのIRレーザーに暴露し、次に、相応の量の、Equinoxプロセスブラック平版印刷インクと、3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のVarn Litho Etch 142W及び3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のPARアルコール代替物を装填したA.B.Dick印刷機上に直接取り付けた。良好な画像が50mJ/cm2で生じた。
【0150】
このタイプの別の画像形成性要素を100mJ/cm2で露光し、1.5%の炭酸カルシウムを含む摩耗インクを使用するMiehleシート供給印刷機上に設置すると、少なくとも28,000刷りの良好な印刷物を生じた。
【0151】
実施例4:
21.81gのn−プロパノール、13.23gのMEK及び6.89gの水中で3.19gのポリマーD(固形分24%)、0.69gのオリゴマーA、0.20gのSR399、0.09gの開始剤A、0.09gの染料1、0.03gのPhosmer PE、0.99gのElvacite(登録商標)4026、0.20gのByk(登録商標)336、2.20gのKlucel(登録商標)M、0.04gのメルカプト−3−トリアゾール及び0.13gのPEGDAを混合することにより画像形成性層コーティング溶液を調製した。電気化学的に粗面化され、硫酸陽極酸化されたアルミニウム基材であって、ポリ(アクリル酸)により後処理されたものに、回転ドラム上で170°F(約77℃)で約2分間適切に乾燥させた場合に約1.0g/m2 の乾燥コーティング質量となるように上記溶液をコートした。
【0152】
得られた画像形成性要素(印刷版前駆体)を、CREO(登録商標)トレンドセッター3244xイメージセッター上に載せ、出力5.0W及び可変ドラム速度(240〜40RPM)で830nmのIRレーザーに暴露し、次に、相応の量の、Equinoxプロセスブラック平版印刷インクと、3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のVarn Litho Etch 142W及び3オンス/ガロン(22.5g/リットル)のPARアルコール代替物を装填したA.B.Dick印刷機上に直接取り付けた。良好な画像が50mJ/cm2で生じた。この印刷版前駆体も38℃及び相対湿度80%又は50℃で5日間インキュベートした。画質の点ではインキュベーション後に有意な変化は確認されなかった。
【0153】
このタイプの別の要素を100mJ/cm2で露光し、次に1.5%の炭酸カルシウムを含む摩耗インクを使用するMiehleシート供給印刷機上に設置すると、少なくとも28,000刷りの良好な印刷物を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離基重合性成分と、
画像形成輻射線への暴露によって前記遊離基重合性成分の重合を開始させるのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物と、
疎水性主鎖と、当該疎水性主鎖に共有結合的に結合したカチオンおよび当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基とを有するポリマーバインダーと、
を含む輻射線感受性組成物。
【請求項2】
前記カチオンがアンモニウム、スルホニウムまたはホスホニウムイオンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ホウ素含有アニオンが下記構造(I):
【化1】

(ここで、R1 、R2 、R3 およびR4 は独立にアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはヘテロシクリル基であるか、あるいはR1 、R2 、R3 およびR4 の2または3個以上が一緒になってホウ素原子を有する複素環式環を形成していてもよい)
により表される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオンがアンモニウムイオンであり、前記ホウ素含有アニオンがアルキルトリアリールボレートまたはテトラアリールボレートである請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーバインダーが前記組成物の総固形分を基準として20〜70質量%を構成する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーバインダーが下記構造(II):
【化2】

(ここでAは、前記カチオンおよびホウ素含有アニオンを含む前記塩ペンダント基を含む反復単位であり、BはAにより表される反復単位以外の反復単位を表し、xは0.5〜30モル%であり、yは70〜99.5モル%である)
により表される請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
xが0.5〜15モル%であり、yが85〜99.5モル%である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Bが、1または2以上の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ポリ(アルキレンオキシド)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレンおよびスチレン誘導体、N−置換マレイミド、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、1−ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸並びにビニルポリアルキルシランから誘導された反復単位を表す、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記開始剤組成物がオニウムまたはトリアジンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が700〜1400nmのλmax を有する画像形成輻射線に対して感受性であり、前記開始剤組成物がヨードニウム塩を含み、前記組成物がさらに赤外線吸収性化合物を含み、遊離基重合性成分が遊離基重合性のエチレン性不飽和モノマーもしくはオリゴマーまたは遊離基架橋性ポリマーを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
350〜450nmのλmax を有する画像形成輻射線に対して感受性である請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
遊離基重合性成分と、
画像形成輻射線への暴露によって前記遊離基重合性成分の重合を開始させるのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物と、
疎水性主鎖と、当該疎水性主鎖に共有結合的に結合したカチオンおよび当該カチオンと塩を形成しているホウ素含有アニオンを含む塩ペンダント基とを有するポリマーバインダーと、
を含む画像形成性層を上に有する基材を含んで成るネガ型画像形成性要素。
【請求項13】
前記開始剤組成物がオニウムまたはトリアジンである請求項12に記載の要素。
【請求項14】
前記カチオンがアンモニウム、スルホニウムまたはホスホニウムイオンであり、前記ホウ素含有アニオンが下記構造(I):
【化3】

(ここで、R1 、R2 、R3 およびR4 は独立にアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはヘテロシクリル基であるか、あるいはR1 、R2 、R3 およびR4 の2または3個以上が一緒になってホウ素原子を有する複素環式環を形成していてもよい)
により表される請求項12に記載の要素。
【請求項15】
前記ポリマーバインダーが下記構造(II):
【化4】

(ここでAは、前記カチオンおよびホウ素含有アニオンを含む前記塩ペンダント基を含む反復単位であり、BはAにより表される反復単位以外の反復単位を表し、xは0.5〜30モル%であり、yは70〜99.5モル%である)
により表される請求項12に記載の要素。
【請求項16】
xが0.5〜15モル%であり、yが85〜99.5モル%であり、Bが、1または2以上の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ポリ(アルキレンオキシド)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレンおよびスチレン誘導体、N−置換マレイミド、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ビニルケトン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、1−ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸並びにビニルポリアルキルシランから誘導された反復単位を表す、請求項15に記載の要素。
【請求項17】
前記ポリマーバインダーが、画像形成性層の乾燥質量を基準として20〜70質量%を構成する請求項12に記載の要素。
【請求項18】
前記カチオンがアンモニウムイオンであり、前記ホウ素含有アニオンがアルキルトリアリールボレートまたはテトラアリールボレートであり、前記開始剤組成物がヨードニウム塩を含む、請求項12に記載の要素。
【請求項19】
輻射線吸収性化合物をさらに含む請求項12に記載の要素。
【請求項20】
前記開始剤組成物がオニウム塩を含み、前記遊離基重合性成分が遊離基重合性エチレン性不飽和モノマーもしくはオリゴマーまたは遊離基架橋性ポリマーを含み、前記輻射線吸収性化合物が赤外線吸収性化合物である、請求項19に記載の要素。
【請求項21】
350〜450nmのλmax を有する画像形成輻射線に対して感受性である請求項12に記載の要素。
【請求項22】
水、湿し水、平版印刷インク、あるいは、水または湿し水のいずれかと平版印刷インクとにより印刷機上で現像可能な請求項12に記載の要素。
【請求項23】
画像形成され現像された要素を提供する方法であって、
A)請求項12に記載のネガ型画像形成性要素を像様露光して露光領域および非露光領域を形成する工程、および
B)予熱工程を行ってまたは行わずに、前記像様露光された要素を現像して前記非露光領域のみを除去する工程、
を含む方法。
【請求項24】
前記画像形成性要素が赤外線感受性染料である輻射線吸収性化合物を含み、前記像様露光工程Aが、20〜300mJ/cm2 のエネルギーレベルで700〜1200nmの最大波長を有する画像形成輻射線を使用して行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記画像形成性要素が350〜450nmの画像形成輻射線を使用して露光される請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記現像が湿し水、平版印刷インクまたはこれらの両方を使用して印刷機上で行われる請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2010−511914(P2010−511914A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540235(P2009−540235)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/024386
【国際公開番号】WO2008/073223
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】