説明

ノズルプレートの製造方法

【課題】ワイピング性能を損なうことなく、ノズル穴のインクを吐出する側の開口の周囲に、記録媒体との接触を回避するための突出部を、簡単に形成する。
【解決手段】液滴を吐出する複数のノズル穴43が未加工のノズルプレート基材61に対し、ノズル穴43の液滴を吐出する側の開口43aが形成されるべきノズルプレ―ト基材61の表面に突出部51を形成する。ノズルプレート基材61の前記液滴を吐出する側の面であって開口43aとなる部分付近に対し、ポリイミド樹脂で構成される液滴を付着させる。それから、その液滴を硬化させることにより突出部51を開口43aとなる部分付近に対し形成し、前記液滴を吐出する側の面に撥液膜73を形成する。その後、前記液滴を吐出する側の面にノズル穴43を形成してノズル面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置等の液滴吐出装置に用いられるノズルプレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット式の記録装置(液滴吐出装置)として、インクジェットヘッドのノズル穴からインクを吐出して、記録媒体に記録を行うものは広く知られている。そのようなインクジェットヘッドは、インクを吐出する複数のノズル穴が形成されたノズルプレートを下部に備え、そのノズルプレートの下面であるノズル面には、インクがノズル面に付着するのを回避するために撥液膜が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのノズル面は、記録媒体に対向しているので、用紙ジャムなどにより、記録用紙が浮き上がった場合などノズル面に接触して、ノズル面やその面に形成されている撥液膜が損傷する場合がある。あるいは、外部からの異物がノズル面に接触して撥液膜が損傷することが考えられる。ノズル穴の周囲、具体的にはノズル穴のインクを吐出する側の開口の周囲においてノズル面や撥液膜が損傷すると、インクを吐出する方向が曲がったり、インク滴が所定どおり形成されないなど正常な吐出を行えなくなる。
【0004】
そのような撥液膜の損傷を回避するために、ノズルプレート自体に、ノズル穴から離間した位置に突出部を形成することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−205601号公報
【特許文献2】特開2006−256165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載のものでは、ノズル穴を形成した後に熱プレス処理で突出部を形成するものであり、具体的には、300℃の高温加熱したプレス金型をノズルプレートに押し当ててノズルプレートを軟化させ、軟化させた周辺の肉を集めるようにしてノズルプレートと一体の突部を形成されている。
【0007】
このようなノズルプレート自身の塑性変形によって突部を形成する場合、突部に隣接するノズルの形成箇所周辺の厚みがばらつきやすい。すなわち、ノズルプレートの厚みに個体差が生じやすくなり、所望のノズル形成することが難しくなる。例えば、凸部形成後に、レーザー加工によりノズルを形成する場合、ノズルプレートの厚みに応じてノズルの噴射口の径が変化するため、ノズルの噴射口を精度良く形成することが難しくなり、インクの吐出性能に影響を及ぼすおそれがある。また、ノズルの噴射口を形成してから凸部を形成する場合にも、ノズルの形成箇所周辺の厚みがばらつきやすく、ノズルの形成箇所が所望の位置からずれることもある。
【0008】
また、ノズル穴への影響を少なくするために、ノズル穴から離れた位置に突部を設けると、用紙ジャムなどからの、ノズル穴の保護を十分にすることができない。
【0009】
また、一般にインクジェットプリンタは、画像形成時やメンテナンス動作時に、インク滴噴射面上に付着したインクを拭き取るワイピング動作を適宜のタイミングで行うようになっており、これによりプリンタの印字性能が維持されている。
【0010】
特許文献1の場合、突部に対してこのノズルの形成箇所と反対側が薄肉となって凹部をなしているため、たとえノズルの形成箇所周辺の厚さがプレス処理の前後で変化しないように配慮しても、インク滴噴射面に対して凹凸が大きいため、ワイピング動作時にワイパ材の円滑な動作の妨げとなったり、突部の周囲(例えば、噴射面と突部との境界周辺など)にインクが残り易くなる。このため、前述したようにインク滴の飛翔方向が正規の方向からずれて印字性能に影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
この発明は、ワイピング性能を損なうことなく、ノズル穴の液体を吐出する側の開口に対し、被吐出媒体との接触を回避するための突出部を、簡単に形成できるノズルプレートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、液滴を吐出する複数のノズル穴が未加工のノズルプレート基材に対し、前記ノズル穴の液滴を吐出する側の開口が形成されるべき前記ノズルプレ―ト基材の表面に突出部を形成するノズルプレートの製造方法であって、前記ノズルプレート基材の前記液滴を吐出する側の面であって前記開口となる部分付近に対し、ポリイミド樹脂で構成される液滴を付着させる液滴塗布工程と、その液滴を硬化させることにより前記突出部を前記開口となる部分付近に対し形成する液滴硬化工程と、前記液滴を吐出する側の面に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、その後、前記液滴を吐出する側の面に前記ノズル穴の開口を形成してノズル面とするノズル穴形成工程とを有することを特徴とする。
【0013】
このようにすれば、ポリイミド樹脂で構成される複数の液滴を付着させ、その液滴を硬化させることで、被吐出媒体との接触を回避するための突出部が、各ノズル穴付近に対し簡単にかつ確実に形成される。また、従来と比べ、ノズルの形成をさせようとする領域の厚みは変わらないため、ノズル穴を精度よく形成できる。特に、突出部を形成する樹脂として、親和性に優れるという特性を有するポリイミド樹脂を用いているので、突出部を裾野がなだらか形状を有する曲面とすることができ、平坦面のノズル面となだらかに繋がる。よって、そのような裾野がなだらかな形状の突出部とすることで、ワイパ部材がなだらかな形状に沿って移動がして液滴をふき取っていくため、ワインピング動作がスムーズで阻害されることはないし、ノズル面と突出部の裾野との境界において液体が溜まり易くなることもないため、ワイピング性がよくなる。また、突出部がなだらかな曲面を有するため、ジャム等で被吐出媒体が撓んでその端部や一部が、突出部に接触したとしても、角がないためノズル面を傷つけにくい。
【0014】
また、突出部の表面にも撥液膜が形成されるので、ノズル穴よりの液体の吐出時等において突出部の表面に液体が付着するのが防止される。
【0015】
請求項2に記載のように、請求項1のノズルプレートの製造方法において、前記ノズルプレート基材は、前記複数のノズル穴が列状に加工されるものであり、前記突出部は、前記ノズル穴の液滴を吐出する側の開口の列となる部分の間に、列方向に延びる直線状あるいは破線状に形成されることが望ましい。
【0016】
このようにすれば、ドット状の突出部とする場合よりも、裾野がなだらか形状の突出部になりやすく、ワイピング性の確保やノズル穴加工の際の、空気の混入を回避した表面保護フィルムの貼付を行う上で有利な突出部の実現が可能となる。
【0017】
また、直線状あるいは破線状の突出部が、ノズル穴の液滴を吐出する側の開口の列となる部分の間に形成されているので、ノズル面のいずれの部分においても、記録媒体との接触が回避される。
【0018】
請求項3に記載のように、請求項1または2のノズルプレートの製造方法において、前記液滴の付着は、複数の吐出穴から液滴を吐出する液滴吐出方式の印刷により、前記ノズルプレート基材の前記表面上に前記ポリイミド樹脂を液滴状に吐出させて行うことができる。
【0019】
このようにすれば、液滴吐出方式の印刷を利用することで、液滴を吐出する側の面に、突出部を形成するための液滴を簡単に付着させることができる。また、ノズルプレートのノズルの形成をさせようとする領域の厚みは変わらないため、突出部の形成後にノズル穴を形成したとしても、精度よく加工することができる。
【0020】
請求項4に記載のように、請求項3のノズルプレートの製造方法において、前記液滴吐出方式の印刷の際に、前記突出部とともにノズル穴加工のための位置決めマークも一緒に印刷することができる。
【0021】
このようにすれば、液滴吐出方式の印刷を利用することで、突出部とともに位置決めマークを一緒に簡単に形成することができ、突出部とともにノズル穴加工のための位置決めマークを一緒に形成するので、ノズル穴加工の際の加工精度が高められるとともに、突出部とノズル穴との位置ずれを少なくして加工することができる。
【0022】
請求項5に記載のように、請求項3または4のノズルプレートの製造方法において、前記突出部は、前記突出部の幅方向に対応して配列された前記複数の吐出穴からの液滴の吐出により形成されることが望ましい。
【0023】
このようにすれば、突出部を形成するために、複数の吐出穴から液滴を吐出させて形成するため、所定の幅を有し裾野がなめらかな突出部を確実に形成することができる。また、複数の吐出穴のうち、いずれかの突出穴からの吐出に不具合があったとしても、他の吐出穴からの液滴で補えることができる。
【0024】
請求項6に記載のように、請求項3〜5のいずれかのノズルプレートの製造方法において、前記突出部は、前記液滴吐出方式の印刷を繰り返す重ね塗り印刷により形成されるようにできる。
【0025】
このようにすれば、重ね塗りすることで突出部の幅をあまり変えることなく突出部の高さの調整が容易となる。
【0026】
請求項7に記載のように、請求項1〜6のいずれかのノズルプレートの製造方法において、前記ノズルプレート基材は、前記液滴の付着前に予め加熱されていることが望ましい。
【0027】
このようにすれば、付着した液滴の乾燥が早くなり、製造効率が高まる。また、吐出された液滴の幅(外径)が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0028】
請求項8に記載のように、請求項1〜7のいずれかのノズルプレートの製造方法において、前記撥液膜が設けられた突出部が設けられている表面側に表面保護フィルムを、裏面側にメタルパーツをそれぞれ貼付して、裏面側からノズル穴をレーザー加工により形成し、その後表面保護フィルムを剥離する構成とすることができる。
【0029】
このようにすれば、突出部は裾野がなだらかな形状でノズル面の平坦面となだらかに繋がっているため、ノズル穴加工の際に貼付される表面保護フィルムは、なだらかな形状に沿って基材表面および突出部と密着貼付され、表面保護フィルムと、基材表面と突出部の裾野との境界において空気層が形成されない。もし、突液部が角形状の場合、表面保護フィルムが貼付されたときに、基材表面の平坦部と突出部との境界において、空気層が入り込み易い。その場合、その空気層がノズル穴加工位置にかかってしまうことでノズル穴をレーザー加工する際に発生するカーボン粉や飛沫などが、そのような空気層に入り込み、撥液膜にカーボン粉や飛沫などが付着するという不具合がなくなる。そのため、突出部が形成された基材表面に対してノズル孔を加工するときに生じる飛沫などによって、撥液膜の撥液性を阻害することがない。
【0030】
請求項9に記載のように、請求項1〜8のいずれかのノズルプレートの製造方法において、前記ノズルプレート基材は、ポリイミド樹脂からなる樹脂プレート基材であり、前記液滴付着工程に先だって行う予備工程として、前記樹脂プレート基材の脆弱層をアルカリ性の溶液により取り除く工程と、前記樹脂プレート基材の表面を大気圧プラズマ処理で表面親水化処理を行う工程と、前記樹脂プレート基材上にプライマーを塗布し、プライマー層を形成する工程とを有する構成とすることができる。
【0031】
このようにすれば、突出部、および撥液膜と、ノズルプレート基材との密着強度があがるため剥離しにくくなる。
【0032】
前記ノズルプレート基材はポリイミド樹脂からなる樹脂プレート基材に制限されない。つまり、請求項10に記載のように、請求項1〜8のいずれかのノズルプレートの製造方法において、前記ノズルプレート基材は、金属プレート基材である構成とすることもできる。
【0033】
請求項11に記載のように、請求項1〜10のいずれかのノズルプレートの製造方法において、前記ノズル面は、前記ノズル穴を覆うように中空のキャップ部が接離可能に接続されるものであり、前記突出部は、前記キャップ部が接続される部分を除き形成されることが望ましい。ここで、キャップ部には、吸引パージに使用する吸引キャップや電源OFF時に使用する封止キャップが含まれる。
【0034】
このようにすれば、前記突出部が前記開口の周囲の撥液膜を保護するのに加えて、突出部によってキャップ部の接続の影響を受けることがない。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、上記のように、ポリイミド樹脂で構成される複数の液滴を付着させ、その液滴を硬化させることで、記録媒体との接触を回避するための複数の突出部を、各ノズル穴の液滴を吐出する側の開口付近に簡単にかつ確実に形成することができる。特に、突出部を形成する樹脂として、親和性に優れるという特性を有するポリイミド樹脂を用いているので、ワイピング性能確保などの点において有利となるように突出部を裾野がなだらか形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェット式記録装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドと吸引手段との関係を示す説明図である。
【図3】インクジェットヘッドの断面図である。
【図4】(a)は図3のA部に対応するノズルプレート基材の拡大図、(b)は図4(a)に示すノズルプレート基材の底面図である。
【図5】(a)〜(h)はそれぞれ、液滴付着工程に先立って行う予備工程を含むノズルプレートの製造方法の説明図である。
【図6】(a)〜(d)はそれぞれノズルプレートの製造方法の説明図である。
【図7】(a)〜(c)はそれぞれノズルプレートの製造方法の変形例についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。なお、以下の説明において、各符号に付加されるB,Y,M,Cの添え字はそれぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンのインク用のものであることを示す。
【0038】
図1及び図2(a)に示すように、インクジェット式記録装置1は、インクジェットヘッド2を備え、そのインクジェットヘッド2は、記録媒体である記録用紙(図示せず)に対して相対移動可能に支持されるヘッドホルダ3に保持される。インクジェットヘッド2は、複数種類のインクを吐出するノズル群を有する。ヘッドホルダ3は、図示しない駆動手段によって、前記記録用紙の送り方向Xに直交する方向Yに延びるガイドレール4A,4Bに沿って往復移動可能に支持されている。ヘッドホルダ3には、インクジェットヘッド2にインクを供給するインクタンク5が搭載されている。
【0039】
インクタンク5は、複数種類のインクを貯留するインク貯留室8B,8Y,8M,8C(図3参照)を、各インクごとに有する。インク貯留室8B〜8Cには、ヘッドホルダ3外に配置されたインクカートリッジ6B,6Y,6M,6Cからインク供給チューブ7B,7Y,7M,7Cを通じてインクが供給されるようになっている。
【0040】
また、図1及び図2に示すように、ヘッドホルダ3の移動経路のうち、前記記録用紙への記録に関与しない所定の待機位置に、ヘッドホルダ3の下面に対向するように、回復手段31が設けられている。この回復手段31は、インク吐出性能を回復するためにインクジェットヘッド2内のエアや増粘インクを外部に排出するパージ処理、後述するノズル面41Aaに付着したインクを払拭・除去するワイプ処理を行うものである。パージ処理を行う装置として、公知のようにノズル面41Aaに接離可能に接続される吸引キャップ32を備える。吸引キャップ32の接続開孔部32aは、吸引通路33を介して吸引ポンプ34に接続されている。吸引キャップ32は、昇降装置35によって昇降可能に支持される可動板36に取り付けられている。
【0041】
ワイプ処理を行う装置として、公知のようにノズル面41Aaに接離可能に接触する、ゴム材等の弾性ブレードからなるワイパ33を備える。ワイパ33は、昇降装置37によって昇降される。
【0042】
この吸引ポンプ34及び昇降装置35,37も、制御手段38(図2参照)によって制御される。つまり、インクカートリッジを交換した場合や定期的メンテナンスの場合においてパージ処理を行う際に、ヘッドホルダ3を吸引手段31と対向する位置へ移動させ、昇降装置35を駆動して吸引キャップ32をインクジェットヘッド2のノズル面に密着させ、その状態で、吸引キャップ32に連通する吸引ポンプ34を一定時間駆動することで、インクジェットヘッド2内のエアや増粘インクを外部に排出するようになっている。吸引キャップ32は、上側が開口された略箱状で樹脂製でノズル面41aのノズル形成領域を取り囲む略矩形状をしている。そして、その先端部が撓んでノズル面41aに接触させることで密着されるようになっている。その後、昇降装置35を駆動して吸引キャップ32をノズル面41Aaから離し、昇降装置37を駆動してワイパ33を上昇させる。ワイパ33は、X方向に長く延びて形成されていて、先端部が薄くなって柔軟に形成されている。そして、ヘッドホルダ3を記録用紙側へ移動させることで、ワイパ33の先端をノズル面41Aa接触させて、ヘッドホルダ3をY方向へ移動させることで、パージ処理終了後にノズル面41Aaに付着したインクを払拭・除去する。
【0043】
インクジェットヘッド2は、図3に詳細を示すように、キャビティユニット41に圧電アクチュエータ42を重ね合わせた構造である。キャビティユニット41は、ノズルプレート41Aを含む複数枚のプレートを積層して形成され、複数のノズル穴43に一対一に対応して連通する複数の圧力室44を平面状にマトリクス配置して有し、その圧力室44に圧力室44の列ごとにインクを供給する共通インク室45を備える。なお、複数のノズル穴43はX方向に複数列状に形成され(図4ではノズル列方向S1)、Y方向に複数の列が形成される(図4ではS2方向)。
【0044】
キャビティユニット41の上面には各インク色ごとに開口した図示しないインク供給口を有し、そのインク供給口から各共通インク室45に各インクが導入され、共通インク室45から複数の圧力室44にインクが分配され、各圧力室44からインク流路48(液体流路)を通って各ノズル穴43に至るようになっている。圧電アクチュエータ42は、平板状のセラミックスシートを複数枚積層し、その間に各圧力室44と対応する個別電極46Aを、全ての圧力室44に共通する共通電極46Bとを交互に挟んで形成されたもので、電極46A,46B間のセラミックスを圧電効果により変形する駆動部としている。これらの駆動部は圧力室44と対応して平面状に複数配置され、各駆動部を選択的に駆動することによりノズル穴43からインクを吐出させるように構成されている。
【0045】
圧電アクチュエータ42の上面には、各駆動部と電気的に接続された接続端子(図示せず)を平面状にマトリクス配置して多数備え、その接続端子に接続される配線パターンを有するフレキシブル配線板47が、圧電アクチュエータ42の上面と平行に重ねた状態で固定されている。
【0046】
キャビティユニット41は、下面にノズルプレート41Aを有し、このノズルプレート41Aは、図4(a)(b)に拡大して示すように、インクを吐出する複数のノズル穴43が開口され、インクを被吐出媒体に向かって吐出する側のノズル面41Aaに対し、裾野がなだらかな形状である一定高さの突出部51を複数個(あるいは複数列)備えている。これらの突出部51は、ノズル穴43の列方向に沿って配置されている。これらの突出部51は、用紙ジャムなどにより、ノズル面41Aaに記録用紙が直接に接触しにくくするもので、そのような接触によりノズル面41Aaや後述する撥液膜が損傷するのを回避する機能を発揮する。
【0047】
突出部51は、ノズル穴43の直径約20μmよりも幅が広く、ノズル面41Aaからの突出高さ約5〜20μmで、ノズル穴43の列の間に設けられている。そして、突出部51は、図4(b)に示すように、直線状で、ノズル列方向S1に延びている。具体的には、各ノズル列の間において、ノズル列方向S1に沿って直線状の突出部51が複数S2方向に設けられている。この突出部51は、ノズル列の間において、単数でも複数でもよい。
【0048】
また、図4(b)に示すように、パージ処理のときに、ノズルプレート41Aのノズル面41Aaに対してノズル穴43を覆うように中空の吸引キャップ32が接離可能に接続されるものであり、突出部51は、吸引キャップ32の先端部がノズル面に41aに密着する部分を除き、それの内側に形成されている。吸引キャップ32が密着するノズル面41Aaは平坦面であるため、吸引キャップ32の接続を損なわない。そして、パージ処理終了後にノズル面41aに付着したインクをふき取るためにワイパ33によってワイピングが行われるが、突出部51は、外周面がノズル面41Aaから急に立ち上がらず裾野がなめらかに繋がった形状となっているため、ワイパ33が突出部51に沿って円滑に移動でき、突出部51に妨げられずにノズル面41Aaを払拭できるようになっており、また、平坦面のノズル面41Aaに対して吐出部の裾野が滑らかに繋がっているため、裾野とノズル面との境界周辺にワイピングされたインクがたまり易くなることがない。よって、ワイピング性が確保される。
【0049】
続いて、ノズル穴が未加工のノズルプレート基材に対し突出部51を形成して、ノズルプレート41Aを製造する方法について図5を用いて説明する。ここで、前記ノズルプレート基材は、インクを吐出する複数のノズル穴が未加工のノズルプレート基材であり、大判のポリイミド樹脂(具体的にはポリイミド樹脂フィルム)からなる樹脂プレート基材61に、複数のノズルプレート基材が割り付けられ、後工程を経たのち、プレス加工やエッチング加工などで、樹脂プレート基材から複数のノズルプレートを夫々取り出すものである。
(突出部となる液滴を付着させる液滴付着工程に先だって行う予備工程)
図5(a)に示すように、樹脂プレート基材61を、強アルカリ性の水溶液(水酸化ナトリウムなどの一般的な強アルカリ水溶液)に浸漬、または塗布させることにより、樹脂プレート基材61におけるインク液滴を吐出するノズル穴43が形成される側の面において、ポリイミド樹脂の脆弱層62を取り除き(図5(b)参照)、よく水洗いして乾燥する(洗浄工程)。ポリイミド樹脂からなる樹脂プレート基材61の表面上には、その樹脂プレート基材61の製造過程において、例えば、ポリイミドを構成する低分子量の組成物がその表面に析出される、所謂、脆弱層62が形成されているため、その上に突出部51や撥液膜を設けても、十分な密着強度が得られず、剥離されやすくなるため、アルカリ性溶液による洗浄を行うことで表面の脆弱層62を溶解除去し、高密着度が期待できるようにしているのである。ここでは、強アルカリ性の水溶液は、水酸化ナトリウムなどの一般的な強アルカリ水溶液を用いたが、特にこれに限ることはない。
【0050】
前記洗浄工程に続き、図5(c)に示すように、樹脂プレート基材61の脆弱層62を取り除いた表面に対し、その表面に大気圧プラズマ処理Sで表面親水化処理を行う(親水化処理工程)。プライマー塗布前の親水化処理は、次工程におけるプライマーと樹脂プレート基材61との密着性をよくするために行われ、基材表面にダメージを与えにくい、大気プラズマ処理Sのような低ダメージの方法で行われる。
【0051】
図5(d)に示すように、前記親水化処理工程に続き、親水化処理がなされた樹脂プレート基材61の表面上にプライマーを塗布または、プライマー液に浸漬することで処理し、プライマー層63を形成する(プライマー層形成工程)。これにより、次工程の撥液膜および突出部51と、樹脂プレート61基材との密着強度をさらに向上させることができ、例えば用紙ジャムなどによる記録用紙のノズル面への摩擦接触や、インクによる化学的アタックがあっても、剥がれることがない突出部51および撥液膜を形成することができる。ここで、プライマーとしては、例えば信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤KBE-903を純水で約2wt%に希釈したものが使用され、約100℃において乾燥される。
(液滴塗布工程)
次に、図5(e)、図6(a)に示すように、上記工程を経た樹脂プレート基材61のプライマー処理が行われた面に対して、液滴吐出法を用いてノズル穴のインク液滴を吐出する側の面に突出部51を形成する。突出部51は、ノズル穴43のインク液滴を吐出する側の面のプライマー層63上であって、後工程でノズル穴43のインク液滴を吐出する側の開口43aとなる部分に近接して、ポリイミド樹脂で構成される樹脂液滴81を液滴吐出装置82の吐出穴83から吐出させてプライマー層63上に付着させる。このとき、図5(e)に示すように、一つの突出部51に対して、液滴吐出装置82の複数の吐出穴83から液滴81を吐出させ、また、ここで、具体的に図示されていないが、開口43aとなる部分の列に沿って、突出部51となる液滴が連続的に表面に付着されることで、ノズル列S1方向に連続的に延びた直線状に、また、S2方向に幅を有して付着されて、このようにして付着した樹脂液滴が硬化することで直線状の突出部51となる。ここで、最終製品となるノズルプレートにおいて、突出部51の形成にムラが生じないように、1つのノズルプレートに対応する部分において、1回のスキャンで各突出部51となる液滴が一度塗りされるように液滴の付着が行われる。例えば、図5(e)、図6(a)においては、1つのノズルプレートに対応する部分における3つ1組の突出部51が形成されているが、各組の突出部51は、その突出部の長手方向において同じタイミングで液滴付着が行われる。
【0052】
このような樹脂液滴は、複数の吐出穴83(例えば、穴径40μm、穴ピッチ70μm程度)から液滴を吐出する液滴吐出方式の印刷により、樹脂プレート基材61の前記表面上にポリイミド樹脂を液滴状にパターン吐出させることで、前述したように吸引キャップ32と干渉しない位置に付着させる。
【0053】
なお、この液滴吐出方式の印刷の際に、図6(a)にあるようにノズル穴加工のための位置決めマーク64を突出部51とともに一緒に印刷する。この位置決めマーク64は、後工程である、突出部51を有するノズルプレート基材を、メタルパーツ71に貼着してノズル穴加工を施す工程において、メタルパーツ71と、突出部51を有するノズルプレートとの貼着のための位置決め用のマーク64であり、メタルパーツ71と突出部51とが正確な位置に位置決めされて貼着される。メタルパーツ71は、後で詳細を記述するがノズル孔加工時において、メタルパーツ71の穴を介してノズル孔がレーザー加工により形成されるため、メタルパーツ71の穴がノズル孔の位置決め孔としての機能を担っている。そのため、メタルパーツ71と突出部51とが正確な位置に位置決めされることで、このメタルパーツ71の穴、しいては、ノズル穴43と、突出部51とが正確に位置決めされることとなるため、よって、この位置決めマーク64を突出部51と共に形成することにより、ノズル加工精度を高めることができ正確に位置決めができるとともに、ノズル孔位置と突出部との位置ずれが小さくなるため、ノズル穴近傍に突出部を精度良く設けるのに有利となる。また、位置決めマーク64を基準とすることでキャップ32と干渉しない位置に突出部51を設けるのも容易となる。
【0054】
ここで、使用されるポリイミド樹脂の粘度は、液滴付着に用いる液滴吐出装置の吐出能力に応じて変わるが、通常は5〜15mPa・secである。この粘度は樹脂プレート基材61の表面から1mm程度離れた位置において、吐出穴83から液滴が吐出され、着弾後、着弾時の径から1.5倍程度の径にまで広がり、隣の吐出穴83から吐出された液滴同士が混ざり合い、幅0.25〜0.30mm程度の突出部51となるような大きさである。
【0055】
樹脂プレート基材61は、複数のノズル穴43が列状に加工されてノズルプレート41Aとなるものであるので、前記液滴の付着は、ノズル列(開口43aの列)となる部分に沿って行われる。これにより、突出部51は、ノズル穴43の液滴を吐出する側の開口43aの列となる部分の間であってそれらの間の中央位置に、列方向に延びる直線状に連続して形成される。このため、前記液滴を突出する吐出穴83が、開口43aの列方向に直交する方向に並んだ3つの場合には、印刷の際に、3つの吐出穴83のうち中央の吐出穴83が、開口43aの列となる部分の間の中央位置を、前記列方向に沿って移動することになる。
【0056】
この突出部51は、突出部51の幅方向に対応して配列された液滴吐出装置82の前記複数の吐出穴83からの複数の液滴の吐出により形成されるが、突出部51は一定高さであることが必要とされるので、液滴吐出方式のインク吐出による液滴を複数滴同じ位置に重ねて吐出させることによって、前記一定の高さ(例えば、少なくとも2.5μm)となるように形成される。ポリイミドの液滴は、このように複数滴を重ね塗りしても、最初に塗布された液滴による突出部の幅があまり広がることはなく、最初に形成された突出部の上に次の液滴が高さ方向に重なるため一定の高さを形成することができる。よって、塗布部分を制限するマスクを用いることなく塗布することもできる。つまり、ノズル穴の内部に液滴が付着するのを回避するためのマスクの使用を省略することもできる。また、重ね塗りをするのは、ポリイミド樹脂が低粘度であるため、1回の塗布では十分な高さとならず、2回塗りで2.5μm程度となる。用紙ジャムを確実に回避する高さを確保するために、3回以上重ね塗りして、5μm程度の高さとすることが望ましい。
【0057】
なお、樹脂プレート基材61は、前記液滴の付着前に、図示しない加熱手段によって予め加熱されて工程をそなえていてもよく、樹脂プレート基材61が加熱されていることにより、基材表面に付着した液滴は速やかに乾燥し、乾燥の遅れによる突出部51の裾野の広がりが抑制される。
(液滴硬化工程)
その液滴を、250℃〜300℃の温度で焼成により硬化させ、突出部51を開口43aとなる部分に対し形成する。つまり、開口43aとなる部分によって構成される列に沿って突出部51が形成される。ポリイミド樹脂が低粘度であるため、従来の350℃より低い温度で焼成できるので、熱収縮が少なくなる。
(撥液膜形成工程)
そして、図5(f)、図6(b)に示すように、前記液滴を吐出する側の面に、フッ素系の素材からなる撥液剤が例えばスプレーで塗布して撥液膜65を形成し、その後、撥液膜65を所定の温度(例えば250℃)で焼成する。このように、ノズル穴が未加工の段階で、撥液膜65が形成されるので、最終製品であるノズルプレートの各ノズル穴の内部には撥液膜が形成されないことになる。また、アルカリ洗浄やプラズマ処理、プライマー処理を経ているので、突出部51および撥液膜65の密着性が向上する。
【0058】
ここで、撥液膜としては、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE樹脂)、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂等のフッ素系の樹脂、さらにはフッ素原子を含んだ表面改質剤やコーティング剤、例えばKP801M(商品名:信越化学工業株式会社製)、サイトップ(商品名:旭硝子株式会社製)、AF1600(商品名:イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー製)、DEFENNSA77702(光ラジカル重合型樹脂:大日本インキ化学工業株式会社製)、FS-116(商品名:ダイキン工業株式会社製)、フロラード(商品名:住友スリーエム株式会社製)などを使用することができる。
(ノズル穴形成工程)
次に、位置決めマーク64を基準にして、図6(c)に示すように、樹脂プレート基材61を所定の大きさの基材66に切断して、図5(g)、図6(d)に示すように、ノズル穴の位置に対応して複数の穴73が形成されているメタルパーツ71(あるいはメタルパーツ71に形成された位置決めマーク72)と、前記位置決めマーク64が形成された切断後の外形(あるいは位置決めマーク82)を基準にして接着材を用いて貼付する。ここで、メタルパーツ71は合金(42%Ni-Fe)またはステンレス鋼などの金属製で、接着剤(例えば、株式会社スリーボンド製20X-343-12)を用いて貼付する。
【0059】
その後、突出部51が設けられ撥液膜65が形成されている表面側に表面保護フィルム74を貼付して、裏面側(メタルパーツ71が貼付されている側)からノズル穴43をレーザー加工により形成し、その後表面保護フィルム74を剥離する。加工に用いるレーザーには、例えばエキシマレーザーなどが使用される(図5(f)参照)。
【0060】
表面保護フィルム74は、レーザー加工によるノズル穴43形成時に発生するカーボン粉やノズル基材などの飛沫が飛び散って、それらが撥液膜65上に付着され、撥液性を阻害することを防止するために、レーザー加工より前に撥液膜65上に表面保護フィルム74を貼着して封止させるものである。ノズル孔43の形成時には、レーザー加工のエネルギー調整をして、ノズルプレート基材にノズル孔は形成されるものの、表面保護フィルム74を貫通させないように表面保護フィルム74内までレーザー光を照射させ、表面保護フィルム74によって撥液膜65表面が封じられているため、ノズル孔43形成時に発生する炭素粉や飛沫を撥液膜65上に付着しない。
【0061】
しかしながら、本発明のように突出部51が形成された撥液膜65上に表面保護フィルム74を貼着させる場合、例えば、従来のような突出部51の形状が角状であったり、なめらかでなかったりする場合、突出部51の裾野部分と平坦面のノズル基材との境界部分において、表面保護フィルム74が密着して貼着させることができないため、その部分に空気層が入り込んでしまう。前記境界部分は、ノズル穴が形成される位置に近接しているため、空気層が存在する領域がノズル孔形成領域となる。そのような状態でレーザー加工によるノズル穴43が形成がなされると、製造時に発生する炭素粉がその空気層内に入り込み、炭素粉や飛沫が、撥液膜と表面保護フィルム74内に封じられた形となる。よって、そのような状態のまま、表面保護フィルム74が剥がされたとしても、撥液膜上に炭素粉や飛沫が残ってしまうことがあり、撥液性を阻害してしまう。
【0062】
しかしながら、本発明のように、突出部が、ポリイミド樹脂製の裾野がなだらかな突出部51であるため、表面保護フィルムを空気層が入り込むことなく密着して貼着させることができるため、上記のような炭素粉や飛沫を撥液膜に残留させて、撥液性を阻害させることはない。
【0063】
図5(h)にあるように、前記液滴を吐出する側の面にノズル穴43の液滴を吐出する側の開口43aが形成され、ノズル面43Aaとなる。なお、メタルパーツ81は、キャビティユニット41の構成部材であり、ノズルプレート41Aの背面側に積層され、インク流路48を構成する孔を有したプレートを転用して用いる場合には、取り外すことなく、そのままキャビティユニット41の構成部材とし、複数の孔73はインク流路48を構成する孔となって、さらに他のプレートらをさらに積層させてキャビティユニット41を構成する。
【0064】
上述のように、複数のノズル穴が未加工のノズルプレート基材に対し、ノズル穴の液滴を吐出する側の開口が形成される表面にポリイミド樹脂を液滴付着させて突出部を形成しているので、被吐出媒体との接触を回避するための突出部が、各ノズル穴付近に対し簡単にかつ確実に形成される。また、従来と比べ、ノズルの形成をさせようとする領域の厚みは変わらないため、突出部を形成した後にでも、ノズル穴を精度よく形成できる。特に、突出部を形成する樹脂として、親和性に優れるという特性を有するポリイミド樹脂を用いているので、突出部を裾野がなだらか形状を有する曲面とすることができ、平坦面のノズル面となだらかに繋がる。よって、そのような裾野がなだらかな形状の突出部とすることで、ワイパ部材がなだらかな形状に沿って移動がして液滴をふき取っていくため、ワインピング動作がスムーズで阻害されることはないし、ノズル面と突出部の裾野との境界において液体が溜まり易くなることもないため、ワイピング性がよくなる。また、突出部がなだらかな曲面を有するため、ジャム等で被吐出媒体が撓んでその端部や一部が、突出部に接触したとしても、角がないためノズル面を傷つけにくい。 また、突出部の表面にも撥液膜が形成されるので、ノズル穴よりの液体の吐出時等において突出部の表面に液体が付着するのが防止される。
【0065】
本発明は、前記実施の形態のほか、次のように変更して実施することも可能である。
【0066】
(i)前記ノズルプレート基材は、ポリイミド樹脂からなる樹脂プレート基材を用いているが、他の樹脂からなる樹脂プレート基材にも適用できるのはもちろん、金属プレート基材にも適用可能である。
【0067】
(ii)前記実施の形態では、突出部51は、裾野がなめらかな形状である曲面を有する形状であるが、本発明はそれに限定されるものではなく、ノズル面41Aaの撥液膜65に記録用紙が直接に接触しにくく、ワイピング性能を確保できる形状であればよく、また、各突出部は同じ形状や大きさでなくてもよい。
【0068】
(iii)前記実施の形態では、突出部51は、直線状に連続しているが、必ずしもその必要はなく、破線状に(間欠的に直線状部分を有するように)構成としてもよいし、山型突起状の突出部が短ピッチで密に配置される構成とすることもできる。
【0069】
(iv)前記実施の形態のほか、図7(a)に示すように、樹脂プレート基材61を所定の形状の大きさの基材66に切断して、その基材66より面積がかなり広いメタルパーツ71に位置決めマークを基準にして貼付(この場合、メタルパーツ71の裏面は汚れ防止のためにマスキング(裏面保護フィルム)を貼付)した後、ポリイミド樹脂を液滴吐出方式で位置決めしながらパターン塗布し、突出部51を焼成し、焼き固めることも可能である。この場合は、その後に、ノズル面全体に撥液膜65を形成した後仮焼成し、前記裏面保護フィルムを剥離し、本焼成することになる。本焼成は、250℃程度のため、裏面保護フィルムの耐熱性を欠くからである。この後は、前述した実施の形態と同様に、表面保護フィルム74を貼付して、レーザー加工によりノズル穴を形成することになる。
【0070】
(v)前記実施の形態では、液滴吐出装置がインクジェット式の記録装置である場合のノズルプレートの製造について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、着色液を微小液滴として塗布、あるいは導電液を吐出して配線パターンを形成するなどする他の液滴吐出装置などにおいて用いるノズルプレートの製造にも適用することができる。
【0071】
(vi)前記実施の形態では、インク(液体)を吐出させるための駆動部は、圧電方式であるが、圧電方式のもの以外に、静電気あるいは電気発熱素子によって吐出動作をする液滴吐出装置のノズルプレートの製造にも使用することができる。
【0072】
(vii)前記実施の形態では、記録媒体は記録用紙であるが、そのほか、樹脂、布など各種のものを用いることができ、また吐出する液体としてはインクだけでなく、着色液、機能液など各種のものを適用することができる。
【0073】
(viii)前記実施の形態では、突出部51は、吸引キャップが接続される部分を除き、それの内側に形成されるようにしているが、吐出機能を回復する回復装置に使用する吸引キャップに限られず、電源OFF時に使用する封止キャップについても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェット式記録装置(液滴吐出装置)
2 インクジェットヘッド
31 回復手段
32 吸引キャップ(キャップ部)
41A ノズルプレート
41Aa ノズル面
43 ノズル穴
43a 開口
51 突出部
61 樹脂プレート基材
62 脆弱層
63 プライマー層
64 位置決めマーク
65 撥液膜
66 基材
71 メタルパーツ
72 位置決めマーク
73 穴
74 表面保護フィルム
81 樹脂の液滴
82 液滴吐出装置
83 吐出穴
73 撥液膜
81 メタルパーツ
82 位置決めマーク
S 大気圧プラズマ処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズル穴が未加工のノズルプレート基材に対し、前記ノズル穴の液滴を吐出する側の開口が形成されるべき前記ノズルプレ―ト基材の表面に突出部を形成するノズルプレートの製造方法であって、
前記ノズルプレート基材の前記液滴を吐出する側の面であって前記開口となる部分に対し、ポリイミド樹脂で構成される液滴を付着させる液滴塗布工程と、
その液滴を硬化させることにより前記突出部を前記開口となる部分に対し形成する液滴硬化工程と、
前記液滴を吐出する側の面に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、
その後、前記液滴を吐出する側の面に前記ノズル穴の開口を形成してノズル面とするノズル穴形成工程とを有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項2】
前記ノズルプレート基材は、前記複数のノズル穴が列状に加工されるものであり、
前記突出部は、前記ノズル穴の液滴を吐出する側の開口の列となる部分の間に、列方向に延びる直線状あるいは破線状に形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項3】
前記液滴の付着は、複数の吐出穴から液滴を吐出する液滴吐出方式の印刷により、前記ノズルプレート基材の前記表面上に前記ポリイミド樹脂を液滴状に吐出させて行うことを特徴とする請求項1または2に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項4】
前記液滴吐出方式の印刷の際に、前記突出部とともにノズル穴加工のための位置決めマークも一緒に印刷することを特徴とする請求項3に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項5】
前記突出部は、前記突出部の幅方向に対応して配列された前記複数の吐出穴からの液滴の吐出により形成されることを特徴とする請求項3または4に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項6】
前記突出部は、前記液滴吐出方式の印刷を繰り返す重ね塗り印刷により形成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項7】
前記ノズルプレート基材は、前記液滴の付着前に予め加熱されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項8】
前記撥液膜が設けられた突出部が設けられている表面側に表面保護フィルムを、裏面側にメタルパーツをそれぞれ貼付して、裏面側からノズル穴をレーザー加工により形成し、その後表面保護フィルムを剥離することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項9】
前記ノズルプレート基材は、ポリイミド樹脂からなる樹脂プレート基材であり、
前記液滴付着工程に先だって行う予備工程として、前記樹脂プレート基材の脆弱層をアルカリ性の溶液により取り除く工程と、前記樹脂プレート基材の表面を大気圧プラズマ処理で表面親水化処理を行う工程と、前記樹脂プレート基材上にプライマーを塗布し、プライマー層を形成する工程とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項10】
前記ノズルプレート基材は、金属プレート基材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項11】
前記ノズル面は、前記ノズル穴を覆うように中空のキャップ部が接離可能に接続されるものであり、
前記突出部は、前記キャップ部が接続される部分を除き形成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−228133(P2010−228133A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75499(P2009−75499)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】