説明

ノイズフィルタおよびノイズフィルタ回路

【課題】コモンモードノイズを低減させることができるノイズフィルタおよびノイズフィルタ回路を提供することを目的とする。
【解決手段】第3のコイル14を第1の出力用外部電極18を介して第1のコイル12に接続するとともに、第4のコイル15を第2の出力用外部電極19を介して第2のコイル13に接続し、一対の入力用外部電極16,17から同方向に信号を入力したとき第1のコイル12に流れる電流と第2のコイル13に流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ第3のコイル14に流れる電流と第4のコイル15に流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるノイズフィルタおよびノイズフィルタ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のノイズフィルタは、図6に示すように、第1、第2の磁性体層1,2と、前記第1の磁性体層1および第2の磁性体層2の間に設けられた第1〜第5の非磁性体層3a〜3eとを有し、前記第1〜第5の非磁性体層3a〜3eに第1、第2のコイル4,5を形成している。
【0003】
また、前記第1のコイル4は第1の引出電極6と渦巻き状の第1のコイル導体7とにより構成され、かつ第2のコイル5は渦巻き状の第2のコイル導体8と第2の引出電極9とにより構成されている。なお、前記第1の引出電極6は第1の非磁性体層3aの上面に、かつ第1のコイル導体7は第2の非磁性体層3bの上面に、さらに第2のコイル導体8は第3の非磁性体層3cの上面に、そして第2の引出電極9は第4の非磁性体層3dの上面にそれぞれ設けられているものである。
【0004】
そして、このノイズフィルタは、第1のコイル導体7と第2のコイル導体8を、第3の非磁性体層3cを介して対向させることによって、第1のコイル4と第2のコイル5を磁気結合させてコモンモード成分のインピーダンスを高くし、これにより、伝送線を通過するコモンモードノイズを反射させたり、内部で熱に変換させたりして、コモンモードノイズを除去するようにしていた。
【0005】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−60514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のノイズフィルタにおいては、反射したコモンモードが他の伝送線路に重畳したり、輻射したりする場合があるため、コモンモードノイズを低減させる効果が十分でないという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、コモンモードノイズを低減させることができるノイズフィルタおよびノイズフィルタ回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、積層された複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層に設けられた第1〜第4のコイルと、前記複数の絶縁層の側面に形成された一対の入力用外部電極、一対の出力用外部電極および一対のグランド用外部電極とを備え、前記第1のコイルを前記一対の入力用外部電極における一方の入力用外部電極と前記一対の出力用外部電極における一方の出力用外部電極とに接続し、前記第2のコイルを前記一対の入力用外部電極における他方の入力用外部電極と前記一対の出力用外部電極における他方の出力用外部電極とに接続し、前記第3のコイルを前記一方の出力用外部電極を介して前記第1のコイルに接続するとともに前記一対のグランド用外部電極における一方のグランド用外部電極に接続し、前記第4のコイルを前記他方の出力用外部電極を介して前記第2のコイルに接続するとともに前記一対のグランド用外部電極における他方のグランド用外部電極に接続し、前記一対の入力用外部電極から同方向に入力したとき前記第1のコイルに流れる電流と第2のコイルに流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ前記第3のコイルに流れる電流と第4のコイルに流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成したもので、この構成によれば、コモンモードノイズが第3のコイルと第4のコイルに流入した場合、第3のコイルと第4のコイルのコモンモードインピーダンスが小さいため、コモンモードノイズを反射させることなくグランドに流すことができ、これにより、コモンモードノイズを低減させることができる。また、差動信号が第3のコイルと第4のコイルに流入した場合、第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスが大きいため、第3のコイルと第4のコイルを通過する差動信号を低減させることができ、これにより、差動信号はグランドに流れることなく出力用外部電極から確実に出力されるという作用効果が得られるものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、第3のコイルと第4のコイルのインピーダンスを、第1のコイルと第2のコイルのインピーダンスより高くしたもので、この構成によれば、第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスを高くすることができるため、低周波帯域における差動信号が第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスによりグランドに流れるということはなくなり、これにより、広帯域で使用することができるという作用効果が得られるものである。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、第3のコイルと第4のコイルの巻数を、第1のコイルと第2のコイルの巻数より多くしたもので、この構成によれば、第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスを高くすることができるため、低周波帯域における差動信号が第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスによりグランドに流れるということはなくなり、これにより、広帯域で使用することができるという作用効果が得られるものである。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、第3のコイルと第4のコイルの線径を、第1のコイルと第2のコイルの線径より細くしたもので、この構成によれば、第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスを高くすることができるため、低周波帯域における差動信号がグランドに流れるということはなくなり、これにより、広帯域で使用することができるという作用効果が得られるものである。
【0013】
本発明の請求項5に記載の発明は、第1のコイルと第2のコイルからなる第1のコモンモードノイズフィルタと、第3のコイルと第4のコイルからなる第2のコモンモードノイズフィルタと、前記第1のコイルと第2のコイルの各一端部と接続された一対の入力端子と、前記第1のコイルと第2のコイルの各他端部と接続された一対の第1の出力端子と、前記第3のコイルと第4のコイルの各一端部と接続された一対の第2の出力端子とを備え、前記第1のコイルの他端部と前記第3のコイルの他端部とを接続するとともに、前記第2のコイルの他端部と前記第4のコイルの他端部とを接続し、前記一対の入力端子から同方向に信号を入力したとき前記第1のコイルに流れる電流と第2のコイルに流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ前記第3のコイルに流れる電流と第4のコイルに流れる電流とが互いに逆方向に流れるように前記第1のコモンモードノイズフィルタと第2のコモンモードノイズフィルタを接続したもので、この構成によれば、コモンモードノイズが第2のコモンモードノイズフィルタに流入した場合、この第2のコモンモードノイズフィルタを構成する第3のコイルと第4のコイルのコモンモードインピーダンスが小さいため、コモンモードノイズは第2のコモンモードノイズフィルタを通過してグランドに流れることになり、これにより、コモンモードノイズを低減させることができる。また、差動信号が第2のコモンモードノイズフィルタに流入した場合、この第2のコモンモードノイズフィルタを構成する第3のコイルと第4のコイルとのディファレンシャルインピーダンスが大きいため、第2のコモンモードノイズフィルタを通過する差動信号を低減させることができ、これにより、差動信号はグランドに流れることなく、出力端子から確実に出力されるという作用効果が得られるものである。
【0014】
本発明の請求項6に記載の発明は、特に、第3のコイルと第4のコイルのインピーダンスを、第1のコイルと第2のコイルのインピーダンスより高くしたもので、この構成によれば、第3のコイルと第4のコイルのディファレンシャルモードインピーダンスを大きくすることができるため、低周波帯域における差動信号がグランドに流れるということはなくなり、これにより、広帯域で使用することができるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明のノイズフィルタは、入力用外部電極から同方向に信号を入力したとき第1のコイルに流れる電流と第2のコイルに流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ第3のコイルに流れる電流と第4のコイルに流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成しているため、コモンモードノイズが第3のコイルと第4のコイルに流入した場合、第3のコイルと第4のコイルはコモンモードインピーダンスが小さくなり、これにより、コモンモードノイズを反射させることなくグランドに流すことができるため、コモンモードノイズを低減させることができる。また、差動信号が第3のコイルと第4のコイルに流入した場合、第3のコイルと第4のコイルとのディファレンシャルモードインピーダンスが大きいため、第3のコイルと第4のコイルを通過する差動信号を低減させることができ、これにより、差動信号がグランドに流れることなく出力用外部電極から確実に出力されるという優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1と5に記載の発明について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタの分解斜視図、図2は同ノイズフィルタの斜視図である。
【0018】
本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタは、図1、図2に示すように、積層された第1〜第8の絶縁層11a〜11hと、前記第1〜第8の絶縁層11a〜11hに設けられた第1〜第4のコイル12〜15とを備え、そして前記第1〜第8の絶縁層11a〜11hの側面には、図2に示すように、一対の入力用外部電極を構成する第1、第2の入力用外部電極16,17と、一対の出力用外部電極を構成する第1、第2の出力用外部電極18,19を形成している。
【0019】
また、前記第1〜第4のコイル12〜15は、前記第1、第2の入力用外部電極16,17から同方向に信号を入力したとき前記第1のコイル12に流れる電流と前記第2のコイル13に流れる電流とが互いに同方向に流れ、前記第3のコイル14に流れる電流と前記第4のコイル15に流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成している。
【0020】
上記構成において、前記第1〜第8の絶縁層11a〜11hは、上下方向に積層され、下から第1の絶縁層11a、第2の絶縁層11b、第3の絶縁層11c、第4の絶縁層11d、第5の絶縁層11e、第6の絶縁層11f、第7の絶縁層11g、第8の絶縁層11hの順に形成されている。また、この第1〜第8の絶縁層11a〜11hはFe23をベースとしたフェライトなどの磁性材料により構成されている。
【0021】
前記第1のコイル12は、第7の絶縁層11gの上面に渦巻き状に銀などの導電材料をめっきすることにより形成されている。また、この第1のコイル12の上面には第8の絶縁層11hが形成され、そしてこの第8の絶縁層11hの上面には第1の引出導体21が設けられている。また、この第8の絶縁層11hにはバイア電極22aが形成され、そしてこのバイア電極22aを介して前記第1のコイル12と第1の引出導体21を接続している。
【0022】
また、前記第1のコイル12は一端が第1の出力用外部電極18に接続され、かつ他端が第1の引出導体21を介して第1の入力用外部電極16に接続されている。
【0023】
前記第2のコイル13は、第7の絶縁層11gの下面側に位置する第6の絶縁層11fの上面に渦巻き状に銀などの導電材料をめっきすることにより形成されている。また、この第6の絶縁層11fの下面には第2の引出導体23が形成され、そしてこの第2の引出導体23の下面には第5の絶縁層11eが設けられている。また、前記第6の絶縁層11fにはバイア電極22bが形成され、そしてこのバイア電極22bを介して前記第2のコイル13と第2の引出導体23とを接続している。
【0024】
また、前記第2のコイル13は一端が第2の出力用外部電極19に接続され、かつ他端が第2の引出導体23を介して第2の入力用外部電極17に接続されている。
【0025】
前記第3のコイル14は、第3の絶縁層11cの上面に渦巻き状に銀などの導電材料をめっきすることにより形成されている。また、この第3のコイル14の上面には第4の絶縁層11dが形成され、そしてこの第4の絶縁層11dの上面には第3の引出導体24が設けられている。また、前記第4の絶縁層11dにはバイア電極22cが形成され、そしてこのバイア電極22cを介して前記第3のコイル14と第3の引出導体24とを接続している。
【0026】
また、前記第3のコイル14は一端が第1の出力用外部電極18に接続され、かつ他端が第3の引出導体24を介して第4の絶縁層11dの側面に形成された第1のグランド用外部電極25に接続されている。すなわち、第3のコイル14は第1の出力用外部電極18を介して第1のコイル12に接続され、そして第1の入力用外部電極16から印加された電流は、第1のコイル12、第1の出力用外部電極18を介して第3のコイル14にも流入するものである。
【0027】
前記第4のコイル15は、第3の絶縁層11cの下面側に位置する第2の絶縁層11bの上面に渦巻き状に銀などの導電材料をめっきすることにより形成されている。また、この第2の絶縁層11bの下面には第4の引出導体26が形成され、そしてこの第4の引出導体26の下面には第1の絶縁層11aが設けられている。また、前記第2の絶縁層11bにはバイア電極22dが形成され、そしてこのバイア電極22dを介して前記第4のコイル15と第4の引出導体26とを接続している。
【0028】
また、前記第4のコイル15は一端が第2の出力用外部電極19に接続され、かつ他端が第4の引出導体26を介して第2の絶縁層11bの側面に形成された第2のグランド用外部電極27に接続されている。すなわち、第4のコイル15は第2の出力用外部電極19を介して第2のコイル13に接続され、そして第2の入力用外部電極17から印加された電流は、第2のコイル13、第2の出力用外部電極19を介して第4のコイル15にも流入するものである。
【0029】
なお、前記第1〜第4のコイル12〜15の形状は、渦巻き状に限定されるものではなく、螺旋状、蛇行状等の他の形状であっても構わない。しかし、渦巻き状にすれば、1層当たりのターン数を増やすことができるため、薄型化が可能となるものである。また、第1〜第4のコイル12〜15、第1〜第4の引出導体21,23,24,26は、めっきで形成するのではなく、その他の印刷や蒸着等の方法で形成してもよい。
【0030】
さらに、前記第1の絶縁層11aの下部と第1の引出導体21の上部には、所定枚数のダミー絶縁層28がそれぞれ形成されているもので、これらのダミー絶縁層28および前記第1〜第8の絶縁層11a〜11hの枚数は、図1に示された枚数に限定されるものではない。
【0031】
そして、上記した構成により、図2に示すようなノイズフィルタの本体部29が形成され、かつこの本体部29の両側部には、前述した一対の入力用外部電極を構成する第1、第2の入力用外部電極16,17と、一対の出力用外部電極を構成する第1、第2の出力用外部電極18,19と、一対のグランド用外部電極を構成する第1、第2のグランド用外部電極25,27が銀を印刷することによって形成されている。また、これらの外部電極16,17,18,19,25,27の表面には、ニッケルめっき層、すずめっき層が施されている。
【0032】
図3は本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタを含む回路図を示したもので、第1、第2のコイル12,13からなる第1のコモンモードノイズフィルタ31と、第3、第4のコイル14,15からなる第2のコモンモードノイズフィルタ32は図3に示すように接続されているものである。
【0033】
すなわち、図3に示すノイズフィルタを含む回路図では、第1、第2のコイル12,13の各一端部と接続された一対の入力端子33,34と、第1、第2のコイル12,13の各他端部と接続された一対の第1の出力端子35,36と、第3、第4のコイル14,15の各一端部と接続された一対の第2の出力端子37,38とを備え、そして第1のコイル12の他端部と第3のコイル14の他端部とを接続するとともに、第2のコイル13の他端部と第4のコイル15の他端部とを接続し、前記一対の入力端子33,34から同方向に信号を入力したとき(コモンモードノイズが印加されたとき)第1のコイル12に流れる電流と第2のコイル13に流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ第3のコイル14に流れる電流と第4のコイル15に流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成されている。
【0034】
そして、上記したような回路を図1のように1パッケージ化することにより部品点数を減らすことができるものである。
【0035】
ここで、差動信号は通常、入力端子33,34(第1、第2の入力用外部電極16,17)から第1の出力端子35,36(第1、第2の出力用外部電極18,19)へ流れるが、第2の出力端子37,38(第1、第2のグランド用外部電極25,27)をグランドに接続することにより、コモンモードノイズをグランドに落とすことができ、また、差動信号がグランドに落ちるのも抑えることができるものである。
【0036】
次に、本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタの製造方法について説明する。
【0037】
図1、図2において、まず、それぞれの原材料である磁性材料の粉体および樹脂からなる混合物により、方形の第1〜第8の絶縁層11a〜11h、ダミー絶縁層28をそれぞれ所定枚数作製する。このとき、第2、第4、第6、第8の絶縁層11b,11d,11f,11hの所定箇所に、レーザ、パンチングなどで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して、バイア電極22a〜22dを形成する。
【0038】
次に、所定枚数のダミー絶縁層28の上面に、第1の絶縁層11aを配置する。
【0039】
次に、第1の絶縁層11aの上面に、第4の引出導体26をめっきによって形成する。
【0040】
次に、第4の引出導体26の上面に、バイア電極22dが設けられた第2の絶縁層11bを配置する。このとき、第4の引出導体26とバイア電極22dとを接続する。
【0041】
次に、この第2の絶縁層11bの上面に、第4のコイル15をめっきによって形成する。このとき、第4のコイル15とバイア電極22dとを接続する。
【0042】
次に、第4のコイル15の上面に、第3の絶縁層11cを配置し、その後、この第3の絶縁層11cの上面に、第3のコイル14をめっきによって形成する。
【0043】
次に、第3のコイル14の上面に、バイア電極22cが設けられた第4の絶縁層11dを配置する。このとき、第3のコイル14とバイア電極22cとを接続する。
【0044】
次に、第4の絶縁層11dの上面に、第3の引出導体24をめっきによって形成する。このとき、第3の引出導体24とバイア電極22cとを接続する。その後、第3の引出導体24の上面に第5の絶縁層11eを配置する。
【0045】
次に、第5の絶縁層11eの上面に、第2の引出導体23をめっきによって形成する。
【0046】
次に、第2の引出導体23の上面に、バイア電極22bが設けられた第6の絶縁層11fを配置する。このとき、第2の引出導体23とバイア電極22bとを接続する。
【0047】
次に、この第6の絶縁層11fの上面に、第2のコイル13をめっきによって形成する。このとき、第2のコイル13とバイア電極22bとを接続する。
【0048】
次に、第2のコイル13の上面に、第7の絶縁層11gを配置し、その後、この第7の絶縁層11gの上面に、第1のコイル12をめっきによって形成する。
【0049】
次に、第1のコイル12の上面に、バイア電極22aが設けられた第8の絶縁層11hを配置する。このとき、第1のコイル12とバイア電極22aとを接続する。
【0050】
次に、第8の絶縁層11hの上面に、第1の引出導体21をめっきによって形成する。このとき、第1の引出導体21とバイア電極22aとを接続する。
【0051】
なお、第1〜第4のコイル12〜15、第1〜第4の引出導体21,23,24,26の形成方法は、別途用意したベース板(図示せず)に所定パターン形状の導体をめっきによって形成し、その後、この導体を各絶縁層に転写することにより形成する。
【0052】
次に、第1の引出導体21の上面に、所定枚数のダミー絶縁層28を配置して本体部29を形成する。
【0053】
次に、本体部29を所定の温度、時間で焼成する。
【0054】
次に、本体部29の両側面に銀を印刷して、一対の入力用外部電極16,17、一対の出力用外部電極18,19、一対のグランド用外部電極25,27を形成する。
【0055】
最後に、各外部電極16〜19、25,27の表面に、めっきによってニッケルめっき層、すずめっき層を形成する。
【0056】
上記した本発明の実施の形態1においては、一対の入力用外部電極16,17から同方向に信号を入力したとき第1のコイル12に流れる電流と第2のコイル13に流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ第3のコイル14に流れる電流と第4のコイル15に流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成しているため、コモンモードノイズが第3のコイル14と第4のコイル15に流入した場合、第3のコイル14と第4のコイル15はコモンモードインピーダンスが小さくなり、これにより、コモンモードノイズは反射することなく通過してコモンモードノイズをグランドに流すことができるため、コモンモードノイズを低減させることができる。また、差動信号が第3のコイル14と第4のコイル15に流入した場合、第3のコイル14と第4のコイル15とのディファレンシャルモードインピーダンスが大きいため、第3のコイル14と第4のコイル15を通過する差動信号を低減させることができ、これにより、差動信号がグランドに流れるのを防止できるため、差動信号はほとんど損失なく出力用外部電極18,19から確実に出力されるものである。
【0057】
すなわち、第1、第2の入力用外部電極16,17からコモンモードノイズが印加されたとき、第1のコイル12に流れる電流と第2のコイル13に流れる電流とが互いに同方向(図1の場合、上面視にて反時計回り)に流れ、これにより、第1のコイル12と第2のコイル13が磁気結合してコモンモード成分のインピーダンスが高くなるため、コモンモードノイズを除去することができ、また第3のコイル14は第1の出力用外部電極18を介して第1のコイル12と接続され、かつ第4のコイル15は第2の出力用外部電極19を介して第2のコイル13と接続されているため、第3のコイル14と第4のコイル15にコモンモードノイズが流れる場合があるが、このような場合においても、上記したようにコモンモードノイズを除去できるもので、したがって、コモンモードノイズに対しては、2段階で除去することができるものである。一方、差動信号については、第1のコイル12に流れる電流と第2のコイル13に流れる電流とが互いに逆方向に流れるため、第1のコイル12と第2のコイル13が磁気を打ち消しあうように結合するため、差動信号は第1のコイル12と第2のコイル13を通過し、さらに、第3のコイル14と第4のコイル15に差動信号が流れてきても第3のコイル14と第4のコイル15は磁気を強め合うように結合する(ディファレンシャルモードインピーダンスが大きくなる)ため、差動信号は第3のコイル14と第4のコイル15を通過することができず、これにより、差動信号がグランドに落ちるのを防止できるため、差動信号が低減することはないものである。
【0058】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2〜4と6に記載の発明について説明する。
【0059】
図4は本発明の実施の形態2におけるノイズフィルタの斜視図である。なお、この本発明の実施の形態2においては、上記した本発明の実施の形態1と同様の構成を有するものについては、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
図4において、本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態1と相違する点は、第3、第4のコイル14,15の巻数を、第1、第2のコイル12,13の巻数より多くした点である。
【0061】
このような構成とすることにより、第3、第4のコイル14,15のインピーダンスを高くすることができるため、第3、第4のコイル14,15のディファレンシャルモードインピーダンスを大きくすることができ、これにより、低周波帯域での差動信号がグランドに流れるのも防止できるため、広帯域で使用できるという効果が得られるものである。
【0062】
図5は差動信号を流したときの周波数に対する挿入損失(伝送特性)について、第3、第4のコイル14,15の巻数と第1、第2のコイル12,13の巻数との差による比較をした比較図である。
【0063】
図5において、Aは第1〜第4のコイル12〜15の巻数がほぼ同一であるノイズフィルタの伝送特性を表し、Bは第3、第4のコイル14,15の巻数が第1、第2のコイル12,13の巻数の約1.5倍であるノイズフィルタの伝送特性を表したものである。なお、他の構造、材料は同一のものを使用しているものである。
【0064】
図5から明らかなように、第3、第4のコイル14,15の巻数を、第1、第2のコイル12,13の巻数より多くしたBの伝送特性の方が、Aの伝送特性に比べて、低周波帯域における差動信号の挿入損失が小さいことがわかる。
【0065】
なお、上記本発明の実施の形態2におけるノイズフィルタにおいては、第3、第4のコイル14,15のインピーダンスを高くするために、第3、第4のコイル14,15の巻数を、第1、第2のコイル12,13の巻数より多くしているが、第3、第4のコイル14,15の線径を、第1、第2のコイル12,13の線径より細くした場合でも、第3、第4のコイル14,15のインピーダンスを高くすることができるものである。
【0066】
また、上記本発明の実施の形態1,2におけるノイズフィルタにおいては、第1〜第4のコイル導体12〜15をそれぞれ1個設けたものについて説明したが、第1〜第4のコイル導体12〜15をそれぞれ複数形成し、アレイタイプとしてもよいものである。
【0067】
そしてまた、上記本発明の実施の形態1,2におけるノイズフィルタにおいては、説明の便宜上入力端子33,34(第1、第2の入力用外部電極16,17)、出力端子35,36,37,38(第1、第2の出力用外部電極18,19)という表現を用いたが、入力端子と出力端子が入れ替わっても同等の作用効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明にかかるノイズフィルタは、コモンモードノイズを低減させることができるという効果を有し、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるノイズフィルタやノイズフィルタ回路などにおいて有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同ノイズフィルタの斜視図
【図3】同ノイズフィルタを含む回路図
【図4】本発明の実施の形態2におけるノイズフィルタの分解斜視図
【図5】差動信号を流したときの周波数に対する挿入損失(伝送特性)について、第3、第4のコイルの巻数と第1、第2のコイルの巻数との差による比較をした比較図
【図6】従来のノイズフィルタの分解斜視図
【符号の説明】
【0070】
11a〜11h 絶縁層
12 第1のコイル
13 第2のコイル
14 第3のコイル
15 第4のコイル
16 第1の入力用外部電極
17 第2の入力用外部電極
18 第1の出力用外部電極
19 第2の出力用外部電極
25 第1のグランド用外部電極
27 第2のグランド用外部電極
31 第1のコモンモードノイズフィルタ
32 第2のコモンモードノイズフィルタ
33,34 入力端子
35,36 第1の出力端子
37,38 第2の出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の絶縁層と、前記複数の絶縁層に設けられた第1〜第4のコイルと、前記複数の絶縁層の側面に形成された一対の入力用外部電極、一対の出力用外部電極および一対のグランド用外部電極とを備え、前記第1のコイルを前記一対の入力用外部電極における一方の入力用外部電極と前記一対の出力用外部電極における一方の出力用外部電極とに接続し、前記第2のコイルを前記一対の入力用外部電極における他方の入力用外部電極と前記一対の出力用外部電極における他方の出力用外部電極とに接続し、前記第3のコイルを前記一方の出力用外部電極を介して前記第1のコイルに接続するとともに前記一対のグランド用外部電極における一方のグランド用外部電極に接続し、前記第4のコイルを前記他方の出力用外部電極を介して前記第2のコイルに接続するとともに前記一対のグランド用外部電極における他方のグランド用外部電極に接続し、前記一対の入力用外部電極から同方向に入力したとき前記第1のコイルに流れる電流と第2のコイルに流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ前記第3のコイルに流れる電流と第4のコイルに流れる電流とが互いに逆方向に流れるように構成したノイズフィルタ。
【請求項2】
第3のコイルと第4のコイルのインピーダンスを、第1のコイルと第2のコイルのインピーダンスより高くした請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
第3のコイルと第4のコイルの巻数を、第1のコイルと第2のコイルの巻数より多くした請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
第3のコイルと第4のコイルの線径を、第1のコイルと第2のコイルの線径より細くした請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
第1のコイルと第2のコイルからなる第1のコモンモードノイズフィルタと、第3のコイルと第4のコイルからなる第2のコモンモードノイズフィルタと、前記第1のコイルと第2のコイルの各一端部と接続された一対の入力端子と、前記第1のコイルと第2のコイルの各他端部と接続された一対の第1の出力端子と、前記第3のコイルと第4のコイルの各一端部と接続された一対の第2の出力端子とを備え、前記第1のコイルの他端部と前記第3のコイルの他端部とを接続するとともに、前記第2のコイルの他端部と前記第4のコイルの他端部とを接続し、前記一対の入力端子から同方向に信号を入力したとき前記第1のコイルに流れる電流と第2のコイルに流れる電流とが互いに同方向に流れ、かつ前記第3のコイルに流れる電流と第4のコイルに流れる電流とが互いに逆方向に流れるように前記第1のコモンモードノイズフィルタと第2のコモンモードノイズフィルタを接続したノイズフィルタ回路。
【請求項6】
第3のコイルと第4のコイルのインピーダンスを、第1のコイルと第2のコイルのインピーダンスより高くした請求項5記載のノイズフィルタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−129291(P2007−129291A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317918(P2005−317918)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】