説明

ノズル洗浄装置、及びそれを備える生化学分析装置

【課題】 生化学分析装置において検体又は試薬を吸引・吐出するノズルを洗浄する洗浄装置であって、ノズル外周面の水切れの良好な構成を提供する。
【解決手段】 上方開放状に形成された容器2と、この容器2の内底面から鉛直上方に向けて突出するように設けられるとともに、洗浄水を噴出させる噴出口4がその上端面に形成された筒部3と、上記筒部3の上端面から鉛直上方に向けて突出形成された、互いに対面する複数の突出部7・7と、を有する。洗浄水を噴出口4から噴出させ、前記噴出口4の直上方かつ前記突出部7・7の間の位置(位置f)までノズル10の先端を進入させて、ノズル10の先端が突出部7・7の間に位置するときに、前記噴出口4からの洗浄水の噴出を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析装置で用いられるノズルを洗浄する洗浄装置の構成に関する。また、それを備える生化学分析装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液、尿などを検体としてコレステロール値等を検査するための装置として、生化学分析装置が用いられている。この生化学分析装置では、検体庫からの検体と試薬庫からの試薬とを反応槽のキュベットに注入して反応させ、反応液の吸光度を測定してコレステロール値等を演算して得るように構成されている。
【0003】
この生化学分析装置において、検体を吸引して反応槽に吐出する検体ノズルや、試薬を吸引して反応槽に吐出する試薬ノズルについては、吐出後にノズルの先端部を洗浄し、再び検体や試薬を吸引させることが従来から行われている。こうすることによって、ノズル先端部の内外に付着する検体や試薬を洗い落とし、検体や試薬の反応槽への吐出量を一定にして、測定精度を高めることができる。
【0004】
特許文献1は、2種類の方式、即ち、浸け洗い方式及び掛け洗い方式の洗浄装置を開示する。浸け洗い方式は、洗浄水を流している洗浄容器にノズル先端を挿入してノズルの外面を洗浄した後、移動してノズル内部の洗浄水を吐出するものである。掛け洗い方式は、洗浄水を外側から掛けてノズル外面を洗浄しながら、同時にノズル内部の洗浄水を吐出するものである。
【0005】
特許文献2は、上記の掛け洗い方式では、ピペット(ノズル)の外周部に洗浄水の一部が残り易く、試薬の希釈割合や濃度が変化して正確な測定結果が得られなくなるという問題を指摘して、以下のような構成の洗浄装置を提案している。即ち、容器内に洗浄水噴出ブロックを上下方向に対して所定角度傾斜して取り付け、その上端部に、断面V字状の溝を形成している。そして、V字状の溝から洗浄水を供給して、その流量は、洗浄水の液面が、V字状の溝から上方へこんもり盛り上がる程度とする。そして、このこんもり盛り上がった部分(洗浄水噴出ブロックの脇の位置)にピペット(ノズル)の先端を進入させて、掛け洗いを行う。
【0006】
上記の洗浄が終了した後、特許文献2の構成では、洗浄水の供給を停止する。すると、V字状の溝の内部を洗浄水の水面がなめらかに低下するので、ノズルの外周面の水切れが良好になり、ノズルの外周面には洗浄水がほとんど付着されなくなるという。
【特許文献1】特開2003−88812(段落番号0005〜0006、図5〜図6)
【特許文献2】特許第3448436号公報(段落番号0035〜0039、掛け洗いの様子について図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、ノズルの外周面の水切れ(液切れ)が、前記特許文献2に示すものよりも更に良好である洗浄装置を得ることにある。また、本発明の他の目的は、洗浄に要する時間を短縮でき、コンパクトで製造コストの低い洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
◆本発明の観点によれば、以下の構成の、生化学分析装置において検体又は試薬を吸引・吐出するノズルを洗浄する洗浄装置が提供される。上方開放状に形成された容器と、この容器の内底面から鉛直上方に向けて突出するように設けられるとともに、洗浄水を噴出させる噴出口がその上端面に形成された筒部と、上記筒部の上端面から鉛直上方に向けて突出するように備えられた、互いに対面する複数の突出部と、を有する。前記噴出口の直上方かつ前記突出部の間にノズルの先端を位置させ、この状態で前記噴出口からの洗浄水の噴出を停止する。
【0010】
この構成とすることにより、噴出口からの洗浄液の噴出を停止すると、突出部の間で洗浄液の液面が滑らかに下がる。このため、ノズルの先端外面の洗浄液の液切れが良好になる。特に本発明では、突出部の間にノズルの先端が位置した状態で洗浄液の噴出が停止されるので、ノズルの先端が浸漬されている部分の液面が緩やかに且つバラツキのない安定的な速度で下がるから、液切れが安定して良好になる。また、突出部が鉛直上方に向けて備えられているから、突出部をコンパクトな構成とでき、その周囲の容器もコンパクトな構成とできる。従って、省スペース性に優れたノズル洗浄装置を提供できる。
【0011】
◆前記のノズル洗浄装置においては、以下のように構成することが好ましい。上方を開放させる凹部が前記容器の側壁に設けられて、この凹部の底部の高さは前記突出部の先端高さよりも低くなっている。前記ノズルの先端は、前記凹部の内部及び前記突出部の間の空間を通過可能に構成されている。
【0012】
これにより、凹部を通じて、ノズルを容易に容器内に進入でき、また容器外へ退出させることができる。従って、ノズルの洗浄に必要な時間を容易に短縮できる。
【0013】
◆前記のノズル洗浄装置においては、前記ノズルが前記凹部の内部を通過する方向と、前記ノズルが前記突出部の間の空間を通過する方向とが、ほぼ一致していることが好ましい。
【0014】
これにより、ノズルの容器への進入/退出動作と、前記突出部の間の空間への進入/退出動作とが、一連の動作としてスムーズに行える。従って、洗浄に必要な時間を短縮できる。
【0015】
◆前記のノズル洗浄装置においては、(1)前記ノズルの前記凹部を通過しての前記容器内への進入、(2)前記ノズルの洗浄、(3)前記ノズルの前記凹部を通過しての前記容器外への退出、の3つの動作が行われるときの前記ノズルの高さが、いずれも一致していることが好ましい。
【0016】
これにより、ノズルの水平移動を行うだけで、ノズルを容器へ進入させ、前記突出部の間の空間へ進入させて洗浄し、容器から退出させる一連の動作を、スムーズに行える。従って、洗浄に必要な時間を短縮できる。
【0017】
◆前記のノズル洗浄装置においては、前記筒部及び前記突出部が前記容器と一体形成されていることが好ましい。
【0018】
これにより、部品点数を低減できるとともに、製造工数やコストを低減できる。
【0019】
◆本発明の生化学分析装置は、前記のノズル洗浄装置を備えて構成される。
【0020】
これにより、ノズル洗浄時に洗浄液の液切れが良いために、検体や試薬の希釈が防止され、測定精度を高めることができる。また、ノズル洗浄装置付きのコンパクト性に優れた生化学分析装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は生化学分析装置の全体構成を示す平面図、図2は本実施形態のノズル洗浄装置の構成を示す一部断面斜視図、図3はノズル洗浄装置の正面図である。図4は検体庫/試薬庫から反応槽へノズルが向かうときのノズルの洗浄の様子を示す斜視図、図5は反応槽から検体庫/試薬庫へノズルが向かうときのノズルの洗浄の様子を示す斜視図である。図6は、突出部の間にノズルを静止させた状態で洗浄水の液面を低下させる様子を示す正面図である。
【0022】
先ず、本発明の実施形態に係る生化学分析装置60の全体構成を、図1に従って説明する。この生化学分析装置60は、血漿、血清、尿等を検体としてコレステロール値等を検査する目的で使用される。この装置60は、試薬庫61にある試薬と検体庫62にある検体とを反応槽63で反応させ、その反応液の吸光度をディテクターユニット66にて測定し、得られたデータからコレステロール値等を取得するようになっている。
【0023】
試薬庫61は、試薬が入った試薬ボトル64を複数個(最大60個)並べて搭載可能な、回転可能なトレーを備えている。一方、検体庫62は、血漿、血清、尿等の検体が入った検体管65を複数個(最大92個)並べて搭載可能な、回転可能なトレーを備えている。また、反応槽63はターンテーブル68を備えており、このターンテーブル68にキュベット67が複数個(90個)、環状に並べて配置されている。
【0024】
生化学分析装置60は、上下動可能で且つ鉛直軸まわりに回動可能なアーム50〜52を3つ備えている。3つのアームはそれぞれ、検体アーム50、第1試薬アーム51、第2試薬アーム52、とされている。それぞれのアーム50〜52の先端には、ノズル10が下向きに突出させて備えられている。なお、符号54・55はキュベット67内部の撹拌のためのアームであり、符号56は使用済みのキュベット67を洗浄して再び測定に用いるための洗浄ユニットである。
【0025】
各ノズル10は、それが取り付けられるアーム50〜52が図示しないモータによって回転することで、図1に鎖線で示されている円弧状の軌跡10’に沿って、検体庫62と反応槽63との間、又は試薬庫61と反応槽63との間を往復移動することができる。また、図示しないモータによってアーム50〜52の上下高さが変更されることにより、ノズル10の先端を下降させて、検体庫62の検体管65、あるいは試薬庫61の試薬ボトル64に挿入し、検体や試薬を吸入した後、再び上昇できるようになっている。また、ノズル10の先端を下降させて反応槽63のキュベット67に挿入し、検体や試薬を吐出した後、再び上昇できるようになっている。
【0026】
以上の構成で、検体庫62や試薬庫61のトレー、及び反応槽63のターンテーブル68がそれぞれ回転するとともに、上記ノズル10によって、検体庫62の検体及び試薬庫61の試薬が、順次反応槽63のキュベット67内に吐出されるようになっている。
【0027】
検体庫62と反応槽63との間のノズル10の軌跡10’の中途部、及び、試薬庫61と反応槽63との間のノズル10の軌跡10’の中途部には、トラフと称される窪みが形成され、このトラフにノズル洗浄装置1が設置されている。この装置60においては、ノズル洗浄装置1は1つのノズル10に対応して1つ、計3つ備えられている。
【0028】
この構成で、検体又は試薬を吸引したノズル10は、前記ノズル洗浄装置1によって先端の外面を洗浄液(純水)で洗浄された後、反応槽63で検体又は試薬を吐出するように構成している。また、反応槽63で検体又は試薬を吐出した後のノズル10は、上記ノズル洗浄装置1の位置でノズル10先端の内面及び外面を洗浄された後、検体庫62又は試薬庫61へ戻って、次サイクルの吸引を行うようになっている。この洗浄動作の詳細は後述する。
【0029】
次に、図2を参照して、本実施形態のノズル洗浄装置1を詳細に説明する。このノズル洗浄装置1は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂で形成された、上方開放状の箱型に形成された容器2を備えている。この容器2の内底面からは、筒部3が鉛直上方に向けて突出するように設けられる。筒部3の上端面には、洗浄液としての純水を噴出させる噴出口4が形成される。容器2の下面には供給パイプ5が下方へ突出するように形成されており、この供給パイプ5の内部空間は、前記筒部3の筒孔6と連通している。
【0030】
前記容器2の内底面には、前記筒部3の脇の位置に排水口8が開口されている。容器2の下面には排水筒部9が下方へ突出するように形成されており、この排水筒部が配管11を通じて廃液タンク12に接続されている。
【0031】
一方、前記供給パイプ5には、純水を供給するためのポンプ13が配管14を通じて接続されている。このポンプ13の稼動/停止が生化学分析装置60の制御部18によって制御されることによって、純水の供給/停止が制御される。この制御部18はまた、前記アーム50〜52や、検体庫62、試薬庫61、反応槽63、ディテクターユニット66等の動作を制御するように構成されている。
【0032】
前記筒部3の上端面においては、前記噴出口4の両脇の位置から一対2本の突出部7・7が形成されている。この突出部7・7は、噴出口4の直上方の空間を挟んで、互いに対面するように設けられている。この突出部7・7の間の空間(噴出口4の直上方の空間)を、前記ノズル10の先端が水平に移動して通過できるようになっている。
【0033】
更に、前記容器2の両側の側壁16・16には、それぞれ、上方を開放させる凹部17が設けられている。図3に示すように、この凹部17の底部の高さh2は、前記突出部7・7の先端部の高さh1よりも低く構成されている。前記ノズル10の先端は、前記凹部17内を、水平に移動しながら通過できるように構成されている。
【0034】
なお、この凹部17が設けられる側壁は図2に示すように、筒部3の四囲を囲む側壁のうち、前記突出部7・7が対面する方向と垂直な方向に対面する側壁16・16とされている。従って、凹部17から容器2内に進入したノズル10が、その移動方向を殆ど変えることなく、突出部7・7の間の空間に引き続き進入することができる。また、突出部7・7の間の空間を抜けたノズル10は、その移動方向を殆ど変えることなく、凹部17から容器2外へ退出することができる。
【0035】
以上の構成において、ノズル10の洗浄動作について説明する。図3や図4に示すノズル10は、検体や試薬等の液体を吸引及び吐出するためのものであって、ステンレス等の金属よりなり、先端近傍が縮径された筒状に構成されている。
【0036】
検体アーム50のノズル10が検体庫62で検体を吸引した後、あるいは第1試薬アーム51や第2試薬アーム52のノズル10が試薬庫61で試薬を吸引した後には、生化学分析装置60の制御部18によって、そのアームに対応するノズル洗浄装置1の前記ポンプ13に信号が送られて、ポンプ13が稼動する。この結果、図4に示すように、純水が供給パイプ5から筒部3に供給されて、噴出口4から鉛直上向きに噴出する。
【0037】
このときの純水の流量は、純水の液面Lが前記の突出部7の先端から若干上方へ盛り上がる程度の流量となるように、予め設定されている。噴出された純水は図4に示すように、突出部7・7の間から溢れ、筒部3の外面を伝って落下して、容器2の内底面の前記排水口8から廃液タンク12へ排出される。
【0038】
続いて、吸引した検体又は試薬を内部に保持するノズル10が、前述の軌跡10’に沿って水平に移動して、ノズル洗浄装置1に差し掛かる。具体的にいうと、ノズル10の先端は、図4のaに示す位置から、前記容器2の一側の側壁16の凹部17を通過して、容器2の内部に入る。更にノズル10はほとんど停止することなく、また、上下動することなく水平移動を継続し、その先端が、純水が噴出している突出部7・7の間を通過する(位置bは、ノズル10が突出部7・7の間に丁度位置している状態である)。この結果、ノズル10の外面が純水によって洗浄され、外面に付着している検体や試薬が洗い流される。
【0039】
ノズル10はほとんど停止することなく、また上下動することなく水平移動を続け、容器2の他側の側壁16の凹部17を通過して容器2から抜けて(図4の位置c)、反応槽63へ向かう。なお、洗浄の終了後は、前記制御部18が適宜のタイミングでポンプ13を停止させ、噴出口4からの純水の噴出を停止する。
【0040】
次に、反応槽63で検体又は試薬を吐出した後のノズル10の洗浄動作を、図5を参照して説明する。検体又は試薬の吐出後は、そのアームに対応するノズル洗浄装置1において前述のポンプ13が稼動し、純水が噴出口4から噴出する。このときの純水の流量は、上記と同じく、純水の液面が前記の突出部7の先端から若干上方へ盛り上がる程度の流量になっている。
【0041】
続いて、反応槽63で所定量を吐出した残りの残液(検体や試薬)を先端内部に保持するノズル10が、前述の軌跡10’に沿って水平に移動し、ノズル洗浄装置1に差し掛かる。具体的にいうと、ノズル10の先端は、図5の位置dから、前記容器2の一側の側壁16の凹部17を通過して、容器2の内部に進入する。ノズル10は前記筒部3の手前の位置eでいったん停止し、この状態で、ノズル10内部の前記残液を吐出させるとともに、ノズル10基端側から洗浄液(純水)を供給してノズル10先端から吐出させ、ノズル10の内部を洗浄する。吐出残液や洗浄液の吐出が終わった後は、ノズル10は若干の距離だけ水平移動し(ノズル10の上下動は行われない)、その先端を、純水が噴出している突出部7・7の間に位置させ、再び停止させる(位置f)。この結果、ノズル10の外面が純水によって洗浄され、外面に付着している検体や試薬が洗い流される。
【0042】
ノズル10の先端が突出部7・7の間で静止した状態で、制御部18はポンプ13を稼動させた状態を所定時間継続した後、ノズル10の位置fでの静止状態を保ったまま、ポンプ13を停止させる。すると、純水の供給が停止されるので、前記突出部7・7の先端より上方にあった液面Lは、図6に示すように、突出部7・7の間で下降し、最終的には噴出口4の高さにまで下がる。このとき純水は、突出部7・7の内面を伝いながら緩やかに下降するので、ノズル10の先端の水切れが向上し、純水のノズル10外面への付着が回避される。水切り後、ノズル10は図5の位置fから水平移動し(ノズル10の上下動は行われない)、容器2の他側の側壁16の凹部17を通過して容器2から抜けて(図5の位置g)、検体庫62又は試薬庫61へ向かう。こうして、次サイクルの検体庫62での検体の吸引、又は試薬庫61での試薬の吸引が行われる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態のノズル洗浄装置1は、上方開放状に形成された容器2と、この容器2の内部で鉛直上方に向けて突出するように設けられる筒部3と、この筒部3の上端面に形成された、洗浄水を噴出させる噴出口4と、を備える。そして、上記筒部3の上端面からは、互いに対面する複数の突出部7・7が、鉛直上方に向けて突出するように備えられる。そしてノズル10の洗浄時には、ノズル10の先端が前記噴出口4の直上方かつ前記突出部7・7に挟まれた位置f(突出部7・7の間の位置)にあるときに、前記噴出口4からの洗浄水の噴出を停止するように構成されている。
【0044】
この構成とすることにより、噴出口4からの洗浄水の噴出を停止すると、突出部7・7の間で洗浄水の液面Lが滑らかに下がる。このため、ノズル10の先端外面の洗浄水の水切れが良好になる。特に本実施形態では、ノズル10の先端が突出部7・7の間の位置fにあるときに洗浄水の噴出が停止されるので、ノズル10の先端が浸漬されている部分の液面Lが、緩やかに且つバラツキのない安定的な速度で下がることになる。
【0045】
一方、特許文献2の図6の構成では、ノズルを洗浄水噴出ブロックのV字溝の脇の位置で静止させ、V字溝の片側から流出させる洗浄水によってノズルを掛け洗いするようになっている。この場合、洗浄水供給手段を停止させると、ノズルの先端が浸漬されている部分の水面の降下速度は、V字溝内で水面が低下する降下速度よりも速かったり、あるいは降下速度のバラツキが大きくなったりしてしまい、洗浄水の水切れの良いときと悪いときのバラツキが生じ易い。この点、本実施形態では、洗浄水においてノズル10の先端が浸漬されている部分の液面Lが、その表面張力によって、突出部7・7の間で安定的にゆっくり下がることが確保されるので、水切れが安定して良好になるのである。
【0046】
また本実施形態では突出部7・7が鉛直上方に向けて備えられているから、突出部7をコンパクトな構成とでき、その周囲の容器2もコンパクトな構成とできる。また、突出部7・7が鉛直向きに設けられており、噴出口4から鉛直上方向きに洗浄水を噴出させて、突出部7・7の間の空間の両脇から洗浄水を溢れさせて排出する構成であるから、洗浄水ブロックを斜めに取り付けて斜め向きに洗浄水を噴出させ、V字溝の片側から脇に向けて流出させる特許文献2の構成に比べ、容器2内で洗浄水が広範囲に飛散するおそれが少なくなる。従って、この意味でも容器2をコンパクトとでき、省スペース性に優れたノズル洗浄装置を提供できる。
【0047】
更に、本実施形態のノズル洗浄装置1は図3に示すように、上方を開放させる凹部17が前記容器2の側壁16に設けられて、この凹部17の底部の高さh2は前記突出部7・7の先端高さh1よりも低くなっている。また、前記ノズル10の先端は、前記凹部17の内部及び前記突出部7・7の間の空間を通過可能に構成されている。この構成とすることで、図4や図5に示すように、凹部17を通じてノズル10を容易に容器2内に進入でき、また容器2から退出させることができる。更に、凹部17と突出部7・7の高さの関係を上記のように設定したことにより、凹部17を通って容器2に進入したノズル10を、その高さをあまり変更することなく突出部7・7の間の空間に進入させることができる。従って、例えば上記特許文献1に開示された浸け洗い方式(洗浄のためにノズルの上下移動が必要)に比べ、ノズルの洗浄に必要な時間を容易に短縮できる。
【0048】
また、本実施形態のノズル洗浄装置1は、前記ノズルが前記凹部17の内部を通過する方向と、ノズル10が前記突出部7の間の空間へ進入する方向又は前記空間から退出する方向とが、ほぼ一致している。従って、ノズル10の容器2への進入/退出動作と、前記突出部7・7の間の空間への進入/退出動作とが、一連の動作としてスムーズに行えるから、洗浄に必要な時間を短縮できる。
【0049】
更に言えば、本実施形態のノズル洗浄装置1は、図4や図5に示すように、(1)ノズル10の前記凹部17を通過しての前記容器2内への進入、(2)ノズル10の洗浄、(3)ノズル10の前記凹部17を通過しての前記容器2外への退出、の3つの動作が行われるときのノズル10の高さが、いずれも一致している。言い換えれば、前記(1)〜(3)の動作が行われる際、ノズル10の先端は上下動されることなく同一水平面内に位置している。この構成とすることにより、ノズル10の水平移動を行うだけで、ノズル10を容器へ進入させ、前記突出部7・7の間の空間へ進入させてノズル10を洗浄し、容器2から退出させる一連の動作を、スムーズに行える。この結果、洗浄に必要な時間を短縮できる。
【0050】
また、本実施形態のノズル洗浄装置1は、前記筒部3及び前記突出部7・7が、前記容器2と一体形成されている。これにより、部品点数を低減できるとともに、製造工数やコストを低減できる。なお、容器2の内底面から筒部3や突出部7・7の突出向き(鉛直上向き)は、上方開放状の容器2の四囲の側壁(側壁16・16を含む)の突出方向とほぼ同じである。従って、容器2の側壁や筒部3や突出部7・7を一体形成するための樹脂成形の金型も複雑な形状にならず、一体形成は容易である。
【0051】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は以上の構成に限定されるものではなく、例えば以下のように変更して実施することもできる。
【0052】
(1)上記の生化学分析装置60では、試薬を吸引・吐出するノズル10の数を2個、検体を吸引・吐出するノズル10の数を1個としたが、この構成に限定されない。例えば、試薬を吸引・吐出するノズル10の数が1個であっても良い。
【0053】
(2)生化学分析装置60が複数のノズル10を有する場合において、それぞれのノズル10の全てについて前記のノズル洗浄装置1が備えられている必要もない。例えば、検体用のノズル10に対してのみ前記実施形態のノズル洗浄装置1を設け、試薬用のノズル10に対しては他の構成のノズル洗浄装置を設けても構わない。
【0054】
(3)ノズル10の移動する軌跡10’については、円弧状に限定されず、例えば直線状の軌跡であっても良い。
【0055】
(4)洗浄液については、純水に限定されず、ノズルの先端を洗浄するための液体であれば、その組成はどのようなものであっても良い。
【0056】
(5)凹部17については、容器2の一方の側壁16にだけ設けられている構成であっても良い。例えば、ノズル洗浄装置1をノズル10の移動軌跡10’のストローク端部に設置する場合は、その一つのみ設けた凹部17を介してノズル10の容器2内への進入/容器2外への退出が行われる構成であっても良い。
【0057】
(6)洗浄動作の態様は、図4や図5に示したものに限られない。例えば図4の動作(検体庫62/試薬庫61から反応槽63へノズル10が向かうときの動作)において、位置bでノズル10をいったん静止させ、ポンプ13を停止して洗浄液の液面Lを滑らかに下降させ、ノズル10先端の水切れを良くする洗浄動作としても良い。
【0058】
(7)純水を噴出口4から噴出させるタイミング(ポンプ13を稼動させるタイミング)は、上記に示したものに限定されない。要は、ノズル10の先端が突出部7・7の間の空間に位置するとき又はその前のタイミングで純水が噴出されれば良く、ノズル10の先端が突出部7・7の間に位置するときに上記の噴出が停止されれば良い。
【0059】
(8)ポンプ13の稼動を停止して液面Lが下がるときのノズル10の先端は、上記の実施形態では静止させていたが、これに限定されず、液面Lが下がるときにノズル10の先端が突出部7・7の間で移動していても良い。
【0060】
(9)純水の供給/停止を制御する構成としては、上記のようにポンプ13を稼動/停止することに限らず、例えばポンプ13とノズル10との間に開閉弁を設け、この開閉弁の開閉を制御部18で制御することによって行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】生化学分析装置の全体構成を示す平面図。
【図2】本実施形態のノズル洗浄装置の構成を示す一部断面斜視図。
【図3】ノズル洗浄装置の正面図。
【図4】検体庫/試薬庫から反応槽へノズルが向かうときのノズルの洗浄の様子を示す斜視図。
【図5】反応槽から検体庫/試薬庫へノズルが向かうときのノズルの洗浄の様子を示す斜視図。
【図6】突出部の間にノズルを静止させた状態で洗浄水の液面を低下させる様子を示す正面図。
【符号の説明】
【0062】
1 ノズル洗浄装置
2 容器
3 筒部
4 噴出口
10 ノズル
16 側壁
17 凹部
L 洗浄水(洗浄液)の液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生化学分析装置において検体又は試薬を吸引・吐出するノズルを洗浄する洗浄装置であって、
上方開放状に形成された容器と、
この容器の内底面から鉛直上方に向けて突出するように設けられるとともに、洗浄液を噴出させる噴出口がその上端面に形成された筒部と、
上記筒部の上端面から鉛直上方に向けて突出するように備えられた、互いに対面する複数の突出部と、を有し、
前記噴出口の直上方かつ前記突出部の間にノズルの先端を位置させ、この状態で前記噴出口からの洗浄液の噴出を停止することを特徴とする、ノズル洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル洗浄装置であって、
上方を開放させる凹部が前記容器の側壁に設けられて、この凹部の底部の高さは前記突出部の先端高さよりも低くなっており、
前記ノズルの先端は、前記凹部の内部及び前記突出部の間の空間を通過可能に構成されていることを特徴とする、ノズル洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノズル洗浄装置であって、
前記ノズルが前記凹部の内部を通過する方向と、前記ノズルが前記突出部の間の空間を通過する方向とが、ほぼ一致していることを特徴とする、ノズル洗浄装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のノズル洗浄装置であって、
(1)前記ノズルの前記凹部を通過しての前記容器内への進入、(2)前記ノズルの洗浄、(3)前記ノズルの前記凹部を通過しての前記容器外への退出、の3つの動作が行われるときの前記ノズルの高さが、いずれも一致していることを特徴とする、ノズル洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載のノズル洗浄装置であって、前記筒部及び前記突出部が前記容器と一体形成されていることを特徴とする、ノズル洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載のノズル洗浄装置を備える生化学分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−126016(P2006−126016A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314931(P2004−314931)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】