説明

ネットワークに接続された仲介装置

【課題】アクセス制限あるネットワークを利用する場合に、制限を回避したサービス装置へのアクセスの実現を図る。
【解決手段】仲介サーバ200は、パーソナルコンピュータ100から仲介依頼を受けてサービス装置300にサービスを依頼する。ファイアウォールF/Wは、外部の装置からサービス装置へのサービス依頼を妨げる。仲介サーバ200は、サービス装置300からの事前通信を受けて、ファイアウォールF/Wに影響されないサービス装置300への接続を予め確保する。仲介サーバ200は、確保された接続を利用することで、依頼された仲介を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クライアントからの要求に基づいて、ネットワークを介して接続されたサービス装置にサービスを実行させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではネットワーク技術の普及により、サービス装置をネットワークに接続して、同じくネットワークに接続された複数のコンピュータで共有する態様が広まっている。サービス装置としては、プリンタやカメラ、ブラウン管や液晶技術などを用いた表示装置、スーパーコンピュータやその他の専用用途コンピュータなどの情報処理装置、データ記録装置など、種々のものが広く実用とされている。
【0003】
かかる環境下では、各コンピュータ等からサービスを要求するユーザはネットワークに接続されたサービス装置の状況を十分に把握できないことが多く、所望するサービスを正常に実行できないことがある。サービス装置に不具合があった場合には、従来からの技術として、一定時間経過後の、再度のサービス依頼が行われていた。
【0004】
一方、ネットワークによっては、任意のタイミングで一対一接続が確立できない場合がある。例えば、いわゆるダイヤルアップ接続により、サービスの実行時に適宜サービス装置をネットワークに接続する態様があげられる。また、サービス装置にいわゆるファイアウォールが設けられている場合には、外部からのアクセスが拒まれる場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クライアント及びサービス装置とが任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続される環境下では、所望する時点でサービス装置にアクセスを行うことさえできない。例えば、サービス装置の状況把握や、サービス装置へのサービス依頼は、所望する任意の時点で行うことができない。
【0006】
そこで、任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態でも、サービス装置に対する所望するアクセスを実現して、サービス装置の状況を的確に把握したり、所望するサービスを実行させたりする技術の実現が課題となっている。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、クライアントからの要求に基づいて、ネットワークを介して接続されたサービス装置にサービスを実行させる技術の確立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では、次の構成を適用した。
本発明の仲介装置は、
クライアント及び所定のサービスを提供するサービス装置が任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続された環境下で、前記クライアントから前記サービス装置へのサービス依頼を仲介する仲介装置であって、
前記仲介に先立って、前記サービス装置から所定の事前通信を受信するとともに、該受信に基づき該サービス装置との通信を確立するサービス装置通信部と
前記通信が確立されたサービス装置を前記サービス依頼の仲介先として選択するための情報を前記クライアントに提供する選択情報提供部と、
前記サービス依頼および仲介先を入力する入力部と、
該サービス依頼を指定された仲介先に仲介する仲介部とを備えることを要旨とする。
【0009】
本発明の仲介装置によれば、任意のタイミングでの一対一接続をすることができないネットワーク接続を利用する場合でも、サービス装置通信部の機能により通信が確立されるために、クライアント側で所望されるサービス依頼を、サービス装置で実行させることができる。
【0010】
また、サービス依頼にあたっては、任意のタイミングでの一対一接続をすることができないネットワーク接続にもかかわらず、サービス装置の状態の情報を利用することができる。とりわけ、所望のサービスが実行可能か否かを調べたり、複数のサービス装置から、所望のサービスを実行可能なサービス装置を調べたりすることができる。
【0011】
なお、ここにサービス装置通信部が行う事前通信は、任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態のネットワークにおいて、サービス装置への仲介を実現するため仲介に先立って行う準備の通信ならば、様々なバリエーションが考えられる。例えば、サービス装置との通信経路を特定する情報が変更される場合にその情報を継続的に確保する通信であったり、サービス仲介に利用するコネクションを保持するための通信であったりする場合などが考えられる。
【0012】
ここに事前通信としては、実質的な内容を含まないデータを送付して通信を確立する場合が含まれる。例えば、データ送付の途絶が所定の期間続くことで切断されてしまうコネクションを利用する構成の場合に、所定の期間が経過する前に内容がデータを送付してコネクションの断絶を防ぐ事前通信も考えられる。
【0013】
また、ここにサービス装置としては、プリンタやカメラ、ブラウン管や液晶技術などを用いた表示装置、スーパーコンピュータやその他の専用用途コンピュータなどの情報処理装置、データ記録装置など、種々のものが広く適用可能である。
【0014】
さらに、ここにネットワークとしては、インターネットのような広域的なネットワークも考えられるし、ローカルエリアネットワークなど限定的なネットワークの場合も考えられる。
【0015】
本発明の仲介装置において、前記通信は、前記サービス装置から前記仲介装置に接続することで確立される場合の有用性は高い。
【0016】
このようにすることで、前記接続にかかる障害が、サービス装置からの接続の場合には緩和される場合に、前記事前通信を実現することができる。
【0017】
なお、前記緩和される場合として例えば、サービス装置にいわゆるファイアウォールが設けられており、外部からのアクセスが拒まれる場合が考えられる。この場合、サービス装置と仲介装置とで通信能力が非対称である。その他、ネットワーク上で利用可能なプロトコルや、ネットワークの物理的性質、ネットワーク上で通信が介される装置の特性に基づいて、前記のように通信にかかる能力が非対称となる場合にも、サービス装置からの接続は有用性が高い。なお、サービス装置との通信経路を特定する情報が変更される場合も同様の非対称性が存在する場合が多い。
【0018】
本発明の仲介装置において、前記環境は、前記サービス装置との通信経路を特定する情報が変更される環境である場合の有用性は高い。
【0019】
この場合にも、直接には行えないサービス依頼が、仲介装置を介した場合には、任意の時点で可能となる。
【0020】
なお、前記サービス装置との通信経路を特定する情報が変更される場合の例としては、いわゆるNAT(Network Address Translation)やPAT(Port Address Translation)といった動的なアドレス変換機構やダイヤルアップ接続機構が、ネットワークの実現に用いられている場合があげられる。また、サービス装置に接続するネットワーク端子が物理的に変更され、それに伴って前記特定する情報が変更されることも考えられる。
【0021】
本発明の仲介装置において、
前記サービス装置を特定する固有情報を蓄積する固有情報蓄積部を備え、
前記事前通信において受領する情報の少なくとも一部と前記固有情報との対比によって該サービス装置を特定することが望ましい。
【0022】
このようにすることで、事前通信の通信元に応じた処理を行が実現されて、仲介装置の利便性が高まる。特に、仲介装置の側でサービス装置ごとにその状態を監視することができる。さらには、サービス装置の状態の情報を、前記クライアントその他の対象に対して送付することができる。サービス装置の情報を受け取ったクライアントは、仲介依頼にあたってその情報を利用することができる。
【0023】
なお、固有情報としては、ネットワークにおけるアドレスその他のサービス装置への通信経路を特定する情報などを利用することができる。
【0024】
本発明の仲介装置において、
前記固有情報は前記ネットワークにおける前記サービス装置のアドレスとは異なる場合の有用性は高い。
【0025】
このようにすることで、前記サービス装置との通信経路を特定する情報が変更される場合でも、継続的に個々のサービス装置を特定することができる。
【0026】
なお、このようにすることで仲介装置は、サービス装置そのものを、そのアドレスとは無関係に管理することができる。管理としては、例えばサービス装置がプリンタの場合、インク残量の経時的変化を継続監視して、残量寡少その他の状況を検知して対応処理を行うことや、故障を診断することなどが考えられる。
【0027】
また、前記サービス装置のアドレスとは異なる固有情報としては、例えばメーカーが各サービス装置に一意に付した製造番号や、ユーザが割り当てた識別子・識別番号等が考えられる。
【0028】
本発明の仲介装置において、
前記事前通信に基づいて確立されるべき通信の状態の検査を行い、その結果に基づいて前記サービス装置に対応付けられた所定の通知先に通知を行う事前通信処理部を備えることが望ましい。
【0029】
このようにすることで、サービス装置の状態の監視・管理を行わせて必要な場合に連絡を受けることが、煩雑な手間無く実現される。
【0030】
なお、通知を行う場合としては、消耗品が底をついた場合や故障の場合などが考えられる。また、通知にあたっては、前記確立されるべき通信の状態の情報のみならず、過去の事前通信から認知される範囲でサービス装置の情報を通知することが考えられる。また、通知は、いわゆるプッシュ型の通知や、携帯デバイスへの通知を行って、遅滞のない情報伝達を実現することが考えられる。例えば、携帯電話に対するメール通知によって、プッシュ型の通知を携帯デバイスに対して行うことができる。
【0031】
本発明の仲介装置において、
前記サービス装置と該サービス装置に対応付けられた通知先を特定する固有情報を蓄積する固有情報蓄積部を備え、
前記事前通信処理部は、前記事前通信において受領する情報の少なくとも一部と前記固有情報との対比から特定される通知先に通知を行うことが望ましい。
【0032】
このようにすることで、サービス装置ごとに通知先を管理することができる。
【0033】
一方、本発明のサービス装置は、
ネットワークを介してサービス依頼を受けて該サービスを提供するサービス装置であって、
外部にある所定の装置に対して所定の事前通信を送信するとともに、該送信に基づき、該サービス装置への通信を該所定の装置に確立させる事前通信部と、
前記所定の装置からのサービス依頼を、前記ネットワークを介して受領する依頼受領部と、
前記サービスを提供するサービス提供部とを備えることを要旨とする。
【0034】
このようにすることで、サービス装置に対して任意のタイミングで一対一接続をすることができない状態にある所定の外部装置に、サービス依頼能力を付与することができる。
【0035】
なお、外部にある所定の装置がさらに他の装置からの依頼を仲介する場合や、サービス依頼能力自体をその装置に再付与する場合も考えられる。
【0036】
本発明の仲介装置において、前記事前通信を、常時と、断続的と、該サービス装置の所定の動作毎との少なくとも一つの態様で行うことができる。
【0037】
このようにすることで、所望されるサービス依頼能力を柔軟に付与することができる。例えば、サービス依頼能力及びその付与タイミングは、サービス装置の所定の動作・状態と同期して行われる。
【0038】
なお、常時に行う場合には、相当程度短い期間ごとに行う場合も考えられる。また、サービス装置の所定の動作としては、ハード的な動作もソフト的な動作も考えられる。
【0039】
本発明の仲介装置において、前記事前通信は、少なくとも該サービス装置の電源投入と該サービス装置の切断されていた前記ネットワークへの接続の回復とのいずれかを契機として行う場合の有用性は高い。
【0040】
このようにすることで、所望されるサービス依頼能力を柔軟に付与することができる。
【0041】
本発明は、上述の仲介装置、サービス装置としての構成の他、仲介方法の発明、サービス方法の発明として構成することもできる。また、それらを実現するコンピュータプログラム、およびそれらのプログラムを記録した記録媒体、それらのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。
【0042】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読みとり可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.システム構成:
B.機能ブロック構成:
C.処理:
D.変形例:
【0044】
A.システム構成:
図1は、印刷仲介システムの全体構成を示す説明図である。印刷仲介システムは、パーソナルコンピュータ100と、仲介サーバ200と、印刷装置300と、それらを接続するネットワークINT及びNETとからなる。
【0045】
印刷装置300は、ネットワークNETを介して印刷サービスの依頼を受けて、印刷サービスを実行する機能を備える。仲介サーバ200は、パーソナルコンピュータ100等のクライアントからの仲介依頼を受けて、印刷装置300に印刷サービスの仲介を行う機能を備える。パーソナルコンピュータ100は、ユーザ入力に基づいて、印刷仲介の依頼を仲介サーバ200に対して行う機能を備える。
【0046】
ここに、パーソナルコンピュータ100と仲介サーバ200とは、ネットワークINTで接続されている。一方、仲介サーバ200と印刷装置300とはネットワークNETで接続されている。これらのネットワークは、インターネットのような広域的なネットワークも考えられるし、LAN(Local Area Network)やいわゆるパソコン通信などの比較的限定的なネットワークも考えられる。
【0047】
図1で印刷装置300との接続に利用するネットワークNETにおいては、印刷装置300の側にファイアウォールF/Wが設置されている(以下F/Wと呼ぶ)。ファイアウォールは、不正アクセスを防ぐ目的に用いられる。ファイアウォールF/Wは、通過するネットワークトラフィックを監視して、ルールに基づいた正当な通信のみを許可したり、不正な動きを検知したりする機能を備える。
【0048】
図示の都合上省略したが、パーソナルコンピュータ100は印刷装置300と、ネットワークNETを介して接続される。しかし、ファイアウォールF/Wの効果のため、印刷装置300に対して直接の印刷依頼を行うことができない。一方で仲介サーバ200は、印刷装置300からの事前通信に基づいて、印刷装置300への印刷依頼を実現することができる。事前通信については後述する。
【0049】
ネットワークINTとネットワークNETとは、ここでは便宜上、分離したものとして示しているが、全体として1つのネットワークを構成するものであってもよい。ただし、ネットワークNETを介した印刷装置300への直接のサービス依頼は、任意のタイミングで行うことができない。ネットワークNETの性質については、後で詳しく述べる。
【0050】
図1では簡便のため仲介サーバ200は仲介元及び仲介先の装置として一台の装置をそれぞれとるように示したが、そのような場合に限られるわけではない。本実施例の仲介サーバ200は、複数の装置からの仲介依頼を受ける。また複数の装置への仲介の実現が行われる。また、仲介サーバ200が受領する仲介依頼や、印刷装置300が受領するサービス依頼は、これらの装置とネットワークを介して接続されたコンピュータ上のデータの印刷であってもよい。仲介サーバ200や印刷装置300は、指定されたデータを取得してそれぞれの処理を行う。
【0051】
ファイアウォ―ルは、限定的なネットワーク内のデータや各装置内のデータを外部から不正に操作されたり、安全性の問題が発生したりしないように、それらと外部のネットワークとの間に介在する。
【0052】
アドレスは、ネットワーク上でコンピュータを識別するための情報であり、IPプロトコルでは32Bitのデータ幅で利用される。以下の説明では、ポート番号等の情報も、ネットワーク上でコンピュータを識別するためのアドレスと考えて説明する。
【0053】
プロトコルは、複数のコンピュータ間のデータ通信の際の規約である。インターネットでは、TCP/IP(Transmission Control Protocol Internet Protocol)というプロトコルが基盤になっている。TCP/IPを基礎として、さらに、WWWのサーバ・クライアント間の通信に利用するHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)や、ファイルの転送を行うためのFTP(File Transfer Protocol)、電子メールにかかるサーバ・クライアント間の通信に利用するSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)、アプリケーションレベルでの汎用プロトコルであるUDP(User Datagram Protocol)などの用途別のプロトコルにしたがって情報の送受信が行われる。
【0054】
また、TCP、UDPでは、アプリケーションまたは上位のプロトコルに対して、データの送受信するためのアドレスを2オクテットの符号なし整数で表わす。このアドレスをポート(番号)と呼び、電子メールやFTPなどのアプリケーションは、このポートを介して通信を行う。
【0055】
ファイアウォールF/Wは、印刷装置300でソフトウェア的に実現しても良いし、印刷装置300を含む限定的な単位ネットワークと、そのネットワークから外部のネットワークへの出入り口となるルータ等の装置に実現しても良い。この場合は、専用ハードウェア製品を利用する方法ことも考えられる。なお、以下の説明では、印刷装置300と別に実現されるものとして説明する。
【0056】
本実施例の仲介サーバ200は、HTTPを用いた通信によって印刷装置300への印刷仲介を実現する。一般に、ファイアウォールF/Wは、内から外への接続は許容して、外から内への接続は全て拒絶したりHTTPやSMTPなどの必要最小限度のプロトコルだけを許容したりする。本実施例でファイアウォールF/Wは、パーソナルコンピュータ100や仲介サーバ200からの通常の印刷依頼を拒絶するものの、印刷装置300から外部の装置へのHTTP接続は許容するファイアウォールであるものとする。
【0057】
印刷装置300は、仲介サーバ200に対して、ネットワークNETを介したHTTP要求を行い、その応答として、所定のデータを受け取る。この時、CGI(Common Gateway Interface)の引数などとして、メッセージの送付を行うこともできる。仲介サーバは、HTTP要求に対する応答である返送データに含めて印刷依頼を発することができる。
【0058】
印刷装置300が行うHTTP要求による事前通信は電源投入を契機として開始される。また、ネットワークNETが不調の場合には、その回復を契機として再開される。事前通信は所定の期間毎に繰り返し続けられて、仲介サーバ200が受ける仲介依頼をチェックする効果を持つ。
【0059】
仲介サーバ200は、事前通信を受けて印刷装置300への印刷依頼のための通信を確立する。同時に仲介サーバ200は、事前通信における情報受領によって、印刷装置300のサービス能力を把握する。印刷装置の情報はクライアントに公開されて、クライアントの仲介依頼に利用される。
【0060】
B.機能ブロック構成:
図2は、仲介サーバの機能ブロック構成を示す説明図である。仲介サーバ200は既述のように、事前通信を受領して、印刷装置300の情報を公開して仲介依頼を受け付けて、印刷装置300に印刷仲介を行う機能を備える。
【0061】
通信部201は、ネットワークINT、NETとの通信を司る。サービス装置通信部202は、事前通信を受領するとともにその情報を管理する。
【0062】
事前通信処理部203は、サービス装置通信部202が受領する事前通信に基づいて確立されるべき通信の状態の検査を行う。印刷装置に異常が生じた場合には、印刷装置に対応付けられた所定の通知先への通知を行う。
【0063】
固有情報蓄積部207は、印刷装置の情報を予め蓄積している。これには印刷装置のアドレスを含めることができる。なお、後述のように、印刷装置の情報にその装置のアドレスとは異なる情報であってその印刷装置を特定する情報を含めることも考えられる。蓄積された情報は、事前通信にあってはサービス装置通信部202に、印刷装置情報の公開にあたっては選択情報提供部204に、印刷仲介の実行にあたっては仲介部206にそれぞれ利用される。
【0064】
選択情報提供部204は、事前通信に基づいて、サービス装置の状況をクライアントに公開する機能を備える。公開にあたっては通信部201の通信機能が利用される。ここに公開される情報には、クライアントが仲介依頼を実行するために利用するデータを含む。
【0065】
入力部205は、クライアントからの仲介依頼を受ける機能を備える。特に、先に選択情報提供部204が公開した印刷装置の情報に基づいた仲介依頼を受けることができる。
【0066】
仲介部206は、クライアントから入力部205が受け取る仲介依頼に基づいて、実際の印刷仲介を実行する。
【0067】
図3は、印刷装置の機能ブロック構成を示す説明図である。印刷装置300は、ネットワークNETを介して印刷依頼を受けて実行する以外に、仲介サーバ200への事前通信を行う。
【0068】
事前通信部302は、仲介サーバ200に対して所定の事前通信を送信する。これによって、仲介サーバ200は、印刷装置300への印刷仲介を行えるようになる。依頼受領部303は、仲介サーバ200からの印刷依頼を受領する機能を備える。サービス提供部304は、仲介サーバ200から依頼受領部303が受け取る印刷依頼に基づいて、実際の印刷を実行する。さらに、なお、事前通信にあたっては、印刷装置のアドレスとは異なる情報であって印刷装置を特定する情報を含めることもできる。例えば、印刷装置の製造番号を含めることができる。
【0069】
C.処理:
図4は、登録情報を送付するインタフェースを示す説明図である。このインタフェースを用いることで、印刷装置の情報が仲介サーバ200に入力される。登録情報を送付するための方法は、様々なものが考えられるが、ここでは、パーソナルコンピュータ100上で実現される、いわゆるブラウザを利用するものとした。
【0070】
登録情報を送付するインタフェース210には、ユーザアドレス入力欄211、登録名入力欄212、機種名入力欄213、電源off許容期間を指定するチェックボックス214、及びアドレス入力欄215が含まれる。図4の例では、ユーザアドレスとして「name@srv.ne.jp」なるメールアドレスを、印刷装置の登録名として「自宅1」なる名前を、その機種名として「PM920C」を、電源OFF許容期間として「1日」を、アドレスとして「123.123.123.123」が登録情報として送付される。実際の送付は、登録ボタン216のクリックで実行される。
【0071】
送付される登録情報は、仲介サーバ200において、通信部201を介して受け取られて、固有情報蓄積部207に蓄積される。
【0072】
図4には、インタフェース210に基づいて登録される登録情報によって固有情報蓄積部207に蓄積されるデータの構造を、併せて例示している。固有情報蓄積部207には、登録名「自宅1」、「自宅2」等の印刷装置の情報が蓄積されている。先のインタフェース210で送付された情報は、登録名「自宅1」の印刷装置に対応するデータ209として蓄積されている。
【0073】
このデータには、先に示したインタフェース210を利用して送付された情報を含む他に、対応する印刷装置からの最後の事前通信に関する情報その他の情報が含まれている。
【0074】
図5は、仲介印刷を行う処理のタイミングを示す説明図である。
【0075】
印刷装置300は、電源投入(タイミングSa00)を契機として事前通信を開始する。事前通信はSa01、Sa02…と順次に行われる。なお、図中では事前通信2までしか示さなかったが、事前通信はタイミングSa02の後も所定の間隔で続行される。これによって、印刷装置300の状態の情報が、定期的に仲介サーバ200に伝えられる。ここに、タイミングSa13における仲介サーバ200からの印刷仲介とタイミングSa15での完了連絡とは、それぞれ事前通信mに対する応答と、事前通信nにおけるHTTP要求に含めて行われる。
【0076】
パーソナルコンピュータ100は、タイミングSa10で、仲介サーバ200に対してプリンタ情報の要求を発する。これを受けた仲介サーバ200は、タイミングSa11で、プリンタ情報を返送する。
【0077】
ここでは、固有情報蓄積部207に蓄積された、事前通信の履歴情報が参照される。固有情報蓄積部207中における、印刷装置300に対応するデータ209には、その印刷装置からの過去の事前通信に関する情報が蓄積されている。これは、タイミングSa01、タイミングSa02等の各事前通信の受領において、それぞれ、固有情報蓄積部207の所定の欄に蓄積される。仲介サーバ200は事前通信の受領にあたって印刷装置を特定する固有情報を受け取る。この情報をキーとして、その印刷装置に対応するデータを検索し、データの改訂を行う。
【0078】
本実施例では、事前通信を受け取った最終時刻を記録しているものとした。従って事前通信を受けた仲介サーバ200は、その受領時刻を固有情報蓄積部に書き込む処理を行う。また仲介サーバ200は、最後の事前通信から、所定の時間が経過するまでの間は、その通信元の印刷装置への印刷仲介が可能であるものと判断する(次の事前通信が正常に受けられるものと推定する)。その期間が満了した後には、その印刷装置への印刷仲介は不能であると判断する。図5におけるタイミングSa11では、印刷装置300への印刷仲介が可能である旨の判断結果が、プリンタ情報に含めて送付される。
【0079】
タイミングSa12では、パーソナルコンピュータ100から、仲介サーバ200への印刷仲介要求が受領したプリンタ情報に基づいて行われる。要求を受けた仲介サーバ200はタイミングSa13で実際の印刷仲介を実行する。これは前述のように事前通信mに対する応答に含めて行われる。仲介を受けた印刷装置300はタイミングSa14で、印刷を実行する。さらにタイミングSa15で仲介サーバ200への完了連絡が行われる。これは前述のように事前通信nにおけるHTTP要求に含めて行われる。タイミングSa16では、仲介サーバ200からパーソナルコンピュータ100への完了通知が行われる。
【0080】
図6は、仲介印刷を行う時のインタフェースを示す説明図である。ここでは、パーソナルコンピュータ100で実行されるブラウザを利用している。
【0081】
印刷仲介開始画面230で印刷仲介の依頼を開始する。印刷対象入力欄232で印刷対象を指定して、印刷開始ボタン233をクリックすることで、仲介サーバ200にプリンタ情報の要求を発することができる(図5のタイミングSa10)。これによって、印刷装置選択画面240を得ることができる(図5のタイミングSa11)。
【0082】
画面240では、登録名「自宅1」と「自宅2」とその他の印刷装置の情報が示される。ここに、「自宅1」の印刷装置は図4のインタフェースで仲介サーバ200に登録された印刷装置300である。また、「自宅2」の印刷装置は、別に図4と同様のインタフェースを用いて登録されたものである。
【0083】
ここでは、印刷仲介不能である「自宅2」に対応して、印刷不能情報表示244が示される。印刷仲介が不能か否かは、仲介サーバ200は、前述のように事前通信の履歴から判断する。図6における印刷不能情報表示244では、最後の事前通信の時刻が示されている。
【0084】
一方、登録名「自宅1」の印刷装置は印刷仲介可能であることが示される。印刷仲介可能な登録名「自宅1」の印刷実行ボタン243をクリックすることで、実際の印刷仲介を実行させることができる(図5のタイミングSa13)。仲介サーバ200は、印刷装置300からの印刷完了連絡を受ければ、印刷を完了した画面270を表示させる(図5のタイミングSa16)。
【0085】
図7は、不具合情報を送付する処理のタイミングを示す説明図である。これは、図5のタイミングSa01、Sa02から順次行われる事前通信が、図7中の事前通信pまで続いたタイミングSb0pから示したものである。印刷装置300は、タイミングSb0pにおける事前通信pの直後であるタイミングSb10に電源OFFが発生して、事前通信pを最後にして、事前通信の実行が途絶えている。
【0086】
仲介サーバ200は、印刷装置300からの事前通信でそのアドレスを受領し、先に固有情報蓄積部207に登録されたもの(図4のインタフェース210を参照)と対比して通信元を特定する。事前通信の時刻は、順次、固有情報蓄積部207における通信元の印刷装置300に対応したデータ209に記憶される。
【0087】
タイミングSb11では、印刷装置300からの事前通信の中断期間が先に登録した所定の期間を超える旨が検知される。ここに所定の期間は、図4のインタフェース210で「電源OFF許容期間」として登録されたものである。最後の事前通信の時刻からの期間が、登録された許容期間を超過することが検知されると、期間超過への対応処理が行われる。ここでは、印刷装置300に対応するデータ209中に登録(図4のインタフェース210を参照)されたメールアドレスへのメール配信が行われる。これによって、印刷装置300の不具合情報が報告される。
【0088】
図8は、不具合情報を受けるインタフェースを示す説明図である。印刷装置300の不具合情報は、図7のタイミングSb11で検知されて、先に登録済みの宛先への電子メールとして報告される。図8では、パーソナルコンピュータ100の電子メールソフトウェアによるインタフェースを用いる場合を示している。
【0089】
図8中の通知された不具合情報220では、異常を検知した印刷装置300の登録名、機種名、アドレス及び最後の事前通信時刻を示している。
【0090】
本実施例に従って仲介装置、サービス装置を構成すれば、クライアント及びサービス装置とが任意のタイミングで一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続される環境下であっても、所望するサービスを柔軟に実行することができる。本実施例で特に示したように、いわゆるファイアウォールを介したネットワークを利用する場合などに有効に利用できる。
【0091】
上記の障害にもかかわらず、ユーザは、仲介装置から受け取る情報を基にして、サービス装置の現在の状態を把握することができる。また、ユーザはこの情報を利用して仲介依頼を行うことができる。さらにユーザは複数のサービス装置の情報を受け取って、所望のサービスを提供可能な装置を調べることが可能である。仲介サーバは、ユーザが所望するサービ装置の検索機能や検索補助機能を備えることも考えられる。
【0092】
さらに、サービス装置の状態を継続的に監視することにより、サービス装置に電源断、状態の異常、その他の所定の状態が発生することを検知して、ユーザが所望する対応処理が自動的に行われるようにすることができる。例えば、ユーザが所望する電子メールのユーザアドレスに対する情報通知を行うことができる。この通知のように、サービス装置のネットワーク上でのアドレスではない対象にかかる機能は、サービス装置の状態と無関係に行われるために、とりわけ有効である。
【0093】
ここで本実施例の事前通信では、各事前通信の度にコネクションが切断される。このように、事前通信の処理を常時には行わない場合、サービス装置及び仲介装置の資源を節約する構成をとることができる。すなわち、両装置における事前通信のための資源は、事前通信が休止する時間帯には他の処理に利用することができる。
【0094】
仲介装置では、いずれかのサービス装置からの事前通信の受け付けに応じて、それに必要な資源を割り当てれば足りる。割り当てた資源は、その事前通信が休止した後には他の用途に利用される。
【0095】
なお、事前通信の間隔が無用に長いと故障の検知の即時性が低下する問題などもあるため、利用目的等の観点などを考慮して、事前通信の間隔・頻度を決定することが望ましい。このとき、仲介装置並びにサービス装置の管理者、又は仲介依頼者の設定入力に基づいて間隔が決定・変更されるものとしてもよい。さらには、サービス装置その他の装置が動的に頻度を自動変更するものとしてもよい。
【0096】
ここでさらに、本実施例の変形例として、システム構成等は同様であって、印刷装置300が仲介サーバ200に対して行う事前通信が、継続的なコネクションを確立する事前通信である場合について説明する。この場合、確立される継続的コネクションを利用することで、サービス仲介は常時可能なものとなる。
【0097】
継続的なコネクションを確立する事前通信としては、上記実施例において、HTTP要求の間隔(図5のタイミングSa01〜タイミングSa02の間隔)が相当程度に短い一定期間とする場合も含まれるが、以下のような例も挙げることができる。
【0098】
すなわち、印刷装置は、仲介サーバに向かって接続要求を発してコネクションを確立し、仲介サーバからのファイウォールを通過した応答を待つとともに、確立されたコネクションの維持を継続して監視する。コネクション切断の発生を検知した印刷装置は、新しいコネクションの確立処理を即座に行って接続の継続性を保持する。また、切断タイムアウト時間等に基いてコネクション切断のおそれを検知した場合にも、新しいコネクションの確立処理を即座に行って接続の継続性を保持する。このとき、場合によっては、コネクションを維持するためのリフレッシュ処理(空データ送付等)を行うことも考えられる。なお、システム構成等によっては、コネクションを監視し、それを維持する処理について、仲介サーバの側で役割を担う場合も考えられる。
【0099】
以上説明した、継続的なコネクションを確立する事前通信を利用するシステムによれば、クライアントのサービス依頼が実際に実行されるまでの時間を短くすることができる。すなわち、いずれの時点においても、仲介依頼はきわめて短期間にサービス装置に受領される。
【0100】
また、サービス装置から仲介装置が受領する情報も速効性を有すものとなる。例えば、仲介装置がサービス装置の管理装置でもあって、その故障情報や消耗品情報が仲介装置に受領される場合、上記の速効性は特に有用である。仲介装置は、予期せぬコネクション切断時点や、所定のごく短期間でのコネクション回復がない時点で、サービス装置の事前通信機能の不具合を即座に検知することができる。これによって、例えば、サービス装置の即時性ある不具合情報を、所定の通知先に送付する機能が利用可能である。
【0101】
D.変形例:
図9は、第2実施例のシステム構成を示す説明図である。これは、先の実施例のシステム構成とほぼ同様である(図1参照)。また、仲介サーバ200及び印刷装置300の機能ブロックも、先の実施例の場合と同様である(図2及び図3参照)。
【0102】
システム構成で先の実施例の場合と異なる点は、仲介サーバ200と印刷装置300を接続するネットワークNETの特性である。ネットワークNETを介した印刷装置300へのアクセスにあたっては、アクセスに必要な印刷装置300のアドレスが動的に変化する。図9の例では、動的アドレス変更機構CNGの効果によって、アドレス「adr1」、「adr2」、…「adrN」のいずれかに印刷装置300が接続される場合を示した。印刷装置300は、現時点ではアドレス「adrP」を利用してアクセスできる。しかし、動的アドレス変更機構CNGによって、印刷装置300のアドレスは、アドレス「adr1」、「adr2」、…「adrN」のいずれかへ動的に変更され得る。
【0103】
ネットワークNETは例えば、いわゆるNAT(Network Address Translation)やPAT(Port Address Translation)といった動的なアドレス変換機構を介している場合や、ダイヤルアップ接続を介するネットワークの場合が考えられる。
【0104】
本実施例で印刷装置300は、その製造番号と現在のアドレスとを伝える事前通信を、仲介サーバ200に対して行う。仲介サーバ200はこれによって、通信元の印刷装置300を特定して、それとの接続を確立することができる。
【0105】
印刷装置300を特定するために、仲介サーバ200の固有情報蓄積部207は、印刷装置300の製造番号を予め蓄積している。蓄積された製造番号は、事前通信で送付された製造番号と対比されて、通信元の印刷装置300が特定される。製造番号の登録は、図4のインタフェースと同様のインタフェースで行う。ただし、印刷装置300のアドレスは不定であるので、アドレスに代えてその製造番号が登録される。このインタフェースの画面例250を図9に併せて付した。なお、先の実施例で、不具合情報を送付する条件の判定に利用する目的で、「電源OFF許容期間」データを利用していた。本実施例ではこれに代えて、「接続断絶許容期間」を登録する。登録画面で登録する他のデータは、先の実施例におけるプリンタを登録する画面210のものと同様である。
【0106】
仲介サーバ200は、印刷装置300からの事前通信によって、印刷装置300との接続を確立することができる。その後、接続は保持され続けるが、印刷装置300がネットワークNETとの接続を失った時には、当然に仲介サーバ200との接続も失われる。また、印刷装置300のアドレスが変更された場合も、当然に仲介サーバ200との接続も失われる。仲介サーバ200は、事前通信で印刷装置300との接続を確立した後、接続が正常に保持され続けているか否かを調べる。接続の断絶を検知した場合には、後述のように所定の処理を行う。
【0107】
なお、接続の保持のために、通信プロトコルなどによっては、十分に短い期間ごとの空パケット送付その他の接続保持処理が必要となる場合もある。この処理は、仲介サーバ200と印刷装置300とのいずれか一方が主導的に担うことも考えられる。この時、仲介サーバ200は、接続保持処理の不成功や途絶その他の不具合から、印刷装置のアドレス変更等による接続の断絶を検知することも考えられる。
【0108】
また本実施例では、事前通信に基づいて確立される通信であって印刷要求に用いる通信の種類としては様々な場合が考えられる。印刷プロトコルIPP(Internet Printing Protocol)を用いたり、lpr/lpd方式を用いたり、先の実施例のHTTP、FTP(File Transfer Protocol)、その他のプロトコルを用いる方式などは、いずれも適用可能である。
【0109】
図10は、第2実施例の事前通信のタイミングの例を示す説明図である。事前通信は新しいアドレスが確定する度に行われる。例えば、電源投入後や、断絶した接続の回復の後、あるいはユーザ入力に基づくアドレス割り振りの要求の後などに新規のアドレスが確定する。これに応じて印刷装置300は、仲介サーバ200に対する事前通信を行う。
【0110】
図10の例では、タイミングSc0の電源投入に応じて、印刷装置300の通信部301(図3を参照)が、ネットワークNETに接続する新規アドレスを確保する(タイミングSc2)。例えば先の図9におけるアドレス「adr1」での接続を確保する。印刷装置300はタイミングSc2の事前通信によって、このアドレス「adr1」を、仲介サーバ200に通知するとともに、仲介サーバ200と印刷装置300との接続を確立する。事前通信にあたっては、通信元の印刷装置300を特定するために、印刷装置300の製造番号が送付される。
【0111】
タイミングSc2で事前通信を受けた仲介サーバ200は、受領した製造番号を検索キーとして、固有情報蓄積部207のサーチを行う。これによって、印刷装置300にかかるデータを発見し、アドレス「adr1」を登録する(図10中のデータdat1を参照)。印刷装置300にかかるデータは、先のインタフェース画面250で予め登録されている。
【0112】
タイミングSc3では、印刷装置300と仲介サーバ200との接続が断絶する。これは、例えば、ネットワークNETに障害が発生する場合や、印刷装置300へのユーザ入力に基づく場合が考えられる。この後ステップSc4で仲介サーバ200は、印刷装置300との接続の断絶を検知する。断絶検知の詳細については上述している。仲介サーバ200はこれに応じて、先にタイミングSc2で登録したアドレス「adr1」を無効化する(図10中のデータdat4を参照)。なお、接続の断絶を検知した仲介サーバ200はここでの説明とは別に、後述のように、不具合情報送付のための処理も併せて行う。ここでは、説明の便宜上この処理を除いて示している。
【0113】
タイミングSc5では、再び、印刷装置300で、ネットワークNETとの接続が確立されて、新たなアドレス「adr2」が取得される。これに伴い印刷装置300は、タイミングSc6で、再び事前通信を行って、仲介サーバ200との接続を再確立する。仲介サーバ200は、先ほどと同様に印刷装置300との接続を検知して、固有情報蓄積部207を更新する(図10中のデータdat6を参照)。
【0114】
この例で仲介サーバ200は、タイミングSc2からタイミングSc3の期間、及び、タイミングSc6以後の期間で、印刷装置300に対する仲介印刷が可能である。これらの期間中に、パーソナルコンピュータ100からのプリンタ情報の要求があれば、印刷装置300が利用可能である旨の情報が送付される。
【0115】
図11は、第2実施例の仲介印刷処理のタイミングを示す説明図である。これは、先の実施例の場合(図5)とほぼ同様である。ただし、既述の通り、事前通信の態様に関わって若干異なる部分がある。
【0116】
本実施例で仲介サーバ200は、最後の事前通信で確立された接続が正常に維持されていることを検知して、印刷装置300への仲介印刷が可能である旨をパーソナルコンピュータ100側に送付する(タイミングSd11)。接続は、印刷装置300がタイミングSd00でアドレスを取得し、タイミングSd01で事前通信を行うことで確立される。ここに、確立された接続は、原則的に、タイミングSd11での接続検知時及び、タイミングSd13での実際の印刷仲介時まで継続して維持されている必要がある。もっとも、タイミングSd11の後に接続が断絶する場合も考えられるが、印刷仲介に必要な接続がタイミングSd13で維持されていれば十分である。なお、タイミングSd11で送付する印刷装置の情報については、タイミングSd11で接続状況等を実際に調べ直しても良いし、最新の過去における検知結果で済ませても良い。
【0117】
図12は、第2実施例の仲介印刷処理のインタフェースを示す説明図である。画面260は、先の実施例における図6の画面240に代えて示される画面である。この場合も、先の実施例の場合と同様に、実行ボタン263のクリックで仲介印刷を実行することができる。
【0118】
ここでは、登録名「自宅2」の印刷装置との接続断絶に対応して、接続断絶情報264が示される。ここに、接続断絶情報264中に示された断絶の時刻は、図10におけるタイミングSc4に対応する。一方で、登録名「自宅1」の印刷装置との接続維持に対応して、ネットワーク確認ボタン261が示されている。これのクリックにより、ネットワーク確認画面262を得て、印刷装置「自宅1」の現在のアドレスを確認することができる。
【0119】
図13は、第2実施例の不具合情報送付処理のタイミングを示す説明図である。タイミングSe3は図10におけるタイミングSc3の接続断絶であり、タイミングSe4は図10におけるタイミングSc4の断絶検知である。この断絶検知の後、所定の登録された期間を経過しても接続が回復されない場合に、先の実施例の場合と同様にして、不具合情報の通知が行われる。
【0120】
ここで、固有情報蓄積部207に蓄積された、この接続の対象である印刷装置300に対応するデータ209には、「接続断絶許容期間」が予め登録されている(図9の登録画面250参照)。タイミングSeIは、接続断絶のタイミングSe4の断絶検知から接続が回復されないまま、登録された期間を経過したタイミングである。これは、事前通信処理部203は、これを検知して対応する処理を行う。検知にあたっては、印刷装置300に対応するデータ209に記憶した、接続断絶のタイミングSe4の断絶検知の時刻と、タイミングSeIの現時刻との間隔が計算される。これと、データ209に予め登録された接続断絶許容期間とが比較される。
【0121】
タイミングSeIで許容期間の経過を検知されると、印刷装置300に対応するデータ209に予め登録された通知先ユーザアドレスに対して、不具合情報の通知が行われる。これは先の実施例と同様であり、不具合情報を通知する文面例280mのようなメールが、パーソナルコンピュータ100のユーザに届けられる。
【0122】
なお、ここに、事前通信の一定期間の途絶をもって接続断絶を検知する方式も考えられる。印刷装置のアドレスが定期的に変更されてその度に事前通信が行われる場合には、その定期的な事前通信の途絶をもって断絶が検知し得る。このときには、登録された接続断絶許容期間(図9の画面250を参照)が事前通信の間隔を特定するものとしてもよい。この方式は、仲介サーバ200の側からは断絶を検知することが困難又は不可能な環境の場合などに有効である。
【0123】
本実施例に従って仲介装置、サービス装置を構成すれば、クライアント及びサービス装置とが任意のタイミングで一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続される環境下であっても、所望するサービスを柔軟に実行することができる。本実施例で特に示したように、NATやPATといった動的なアドレス変換機構、またはダイヤルアップ接続などを利用する場合などに有効に利用できる。また、先の実施例の場合と同様に、サービス装置における状態の把握、サービス依頼、所望のサービス装置の検索、所定の状態の発生に対する監視・対応処理などが実現できる。
【0124】
本実施例の仲介装置は、ネットワーク上でのサービス装置のアドレスとは異なる情報を利用してサービス装置を特定する機能を備える。例えば、上記の説明で用いた「製造番号」のデータを用いてサービス装置を特定することができる。これによって、サービス装置に対する通信経路を特定するための情報が変更される場合であっても、サービス装置を特定結果に基づいて、ユーザの所望する上記状態把握やサービス依頼の実現処理を行うことができる。
【0125】
以上、実施例に基づき本発明に係る仲介装置、サービス装置等を説明してきたが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】印刷仲介システムの全体構成を示す説明図である。
【図2】仲介サーバの機能ブロック構成を示す説明図である。
【図3】印刷装置の機能ブロック構成を示す説明図である。
【図4】登録情報を送付するインタフェースを示す説明図である。
【図5】仲介印刷を行う処理のタイミングを示す説明図である。
【図6】仲介印刷を行う時のインタフェースを示す説明図である。
【図7】不具合情報を送付する処理のタイミングを示す説明図である。
【図8】不具合情報を受けるインタフェースを示す説明図である。
【図9】第2実施例におけるシステム構成を示す説明図である。
【図10】第2実施例における事前通信のタイミングの例を示す説明図である。
【図11】第2実施例における仲介印刷処理のタイミングを示す説明図である。
【図12】第2実施例における仲介印刷処理のインタフェースを示す説明図である。
【図13】第2実施例における不具合情報送付処理のタイミングを示す説明図である。
【符号の説明】
【0127】
100…パーソナルコンピュータ
200…仲介サーバ
300…印刷装置
201…通信部
202…サービス装置通信部
203…事前通信処理部
204…選択情報提供部
205…入力部
206…仲介部
207…固有情報蓄積部
210…登録情報を送付するインタフェース
209…印刷装置に対応するデータ
301…通信部
302…事前通信部
303…依頼受領部
304…サービス提供部
210…プリンタを登録する画面
211…ユーザアドレス入力欄
212…登録名入力欄
213…機種名入力欄
214…電源off許容期間を指定するチェックボックス
215…アドレス入力欄
216…登録ボタン
220…通知された不具合情報
230…印刷仲介開始画面
232…印刷対象入力欄
233…印刷開始ボタン
240…印刷装置選択画面
243…印刷実行ボタン
244…印刷不能情報表示
270…印刷を完了した画面
250…製造番号を含めて登録する画面
260…第2実施例での印刷装置選択画面
261…ネットワーク確認ボタン
262…ネットワーク確認画面
263…印刷実行ボタン
264…接続断絶情報
211…製造番号入力欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント及び所定のサービスを提供するサービス装置が任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続された環境下で、前記クライアントから前記サービス装置へのサービス依頼を仲介する仲介装置であって、
前記仲介に先立って、前記サービス装置から所定の事前通信を受信するとともに、該受信に基づき該サービス装置との通信を確立するサービス装置通信部と
前記通信が確立されたサービス装置を前記サービス依頼の仲介先として選択するための情報を前記クライアントに提供する選択情報提供部と、
前記サービス依頼および仲介先を入力する入力部と、
該サービス依頼を指定された仲介先に仲介する仲介部とを備える仲介装置。
【請求項2】
請求項1記載の仲介装置であって、前記通信は、前記サービス装置から前記仲介装置に接続することで確立される仲介装置。
【請求項3】
請求項1記載の仲介装置であって、前記環境は、前記サービス装置との通信経路を特定する情報が変更される環境である仲介装置。
【請求項4】
請求項1記載の仲介装置であって、
前記サービス装置を特定する固有情報を蓄積する固有情報蓄積部を備え、
前記事前通信において受領する情報の少なくとも一部と前記固有情報との対比によって該サービス装置を特定する仲介装置。
【請求項5】
請求項4記載の仲介装置であって、
前記固有情報は前記ネットワークにおける前記サービス装置のアドレスとは異なる仲介装置。
【請求項6】
請求項1記載の仲介装置であって、
前記事前通信に基づいて確立されるべき通信の状態の検査を行い、その結果に基づいて前記サービス装置に対応付けられた所定の通知先に通知を行う事前通信処理部を備えた仲介装置。
【請求項7】
請求項6記載の仲介装置であって、
前記サービス装置と該サービス装置に対応付けられた通知先を特定する固有情報を蓄積する固有情報蓄積部を備え、
前記事前通信処理部は、前記事前通信において受領する情報の少なくとも一部と前記固有情報との対比から特定される通知先に通知を行う仲介装置。
【請求項8】
ネットワークを介してサービス依頼を受けて該サービスを提供するサービス装置であって、
外部にある所定の装置に対して所定の事前通信を送信するとともに、該送信に基づき、該サービス装置への通信を該所定の装置に確立させる事前通信部と、
前記所定の装置からのサービス依頼を、前記ネットワークを介して受領する依頼受領部と、
前記サービスを提供するサービス提供部とを備えたサービス装置。
【請求項9】
請求項8記載のサービス装置であって、前記事前通信を、常時と、断続的と、該サービス装置の所定の動作毎のうち少なくとも一つの態様で行うサービス装置。
【請求項10】
請求項8記載のサービス装置であって、前記事前通信を、少なくとも該サービス装置の電源投入と該サービス装置の切断されていた前記ネットワークへの接続の回復とのいずれかを契機として行うサービス装置。
【請求項11】
クライアント及び所定のサービスを提供するサービス装置とが任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続された環境下で、該ネットワークに接続されたコンピュータにより、前記クライアントから前記サービス装置へのサービス依頼を仲介する仲介方法であって、
前記仲介に先立って、前記サービス装置から所定の事前通信を受信するとともに、該受信に基づき該サービス装置との通信を確立する工程と
前記通信が確立されたサービス装置を前記サービス依頼の仲介先として選択するための情報を前記クライアントに提供する工程と、
前記サービス依頼および仲介先を入力する工程と、
該サービス依頼を指定された仲介先に仲介する工程とを備える仲介方法。
【請求項12】
ネットワークに接続されたコンピュータにより、該ネットワークを介してサービス依頼を受けて該サービスを提供するサービス提供方法であって、
外部にある所定の装置に対して所定の事前通信を送信するとともに、該送信に基づき、該サービス装置への通信を該所定の装置に確立させる工程と、
前記所定の装置からのサービス依頼を、前記ネットワークを介して受領する工程と、
前記サービスを提供する工程とを備えたサービス提供方法。
【請求項13】
仲介装置に、クライアント及び所定のサービスを提供するサービス装置とが任意のタイミングでの一対一接続をすることができない状態でネットワークに接続された環境下で、前記クライアントから前記サービス装置へのサービス依頼を仲介させるためのコンピュータプログラムであって、
前記仲介に先立って、前記サービス装置から所定の事前通信を受信するとともに、該受信に基づき該サービス装置との通信を確立する機能と
前記通信が確立されたサービス装置を前記サービス依頼の仲介先として選択するための情報を前記クライアントに提供する機能と、
前記サービス依頼および仲介先を入力する機能と、
該サービス依頼を指定された仲介先に仲介する機能とを前記仲介装置に実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
サービス装置に、ネットワークを介してサービス依頼を受けて該サービスを提供させるためのコンピュータプログラムであって、
外部にある所定の装置に対して所定の事前通信を送信するとともに、該送信に基づき、該サービス装置への通信を該所定の装置に確立させる機能と、
前記所定の装置からのサービス依頼を、前記ネットワークを介して受領する機能と、
前記サービスを提供する機能とを前記サービス装置に実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項13、14いずれか記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読みとり可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−102807(P2007−102807A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318185(P2006−318185)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【分割の表示】特願2001−306595(P2001−306595)の分割
【原出願日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】