説明

ネコ科動物プロバイオティックであるラクトバシラス

本発明によれば、動物内でプロバイオティック活性を有する切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することにより得られる、ラクトバシラス属の乳酸菌株が提供される。使用方法および本発明のラクトバシラスを含む組成物も同様に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティック微生物の分野に関し、より詳細にはネコ科動物のプロバイオティック乳酸菌および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌によるコロニー形成から哺乳類の胃腸(GI)管を保護するための防衛機構は、非常に複雑である。大抵の哺乳類のGI管は、天然微生物相および体をむしばむ病原微生物によってコロニー形成される。健康な状態では、これらの競合する微生物相は平衡状態にある。腸の微生物相の平衡状態が変化することで、ヒトにおいても、ネコ、イヌ、およびウサギを包含するコンパニオンアニマルのような他の哺乳類種においても、多くのGI疾患が引き起こされたり、あるいは予防されたりすることがある。コンパニオンアニマルの健康は、それらの摂食およびGIの健康に密接に関係しており、これらの動物における腸内微生物相の平衡の維持が、コンパニオンアニマルの健康の向上をもたらす可能性がある。
【0003】
腸の微生物相の数および組成は、安定傾向にあるが、年齢および食餌によって変化する可能性がある。胃の酸性度、胆汁、腸の蠕動運動、および局所免疫は、ヒトおよび他の様々な哺乳類の小腸における細菌相の調節において重要であると考えられている因子である。コンパニオンアニマルのGI疾患としては、ネコ科動物で見られるGI疾患が挙げられ、細菌の異常増殖および病原菌による腸毒素の産生に関連していることが多い。これらの因子は、腸の微生物相の平衡を乱し、炎症および異常な免疫反応を促進させ得る。
【0004】
ここ数年の間に、研究によって、いくつかの有益な細菌株およびそれらのプロバイオティック剤としての利用可能性が強調され始めている。プロバイオティックは、生存可能な細菌または死滅細菌、タンパク質または炭水化物のようなそれらの構成成分、あるいは天然微生物相をGI管内に保存することによって哺乳類の健康を促進する細菌発酵の精製画分を調製して、異常な免疫反応における正常な制御を強化すると考えられている。プロバイオティック細菌は、治療を意図する種、またはそれに近い種に由来する場合、より有効であると一部で考えられている。したがって、ヒトに由来するものとは異なる、コンパニオンアニマルに対して使用されるべきコンパニオンアニマル由来のプロバイオティック菌株が必要とされている。
【0005】
PCT国際公開特許WO01/90311は、プロバイオティック活性を有する、ネコからの糞便試料から単離することにより得られるプロバイオティック微生物を開示している。しかし、これらの細菌は、糞便試料から得られたものであり、GI管の上部に存在する自然の腸内微生物相の一部を形成しない可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、プロバイオティック特性およびプロセスへの耐久能力で選択された、特にネコに適合する、GI管の上部に存在する自然の腸内微生物相からの単離によって得られる細菌株を提供することと、これらの菌株を、使用に好適な組成物に組み込むこととが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、動物内でプロバイオティック活性を有する切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することによって得られるラクトバシラス属の乳酸菌株が適用される。乳酸菌株は、ラクトバシラス・サリバリウス、ラクトバシラス・アニマリス、ラクトバシラス・ロイテリ、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・ジョンソニー、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・ブルガリウス、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・セロビオサス、ラクトバシラス・クルバタス、ラクトバシラス・デルブルキ、ラクトバシラス・ファーメンタム、ラクトバシラス・ヘルベティカス、ラクトバシラス・ラクティス、またはラクトバシラス・プランタラムの種から選択されることが好ましい。
【0008】
好ましい実施形態では、乳酸菌株は、配列番号1と94%を超える相同性を有するか、配列番号2と93%を超える相同性を有するか、または配列番号3と98%を超える相同性を有する16s−23sポリヌクレオチド配列を有するラクトバシラスを含む群から選択される。
【0009】
さらに好ましい実施形態では、乳酸菌株は、ラクトバシラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシニウスNCIMB41287(AHF122A)、ラクトバシラス・アニマリスNCIMB41288(AHF223C)、ラクトバシラス・ロイテリNCIMB41289(AHF5119)、またはこれらの突然変異体を含む群から選択される。
【0010】
さらに本発明は、コンパニオンアニマルの健康を維持および改善するために、切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することによって得られる乳酸菌の使用を提供することと、該乳酸菌を含む組成物を提供することとを対象とする。
【0011】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、本発明の開示を読むことによって当業者に明白になるであろう。
【0012】
配列
配列番号1−ラクトバシラス・サリバリウス亜種サリシニウス、NCIMB41287からの16s−23s遺伝子間スペーサーヌクレオチド配列
配列番号2−ラクトバシラス・アニマリス、NCIMB41288からの16s−23s遺伝子間スペーサーヌクレオチド配列
配列番号3−ラクトバシラス・ロイテリ、NCIMB41289からの16s−23s遺伝子間スペーサーヌクレオチド配列
配列番号4−配列分析のための左16s−23sPCRプライマー配列
配列番号5−配列分析のための右16s−23sPCRプライマー配列
【0013】
細菌寄託番号
以下の表に、本発明の例である菌株のためのラクトバシラス種および菌株番号を示す。当該細菌株は、ナショナル・コレクションズ・オブ・インダストリアル・フード・アンド・マリン・バクテリア(National Collections of Industrial Food and Marine Bacteria)(NCIMB))(英国アバディーン(Aberdeen))に寄託される。
【表1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
規定がない限り、本明細書における重量、測定値、および濃度は全て、組成物全体に関して25℃で測定される。
【0015】
指示がない限り、本明細書において言及する組成物の百分率は全て重量百分率であり、比率は全て重量比である。
【0016】
指示がない限り、分子量は全て、重量平均分子量である。
【0017】
指示がない限り、本文内で参照される全ての文献の内容は、その全てが本明細書に参考として組み込まれる。
【0018】
実際に測定した値の特定の例が提示されている場合を除いて、本明細書で参照する数値は「約」という語により修飾されていると考えるべきである。
【0019】
以下の説明では、略語CFU(「コロニー形成単位」)は、当該技術分野において一般に理解されることが予想されるように、寒天プレート上の微生物数によって示される細菌性細胞の数を示す。
【0020】
本明細書で使用する時、用語「その突然変異体」は、16s−23s遺伝子間配列を除く、細菌のゲノム中の他のDNA配列にDNA突然変異を含む、誘導された細菌の菌株を包含する。
【0021】
本明細書で使用する時、用語「DNA突然変異」には、欠失、挿入、トランスバージョン、および当業者に既知の他のDNA修飾、例えば、親配列に対して少なくとも50%の相同性を維持しながら親ヌクレオチドまたはアミノ酸配列に遺伝子組み替えを導入することを包含する、少なくとも単一の塩基変化を含む自然突然変異または誘発突然変異が包含される。DNA突然変異(単数または複数)を含む配列は、好ましくは親配列と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは85%の相同性を有する。本明細書で使用する時、配列「相同性」は、当業者に既知の標準技術を使用して決定することができる。例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で公的に入手可能なオンライン相同性アルゴリズム「BLAST」プログラムを使用して、相同性を決定してもよい。
【0022】
本明細書で使用する時、「遺伝子操作」には、生物のゲノムへの挿入によって、あるいは当業者に既知であるプラスミドDNAまたはバクテリオファージを包含するベクターによって、生物のゲノムに外来性および/または内在性DNA配列を導入することが包含され、前記DNA配列の長さは、少なくとも2つのデオキシリボ核酸塩基分である。
【0023】
本明細書で使用する時、「コンパニオンアニマル」は家畜を意味する。「コンパニオンアニマル」は、家庭で飼われるネコ科動物(ネコ)、イヌ科動物(イヌ)、ウサギ、白イタチ、ウマ、ウシ等を意味することが好ましい。「コンパニオンアニマル」は、家庭で飼われるネコ科動物を意味することがより好ましい。
【0024】
乳酸ラクトバシラス菌株
本発明の第一の態様は、動物内でプロバイオティック活性を有する切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することによって得られる、ラクトバシラス属の乳酸菌株を含む。プロバイオティックは、生存可能な微生物または死滅微生物、微生物の加工組成物、タンパク質または炭水化物のようなそれらの構成成分、あるいは宿主に有益な作用を及ぼす細菌発酵の精製画分である。プロバイオティック菌は、一般に生存可能な細胞の形態で使用される。しかし、プロバイオティック菌により発現される有益な因子を含有する、死滅した培養物または組成物のような生存不可能な細胞にも拡張することができる。これには、熱で死滅した微生物、あるいは、pH変化に曝されることによりまたは圧力を受けることにより、死滅した微生物が包含されてもよい。本発明の目的では、「プロバイオティック」は、別途に示されていなければ、本発明の微生物によって発酵中に産生される代謝産物をさらに包含することが意図される。これらの代謝産物は、発酵の媒質に放出される可能性があり、または微生物内に蓄えられる可能性がある。本明細書で使用する時、「プロバイオティック」は、また、治療的用量で与えられた場合に宿主動物に有益な機能を果たす、細菌、細菌性ホモジネート、細菌性タンパク質、細菌抽出物、細菌発酵上清、およびこれらの混合物も包含する。
【0025】
切除および洗浄された哺乳類のGI管から直接単離することによって得られるラクトバシラス属の乳酸菌は、生存可能な細菌細胞の摂食後にGI管に付着することと、生存可能な形態、生存不可能な形態、または分画された形態で動物に与える場合に、著しく免疫調節性であることとが分かっている。理論に束縛されるものではないが、切除および洗浄されたGI管から単離することによって得られるラクトバシラスは、腸粘膜組織と密に結び付くと考えられる。さらに理論に束縛されるものではないが、これによって、そのプロバイオティック作用を引き起こす代替の宿主反応を生じさせる本発明のプロバイオティックであるラクトバシラスが得られると考えられる。切除および洗浄されたGI管からの単離によって得られるプロバイオティック細菌は、粘膜上皮および宿主の免疫細胞との直接相互作用を介して宿主の免疫系を調節できることが判明している。この免疫調節は、プロバイオティック細菌に関連する伝統的な作用機序、すなわち栄養素のための閉塞および競合による病原体の腸への付着を予防することと併せて、プロバイオティック生物体として非常に有効な本発明のラクトバシラスをもたらす。
【0026】
切除および洗浄されたネコ科動物のGI管から単離することによって得られる本発明のラクトバシラスは、多数の病原菌株/種に対してインビトロ抗菌活性を有する。理論に束縛されるものではないが、このインビトロ抗菌活性は、動物、好ましくはネコ科動物のようなコンパニオンアニマルにおいて、インビボで潜在的プロバイオティック活性を示すと考えられている。本発明の乳酸菌は、好ましくは、サルモネラ・ティフィムリウム、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア・イノキュア、または大腸菌、より好ましくはこれらの株の組み合わせ、さらになお好ましくはこれらの株全てに対して、インビトロ抗菌活性を有する。
【0027】
理論に束縛されるものではないが、本発明の乳酸菌の抗菌活性は、本明細書中の乳酸菌による多数の異なる作用の結果である可能性があると考えられる。これまで、当該技術分野では、糞便試料から単離されたいくつかの細菌株が、経口消費後に、閉鎖(occlusion)によって腸粘膜への病原生物の付着を予防することにより、GI管でそのプロバイオティック効果を及ぼすことが示唆されてきた。これには、腸内に細菌のコロニーを形成させるために、「生きている」または生存可能な細菌細胞の経口消費が必要である。しかしながら、切除および洗浄されたネコ科動物のGI管から単離によって得られる本発明のラクトバシラスは、生存可能な形態で与えられた場合には、閉塞に起因していくらかのプロバイオティック効果を発揮すると同時に、病原微生物の増殖を阻害するかまたは病原微生物を殺す物質(単数または複数)のインビトロ発酵中の産生に起因して、生存可能な形態かまたは生存不可能な形態で実質的なプロバイオティック効果を供給する可能性があり、および/または宿主動物の免疫適合性を変える可能性があると考えられる。本発明の細菌を生存可能または生存不可能な培養物あるいは精製発酵産物として与えることができ、それでもなお宿主動物に有益な治療効果をもたらすので、この形態のプロバイオティック活性が望ましい。
【0028】
本発明の乳酸菌は、GI管内を通過した後に生存能力を維持できることが好ましい。このことは、生きた培養菌を経口摂取して、食道および胃を通過後に小腸および大腸内でコロニー形成を生じるために望ましい。本発明の乳酸菌による小腸および大腸でのコロニーを形成は、宿主に長期にわたるプロバイオティック効果をもたらすのに望ましい。生存不可能な細胞またはその精製単離物の経口服用は、一時的な効果をもたらすが、細菌は生存可能ではないので、増殖してその場で継続的にプロバイオティック効果をもたらすことができない。結果として、これには、健康上の利益を維持するために宿主に定期的に服用させることが必要である可能性がある。これに対し、生存可能な形態で胃を通過して生き残ることができ、その後腸粘膜に付着して腸粘膜上で増殖することによってコロニーを形成する生存可能な細胞は、その場で継続的にプロバイオティック効果をもたらすことが可能である。
【0029】
したがって、本発明の乳酸菌は、pH2.5の培地に1時間懸濁させた後で生存能力を維持することが好ましい。本明細書で使用する時、「生存能力を維持する」とは、当業者に既知の平板計数法を使用して、初めに試験培地に懸濁させた細菌の少なくとも25%が生存可能であることを意味する。好ましくは、「生存能力を維持する」とは、初めに懸濁させた細菌の少なくとも50%が生存可能であることを意味する。本発明の乳酸菌は、低いpHに曝された後で生存能力を維持することが望ましく、これは、動物において経口消費後にインビボで胃および腸上部で胃液に曝される状況を模しているからである。
【0030】
さらに、本発明の乳酸菌は、少なくとも0.5%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下で、少なくとも33%増殖することが好ましい。本明細書で使用する、増殖については、実施例3においてさらに詳細に記載する。本発明の細菌は、少なくとも1%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下で、少なくとも33%増殖することがより好ましい。本発明の細菌は、少なくとも0.5%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下で、100%の増殖を示すことがさらにより好ましい。理論に束縛されるものではないが、本発明の乳酸菌は、少なくとも0.5%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下で生存能力を維持することができ、腸内に存在する状況で生存することが可能である。これは、培養培地にネコ科動物胆汁を加えて腸の条件を模した結果と考えられる。
【0031】
さらにその上、本発明の乳酸菌は、インビトロで腸上皮細胞への顕著な付着を示すことが好ましい。本明細書で使用する時、「顕著な付着」とは、上皮細胞と共にインキュベートされた乳酸菌の総数の少なくとも1%がインビトロにて該上皮細胞に付着することを意味する。共にインキュベートされた細菌細胞の少なくとも5%が、インビトロにて上皮細胞に付着することがより好ましい。理論に束縛されるものではないが、腸上皮細胞のインビトロ付着は、インビトロにて動物のGI管をコロニー形成する乳酸菌の能力の指標であると考えられる。
【0032】
本発明に従う乳酸菌株は、ラクトバシラス・サリバリウス、ラクトバシラス・アニマリス、ラクトバシラス・ロイテリ、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・ジョンソニー、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・ブルガリウス、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・セロビオサス、ラクトバシラス・クルバタス、ラクトバシラス・デルブルキ、ラクトバシラス・ファーメンタム、ラクトバシラス・ヘルベティカス、ラクトバシラス・ラクティス、またはラクトバシラス・プランタラムを含む群から選択される種であることが好ましい。乳酸菌株は、ラクトバシラス・サリバリウス、ラクトバシラス・アニマリス、ラクトバシラス・ロイテリ、ラクトバシラス・アシドフィルス、またはラクトバシラス・ジョンソニーを含む群から選択されることが好ましい。
【0033】
16s−23s遺伝子間ポリヌクレオチド配列は、様々な細菌種および細菌株を識別するために使用できる細菌ゲノム内のDNA配列として当業者には知られている。この遺伝子間ポリヌクレオチド配列は、以下の実施例4で詳述する方法によって決定することができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、乳酸菌株は、9配列番号1と4%を超える相同性を有するか、配列番号2と93%を超える相同性を有するか、または配列番号3と98%を超える相同性を有する16s−23sポリヌクレオチド配列を有するラクトバシラスを含む群から選択される。乳酸菌株は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3と98%を超える相同性を有する16s−23sポリヌクレオチド配列を有するラクトバシラスを含む群から選択されることがより好ましい。本発明に従う乳酸菌株は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3から選択される16s−23sポリヌクレオチド配列を有するラクトバシラスを含む群から選択されることがなおより好ましい。本発明に従う乳酸菌株は、ラクトバシラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシニウスNCIMB41287(AHF122A)、ラクトバシラス・アニマリスNCIMB41288(AHF223C)、ラクトバシラス・ロイテリNCIMB41289(AHF5119)またはその突然変異体を含む群から選択されることがなおより好ましい。
【0035】
切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することによって得られるラクトバシラス属の乳酸菌株は、動物、好ましくはコンパニオンアニマルまたはヒトにおける経口消費後にプロバイオティック効果を供給するために用いることができる。このプロバイオティック効果は、一般に、動物の全般的な健康を維持および改善する。病気の症状の治療的緩和、または予防による病気の予防において利益となる、動物の健康および生理機能の非限定的な要素としては、炎症性疾患、免疫不全症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、癌(特に胃腸および免疫系の癌)、下痢性疾患、抗生物質起因性の下痢、虫垂炎、自己免疫疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、アミロイド症、リウマチ様関節炎、関節炎、関節可動性、真性糖尿病、インスリン耐性、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、歯周病、泌尿生殖器疾患、外科手術による外傷、外科手術によって誘発される転移性疾患、敗血症、体重減少、体重増加、過度の脂肪組織蓄積、拒食症、発熱の抑制、悪液質、創傷治癒、潰瘍、腸バリア感染症、アレルギー、喘息、呼吸器疾患、循環器疾患、冠状動脈性心疾患、貧血、血液凝固系の疾患、腎疾患、中枢神経系疾患、肝疾患、虚血、栄養障害、骨粗鬆症、内分泌疾患、および表皮疾患が挙げられる。好ましいのは、下痢の治療または予防を包含する胃腸管の処置;免疫系の調節、好ましくは自己免疫疾患および炎症の治療または予防;皮膚および/または毛皮系の健康の維持または改善、好ましくはアトピー性皮膚疾患の治療または予防;精神的認識および活動レベルを包含する老化の影響の治療または予防;視床下部−下垂体−副腎軸線に関連する疾患の予防、並びに可動性の改善による関節の健康の改善である。
【0036】
以上で開示した疾患の処置は、当業者に既知の技術を使用して測定されてもよい。例えば、自己免疫疾患および炎症を包含する炎症性疾患は、リンパ球幼若化現象、ナチュラルキラー細胞活性、ワクチンに対する抗体反応、遅延型過敏症、およびこれらの組み合わせのようなインビボ免疫機能試験を使用して検出および監視されてもよい。本明細書でこのような方法について簡単に説明するが、これらは当業者には周知である。
【0037】
1.リンパ球幼若化現象:このアッセイは、様々なマイトジェンに対する試験動物および対照動物の新鮮な全血から単離されたリンパ球のインビトロ増殖反応を測定する、総合的なT細胞およびB細胞の機能の指標である。簡潔に言えば、当業者に既知のフィコール・ハイパーク密度遠心分離法によって、全血から末梢血単核球(PBMC)を単離する。単離したPBMCを、HEPES、L−グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを追加したRPMI1640細胞培地で2回洗浄する。洗浄した細胞を、RPMI1640中に再懸濁させ、計数し、細胞密度を適切に調節する。2×10個の細胞を、10%ウシ胎児血清(シグマ(Sigma))を用い、37℃・5%COで72時間にわたって、3通り(triplicate)で、様々なマイトジェンの一連の濃度(0.1μg/mL〜100μg/mL)に曝す:そのいくつかの例としては、ポークウィードマイトジェン(ギブコ(Gibco))、フィトヘマグルチニン(ギブコ(Gibco))、およびコンカナバリンA(シグマ(Sigma))が挙げられる。54時間経過後に、細胞を1μCiH−チミジンでパルスし、細胞を集め、72時間後にトップカウントNXT(Top Count NXT)でシンチレーションカウントを読み取る。
【0038】
2.ナチュラルキラー細胞活性:米国特許第6,310,090号に記載されているように、このアッセイは、試験動物および対照動物の新鮮な全血から単離されたナチュラルキラー細胞のインビトロエフェクター活性を測定する。ナチュラルキラー細胞は、哺乳類の先天性免疫機能の構成成分である。NK細胞の細胞毒性活性を評価する際の標的細胞として、ネコ科動物の甲状腺癌細胞を使用した。この細胞株は、既に、ネコ科動物のNK細胞によって死滅しやすいことが示されていた。標的細胞を、10%の子牛胎児の血清(FCS)、100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを追加した20mLの最小必須培地(MEM;シグマ・ケミカル社(Sigma Chem.Co.)、ミズーリ州セントルイス(St.Louis))を入れたT75フラスコ内で培養した。コンフルエントになった場合、標的細胞をトリプシン処理し、3回洗浄して、完全培地(ストレプトマイシンのペニシリン+100μg/mLのRPMI−1640+10%FCS+100U/mL)中に細胞数5×10個/mLに再懸濁させた。3通り(Triplicate)の標的細胞の100μLアリコートを96ウェルU底プレート(コスター(Costar)、マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge))内にピペットで入れ、8時間インキュベートし、細胞付着させた。次いで、フィコール・ハイパーク分離(前述)によって単離されたリンパ球(エフェクター細胞;100μL)を標的細胞に加えて、エフェクター/標的細胞(E:T)比を10:1にした。37℃で10時間インキュベートした後、5μgの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を含有する基質20μLを加えた。混合物を、37℃で4時間インキュベートし、その後、未代謝のMTTを吸引によって除去した。200μLの95%エタノールを加えることによってホルマザン結晶を溶解させた。マイクロプレートリーダーを使用して570nmで光学密度を測定した。NK細胞特異的溶解の百分率を次のように計算した:
特異的細胞毒性(%)=100×{1−[(標的細胞およびエフェクター細胞のOD
−エフェクター細胞のOD)/(標的細胞のOD)]}
【0039】
3.ワクチンに対する抗体反応:プロバイオティック餌または対照餌を少なくとも12週間与えた後、被験体にワクチンのアレイ(最大5まで)を与える。ワクチンは、新規ワクチンと余剰ワクチンの混合物であってよい。使用してよいワクチンアレイの非限定例としては、フォートダッジアニマルヘルス(Fort Dodge Animal Health)によって調製されたワクチンの混合物が挙げられる。本明細書に用いるのに好適なワクチンの非限定例としては、ネコ科動物ジステンパー、アデノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザ、およびパルボウイルスが挙げられる。被験体のワクチン歴が、使用すべきワクチンを決定するであろう。所与のワクチンに対する特異的抗体を、血液中で3週間にわたって測定し、対照餌群およびプロバイオティック餌群における反応の長さおよび強度を比較する。
【0040】
4.遅延型過敏症:免疫系の状態を評価するインビボの非侵襲的方法。この試験は、多クローン性マイトジェンであるフィトヘマグルチニン(PHA)と、ヒツジ赤血球、多価ワクチン、ヒスタミン(100μLの0.0275g/Lリン酸ヒスタミン;グリア(Greer)、ノースカロライナ州ルノワール(Lenoir))、またはPBS(100μLの8.5g/Lリン酸緩衝生理食塩水;シグマ(Sigma))とを組み合わせた、皮内注射を含む。注射後0、24、48、および72時間の時間間隔で、キャリパーを使用した皮下脂肪の厚さとして、抗原に対する免疫反応を記録する。皮下脂肪の厚さの増加は、本発明の細菌による処置によって減少するはずの過敏性反応がより大きいことを示す。
【0041】
本発明のラクトバシラス細菌の効果を確定するためのさらなる方法は、米国特許第6,133,323号および米国特許第6,310,090号に記載されている。
【0042】
さらに、体脂肪量、除脂肪量、および骨塩量を包含する身体組成を測定するデュアルX線吸収法またはCTスキャンを使用して、老化の影響の改善を判定することができる。同様に、この方法を使用して、感染後の被験体における体重減少または骨密度のような解剖学的変化を判定することができる。
【0043】
また本発明のラクトバシラスは、コンパニオンアニマルにおけるストレスレベルを減少させるための方法に使用することもできる。エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、コルチゾール、C反応性タンパク質、および他の急性期タンパク質およびを包含する血中ストレスホルモンの濃度を測定して、ストレスレベルおよびそれらの低下または維持を決定してもよい。これらのホルモンは、ストレスのバイオマーカーとして認識されており、当業者に既知の技術を使用して容易に測定することができる。さらに、CT画像にて、視床下部−下垂体−副腎軸線の活性のインビボマーカーとしての副腎サイズを直接測定してもよい。
【0044】
さらに、訓練を受けた2人によって行われる皮膚および毛皮評価を用いて、アトピー性皮膚疾患を包含するコンパニオンアニマルの皮膚および/または毛皮系の健康の維持または改善を測定してもよい。このような評価の際に調査される基準の例としては、次のものが挙げられる:
a)脱毛指数:標準ブラッシングセッションの間にもたらされた毛を収集することによって、各被験体に脱毛指数を割り当てる。毛を保管して計量し、対照と被験体とを比較する。
b)皮膚/毛皮の主観的評価:訓練を受けた官能試験員が、脱毛、ふけ、光沢、均一性、柔軟性、および密度を評価することによって、皮膚および毛皮の状態を主観的に評価する。
c)皮膚機能評価:アセトンを染み込ませたガーゼで皮膚表面を拭うことによって、皮膚のバリア機能を評価してもよい。この手法は、単一の細胞層および関連した角質層の脂質画分を除去することによって皮膚バリアを効果的に破壊する。当業者に既知の方法を使用して、経表皮水分損失(TEWL)の増加および被術部位の赤色度を測定することによって、バリアの破壊を定量化する。前述のカメラおよび照明システムを使用して、赤色度(紅斑)スコアを得る。破壊の直前および直後と、5時間および24時間エンドポイントとにおいて、TEWLの読み値および赤色度スコアを獲得して、皮膚の保護および治癒特性を評価する。
【0045】
コンパニオンアニマルにおける下痢の治療または予防は、大便スコアを用いて測定してもよい。大便スコアは、以下の指針に従って毎日記録してもよく、本発明による細菌の給餌前および給餌後に対照群と試験群とを比較する。
【0046】
スコア:5 極めて乾燥している
この大便は、硬く、表面にくっつかない。大便は、押されると転がるであろう。大便を拾い上げた場合、くぼみができない。大便は、完全な単一体ではなく、個別の大便の集団として排泄されることが多い。大便は、収集後に元の形状を維持している。
【0047】
スコア:4 しっかりしている(理想的な大便)
この大便は、しっかりしていて、良い形状であり、円筒形である。この大便は、拾い上げた場合、容易にはばらばらにならない。この大便は、表面および手袋に残留物を残す可能性がある。この大便は、単一体として排泄されることが多い。大便は、収集後に元の形状を維持している。
【0048】
スコア:3 柔らかく、形状を有する
この大便は、柔らかいが、明確な形状がある。この大便は、容易にばらばらになり、表面および手袋に確実に残留物を残すであろう。大便は、収集後に元の形状を失うことが多い。この大便は、別のスコアと共に存在することが多いが、大便試料全体を占めることができる。
【0049】
スコア:2 柔らかく、形状がない
この大便は、柔らかく、円筒形状を有さないであろう。「2」に関連することが多い形状は、「牛肉パティ」形である。この大便は、収集される場合、元の形状を失い、表面および手袋に確実に残留物を残すであろう。この大便スコアは、別のスコアと共に存在することが多いが、大便試料全体を占めることができる。この大便試料は、数インチの面積に広がる可能性がある。
【0050】
スコア:1 液体
この大便の得点は常に液体を象徴し、粒子状物質が存在してもまたは存在しなくてもよい。この大便は、完全な単一体ではなく、集合体として排泄されることが多いであろう。この大便試料と共に粘液が存在することが多い。この大便試料は、収集が非常に困難であり、常に表面および手袋に残留物が残る。この大便試料は、数インチの面積に広がる可能性がある。
【0051】
さらに、血便、大便中の異物、または大便中の粘液を包含する他の観察結果も同様に記録される。
【0052】
さらに、コンパニオンアニマルにおける胃腸感染症の処置は、コンパニオンアニマルの微生物生態系の改善を含む可能性がある。コンパニオンアニマルの微生物生態系の改善は、コンパニオンアニマルの糞便中の病原菌の量の低減を含むことが好ましい。コンパニオンアニマルの糞便中に存在する病原菌の量は、当業者に既知の標準的な平板計数法を使用して数えてもよい。病原菌は、クロストリジウム属、エシェリキア属、サルモネラ属、バクテリオイド属、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることがより好ましい。好適な病原菌株の非限定例としては、ウェルシュ菌、クロストリジウム・ディフィシレ、大腸菌、サルモネラ・ティフィムリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
また、本発明の細菌の使用方法には、哺乳類、好ましくはコンパニオンアニマルの尿路の予防的または治療的処置も包含されてもよい。尿路の処置の非限定例としては、尿路感染の治療または予防、尿路結石を包含する腎疾患の治療または予防、膀胱感染の治療または予防等が挙げられる。理論に束縛されるものではないが、本発明のラクトバシラスは、インビトロにて立証されるように、そのシュウ酸分解能の結果としてこれら疾患の予防に有用であると考えられる。シュウ酸は、腎臓、膀胱、および他の尿路感染を引き起こす不溶性沈殿物を形成できる、尿代謝の副産物である。シュウ酸を分解し、その結果尿路でのシュウ酸の沈殿および蓄積を潜在的に予防することによって、本発明の細菌は、尿路の感染および他の疾患を治療および予防する可能性がある。シュウ酸の分解は、ベーリンガー・マンハイム/R−バイオファーム(Boehringer Mannheim/R-Biopharm)から市販されているシュウ酸試験キット・カタログ番号755699を使用して、インビトロにて測定してもよい。
【0054】
本発明のラクトバシラスは、繊維消化の改善を含む、コンパニオンアニマルの健康を改善または維持する方法において使用してもよい。繊維消化の改善は、前記プロバイオティック細菌と、有益な内因性微生物相の増殖とを促進し、そのことがいくつかの潜在的な病原菌の阻害に役立つので、望ましい。さらに、ヒトにおける腸内発酵に起因した毒性代謝産物および有害酵素の量の減少が文書化されている(トモマツ、H.(Tomomatsu,H.)、「オリゴ糖の健康効果(Health effects of oligosaccharides)」、(1994)食品技術(Food Technol)、48、61〜65)。各々の実験において、希釈された糞便の試料を使用する代わりに、関心の細菌株の純粋培養を使用して植菌したこと以外は、ビッカーズ(Vickers)ら(2001)の、「ネコ科動物結腸微生物相による選択されたフラクトオリゴ糖および他の繊維基材の発酵の比較(Comparison of fermentation of selected fructooligosaccharides and other fiber substrates by feline colonic microflora)」、(Am.J.Vet.Res.61(4)、609−615)に記載された方法を使用して、繊維消化を決定してもよい。
【0055】
本発明のネコ科動物プロバイオティック菌株は、臭いを引き起こす糞便および尿内中の化合物の生産を低減することによって、糞便および尿の臭い、および付随してネコ用トイレ内の臭いを低減するために使用されてもよい。臭いを引き起こす化合物の非限定例としては、アンモニア、インドール、フェノール、アミン、分枝鎖脂肪酸、および揮発性硫黄含有化合物が挙げられる。理論に束縛されるものではないが、コンパニオンアニマルの糞便または尿におけるこれらの化合物の量を低減することが、糞便または尿に関連する臭いを低減すると考えられている。さらに、砂箱トイレを使用するコンパニオンアニマルにとっては、砂箱トイレの臭いにおいて付随した減少がある。
【0056】
本発明の乳酸菌の使用方法は、典型的に、動物による経口消費を伴う。経口消費は、通常の食餌摂取の一部として、またはそのサプリメントとして行われてもよい。経口消費は、典型的に、少なくとも月に1回、好ましくは少なくとも週に1回、より好ましくは少なくとも1日に1回行われる。本発明の乳酸菌は、コンパニオンアニマルに治療的に有効な量で与えられて、動物、好ましくはコンパニオンアニマルにおける健康を維持または改善することができる。本明細書で使用する場合、乳酸菌に関する用語「治療的に有効な量」は、処置が必要な宿主動物に所望の効果または利益を提供するのに十分であるが、毒性、刺激、またはアレルギー反応のような悪影響を回避するために十分に少ない、本発明の方式で使用した場合に適当な利益/危険比に相応する量を意味する。具体的な「治療的に有効な量」は、処置されている特定の条件、ユーザーの身体条件、処置期間、併用療法(もしあれば)の性質、使用される具体的な剤形、採用されるキャリア、服用形態の溶解度、および特定の服用レジメンのような因子によって変わるであろう。
【0057】
乳酸菌は、好ましくは1.0E+04〜1.0E+14CFU/日、より好ましくは1.0E+06〜1.0E+12CFU/日の1回量でコンパニオンアニマルに与えられる。好ましくは組成物は、切除および洗浄されたネコ科動物のGI管から単離することによって得られるラクトバシラス属の乳酸菌1.0E+04〜1.0E+12 CFU/gを少なくとも0.001%含有してもよい。乳酸菌は、生存可能な形態で、あるいは死滅細胞、もしくは留出物、単離物または本発明の乳酸菌の発酵産物の他の画分、あるいはこれらのいずれかの組み合わせとして、動物に与えることができる。
【0058】
乳酸菌、あるいはその精製または単離された画分を用いて、動物の健康の維持または改善用組成物を製造することが好ましい。前述のように、組成物は、通常の食餌摂取の一部であってもよく、またはサプリメントであってもよい。組成物が標準的な食事摂取量の一部を構成する場合、組成物は、ビスケットまたはキブルのような乾燥アニマルフード、加工されたグレイン餌、湿潤アニマルフード、ヨーグルト、肉汁、噛み物、トリーツ等の形態であってよい。
【0059】
このような組成物は、さらなる構成成分を含んでもよい。他の構成成分は、本明細書で使用される組成物に包含するのに有益であるが、本発明の目的には任意である。例えば、フード組成物は、栄養的にバランスが取れていることが好ましい。一実施形態では、フード組成物は、乾燥物質基準で、該フード組成物の約20重量%〜約50重量%の粗タンパク質、好ましくは約22重量%〜約40重量%の粗タンパク質を含んでよい。粗タンパク質材料は、少なくとも約15重量%のタンパク質含有量を有するいずれの材料を含んでもよく、その非限定例としては、大豆、綿実、および落花生のような植物性タンパク質、カゼイン、アルブミン、および肉組織のような動物性タンパク質が挙げられる。本明細書で有用な肉組織の非限定例としては、新鮮な肉と、魚粉、家禽粉、肉粉、骨粉等との乾燥または精製粉が挙げられる。他の種類の好適な粗タンパク質源としては、小麦グルテンまたはトウモロコシグルテンと、酵母のような微生物源から抽出されたタンパク質とが挙げられる。
【0060】
さらに、フード組成物は、乾燥物質基準で、該フード組成物の約5重量%〜約35重量%の脂肪、好ましくは約10重量%〜約30重量%の脂肪を含んでもよい。その上さらに、本発明の乳酸菌を含むフード組成物は、食物繊維を合計で約4重量%〜約25重量%含んでもよい。また組成物は、PCT国際公開特許WO99/51108に記載の多重デンプン源も含んでよい。
【0061】
本発明の組成物は、さらに炭水化物供給源を含んでよい。米、トウモロコシ、ミロ、サトウモロコシ、大麦、アルファルファ、小麦等のグレインまたは穀物が、供給源の例である。加えて、組成物は、乾燥乳清および他の酪農副産物のような他の材料を含有していてもよい。
【0062】
また本発明の細菌を含む組成物は、プレバイオティックも含んでもよい。「プレバイオティック」には、コンパニオンアニマルの腸内細菌相によって発酵され、その結果、病原菌を使ってコンパニオンアニマルの胃腸管内で乳酸菌の増殖および発達を促進する物質または化合物が包含される。この発酵の結果は、結腸での脂肪酸、特に短鎖脂肪酸の放出である。これは、結腸においてpH値を低下させる効果を有する。好適なプレバイオティックの非限定例としては、フラクトオリゴ糖として一般に知られているイヌリンおよびその加水分解生成物、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、またはデンプンのオリゴ誘導体のようなオリゴ糖が挙げられる。プレバイオティックは、いかなる好適な形態で提供されてもよい。例えば、プレバイオティックは、繊維を含有する植物材料の形態で提供されてもよい。好適な植物材料としては、アスパラガス、アーティチョーク、玉ねぎ、小麦、またはチコリー、あるいはこれらの植物材料の残渣が挙げられる。あるいは、プレバイオティック繊維は、イヌリン抽出物として提供されてもよく、例えば、チコリーからの抽出物が好適である。好適なイヌリン抽出物は、3300チルルモン(Tirlemont)のオラフティ(Orafti)SA(ベルギー)から、商標名「ラフティライン(Raftiline)」として入手されてもよい。例えば、イヌリンは、約90重量%〜約94重量%のイヌリン、約4重量%までのグルコースおよびフルクトースと、約4重量%〜9重量%のスクロースを含有する微細な白色粉末である、ラフティライン(Raftiline)(g)STの形態とで提供されてもよい。あるいは、繊維は、3300チルルモン(Tirlemont)のオラフティ(Orafti)SA(ベルギー)から、商標名「ラフティルーズ(Raftilose)」として入手されるようなフラクトオリゴ糖の形態であってもよい。例えば、イヌリンは、ラフティルーズ(Raftilose)(g)P95の形態で提供されてもよい。さもなければ、フラクトオリゴ糖は、イヌリンを加水分解することにより、酵素による方法により、または微生物を使用することにより得られてもよい。
【0063】
乾燥コンパニオンアニマルフードの場合、好適なプロセスは、押出調理であるが、ベーキングおよび他の好適なプロセスを使用してもよい。押出調理される場合には、乾燥コンパニオンアニマルフードは、通常、キブルの形態で提供される。プレバイオティックが使用される場合、該プレバイオティックは、加工処理前に乾燥コンパニオンアニマルフードの他の成分と混合されてよい。好適なプロセスは、欧州特許出願第0850569号に記載されている。プロバイオティック微生物が使用される場合、該微生物を乾燥コンパニオンアニマルフード上にコーティングする、または乾燥コンパニオンアニマルフードに詰め込むことが最善である。好適なプロセスは、欧州特許公開第EP0862863号に記載されている。
【0064】
湿潤フードの場合、米国特許第4,781,939号および同第5,132,137号に記載されているプロセスを使用して、擬似肉製品を製造してもよい。また、チャンク型製品を製造する他の手順、例えば、スチームオーブンでの調理を使用してもよい。あるいは、好適な肉材料を乳化させて肉エマルションを製造し、好適なゲル化剤を添加し、該肉エマルションを加熱してから缶または他の容器に詰めることによって、ローフ型の製品を製造してもよい。典型的な湿潤フード組成物は、約5%〜約15%のタンパク質、約1%〜約10%の脂肪、および約1%〜約7%の繊維を含んでもよい。湿潤フード組成物において使用してよい非限定的な成分としては、鶏肉、シチメンチョウ肉、牛肉、白身の魚、鶏肉ブロス、シチメンチョウ肉ブロス、牛肉ブロス、鶏の肝臓、発酵用米、コーングリッツ、魚粉、卵、ビートパルプ、塩化物、亜麻粉、子羊肉、牛肉副産物、鶏肉副産物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
別の実施形態では、ビスケット、噛み物および他のトリーツ等のサプリメント組成物は、乾燥物質基準で、サプリメント組成物の約20重量%〜約60重量%のタンパク質、または約22重量%〜約40重量%のタンパク質を含んでもよい。別の例として、サプリメント組成物は、乾燥物質基準で、該サプリメント組成物の約5重量%〜約35重量%の脂肪、または約10重量%〜約30重量%の脂肪を含んでもよい。ネコ科動物類またはネコ科動物類による使用が意図されたフードおよびサプリメント組成物は、当該技術分野において一般的に知られている。
【0066】
コンパニオンアニマルフードは、長鎖脂肪酸および亜鉛のような他の活性剤を含有してもよい。好適な長鎖脂肪酸としては、α−リノール酸、γ−リノレン酸、リノール酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸が挙げられる。魚油は、好適なエイコサペンタン酸およびドコサヘキサン酸源である。
【0067】
ルリチシャ油、ブラックカレント種子油、およびマツヨイグサ油は、好適なγ−リノレン酸源である。ベニバナ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、および大豆油は、好適なリノール酸源である。また、これらの油を、上で言及したコーティング基材において使用してもよい。亜鉛は、様々な好適な形態で、例えば、硫酸亜鉛または酸化亜鉛として提供されてもよい。さらに、コンパニオンアニマルフードにおいて一般に使用される多くの成分は、脂肪酸源および亜鉛源である。プレバイオティック源としてのチコリーと、大豆油のようなリノール酸の豊富な油とを組み合わせると、相乗効果を示唆する、予期せぬ利益がもたらされることが観察されている。
【0068】
組成物が肉汁の形態の場合、該組成物は、少なくとも10%のブロスまたはストックを含むことが好ましく、その非限定例としては、野菜、ビーフ、チキン、またはハムストックが挙げられる。典型的な肉汁組成物は、約0.5%〜約5%の粗タンパク質、約2%〜約5%の粗脂肪、および約1%〜約5%の繊維を含んでもよい。
【0069】
本明細書にて使用するのに適したサプリメントのさらなる非限定例としては、粉末、油懸濁液、ミルク系懸濁液、チーズ、カカオバター系組成物、および丸薬またはカプセルが挙げられる。組成物が丸薬の形態の場合、丸薬を固体の圧縮形態に維持するために、好適な結合剤が必要である。好適な結合剤の非限定例としては、キサンタンガム、ペクチン、レシチン、アルギネート、および当業者に既知の他のもののような天然ガムが挙げられる。組成物がカプセルの形態の場合、該組成物は、当業者に既知の技術を使用して封入されることが好ましい。好適な封入材料の非限定例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギネート、およびゼラチンが挙げられる。ヨーグルト系組成物は、約1%〜約5%のタンパク質、約10%〜約20%の炭水化物、約1%〜約5%の繊維、約1%〜約5%の脂肪および約50%〜約90%の乳のような液体キャリアを含んでもよい。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、いかなる方法によってもその範囲を制限することを意図しない。
【0071】
実施例1:ネコ科動物のGI管からの乳酸菌の単離
飼い主主導による承認済みの安楽死のために地元の獣医のところにいる健康なネコから、ネコ科動物腸試料を得た。全ての動物が健康で無病であった。各ネコの結腸、中間結腸、盲腸、および回腸を切開して粘膜を露出させた。
【0072】
粘膜組織を攪拌し(1分間ボルテックス処理)、組織を機械的に均質化した後、上清を除去した。上澄みをそれぞれ、マン・ロゴサ・シャープ(de Mann Rogosa Sharpe)(MRS)寒天培地に蒔いた。これらを、アネロカルト・ガスパック・システム(Anerocult Gas Paksystem)を用いて、37℃で48時間嫌気的にインキュベートした。プレートから単離したコロニーをMRS上に再画線し、再び、同じ条件下で嫌気的に増殖させた。単離したコロニーをさらに4回、再画線して、単一の菌株を精製した。コロニーのモルホロジーおよび顕微鏡像を評価した。好適な単離株を、グラム反応およびカタラーゼ活性について試験した。API試験(API 50CHL、ビオメリュー(Bio Merieux))を使用して、グラム陽性・カタラーゼ陰性桿菌の同定を実施した。採集した細胞を0.05Mリン酸緩衝液(pH6.5)およびシステイン−HCl(500mg/L)で2回洗浄した後、音波処理を実施した。遠心分離を行って、細胞破片を除去した。上清をNaF(6mg/mL)およびヨード酢酸Na(10mg/mL)と共に37℃で30分間インキュベートした。室温で10分間にわたって塩酸ヒドロキシルアミン(pH6.5)でインキュベートすることによって、反応を停止させた。HCl(4M)、FeCl.6HO(0.1M HCl中5%(W/V))およびフルクトース−6−ホスフェート(Na塩)を添加した後、発色を観察した。フルクトース−6−ホスフェートからのアセチルリン酸の形成が、そのヒドロキシメートの第二鉄キレートによって形成される赤みを帯びた色によって明示された。
【0073】
実施例2:抗菌活性のためのスクリーニング
単離した乳酸菌株をそれぞれ、MRSブロス中で嫌気的にインキュベートした。各培養液2μLをMRS寒天プレートに滴下して、嫌気的に一晩インキュベートした。サルモネラ・ティフィムリウムおよび腸管病原性大腸菌(ExPEC)を一晩、事前増殖させ、100μLを溶融寒天(1%v/v)へ植菌した。この指標培養液を、植菌したMRSプレートの表面に流し込んだ。一晩インキュベートした後、プロバイオティック・コロニーの周りの抑制域を測定した。全ての実験を、別個の3つの状況にて2通り実施した。さらに、緩衝剤である2%β−グリセロホスフェートを寒天に組み込むことで、インビトロで観察された病原体抑制に対して酸の産生が果たした寄与を評価することができた。
【0074】
表2に示したデータは、切除および洗浄されたネコ科動物のGI管から単離することによって得られる本発明の乳酸菌株が、潜在的なプロバイオティック活性の指標である、インビトロにての顕著な抗菌活性を有することを明確に表している。
【表2】

【0075】
実施例3:生存およびコロニー形成のインビトロ指標
pH耐性
細菌細胞を一晩培養物から収集して、リン酸緩衝液(pH6.5)で2回洗浄し、1M HClでpH2.5に調節したMRS/TPYブロス中に再懸濁した。細胞を37℃で嫌気的にインキュベートし、当業者に既知の平板計数法を使用して0、30、60、120、240、および360分の間隔で細胞の生存を測定した。表3は、このデータを菌株ごとにまとめている。
【表3】

【0076】
胆汁耐性
細菌株を、ブタ胆汁(シグマ(Sigma))を0.5%、1%および5%(w/v)で追加したMRS寒天に画線した。プレートを嫌気性条件下、37℃でインキュベートし、48時間後に増殖を記録した。増殖を、経験をつんだ観察者により、対照プレートと比較し、コロニーの増殖は以下に記載の通りであった:
陰性(0)−増殖せず;
+(1)−かすんだ半透明の増殖(胆汁0%の対照プレートの<33%);
++(2)−対照ほどではないが明確な増殖(>33%であるが<66%);
+++(3)−対照と同等に増殖(>66%)。
【0077】
胆汁酸塩の存在下でのコロニーの増殖を対照と比較し、増殖記述子は0、1、2または3の数値(それぞれ−;+;++,+++)が与えられ、百分率で表されるが、ここで、3は100%を表す。
【0078】
表4は、本発明のビフィドバクテリウムが胆汁酸塩耐性を明確に示し、0.3%のブタ胆汁酸塩に曝露する場合、大抵の場合少なくとも66%のレベルで増殖およびコロニー形成が可能であることを示している。
【表4】

【0079】
さらに、ネコのGI管にコロニー形成する菌株の能力におけるあらゆる違いを評価するために、細菌株を0.5%、1%および2%(W/V)のネコ科動物胆汁を追加したMRS寒天上に画線した。ネコ科動物胆汁は、非終端手順の間、臨床セッティングで内視鏡検査を受けているネコから得られた。プレートを嫌気性条件下、37℃でインキュベートし、48時間後に増殖を記録した。増殖を、経験をつんだ観察者により、対照プレートと比較し、コロニーの増殖は以下に記載の通りであった:
陰性(0)−増殖せず;
+(1)−かすんだ半透明の増殖(胆汁0%の対照プレートの<33%);
++(2)−対照ほどではないが明確な増殖(>33%であるが<66%);
+++(3)−対照と同等に増殖(>66%)。
【0080】
胆汁酸塩の存在下でのコロニーの増殖を対照と比較し、増殖記述子は0、1、2または3の数値(それぞれ−;+;++,+++)が与えられ、百分率で表されるが、3は100%を表す。
【0081】
表5は、本発明のビフィドバクテリウムが、ネコ科動物胆汁酸塩耐性を明確に表し、0.5%のネコ科動物胆汁酸塩に曝露する場合、大抵の場合少なくとも66%のレベルで増殖およびコロニー形成が可能であることを示している。
【表5】

【0082】
腸上皮細胞の付着
ヒトの上皮細胞系HT−29を使用して、選択された菌株の付着特性を評価した。5%COを含有する37℃の加湿雰囲気中、75cm組織培養フラスコで、10%仔ウシ血清(FCS)、ペニシリン/ストレプトマイシン、グルタミン、およびファンギゾンを含有するダルベッコ(Dulbecco)の最小必須培地(DMEM)中で上皮細胞を単層としてルーチン的に培養した。実験目的のため、上皮細胞を、6ウェル培養プレート(ザルスタット(Sarstedt))中にウェル当たり細胞5×10個/mL(総体積3mL)の濃度で播種した。7日間インキュベートした後、分化させるために、上皮の単層を、10%FCSを含有する抗生物質フリーの培地で洗浄した。抗生物質フリーのDMEMに加えた細胞懸濁液または抗生物質フリーのDMEM中の細胞懸濁液を各ウェルに加え、細胞を37℃で90分間インキュベートした。インキュベート後、単層をPBSで3回洗浄した。上皮細胞を脱イオンHOに溶解させ、当業者に既知の平板計数法を使用して付着細菌数を数えた。付着を、最初に平板培養した細菌数の百分率として表した。ラクトバシラスAHF122Aは、付着量39.5%を有し、一方ラクトバシラスAHF223Cは、付着量13.9%を有した。ラクトバシラスAHF5119は、付着量36.7%を有した。
【0083】
実施例4:16s−23s遺伝子間ポリヌクレオチドの配列決定
ネコ科動物ビフィドバクテリウム分離株を、ストック管内で遠心分離し、得られたペレットを、100μLの抽出溶液、および25μLの組織調製溶液(シグマ(Sigma)、XNAT2キット)内に溶解し、室温で10分間インキュベートした。次に試料を95℃で5分間インキュベートし、次に100μLの中和溶液(XNAT2キット)を添加した。次に、ナノドロップ分光分析装置を使用してゲノムDNA溶液を定量し、4℃で保存した。
【0084】
遺伝子間スペーサー(IGS)プライマー、IGS L:5’−GCTGGATCACCTCCTTTC−3’およびIGS R:5’−CTGGTGCCAAGGCATCCA−3’ブリッジディ(Bridgidi)ら、2000、System Appl.Microbiol、23、391−399(2000))を使用してPCRを行なった。サイクル条件は、94℃で3分(1サイクル)、94℃で30秒、53℃で30秒、72℃で30秒(28サイクル)であった。PCR反応は、4μL(50ng)のDNA、PCRミックス(XNAT2キット)、0.4μM IGS LおよびRプライマー(MWG 生物工学(Biotech)、ドイツ)を含有した。PCR反応は、エッペンドルフ熱サイクラー(Eppendorf thermocycler)にて行われた。PCR産物(10μL)を、TAE中2%アガロースEtBr染色ゲル上で分子量マーカー(100bpラダー(Ladder)、ロシュ(Roche))と並べて分析して、IGSプロファイルを決定した。
【0085】
ビフィドバクテリウムのPCR製品(単一バンド)を、プロメガ・ウィザード(Promega Wizard)PCR精製キットを使用して、精製した。
【0086】
遺伝子間スペーサー領域のために、精製されたPCR製品をプライマー配列(上記)を使用して、配列した。ヌクレオチド相同性により、菌株の同一性を決定するために、配列データを、NCBIヌクレオチドデータベースに対して探索した。
【0087】
配列決定後、4つの寄託株について得られた配列を、他の寄託細菌16s−23s配列との相同性について、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で入手可能なオンライン配列データベース「BLAST」と比較した。AHF122Aに最も近い照合は、相同性スコア94%を有する菌株ラクトバシラス・サリバリウス亜種サリシニウス(AB102859)であった。AHF223Cに最も近い照合は、相同性スコア93%を有するラクトバシラス・アニマリス菌株LA51(AY526615)であった。AHF5316に最も近い照合は、相同性スコア98%を有するラクトバシラス・ロイテリDSM20016(AF080100)であった。
【0088】
実施例5:組成物の例
例1〜4は、本発明のプロバイオティックであるラクトバシラスを含む乾燥したキブル組成物の例である。
【表6】

【0089】
例5〜7は、本発明のプロバイオティックであるラクトバシラスを含む湿潤コンパニオンアニマルフード組成物の例である。
【表7】

【0090】
例8〜10は、本発明のプロバイオティックラクトバシラスを含むヨーグルトサプリメント組成物の例である。
【表8】

【0091】
「発明を実施するための最良の形態」において引用される全ての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈すべきではない。
【0092】
本発明の特定の実施形態を説明および記述してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の様々な変更および修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更および修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティック活性を有する切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することにより得られる、ラクトバシラス属の乳酸菌株。
【請求項2】
コンパニオンアニマルの胃腸管で生存してコロニーを形成する能力を有する、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
0.5%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下において培養される場合、少なくとも33%増殖する、請求項2に記載の菌株。
【請求項4】
pH2.5において1時間後に生存能力を維持できる、請求項2に記載の菌株。
【請求項5】
前記菌株が、ラクトバシラス・サリバリウス、ラクトバシラス・アニマリス、ラクトバシラス・ロイテリ、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・ジョンソニー、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・ブルガリウス、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・セロビオサス、ラクトバシラス・クルバタス、ラクトバシラス・デルブルキ、ラクトバシラス・ファーメンタム、ラクトバシラス・へルベティカス、ラクトバシラス・ラクティス、ラクトバシラス・プランタラムおよびこれらの混合物からなる群から選択される種である、請求項1に記載の菌株。
【請求項6】
前記乳酸菌株が、配列番号1と94%を超える相同性を有するか、配列番号2と93%を超える相同性を有するか、または配列番号3と98%を超える相同性を有する16s−23sスペーサー領域DNA配列を有する、請求項1に記載の菌株。
【請求項7】
前記乳酸菌株が、配列番号1、配列番号2または配列番号3から選択される16s−23sスペーサー領域DNA配列を有する、請求項6に記載の菌株。
【請求項8】
前記菌株が、ラクトバシラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシニウスNCIMB41287(AHF122A)、ラクトバシラス・アニマリスNCIMB41288(AHF223C)、ラクトバシラス・ロイテリNCIMB41289(AHF5119)、これらの突然変異体およびこれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項9】
前記突然変異体が、自然突然変異体、遺伝子組換え突然変異体または誘発突然変異体である、請求項8に記載の菌株。
【請求項10】
前記コンパニオンアニマルがネコである、請求項2に記載の菌株。
【請求項11】
コンパニオンアニマルの健康を維持または改善する方法であって、切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することにより得られるラクトバシラス属の乳酸菌を経口投与することを含む、方法。
【請求項12】
前記菌株が、コンパニオンアニマルの胃腸管で生存してコロニーを形成する能力により選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記菌株が、0.5%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下において培養される場合、少なくとも33%増殖する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記菌株が、pH2.5において1時間後に生存能力を維持できる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記菌株が、ラクトバシラス・サリバリウス、ラクトバシラス・アニマリス、ラクトバシラス・ロイテリ、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・ジョンソニー、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・ブルガリウス、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・セロビオサス、ラクトバシラス・クルバタス、ラクトバシラス・デルブルキ、ラクトバシラス・ファーメンタム、ラクトバシラス・へルベティカス、ラクトバシラス・ラクティス、ラクトバシラス・プランタラムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記乳酸菌株が、配列番号1と94%を超える相同性を有するか、配列番号2と93%を超える相同性を有するか、または配列番号3と98%を超える相同性を有する16s−23sスペーサー領域DNA配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記乳酸菌株が、配列番号1、配列番号2または配列番号3から選択される16s−23sスペーサー領域DNA配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記菌株が、ラクトバシラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシニウスNCIMB41287(AHF122A)、ラクトバシラス・アニマリスNCIMB41288(AHF223C)、ラクトバシラス・ロイテリNCIMB41289(AHF5119)、これらの突然変異体およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記突然変異体が、自然突然変異体、遺伝子組換え突然変異体または誘発突然変異体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
コンパニオンアニマルの免疫系を調整または改善するための、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
コンパニオンアニマルにおける自己免疫疾患を治療または予防するための、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コンパニオンアニマルにおける炎症を治療または予防するための、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
コンパニオンアニマルの皮膚および/または毛皮系の健康を維持または改善するための、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
コンパニオンアニマルの皮膚のアトピー性疾患を治療または予防するための、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
コンパニオンアニマルにおける老化の影響を改善または低減するための、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
コンパニオンアニマルにおける感染中及び感染後の体重減少を予防するための、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
コンパニオンアニマルにおける胃腸感染症を治療または予防するための、請求項11に記載の方法。
【請求項28】
コンパニオンアニマルの微生物生態系を改善するための、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
コンパニオンアニマルの糞便中の病原菌の量を低減することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記病原菌が、クロストリジウム、エシェリキア、サルモネラおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
コンパニオンアニマルにおける尿路疾患を治療または予防するための、請求項11に記載の方法。
【請求項32】
前記尿路疾患が尿路感染症を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記尿路疾患が尿路結石を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記プロバイオティックであるラクトバシラスが、インビトロにてシュウ酸の分解を増加する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
コンパニオンアニマルにおける繊維消化を増加するための、請求項11に記載の方法。
【請求項36】
コンパニオンアニマルにおけるストレスレベルを低減するための、請求項11に記載の方法。
【請求項37】
前記ストレスレベルが、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、コルチゾール、C反応性タンパク質およびこれらの混合物からなる群から選択されるストレスホルモンの量を決定することにより測定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記菌が、1.0E+04〜1.0E+12CFU/動物/日の量で、動物に供給される、請求項11に記載の方法。
【請求項39】
コンパニオンアニマルの健康の維持または改善用組成物の製造のための、請求項11に記載の方法。
【請求項40】
コンパニオンアニマルがネコである、請求項11に記載の方法。
【請求項41】
プロバイオティック活性を有する切除及び洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することにより得られるラクトバシラス種の乳酸菌株と、担体とを含む、組成物。
【請求項42】
前記菌株が、コンパニオンアニマルの胃腸管で生存してコロニーを形成する能力により選択されるものである、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記菌株が、0.5%のネコ科動物胆汁酸塩の存在下において培養される場合、少なくとも33%増殖する、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
pH2.5において1時間後に生育能力を維持できる、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記菌株が、ラクトバシラス・サリバリウス、ラクトバシラス・アニマリス、ラクトバシラス・ロイテリ、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・ジョンソニー、ラクトバシラス・ブレビス、ラクトバシラス・ブルガリウス、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・セロビオサス、ラクトバシラス・クルバタス、ラクトバシラス・デルブルキ、ラクトバシラス・ファーメンタム、ラクトバシラス・ヘルベティカス、ラクトバシラス・ラクティス、ラクトバシラス・プランタラムおよびこれらの混合物からなる群から選択される種である、請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
前記乳酸菌株が、配列番号1と94%を超える相同性を有するか、配列番号2と93%を超える相同性を有するか、または配列番号3と98%を超える相同性を有する16s−23sスペーサー領域DNA配列を有するものである、請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
前記乳酸菌株が、配列番号1、配列番号2または配列番号3から選択される16s−23sスペーサー領域DNA配列を有するものである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記菌株が、ラクトバシラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシニウスNCIMB41287(AHF122A)、ラクトバシラス・アニマリスNCIMB41288(AHF223C)、ラクトバシラス・ロイテリNCIMB41289(AHF5119)、これらの突然変異体およびこれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記突然変異体が、自然突然変異体、遺伝子組換え突然変異体または誘発突然変異体である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記コンパニオンアニマルがネコである、請求項42に記載の組成物。
【請求項51】
前記組成物がコンパニオンアニマルフードである、請求項41に記載の組成物。
【請求項52】
前記組成物がキャットフードである、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が湿潤アニマルフードまたは乾燥アニマルフードである、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物が、キブル、噛み物およびビスケットからなる群から選択される形態である、請求項51に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物がコンパニオンアニマルフードサプリメントである、請求項51に記載の組成物。
【請求項56】
前記組成物がグレービーの形態である、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記組成物が、ヨーグルト、チーズまたは他の酪農製品の形態である、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記組成物が、カプセル、錠剤および丸薬からなる群から選択される形態である、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
約1.0E+04CFU/g〜約1.0E+12CFU/gの乳酸菌を少なくとも0.001%含んでなる、請求項41に記載の組成物。
【請求項60】
前記乳酸菌が生存細胞の形態である、請求項41に記載の組成物。
【請求項61】
前記乳酸菌が、非生存細胞またはその構成要素の活性画分の形態である、請求項41に記載の組成物。
【請求項62】
コンパニオンアニマルの糞便または尿に関連する臭いを低減する方法であって、切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することにより得られるラクトバシラス種の乳酸菌を経口投与することを含んでなる、方法。
【請求項63】
コンパニオンアニマル用トイレに関連する臭いを低減する方法であって、切除および洗浄されたネコ科動物の胃腸管から単離することにより得られるラクトバシラス種の乳酸菌を経口投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2008−545428(P2008−545428A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514622(P2008−514622)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/004001
【国際公開番号】WO2006/130187
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(595056859)ザ・アイムス・カンパニー (52)
【氏名又は名称原語表記】The Iams Company
【出願人】(506128020)アリメンタリー、ヘルス、リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】ALIMENTARY HEALTH LTD
【Fターム(参考)】