説明

ノイラミン酸誘導体の製造方法

ノイラミン酸誘導体の製造方法、ノイラミン酸誘導体の合成中間体およびその製造方法、ならびに、高純度のノイラミン酸誘導体を提供する。
【解決手段】
式(7)
【化118】


[式中、R3は、アルキルを示し;R4およびR5は、それぞれH、アルキル、フェニルを示すか、あるいは一緒となってテトラメチレン、ペンタメチレン、オキソを示す]で示される合成中間体化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイラミニダーゼ阻害作用を有するノイラミン酸誘導体の製造方法、ならびに、ノイラミン酸誘導体の合成中間体およびその製造方法に関する。また、本発明は、高純度のノイラミン酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)
【0003】
【化1】

【0004】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物またはその薬理上許容される塩は、優れたノイラミニダーゼ阻害活性を有し、インフルエンザの治療薬または予防薬として有用であることが知られている(特許文献1または2)。
【0005】
式(III)
【0006】
【化2】

【0007】
を有する化合物のトリフルオロ酢酸塩は、優れたノイラミニダーゼ阻害活性を有し、インフルエンザの治療薬または予防薬として有用であることが知られている(非特許文献1または2)。
【0008】
式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩に包含される式(Ia)を有する化合物[以下、「化合物(Ia)」ともいう;他の式についても同様である]の製造方法として、W法が知られている(特許文献1)。W法において、n−Hepは、1−ヘプチル基を示す。
【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩に包含される化合物(Ib)の製造方法として、X法が知られている(特許文献2)。化合物(IVk)は、W法の合成中間体である。X法において、n−Hepは、1−ヘプチル基を示す。
【0012】
【化5】

【0013】
化合物(III)のトリフルオロ酢酸塩である化合物(IIIa)の製造方法として、Y法が知られている(非特許文献1)。Y法における化合物(IVc)から化合物(IVe)まで、および、化合物(IVf)から化合物(IVh)までの工程は、W法と同様である。
【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
化合物(III)のトリフルオロ酢酸塩である化合物(IIIa)の製造方法として、Z法が知られている(非特許文献2)。Z法における化合物(IVf)から化合物(IVh)までの工程は、W法と同様であり、化合物(IVh)から化合物(IIIa)までの工程は、Y法と同様である。
【0017】
【化8】

【0018】
上記W法、Y法、または、Z法は、工業的製法の観点からは例えば以下のような改善され得る点を有する:
[W法]
(1)収率の低い工程が含まれるため通算収率が低い[化合物(Ia)の通算収率:0.2%];
(2)ヒドロキシ基のメチル化反応において副反応としてアセトアミド基のN−メチル化が起こる[化合物(IVb)の製造工程];
(3)効率の悪い酵素反応を含む[化合物(IVd)の製造工程];
(4)危険性の高い高温でのアジド化反応を含む[化合物(IVg)の製造工程];または、
(5)アシル化反応において、(a)カルボキシル基の保護が必要である、(b)2,3−ジアシル体が副生する、および、(c)試薬由来のオクタン酸を除去するためにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製が必要である[化合物(IVk)の製造工程];
[Y法]
(1)収率の低い工程が含まれるため通算収率が低い[化合物(Va)の収率:34%、および、化合物(Va)から化合物(IIIa)までの通算収率:10乃至23%;計3乃至8%];
(2)効率の悪い酵素反応を含む[化合物(IVd)の製造工程];または、
(3)危険性の高い高温でのアジド化反応を含む[化合物(IVg)の製造工程];
[Z法]
(1)収率の低い工程が含まれるため通算収率が低い[化合物(VIa)の収率:35%,および、化合物(VIa)から化合物(IIIa)までの通算収率:1乃至33%;計0.4乃至12%];
(2)高価なシリル保護基を用いる;
(3)ヒドロキシ基のメチル化反応において副反応としてアセトアミド基のN−メチル化が起こる[化合物(VIb)の製造工程];または、
(4)危険性の高い高温でのアジド化反応を含む[化合物(IVg)の製造工程]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6340702号明細書(対応する日本特許:特許第3209946号)
【特許文献2】米国特許第6844363号明細書(対応する日本特許出願:特開2002−012590)
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】T. Honda et al., Bioorganic Medicinal Chemistry Letters, 2002年,p.1921-1924
【非特許文献2】T. Honda et al., Bioorganic Medicinal Chemistry Letters, 2002年,p.1925-1928
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者らは、ノイラミン酸誘導体の製造方法について鋭意研究を行い、本発明の新規な合成中間体を経由するノイラミン酸誘導体の新規な製造方法は、公知の製造方法に比較して工業的観点から優れること、および、本製造方法により高純度のノイラミン酸誘導体が高収率で得られることを見出した。本発明は、上記知見に基づいて完成された。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、ノイラミニダーゼ阻害作用を有するノイラミン酸誘導体の製造方法、ならびに、ノイラミン酸誘導体の合成中間体およびその製造方法を提供する。また、本発明は、高純度のノイラミン酸誘導体を提供する。
【0023】
本発明は、下記A法に示されるノイラミン酸誘導体の製造方法を提供する。
【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
上記A法において、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示し、R3、R6、および、R7は、互いに独立してC1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する[ただし、化合物(6)におけるR4およびR5は、オキソ基を形成しない。なお、Acは、アセチル基を示し、Bocは、tert−ブトキシカルボニル基を示し、Phは、フェニル基を示す。これらの3つの基について、以下同様である。]。
【0027】
本発明は、一つの側面において、
[1]式(4)
【0028】
【化11】

【0029】
[式中、R3は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物を、式(5)
【0030】
【化12】

【0031】
[式中、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成し、R6は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物、または、式(6)
【0032】
【化13】

【0033】
[式中、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、または、ペンタメチレン基を形成する。]を有する化合物と反応させることによる、式(7)
【0034】
【化14】

【0035】
[式中、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物の製造方法であって、化合物(6)を用いる場合には、化合物(7)におけるR4およびR5は、一緒となってオキソ基を形成することはないものとする方法、
[2]式(4)を有する化合物を、式(5)を有する化合物と反応させることによる、式(7)を有する化合物の製造方法であって、R3が、メチル基であり、R4およびR5が一緒となって、オキソ基を形成し、式(5)を有する化合物が、ジメチルカルボナートである[1]に記載された製造方法、
[3]式(7)
【0036】
【化15】

【0037】
[式中、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物、
[4]R3が、メチル基であり、R4およびR5が一緒となって、オキソ基を形成する[3]に記載された化合物、
[5]式(8)
【0038】
【化16】

【0039】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物を、ルイス酸の存在下にてトリメチルシリルアジドと反応させることによる、式(9)
【0040】
【化17】

【0041】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物の製造方法、
[6]R2が、メチル基であり、R3が、メチル基であり、R4およびR5が一緒となって、オキソ基を形成し、ルイス酸が、チタン(IV)イソプロポキシドである[5]に記載された製造方法、
[7]式(12)
【0042】
【化18】

【0043】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、水と反応させることによる、式(13)
【0044】
【化19】

【0045】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物の製造方法、
[8]R2が、メチル基である[7]に記載された製造方法、
[9]式(13)
【0046】
【化20】

【0047】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物、
[10]R2が、メチル基である[9]に記載された化合物、
[11]式(13)
【0048】
【化21】

【0049】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物またはその薬理上許容される塩と反応させることによる、式(I)
【0050】
【化22】

【0051】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0052】
【化23】

[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩の製造方法、
[12]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基であり、R7が、メチル基である[11]に記載された製造方法、
[13]式(13)
【0053】
【化24】

【0054】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式(15)
【0055】
【化25】

【0056】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示し、Xは、Cl、Br、I、HSO、または、NOを示す]を有する化合物、および、式R7−OH[式中、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることによる、
式(I)
【0057】
【化26】

【0058】
[式中、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0059】
【化27】

【0060】
[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩の製造方法、
[14]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基であり、R7が、メチル基であり、Xが、Clである[13]に記載された製造方法、
[15][2]、[6]、および、[8]のいずれかに記載された製造方法の少なくとも一つを反応工程の一部に含む、式(Ib)
【0061】
【化28】

【0062】
[式中、Meは、メチル基を示し(以下、同様である)、式(Ib)を有する化合物は、式(IIb)
【0063】
【化29】

【0064】
を有する化合物を含有してもよい]を有する化合物またはその薬理上許容される塩の製造方法、
[16][4]および[10]のいずれかに記載された化合物の少なくとも一つを経由する、式(Ib)
【0065】
【化30】

【0066】
[式(Ib)を有する化合物は、式(IIb)
【0067】
【化31】

【0068】
を有する化合物を含有してもよい]を有する化合物またはその薬理上許容される塩の製造方法、
[17]化学純度が97重量%以上である式(I)
【0069】
【化32】

【0070】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0071】
【化33】

【0072】
[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]、[ここで、式(II)を有する化合物を含有する場合には、式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の混合物の化学純度が97重量%以上である]またはその薬理上許容される塩、
[18]化学純度が99重量%以上である[17]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[19]化学純度が99.5重量%以上である[17]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[20]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[17]乃至[19]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[21]式(VII)
【0073】
【化34】

【0074】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物の含有率が0.5重量%以下である式(I)
【0075】
【化35】

【0076】
[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0077】
【化36】

【0078】
[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩、
[22]式(VII)を有する化合物を、0.3重量%以下の量で含む[21]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[23]式(VII)を有する化合物を、0.1重量%以下の量で含む[21]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[24]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[21]乃至[23]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[25]式(VIII)
【0079】
【化37】

【0080】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む、式(I)
【0081】
【化38】

【0082】
[式中、R1は、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0083】
【化39】

【0084】
[式中、R1は、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩、
[26]式(VIII)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む[25]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[27]式(VIII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む[25]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[28]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[25]乃至[27]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[29]式(13)
【0085】
【化40】

【0086】
[式中、Rは、C1−Cアルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【0087】
【化41】

【0088】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0089】
【化42】

【0090】
[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩、
[30]式(13)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む[29]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[31]式(13)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む[29]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[32]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[29]乃至[31]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[33]式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の組成比が、重量比で90:10乃至100:0である[17]乃至[32]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[34]式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の組成比が、重量比で92:8乃至100:0である[17]乃至[32]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[35]式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の組成比が、重量比で95:5乃至100:0である[17]乃至[32]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[36]式(15)
【0091】
【化43】

【0092】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示し、Xは、Cl、Br、I、HSO、または、NOを示す]を有する化合物を、二層系を形成する溶媒中で、式R7−OH[式中、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることによる、
式R1C(OR7)3
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物の製造方法、
[37]二層系を形成する溶媒が、炭化水素類である[36]に記載された製造方法、
[38]二層系を形成する溶媒が、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンである[36]に記載された製造方法、または、
[39]R1が、1−ヘプチル基であり、R7が、メチル基であり、Xが、Clである[36]乃至[38]のいずれかに記載された製造方法、
[40][17]乃至[35]のいずれかに記載の化合物またはその薬理上許容される塩を有効成分として含有するインフルエンザの治療及または予防用組成物、
[41]式(13)
【0093】
【化44】

【0094】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物またはその薬理上許容される塩と反応させることにより製造される、化学純度が97重量%以上である式(I)
【0095】
【化45】

【0096】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0097】
【化46】

【0098】
[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]、[ここで、式(II)を有する化合物を含有する場合には、式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の混合物の化学純度が97重量%以上である]またはその薬理上許容される塩、
[42]化学純度が99重量%以上である、[41]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[43]化学純度が99.5重量%以上である、[41]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[44]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[41]乃至[43]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[45]式(13)
【0099】
【化47】

【0100】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることにより製造される、式(VII)
【0101】
【化48】

【0102】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【0103】
【化49】

【0104】
[式中、R1は、式(VII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0105】
【化50】

【0106】
[式中、R1は、式(VII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩、
[46]式(VII)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む[45]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[47]式(VII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む[45]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[48]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[45]乃至[47]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[49]式(13)
【0107】
【化51】

【0108】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることにより製造される、式(VIII)
【0109】
【化52】

【0110】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【0111】
【化53】

【0112】
[式中、R1は、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0113】
【化54】

【0114】
[式中、R1は、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩、
[50]式(VIII)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む[49]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[51]式(VIII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む[49]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[52]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[49]乃至[51]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物、
[53]式(13)
【0115】
【化55】

【0116】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることにより製造され、残存する原料化合物である式(13)
【0117】
【化56】

【0118】
[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【0119】
【化57】

【0120】
[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【0121】
【化58】

【0122】
[式中、R1は、式(I)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩、
[54]式(13)を有する化合物を0.3重量%以下に量で含む[53]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、
[55]式(13)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む[53]に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩、または
[56]R1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である[53]乃至[55]のいずれかに記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物
を提供する。
【0123】
本発明において、R1における「C1−C19アルキル基」は、1乃至19個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基、トリデカニル基、テトラデカニル基、ペンタデカニル基、ヘキサデカニル基、ヘプタデカニル基、オクタデカニル基、または、ノナデカニル基であり得、好適には、C5−C19アルキル基であり、より好適には、C5−C17アルキル基であり、さらに好適には、ペンチル基、ヘプチル基、ノニル基、ウンデカニル基、トリデカニル基、ペンタデカニル基、または、ヘプタデカニル基であり、さらにより好適には、1−ペンチル基、1−ヘプチル基、1−ノニル基、1−ウンデカニル基、1−トリデカニル基、1−ペンタデカニル基、または、1−ヘプタデカニル基であり、最も好適には、1−ヘプチル基である。
【0124】
2における「C1−C4アルキル基」は、1乃至4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、または、ブチル基であり得、好適には、メチル基またはエチル基であり、最も好適には、メチル基である。
【0125】
3、R4、R5、R6、および、R7における「C1−C6アルキル基」は、1乃至6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、または、ヘキシル基であり得、好適には、C1−C4アルキル基であり、より好適には、メチル基またはエチル基であり、最も好適には、メチル基である。
【0126】
4およびR5は、好適には、水素原子またはC1−C4アルキル基であり、より好適には、メチル基またはエチル基であり、最も好適には、メチル基である。R4およびR5は、好適には、同一である。また、R4およびR5は、好適には、一緒となってオキソ基を形成する。
【0127】
本発明において、「薬理上許容される塩」は、例えば、フッ化水素酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩のような無機酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩のようなアルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、しゅう酸塩、マレイン酸塩のような有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩;リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩のような金属塩;または、アンモニウム塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、エチレンジアミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、プロカイン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩のような有機アミン塩もしくは有機アンモニウム塩であり得、好適には、ハロゲン化水素酸塩または有機酸塩であり、より好適には、トリフルオロ酢酸塩である。
【0128】
本発明の化合物は、大気中に放置する、または、水もしくは有機溶媒と混和すること等により、水和物または溶媒和物を形成し得る。これらの水和物または溶媒和物は、本発明の化合物に包含される。化合物(Ib)および化合物(IIb)は、その無水物および水和物を包含する。化合物(Ib)の水和物および化合物(IIb)の水和物は、好適には、一水和物である。
【0129】
本発明の化合物は、分子内に不斉炭素を有し、立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)が存在する。これらの立体異性体およびそれらの任意の割合の混合物(ラセミ体を含む)は、本発明の化合物に包含される。
【0130】
化合物(I)は、温血動物に投与されたとき、側鎖の3位のアシルオキシ基が加水分解等の代謝反応によりヒドロキシル基に変換され、生成した化合物(III)が薬理活性を示すことが知られている(特許文献1等)。また、化合物(II)が温血動物に投与されたとき、側鎖の2位のアシルオキシ基が加水分解等の代謝反応によりヒドロキシル基に変換され、同様に化合物(III)が生成する。温血動物の生体内では、化合物(I)および化合物(II)はいずれも活性代謝物である同一の化合物(III)へ変換されることから、化合物(I)および化合物(II)の混合物を医薬として使用する観点からは、いずれの化合物もが有効成分であると考えることができる。一方で、医薬は常に一定の薬理作用、ならびに、物理的および化学的安定性を示すことが求められるため、化合物(I)および化合物(II)の混合物の医薬としての品質の観点からは、それらの化合物の組成比が一定であることが好ましい。
【0131】
本発明において、化合物の化学純度、不純物としての化合物の含有率、または、化合物(I)および化合物(II)の混合物における組成比は、有機化学の分野において周知の方法(例えば、高速液体クロマトグラフィー、重量%等)、好適には、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCともいう)におけるピーク面積比率により決定され得る。HPLCの測定条件は、適宜選択され得るが、好適には、下記に示されるものである。
【0132】
HPLC測定条件(1)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×25cm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構製)
カラム温度:30℃
測定波長:210nm
移動相:
A:0.1% PIC B−7(Low UV、Waters社製)水溶液/アセトニトリル(9/1、v/v)
B:0.1mol/l リン酸塩緩衝液(pH3.0)/アセトニトリル(7/3、v/v)
[ただし、0.1mol/l リン酸塩緩衝液(pH3.0)は、0.1mol/l リン酸二水素カリウム水溶液に、0.1mol/l リン酸を加え、pHを3.0に調製した緩衝液を示す]
グラジエント条件:
__________________________
時間(分) 移動相A(%) 移動相B(%)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
0−3 100 0
3−23 100→0 0→100
23−90 0 100
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
流速:1ml/分
試料濃度:約1g/l
注入量:20μl
ピークを検出する範囲:0分から化合物(I)の保持時間の約1.2倍の時間まで
【0133】
HPLC測定条件(2)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×25cm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構製)
カラム温度:30℃
測定波長:210nm
移動相:0.1mol/l リン酸塩緩衝液(pH3.0)/アセトニトリル(23/17、v/v)
[ただし、0.1mol/l リン酸塩緩衝液(pH3.0)は、0.1mol/l リン酸二水素カリウム水溶液に、0.1mol/l リン酸を加え、pHを3.0に調製した緩衝液を示す]
流速:1ml/分
試料濃度:約1g/l
注入量:20μl
ピークを検出する範囲:化合物(I)の保持時間の約1.2倍の時間から約18倍の時間まで
【0134】
HPLC測定条件(1)では、0分から化合物(I)の保持時間の約1.2倍の時間までに検出される化合物(I)、化合物(II)、および、不純物としての化合物のピーク面積比率が測定される。HPLC測定条件(2)では、化合物(I)の保持時間の約1.2倍の時間から約18倍の時間までに検出される不純物としての化合物のピーク面積比率が測定される。ここで不純物としての化合物のピークは、0.01%以上として検出される全てのピークから、化合物(I)のピーク、化合物(II)のピーク、および、溶媒のみを注入した際に検出されるピーク[例えば、溶媒のピーク、ノイズに由来するピーク等]を除いたものを示す。
【0135】
化合物(I)の化学純度(%)は、下記式にしたがって算出することができる。
化合物(I)の化学純度
= 100−不純物としての化合物のピーク面積比率(%)の和
化合物(I)は、化合物(II)を含有してもよく、化合物(I)が化合物(II)を含有する場合は、化合物(I)および化合物(II)の混合物として化学純度が算出される。
【0136】
化合物(VII)の含有率は、HPLC測定条件(2)におけるピーク面積比率として算出することができる。化合物(VIII)および化合物(13)の含有率は、HPLC測定条件(1)におけるピーク面積比率として算出することができる。
【0137】
化合物(I)および化合物(II)のピーク面積比率は、上記HPLC測定条件(1)にしたがって測定することができる。化合物(I)および化合物(II)の混合物の組成比(%)は下記式にしたがって算出することができる。
化合物(I)の組成比
= [化合物(I)のピーク面積比率/[化合物(I)のピーク面積比率+化合物(II)のピーク面積比率]]×100
化合物(II)の組成比
= [化合物(II)のピーク面積比率/[化合物(I)のピーク面積比率+化合物(II)のピーク面積比率]]×100
【0138】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩の重量による化学純度は、好適には、95%以上であり、より好適には、97%以上であり、さらに好適には、98%以上であり、さらにより好適には、99%以上であり、最も好適には、99.5%以上である。化合物(I)は、化合物(II)を含有してもよく、化合物(I)が化合物(II)を含有する場合は、化合物(I)および化合物(II)のいずれをも有効成分として化学純度が算出される。化合物(I)[および化合物(II)]またはその薬理上許容される塩以外の化合物の含有量が検出限界以下であることが、より好適である。
【0139】
化合物(II)を含有してもよい化合物(I)において化合物(I)および化合物(II)の重量による組成比は、好適には、85:15乃至100:0であり、より好適には、90:10乃至100:0であり、さらに好適には、92:8乃至100:0であり、最も好適には、95:5乃至100:0である。式(II)を有する化合物の含有量が検出限界以下であってもよい。
【0140】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩において、化合物(VII)の重量による含有率は、好適には、2%以下であり、より好適には、1%以下であり、さらに好適には、0.5%以下であり、さらにより好適には、0.3%以下であり、最も好適には、0.1%以下である。化合物(VII)の含有量が検出限界以下であることが、より好適である。
【0141】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩において、化合物(VIII)の重量による含有率は、好適には、2%以下であり、より好適には、1%以下であり、さらに好適には、0.5%以下であり、さらにより好適には、0.3%以下であり、最も好適には、0.1%以下である。化合物(VIII)の含有量が検出限界以下であることが、より好適である。
【0142】
化合物(I)またはその薬理上許容される塩において、化合物(13)の重量による含有率は、好適には、2%以下であり、より好適には、1%以下であり、さらに好適には、0.5%以下であり、さらにより好適には、0.3%以下であり、最も好適には、0.1%以下である。化合物(13)の含有量が検出限界以下であることが、より好適である。
【0143】
A法に示される本発明は、公知の製造方法または合成中間体と比較して、例えば下記のような優れた点を有する。
【0144】
(i)W法の化合物(IVb)、および、Z法の化合物(VIb)の製造工程においては、原料である化合物(IVa)および化合物(VIa)にアセタミド基が存在するため、副反応としてN−メチル化が起こる。例えば、化合物(VIa)においては、N−メチル化された化合物が約12%生成する(比較例1に記載の化合物(VIa)のN−メチル化体のデータを参照)。
【0145】
これに対して、化合物(7)は、側鎖1位のヒドロキシル基以外にメチル化を受ける官能基がなく、化合物(7)のメチル化反応においては、副反応としてN−メチル化が起こらない。また、化合物(7)のオキサゾリジン環は、N−メチル化を防ぐ保護基、および、A−6工程において5位のアセタミド基へ変換される部分構造としての役割を同時に果たしている。また、化合物(7)は、結晶状の固体であるため、再結晶により簡便に精製することができる。したがって、化合物(7)は、側鎖1位のヒドロキシル基の効率的なメチル化、および、A法における工程数削減を達成することにより、A法における通算収率の向上に寄与している。
【0146】
(ii)W法、Y法、および、Z法における化合物(IVg)の製造工程においては、約6モルのアジ化ナトリウムを使用して、80℃以上の高温で反応を行っているため、アジド化合物の爆発性を考慮すると、特に工業的観点からは危険性が高い。また、4位における反応の立体選択性も十分なものではなく、化合物(IVg)および化合物(IVg)のアジド基が逆の配置を有する目的としない立体異性体の生成比は、約7:1である(比較例2を参照)。
【0147】
これに対して、化合物(8)のアジド化反応においては、ルイス酸を使用することによりアジド化試薬の使用量が約1.5乃至2当量へ削減され、0乃至30℃という非常に緩和な条件で反応が進行する。また、4位における反応の立体選択性が向上し、化合物(9)および目的としない立体異性体の生成比は、15:1へ改善される。(実施例1のA-6工程に記載のデータを参照)。
【0148】
したがって、化合物(8)から化合物(9)の製造方法は、アジド化反応における安全性の向上、および、目的とする異性体の立体選択的な製造を達成することにより、A法の工業的観点からの実用性を向上させている。
【0149】
(iii)Y法およびZ法における化合物(IIIa)は、腐食性のあるトリフルオロ酢酸の塩であり、また、アモルファス状の固体であるため、再結晶により簡便に精製することができない。
【0150】
これに対して、化合物(13)は、化合物(12)から緩和な条件下で水のみとの反応により製造され、また、結晶状の固体であるため、再結晶により簡便に精製することができる。工業的観点からすると、高純度の目的化合物を得るためには、製造の最終工程において可能な限り高純度の出発原料を使用することがきわめて重要である。したがって、化合物(13)は、最終工程における高純度の出発原料を提供することにより、高純度の化合物(I)の製造に寄与している。
【0151】
(iv)W法の化合物(IVk)および化合物(Ia)の製造工程においては、(a)カルボキシル基の保護が必要であり、(b)2,3−ジアシル体が副生し、また、(c)試薬由来のオクタン酸を除去するためにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製が必要である。一方、オルトエステルを用いたヒドロキシル基のアシル化反応として、以下の反応が知られている(Carbohydrate Research、1987年、第167巻、p.77-86)。Raは、C1−C4アルキル基等を示す。下記反応において、反応性の官能基はヒドロキシル基のみである。
【0152】
【化59】

【0153】
これに対して、より反応性の高いと考えられる窒素官能基(グアニジル基)の存在下での同様のアシル反応は知られていない。化合物(13)から化合物(I)の製造工程において、グアニジル基の存在下にてアシル化反応が収率よく進行する。本工程においては、(a’)カルボキシル基の保護が不要であり、(b’)選択的なモノアシル化が進行するため2,3−ジアシル体がほとんど副生せず、また、(c’)試薬由来の副生物のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる除去が不要である。したがって、化合物(13)から化合物(I)の製造方法は、高純度の化合物(I)の製造に大きく寄与している。
【0154】
(v)イミノエステルを用いたヒドロキシル基のアシル化反応は、これまで知られていない。化合物(13)から化合物(I)の製造工程は、オルトエステルである化合物(14)の代わりに、イミノエステルである化合物(15)、および、式R7−OHを有する化合物を使用することによっても行うことができる。公知の方法による化合物(14)の製造は収率が非常に低い[下記(vii)参照]。化合物(15)を直接使用することにより、効率の悪い化合物(15)から化合物(14)の製造工程を省略することができる。
【0155】
(vi)W法の化合物(IVk)および化合物(Ia)の製造工程においては、2,3−ジアシル体である化合物(VII)が副生し、高純度の化合物(Ia)を得るためには化合物(VII)の含有量の低減が必要である(比較例3を参照)。
【0156】
化合物(13)から化合物(I)の製造工程において、化合物(14)または化合物(15)を使用することにより選択的なモノアシル化反応が達成され、化合物(VII)の含有量が実用的な程度に少ない化合物(I)を製造することができる(実施例1のA-10工程参照)。
【0157】
したがって、化合物(13)から化合物(I)の製造方法は、高純度の化合物(I)の製造に大きく寄与している。
【0158】
(vii)化合物(14)の製造において、公知の方法(Journal of American Chemical Society、1942年、第64巻、p.1825-1827)にしたがって、式R7−OHを有する化合物を試薬および溶媒として用いて化合物(15)を反応させた場合、化合物(14)の収率は約35乃至50%である(比較例4を参照)。
【0159】
これに対して、化合物(15)を、二層系を形成する溶媒中で式R7−OHを有する化合物と反応させた場合、化合物(14)の収率は約80乃至85%へ飛躍的に向上する(実施例9を参照)。したがって、化合物(15)から化合物(14)の製造方法は、化合物(I)の製造に用いられる化合物(14)の効率よい製造方法を提供することにより、A法における通算収率の向上に寄与している。
【発明の効果】
【0160】
本発明における新規な合成中間体を経由するノイラミン酸誘導体の新規な製造方法は、公知の製造方法に比較して工業的観点から優れる。また、本製造方法により高純度のノイラミン酸誘導体が高収率で得られる。
【発明を実施するための形態】
【0161】
本発明において、ノイラミン酸誘導体の製造方法は、下記A法からG法にしたがって行うことができる。
【0162】
【化60】

【0163】
【化61】

【0164】
【化62】

【0165】
【化63】

【0166】
【化64】

【0167】
【化65】

【0168】
【化66】

【0169】
【化67】

【0170】
A法からG法において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、および、Xは、上記と同意義を示す。
【0171】
A法からG法の各工程の反応において使用される溶媒は、反応を阻害せず出発原料をある程度溶解するものであれば限定はなく、例えば、下記溶媒群より選択される。溶媒群は、ヘキサン、ペンタン、石油エーテル、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルのようなエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルのようなニトリル類;酢酸、プロピオン酸のようなカルボン酸類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールのようなアルコール類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホロアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;スルホランのようなスルホン類;水;および、これらの混合物からなる。
【0172】
A法からG法の各工程の反応において、反応温度は、溶媒、出発原料、試薬等により異なり、適宜選択される。また、反応時間は、溶媒、出発原料、試薬等により異なり、適宜選択される。
【0173】
A法からG法の各工程の反応において、反応終了後、各工程の目的化合物は、常法にしたがって反応混合物から単離され得る。目的化合物は、例えば、(i)必要に応じて触媒等の不溶物を除去し、(ii)反応混合物に水および水と混和しない溶媒(例えば、酢酸エチル等)を加えて目的化合物を抽出し、(iii)有機層を水洗して、必要に応じて無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥させ、(iv)溶媒を留去することによって得られる。得られた目的化合物は、必要に応じ、常法(例えば、再結晶、再沈澱、または、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)により、さらに精製することができる。また、各工程の目的化合物は精製することなくそのまま次の反応に使用することもできる。
【0174】
(A法)
A法は、式(I)を有する化合物[ただし、式(II)を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩の製造方法を示す。
【0175】
(A−1工程)
A−1工程は、公知の化合物(1)を酸の存在下にて、式R3OHを有するアルコール類と反応させて、化合物(2)を製造する工程である。式R3OHを有するアルコール類は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができ、好適には、メタノールである。
【0176】
使用される酸は、アルコール類を用いたカルボキシル基のエステル化反応に使用されるものであれば限定はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸のような有機酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機スルホン酸、または、塩化水素、臭化水素、沃化水素、リン酸、硫酸、硝酸のような無機酸であり得、好適には、無機酸であり、最も好適には、硫酸である。
【0177】
A−1工程において、反応を促進するために式HC(OR3)3を有する化合物を用いることができる。式HC(OR3)3を有する化合物は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができる。式HC(OR3)3を有する化合物は、好適には、オルトギ酸トリメチル[HC(OMe)3]である。式HC(OR3)3を有する化合物におけるR3は、好適には、式R3OHを有するアルコール類におけるR3と同一である。
【0178】
使用される溶媒は、好適には、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、または、式R3OHを有するアルコール類であり、より好適には、式R3OHを有するアルコール類であり、最も好適には、メタノールである。
【0179】
反応温度は、好適には、−20乃至100℃であり、より好適には、20乃至60℃である。
【0180】
反応時間は、好適には、30分間乃至40時間であり、より好適には、1乃至10時間である。
【0181】
(A−2工程)
A−2工程は、化合物(2)を酸の存在下にて、無水酢酸と反応させて、化合物(3)を製造する工程である。
【0182】
使用される酸は、テトラヒドロピラン環の2および3位における脱酢酸による炭素―炭素二重結合の形成、テトラヒドロピラン環の4および5位におけるオキサゾリン環の形成、ならびに、側鎖の1、2および3位におけるヒドロキシル基のアセチル化を進行させるものであれば限定はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸のような有機酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機スルホン酸、または、塩化水素、臭化水素、沃化水素、リン酸、硫酸、硝酸のような無機酸であり得、好適には、無機酸であり、最も好適には、硫酸である。
【0183】
使用される溶媒は、好適には、炭化水素類であり、最も好適には、1−ヘプタンである。A−2工程は、溶媒非存在下にて行うことも好適である。
【0184】
反応温度は、好適には、−20乃至100℃であり、より好適には、0乃至60℃である。
【0185】
反応時間は、好適には、30分間乃至60時間であり、より好適には、1乃至20時間である。
【0186】
(A−3工程)
A−3工程は、化合物(3)を式NaOR3を有する化合物と反応させて、化合物(4)を製造する工程である。
【0187】
A−3工程において、式NaOR3を有する化合物は、好適には、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドであり、最も好適には、ナトリウムメトキシドである。A−3工程において、式NaOR3を有する化合物の代わりに、式LiOR3もしくはKOR3を有する化合物を使用することもできる。式NaOR3、LiOR3もしくはKOR3を有する化合物におけるR3は、好適には、化合物(3)におけるR3と同一である。
【0188】
使用される溶媒は、好適には、アルコール類であり、より好適には、メタノールまたはエタノールであり、最も好適には、メタノールである。使用される溶媒は、好適には、式R3OH[式中、R3は、式NaOR3を有する化合物におけるR3と同一である]を有するアルコール類である。
【0189】
反応温度は、好適には、−20乃至70℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0190】
反応時間は、好適には、1分間乃至5時間であり、より好適には、5分間乃至1時間である。
【0191】
(A−4工程)
A−4工程は、化合物(4)を化合物(5)または化合物(6)と反応させて、化合物(7)を製造する工程である。化合物(5)または化合物(6)は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができる。
【0192】
A−4工程において、化合物(5)または化合物(6)は、好適には、化合物(5)が使用され、より好適には、ジメチルカルボナート[(MeO)2CO]、または、ジエチルカルボナートであり、最も好適には、ジメチルカルボナートである。
【0193】
A−4工程において、化合物(5)におけるR4とR5が一緒となってオキソ基を形成する化合物[(R6O)2CO]が使用される場合、好適には、さらに塩基が使用され得る。このような塩基は、1,2−ジオールの環状カルボナートへの変換反応に使用されるものであれば限定はなく、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムのようなアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属水酸化物;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミドのようなアルカリ金属アミド;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド;リチウムジイソプロピルアミドのようなリチウムアルキルアミド;リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミドのようなリチウムシリルアミド;または、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルピリジン、キノリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)のような有機アミンであり得、好適には、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド、または、アルカリ金属水素化物であり、より好適には、アルカリ金属アルコキシドであり、最も好適には、ナトリウムメトキシドである。
【0194】
A−4工程において、化合物(5)[ただし、式(R6O)2COを有する化合物を除く]または化合物(6)が使用される場合、好適には、さらに酸が使用され得る。このような酸は、1,2−ジオールの環状アセタールまたは環状ケタールへの変換反応に使用されるものであれば限定はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸のような有機酸、p‐トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機スルホン酸、または、塩化水素、臭化水素、沃化水素、リン酸、硫酸、硝酸のような無機酸であり得る。
【0195】
A−4工程において、化合物(5)におけるR4とR5が一緒となってオキソ基を形成する化合物[(R6O)2CO]が使用される場合、使用される溶媒は、好適には、アルコール類であり、より好適には、メタノールまたはエタノールであり、最も好適には、メタノールである。化合物(5)が使用される場合、使用される溶媒は、好適には、式R6OH[式中、R6は、化合物(5)におけるR6と同一である]を有するアルコール類である。また、使用される溶媒は、好適には、式R6OH[式中、R6は、化合物(5)におけるR6と同一である]を有するアルコール類である。
【0196】
A−4工程において、化合物(5)[ただし、式(R6O)2COを有する化合物を除く]または化合物(6)が使用される場合、使用される溶媒は、好適には、ハロゲン化炭化水素類、アミド類、または、ケトン類であり、より好適には、ケトン類であり、最も好適には、アセトンである。化合物(5)[ただし、式(R6O)2COを有する化合物を除く]が使用され、使用される溶媒がケトン類である場合は、その溶媒は、好適には、式(6)を有するケトン類である。
【0197】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0198】
反応時間は、好適には、30分間乃至60時間であり、より好適には、1乃至20時間である。
【0199】
(A−5工程)
A−5工程は、化合物(7)を塩基の存在下にて、式(R2O)2SO2を有する化合物と反応させて、化合物(8)を製造する工程である。式(R2O)2SO2を有する化合物は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができる。
【0200】
A−5工程において、式(R2O)2SO2を有する化合物は、好適には、ジメチル硫酸[(MeO)2SO2]である。
【0201】
使用される塩基は、ヒドロキシル基のアルキル化に使用されるものであれば限定はなく、例えば、A−4工程で示された塩基であり得、好適には、アルカリ金属水素化物であり、最も好適には、水素化ナトリウムである。
【0202】
使用される溶媒は、好適には、エーテル類、アミド類、または、これらの混合物であり、より好適には、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、または、これらの混合物であり、最も好適には、テトラヒドロフランおよびN,N−ジメチルアセトアミドの混合物である。
【0203】
反応温度は、好適には、−50乃至80℃であり、より好適には、−20乃至50℃である。
【0204】
反応時間は、好適には、10分間乃至20時間であり、より好適には、30分間乃至10時間である。
【0205】
(A−6工程)
A−6工程は、化合物(8)をルイス酸の存在下にて、トリメチルシリルアジドと反応させて、化合物(9)を製造する工程である。
【0206】
使用されるルイス酸は、オキサゾリジン環の開環を伴うアジド化反応を進行させるものであれば限定はなく、例えば、塩化亜鉛、臭化亜鉛のようなハロゲン化亜鉛類;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素のような三ハロゲン化ホウ素類、および、エーテル類またはチオエーテル類の錯体類;チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)2-エチルヘキソキシドのようなチタン(IV)アルコキシド類;ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール錯体、ジルコニウム(IV)ブトキシド、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシドのようなジルコニウム(IV)アルコキシド類;スカンジウム(III)イソプロポキシドのようなスカンジウム(III)アルコキシド類;スカンジウムトリフルオロメタンスルホナートのようなスカンジウム塩類;イットリウム(III)イソプロポキシドのようなイットリウム(III)アルコキシド類;イットリウムトリフルオロメタンスルホナートのようなイットリウム塩類;ガドリニウム(III)イソプロポキシド、ジスプロシウム(III)イソプロポキシド、イッテルビウム(III)イソプロポキシド、エルビウム(III)イソプロポキシドのようなランタノイドイソプロポキシド類;アルミニウムエトキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類であり得、好適には、チタン(IV)アルコキシド類であり、最も好適には、チタン(IV)イソプロポキシドである。
【0207】
使用される溶媒は、好適には、芳香族炭化水素類、アルコール類、またはこれらの混合物であり、より好適には、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、トルエン、またはこれらの混合物であり、最も好適には、2−メチル−2−プロパノールとトルエンの混合物である。
【0208】
反応温度は、好適には、−20乃至60℃であり、より好適には、0乃至30℃である。
【0209】
反応時間は、好適には、1乃至100時間であり、より好適には、5乃至30時間である。
【0210】
(A−7工程)
A−7工程は、(A−7a工程)化合物(9)をトリフェニルホスフィンで処理する工程;および、(A−7b工程)A−7a工程で得られた化合物を塩基および水で処理する工程を含む。
【0211】
(A−7a工程)
使用される溶媒は、好適には、エーテル類またはエステル類であり、より好適には、テトラヒドロフランまたは酢酸エチルであり、最も好適には、テトラヒドロフランである。
【0212】
反応温度は、好適には、−30乃至100℃であり、より好適には、0乃至70℃である。
【0213】
反応時間は、好適には、1分乃至20時間であり、より好適には、5分乃至5時間である。
【0214】
(A−7b工程)
使用される塩基は、エステル基の加水分解反応および環状カルボナート基の除去反応を進行させるものであれば限定はなく、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムのようなアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;または、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属水酸化物であり得、好適には、アルカリ金属水酸化物であり、より好適には、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり、最も好適には、水酸化ナトリウムである。
【0215】
使用される溶媒は、好適には、エーテル類、アルコール類であり、より好適には、テトラヒドロフラン、メタノールまたはエタノールであり、最も好適には、テトラヒドロフランである。
【0216】
反応温度は、好適には、−30乃至100℃であり、より好適には、0乃至70℃である。
【0217】
反応時間は、好適には、10分乃至20時間であり、より好適には、30乃至10時間である。
【0218】
化合物(9)の1,2−ジオールの保護基が環状アセタール、または環状ケタールの場合、A−7a工程で得られた化合物を塩基および水で処理後、反応混合物のpHを酸性側へ調整することによって、1,2−ジオール保護基の脱保護が行われる。
【0219】
(A−8工程)
A−8工程は、化合物(10)を化合物(11)と反応させて、化合物(12)を製造する工程である。化合物(11)は、F法にしたがって製造することができる。
【0220】
使用される溶媒は、好適には、水、アミド類、ケトン類、ニトリル類、アルコール類、または、これらの混合物であり、より好適には、水とアルコール類の混合物であり、最も好適には、水とメタノールの混合物である。
【0221】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0222】
反応時間は、好適には、1乃至160時間であり、より好適には、5乃至80時間である。
【0223】
(A−9工程)
A−9工程は、化合物(12)を水と反応させて、化合物(13)を製造する工程である。
【0224】
使用される溶媒は、好適には、アルコール類、水、または、これらの混合物であり、より好適には、メタノール、水、または、これらの混合物であり、最も好適には、水である。
【0225】
反応温度は、好適には、0乃至160℃であり、より好適には、50乃至110℃である。
【0226】
反応時間は、好適には、30分乃至20時間であり、より好適には、1乃至10時間である。
【0227】
A−8工程およびA−9工程においては、化合物(10)を式(23)
【0228】
【化68】

【0229】
を有する化合物またはその塩と反応させて、化合物(13)を製造することもできる。化合物(23)またはその塩は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができる。
【0230】
本工程において、化合物(23)またはその塩は、好適には、化合物(23)の塩酸塩である。本工程において、反応中のpHを制御する目的で、さらに塩基(好適には、有機アミン、アルカリ金属水酸化物、より好適には、アルカリ金属水酸化物)が使用され得る。
【0231】
使用される溶媒は、好適には、アルコール類、水、またはこれらの混合物であり、最も好適には、メタノールと水の混合物である。
【0232】
反応温度は、好適には、−20乃至70℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0233】
反応時間は、好適には、1乃至200時間であり、より好適には、10乃至100時間である。
【0234】
反応中のpHは、好適には、7乃至10であり、より好適には、7乃至9である。
【0235】
(A−10工程)
A−10工程は、化合物(13)を酸の存在下にて、化合物(14)と反応させて、化合物(I)[ただし、式(II)を有する化合物を含有してもよい]を製造する工程である。化合物(14)は、G法にしたがって製造することができる。
【0236】
A−10工程において、化合物(14)は、好適には、オルトオクタン酸トリアルキル[C715C(OR)3]であり、より好適には、オルトオクタン酸トリメチルである。
【0237】
使用される酸は、オルトエステルを用いたヒドロキシル基のアシル化反応を進行させるものであれば限定はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸のような有機酸、p‐トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機スルホン酸、または、塩化水素、臭化水素、沃化水素、リン酸、硫酸、硝酸のような無機酸であり得、好適には、有機スルホン酸または無機酸であり、より好適には、p−トルエンスルホン酸、硫酸、または塩化水素であり、最も好適には、塩化水素である。
【0238】
使用される溶媒は、好適には、アルコール類であり、最も好適には、メタノールである。使用される溶媒は、好適には、式R7OH[式中、R7は、化合物(14)におけるR7と同一である]を有するアルコール類である。
【0239】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0240】
反応時間は、好適には、5分乃至20時間であり、より好適には、10分乃至5時間である。
【0241】
A−10工程においては、化合物(13)を酸の存在下にて、化合物(15)、および、式R7−OHを有する化合物と反応させることにより、化合物(I)[ただし、式(II)]を有する化合物を含有してもよい]を製造することもできる。化合物(15)は、G法にしたがって製造することができる。
【0242】
本工程において、化合物(15)は、好適には、式(15a)
【0243】
【化69】

【0244】
を有する化合物である。
【0245】
使用される酸は、本反応を進行させるものであれば限定はなく、好適には、上記の有機スルホン酸または無機酸であり、より好適には、p−トルエンスルホン酸、硫酸または塩化水素であり、最も好適には、塩化水素である。
【0246】
使用される溶媒は、好適には、アルコール類であり、最も好適には、メタノールである。使用される溶媒は、好適には、式R7OH[式中、R7は、化合物(15)におけるR7と同一である]を有するアルコール類である。
【0247】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0248】
反応時間は、好適には、5分乃至20時間であり、より好適には、10分乃至5時間である。
【0249】
(B法)
A法における化合物(9)から化合物(12)の製造は、B法にしたがって行うこともできる。
【0250】
(B−1工程)
B−1工程は、化合物(9)をトリフェニルホスフィンおよび水を用いて還元して、化合物(16)を製造する工程である。
【0251】
使用される溶媒は、好適には、エーテル類またはエステル類であり、より好適には、テトラヒドロフランまたは酢酸エチルであり、最も好適には、酢酸エチルである。
【0252】
反応温度は、好適には、20乃至120℃であり、より好適には、50乃至90℃であ
る。
【0253】
反応時間は、好適には、10分乃至20時間であり、より好適には、30分乃至5時間である。
【0254】
(B−2工程)
B−2工程は、化合物(16)を化合物(11)と反応させて、化合物(17)を製造する工程である。
【0255】
使用される溶媒は、好適には、エーテル類またはエステル類であり、より好適には、テトラヒドロフランまたは酢酸エチルであり、最も好適には、酢酸エチルである。
【0256】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0257】
反応時間は、好適には、1乃至80時間であり、より好適には、5乃至40時間である。
【0258】
(B−3工程)
B−3工程は、化合物(17)を塩基で処理して、化合物(12)を製造する工程である。
【0259】
使用される塩基は、環状カルボナート基の除去反応およびエステル基の加水分解反応を進行させるものであれば限定はなく、例えば、A−7b工程に示されたアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物、または、アルカリ土類金属水酸化物であり得、好適には、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属水酸化物であり、より好適には、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムであり、最も好適には、炭酸カリウムである。
使用される溶媒は、好適には、アルコール類であり、より好適には、メタノールである。本工程において、水が存在することが好適である。
【0260】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0261】
反応時間は、好適には、30分乃至20時間であり、より好適には、1乃至10時間である。
【0262】
1,2−ジオールの保護基が環状アセタール、または環状ケタールの場合、化合物(17)の塩基処理後、反応混合物のpHを酸性側へ調整することによって、1,2−ジオール保護基の脱保護が行われる。
【0263】
(C法)
A法における化合物(8)から化合物(12)の製造は、C法にしたがって行うこともできる。
【0264】
(C−1工程)
C−1工程は、化合物(8)を式NaOR3を有する化合物と反応させて、化合物(18)を製造する工程である。
【0265】
C−1工程において、式NaOR3を有する化合物は、好適には、ナトリウムメトキシドである。
【0266】
C−1工程は、A−3工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0267】
(C−2工程)
C−2工程は、化合物(18)を酸または塩基の存在下にて、無水酢酸と反応させて、化合物(19)を製造する工程である。
【0268】
C−2工程において、酸を使用する場合は、A−2工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0269】
C−2工程において、塩基を使用する場合、使用される塩基は、好適には、A−4工程で示された有機塩基であり、より好適には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、またはこれらの混合物であり、最も好適には、トリエチルアミンと4−ジメチルアミノピリジンの混合物である。
【0270】
使用される溶媒は、好適には、芳香族炭化水素類、エステル類、もしくは、これらの混合物であり、より好適には、エステル類であり、最も好適には、酢酸エチルである。
【0271】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0272】
反応時間は、好適には、5分乃至10時間であり、より好適には、10分乃至5時間である。
【0273】
(C−3工程)
C−3工程は、化合物(19)をルイス酸の存在下にて、トリメチルシリルアジドと反応させて、化合物(20)を製造する工程である。
【0274】
C−3工程は、A−6工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0275】
(C−4工程)
C−4工程は、化合物(20)をトリフェニルホスフィンおよび水を用いて還元して、化合物(21)を製造する工程である。
【0276】
C−4工程は、B−1工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0277】
(C−5工程)
C−5工程は、化合物(21)を化合物(11)と反応させて、化合物(22)を製造する工程である。
【0278】
C−5工程は、B−2工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0279】
(C−6工程)
C−6工程は、化合物(22)を塩基で処理して、化合物(12)を製造する工程である。
【0280】
C−6工程は、B−3工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0281】
(D法)
A法における化合物(9)から化合物(13)の製造は、D法にしたがって行うこともできる。
【0282】
(D−1工程)
D−1工程は、化合物(9)をトリフェニルホスフィンおよび水を用いて還元して、化合物(16)を製造する工程である。
【0283】
D−1工程は、B−1工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0284】
(D−2工程)
D−2工程は、化合物(16)を化合物(23a)と反応させて、化合物(24)を製造する工程である。
【0285】
本工程において、反応中のpHを制御する目的で、さらに塩基(好適には、有機アミン、アルカリ金属水酸化物、より好適には、アルカリ金属水酸化物)が使用され得る。
【0286】
使用される溶媒は、好適には、アルコール類、水、またはこれらの混合物であり、最も好適には、メタノールと水の混合物である。
【0287】
反応温度は、好適には、−20乃至70℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0288】
反応時間は、好適には、1乃至200時間であり、より好適には、10乃至100時間である。
【0289】
反応中のpHは、好適には、7乃至10であり、より好適には、7乃至9である。
【0290】
(D−3工程)
D−3工程は、化合物(24)を塩基で処理して、化合物(13)を製造する工程である。
【0291】
D−3工程は、B−3工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0292】
(E法)
A法における化合物(10)から化合物(13)の製造は、E法にしたがって行うこともできる。
【0293】
(E−1工程)
E−1工程は、化合物(10)を化合物(23a)と反応させて、化合物(13)を製造する工程である。
【0294】
E−1工程は、D−2工程と同様の方法にしたがって行うことができる。
【0295】
(F法)
F法は、化合物(11)の製造方法を示す。
【0296】
(F−1工程)
F−1工程は、化合物(23a)を塩基の存在下にて、ジ−t−ブチル ジカルボナート(BocO)と反応させて、化合物(25)を製造する工程である。化合物(23a)は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができる。
【0297】
使用される塩基は、アミノ基のtert−ブトキシカルボニル基による保護反応に使用されるものであれば限定はなく、例えば、A−4工程において示されたアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、または、有機アミンであり得、好適には、有機アミンであり、最も好適には、N,N−ジイソプロピルエチルアミンである。
【0298】
使用される溶媒は、好適には、アミド類であり、最も好適には、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0299】
反応温度は、好適には、−30乃至80℃であり、より好適には、0乃至50℃である。
【0300】
反応時間は、好適には、30分乃至20時間であり、より好適には、1乃至5時間である。
【0301】
(F−2工程)
F−2工程は、化合物(25)を塩基と反応させて化合物(25)のアニオンを発生させ、次いでジ−t−ブチル ジカルボナートと反応させて、化合物(11)を製造する工程である。
【0302】
使用される塩基は、イミノ基のtert−ブトキシカルボニル基による保護反応に使用されるものであれば限定はなく、例えば、A−4工程において示されたアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アミド、アルカリ金属アルコキシド、リチウムアルキルアミド、リチウムシリルアミド、または、有機アミンであり得、好適には、アルカリ金属水素化物であり、最も好適には、水素化ナトリウムである。
【0303】
使用される溶媒は、好適には、エーテル類であり、最も好適には、テトラヒドロフランである。
【0304】
化合物(25)と塩基の反応温度は、好適には、−40乃至10℃であり、より好適には、−20乃至5℃である。
【0305】
化合物(25)と塩基の反応時間は、好適には、10分乃至5時間であり、より好適には、30分乃至2時間である。
【0306】
アニオンとジ−tert−ブチル ジカルボナートの反応温度は、好適には、20乃至120℃であり、より好適には、50乃至90℃である。
【0307】
アニオンとジ−tert−ブチル ジカルボナートの反応時間は、好適には、30分乃至10時間であり、より好適には、1乃至5時間である。
【0308】
(G法)
G法は、化合物(14)および化合物(15)の製造方法を示す。
【0309】
(G−1工程)
G−1工程は、化合物(26)を式HXを有する酸の存在下にて、式R7OHを有する化合物と反応させて、化合物(15)を製造する工程である。化合物(26)は、公知であるか、または、公知の化合物から容易に製造することができる。
【0310】
G−1工程において、式HXを有する酸は、好適には、塩化水素である。G−1工程において、式R7OHを有する化合物は、好適には、メタノールである。
【0311】
使用される溶媒は、好適には、エステル類、脂肪族炭化水素類、または芳香族炭化水素類であり、より好適には、エステル類であり、最も好適には、酢酸メチルである。
【0312】
反応温度は、好適には、−50乃至50℃であり、より好適には、−20乃至20℃である。
【0313】
反応時間は、好適には、1乃至100時間であり、より好適には、5乃至50時間である。
【0314】
(G−2工程)
G−2工程は、化合物(15)を式R7OHを有する化合物と反応させて、化合物(14)を製造する工程である。
【0315】
G−2工程において、式R7OHを有する化合物は、好適には、メタノールである。式R7OHを有する化合物におけるR7は、好適には、化合物(15)におけるR7と同一である。式R7OHを有する化合物の化合物(15)に対する容量比は、好適には、0.5乃至5であり、より好適には、1乃至3である。
【0316】
使用される溶媒は、好適には、二層系を形成する溶媒である。二層系を形成するとは、反応溶液中の式R7OHを有する化合物と溶媒が均一でない互いに分離した二つの層を形成し、反応溶液を適度に撹拌することにより、反応溶液中に存在する化合物がその脂溶性または水溶性に応じて、当該化合物をより溶解しやすい他方の層へ移動することができることをいう。使用される溶媒は、好適には、炭水化物類であり、より好適には、脂肪族炭水化物類または芳香族炭水化物類であり、さらに好適には、脂肪族炭水化物類であり、よりさらに好適には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、またはエチルシクロヘキサンであり、特に好適には、シクロヘキサン、またはメチルシクロヘキサンであり、最も好適には、メチルシクロヘキサンである。過剰量の式R7OHを有する化合物を溶媒として使用することもできる。
【0317】
メシルシクロヘキサンとメタノールの好適な混合比率(容量比)は、10:1乃至1:2であり、より好適には、5:1乃至1:1である。
【0318】
反応温度は、好適には、−20乃至90℃であり、より好適には、10乃至60℃である。
【0319】
反応時間は、好適には、30分乃至30時間であり、より好適には、2乃至15時間である。
【0320】
本発明のノイラミン酸誘導体(I)は、優れたノイラミニダーゼ阻害活性を有し、インフルエンザの治療薬または予防薬として有用であることが知られている(前述の特許文献1または2を参照)。
【0321】
本発明のノイラミン酸誘導体(I)を医薬、特にインフルエンザの治療薬または予防薬として使用する場合には、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤、軟膏剤、液剤、懸濁剤、エアゾール剤、トローチ剤等として投与することができる。本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与することができるが、有効成分である化合物(I)が肺または気道(口腔内及び鼻腔内を含む)へ直接送達され得る方法によって投与されることが好ましい。
【0322】
これらの製剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、懸濁化剤、希釈剤、製剤用溶剤の添加物を用いて周知の方法で製造される。
【0323】
その使用量は投与される者(温血動物、好ましくはヒト)の症状・体重・年齢等により異なるが、1日当たり下限0.1mg(好適には1mg)、上限1000mg(好適には、500mg)を、1日当り1乃至数回、症状に応じて投与することが望ましい。
【実施例】
【0324】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【0325】
(実施例1)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−2−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸[化合物(Ib)]の合成
A−1工程:N−アセチルノイラミン酸メチル
N−アセチルノイラミン酸(340.00g)にオルトギ酸トリメチル(116.67g)、メタノール(2720ml)を加えて懸濁させ、撹拌下、懸濁液に濃硫酸(8.63g)を室温で加え、40℃で3時間撹拌した。液量が約1530mlになるまで減圧下溶媒を留去し、反応液にジブチルエーテル(4420ml)を30℃で加え、同温度で1時撹拌した。さらに0℃で1時間撹拌後、結晶をろ過した。メタノール(170ml)とジブチルエーテル(510ml)の混液で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を白色固体として得た(342.11g、収率96.3%)。
MS (FAB): m/z 324 [M+H]+
HRMS (ESI): Exact mass calcd for C12H22NO9 [M+H]+ 324.12946, Found 324.12966
IR (KBr): 3340, 2938, 1741, 1638, 1553, 1438, 1375, 1279, 1127, 1033 cm-1
1H NMR (D2O, 500 MHz): 1.80 (1H, dd, J = 12.1, 12.9 Hz), 1.94 (3H, s), 2.20 (1H, dd, J = 5.0, 12.9 Hz), 3.44 (1H, dd, J = 1.0, 9.2 Hz), 3.51 (1H, dd, J = 6.2, 11.8 Hz), 3.62 (1H, ddd, J = 2.8, 6.2, 9.2 Hz), 3.73 (1H, dd, J = 2.8, 11.8 Hz), 3.73 (3H, s), 3.81 (1H, dd, J= 10.2, 10.2 Hz), 3.95 (1H, ddd, J = 5.0, 10.2, 12.1 Hz), 3.96 (1H, dd, J = 1.0, 10.2 Hz).
13C NMR (D2O, 125 MHz): 22.2, 38.7, 52.1, 53.6, 63.2, 66.7, 68.3, 70.2, 70.4, 95.4, 171.5, 174.9。
【0326】
A−2工程:(3aS,4R,7aR)−4−[(1S,2R)−1,2,3−トリアセトキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−1工程で得られた化合物(300.00g)にヘプタン(600ml)と無水酢酸(814.70g)を加えて懸濁させ、0℃に冷却し、撹拌下、濃硫酸(209.32g)を40℃以下で滴下した。40℃で4時間撹拌後、懸濁液を0℃に冷却し、トリエチルアミン(431.93g)を40℃以下で滴下した。0℃に冷却した水(1800ml)、26%アンモニア水(916.79g)とトルエン(4500ml)の混液に撹拌下、反応液を40℃以下で滴下し、25℃で1時間撹拌した。反応液を静置後、有機層を分離し、液量が約900mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0327】
A−3工程:(3aS,4R,7aR)−4−[(1R,2R)−1,2,3−トリヒドロキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−2工程で得られた化合物のトルエン溶液にメタノール(1800ml)と25.4%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(15.79g)を室温で加え、反応液を25℃で15分撹拌した。反応液を液量が約900mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のメタノール溶液を得た。
【0328】
A−4工程:(3aS,4R,7aR)−4−{(S)−ヒドロキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−3工程で得られた化合物のメタノール溶液にジメチルカルボナート(961.26g)を加え、混合物を25℃で1時間撹拌し、さらに55℃で5時間撹拌した。反応液を0℃に冷却後、同温度で5分間撹拌し、結晶をろ過した。メタノール(600ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を白色固体として得た(234.32g、収率80.6%)。
MS (FAB): m/z 314 [M+H]+
Anal. calcd for C13H15NO8: C, 49.84; H, 4.83; N, 4.47. Found C, 49.82; H, 4.58; N, 4.46.
IR (KBr): 3194, 1801, 1787, 1734, 1662, 1398, 1277, 1225, 1177, 1089, 988 cm-1
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 1.89 (3H, s), 3.24 (1H, dd, J = 2.0, 10.2 Hz), 3.72 (3H, s), 4.07 (1H, dd, J = 2.0, 2.9 Hz), 4.15 (1H, dd, J = 8.4, 10.2 Hz), 4.52 (1H, dd, J = 7.2, 12.8 Hz), 4.54 (1H, dd, J = 8.2, 12.8 Hz), 4.90 (1H, dd, J= 4.2, 8.4 Hz), 4.98 (1H, ddd, J = 2.9, 7.2, 8.2 Hz), 6.15 (1H, s), 6.27 (1H, d, J = 4.2 Hz).
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz): 14.3, 53.0, 61.0, 65.9, 67.5, 72.3, 78.3, 78.8, 108.1, 146.8, 155.3, 162.2, 166.3。
【0329】
A−5工程:(3aS,4R,7aR)−4−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−4工程で得られた化合物(20.00g)にテトラヒドロフラン(80ml)、N,N−ジメチルアセタミド(20ml)を加えて懸濁させ、懸濁液を0℃で15分間撹拌した。懸濁液に60%水素化ナトリウム(3.32g)を加えて、0℃で10分撹拌した後、硫酸ジメチル(11.27g)を加え、15℃で2.25時間撹拌した。反応液に酢酸(3.83g)、トルエン(200ml)を加え、混合物を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、有機層1と水層1を分離した。有機層1を水(10ml)で洗浄し、有機層2と水層2を分離した。水層1と水層2を合致し、トルエン(200ml)で抽出し有機層3を分離した。有機層2と有機層3を合致し、液量が約60mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0330】
A−6工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アジド−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
A−5工程で得られた化合物に2-メチル-2-プロパノール(20ml)とトリメチルシリルアジド(14.71g)を室温で加えた後、チタニウム(IV)イソプロポキシド(5.44g)を10℃で加え、混合物を20℃で20時間撹拌した(立体異性体比15:1)。反応液を0℃に冷却後、同温度で1時撹拌し、結晶をろ過した。トルエン(40ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を淡黄白色固体として得た(20.73g、収率87.7%、立体異性体比66:1)。
MS (FAB): m/z 371 [M+H]+
HRMS (ESI): Exact mass calcd for C14H19N4O8 [M+H]+ 371.12029, Found 371.12018
IR (KBr): 3314, 2106, 1795, 1731, 1668, 1550, 1379, 1285, 1180, 1075 cm-1
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): 1.89 (3H, s), 3.36 (3H, s), 3.71 (3H, s), 3.88 (1H, dd, J = 1.3, 2.0 Hz), 3.99 (1H, ddd, J = 8.9, 9.2, 10.6 Hz), 4.20 (1H, dd, J = 1.3, 10.6 Hz), 4.29 (1H, dd, J = 2.5, 9.2 Hz), 4.54 (1H, dd, J = 7.9, 12.2 Hz), 4.56 (1H, dd, J= 7.9, 12.2 Hz), 5.06 (1H, ddd, J = 2.0, 7.9, 7.9 Hz), 5.81 (1H, d, J = 2.5 Hz), 8.16 (1H, d, J = 8.9 Hz).
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz): 23.4, 47.0, 53.0, 59.0, 61.7, 66.1, 76.7, 77.7, 79.1, 108.6, 144.7, 155.0, 161.7, 170.1.
標記化合物とその立体異性体のピーク面積比率は以下のHPLC測定条件にて測定した。
HPLC測定条件(3)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×250mm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
測定波長:254nm
移動相:アセトニトリル:0.02mol/l酢酸アンモニウム水溶液=65:35
流速:1ml/分
標記化合物の保持時間:約6.3分
立体異性体の保持時間:約6.6分
【0331】
A−7工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アミノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸
A−6工程で得られた化合物(5.00g)にトリフェニルホスフィン(3.90g)とテトラヒドロフラン(20ml)を室温で加え、混合物を50℃で10分間撹拌した。反応液に水(12.5ml)と25%水酸化ナトリウム水溶液(6.48g)を50℃で加え、同温度で2時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、濃塩酸(2.74g)を加え、静置後水層を分離し、標記化合物の水溶液を得た。
【0332】
A−8工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−[2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸
A−7工程で得られた化合物の水溶液にtert−ブチル(tert−ブトキシカルボニルイミノピラゾール−1−イル−メチル)カルバマート(4.19g)とメタノール(40ml)を室温で加え、混合物を同温度で43時間撹拌した。反応液に水(12.5ml)を加え、濃塩酸でpHを8.35に調節した後、液量が約25mlになるまで減圧下溶媒を留去した。得られた溶液を酢酸エチル(25ml)で3度洗浄し、水層を分離した。水層のpHを2.75に濃塩酸で調節した後、酢酸エチル(45ml)で2度抽出した。有機層を合致し、液量が約20mlになるまで、減圧下溶媒を留去した。濃縮液に水(20ml)を加え、液量が約20mlになるまで、減圧下溶媒を留去し、標記化合物の水溶液を得た。
【0333】
A−9工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸
A−8工程で得られた化合物の水溶液を80℃で3.7時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、メタノール(50ml)を加え、混合物を同温度で1.25時間撹拌後、結晶をろ過した。メタノール(10ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を白色固体として得た(3.34g、収率71.4%)。
MS (FAB): m/z 347[M+H]+
Anal. calcd for C13H22N4O7: C, 45.08; H, 6.40; N, 16.18. Found C, 44.85; H, 6.16; N, 16.09.
IR (KBr): 3440, 3375, 3256, 1699, 1653, 1587, 1401, 1329, 1284, 1171, 1087, 1029 cm-1
1H NMR (D2O, 500 MHz): 1.94 (3H, s), 3.31 (3H, s), 3.45 (1H, dd, J = 1.5, 8.6 Hz), 3.57 (1H, dd, J = 5.6, 12.0 Hz), 3.78 (1H, dd, J = 3.0, 12.0 Hz), 3.88 (1H, ddd, J = 3.0, 5.6, 8.6 Hz), 4.10 (1H, dd, J= 9.7, 9.7 Hz), 4.30 (1H, dd, J = 1.5, 9.7 Hz), 4.30 (1H, dd, J = 2.2, 9.7 Hz), 5.52 (1H, d, J = 2.2 Hz).
13C NMR (D2O, 125 MHz): 22.1, 47.7, 51.8, 60.5, 62.5, 69.6, 75.7, 77.8, 104.0, 149.4, 157.0, 169.0, 174.2。
【0334】
A−10工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−2−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸[化合物(Ib)]
A−9工程で得られた化合物(3.00g)にメタノール(15ml)とオルトオクタン酸トリメチル(5.31g)を加え、懸濁させ、室温で1mol/l塩化水素メタノール溶液(9.3ml)を加えて、同温度で1時間撹拌した。液量が約10.5mlになるまで減圧下溶媒を留去し、水(30ml)を加え、酢酸エチル(15ml)で2度洗浄した。水層を分離し、16.5%炭酸ナトリウム水溶液でpHを7に調節し、反応液を室温で10分間撹拌後、16.5%炭酸ナトリウム水溶液でpHを8.8に調節し、同pHを維持しながら2時間撹拌した。次いで濃塩酸でpHを5.7に室温で調節し、同pHを維持しながら反応液を0℃で1時間撹拌した後、結晶をろ過した。水(12ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥した。空気雰囲気下、結晶を室温で5時間吸湿させ、粗製の標記化合物を白色結晶として得た(3.89g、収率95.1%)。粗製の標記化合物(2.00g)にメタノール(12ml)を加え、37℃で溶解させ、溶液にメタノール(2ml)と水(28ml)を同温度で加え、25℃で1時間撹拌した後、結晶をろ過した。メタノール(2ml)と水(4ml)の混液で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥した。空気雰囲気下、結晶を室温で5時間吸湿させ、標記化合物を白色結晶として得た(1.84g、収率92.0%、化学純度:99.72%、化合物(Ib):化合物(IIb)=97:3、化合物(13)[R=メチル基]の含有率:0.02%、化合物(VII)[R=1−ヘプチル基、R=メチル基]の含有率:0.08%、化合物(VIII)[R=1−ヘプチル基]の含有率:0.04%)。
MS (FAB): m/z 473[M+H]+
KF水分値: 3.9%
Anal. calcd for C21H36 N4O8.1.065H2O: C, 51.29; H, 7.82; N, 11.39. Found C, 51.21; H, 7.82; N, 11.32.
IR (KBr): 3334, 3289, 2929, 1736, 1665, 1640, 1401, 1325, 1283, 1173, 1114 cm-1
1H NMR (CD3OD, 500 MHz): 0.88 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.25 -1.34 (8H, m), 1.62 (2H, tt, J = 7.2, 7.5 Hz), 1.99 (3H, s), 2.35 (2H, t, J = 7.5 Hz), 3.38 (3H, s), 3.45 (1H, dd, J= 2.5, 8.2 Hz), 4.09 -4.14 (2H, m), 4.23 (1H, dd, J = 9.0, 9.0 Hz), 4.29 - 4.36 (3H, m), 5.55 (1H, d, J = 2.5 Hz).
13C NMR (CD3OD, 125 MHz): 13.1, 21.5, 22.3, 24.7, 28.8, 28.9, 31.5, 33.7, 47.8, 51.4, 60.0, 65.5, 67.4, 76.1, 78.9, 102.3, 150.3, 157.6, 168.1, 172.2, 174.1。
【0335】
(実施例2)
(3aS,4R,7aR)−4−{(S)−ヒドロキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル(化合物(7)[R,R=オキソ基])の合成
A−1工程:N−アセチルノイラミン酸メチル
N−アセチルノイラミン酸(1)(15.00g)にオルトギ酸トリメチル(5.14g)、メタノール(120ml)を加えて懸濁させ、撹拌下、濃硫酸(0.38g)を室温で加え、反応液を40℃で3時間撹拌した。反応終了後にN,N−ジメチルアセトアミド(15ml)を加え、液量が約40mlになるまで減圧下溶媒を留去した。濃縮液に水(7.5ml)と酢酸エチル(150ml)を20℃で加え、混合物を30℃で0.5時撹拌後、酢酸エチル(150ml)を加え、同温でさらに0.5時間撹拌した。0℃で2時間撹拌後、結晶をろ過し、0℃に冷却した酢酸エチル(30ml)で結晶を洗浄し、標記化合物の湿品結晶(15.65g)を得た。
【0336】
A−2工程:(3aS,4R,7aR)−4−[(1S,2R)−1,2,3−トリアセトキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−1工程で得られた湿品結晶(10.08g)に無水酢酸(25.72g)を加えて懸濁させ、撹拌下、濃硫酸(6.61g)を、40℃以下に保ちながらゆっくり滴下した。40℃で5時間撹拌後、反応液を0℃に冷却し、トリエチルアミン(13.64g)を40℃以下で滴下した。この反応溶液を、冷却した水(50ml)、28%アンモニア水(27.27g)、トルエン(140ml)の混液へ、40℃以下に保ちながら滴下し、さらに25℃で1時間撹拌した。静置後、分離した有機層を、水(20ml)で2回洗浄し、液量が約30mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0337】
A−3工程:(3aS,4R,7aR)−4−[(1R,2R)−1,2,3−トリヒドロキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−2工程で得られた化合物のトルエン溶液に、メタノール(60ml)と28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(0.45g)を室温で加え、混合物を25℃で15分撹拌した。次いで、反応液を液量が約30mlになるまで減圧濃縮し、(3aS,4R,7aR)−4−[(1R,2R)−1,2,3−トリヒドロキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル(4)のメタノール溶液を得た。
【0338】
A−4工程:(3aS,4R,7aR)−4−{(S)−ヒドロキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
A−3工程で得られた化合物のメタノール溶液にジメチルカルボナート(30.35g)を加え、混合物を25℃で1時間撹拌し、さらに55℃で5時間撹拌した。反応液を0℃に冷却後、同温度で5分間撹拌し、結晶をろ過した。メタノール(20ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を白色固体として得た(7.06g、収率76.9%)。
【0339】
(実施例3)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])の合成
B−1工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アミノ−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
実施例1のA−6工程で得られた化合物(10.00g)に酢酸エチル(40ml)、トリフェニルホスフィン(7.79g)と水(1.94g)を室温で加えた後、72℃で2.5時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、標記化合物の酢酸エチル溶液を得た。
【0340】
B−2工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−[2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
B−1工程で得られた化合物の酢酸エチル溶液に室温でtert−ブチル(tert−ブトキシカルボニルイミノピラゾール−1−イル−メチル)カルバマート(8.80g)を加え、混合物を同温度で17.5時間撹拌した。反応液の液量が約30mlになるまで減圧下溶媒を留去し、トルエン(100ml)を加え、不溶物をろ過した。ろ液を水(30ml)で2度洗浄し、分離した有機層の液量が約40mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0341】
B−3工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−[2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸
B−2工程で得られた化合物のトルエン溶液に室温でメタノール(50ml)、水(23ml)と炭酸カリウム(11.20g)を加え、混合物を同温度で4時間撹拌した。反応液を5℃に冷却し、水(50ml)を加えた後、7%塩酸でpHを8.3に調節した。溶液の液量が約110mlになるまで減圧下溶媒を留去し、酢酸エチル(50ml)で3度洗浄し、水層を分離した。7%塩酸で水層のpHを2.7に調節した後、酢酸エチル(90ml)で2度抽出した。有機層を合致し、液量が約40mlになるまで減圧下溶媒を留去した。濃縮液に水(40ml)を加え、液量が約40mlになるまで、減圧下溶媒を留去し、標記化合物の水溶液を得た。
【0342】
A−9工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])
B−3工程で得られた化合物の水溶液を実施例1のA−9工程と同様の操作に付し、標記化合物をを白色固体として得た(6.71g、収率71.8%)。
【0343】
(実施例4)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])の合成
C−1工程:(3aS,4R,7aR)−4−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
(3aS,4R,7aR)−4−{(S)−ヒドロキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル(46.00g)を実施例1のA−5工程に付して得られた化合物のトルエン溶液(約675ml)に、メタノール(460ml)と25.4%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(14.36g)を室温で加え、混合物を同温度で30分撹拌した。反応液の液量が約138mlになるまで減圧下溶媒を留去し、メタノール(460ml)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に酢酸(4.41g)を加え、液量が約138mlになるまで減圧下溶媒を留去した後に、トルエン(230ml)を加え、液量が138mlになるまで減圧下溶媒を再度留去し、標記化合物のトルエン懸濁液を得た。
【0344】
C−2工程:(3aS,4R,7aR)−4−[(1S,2R)−2,3−ジアセトキシ−1−メトキシプロピル]−2−メチル−3a,7a−ジヒドロ−4H−ピラノ[3,4−d][1,3]オキサゾール−6−カルボン酸メチル
C−1工程で得られた化合物のトルエン懸濁液に酢酸エチル(184ml)を加え、室温で30分撹拌し、トリエチルアミン(66.69g)、N,N‐ジメチルアミノピリジン(0.90g)と無水酢酸(34.47g)を20℃以下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。反応液にトルエン(460ml)と5%炭酸水素ナトリウム水溶液(230ml)を加え、室温で1時間撹拌した。静置後分離した有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(230ml)で洗浄した。有機層を分離し、液量が約230mlになるまで減圧下溶媒を留去後、不溶物をろ過した。残渣をトルエン138mlで洗浄し、ろ液と洗浄液を合致し、液量が約138mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0345】
C−3工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アジド−6−[(1S,2R)−2,3−ジアセトキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
C−2工程で得られた化合物のトルエン溶液に2-メチル-2-プロパノール(47ml)を加え、混合物を冷却後、チタニウム(IV)イソプロポキシド(8.68g)とトリメチルシリルアジド(23.92g)を加え、20℃で4時間撹拌した。反応液に10℃以下で亜硝酸ナトリウム水溶液(亜硝酸ナトリウム14.32g、水329ml)と塩酸(濃塩酸23.77g、水74ml)を加え、反応液を室温で30分間撹拌後、液量が約494mlになるまで減圧下溶媒を留去した。濃縮液を酢酸エチル(471ml)で抽出し、有機層1と水層1を分離した。水層1を酢酸エチル(471ml)で抽出し、有機層2を分離した。有機層1を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(235ml)で2度洗浄し、有機層3を分離した。水層2と水層3を合致し、有機層2で抽出し、有機層4を分離した。有機層3と有機層4を合致し、酢酸エチル(80ml)を加え、液量が約245mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物の酢酸エチル溶液を得た。
【0346】
C−4工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アミノ−6−[(1S,2R)−2,3−ジアセトキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
C−3工程で得られた化合物の酢酸エチル溶液にトリフェニルホスフィン(35.23g)と水(8.80g)を0℃で加え、混合物を72℃で2時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、標記化合物の酢酸エチル溶液を得た。
【0347】
C−5工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−[2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]−6−[(1S,2R)−2,3−ジアセトキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
C−4工程で得られた化合物の酢酸エチル溶液に室温でtert−ブチル(tert−ブトキシカルボニルイミノピラゾール−1−イル−メチル)カルバマート(39.79g)を加え、混合物を同温度で1時間撹拌し、17時間静置した。反応液の液量が約141mlになるまで減圧下溶媒を留去後、トルエン(471ml)を加え、水(141ml)と10%食塩水(141ml)で洗浄した。分離した有機層の液量が約188 mlになるまで減圧下溶媒を留去し、標記化合物のトルエン溶液を得た。
【0348】
C−6工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−[2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸
C−5工程で得られた化合物のトルエン溶液にメタノール(235ml)、水(108ml)と炭酸カリウム(50.63g)を加え、混合液を室温で4.5時間撹拌した。30℃以下で水(235ml)を加えた後、7%塩酸でpHを8.3に調節した。溶液の液量が約518mlになるまで減圧下溶媒を留去し、反応液を酢酸エチル(235ml)で3度洗浄し、水層を分離した。7%塩酸で水層のpHを2.7に調節した後、酢酸エチル(423ml)で2度抽出した。有機層を合致し、液量が約282mlになるまで減圧下溶媒を留去し、不溶物をろ過した。残渣を酢酸エチル(376ml)で洗浄し、ろ液と洗浄液を合致後、液量が約188mlになるまで減圧下溶媒を留去した。濃縮液に水(188ml)を加え、液量が約188mlになるまで、減圧下溶媒を留去し、標記化合物の水溶液を得た。
【0349】
A−9工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])
C−6工程で得られた化合物の水溶液を実施例1のA−9工程と同様の操作に付し、標記化合物を白色固体として得た(30.97g、収率62.3%)。
【0350】
(実施例5)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])の合成
D−1工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アミノ−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
実施例1のA−6工程で得られた化合物(1.00g)に酢酸エチル(4ml)、水(0.194 g)とトリフェニルホスフィン(0.78g)を加え、混合物を70℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、減圧下溶媒を留去し、粗製の標記化合物を得た。
【0351】
D−2工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアニジノ−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル
D−1工程で得られた粗製の化合物に水(4ml)、メタノール(1ml)と1H−ピラゾール−1−カルボキサミジン塩酸塩(0.52g)を加え、混合物を室温で65時間撹拌し、標記化合物の溶液を得た。
【0352】
D−3工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])
D−2工程で得られた化合物にメタノール(1ml)と炭酸カリウム(0.75g)を加え、混合物を室温下、約23時間撹拌後、標記化合物の生成量をHPLCにより測定した(生成量0.59g、生成率63.3%)。
【0353】
HPLC測定条件(4)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×250mm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
測定波長:210nm
移動相:0.01M リン酸二水素カリウム緩衝液(pH3)/メタノール/PIC B−7(Low UV、Waters社製)(950/50/1)
流速:1ml/分
標記化合物の保持時間:約4.1分
【0354】
(実施例6)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2,3−ジヒドロキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸(化合物(13)[R=メチル基])の合成
E−1工程:(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アジド−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル(1.00g)をA−7工程と同様の操作に付して得られた化合物の水溶液に1H−ピラゾール−1−カルボキサミジン塩酸塩(1.01g)を二分割して加え、pHを7〜9に保持しながら混合物を室温下で約100時間撹拌し、標記化合物の生成量をHPLC測定条件(4)により測定した(生成量0.53g、収率56.5%)。
【0355】
(実施例7)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−2−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸[化合物(Ib)]の合成
オクタンイミド酸メチル塩酸塩(8.39g)にメタノール(20ml)を加え、混合物を35℃で3時間撹拌した後、実施例1のA−9工程で得られた化合物(5.00g)とメタノール(5ml)を室温で加え、懸濁させた。これに1.6mol/l 塩化水素メタノール溶液(10.4ml)を室温で加え、同温度で2時間撹拌した。液量が約20mlになるまで、減圧下溶媒を留去し、水(60ml)を加え、酢酸エチル(25ml)で2度洗浄した。水層を分離し、20%炭酸ナトリウム水溶液でpHを7に調節した後、室温で5分間撹拌した。次いで20%炭酸ナトリウム水溶液でpHを8.7に調節し、反応液を1.5時間撹拌した後、結晶をろ過した。水(10ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、粗製の標記化合物を白色結晶として得た(6.21g、収率91.3%、化学純度:99.51%化合物(Ib):化合物(IIb)=95:5、化合物(13)[R=メチル基]の含有率:<0.01%、化合物(VII)[R=1−ヘプチル基、R=メチル基]の含有率:0.06%、化合物(VIII)[R=1−ヘプチル基]の含有率:0.09%)。
【0356】
(実施例8)
tert−ブチル(tert−ブトキシカルボニルイミノピラゾール−1−イル−メチル)カルバマート[化合物(11)]の合成
F−1工程:tert−ブチル(イミノピラゾール−1−イル−メチル)カルバマート
1H−ピラゾール−1−カルボキサミジン塩酸塩(100g)にN,N−ジメチルホルムアミド(350ml)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(125ml)を加えた後、ジtert-ブチル ジカルボナート(152g)のN,N−ジメチルホルムアミド(50ml)溶液を室温で約40分かけて加えた。同温度で2時間撹拌した後、水(500ml)を加え、混合物をトルエン(500ml)で抽出し、有機層1と水層1を分離した。有機層1をさらに水(300ml)で2度洗浄し、有機層2を分離した。水層1をトルエン(500ml)で抽出し有機層3を分離した。有機層2と有機層3を合致し、液量が約300mlになるまで減圧下溶媒を留去した。得られた溶液にヘキサン(500ml)を室温で加えて混合物を30分撹拌後、氷冷下30分撹拌し、結晶をろ過した。ヘキサン(100ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を得た(120.3g、収率83.9%)。
【0357】
F−2工程:tert−ブチル(tert−ブトキシカルボニルイミノピラゾール−1−イル−メチル)カルバマート[化合物(11)]
60%水素化ナトリウム(9.99g)のテトラヒドロフラン(100ml)懸濁液に−5〜0℃を保持しながら、B−1工程で得られた化合物(50g)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液を1時間かけて加えた。混合物を同温度で30分撹拌後、ジtert-ブチル ジカルボナート(57.1g)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液を−5から0℃を保持しながら加えた後、テトラヒドロフラン(250ml)を加えた。還流下、反応液を2時間撹拌した後、室温で酢酸(20.4ml)を加え、液量が約150mlになるまで減圧下溶媒を留去した。得られた溶液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(500ml)を加え、混合物を酢酸エチル(500ml)で抽出した。有機層を水(150ml)で洗浄し、液量が約75mlになるまで減圧下溶媒を留去した。残渣にヘキサン(200ml)を室温で加え、種晶を接種した。氷冷下で40分撹拌後、結晶をろ過し、ヘキサン(50ml)で結晶を洗浄し、減圧下乾燥し、標記化合物を得た(54.47g、収率73.8%)。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): 1.49 (9H, s), 1.55 (9H, s), 6.41 (1H, dd, J = 1.5, 2.7 Hz), 7.62 (1H, dd, J = 0.7, 1.5 Hz), 8.30 (1H, dd, J = 0.7, 2.7 Hz), 8.93 (1H, brs)。
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): 28.1, 28.2, 81.4, 83.4, 109.8, 129.0, 139.2, 142.8, 149.4, 157.4。
【0358】
(実施例9)
オルトオクタン酸トリメチル(化合物(14)[R=1−ヘプチル基、R=メチル基])の合成
G−1工程:オクタンイミド酸メチル塩酸塩
オクタンニトリル(10.00g)にメタノール(2.81g)と酢酸メチル(30ml)を加え、混合物を0℃に冷却し、塩化水素(7.50g)を加え、混合物を同温度で25時間撹拌した。反応液にメチルシクロヘキサン(60ml)を加えた後、減圧下溶媒を留去した。残渣にメチルシクロヘキサン(20ml)を加え、混合物を室温で1.5時間撹拌した後、結晶をろ過した。メチルシクロヘキサンで結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を白色固体として得た(14.45g、収率93.4%)。
MS (FAB): m/z 158 [M+H]+
HRMS (ESI): Exact mass calcd for C9H20NO [M+H]+ 158.15449, Found 158.15433
IR (KBr): 3139, 3109, 2925, 2857, 1712, 1627, 1474, 1411, 1213, 1100 cm-1
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): 0.82 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.19 - 1.33 (8H, m), 1.67 (2H, tt, J = 7.5, 7.8 Hz), 2.70 (2H, t, J = 7.8 Hz), 4.24 (3H, s), 11.52 (1H, brs), 12.46 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): 14.1, 22.6, 25.7, 28.7, 28.8, 31.5, 32.9, 60.7, 180.5。
【0359】
G−2工程:オルトオクタン酸トリメチル(化合物(14)[R=1−ヘプチル基、R=メチル基])
G−1工程で得られた化合物(40.00g)にメチルシクロヘキサン(240ml)とメタノール(80ml)を加え、混合物を35℃で6時間撹拌した。反応液を10℃に冷却し、メチルシクロヘキサン(20ml)を加え、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(280ml)で洗浄した。更に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(120ml)で洗浄し、有機層を分離した。不溶物をろ過し、残渣をメチルシクロヘキサン(20ml)で洗浄後、ろ液と洗浄液を合致し、減圧下溶媒を留去した。減圧蒸留(1.5−1.8torr、b.p.85〜90℃)により残渣を精製し、標記化合物を無色透明油状物として得た(35.37g、収率83.8%)。
MS (ESI): m/z 227 [M+Na]+
HRMS (ESI): Exact mass calcd for C11H24O3Na [M+Na]+ 227.16231, Found 227.16138
IR (neat): 2955, 2928, 2854, 1466, 1241, 1153, 1078, 1047, 977 cm-1
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): 0.86 (3H, t, J = 6.8 Hz), 1.23 - 1.33 (8H, m), 1.67 - 1.71 (2H, m), 3.21 (9H, s).
13C NMR (CDCl3, 125 MHz): 14.1, 22.7, 22.8, 29.3, 29.5, 30.5, 31.9, 49.4, 116.0。
【0360】
(比較例1)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−メトキシ−6−{(S)−メトキシ[(4R)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル}−テトラヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル[化合物(VIb)]の合成
Z法記載の化合物(VIa)(1.00g)のN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)溶液に60%水素化ナトリウム(0.16g)を0℃で加えた。混合物を同温度で5分撹拌した後、硫酸ジメチル(0.31g)を0℃で加え、室温でさらに2時間撹拌した(標記化合物のピーク面積比率:41.6%、N−メチル体のピーク面積比率:12.2%)。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)と水(2ml)を加え、混合物を酢酸エチル(20ml)で3度抽出した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)で1度、水(10ml)で2度洗浄した後、減圧下溶媒を留去した。残渣にジイソプロピルエーテル(2ml)を加え、混合物を室温で10分撹拌し、更に0℃で30分撹拌した後、結晶をろ過した。ジイソプロピルエーテル(2ml)で結晶を洗浄した後、減圧下乾燥し、標記化合物を白色固体として得た(0.28g、収率27.3%、標記化合物のピーク面積比率:97.2%、N−メチル体のピーク面積比率:0.3%)。
【0361】
標記化合物とN−メチル体のピーク面積比率は以下のHPLC測定条件で測定した。
HPLC測定条件(4)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×250mm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
測定波長:195nm
移動相:アセトニトリル:0.02M リン酸二水素カリウム水溶液=60:40
流速:1ml/分
標記化合物の保持時間:約8.6分
N−メチル体の保持時間:約15.4分
【0362】
(比較例2)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−アジド−6−[(1S,2R)−2,3−ジアセトキシ−1−メトキシプロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸メチル[化合物(IVg)]の合成
W法、Y法およびZ法記載の化合物(IVf)(10.0g)にN,N−ジメチルホルムアミド(250ml)、DOWEX(登録商標)50W−X8(10.0g)とアジ化ナトリウム(10.0g)を加え、混合物を80℃で7時間撹拌した(立体異性体比7:1)。反応液を室温に冷却し、イオン交換樹脂を通してろ過した。樹脂をメタノール(50ml)で洗浄し、ろ液と合致後、減圧下溶媒を留去した。濃縮残渣にジクロロメタン(100ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)と水(50ml)を加え、撹拌後有機層を分離した。有機層を10%食塩水(100ml)で洗浄した後、減圧下溶媒を留去し、未精製の標記化合物を得た(10.34g、立体異性体比6:1)。
【0363】
標記化合物と立体異性体のピーク面積比率は以下のHPLC測定条件で測定した。
HPLC測定条件(5)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×250mm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
測定波長:254nm
移動相:アセトニトリル:水=60:40
流速:1ml/分
標記化合物の保持時間:約6.2分
立体異性体の保持時間:約6.6分
【0364】
(比較例3)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−[2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸ジフェニルメチル[化合物(IVk)]の合成
W法の化合物(IVj)(0.50g)にジクロロメタン(20ml)とトリエチルアミン(0.10g)を0℃で加え、同温度で塩化オクチル(0.14g)を滴下し、混合物を3.5時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(50ml)を加え、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30ml)と飽和食塩水(10ml)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、未精製の標記化合物を得た(0.57g、収率97.0%、標記化合物のピーク面積比率:63.2%、ジアシル体のピーク面積比率:5.6%)。
【0365】
標記化合物およびジアシル体のピーク面積比率は以下のHPLC測定条件にて測定した。
HPLC測定条件(6)
カラム:L-column ODS(4.6mmID×250mm、粒子径5μm、化学物質評価研究機構)
カラム温度:40℃
測定波長:254nm
移動相:アセトニトリル:0.02mol/l 酢酸アンモニウム水溶液=90:10
流速:1ml/分
標記化合物の保持時間:約6.8分
ジアシル体の保持時間:約24.6分
【0366】
(比較例4)
オルトオクタン酸トリメチル(化合物(14)[R=1−ヘプチル基、R=メチル基])の合成
実施例9のG−1工程にしたがって得られた化合物(160.44g)にメタノール(330ml)と石油エーテル(1l)を加え、混合物を還流下、18時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、同温度で2時間静置した。不溶物をろ過後、減圧下溶媒を留去した。減圧蒸留(2.2torr、b.p.93〜96℃)により残渣を精製し、標記化合物を無色透明油状物として得た(78.60g、収率44.7%)。
【0367】
(比較例5)
(4S,5R,6R)−5−アセタミド−4−グアジノ−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−2−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸[化合物(Ib)]
Z法の化合物(Vd)を、W法のジフェニルメチルエステル化反応[化合物(IVi)から化合物(IVj)への変換工程の(3)番目の反応]により化合物(IVj)へ誘導し、引き続きW法により化合物(Ia)へ誘導し、次いで、特許文献2の実施例の方法に従い、化合物(Ia)から標記化合物を合成した。合成した標記化合物の品質は、化学純度:91.88%、化合物(Ib):化合物(IIb)=85:15、化合物(13)[R=メチル基]の含有率:3.54%、化合物(VII)[R=1−ヘプチル基、R=メチル基]の含有率:0.51%、化合物(VIII)[R=1−ヘプチル基]の含有率:0.97%
【0368】
(製剤例1)液剤1
製造例1の化合物が10%(W/W)、塩化ベンザルコニウムが0.04%(W/W)、フェネチルアルコールが0.40%(W/W)、精製水が89.56%(W/W)となるように液剤を調製する。
【0369】
(製剤例2)液剤2
製造例1の化合物が10%(W/W)、塩化ベンザルコニウムが0.04%(W/W)、ポリエチレングリコール400が10%(W/W)、プロピレングリコールが30%(W/W)、精製水が49.96%(W/W)となるように液剤を調製する。
【0370】
(製剤例3)散剤
製造例1の化合物が40%(W/W)、ラクトースが60%(W/W)となるように散剤を調製する。
【0371】
(製剤例4)エアゾール剤
製造例1の化合物が10%(W/W)、レシチンが0.5%(W/W)、フロン11が34.5%(W/W)、フロン12が55%(W/W)となるようにエアゾール剤を調製する。
【産業上の利用可能性】
【0372】
本発明における新規な合成中間体を経由するノイラミン酸誘導体の新規な製造方法は、公知の製造方法に比較して工業的観点から優れる。また、本製造方法により高純度のノイラミン酸誘導体が高収率で得られる。
【0373】
本製造方法により得られる高純度のノイラミン酸誘導体は、優れたノイラミニダーゼ阻害活性を有するので、インフルエンザの予防剤及び治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(4)
【化70】


[式中、R3は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物を、式(5)
【化71】


[式中、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成し、R6は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物、または、式(6)
【化72】


[式中、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、または、ペンタメチレン基を形成する。]を有する化合物と反応させることによる、式(7)
【化73】


[式中、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物の製造方法であって、化合物(6)を用いる場合には、化合物(7)におけるR4およびR5は、一緒となってオキソ基を形成することはないものとする方法。
【請求項2】
式(4)を有する化合物を、式(5)を有する化合物と反応させることによる、式(7)を有する化合物の製造方法であって、R3が、メチル基であり、R4およびR5が一緒となって、オキソ基を形成し、式(5)を有する化合物がジメチルカルボナートである請求項1に記載された製造方法。
【請求項3】
式(7)
【化74】


[式中、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物。
【請求項4】
3が、メチル基であり、R4およびR5が一緒となって、オキソ基を形成する請求項3に記載された化合物。
【請求項5】
式(8)
【化75】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、あるいはR4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成する]を有する化合物を、ルイス酸の存在下にてトリメチルシリルアジドと反応させることによる、式(9)
【化76】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、R3は、C1−C6アルキル基を示し、R4およびR5は、互いに独立して水素原子、C1−C6アルキル基、または、フェニル基を示し、R4およびR5は一緒となって、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、または、オキソ基を形成し、Acは、アセチル基を示す。]を有する化合物の製造方法。
【請求項6】
2が、メチル基であり、R3が、メチル基であり、R4およびR5が一緒となって、オキソ基を形成し、ルイス酸が、チタン(IV)イソプロポキシドである請求項5に記載された製造方法。
【請求項7】
式(12)
【化77】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示し、Bocは、tert−ブトキシカルボニル基を示す。]を有する化合物を、水と反応させることによる、式(13)
【化78】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acはアセチル基を示す]を有する化合物の製造方法。
【請求項8】
2が、メチル基である請求項7に記載された製造方法。
【請求項9】
式(13)
【化79】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物。
【請求項10】
2が、メチル基である請求項9に記載された化合物。
【請求項11】
式(13)
【化80】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物またはその薬理上許容される塩と反応させることによる、式(I)
【化81】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化82】


[式中、R1、R2およびAcは、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩の製造方法。
【請求項12】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基であり、R7が、メチル基である請求項11に記載された製造方法。
【請求項13】
式(13)
【化83】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物を、式(15)
【化84】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示し、Xは、Cl、Br、I、HSO、または、NOを示す]を有する化合物、および、式R7−OH[式中、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることによる、式(I)
【化85】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acはアセチル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化86】


[式中、R1、R2およびAcは、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩の製造方法。
【請求項14】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基であり、R7が、メチル基であり、Xが、Clである請求項13に記載された製造方法。
【請求項15】
請求項2、請求項6及び請求項8のいずれか1項に記載された製造方法の少なくとも一つを反応工程の一部に含む、式(Ib)
【化87】


[式中、Acは、アセチル基を示し、Meは、メチル基を示し、式(Ib)を有する化合物は、式(IIb)
【化88】


[式(IIb)中、Ac及びMeは、式(Ib)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]を有する化合物またはその薬理上許容される塩の製造方法。
【請求項16】
請求項4および請求項10のいずれか1項に記載された化合物の少なくとも一つを経由する、式(Ib)
【化89】


[式中、Acは、アセチル基を示し、Meはメチル基を示し、式(Ib)を有する化合物は、式(IIb)
【化90】


[式(IIb)中、Ac及びMeは、式(Ib)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]を有する化合物またはその薬理上許容される塩の製造方法。
【請求項17】
化学純度が97重量%以上である式(I)
【化91】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化92】


[式中、R1、R2およびAcは、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]、[ここで、式(II)を有する化合物を含有する場合には、式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の混合物の化学純度が97重量%以上である]またはその薬理上許容される塩。
【請求項18】
化学純度が99重量%以上である請求項17に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項19】
化学純度が99.5重量%以上である請求項17に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項20】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項17乃至請求項19のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項21】
式(VII)
【化93】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物の含有率が0.5重量%以下である式(I)
【化94】


[式中、R1、R2およびAcは、式(VII)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化95】


[式中、R1、R2およびAcは、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩。
【請求項22】
式(VII)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む請求項21に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項23】
式(VII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む請求項21に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項24】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項21乃至請求項23のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項25】
式(VIII)
【化96】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【化97】


[式中、R1およびAcは、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化98】


[式中、R1およびAcは、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩。
【請求項26】
式(VIII)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む請求項25に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項27】
式(VIII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む請求項25に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項28】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項25乃至請求項27のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項29】
式(13)
【化99】


[式中、Rは、C1−Cアルキル基を示し、Acは、アセチル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【化100】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2およびAcは、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化101】


[式中、R1、R2およびAcは、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩。
【請求項30】
式(13)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む請求項29に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項31】
式(13)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む請求項29に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項32】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項29乃至請求項31のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項33】
式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の組成比が、重量比で90:10乃至100:0である請求項17乃至請求項32のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項34】
式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の組成比が、重量比で92:8乃至100:0である請求項17乃至請求項32のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項35】
式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の組成比が、重量比で95:5乃至100:0である請求項17乃至請求項32のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項36】
式(15)
【化102】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示し、Xは、Cl、Br、I、HSO4、またはNO3を示す]を有する化合物を、二層系を形成する溶媒中で、式R7−OH[式中、R7は、式(15)におけるものと同意義を示す]を有する化合物と反応させることによる、
式R1C(OR7)3[式中、R1およびR7は、式(15)におけるものと同意義を示す]を有する化合物の製造方法。
【請求項37】
二層系を形成する溶媒が、炭化水素類である請求項36に記載された製造方法。
【請求項38】
二層系を形成する溶媒が、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンである請求項36に記載された製造方法。
【請求項39】
1が、1−ヘプチル基であり、R7が、メチル基であり、Xが、Clである請求項36乃至請求項38のいずれか1項に記載された製造方法。
【請求項40】
請求項17乃至35のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理上許容される塩を有効成分として含有するインフルエンザの治療または予防用組成物。
【請求項41】
式(13)
【化103】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物またはその薬理上許容される塩と反応させることにより製造される、化学純度が97重量%以上である式(I)
【化104】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化105】


[式中、R1およびR2は、式(I)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]、[ここで、式(II)を有する化合物を含有する場合には、式(I)を有する化合物および式(II)を有する化合物の混合物の化学純度が97重量%以上である]またはその薬理上許容される塩。
【請求項42】
化学純度が重量99%以上である、請求項41に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項43】
化学純度が重量99.5%以上である、請求項41に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項44】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項41乃至請求項43のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項45】
式(13)
【化106】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることにより製造される、式(VII)
【化107】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【化108】


[式中、R1は、式(VII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化109】


[式中、R1は、式(VII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩。
【請求項46】
式(VII)を有する化合物の含有率が0.3%以下である請求項45に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項47】
式(VII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む請求項45に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項48】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項45乃至請求項47のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項49】
式(13)
【化110】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることにより製造される、式(VIII)
【化111】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【化112】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化113】


[式中、R1は、式(VIII)におけるものと同意義を示し、R2は、式(I)におけるものと同意義示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩。
【請求項50】
式(VIII)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む請求項49に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項51】
式(VIII)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む請求項49に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項52】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項49乃至請求項51のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。
【請求項53】
式(13)
【化114】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を、式R1C(OR7)3[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R7は、C1−C6アルキル基を示す]を有する化合物と反応させることにより製造され、残存する原料化合物である式(13)
【化115】


[式中、R2は、C1−C4アルキル基を示す]を有する化合物を0.5重量%以下の量で含む式(I)
【化116】


[式中、R1は、C1−C19アルキル基を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物[ただし、式(I)を有する化合物は、式(II)
【化117】


[式中、R1は、式(I)におけるものと同意義を示し、R2は、式(13)におけるものと同意義を示す]を有する化合物を含有してもよい]またはその薬理上許容される塩。
【請求項54】
一般式(13)を有する化合物を0.3重量%以下の量で含む請求項53に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項55】
一般式(13)を有する化合物を0.1重量%以下の量で含む請求項53に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩。
【請求項56】
1が、1−ヘプチル基であり、R2が、メチル基である請求項53乃至請求項55のいずれか1項に記載された式(II)を有する化合物を含有してもよい式(I)を有する化合物。


【公表番号】特表2010−523472(P2010−523472A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544071(P2009−544071)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/JP2008/057557
【国際公開番号】WO2008/126943
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】