説明

ネスティング装置および板材加工設備

【課題】 後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減が抑えられるネスティング装置を提供する。
【解決手段】 素材板材Wから部品板材mを切り取る板材加工機2、およびその後工程となる曲げ,溶接等の複数種類の後工程装置3を備えた板材加工設備3に適用される。ネスティングオーダ生成手段14およびネスティング手段6aを備える。ネスティングオーダ生成手段14は、負荷量の相対的に少ない後工程を多く含む板材部品を優先的に抽出して設定部品数量のネスティングオーダNOを生成する。ネスティング手段6aは、端材Sを優先的に使用するネスティングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、素材板材から部品板材を切り取る加工を行う板材加工機、およびこの板材加工機で切り取られた部品板材に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置を備えた板材加工設備において、前記板材加工機で行う切り取り加工のネスティングを行うプル型のネスティング装置および板材加工設備に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機やパンチプレス等の板材加工機により、素材板材から複数の部品板材を切り抜く加工を行う場合がある。このような加工を行う制御プログラムを作成するに際し、素材板材に対する各部品板材の配置を定める処理であるネスティングが行われる。このネスティングは、複数の部品板材の生産単位となるネスティングオーダ毎に行われる。
従来、このネスティングオーダを作成するにつき、何を、いつまでに加工しなければならないかを優先してネスティングオーダを作成し、切り抜き加工を実施していた。また、歩留りをできるだけ上げるために、できるだけ板材部品をまことめてネスティングを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−289010号公報
【特許文献2】特開2007−52622号公報
【特許文献3】特開2002−116811号公報
【特許文献4】特開2002−108431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切り抜き加工が行われた部品板材は、ボール盤によるドリル加工や、曲げ加工機による曲げ加工、溶接等の後工程が行われる。部品板材によって、どのような後工程が行われるかは、種々異なる。
しかし、上記のように従来は、単に、何を、いつまでに加工しなければならないかを優先してネスティングオーダを作成しており、後工程を考慮していない。そのため、一部の後工程装置の負荷が大きくなって、一部の後工程の処理待ち状態となる仕掛かり品の部品板材が増え、また他の後工程に空きが発生することがある。
【0005】
例えば図8(A)に示すように、切り抜き加工の後工程として、ボール盤加工、曲げ加工、溶接がある板材加工設備において、同図(C)のように、板材部品P1〜P11を同じ素材板材にまとめてネスティングすることが多い。その場合に、同図(B)のように、例えば曲げ加工に負荷が極度に偏る場合がある。この場合、ボール盤加工が済んで曲げ加工待ちとなる仕掛かり品となる板材部品が増える。また、ボール盤が空き状態になることがある。
このような負荷の偏りのため、切り抜き加工を行う板材加工機や各種の後工程装置を含む板材加工設備の全体の稼働効率が悪くなり、設備全体として加工に要する時間が長くなるという課題がある。
【0006】
上記従来の計画どおりの生産を行うシステムは、プッシュ型の生産システムと呼ばれ、これに対して、後加工で必要となったときに、前工程の生産を行うプル型が生産システムがある。プル型が生産システムによると、各工程の平準化が容易である。
しかし、板金加工等の板材加工では、ネスティングの必要があり、無駄に廃棄される端材をできるだけ少なくする歩留り上の要求がある。また、種々の切り抜き形状や、切り抜き後に施される後工程が種々異なる様々な板材部品が存在する。これらのため、板材加工では、プル型が生産システムの採用は不適切として検討されていなかった。
【0007】
この発明の目的は、後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減が抑えられるネスティング装置を提供することである。
この発明の他の目的は、上記仕掛かり品の低減と負荷平準化がより効果的に行えるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減が抑えられ、また端材の保管,供給が効率良く行える板材加工設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明を、実施形態に対応する図1と共に説明する。このネスティング装置(20)は、素材板材(W)から部品板材(m)を切り取る加工を行う板材加工機(2)、およびこの板材加工機(2)で切り取られた部品板材(m)に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置(3(3A ,3B ,3C …))を備えた板材加工設備(1)に適用される。このネスティング装置(20)は、この板材加工設備(1)における前記板材加工機で順次実行させる、部品板材(m)の生産単位となるネスティングオーダ(NO)を生成するネスティングオーダ生成手段(14)、およびこのネスティングオーダ生成手段(14)で生成されたネスティングオーダ(NO)毎にネスティングを行うネスティング手段(6a)を備える。
このネスティング装置(20)は、上記ネスティングオーダ生成手段(14)およびネスティング手段(6a)の他に、前記板材加工設備(1)で加工する予定の各部品板材(m)について、種類および数量、並びに各種類の部品板材(m)についての形状およびこの部品板材(m)に施す各後工程の種類を含むデータである部品図形データ(D)を記憶した加工予定部品板材登録手段(15)と、前記各後工程装置(3)毎に、加工待ち状態にある全数の部品板材(m)の加工に要する時間で示される負荷量を把握する後工程毎・負荷把握手段(19)と、前記ネスティング手段(6a)によるネスティングで素材板材(W)の一部に板材部品(m)が配置されて残り部分に他の板材部品(m)の配置が可能な端材(S)のデータを記憶する端材登録手段(29)とを備える。
前記ネスティングオーダ生成手段(14)は、前記加工予定部品板材登録手段(15)に前記部品図形データ(D)が記憶された板材部品(m)の中から、前記後工程毎・負荷把握手段(19)で把握された負荷量の相対的に少ない工程を多く含む板材部品(m)を優先的に抽出して設定部品数量のネスティングオーダ(NO)を生成するものとする。
前記ネスティング手段(6a)は、ネスティングオーダ(NO)中の板材部品(m)のネスティングが可能な端材(S)が前記端材登録手段(29)に記憶された端材(S)の中にあるか否かを判断し、ある場合はその端材(S)に板材部品(m)をネスティングし、残りの板材部品(m)を素材板材(W)に対してネスティングするものとする。
【0009】
この構成のネスティング装置(20)によると、ネスティングオーダ生成手段(14)は、後工程毎・負荷把握手段(19)で把握された各後工程の負荷量から、各板材部品(m)に施される後工程の情報をもとに、負荷量の相対的に少ない工程を多く含む板材部品(m)を優先的に抽出してネスティングオーダ(NO)を生成する。そのため、後工程の負荷が平準化されて、仕掛かり品が低減する。上記のように負荷量に応じてネスティングすることにより、ネスティングオーダ(NO)中のネスティングする板材部品(m)の枚数が少なくなり、歩留りに影響する。しかし、ネスティング手段(6a)は、端材(S)を優先的にネスティングで使用するため、歩留りへの影響が回避される。これにより、従来、板金加工等の板材加工で要求されている、相反する要求である、リードタイムの短縮と歩留りの向上を共に実現することができる。
なお、上記の「板材部品(m)を優先的に抽出して」とは、優先条件に該当する板材部品(m)があれば、その該当する板材部品(m)を抽出し、該当する板材部品(m)がなければ、他の板材部品(m)を抽出することを言う。
【0010】
なお、前記後工程毎・負荷把握手段(19)は、この手段(19)が各後工程装置(3)毎の負荷量を計算するものであっても、また、このネスティング装置(20)に対する外部から各後工程装置(3)毎の負荷量の情報が与えられるものであっても良い。後工程毎・負荷把握手段(19)が、負荷量を計算するものとする場合、ネスティング装置(20)は、例えば次の構成とされる。
【0011】
すなわち、この発明のネスティング装置(20)において、前記部品図形データ(D)に含まれた後工程を示すデータを読み取って後工程の種類、およびその後工程における単位加工の数量を判別する工程データ判別手段(11)と、前記各後工程装置(3)における単位加工に要する時間を記憶した単位加工時間記憶手段(12)と、前記工程データ判別手段(11)で判別した各部品板材(m)の後工程の種類および後工程の単位加工の数量から、前記単位加工時間記憶手段(12)の記憶データを用いて、各部品板材(m)の後工程に要する加工時間を見積もる部品毎工程時間見積もり手段(13)と、前記各後工程装置(3)について、加工待ち状態にある部品板材(m)の種類,数量を含む後工程状況を監視する工程毎・加工状況監視手段(9)とを設ける。
前記後工程毎・負荷把握手段(19)は、前記部品毎工程時間見積もり手段(13)で得られる後工程に要する加工時間と、前記工程毎・加工状況監視手段(9)の監視結果である後工程状況から、前記負荷量である各後工程の加工待ち待ち時間を計算するものとする。前記ネスティングオーダ生成手段(14)は、前記加工待ち待ち時間を計算される各後工程の加工待ち時間である負荷量が均等化されるように、前記ネスティングオーダ(NO)の生成を行うものとする。
【0012】
この構成の場合、後工程毎・負荷把握手段(19)は、工程毎・加工状況監視手段(9)の監視結果である後工程状況から得られる現在の負荷量と、部品毎工程時間見積もり手段(13)で得られる、これからネスティングする板材部品(m)で生じる負荷量との和を計算する。ネスティングオーダ生成手段(14)は、上記のように計算される現在の負荷量とこれからのネスティングして生産する負荷量との和が、各後工程が均等化されるようにネスティングオーダ(NO)を生成する。そのため、負荷の均等化がより適切に行える。この負荷量を均等化するネスティングオーダ(NO)の生成では、例えば、負荷量が突出した後工程を含む板材部品(m)については、ネスティングを行わないようにし、残りの各後工程の負荷量が略等しくなるようにネスティングオーダ(NO)を生成するものとしても良い。
また、ネスティングする板材部品(m)で生じる負荷量の計算については、工程データ判別手段(11)により、部品図形データ(D)に含まれた後工程を示すデータ(H,LB)を読み取って後工程の種類、およびその後工程における単位加工の数量を判別する。部品毎工程時間見積もり手段(13)は、前記工程データ判別手段(11)で判別した各部品板材(m)の後工程の種類および後工程の単位加工の数量から、前記単位加工時間記憶手段(12)の記憶データを用いて、各部品板材(m)の後工程に要する加工時間の和を算出する。このように、部品図形データ(D)に含まれた後工程を示すシンボル等のデータ(H,LB)を読み取って後工程の種類およびその後工程における単位加工の数量を認識するため、板材部品(m)毎の加工時間を容易に見積もることができる。
なお、前記後工程毎・負荷把握手段(19)は、現在の負荷量の計算を行うにつき、前記部品毎工程時間見積もり手段(13)を用いて、工程データ判別手段(11)で判別した各後工程待ちの板材部品(m)の部品図形データ(D)から現在の負荷量の計算を行う機能を備えるものとしても良い。この現在の負荷量の計算は、先にネスティングを行って既に切り取り加工され後工程待ちとなっている板材部品(m)をネスティングしたときに計算したデータを用いることで容易に行える。
【0013】
この発明の板材加工設備(1)は、素材板材(W)から部品板材(m)を切り取る加工を行う板材加工機(2)、およびこの板材加工機(2)で切り取られた部品板材(m)に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置と、前記板材加工機(2)の加工プログラム(5)を生成する自動プログラミング装置(6)とを備えた板材加工設備(1)であって、前記自動プログラミング装置(6)に、この発明の上記いずれかの構成のネスティング装置(20)を設けたものである。
また、前記板材加工機(2)に隣接して、素材板材(W)の一部に板材部品(m)が切り取られて再度素材として加工に用いる端材(S)を保管可能で、かつ保管する端材(S)を板材加工機(2)に対して出し入れする端材出し入れ機構(32)を有する端材ストッカ(30)を設ける。前記ネスティング装置(20)において、前記端材登録手段(29)に登録される端材(S)は、前記端材ストッカ(30)に保管される端材(S)とする。
【0014】
この構成の板材加工設備(1)によると、この発明のネスティング装置(20)の採用により、後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減が抑えられる。また、板材加工機(2)に隣接して、端材(S)を保管可能で、かつ板材加工機(2)に対して出し入れする端材出し入れ機構(32)を有する端材ストッカ(30)を設けため、端材(S)を効率良く加工に使用することができる。従来は、再利用可能な端材(S)は、単に保管棚等に保管し、使用する場合に人手で板材加工機に搬入するなど、その使用に手間がかかっていたが、上記の端材出し入れ機構(32)を有する端材ストッカ(30)を板材加工機(2)に隣接して設置することで、端材(S)を使用した加工が効率良く行える。このように、端材(S)を効率良く使用する端材ストッカ(30)を設けた上で、前記ネスティング装置(20)は、前記端材登録手段(29)に登録される端材(S)を、前記端材ストッカ(30)に保管される端材(S)としたため、端材(S)の優先利用による加工効率の低下を回避しながら、各工程の負荷平準化に伴う歩留りの低減を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のネスティング装置は、素材板材から部品板材を切り取る加工を行う板材加工機、およびこの板材加工機で切り取られた部品板材に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置を備えた板材加工設備において、前記板材加工機で順次実行させる、部品板材の生産単位となるネスティングオーダを生成するネスティングオーダ生成手段、およびこのネスティングオーダ生成手段で生成されたネスティングオーダ毎にネスティングを行うネスティング手段を備えたネスティング装置であって、前記板材加工設備で加工する予定の各部品板材について、種類および数量、並びに各種類の部品板材についての形状およびこの部品板材に施す各後工程の種類を含むデータである部品図形データを記憶した加工予定部品板材登録手段と、前記各後工程装置毎に、加工待ち状態にある全数の部品板材の加工に要する時間で示される負荷量を把握する後工程毎・負荷把握手段と、前記ネスティング手段によるネスティングで素材板材の一部に板材部品が配置されて残り部分に他の板材部品の配置が可能な端材のデータを記憶する端材登録手段とを設け、前記ネスティングオーダ生成手段は、前記加工予定部品板材登録手段に前記部品図形データが記憶された板材部品の中から、前記後工程毎・負荷把握手段で把握された負荷量の相対的に少ない後工程を多く含む板材部品を優先体に抽出して設定部品数量のネスティングオーダを生成するものとし、前記ネスティング手段は、ネスティングオーダ中の板材部品のネスティングが可能な端材が前記端材登録手段に記憶された端材の中にあるか否かを判断し、ある場合はその端材に板材部品をネスティングし、残りの板材部品を素材板材に対してネスティングするものとしたため、後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減を抑えることができる。
【0016】
前記部品図形データに含まれた後工程を示すデータを読み取って後工程の種類、およびその後工程における単位加工の数量を判別する工程データ判別手段と、前記各後工程装置における単位加工に要する時間を記憶した単位加工時間記憶手段と、前記工程データ判別手段で判別した各部品板材の後工程の種類および後工程の単位加工の数量から、前記単位加工時間記憶手段の記憶データを用いて、各部品板材の後工程に要する加工時間を見積もる部品毎工程時間見積もり手段と、前記各後工程装置について、加工待ち状態にある部品板材の種類,数量を含む後工程状況を監視する工程毎・加工状況監視手段を設け、後工程毎・負荷把握手段は、前記部品毎工程時間見積もり手段で得られる後工程に要する加工時間と、前記工程毎・加工状況監視手段の監視結果である後工程状況から、前記負荷量である各後工程の加工待ち待ち時間を計算するものとし、前記ネスティングオーダ生成手段は、前記各後工程の加工待ち時間である負荷量が均等化されるように、前記ネスティングオーダの生成を行うものとした場合は、上記仕掛かり品の低減と負荷平準化がより効果的に行える。
【0017】
この発明の板材加工設備は、素材板材から部品板材を切り取る加工を行う板材加工機、およびこの板材加工機で切り取られた部品板材に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置と、前記板材加工機の加工プログラムを生成する自動プログラミング装置とを備えた板材加工設備であって、前記板材加工機に隣接して、素材板材の一部に板材部品が切り取られて再度素材として加工に用いる端材を保管可能で、かつ保管する端材を板材加工機に対して出し入れする端材出し入れ機構を有する端材ストッカを設け、前記自動プログラミング装置に、この発明の上記いずれかの構成のネスティング装置を設け、このネスティング装置において、前記端材登録手段に登録される端材は、前記端材ストッカに保管される端材としたため、後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減が抑えられ、また端材の保管,供給を効率良く行うことかできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態に係るネスティング装置を含む板材加工設備の概念構成を示すブロック図である。
【図2】その加工時間見積もりの概念の説明図である。
【図3】ネスティングオーダに分ける処理の説明図である。
【図4】ネスティングの説明図である。
【図5】後工程の負荷量の均等化、およびその均等化を行った場合のネスティング例の説明図である。
【図6】端材へのネスティング例の説明図である。
【図7】板材加工設備における板材加工機と板材ストッカとの例の斜視図である。
【図8】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を、図1ないし図7と共に説明する。まず、対象となる板材加工設備につき説明する。この板材加工設備1は、素材板材Wから部品板材mを切り取る加工を行う第1の板材加工機2、およびこの板材加工機2で切り取られた部品板材mに後工程の加工を施す複数種類の後工程装置3(3A 〜3C )と、上記板材加工機2から各後工程装置3(3A 〜3C )へ部品板材mを搬送する搬送装置(図示せず)を備える。板材加工機2には、その側方に隣接して端材ストッカ30が設けられている。
【0020】
板材加工機2は、レーザ加工機またはタレット式のパンチプレス等からなる。板材加工機2は、部品板材mの外周を切り取る加工の他に、部品板材mの内部に穴加工等の加工を施す機能を備える。
板材加工機2は、コンピュータ式の数値制御装置やプログラマブルコントローラ等で構成される制御装置4を備えていて、この制御装置4に実行させる加工プログラム5が、自動プログラミング装置6で生成される。この自動プログラミング装置6に、ネスティング装置20が設けられる。なお、図面では、ネスティング装置20の構成要素のうち、ネスティング手段6aの他は、自動プログラミング装置6の外部に図示している。
【0021】
端材ストッカ30は、板材加工機2により素材板材Wの一部に板材部品mが切り取られた残り部分となる端材のうち、再度素材として加工に用いる端材Sを保管する装置である。端材ストッカ30は、図7に一例を示すように、端材Sを保管する複数の個別棚31aを有する保管棚31と、この保管棚31と板材加工機1のテーブル1a上の間で端材Sを出し入れする端材出し入れ機構32とを有する。図示の例では、保管棚31は、各段の個別棚31aが板材加工機1のテーブル1aの上面と同一高さとなるように昇降可能とされ、端材出し入れ機構32は、板材加工機1のテーブル1aの高さ位置で、その位置にある個別棚31aに対して端材Sを出し入れするものとされる。端材出し入れ機構32は、端材Sの側縁を把持するグリッパ(図示せず)を有し、グリッパの進退によって上記出し入れを行う。端材出し入れ機構32は、より具体的には、板材加工機1の素材板材Wを把持して移動させる板材送り機構1bとの間で端材Sを掴み換えて受け渡すものとされている。
【0022】
図1において、後工程装置3(3A 〜3C )は、例えば、ボール盤、曲げ加工機、溶接装置等である。ボール盤では、ドリル、タップ、リーマ、皿もみ、等の加工が行われる。曲げ加工機は、部品板材mの一部または全体を折り曲げる装置である。溶接装置は、連続溶接、タップ溶接、点溶接等の溶接を行う装置である。これらの各後工程装置3は、それぞれ数値制御装置やプログラマブルコントローラ等からなる制御装置(図示せず)を備えている。
【0023】
自動プログラミング装置6は、ネスティングオーダ記憶手段8に記憶されているネスティングオーダNO毎に、ネスティング手段6aでネスティングを行い、そのネスティング結果から、実行NCデータ化手段6bによって、制御装置4により実行可能な形式の加工プログラム5を作成する。ネスティングは、例えば図4のように、素材板材Wの図形GWに対して部品板材mの図形Gmを配置する処理のことである。
【0024】
このようにネスティングオーダNO順に生成される加工プログラム5が、工程管理装置7により、板材加工機2の制御装置4に送られ、順次実行される。これにより、素材板材Wから部品板材mを切り取る加工が板材加工機2により行われる。板材加工機2で切り取られた各部品板材mは、その部品板材mの必要な後工程の種類に応じて、搬送装置(図示せず)により対応する後工程装置3(3A 〜3C )へ送られる。後工程装置3(3A 〜3C )は、送られてきた各部品板材mに順次加工を行う。
【0025】
工程管理装置7は、上記加工プログラム5の制御装置4への転送の他に、板材加工機2で加工された部品板材mを、上記搬送装置(図示せず)により各後工程装置3(3A 〜3C )へ送る制御を行う。工程管理装置7は、次の工程毎・加工状況監視手段9を有している。
【0026】
工程毎・加工状況監視手段9は、各後工程装置3(3A 〜3C )について、加工待ち状態にある部品板材mの種類,数量、および現在加工している部品板材mの加工の進捗状況を含む後工程状況を監視する手段である。工程毎・加工状況監視手段9は、この他に、板材加工機2の加工の進捗状況を監視する機能を備える。
【0027】
つぎに、ネスティング装置20につき説明する。加工予定部品板材登録手段15は、板材加工設備1で加工する予定の各部品板材mについての部品板材データD、およびその部品板材m毎の数量を記憶した手段である。部品板材データDについては後述する。
【0028】
ネスティングオーダ生成手段14は、加工予定部品板材登録手段15で記憶された加工予定の部品板材mを、例えば図3のように、各生産順位のネスティングオーダNOに分ける手段である。ネスティングオーダ生成手段14は、最初の1回分のネスティングオーダNOのみに生成し、残りについては、何らかかのネスティングオーダ生成の指示が与えられたときに行うようにしても良い。このネスティングオーダ生成手段14で、適切なネスティングオーダNOに分けるための手段として、次の板材加工時間見積り手段10および工程毎・負荷把握手段19が設けられる。
【0029】
板材加工時間見積り手段10は、工程データ判別手段11と、単位加工時間記憶手段12と、部品毎工程時間見積もり手段13とを備える。
【0030】
工程データ判別手段11は、部品図形データDに含まれた後工程を示すデータを読み取って後工程の種類、およびその後工程における単位加工の数量を判別する手段である。工程データ判別手段11は、さらに、前記部品図形データDにおける板材加工機2で行う加工の数量を認識する機能を有するものとしても良い。
部品図形データDは、部品板材mの形状を示す図形Gmのデータであって、いわゆるCAD(コンピュータ支援設計)データであり、図形Gmを構成する各線分のデータと、属性データ等で構成される。部品図形データDには、板材加工機2で加工する部品板材mの外形線Lや、部品内部の穴加工等の内部加工部Iの線の他に、各後工程で加工するデータを含むものとされる。後工程で加工するデータとしては、例えば、ドリル,タップ,リーマ,皿もみ等の加工の種類と位置を示す各種のシンボルマークHや、曲げ加工を行う曲げ線,溶接を行う溶接ラインの線状マークLB等がある。シンボルマークHや線状マークLB等が、どの種類の後工程を示すかは、シンボルマークの形状、線の色、線種、レイヤ等で区別可能とされていても良い。
工程データ判別手段11は、部品図形データDに含まれるシンボルマークHの個数からそのシンボルマークHで示される後工程の回数である数量を判別し、また線状マークLBの本数や長さを認識する。
工程データ判別手段11よって認識する板材加工機2で行う加工の数量は、部品板材mの外形線の長さである。内部加工部Iを含む場合は、その内部加工部Iとなる穴の個数や、内部加工部Iの長さについても、加工数量として認識する。
【0031】
単位加工時間記憶手段12は、各後工程装置3(3A 〜3C )における単位加工に要する時間、および板材加工機2の単位加工に要する時間を記憶した手段である。単位加工時間は、1回の加工に要する時間、または単位長さの加工に要する時間とされる。単位長さは任意に設定すれば良い。
例えば、ボール盤からなる後工程装置3A において、ドリル,タップ,リーマ,皿もみ等の各加工が行われるとすると、ドリル加工等の各加工につき、1回の加工に要する時間が単位加工時間として記憶される。曲げ加工では、1回の曲げに要する時間が単位加工時間とされる。溶接の場合は、溶接線の単位長さの作業に要する時間が単位加工時間とされる。
単位加工時間記憶手段12には、同じ後工程装置3での複数回の加工につき、各回の加工の間に待ち時間が必要な場合は、その待ち時間が記憶される。また、単位加工時間記憶手段12には、後工程装置3への部品板材mの搬入,搬出に要する時間も記憶させておくことが好ましい。
【0032】
部品毎工程時間見積もり手段13は、工程データ判別手段11で判別した各部品板材mの後工程の種類および後工程の単位加工の数量から、単位加工時間記憶手段12の記憶データを用いて、各部品板材mの後工程に要する加工時間の和を見積もる手段である。例えば、ボール盤からなる後工程装置3A で行うドリル加工箇所がn箇所あり、1回の加工時間がT秒であるとすると、(加工時間T)×(穴数n)が、後工程時間とされる。この後工程時間は、実加工に要する時間だけでも良いが、部品板材mの搬入搬出時間や、各回の加工の間に要する時間が実加工時間に対して大きく影響するときは、これら搬入搬出時間や、各回の加工の間に要する時間も加算する。これらの搬入搬出時間や各回の加工の間に要する時間につき、どのような場合に加算するかは、演算規則を任意に設定しておいて、その演算規則に従って計算するようにすれば良い。部品毎工程時間見積もり手段13は、さらに、工程データ判別手段11で判別した板材加工機2で行う加工の数量から、単位加工時間記憶手段12の記憶データを用いて、各部品板材mの板材加工機2での加工に要する加工時間を見積もる機能を有するものとしても良い。
【0033】
ネスティング装置20は、コンピュータおよびこれに実行されるプログラム等より、次の各手段が構成されたものである。このネスティング装置20は、前記板材加工時間見積り手段10と、前記工程毎・加工状況監視手段9と、後工程毎・負荷把握手段19と、前記加工予定部品板材登録手段15と、前記ネスティングオーダ生成手段14と、ネスティングオーダ記憶手段8と、ネスティング手段6aとを備える。
【0034】
後工程毎・負荷把握手段19は、前記部品毎工程時間見積もり手段13で得られる後工程に要する加工時間と、工程毎・加工状況監視手段9の監視結果である後工程状況から、各後工程の加工待ち待ち時間を計算する手段である。すなわち、工程毎・加工状況監視手段9の監視結果である後工程状況として、ある後工程装置3に、ある部品種類の部品板材mが、A個加工待ちであるとすると、その加工待ちの部品種類の部品板材mにつき、その後加工に要する時間を計算させ、待ち個数Aを掛けることで、加工待ち待ち時間が算出できる。なお、部品板材mの後加工に要する時間は、その待ち状態にある部品板材mの生産についてのネスティングオーダの決定時に、後工程毎・負荷把握手段19によって計算されているので、その計算された時間を適宜の記憶装置の所定の記憶領域に記憶させておくことで、改めて計算し直しことなく、その記憶された後加工所要時間を用いるようにする。
【0035】
ネスティングオーダ生成手段14は、前述のように、加工予定部品板材登録手段15に部品図形データDが記憶された加工予定の部品板材mを、各生産順位のネスティングオーダNOに分ける手段である。ネスティングオーダ生成手段21は、この加工予定部品板材登録手段15に記憶された板材部品mの中から、後工程毎・負荷把握手段19で把握された負荷量の相対的に少ない後工程を多く含む板材部品mを優先的に抽出して設定部品数量のネスティングオーダNOを生成するものとされ、各後工程の負荷量が均等化されるように、今回のネスティングオーダNOを定める。上記「負荷量の相対的に少ない」とは、各後工程装置3の間で比較して負荷量が少ないことを言う。「少ない後工程を多く含む」とは、例えば、各板材部品mの相互間で、上記「少ない後工程」が平均よりも多い場合としても良く、また上記「少ない後工程」が、任意に設定される設定量よりも多い場合としても良い。また、「優先的に抽出」とは、加工予定部品板材登録手段15に記憶された板材部品mの中で、優先条件となる負荷量の相対的に少ない後工程を多く含む板材部品mがある場合はその板材部品mを抽出することであり、ない場合は他の部品を抽出する。上記「設定部品数量」は、例えば、板材部品mの枚数とされ、または各板材部品mの合計面積、または設定規則に従って板材部品mの枚数と面積との両方から定まる量とされる。この「設定部品数量」は、任意に設定すれば良いが、負荷の平準化のためには、少ない枚数が好ましく、歩留りの観点からは多い方が良い。そのため、例えば、数枚ないし十数枚の枚数に適宜設定される。
【0036】
ネスティングオーダ生成手段14は、各生産順位のネスティングオーダNOに分ける処理につき、具体的には、例えば図5に示すように行う。この例では、同図(A)に示すように、後工程装置3(3A 〜3C )として、ボール盤、曲げ加工機、溶接装置がある。この場合に、現在の負荷量(すなわち、前段の加工が終了してその工程で待機状態にある全ての板材部品mの加工に要する時間のこと)が、同図(B)に斜線で示すように各後工程間でばらついている。曲げ工程の負荷量は極度に多く、ボール盤工程負荷量は極度に少なく、溶接工程はその中間程度となっている。この場合、各後工程の負荷量から適宜定められる基準で目標均等化負荷量TAを設定し、目標均等化負荷量TA以上の後工程を含む板材部品mは、抽出対象外となる。目標均等化負荷量TA未満の各後工程については、その工程における現在の負荷量と、今回のネスティングで生じる負荷量T1,T3との和が目標均等化負荷量TAとなるように、板材部品mの抽出、すなわちネスティングオーダNOの決定を行う。同図(C)は、各後工程についての、上記和となる負荷量を示す。
【0037】
目標均等化負荷量TAは、任意に定められる基準、例えば全後工程の負荷量の平均値に一定時間を加えた値等として定められる。今回のネスティングで生じる負荷量T1,T3については、仮にネスティングオーダNOを定めることで、部品毎工程時間見積り手段13で計算される。この仮にネスティングオーダNOを定める処理を適宜の方法で繰り返し行うことで、目標均等化負荷量TAに近くなる負荷量T1,T3のネスティングオーダNOが求まる。なお、各後工程の間で負荷量の差が小さい場合は、目標均等化負荷量TAを、現在の全ての後工程の負荷量よりも大きくし、各後工程における現在の負荷量と、今回のネスティングで生じる負荷量との和が目標均等化負荷量TAとなるようにネスティングオーダNOを定めても良い。
【0038】
図1において、ネスティングオーダ生成手段14は、工程時間演算部21aと、比較部21bと、決定部21cとを有していて、工程時間演算部21aは、負荷量(加工待ち待ち時間)が上記のように均等化されるネスティングオーダNOの分け方の候補を複数作成する。比較部21bは、これら複数のネスティングオーダNOの分け方の候補を、例えば表示装置の画面に出力させて比較可能とする。決定部21cは、比較部21bで比較可能とされた複数のネスティングオーダNOの分け方の候補から、オペレータの入力に従って、任意の一つを決定させる。決定部21cは、設定基準に従って自動決定を行うようにしても良い。
【0039】
なお、ネスティングオーダ生成手段14は、ネスティングオーダNOを定める複数の基準を有していて、その基準の一つとして、上記のように各後工程の負荷量を均等化させる基準を有するものとしても良い。例えば、再優先して加工すべき板材部品mがある場合は、後工程の負荷量に係わらず、その再優先して加工すべき板材部品mをネスティングオーダNOに含め、残りの板材部品mについて、各後工程の負荷量を均等化させる基準を採用するようにしても良い。
【0040】
端材登録手段29は、ネスティング手段6aによるネスティングの結果、素材板材Wの一部に板材部品mが配置されて残り部分に他の板材部品mの配置が可能な端材Sのデータを、端材番号や端材記憶領域のアドレス等と対応付けて記憶することで記憶する手段である。端材Sが、他の板材部品mの配置が可能なものであるか否かの判定は、端材登録手段29により、適宜の設定判別基準により行われる。この設定判別基準は、例えば、縦横の寸法がそれぞれ設定長さ以上となる矩形のエリアが素材板材Wに残る場合に、他の板材部品mの配置が可能なもの定める基準とされる。
【0041】
また、端材登録手段29は、他の板材部品mの配置が可能な端材Sのうちで、端材ストッカ30に保管する端材Sのみを、または端材ストッカ30に保管する端材Sを他の端材Sと分けて記憶する機能を有するものとしても良い。端材ストッカ30に保管する端材Sであるか否かの区別は、例えば、自動プログラミング装置6に設けられた適宜の手段で行うようにされる。他の板材部品mの配置が可能な端材Sは、端材ストッカ30に保管可能な余裕がある場合に全て端材ストッカ30に保管するようにしても良い。
【0042】
ネスティング手段6aは、ネスティングオーダ生成手段14で生成されたネスティングオーダNO毎にネスティング、すなわち、素材板材Wに対する板材部品mの配置を定める処理を行う手段である。素材板材Wに対する板材部品mの配置は、例えば、図5(D)や図6のように行われる。ネスティング手段6aは、複数のネスティング規則(図示せず)が設定され、全てのネスティング規則に従うように、板材部品mの配置を行う。このネスティング規則の一つとして、端材Sを優先して使用する規則を有している。この端材優先の規則は、今、ネスティングしようとするネスティングオーダNOの中の板材部品mにつき、ネスティングが可能な端材Sが前記端材登録手段29に記憶された端材Sの中にあるか否かを判断し、ある場合はその端材Sに板材部品mをネスティングし、残りの板材部品mを新たな素材板材Wに対してネスティングする規則である。
【0043】
ネスティング手段6aは、上記端材優先の規則の他に、必ず守るべき規則として、板材部品mの相互間に与える幅寸法や、素材板材W、端材Sのうち、板材部品mを配置すべきでないエリアとして定めるられる配置不可エリア(例えば、板材加工機2の板材送り機構1b(図7)が把持するエリア等)の規則や、素材板材W、端材Sのどの角または辺に近い位置から順に配置するか等の規則がある。この他に、端材優先の規則に合致する範囲で守るべき規則として、歩留りを最大とする規則等がある。
なお、ネスティング手段6aは、板厚,材質が板材部品mに合致する素材Wまたは端材Sであって、板材部品mが配置可能なエリアを有するものにネスティングを行う。その結果、ある板厚,材質の素材板材Wに対しては、素材板材Wのごく一部のみに板材部品mを配置するネスティングを行うことがある。
【0044】
この構成のネスティング装置20によると、ネスティングオーダ生成手段14は、後工程毎・負荷把握手段19で把握された各後工程の負荷量から、各板材部品mに施される後工程の情報をもとに、負荷量の相対的に少ない後工程を多く含む板材部品mを優先的に抽出してネスティングオーダNOを生成する。例えば、図5と共に前述したように、各後工程の負荷量を基に目標均等化負荷量TAを設定し、目標均等化負荷量TA以上の後工程を含む板材部品mは、ネスティングオーダNOへの抽出対象外とする。目標均等化負荷量TA未満の各後工程については、その工程における現在の負荷量と、今回のネスティングで生じる負荷量T1,T3との和が目標均等化負荷量TAとなるように、板材部品mの抽出、すなわちネスティングオーダNOの決定を行う。
【0045】
図5(D)は、このように均等化させたネスティングオーダNOの場合のネスティング結果例を示す。この例では、ある板厚,材質の素材板材W1 については、符号P1で示す板材部品mを配置し、他の板厚,材質の素材板材W2 に、符号P2〜P5で示す板材部品mを配置するネスティング等とされている。
【0046】
上記のように、各後工程の負荷量を均等化させるネスティングオーダNOとすることにより、後工程の負荷が平準化されて、仕掛かり品が低減する。しかし、ネスティングオーダNO中のネスティングする板材部品mの枚数が少なくなり、歩留りに影響する。例えば図5(D)のように、ある板厚,材質の素材板材W1 については、符号P1で示す板材部品mの1枚のみを配置し、他の板厚,材質の素材板材W2 に、符号P2〜P5で示す板材部品mを配置するネスティングとされ、端材Sが生じる。
【0047】
しかし、ネスティング手段6aは、端材Sを優先的にネスティングで使用する。例えば図6(A)のようにネスティングを行って生じた端材Sに、図6(B)のように板材部品mのネスティングを行う。同図(B)のネスティング結果では、残り部分がさらに再使用可能な端材Sとして端材登録手段29に記憶される。
このように端材Sを優先的にネスティングに使用するため、歩留りへの影響が回避される。これにより、従来、板金加工等の板材加工で要求されている、相反する要求である、リードタイムの短縮と歩留りの向上を共に実現することができる。
【0048】
また、この実施形態では、後工程毎・負荷把握手段19は、工程毎・加工状況監視手段9の監視結果である後工程状況から得られる現在の負荷量と、部品毎工程時間見積もり手段13で得られる、これからネスティングする板材部品mで生じる負荷量との和を計算する。ネスティングオーダ生成手段14は、上記のように計算される現在の負荷量とこれからのネスティングして生産する負荷量との和が、各後工程が均等化されるようにネスティングオーダNOを生成する。例えば、負荷が図5(B)のようになるようにネスティングオーダNOを生成する。そのため、負荷の均等化がより適切に行える。
【0049】
また、ネスティングする板材部品mで生じる負荷量の計算については、工程データ判別手段11により、部品図形データDに含まれた後工程を示すデータH,LBを読み取って後工程の種類、およびその後工程における単位加工の数量を判別する。部品毎工程時間見積もり手段13は、前記工程データ判別手段11で判別した各部品板材mの後工程の種類および後工程の単位加工の数量から、前記単位加工時間記憶手段12の記憶データを用いて、各部品板材mの後工程に要する加工時間の和を算出する。このように、部品図形データDに含まれた後工程を示すシンボル等のデータH,LBを読み取って後工程の種類およびその後工程における単位加工の数量を認識するため、板材部品m毎の加工時間を容易に見積もることができる。
【0050】
さらに、この板材加工設備によると、この実施形態のネスティング装置20の採用により、後工程の仕掛かり品の低減と負荷平準化が実現でき、かつ負荷平準化に伴う歩留りの低減が抑えられる。また、板材加工機2に隣接して端材ストッカ30を設け、この端材ストッカ30は板材加工機2に対して出し入れする端材出し入れ機構32を有するものとしたため、端材Sを効率良く加工に使用することができる。従来は、再利用可能な端材は単に保管棚等に保管し、使用する場合に人手で板材加工機に搬入するなど、その使用に手間がかかっていたが、上記の端材出し入れ機構32を有する端材ストッカ30を板材加工機2に隣接して設置することで、端材Sを使用した加工が効率良く行える。
【0051】
また、このように端材Sを効率良く使用する端材ストッカ30を設けた上で、前記ネスティング装置20につき、前記端材登録手段29に登録される端材Sを、前記端材ストッカ30に保管される端材Sとした場合は、端材Sの優先利用による加工効率の低下を回避しながら、各工程の負荷平準化に伴う歩留りの低減を実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…板材加工設備
1b…テーブル
1b…板材送り機構
2…板材加工機
3,3A 〜3C …後工程装置
4…制御装置
5…加工プログラム
6…自動プログラミング装置
6a…ネスティング手段
9…工程毎・加工状況監視手段
10…板材加工時間見積り手段
11…工程データ判別手段
12…単位加工時間記憶手段
13…部品毎工程時間見積もり手段
14…ネスティングオーダ生成手段
15…加工予定部品板材登録手段
19…後工程毎・負荷把握手段
20…ネスティング装置
29…端材登録手段
30…端材ストッカ
32…端材出し入れ機構
D…部品板材データ
m…部品板材
NO…ネスティングオーダ
S…端材
TA…目標均等化負荷量
T1,T2…負荷量
W…素材板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材板材から部品板材を切り取る加工を行う板材加工機、およびこの板材加工機で切り取られた部品板材に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置を備えた板材加工設備において、前記板材加工機で順次実行させる、部品板材の生産単位となるネスティングオーダを生成するネスティングオーダ生成手段、およびこのネスティングオーダ生成手段で生成されたネスティングオーダ毎にネスティングを行うネスティング手段を備えたネスティング装置であって、
前記板材加工設備で加工する予定の各部品板材について、種類および数量、並びに各種類の部品板材についての形状およびこの部品板材に施す各後工程の種類を含むデータである部品図形データを記憶した加工予定部品板材登録手段と、
前記各後工程装置毎に、加工待ち状態にある全数の部品板材の加工に要する時間で示される負荷量を把握する後工程毎・負荷把握手段と、
前記ネスティング手段によるネスティングで素材板材の一部に板材部品が配置されて残り部分に他の板材部品の配置が可能な端材のデータを記憶する端材登録手段とを設け、
前記ネスティングオーダ生成手段は、前記加工予定部品板材登録手段に前記部品図形データが記憶された板材部品の中から、前記後工程毎・負荷把握手段で把握された負荷量の相対的に少ない後工程を多く含む板材部品を優先的に抽出して設定部品数量のネスティングオーダを生成するものとし、
前記ネスティング手段は、ネスティングオーダ中の板材部品のネスティングが可能な端材が前記端材登録手段に記憶された端材の中にあるか否かを判断し、ある場合はその端材に板材部品をネスティングし、残りの板材部品を素材板材に対してネスティングするものとした、
ことを特徴とするネスティング装置。
【請求項2】
前記部品図形データに含まれた後工程を示すデータを読み取って後工程の種類、およびその後工程における単位加工の数量を判別する工程データ判別手段と、
前記各後工程装置における単位加工に要する時間を記憶した単位加工時間記憶手段と、 前記工程データ判別手段で判別した各部品板材の後工程の種類および後工程の単位加工の数量から、前記単位加工時間記憶手段の記憶データを用いて、各部品板材の後工程に要する加工時間を見積もる部品毎工程時間見積もり手段と、
前記各後工程装置について、加工待ち状態にある部品板材の種類,数量を含む後工程状況を監視する工程毎・加工状況監視手段を設け、
後工程毎・負荷把握手段は、前記部品毎工程時間見積もり手段で得られる後工程に要する加工時間と、前記工程毎・加工状況監視手段の監視結果である後工程状況から、前記負荷量である各後工程の加工待ち待ち時間を計算するものとし、
前記ネスティングオーダ生成手段は、前記各後工程の加工待ち時間である負荷量が均等化されるように、前記ネスティングオーダの生成を行うものとした請求項1記載のネスティング装置。
【請求項3】
素材板材から部品板材を切り取る加工を行う板材加工機、およびこの板材加工機で切り取られた部品板材に後工程の加工を施す複数種類の後工程装置と、前記板材加工機の加工プログラムを生成する自動プログラミング装置とを備えた板材加工設備であって、
前記板材加工機に隣接して、素材板材の一部に板材部品が切り取られて再度素材として加工に用いる端材を保管可能で、かつ保管する端材を板材加工機に対して出し入れする端材出し入れ機構を有する端材ストッカを設け、
前記自動プログラミング装置に、請求項1または請求項2記載のネスティング装置を設け、このネスティング装置において、前記端材登録手段に登録される端材は、前記端材ストッカに保管される端材としたことを特徴とする板材加工設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181941(P2010−181941A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22521(P2009−22521)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】