説明

ネットワークセンサ装置

【課題】既存レーダシステムへの改修を最小限に抑えて、他センサシステム由来のセンサ情報と既存のレーダシステムの情報とを融合表示可能にする。
【解決手段】他センサシステム300からの時刻毎の当該他センサによる観測情報を、既存レーダシステム200の位置情報に基づいて既存レーダシステム向けの変換済他センサ観測情報に変換する情報変換部101と、センサ部203で観測し、表示部201で表示するようにした形式の自センサ観測情報を受信し、当該観測情報と変換済他センサ観測情報とを照合して自センサ観測情報の時刻列に合わせた時刻同期変換済他センサ観測情報を生成し、自センサ観測情報と時刻同期変換済他センサ観測情報の相関に従って観測対象の割り当てを行って融合センサ情報を算出し表示するために出力する融合部102を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠方に配置した他センサシステムから通信手段を介して取得した観測対象の位置情報を、主となる既存レーダシステムの情報と融合させて表示するネットワークセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダシステム(またはレーダ装置)は、ある時刻に観測対象がどの3次元位置(対象の観測位置を以下「プロット」と称する)にあるかを計測し、表示し、記録するための代表的な装置である。位置計測には誤差が必ず付随する。典型的なレーダシステムでは、レーダのビーム幅と、レーダパルスの発信から受信までの時間計測の精度とが、その誤差の原因となる。誤差のうち位置の誤差は、一般にレーダビーム幅方向の二次元ガウス分布とレーダからの距離方向のガウス分布の積で表現され、3次元のプロットを中心とする楕円体の形をとり、該楕円体は3行3列の誤差共分散行列で表される。
また、レーダシステムは、ある時刻の観測対象の速度、ただしレーダシステムからの距離方向成分を、ドップラー周波数の測定によって計測できることが多い。複数の時刻において観測対象の計測結果が得られている場合には、各時刻間について速度および速度誤差が得られ、速度誤差を含んだ6行6列の誤差共分散行列が得られる。この速度および速度誤差の観測には、一般に各時刻でのドップラー周波数計測結果が併用される。同様に、加速度および加速度誤差を考慮する場合もあり、そのときは加速度誤差を含んだ9行9列の誤差共分散行列が得られる。
【0003】
以下の説明の中で「他センサシステム」の例として登場する赤外線システムは、観測対象の2次元位置を計測する代表的な装置であり、実際には電子支援システム等を含むものとする。すなわち、ある時刻に観測対象がどの仰角・方位角の2次元で表現される位置にあるかを計測し、記録するための装置である。近接した複数の時刻における2次元位置を照合すること、あるいは観測角度と地表面やおおよその高度とを照合することによって、単体での3次元位置の計測もある程度可能だが、その3次元目の精度は単一時刻で得られる2つの次元の精度より劣るものとする。
また、「他センサシステム」の例として登場する方位探知システムは、観測対象の1次元位置を計測する代表的な装置とする。すなわち、ある時刻に観測対象がどの方位角という1次元で表現される位置にあるかを計測し、記録するための装置である。
【0004】
互いに離れた位置にある複数のレーダシステムで得られる観測情報を連携させて表示する技術については多数存在するが、その中に複数のセンサによるプロットを同時に表示する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−88947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にも示されるような、複数のレーダシステムで得られる観測情報を連携させて表示するレーダシステムを構築する場合、既存レーダシステムに対しては大幅な構成改修を要求することになるか、あるいは全く新規モデルとして製作しなければならない。既存レーダシステムを改修する場合には、改修費用および改修期間すなわち非稼動期間の両面から、改修規模はできる限り小さくすることが望まれるが、困難である。
また、既存レーダシステムの表示画面には、他レーダシステム以外に、赤外線システム、方位探知システムなどの他センサシステムによる観測情報(以下、「センサ情報」と称する)も連携して表示できるようにすることが望まれる。さらに、その際、既存レーダシステムによる情報と、設置位置、観測時刻の異なる他センサシステムのセンサ情報とを融合して表示できることが望まれる。また、好ましくは、表示装置の追加は、設置スペースの点から避け、既存レーダシステムの表示装置を用いて表示できるようにすることが望まれる。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、既存レーダシステムへの改修を最小限に抑えて、他センサシステム由来のセンサ情報と既存のレーダシステムの情報とを融合表示可能にするネットワークセンサ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のネットワークセンサ装置は、近くに置かれる既存レーダシステムとは信号分岐により接続され、遠隔に配置される他センサシステムとは通信手段により接続され、既存レーダシステムおよび他センサシステムで取得したセンサ情報を融合するネットワークセンサ装置であって、他センサシステムの信号処理部から時刻毎の当該他センサ自身の状況および当該他センサによる観測情報を受信し、既存レーダシステムの位置情報に基づいて他センサ観測情報を既存レーダシステム向けに変換して変換済他センサ観測情報を生成する情報変換部と、既存レーダシステムの信号処理部から、既存レーダシステム自身のセンサ部で観測し、既存レーダシステム自身の表示部で表示するようにした形式の自センサ観測情報を受信し、当該自センサ観測情報と情報変換部で変換された変換済他センサ観測情報とを照合して自センサ観測情報の時刻列に合わせた時刻同期変換済他センサ観測情報を生成し、自センサ観測情報と時刻同期変換済他センサ観測情報の相関がとれる場合には、当該相関に従って観測対象の割り当てを行って融合センサ情報を算出し、時刻同期変換済他センサ観測情報、自センサ観測情報および融合センサ情報を表示するために出力する融合部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、近くに置かれる既存レーダシステムとは信号分岐により接続され、遠隔に配置される他センサシステムとは通信手段により接続され、取得した他センサシステム由来の情報を既存レーダシステムで扱う形式の情報に変換し、観測対象毎の情報を融合して表示するようにしている。したがって、設置位置、観測時刻の異なる他センサシステム由来のセンサ情報と既存レーダシステムの情報を融合し表示可能にすると共に、そのための既存レーダシステムの構成の改修を最小限にして実現可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるネットワークセンサ装置を含むシステムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】同実施の形態1に係る赤外線システム由来情報等の表示例を示す説明図である。
【図3】同実施の形態1に係るネットワークセンサ装置の動作順序を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2によるネットワークセンサ装置を含むシステムの機能構成を示すブロック図である。
【図5】同実施の形態3に係る既存レーダシステムの表示部における融合センサ情報等の表示例を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態3によるネットワークセンサ装置を含むシステムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるネットワークセンサ装置を含むシステムの機能構成を示すブロック図である。
図において、ネットワークセンサ装置100は、既存レーダシステム200と他センサシステム300の間に配置され、それぞれと情報交換するように接続されている。ネットワークセンサ装置100は、既存レーダシステム200とほぼ同じ位置に設置され、既存レーダシステムとは信号分岐により接続されている。一方、ネットワークセンサ装置100は、遠隔の別の位置に配置される他センサシステム300とは通信手段(無線または有線による)により接続されている。ここで、他センサシステム300とは、既存レーダシステム200以外の、例えば他レーダシステム、赤外線システム、方位探知システムなどで、取得したセンサ情報は既存レーダシステム200の情報と融合するのに利用される。
【0012】
ネットワークセンサ装置100において、情報変換部101は、他センサシステム300の信号処理部302から通信により時刻毎の他センサ状況および他センサ観測情報を受信する。ここで、他センサ状況とは、他センサの自位置等である。また、他センサ観測情報とは、他センサシステム300によって取得される、例えば観測対象毎・時刻毎の位置情報ならびに誤差情報を指す。情報変換部101は、基本的には既存レーダシステム200と同じ位置に設置され、その位置情報を獲得する。例えば、既存レーダシステム200が据え置き型であれば、その位置の情報は準備作業で情報変換部101に入力されるものとする。この場合には位置は同じでなくてもよい。一方、既存レーダシステム200は、移動可能型であれば、GPS等の自位置測定手段を備える。
【0013】
他センサシステム300がレーダシステムである場合には、その信号処理部302からは、他センサ観測情報として、観測対象毎・時刻毎のプロットおよび誤差楕円体がネットワークセンサ装置100に送付される。また、他センサシステム300が赤外線システムの場合には、その信号処理部302からは、他センサ観測情報として、観測対象毎・時刻毎の2次元位置および誤差情報が送付される。さらに、他センサシステム300が方位探知システムである場合には、その信号処理部302からは、他センサ観測情報として、観測対象毎・時刻毎の1次元位置および誤差情報が送付される。
【0014】
情報変換部101では、既存レーダシステム200の位置および上記他センサ状況に基づいて、上記他センサ観測情報を、既存レーダシステムの位置を中心とする座標上の情報へと変換して、変換済他センサ観測情報を生成する。例えば位置Aの他センサシステム300で距離・方位角・仰角に観測された対象は、位置Bの既存レーダシステム200では別の距離・方位角・仰角に観測される。該位置・距離・方位角・仰角の関係は周知技術により計算される。信号処理部302から送付される情報に、時刻毎の他センサシステムの自位置誤差を含む場合も想定できる。これは各観測対象の誤差楕円体に該自位置誤差楕円体を反映することで考慮できる。
情報変換部101は、上記の生成した変換済他センサ観測情報を融合部102へ与える。
【0015】
融合部102は、信号処理部202から、既存レーダシステム200自身の表示部201に送付するよう加工した形式の自センサ観測情報を受信する。ここで、自センサ観測情報とは、既存レーダシステム200が自身のセンサ部203で観測した観測対象毎・時刻毎の位置情報ならびに誤差情報を指す。
これにより、信号処理部202における改修は、表示部201への接続を融合部102へ分岐するという変更だけであるため最小限で済む。
【0016】
融合部102では、情報変換部101からの上記変換済他センサ観測情報と信号処理部202からの上記自センサ観測情報とにおいて、各観測情報の時刻列を照合する。変換済他センサ観測情報の観測時刻列が、既存レーダシステム200の自センサ観測情報の観測時刻列と異なる場合には、該変換済他センサ観測情報の補間により、該自センサ観測情報の観測時刻列と同じ時刻の観測情報を算出した、時刻同期変換済他センサ観測情報を生成する。ここでの補間は、例えば一般的な線形外挿を適用する。すなわち、時刻aの観測情報Faと時刻bの観測情報Fbとがある場合、時刻cの観測情報Fcは、
Fc=Fb×(c−a)/(b−a)−Fa×(c−b)/(b−a)
となる。これにより、他センサ観測情報と既存レーダシステムの情報との融合が可能となる。
変換済他センサ観測情報の観測時刻列が、自センサ観測情報の観測時刻列と同じ場合には、そのまま観測情報同士を照合できるので、該変換済他センサ観測情報はそのまま時刻同期変換済他センサ観測情報となる。
【0017】
次に、融合部102は、時刻同期変換済他センサ観測情報と自センサ観測情報とを照合し、時刻同期変換済他センサ観測情報と自センサ観測情報の相関がとれる場合には、該相関に従って観測対象の割り当てを行い、各センサの観測精度および情報信頼性を考慮に入れて、融合センサ情報を算出する。ここで、融合センサ情報とは、対応のとれた単独あるいは複数の時刻同期変換済他センサ観測情報と自センサ観測情報とを照合して得られた、観測対象毎・時刻毎の位置および誤差を指す。なお、融合部102は、融合センサ情報を生成するにあたり、融合するセンサを選択できる。この選択は、観測精度や事前に与えられた各センサの情報信頼性によって決定することもできる。あるいは、他センサのみを融合することもできる。
【0018】
〈融合センサ情報の生成1〉
融合センサがレーダシステムのみの場合は、どのセンサシステムにおいても、位置の情報が3次元でとれる。この場合、融合センサ情報のうち、観測対象の位置は、各センサによる位置に対して、各センサの観測精度や位置情報信頼性で加重平均をとった値とする。融合センサ情報のうち、観測対象の誤差楕円体を表す誤差共分散行列は、各センサによる誤差共分散行列の逆行列に対して、各センサの誤差情報信頼性で加重平均をとった行列の逆行列とする。
【0019】
〈融合センサ情報の生成2〉
融合センサが赤外線システム1つだけの場合は、該赤外線システム中心視点において距離方向の情報が獲得できないため、該赤外線システムからの時刻同期変換済他センサ観測情報のうち、観測対象の位置は、可能性を示す直線で表されることになる。この場合、融合センサ情報のうち、観測対象の位置は、該可能性直線と既存レーダシステム200との距離が最短になる点とすることができる。あるいは、サンプルプロットのいずれかであるとすることができる。サンプルプロットとは、上記可能性直線上に所与の間隔をもって置かれた点を指す。
融合センサ情報のうち、観測対象の誤差楕円体は、該可能性直線を中心とする観測誤差円錐に、距離方向の所定の大きな誤差を与えた円錐台形に内接する楕円体として設定できる。
【0020】
〈融合センサ情報生成3〉
融合センサが赤外線システムのみ複数であった場合は、計算により距離方向のあいまい性が解消される場合がある。この場合、例えば、融合センサ情報のうち、観測対象の位置は、それぞれの可能性直線の交点とすることができる。融合センサ情報のうち、観測対象の誤差楕円体は、各赤外線システムの観測誤差のなす円錐の交わる領域に内接する楕円体とすることができる。
〈融合センサ情報生成4〉
融合センサがレーダシステムに加えて赤外線システム1つ含んでいる場合には、レーダシステムによる観測位置および誤差楕円体と、赤外線システムによる可能性直線および観測誤差円錐とから、融合センサ情報が計算できる。
〈融合センサ情報生成5〉
融合センサが赤外線システムを複数含んでいる場合には、含まれる赤外線システムが一つのレーダシステムを構成すると見なすことにより、他センサシステムとの融合センサ情報が計算できる。
【0021】
〈融合センサ情報生成6〉
融合センサが方位探知システム1つだけの場合は、該方位探知システム中心視点において距離方向および仰角方向の情報が獲得できないため、該方位探知システムからの時刻同期変換済他センサ観測情報のうち、観測対象の位置は、可能性を示す平面で表されることになる。この場合、融合センサ情報のうち、観測対象の位置は、該可能性平面と既存レーダシステム200との距離が最短になる点とすることができる。融合センサ情報のうち、観測対象の誤差楕円体は、該可能性平面を中心とする観測誤差に、距離方向および仰角方向の所与の大きな誤差を与えた円錐台形に内接する楕円体として設定できる。
〈融合センサ情報生成7〉
融合センサが方位探知システムを2つ含み、融合により2次元位置が計測できる場合には、含まれる方位探知システムが1つの赤外線システムを構成すると見なすことにより、他センサシステム300との融合センサ情報が計算できる。
【0022】
〈融合センサ情報生成8〉
融合センサが方位探知システムを3つ以上含み、融合により3次元位置が計測できる場合には、含まれる方位探知システムが1つのレーダシステムを構成すると見なすことにより、他センサシステム300との融合センサ情報が計算できる。
〈融合センサ情報生成9〉
融合センサがレーダシステムに加えて方位探知システムを1つ含んでいる場合には、レーダシステムによる観測位置および誤差楕円体と、方位探知システムによる可能性平面および観測誤差とから、融合センサ情報が計算できる。
融合部102は、上記融合センサ情報を表示部103へ送付する。併せて、時刻同期変換済他センサ観測情報、あるいは自センサ観測情報を、表示部103に送付することもできる。
【0023】
表示部103は、融合部102から融合センサ情報を受信するとこれを表示する。これにより、自センサ観測情報だけのときよりも精度の高い、あるいは範囲の広い情報を表示できる。
表示部103では、ユーザ入力手段を有し、時刻同期変換済他センサ観測情報が送付された場合には、上記融合センサ情報に加え、あるいは該ユーザ入力手段により切り換えて、該時刻同期変換済他センサ観測情報を表示することもできる。あるいは、自センサ観測情報が送付された場合には、それも加えて、あるいは該ユーザ入力手段により切り換えて、表示することもできる。
表示部103は、上記ユーザ入力手段により、表示範囲の指定を受ける。例えば、融合センサ情報を選択し、その範囲を既存レーダシステム200の周囲100km以内と指定すると、融合センサ情報のうち該既存レーダシステム200から距離100km以内の観測対象について表示を行う。あるいは、他センサシステム300を選択し、既存レーダシステム200の正面からの離角30度以内の2次元表示を指定すると、該他センサシステム300に由来する時刻同期変換済他センサ情報のうち、既存レーダシステム200から見た方位角と仰角が正面から離角30度以内の観測対象について、2次元にて表示を行う。あるいは、自センサ観測情報を選択し、既存レーダシステム200の正面からの仰角0度〜45度、距離100km以内と指定すると、該自センサ観測情報のうち、該既存レーダシステム200から距離100km以内かつ仰角0度〜45度以内の観測対象について表示を行う。
【0024】
表示部103では、赤外線システム由来情報および方位探知システム由来情報を表示することができる。ここで、赤外線システム由来情報とは、既存レーダシステム200宛に送付された、時刻同期変換済他センサ観測情報あるいは融合センサ情報のうち、赤外線システムのみに由来する情報である。3次元のうち1次元の情報が欠落しているか、あるいは他の2次元に比べ大きな誤差を持つ。また、方位探知システム由来情報とは、既存レーダシステム200宛に送付された、時刻同期変換済他センサ観測情報あるいは融合センサ情報のうち、方位探知システムのみに由来する情報である。3次元のうち2次元の情報が欠落しているか、あるいは測定した1次元に比べ大きな誤差を持つ。
これにより、レーダシステムでは観測しにくい観測対象の情報や、レーダシステムには観測できない範囲にいる観測対象の情報を表示できる。
【0025】
赤外線システム由来情報および方位探知システム由来情報の表示例を図2で説明する。図2(a)は、既存レーダシステムで直線を表示できる場合の例である。プロットA(401)は、通常のレーダによるプロットを示す。可能性直線402は、赤外線システム由来情報をこの画面へ射影した直線を示す。例えば、センサ404を中心とした距離一定以内を表示している場合において、センサ405からの赤外線システム由来情報が、可能性直線402に示す方向だった場合には、表示域内の該可能性直線を表示する。図2(a)は、また、センサ405が方位探知システムの場合の、水平面を表示する場合の例にもなっている。可能性直線402は、方位探知システム由来情報の可能性平面の水平断面を表している。
【0026】
図2(b)は、既存レーダシステムでプロットしか表示できない場合の例である。プロットA(401)は、図2(a)と同様、通常のレーダによるプロットを示す。サンプルプロット403は、赤外線システム由来情報の可能性直線上に分布するプロットである。該サンプルプロットの色・大きさ等の表示属性、および表示間隔等の分布のさせ方は、事前に決めておくこともできる。あるいは上記ユーザ入力手段により変更することもできる。図2(b)は、また、他センサシステムが方位探知システムの場合の、水平面を表示する場合の例にもなっている。サンプルプロット403は、方位探知システム由来情報の可能性平面の水平断面である直線上の点列となっている。
【0027】
図2(c)は、既存レーダシステムの表示が、ある既存レーダシステム視点で、ある表示仰角で規定される円錐面を表示する場合の例である。プロットA(401)は、図2(a)、(b)と同様、通常のレーダによるプロットを示す。サンプルプロット406は、赤外線システム由来情報の可能性直線上のうち、上記表示仰角に分布するプロットである。すなわち、表示仰角による円錐面と可能性直線の交点が表示される。図2(c)は、また、他センサシステムが方位探知システムの場合の表示例にもなっている。表示仰角による円錐面と可能性平面の交線は図の可能性曲線407のように示される。あるいは、サンプルプロットによって該可能性曲線上の点列として表示することもできる。
【0028】
図3はネットワークセンサ装置100の動作手順を示すフローチャートである。
情報変換部101は、他センサシステム300から、時刻毎の他センサ状況および他センサ観測情報を受け取ると、既存レーダシステム位置を中心とする座標上の情報へと変換して変換済他センサ観測情報を生成して融合部102へと送付する(ステップST1)。融合部102は、情報変換部101から受け取った変換済他センサ観測情報を受け取ると共に、既存レーダシステム200からも自センサ観測情報を受け取ると、変換済他センサ観測情報から時刻同期変換済他センサ観測情報を生成し、相関処理・融合処理を行って、融合センサ情報を算出し、該時刻同期変換済他センサ観測情報、自センサ観測情報と共に表示部103へ出力する(ステップST2)。表示部103は、融合部102から時刻同期変換済他センサ観測情報、自センサ観測情報、融合センサ情報を受け取り、またユーザ入力手段によってユーザから表示情報と表示範囲の指定を受け取り、いずれかを選択しあるいは重畳させて表示させる(ステップST3)。
【0029】
以上のように、この実施の形態1のネットワークセンサ装置100によれば、近くに置かれる既存レーダシステム200とは信号分岐により接続され、遠隔に配置される他センサシステム300とは通信手段により接続され、取得した他センサシステム由来の情報を既存レーダシステム200で扱う形式の情報に変換し、観測対象毎の情報を融合して表示部103で表示するようにしている。したがって、設置位置、観測時刻の異なる他センサシステム由来のセンサ情報と既存レーダシステムの情報を融合し表示可能にすると共に、そのための既存レーダシステム200の構成の改修を最小限にして実現可能にする。
【0030】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2によるネットワークセンサ装置を含むシステムの機能構成を示すブロック図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態2のネットワークセンサ装置100は、図1に示した表示部103の代わりに既存レーダシステム200の表示部201へ繋がる模擬信号部104を備えている。
模擬信号部104は、融合部102から、時刻同期変換済他センサ観測情報と自センサ観測情報の相関がとれた場合に算出された融合センサ情報を受け取り、この融合情報を既存レーダシステム200の表示部201で表示できるように、表示部201の仕様に基づいて加工する。また、模擬信号部104は、記加工した信号の情報を、ユーザ入力手段によって指定された表示する情報および表示する範囲に従って既存レーダシステム200の表示部201に送付して表示させる。
これにより、実施の形態1で説明したネットワークセンサ装置100の表示部103を省略し、装置を小型化できる。
【0031】
既存レーダシステム200の表示部201における融合センサ情報や時刻同期変換済他センサ観測情報の表示例を図5に示す。図5(a)は既存レーダシステムの平面表示の例であるが、例えば、ある仰角方向へ電波を放射しつつ、方位角方向を360度走査して、一定時間内に返ってくる電波までを表示するようにした場合である。レーダ単独覆域501は、既存レーダシステム200を中心として、ある仰角におけるある距離内の反射してくる範囲を示す。プロットA(502)およびプロットB(503)は、電波の返ってきた時間をもとに表示させた観測対象2つを示す。
【0032】
図5(b)は、既存レーダシステム200の表示部201に対し、模擬信号部104によって変換された模擬信号を入力することにより、覆域を拡大した例を示す。内側の円は、図5(a)におけるレーダ単独覆域501に相当している。拡大覆域504は、他センサシステム300によって観測しうる範囲を拡大表示部分として示している。プロットA(505)は、レーダ単独覆域501におけるプロットA(502)を、拡大覆域504上に変換した表示である。プロットB1(506)は、レーダ単独覆域502におけるプロットB(503)を、拡大覆域504上に変換した表示である。プロットB2(507)は、時刻同期変換済他センサ観測情報を、拡大覆域504上に表示したものである。この例では、時刻同期変換済他センサ観測情報と自センサ観測情報を併記している。融合部102において両者の融合がなされると、融合センサ情報として両者の中間位置にプロットBが表示される。プロットC(508)は、既存レーダシステム200の覆域外にあった時刻同期変換済他センサ観測情報を、拡大覆域504上に表示したものである。
図5(c)および図5(d)は、既存レーダシステム200の正面を中心とした表示における、拡大覆域表示の例を示している。距離方向の覆域拡大については、例えば表示プロットの表示属性を単独時から変更して表記することができる。
【0033】
以上のように、この実施の形態2のネットワークセンサ装置100によれば、実施の形態1における表示部103の代わりに模擬信号部104を設け、融合部102からの融合センサ情報、時刻同期変換済他センサ観測情報および自センサ観測情報を既存レーダシステム200の表示部201にて表示する形式の信号に加工し、ユーザ入力手段によって指定された表示する情報および表示する範囲に従って、当該加工した信号の情報を既存レーダシステム200の表示部201に送付して表示させるようにしている。したがって、設置位置、観測時刻の異なる他センサシステム由来のセンサ情報と既存レーダシステムの情報を融合し表示可能にすると共に、そのための既存レーダシステムの構成の改修を最小限にして実現可能にする。特に、この実施の形態2の場合、場所をとる表示部を付属しないので、その分の改修を少なく抑えることができる。
また、上記例において、既存レーダシステム200の信号処理部202の出力信号をそのまま表示部201に通す動作と、他センサシステム由来の情報ならびに融合情報を加工して表示部201へ渡す動作とを切り替えて使用できるようにしてもよい。
【0034】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3によるネットワークセンサ装置を含むシステムの機能構成を示すブロック図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態3では、既存レーダシステム200は、自位置測定部204および時刻測定部205を有している。
この実施の形態3において、ネットワークセンサ装置100の情報変換部101では、既存レーダシステム200の自位置測定部204との接続を通じて、信号処理部202が用いるのと同じ自位置情報を受ける。そして、実施の形態1で説明したように、この自位置情報に基づいて他センサ観測情報を既存レーダシステム200向けに変換して変換済他センサ観測情報を生成するようにしている。これにより、ネットワークセンサ装置100自身は、自位置測定機能を省略できるのでその分装置を小型軽量化できると共に、既存レーダシステム200との同期を密にする。
【0035】
また、融合部102では、既存レーダシステム200の時刻測定部205との接続を通じて、信号処理部202が用いるのと同じ時刻情報を受ける。そして、融合部102は、信号処理部202が時刻測定部205の時刻情報に沿って作成した自センサ観測情報と情報変換部101が生成した変換済他センサ観測情報とを照合して、自センサ観測情報の時刻列に合わせた時刻同期変換済他センサ観測情報を生成するようにしている。これにより、既存レーダシステム200の時刻がずれていたとしても、既存レーダシステム200内では整合のとれた表示が可能となる。また、融合部102は、自身内の時刻情報の取得手段を省略でき、その分小型軽量化が図れる。
【符号の説明】
【0036】
100 ネットワークセンサ装置、101 情報変換部、102 融合部、103 表示部、104 模擬信号部、200 既存レーダシステム、201 表示部、202 信号処理部、203 センサ部、204 自位置測定部、205 時刻測定部、300 他センサシステム、302 信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近くに置かれる既存レーダシステムとは信号分岐により接続され、遠隔に配置される他センサシステムとは通信手段により接続され、既存レーダシステムおよび他センサシステムで取得したセンサ情報を融合するネットワークセンサ装置であって、
他センサシステムの信号処理部から時刻毎の当該他センサ自身の状況および当該他センサによる観測情報を受信し、既存レーダシステムの位置情報に基づいて前記他センサ観測情報を前記既存レーダシステム向けに変換して変換済他センサ観測情報を生成する情報変換部と、
前記既存レーダシステムの信号処理部から、前記既存レーダシステム自身のセンサ部で観測し、前記既存レーダシステム自身の表示部で表示するようにした形式の自センサ観測情報を受信し、当該自センサ観測情報と前記情報変換部で変換された前記変換済他センサ観測情報とを照合して前記自センサ観測情報の時刻列に合わせた時刻同期変換済他センサ観測情報を生成し、前記自センサ観測情報と前記時刻同期変換済他センサ観測情報の相関がとれる場合には、当該相関に従って観測対象の割り当てを行って融合センサ情報を算出し、前記時刻同期変換済他センサ観測情報、前記自センサ観測情報および前記融合センサ情報を表示するために出力する融合部とを備えたことを特徴とするネットワークセンサ装置。
【請求項2】
ユーザ入力手段によって指定された表示する情報および表示する範囲に従って、融合部からの時刻同期変換済他センサ観測情報、自センサ観測情報および融合センサ情報を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1記載のネットワークセンサ装置。
【請求項3】
融合部からの時刻同期変換済他センサ観測情報、自センサ観測情報および融合センサ情報を既存レーダシステムの表示部にて表示する形式の信号に加工し、ユーザ入力手段によって指定された表示する情報および表示する範囲に従って、当該加工した信号の情報を前記表示部に送付して表示させる模擬信号部を備えたことを特徴とする請求項1記載のネットワークセンサ装置。
【請求項4】
情報変換部は、他センサ観測情報を既存レーダシステム向けに変換する際に、当該既存レーダシステムの位置測定部で取得した自位置情報に基づいて行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のネットワークレーダ装置。
【請求項5】
融合部は、時刻同期変換済他センサ観測情報を生成する際に合わせる自センサ観測情報の時刻列として、既存レーダシステムの時刻測定部の時刻情報を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のネットワークセンサ装置。
【請求項6】
他センサシステムは、既存レーダシステム以外の他レーダシステム、赤外線システムまたは方位探知システムとしたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のネットワークセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−243329(P2010−243329A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92104(P2009−92104)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】