説明

ノナフルオロペンテンとフッ化水素とを含む共沸組成物およびその使用

1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンとフッ化水素とを含む共沸組成物が本明細書において開示されている。この共沸組成物は、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを生成するプロセスおよび精製するプロセスにおいて有用である。更に、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタンとフッ化水素とを含む共沸組成物および近共沸組成物が本明細書において開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ノナフルオロペンテンとフッ化水素とを含む共沸組成物が本明細書において開示されている。この共沸組成物は、ノナフルオロペンテンを生成するプロセスおよび精製するプロセスにおいて有用である。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)などの塩素含有化合物は、地球のオゾン層に対して有害であると考えられている。CFCの代わりに用いられるフルオロカーボン(HFC)の多くは、地球温暖化の一因であることが見出された。従って、環境を損なわずに冷媒、溶媒、クリーニング剤、発泡体発泡剤、エアゾール噴射剤、伝熱媒体、誘電体、消火剤、滅菌剤およびパワーサイクル作動流体として機能するために必要な特性も有する新規化合物を見つけることが必要とされている。分子中に1つまたは複数の水素を含有する弗素化オレフィンは、例えば冷凍のような用途の一部において用いるために考慮されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,268,122号明細書
【特許文献2】米国特許第5,171,902号明細書
【特許文献3】米国特許第4,978,649号明細書
【非特許文献1】ショッテ(W.Schotte)、Ind.Eng.Chem.Process Des.Dev.(1980)、19、432〜439
【非特許文献2】「プロセス設計における相平衡(Phase Equilibrium in Process Design)」、ウィリー・インターサイエンス・パブリッシャー(Wiley−Interscience Publisher)、1970、ハロルドR・ヌル(Harold R.Null)著、頁124〜126
【非特許文献3】「気体および液体の特性(Properties of Gases and Liquids)」、第4版、発行会社マグローヒル(McGraw Hill)、レイド(Reid)、プラウスニッツ(Prausnitz)およびポーリング(Poling)著、頁241〜387
【非特許文献4】「化学工学における相平衡(Phase Equilibria in Chemical Engineering)」、バターワース・パブリッシャー(Butterworth Publishers)発行、1985、スタンリーM・ワラス(Stanley M.Walas)著、頁165〜244
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様は、1,1,1,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン(Z−HFC−1429mzy、CF3CH=CFCF2CF3)と1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン(Z−HFC−1429myz、CF3CF=CHCF2CF3)とフッ化水素(HF)とを含む共沸組成物または近共沸組成物に関する。
【0005】
更なる態様は、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)からZ−HFC−1429を分離する方法であって、(a)Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の混合物を形成する工程と、(b)本質的にHFC−43−10meeを含有しないフッ化水素およびZ−HFC−1429の共沸組成物または近共沸組成物を含む塔留出組成物が形成される蒸留工程に前記混合物を供する工程とを含む方法に関する。
【0006】
更なる態様は、Z−HFC−1429およびフッ化水素の共沸組成物または近共沸組成物を含む混合物からZ−HFC−1429を分離する方法であって、a)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第1の留出組成物として除去し、第1の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第1の蒸留工程に前記混合物を供する工程と、b)工程(a)における第1の塔底物組成物として富む成分を第2の留出組成物中に除去し、第2の塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、異なる圧力で行われる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供す工程とを含む方法に関する。
【0007】
更なる態様は、Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の混合物からZ−HFC−1429を精製する方法であって、a)前記混合物を第1の蒸留工程に供して、Z−HFC−1429およびフッ化水素を含有する共沸組成物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物およびHFC−43−10meeを含む第1の塔底物組成物を形成する工程と、b)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第2の留出組成物として除去し、第2の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程と、c)工程(b)における第2の塔底物組成物中に富む成分を第3の留出組成物中に除去し、第3の塔底物組成物を前記第2の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第2の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第3の蒸留工程に前記第2の留出組成物を供する工程とを含む方法に関する。
【0008】
更なる態様は、Z−HFC−1429を生成する方法であって、
a)脱フッ化水素のための反応域にHFC−43−10meeをフィードして、Z−HFC−1429、未反応HFC−43−10meeおよびフッ化水素を含む反応生成組成物を形成する工程と、b)前記反応生成組成物を第1の蒸留工程に供して、Z−HFC−1429およびフッ化水素を含有する共沸組成物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物およびHFC−43−10meeを含む第1の塔底物組成物を形成する工程と、c)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第2の留出組成物として除去し、第2の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程と、d)工程(c)における第2の塔底物組成物中に富む成分を第3の留出組成物中に除去し、第3の塔底物組成物を前記第2の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第2の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第3の蒸留工程に前記第2の留出組成物を供する工程とを含む方法に関する。
【0009】
更なる態様は、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の共沸組成物または近共沸組成物を含む混合物からHFC−43−10meeを分離する方法であって、a)(i)フッ化水素または(ii)HFC−43−10meeのいずれかに富む組成物を第1の留出組成物として除去し、第1の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第1の蒸留工程に前記混合物を供する工程と、b)工程(a)における第1の塔底物組成物として富む成分を第2の留出組成物として除去し、第2の蒸留工程の塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、異なる圧力で行われる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供す工程とを含む方法に関する。
【0010】
更なる態様は、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee)とフッ化水素(HF)とを含む共沸組成物または近共沸組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1つの態様は、1,1,1,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン(HFC−1429mzy、CF3CH=CFCF2CF3)および1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン(HFC−1429myz、CF3CF=CHCF2CF3)を含有する組成物に関する。HFC−1429mzyおよびHFC−1429myzは、それぞれ2つの構造異性体の1つ、EまたはZとして存在する。本明細書で用いられるZ−HFC−1429myzは、異性体Z−HFC−1429myzとE−HFC−1429myzの混合物を意味する。ここで主たる異性体はZ−HFC−1429myzである。本明細書で用いられるZ−HFC−1429mzyは、異性体Z−HFC−1429mzyとE−HFC−1429mzyの混合物を意味する。ここで主たる異性体はZ−HFC−1429mzyである。本明細書で用いられる「Z−HFC−1429」は、HFC−1429myzとHFC−1429mzyの混合物を意味する。ここで、両方の化合物は主としてZ異性体として存在する。Z−HFC−1429myz異性体とZ−HFC−1429mzy異性体のこうした混合物は、米国特許公報(特許文献1)に記載されたように当該技術上知られている方法によって調製してもよい。この特許は本明細書に引用して援用する。
【0012】
本明細書で用いられる主たる異性体は、50モル%を上回る、好ましくは60モル%を上回る、より好ましくは70モル%を上回る、なおより好ましくは80モル%を上回る、最も好ましくは90モル%を上回る濃度で組成物中に存在する当該異性体を意味することを意図している。
【0013】
無水フッ化水素(HF)も本明細書で開示された組成物中に含まれ、市販されている。
【0014】
更なる態様は、本明細書に引用して援用する米国特許公報(特許文献2)に記載されたように当該技術上知られている方法によって調製してもよく、そして市販されている1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10mee、CF3CHFCHFCF2CF3)を含有する組成物に関する。
【0015】
Z−HFC−1429およびHFへのHFC−43−10meeの脱フッ化水素のためのプロセスおよびこうしたプロセスからのZ−HFC−1429の分離を考慮して、ヒドロフルオロオレフィンZ−HFC−1429がHFと共沸混合物を形成することが驚くべきことに発見された。更に、ヒドロフルオロカーボンHFC−43−10meeがHFと共沸混合物を形成することが発見された。
【0016】
1つの態様は、共沸組成物を形成するためにZ−HFC−1429と有効量のフッ化水素(HF)とを含む組成物を提供する。有効量は、Z−HFC−1429と組み合わされた時、共沸混合物または近共沸混合物の生成をもたらす量を意味する。
【0017】
更なる態様は、共沸組成物を形成するためにHFC−43−10meeと有効量のフッ化水素(HF)とを含む組成物を提供する。有効量は、HFC−43−10meeと組み合わされた時、共沸混合物または近共沸混合物の生成をもたらす量を意味する。当該技術上理解されるように、共沸組成物または近共沸組成物は、所定の圧力下で液体の形態を取る時、個々の成分の沸騰温度より高くても、または低くてもよい実質的に一定の温度で沸騰し、沸騰する液体組成と本質的に同じ蒸気組成を提供する2つ以上の異なる成分の混合物である。
【0018】
この議論の目的において、近共沸組成物(一般に「共沸様組成物」とも呼ばれる)は、共沸混合物に似て挙動する(すなわち、沸騰または蒸発すると、一定の沸騰特性または分別しない傾向を有する)組成物を意味する。従って、沸騰または蒸発中に生成した蒸気の組成は、元の液体の組成と同じか、または実質的に同じである。従って、沸騰または蒸発中に、液体組成が仮にも変化する場合、液体組成は最少程度または極僅かな程度にのみ変化する。これは、沸騰または蒸発中に液体組成が実質的な程度に変化する非共沸組成物と対照的である。
【0019】
更に、近共沸組成物は実質的に圧力差がない露点圧力と泡立ち点圧力とを示す。すなわち、所定の温度での露点圧力と泡立ち点圧力の差は小さい値である。(泡立ち点圧力を基準にして)3%以下である露点圧力と泡立ち点圧力の差を有する組成物が近共沸混合物であると考えてもよいと言ってよい。
【0020】
従って、共沸組成物または近共沸組成物の必須の特徴は、所定の圧力で液体組成物の沸点が固定されており、沸騰している組成物より上にある蒸気の組成が沸騰している液体組成物の本質的に組成である(すなわち、液体組成物の成分の分別が起きない)ことである。共沸組成物の各成分の沸点と重量%の両方が、共沸液体組成物または近共沸液体組成物を異なる圧力で沸騰に供する時に変化し得ることも当該技術上認められている。従って、共沸組成物または近共沸組成物は、成分の間に存在する独特の関係または成分の組成範囲あるいは規定圧力での固定沸点によって特徴付けられる組成物の各成分の厳密な重量%の観点から定義してもよい。種々の共沸組成物(特定の圧力でのそれらの沸点を含む)を計算できることも当該技術上認められている(例えば、非特許文献1を参照すること)。こうした計算の精度を確認するためおよび/または同じかまたは他の温度および圧力で計算を修正するために同じ成分を含む共沸組成物の実験的照合を用いてもよい。
【0021】
フッ化水素とZ−HFC−1429の共沸組み合わせを含む組成物を形成してもよい。これらは、約67.4モル%〜約88.6モル%のHFと約32.6モル%〜約11.4モル%のZ−HFC−1429とを含む組成物(約−20℃〜約100℃の間の温度および約4.1psi(23.8kPa)〜約285psi(1965kPa)の間の圧力で共沸沸騰を形成する)を含む。
【0022】
更に、HFとZ−HFC−1429の近共沸組み合わせも形成してよい。こうした近共沸組成物は、約−20℃〜約100℃の範囲の温度および約4.1psi(23.8kPa)〜約285psi(1965kPa)の圧力で約10.3モル%〜約35.2モル%のZ−HFC−1429と約89.7モル%〜約64.8モル%のHFとを含む。
【0023】
フッ化水素とHFC−43−10meeの共沸組み合わせを含む組成物も形成してよい。これらは、約81.8モル%〜約97.3モル%のHFと約18.2モル%〜約2.7モル%のHFC−43−10meeとを含む組成物を含む(約−20℃〜約100℃の間の温度および約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)の間の圧力で共沸沸騰を形成する)。
【0024】
更に、HFおよびHFC−43−10meeを含有する近共沸組成物も形成してよい。こうした近共沸組成物は、約−20℃〜約100℃の範囲の温度および約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)の圧力で約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeと約97.4モル%〜約79.9モル%のHFとを含む。
【0025】
共沸組成物または近共沸組成物が所定の温度および圧力で成分の特定の比で存在してもよい一方で、共沸組成物が他の成分を含有する組成物においても存在してもよいことが理解されるべきである。
【0026】
フッ化水素とZ−HFC−1429の共沸組み合わせから本質的になる組成物を形成してもよい。これらは、約67.4モル%〜約88.6モル%のHFおよび約32.6モル%〜約11.4モル%のZ−HFC−1429から本質的になる組成物を含む(約−20℃〜約100℃の間の温度および約4.1psi(28.3kPa)〜約285psi(1965kPa)の間の圧力で共沸沸騰を形成する)。
【0027】
約−20℃〜約100℃の範囲の温度および約4.1psi(28.3kPa)〜約285psi(1965kPa)の圧力で約10.3モル%〜約35.2モル%のZ−HFC−1429および約89.7モル%〜約64.8モル%のHFから本質的になる近共沸組成物も形成してよい。
【0028】
大気圧で、フッ化水素酸およびZ−HFC−1429の沸点は、それぞれ約19.5℃および29℃である。HFおよびZ−HFC−1429の24psi(165kPa)および20℃での比揮発度は、82モル%のHFおよび18.0モル%のZ−HFC−1429に接近するにつれてほぼ1.0であることが見出された。124psi(855kPa)および70℃での比揮発度は、73.4モル%のHFおよび26.6モル%のZ−HFC−1429に接近するにつれてほぼ1.0であることが見出された。これらのデータは、従来の蒸留手順の使用が、化合物の比揮発度の低い値のゆえに実質的に純粋な化合物の分離をもたらさないことを示している。
【0029】
HFとZ−HFC−1429の比揮発度を決定するために、いわゆるPTx法を用いた。この手順において、既知体積のセル中の全絶対圧力は、既知の種々の二元組成物のために一定温度で測定される。PTx法の使用は、非特許文献2により詳しく記載されている。この参考文献の全体的な開示は本明細書に引用して援用する。蒸気および液体のサンプル、または2種の液相が存在する条件下での蒸気および2種の液相の各々のサンプルを得、それらのそれぞれの組成を確認するために分析した。
【0030】
これらの測定は、液相非理想度を表すために非ランダム2液(NRTL)反応式などの活性係数反応式モデルによってセル中の平衡蒸気組成および平衡液組成に換算することが可能である。NRTL反応式などの活性係数反応式の使用は、非特許文献3および非特許文献4により詳しく記載されている。前に確認された参考文献の各々の全体的な開示は本明細書に引用して援用する。
【0031】
いかなる理論または説明によっても拘束されることを望まずに、HFとZ−HFC−1429の混合物が理想的な方式で挙動するか否かをNRTL反応式が十分に予測することが可能であり、こうした混合物中の成分の比揮発度を十分に予測することが可能であることが考えられる。従って、比揮発度は、18.0モル%のZ−HFC−1429に20℃で接近するにつれてほぼ1.0になる。これは、こうした混合物からの従来の蒸留によってHFからZ−HFC−1429を分離することを不可能にするであろう。比揮発度が1.0に接近する所で、近共沸組成物または共沸組成物を形成するとしてシステムを定義する。
【0032】
Z−HFC−1429とHFの共沸混合物が様々な温度および圧力で形成されることが見出された。Z−HFC−1429および約67.4モル%のHF(および32.6モル%のZ−HFC−1429)〜約88.6モル%のHF(および11.4モル%のZ−HFC−1429)の範囲のHFから本質的になる共沸組成物は、(−25℃の温度で)4.1psi(28.3kPa)〜(100℃の温度で)285psi(1965kPa)の間で形成してもよい。約82モル%のHFおよび約18.0モル%のZ−HFC−1429から本質的になるHFとZ−HFC−1429の共沸混合物は、20℃および24.1psi(166kPa)で見出された。約73.4モル%のHFおよび約26.6モル%のZ−HFC−1429から本質的になるHFとZ−HFC−1429の共沸混合物も70℃および124psi(855kPa)で見出された。上の発見に基づいて、他の温度および圧力での共沸組成物を計算してもよい。約88.6モル%のHFおよび約11.4モル%のZ−HFC−1429の共沸組成物を−20℃および4.1psi(28.3kPa)で形成することが可能であり、約67.4モル%のHFおよび約32.6モル%のZ−HFC−1429の共沸組成物を100℃および285psi(1965kPa)で形成することが可能であることが計算された。従って、1つの態様は、約67.4モル%〜約88.6モル%のHFおよび約32.6モル%〜約11.4モル%のZ−HFC−1429から本質的になる共沸組成物を提供する。前記組成物は、4.1psi(28.3kPa)で約−20℃〜285psi(1965kPa)で約100℃の沸点を有する。
【0033】
約2.7モル%〜約18.2モル%のHFC−43−10meeおよび約97.3モル%〜約81.8モル%のHFから本質的になる共沸組成物または近共沸組成物を約−20℃〜約100℃の範囲の温度で約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)の間で形成してもよいことも見出された。
【0034】
フッ化水素とHFC−43−10meeの共沸組み合わせから本質的になる組成物を形成してもよい。これらは、約97.3モル%〜約81.8モル%のHFおよび約2.7モル%〜約18.2モル%のHFC−43−10meeから本質的になる組成物(約−20℃〜約100℃の間の温度および約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)の間の圧力で共沸沸騰を形成する)を含む。
【0035】
約−20℃〜約100℃の範囲の温度および約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)の圧力で約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeおよび約97.4モル%〜約79.9モル%のHFから本質的になる近共沸組成物も形成してよい。
【0036】
大気圧で、フッ化水素酸およびHFC−43−10meeの沸点は、それぞれ約19.5℃および55℃である。HFおよびHFC−43−10meeの25psi(172kPa)および30℃での比揮発度は、91.9モル%のHFおよび8.1モル%のHFC−43−10meeに接近するにつれてほぼ1.0であることが見出された。117psi(807kPa)および80℃での比揮発度は、84.8モル%のHFおよび15.2モル%のHFC−43−10meeに接近するにつれてほぼ1.0であることが見出された。これらのデータは、従来の蒸留手順の使用が、化合物の比揮発度の低い値のゆえに実質的に純粋な化合物の分離をもたらさないことを示している。
【0037】
HFとHFC−43−10meeの比揮発度を決定するために「Ptx法」も用いてよい。それから、これらの測定は、液相非理想度を表すために活性係数反応式モデルによってセル中の平衡蒸気組成および平衡液組成に換算した。この場合、非ランダム2液(NRTL)反応式も用いた。
【0038】
いかなる理論または説明によっても拘束されることを望まずに、HFとHFC−43−10meeの混合物が理想的な方式で挙動するか否かをNRTL反応式が十分に予測することが可能であり、こうした混合物中の成分の比揮発度を十分に予測することが可能であることが考えられる。比揮発度が、8.1モル%のHFC−43−10meeに30℃で接近するにつれてほぼ1.0になることが見出された。これは、こうした混合物からの従来の蒸留によってHFからHFC−43−10meeを分離することを不可能にするであろう。比揮発度が1.0に接近する所で、近共沸組成物または共沸組成物を形成するとしてシステムを定義する。
【0039】
HFC−43−10meeとHFの共沸混合物が様々な温度および圧力で形成されることが見出された。HFC−43−10meeおよび約97.3モル%のHF(および2.7モル%のHFC−43−10mee)〜約81.8モル%のHF(および18.2モル%のHFC−43−10mee)の範囲のHFから本質的になる共沸組成物は、(−20℃の温度で)3.0psi(20.7kPa)〜(100℃の温度で)約198psi(1365kPa)の間で形成してもよい。約91.9モル%のHFおよび約8.1モル%のHFC−43−10meeから本質的になるHFとHFC−43−10meeの共沸混合物は、30℃および25psi(172kPa)で見出された。約84.8モル%のHFおよび約15.2モル%のHFC−43−10meeから本質的になるHFとHFC−43−10meeの共沸混合物も、79.8℃および117psi(807kPa)も見出された。上の発見に基づいて、他の温度および圧力での共沸組成物を計算してもよい。約97.3モル%のHFおよび約2.7モル%のHFC−43−10meeの共沸組成物を−20℃および3.0psi(20.7kPa)で形成することが可能であり、約81.8モル%のHFおよび約18.2モル%のHFC−43−10meeの共沸組成物を100℃および198psi(1365kPa)で形成することが可能であることが計算された。従って、1つの態様は、約81.8モル%〜約97.3モル%のHFおよび約18.2モル%〜約2.7モル%のHFC−43−10meeから本質的になる共沸組成物を提供する。前記組成物は、3psi(20.7kPa)で約−20℃〜198psi(1365kPa)で約100℃の沸点を有する。
【0040】
約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeおよび約97.4モル%〜約79.9モル%のHFから本質的になる共沸組成物または近共沸組成物を約−20℃〜約100℃の範囲の温度で約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)の間で形成してもよいことも見出された。
【0041】
HF/Z−HFC−1429の共沸組成物または近共沸組成物およびHF/HFC−43−10meeの共沸組成物または近共沸組成物は、Z−HFC−1429を生成するプロセスにおいて、Z−HFC−1429を精製するプロセスにおいて、およびHFC−43−10meeを精製するプロセスにおいて有用である。実際、HF/Z−HFC−1429の共沸組成物または近共沸組成物は、Z−HFC−1429およびHFを含有する組成物を作るいかなるプロセスにおいても有用である場合がある。そしてHF/HFC−43−10meeの共沸組成物または近共沸組成物は、HFC−43−10meeおよびHFを含有する組成物を作るいかなるプロセスにおいても有用である場合がある。
【0042】
共沸蒸留は、気相脱フッ化水素によるZ−HFC−1429の生産のための出発材料であるHFC−43−10meeからZ−HFC−1429を分離するために行ってもよい。その後、二塔共沸蒸留は、所望のZ−HFC−1429生成物から共生産HFを分離するために行ってもよい。そして、もう1つの二塔共沸蒸留は、HFC−43−10meeからHFを分離するために行ってもよい。HFは、例えば、標準水溶液洗浄技術を用いて生成混合物のハロゲン化炭化水素成分から除去してもよい。しかし、実質的な量の洗浄排液の産出は水性廃棄物処理の問題をもたらし得る。従って、こうした生成混合物からのHFを利用するプロセスが必要とされ続けている。
【0043】
HF含有組成物にZ−HFC−1429を添加することを含む様々なソースから本明細書で開示されたプロセスにより処理された初期混合物を得ることができる一方で、本プロセスの有利な使用は、Z−HFC−1429の調製からのエフルエント混合物を処理することに存する。
【0044】
Z−HFC−1429は、米国特許公報(特許文献1)に記載されたプロセスなどの当該技術上知られているプロセスによるHFC−43−10meeの気相脱フッ化水素によって調製してもよい。この特許は本明細書に引用して援用する。
【0045】
更なる態様は、HFC−43−10meeからZ−HFC−1429を分離する方法であって、(a)Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の混合物を形成する工程と、(b)本質的にHFC−43−10meeを含有しないHFおよびZ−HFC−1429の共沸組成物または近共沸組成物を含む塔留出組成物が形成される蒸留工程に前記混合物を供する工程とを含む方法を提供する。
【0046】
本明細書で記載された「本質的にHFC−43−10meeを含有しない」は、組成物が約100ppm(モル基準)未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約1ppm未満のHFC−43−10meeを含有することを意味する。
【0047】
この共沸蒸留は、Z−HFC−1429およびHFによって形成された低沸点共沸組成物を利用する。共沸組成物は、純成分の沸点より低い温度および同様にHFC−43−10meeの沸点より低い温度で沸騰する。
【0048】
前述したように、Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびHFの混合物を実用的ないかなる手段によっても形成してよい。一般に、本プロセスは、HFC−43−10meeの脱フッ化水素によって生成する反応混合物からZ−HFC−1429を分離するために特に有用である。HFは、この脱フッ化水素反応において形成される共生成物である。その後、生成した反応混合物を本プロセスによって処理してHFC−43−10meeを除去してもよい。Z−HFC−1429は、Z−HFC−1429とHFの共沸組成物または近共沸組成物として蒸留塔からの留出物としてオーバーヘッドを占める。HFC−43−10meeは、塔底物組成物として塔の底から取り出され、少量のZ−HFC−1429も含有してよい。蒸留塔の塔底物からのHFC−43−10mee中のZ−HFC−1429の量は、脱フッ化水素反応を行う方式に応じて約45モル%から約1パーツパーミリオン(ppm、モル基準)まで異なってもよい。
【0049】
HFC−43−10meeとZ−HFC−1429とを含む塔底物組成物は、例えば、標準蒸留技術を用いて蒸留して2種の成分を分離してもよい。しかし、本質的にZ−HFC−1429を含有しないHFC−43−10meeを含む塔底物組成物を生成するような方式で共沸蒸留を行うことが好ましい。
【0050】
1つの実施形態において、本共沸蒸留の運転は、Z−HFC−1429/HF共沸オーバーヘッドのみを送るのではなく、過剰の一切のZ−HFC−1429(これは共沸濃度より高いZ−HFC−1429であろう)も送るために蒸留パラメータを修正することを含む。適切な条件を用いる場合、すべてのZ−HFC−1429はHFと一緒にオーバーヘッドに行く。従って、塔底物から除去されたHFC−43−10meeは、本質的にZ−HFC−1429を含有しない。
【0051】
本明細書で記載された「本質的にZ−HFC−1429を含有しない」は、組成物が約100ppm(モル基準)未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは1ppm未満のZ−HFC−1429を含有することを意味する。
【0052】
蒸留工程において、HFとZ−HFC−1429とを含む蒸留塔オーバーヘッドから出る留出物は、例えば、標準還流コンデンサを用いて凝縮させてもよい。この凝縮ストリームの少なくとも一部は還流として塔の頂上に戻してもよい。還流として塔の頂上に戻される凝縮した材料対、留出物として除去される材料の比を一般に還流比と呼ぶ。蒸留工程を実施するために用いてもよい特定の条件は、特に蒸留塔の直径、フィード点および塔内の分離段の数などの多くのパラメータに応じて異なる。蒸留塔の運転圧力は、約10psi〜約200psi(1380kPa)、通常は約15psi(103kPa)〜約50psi(345kPa)の範囲であってもよい。蒸留塔は、典型的には、約45℃〜約70℃の底温度および約15℃〜約40℃の頂上温度で約20psi(138kPa)の圧力で運転される。通常は、還流比の増加は、高い留出物ストリーム純度をもたらすが、一般に、還流比は0.2/1〜100/1の間の範囲である。塔の頂上に隣接して配置されるコンデンサの温度は、通常は塔の頂上から出つつある留出物を実質的に完全に凝縮させるのに十分であるか、または分縮によって所望の還流比を達成するのに必要な当該温度である。
【0053】
本質的にHFC−43−10meeを含有しないHFおよびZ−HFC−1429の共沸組成物または近共沸組成物を含む塔留出組成物は処理してHFを除去してもよく、そして生成物として純Z−HFC−1429を提供してもよい。これは、本明細書に記載されたように、例えば中和によって、または第2の蒸留プロセスによって実行してもよい。
【0054】
更なる態様は、Z−HFC−1429およびHFの共沸組成物または近共沸組成物を含む混合物からZ−HFC−1429を分離する方法であって、a)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第1の留出組成物として除去し、第1の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第1の蒸留工程に前記混合物を供する工程と、b)工程(a)における第1の塔底物組成物として富む成分を第2の留出組成物中に除去し、第2の塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第1の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供す工程とを含む方法を提供する。
【0055】
上述したプロセスは、異なる圧力での共沸組成の変化を利用して、Z−HFC−1429とHFの分離を実現する。第1の蒸留工程は、第2の蒸留工程を基準として高い圧力で行ってもよい。より高い圧力で、HF/Z−HFC−1429共沸混合物は、より高いレベルのZ−HFC−1429を含有する。従って、この高い圧力の蒸留工程は、共沸混合物より高い温度で沸騰する過剰のフッ化水素をもたらし、それは純フッ化水素として塔底物として塔から出る。その後、第1の塔留出物は、より低い圧力で運転する第2の蒸留工程にフィードされる。より低い圧力で、HF/Z−HFC−1429共沸混合物は、Z−HFC−1429のより低い濃度に変わる。従って、この第2の蒸留工程において、過剰のZ−HFC−1429が存在する。共沸混合物より高い沸点を有する過剰のZ−HFC−1429は、塔底物組成物として第2の蒸留塔から出る。
【0056】
あるいは、第1の蒸留工程は、第2の蒸留工程を基準として低い圧力で行ってもよい。より低い圧力で、HF/Z−HFC−1429共沸混合物は、より高いレベルのHFを含有する。従って、この低い圧力の蒸留工程は、共沸混合物より高い温度で沸騰する過剰のZ−HFC−1429をもたらし、それは純Z−HFC−1429として塔底物として塔から出る。その後、第1の塔留出物は、より高い圧力で運転する第2の蒸留工程にフィードされる。より高い圧力で、HF/Z−HFC−1429共沸混合物は、フッ化水素のより低い濃度に変わる。従って、この第2の蒸留工程において、過剰のフッ化水素が存在する。過剰のフッ化水素は、塔底物組成物として第2の蒸留塔から出る。
【0057】
Z−HFC−1429を生成するためのHFC−43−10meeの吸熱脱フッ化水素反応は、例えば、チューブ内に触媒を有し、反応器のシェル側に熱媒体を有するチューブラー反応器内で実行してもよい。あるいは、断熱運転を可能にするために熱キャリアを用いてもよい。両方とも本明細書で記載された蒸留プロセスによって生成される純HFC−43−10meeまたは純Z−HFC−1429のいずれかは、熱キャリアとして作用するために反応器に再循環して戻してもよい。脱フッ化水素反応器へのZ−HFC−1429の導入がHFC−43−10meeのワンパス転化率の減少をもたらすので、HFC−43−10meeは好ましい熱キャリアであろう。
【0058】
第1の蒸留工程と第2の蒸留工程の両方において、HFとZ−HFC−1429とを含む蒸留塔オーバーヘッドから出る留出物は、例えば、標準還流コンデンサを用いて凝縮させてもよい。この凝縮ストリームの少なくとも一部を還流として塔の頂上に戻してもよい。還流として蒸留塔の頂上に戻される凝縮した材料対、留出物として除去される材料の比を一般に還流比と呼ぶ。蒸留工程を実施するために用いてもよい特定の条件は、特に蒸留塔の直径、フィード点および塔内の分離段の数などの多くのパラメータに応じて異なる。高圧蒸留塔の運転圧力(高圧は第1の蒸留塔または第2の蒸留塔を問わない)は、約50psi(345kPa)〜約300psi(2068kPa)、通常は約100psi(690kPa)〜約250psi(1724kPa)の範囲であってもよい。高圧蒸留塔は、典型的には、約117℃の底温度および約92℃の頂上温度で約225psi(1551kPa)の圧力で運転される。通常は、還流比の増加は、高い留出物ストリーム純度をもたらすが、一般に、還流比は0.1/1〜100/1の間の範囲である。塔の頂上に隣接して配置されるコンデンサの温度は、通常は塔の頂上から出つつある留出物を実質的に完全に凝縮させるのに十分であるか、または分縮によって所望の還流比を達成するのに必要な当該温度である。
【0059】
低圧蒸留塔(低圧は第1の蒸留塔または第2の蒸留塔を問わない)の運転圧力は、約5psi(34kPa)〜約50psi(345kPa)、通常は約10psi(69kPa)〜約25psi(172kPa)の範囲であってもよい。低圧蒸留塔は、典型的には、約40℃の底温度および約15℃の頂上温度で約20psi(138kPa)の圧力で運転される。通常は、還流比の増加は、高い留出物ストリーム純度をもたらすが、一般に、還流比は0.1/1〜50/1の間の範囲である。塔の頂上に隣接して配置されるコンデンサの温度は、通常は塔の頂上から出つつある留出物を実質的に完全に凝縮させるのに十分であるか、または分縮によって所望の還流比を達成するのに必要な当該温度である。
【0060】
図1は、Z−HFC−1429とHFの分離のための本二塔蒸留プロセスを実施するための1つの実施形態を例示している。図1を参照すると、HFとZ−HFC−1429とを含む先行共沸蒸留から誘導されたフィード混合物であって、HF:Z−HFC−1429のモル比が約4.0:1(またはそれ以上)であるフィード混合物を約90℃の温度および約225psi(1550kPa)の圧力で運転する多段蒸留塔(510)へのライン(540)に通す。約118℃の温度および約227psi(1565kPa)の圧力で本質的に純粋なフッ化水素を含有する蒸留塔(510)の塔底物をライン(566)を通して塔(510)の底から除去する。約92℃の温度および約225psi(1550kPa)の圧力でHF/Z−HFC−1429共沸混合物(HF:Z−HFC−1429モル比は約2.3:1である)を含有する塔(510)からの留出物を塔(510)の頂上から除去し、ライン(570)を通して多段蒸留塔(520)に送る。約15℃の温度および約20psi(138kPa)の圧力でHF/Z−HFC−1429共沸混合物(モル比は約4.7:1である)を含有する塔(520)からの留出物をライン(585)を通して塔(520)から除去し、塔(510)に再循環して戻す。約40℃の温度および約22psi(152kPa)の圧力で本質的に純粋なHFを含有する塔(520)の塔底物をライン(586)を通して除去する。
【0061】
もう1つの実施形態において、塔の圧力を逆転させる。再び図1を参照すると、HFとZ−HFC−1429とを含む先行共沸蒸留から誘導されたフィード混合物であって、HF:Z−HFC−1429のモル比が約1.4:1(またはそれ以下)であるフィード混合物を約15℃の温度および約20psi(138kPa)の圧力で運転する多段蒸留塔(510)へのライン(540)に通す。約40℃の温度および約22psi(152kPa)の圧力で本質的に純粋なZ−HFC−1429を含有する蒸留塔(510)の塔底物をライン(566)を通して塔(510)の底から除去する。約15℃の温度および約20psi(138kPa)の圧力でHF/Z−HFC−1429共沸混合物(HF:Z−HFC−1429モル比は約4.7:1である)を含有する塔(510)からの留出物を塔(510)の頂上から除去し、ライン(570)を通して多段蒸留塔(520)に送る。約92℃の温度および約225psi(1550kPa)の圧力でHF/Z−HFC−1429共沸混合物(モル比は約2.3:1である)を含有する塔(520)からの留出物をライン(585)を通して塔(520)から除去し、塔(510)に再循環して戻す。約118℃の温度および約227psi(1565kPa)の圧力で本質的に純粋なHFを含有する塔(520)の塔底物をライン(586)を通して除去する。
【0062】
更なる態様は、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の共沸組成物または近共沸組成物を含む混合物からHFC−43−10meeを分離する方法であって、a)(i)フッ化水素または(ii)HFC−43−10meeのいずれかに富む組成物を第1の留出組成物として除去し、第1の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第1の蒸留工程に前記混合物を供する工程と、b)工程(a)における第1の塔底物組成物中に富む成分を第2の留出組成物中に除去し、塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第1の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程とを含む方法を提供する。
【0063】
前述した二塔共沸蒸留に似て、第1の蒸留工程と第2の蒸留工程の両方に関して、HFとHFC−43−10meeとを含む蒸留塔オーバーヘッドから出る留出物は、例えば、標準還流コンデンサを用いて凝縮させてもよい。この凝縮ストリームの少なくとも一部は還流として塔の頂上に戻してもよい。還流として蒸留塔の頂上に戻される凝縮した材料対、留出物として除去される材料の比を一般に還流比と呼ぶ。蒸留工程を実施するために用いてもよい特定の条件は、特に蒸留塔の直径、フィード点および塔内の分離段の数などの多くのパラメータに応じて異なる。高圧蒸留塔(高圧は第1の蒸留塔または第2の蒸留塔を問わない)の運転圧力は、約50psi(345kPa)〜約200psi(1380kPa)、通常は約100psi(70kPa)〜約200psi(1380kPa)の範囲であってもよい。高圧蒸留塔は、典型的には、約109℃の底温度および約98℃の頂上温度で約185psi(1276kPa)の圧力で運転される。通常は、還流比の増加は、高い留出物ストリーム純度をもたらすが、一般に、還流比は0.1/1〜50/1の間の範囲である。塔の頂上に隣接して配置されるコンデンサの温度は、通常は塔の頂上から出つつある留出物を実質的に完全に凝縮させるのに十分であるか、または分縮によって所望の還流比を達成するのに必要な当該温度である。
【0064】
低圧蒸留塔(低圧は第1の蒸留塔または第2の蒸留塔を問わない)の運転圧力は、約10psi(69kPa)〜約100psi(689kPa)、通常は約15psi(103kPa)〜約50psi(345kPa)の範囲であってもよい。低圧蒸留塔は、典型的には、約66℃の底温度および約24℃の頂上温度で約20psi(138kPa)の圧力で運転される。通常は、還流比の増加は、高い留出物ストリーム純度をもたらすが、一般に、還流比は0.1/1〜50/1の間の範囲である。塔の頂上に隣接して配置されるコンデンサの温度は、通常は塔の頂上から出つつある留出物を実質的に完全に凝縮させるのに十分であるか、または分縮によって所望の還流比を達成するのに必要な当該温度である。
【0065】
図1は、HFC−43−10meeとHFの分離のための本二塔蒸留プロセスを実施するための1つの実施形態を同様に例示している。図1を参照すると、HFC−43−10meeおよびHFの共沸組成物または近共沸組成物を含むフィード混合物であって、HF:HFC−43−10meeのモル比が約0.53:1(またはそれ以下)であるフィード混合物を約24℃の温度および約20psi(138kPa)の圧力で運転する多段蒸留塔(510)へのライン(540)に通す。約66℃の温度および約22psi(152kPa)の圧力で本質的に純粋なHFC−43−10meeを含有する蒸留塔(510)の塔底物をライン(566)を通して塔(510)の底から除去する。約24℃の温度および約20psi(138kPa)の圧力でHF/HFC−43−10mee共沸混合物(HF:HFC−43−10meeモル比は約12.4:1である)を含有する塔(510)からの留出物を塔(510)の頂上から除去し、ライン(570)を通して多段蒸留塔(520)に送る。約98℃の温度および約185psi(1276kPa)の圧力でHF/HFC−43−10mee共沸混合物(モル比は約4.9:1である)を含有する塔(520)からの留出物をライン(585)を通して塔(520)から除去し、塔(510)に再循環して戻す。約109℃の温度および約187psi(1289kPa)の圧力で本質的に純粋なフッ化水素を含有する塔(520)の塔底物をライン(586)を通して除去する。
【0066】
もう1つの実施形態において、塔の圧力を逆転させる。再び図1を参照すると、HFC−43−10meeおよびHFの共沸組成物または近共沸組成物を含むフィード混合物であって、HF:HFC−43−10meeのモル比が約5.1:1(またはそれ以上)であるフィード混合物を約97℃の温度および約185psi(1276kPa)の圧力で運転する多段蒸留塔(510)へのライン(540)に通す。約109℃の温度および約187psi(1289kPa)の圧力で本質的に純粋なフッ化水素を含有する蒸留塔(510)の塔底物をライン(566)を通して塔(510)の底から除去する。約98℃の温度および約185psi(1276kPa)の圧力でHF/HFC−43−10mee共沸混合物(HF:HFC−43−10meeモル比は約4.9:1である)を含有する塔(510)からの留出物を塔(510)の頂上から除去し、ライン(570)を通して多段蒸留塔(520)に送る。約24℃の温度および約20psi(138kPa)の圧力でHF/HFC−43−10mee共沸混合物(モル比は約12.3:1である)を含有する塔(520)からの留出物をライン(585)を通して塔(520)から除去し、塔(510)に再循環して戻す。約66℃の温度および約22psi(152kPa)の圧力で本質的に純粋なHFC−43−10meeを含有する塔(520)の塔底物をライン(586)を通して除去する。
【0067】
更なる態様は、Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびHFの混合物からZ−HFC−1429を精製する方法であって、a)前記混合物を第1の蒸留工程に供して、Z−HFC−1429およびフッ化水素を含有する共沸組成物または近共沸組成物を含む第1の留出物およびHFC−43−10meeを含む第1の塔底物を形成する工程と、b)(i)フッ化水素または(ii)HFC−43−10meeのいずれかに富む組成物を第2の留出組成物として除去し、第2の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第2の蒸留工程に第1の留出物を供する工程と、c)工程(b)における第2の塔底物組成物中に富む成分を第3の留出組成物中に除去し、第3の塔底物組成物を前記第2の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第2の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第3の蒸留工程に前記第2の留出組成物を供する工程とを含む方法を提供する。
【0068】
更なる態様は、Z−HFC−1429を生成する方法であって、a)脱フッ化水素のための反応域にHFC−43−10meeをフィードして、Z−HFC−1429、未反応HFC−43−10meeおよびフッ化水素を含む反応生成組成物を形成する工程と、b)前記反応生成組成物を第1の蒸留工程に供して、Z−HFC−1429およびHFを含有する共沸組成物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物およびHFC−43−10meeを含む第1の塔底物組成物を形成する工程と、c)(i)フッ化水素または(ii)HFC−43−10meeのいずれかに富む組成物を第2の留出組成物として除去し、第2の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程と、d)工程(b)における第2の塔底物組成物中に富む成分を第3の留出組成物中に除去し、第3の塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第2の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第3の蒸留工程に前記第2の留出組成物を供する工程とを含む方法を提供する。任意に、本プロセスは、前記第1の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を前記反応域に再循環する工程を更に含んでもよい。任意に、本プロセスは、前記第2の塔底物組成物または前記第3の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を前記反応域に再循環する工程を更に含んでもよい。任意に、本プロセスは、前記第2の塔底物組成物または前記第3の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を前記第1の蒸留工程に再循環する工程を更に含んでもよい。任意に、本プロセスは、前記第2の塔底物組成物または前記第3の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を本質的にHFC−43−10meeおよびHFを含有しないZ−HFC−1429として回収する工程を更に含んでもよい。
【0069】
本明細書に記載された「本質的にHFC−43−10meeおよびHFを含有しない」は、組成物が約100ppm未満(モル基準)、好ましくは10ppm未満、最も好ましくは約1ppm未満のHFC−43−10meeおよびHFの各々を含有することを意味する。
【0070】
脱フッ化水素のための反応域は、好ましくは脱フッ化水素触媒の固定床を含有する流通反応装置を含んでもよい。本明細書で開示されたすべてのプロセスのためのプロセス装置および関連したフィードライン、エフルエントラインおよび関連した装置は、フッ化水素に耐える材料から製作してもよい。当業者に周知されている典型的な建設材料には、ステンレススチール、特にオーステナイト型のステンレススチール、「モネル(Monel)」(登録商標)ニッケル−銅合金、「ハステロイ(Hastelloy)」(登録商標)ニッケル系合金および「インコネル(Inconel)」(登録商標)ニッケル−クロム合金などの周知された高ニッケル合金が挙げられる。
【0071】
図2はZ−HFC−1429の生成に関する本プロセスを実施するための1つの実施形態を例示している。HFC−43−10meeをライン(360)を通して反応器(320)にフィードする。HF、HFC−43−10meeおよびZ−HFC−1429を含む反応器エフルエント混合物は、ライン(450)を通して反応器から出、多段蒸留塔(410)にフィードする。本質的に純粋なHFC−43−10meeを含有する蒸留塔(410)の塔底物をライン(466)を通して塔(410)の底から除去し、反応器に再循環して戻してもよい。HF/Z−HFC−1429共沸混合物を含有する塔(410)からの留出物を塔(410)の頂上から除去し、ライン(540)を通して第2の多段蒸留塔(510)に送る。本質的に純粋なZ−HFC−1429である塔(510)からの塔底物をライン(566)を通して塔(510)から除去し、熱キャリアとして反応器(320)に再循環して戻してもよい。HF/Z−HFC−1429共沸混合物を含有する塔(510)からの留出物をライン(570)を通して第3の多段蒸留塔(520)にフィードする。HF/Z−HFC−1429を含む塔(520)からの留出物をライン(585)を通して除去し、第2の蒸留塔(510)に再循環してもよい。塔(520)からの塔底物組成物は本質的に純粋なHFであり、ライン(586)を通して塔(520)から除去する。このプロセスからの本質的に純粋なHF生成物をフルオロケミカル化合物の生成のために弗素化反応器にフィードするなどの適切ないかなる方式でも用いてよいか、または処分のために中和してもよい。
【0072】
図において例示していない一方で、プロセス装置の幾つかの部品を本明細書に記載されたプロセスにおいて最適化のために用いてもよい。例えば、ポンプ、ヒータまたはクーラーを適切な場合に用いてもよい。例として、原料をフィードする塔内の点と同じ温度で蒸留塔への原料を有することが望ましい。従って、プロセスストリームの加熱および冷却は温度を調和させるために必要な場合がある。
【0073】
更に補足説明せずに、当業者が本明細書の中の説明を用いて、開示された組成物および方法を最大限に利用することが可能であることが信じられる。従って、以下の例示的な実施形態は単に例示として解釈されるべきであり、開示の残りをいかにしても全く制限しない。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
(炭素質触媒上でのHFC−1429mzyおよびHFC−1429myzへのHFC−43−10meeの脱フッ化水素)
「ハステロイ(Hastelloy)」ニッケル合金反応器(OD1.0インチ×ID0.854インチ×L9.5インチ)に米国特許公報(特許文献3)に実質的に記載されたように調製された球状(8メッシュ)三次元マトリックス多孔質炭素質材料14.32g(25mL)を投入した。この特許は本明細書に引用して援用する。反応器の外側に締め付けられた5インチ×1インチのセラミック製バンドヒータによって反応器の充填部分を加熱した。反応器壁とヒータとの間に置かれた熱電対は、反応器温度を測定した。炭素質材料を反応器に投入後に、窒素(10mL/分)を反応器に通し、温度を一時間の間に200℃に上げ、この温度を更に4時間にわたり維持した。その後、反応器温度を所望の運転温度に上げ、HFC−43−10meeの流れ(5mL/時間)および窒素を反応器を通して開始した。
【0075】
質量選択検出器(GC−MS)を備えたガスクロマトグラフを用いる有機生成物分析のために、全反応器エフルエントの一部をオンラインでサンプリングした。有機生成物およびHFなどの無機酸も含有する大部分の反応器エフルエントを中和のために水性苛性アルカリで処理した。
【0076】
GCモル%において得られた結果を表1にまとめている。表1において、tempは温度であり、unksは未知であり、他のHFCは、HFC−23(トリフルオロメタン)、HFC−125(ペンタフルオロエタン)およびHFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)を含む。
【0077】
【表1】

【0078】
(実施例2)
(HFとZ−HFC−1429の混合物の相研究)
Z−HFC−1429およびHFから本質的になる組成物に関する相研究を行った。相研究において、組成を変え、蒸気圧を20℃と70℃の両方で測定した。相研究からのデータに基づいて、他の温度および圧力での共沸組成を計算した。
【0079】
表2は、規定温度および圧力でのHFおよびZ−HFC−1429に関する実験的計算共沸組成のまとめを示している。
【0080】
【表2】

【0081】
(実施例3)
(Z−HFC−1429に関する露点蒸気圧および泡立ち点蒸気圧)
本明細書で開示された組成物に関する露点蒸気圧および泡立ち点蒸気圧を測定熱力学的特性および計算熱力学的特性から計算した。露点圧力と泡立ち点圧力の差が(泡立ち点圧力を基準にして)3%以下であるZ−HFC−1429の最低濃度および最高濃度(モル百分率、モル%)によって近共沸範囲を示している。結果を表3にまとめている。
【0082】
【表3】

【0083】
(実施例4)
(HFとHFC−43−10meeの混合物の相研究)
HFC−43−10meeおよびHFから本質的になる組成物に関する相研究を行った。相研究において、組成を変え、蒸気圧を30℃と80℃の両方で測定した。相研究からのデータに基づいて、他の温度および圧力での共沸組成を計算した。
【0084】
表4は、規定温度および圧力でのHFおよびHFC−43−10meeに関する実験的計算共沸組成のまとめを示している。
【0085】
【表4】

【0086】
(実施例5)
(HFC−43−10meeに関する露点蒸気圧および泡立ち点蒸気圧)
本明細書で開示された組成物に関する露点蒸気圧および泡立ち点蒸気圧を測定熱力学的特性および計算熱力学的特性から計算した。露点圧力と泡立ち点圧力の差が(泡立ち点圧力を基準にして)3%以下であるHFC−43−10meeの最低濃度および最高濃度(モル百分率、モル%)によって近共沸範囲を示している。結果を表5にまとめている。
【0087】
【表5】

【0088】
(実施例6)
(HFC−43−10meeからZ−HFC−1429を分離するための共沸蒸留)
Z−HFC−1429の精製の目的のためにHF、Z−HFC−1429およびHFC−43−10meeの混合物を蒸留塔にフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表6のデータを得た。
【0089】
【表6】

【0090】
(実施例7)
(HFC−43−10meeからZ−HFC−1429を分離するための共沸蒸留)
Z−HFC−1429の精製の目的のためにHF、Z−HFC−1429およびHFC−43−10meeの混合物を蒸留塔にフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表7のデータを得た。
【0091】
【表7】

【0092】
(実施例8)
(HFからZ−HFC−1429を分離するための二塔共沸蒸留)
Z−HFC−1429の精製の目的のためにHFとZ−HFC−1429の混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表8のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0093】
【表8】

【0094】
(実施例9)
(HFからZ−HFC−1429を分離するための二塔共沸蒸留)
Z−HFC−1429の精製の目的のためにHFとZ−HFC−1429の混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表9のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0095】
【表9】

【0096】
(実施例10)
(HFからZ−HFC−1429を分離するための二塔共沸蒸留)
Z−HFC−1429の精製の目的のためにHFとZ−HFC−1429の混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表10のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0097】
【表10】

【0098】
(実施例11)
(HFからZ−HFC−1429を分離するための二塔共沸蒸留)
Z−HFC−1429の精製の目的のためにHFとZ−HFC−1429の混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表11のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0099】
【表11】

【0100】
(実施例12)
(HFからHFC−43−10meeを分離するための二塔共沸蒸留)
HFC−43−10meeの精製の目的のためにHFとHFC−43−10meeの混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表12のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0101】
【表12】

【0102】
(実施例13)
(HFからHFC−43−10meeを分離するための二塔共沸蒸留)
HFC−43−10meeの精製の目的のためにHFとHFC−43−10meeの混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表13のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0103】
【表13】

【0104】
(実施例14)
(HFからHFC−43−10meeを分離するための二塔共沸蒸留)
HFC−43−10meeの精製の目的のためにHFとHFC−43−10meeの混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表14のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0105】
【表14】

【0106】
(実施例15)
(HFからHFC−43−10meeを分離するための二塔共沸蒸留)
HFC−43−10meeの精製の目的のためにHFとHFC−43−10meeの混合物を蒸留プロセスにフィードする。測定熱力学的特性および計算熱力学的特性を用いる計算によって表15のデータを得た。列の一番上の番号は図1に関連する。
【0107】
【表15】

【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】二塔共沸蒸留プロセスの実施のための一実施形態を例示している概略流れ図である。
【図2】Z−HFC−1429の生成に関するプロセスの実施のための一実施形態を例示している概略流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z−HFC−1429とフッ化水素とを含むことを特徴とする共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項2】
Z−HFC−1429と有効量のフッ化水素とを含むことを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項3】
約10.3モル%〜約35.2モル%のZ−HFC−1429とフッ化水素とを含むことを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項4】
約10.3モル%〜約35.2モル%のZ−HFC−1429と約89.7モル%〜約64.8モル%のフッ化水素とを含むことを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項5】
約10.3モル%〜約35.2モル%のZ−HFC−1429と約89.7モル%〜約64.8モル%のフッ化水素とを含み、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約4.1psi(28.3kPa)〜約285psi(1965kPa)であることを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項6】
前記組成物が約10.3モル%〜約35.2モル%のZ−HFC−1429および約89.7モル%〜約64.8モル%のフッ化水素から本質的になり、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約4.1psi(28.3kPa)〜約285psi(1965kPa)であることを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項7】
約11.4モル%〜約32.6モル%のZ−HFC−1429と約88.6モル%〜約67.4モル%のフッ化水素とを含み、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約4.1psi(28.3kPa)〜約285psi(1965kPa)であることを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物。
【請求項8】
約11.4モル%〜約32.6モル%のZ−HFC−1429および約88.6モル%〜約67.4モル%のフッ化水素から本質的になり、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約4.1psi(28kPa)〜約285psi(1965kPa)であることを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物。
【請求項9】
前記組成物が泡立ち点圧力を基準にして3%以下である露点圧力と泡立ち点圧力との間の差によって特徴付けられることを特徴とする請求項1に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項10】
HFC−43−10meeからZ−HFC−1429を分離する方法であって、
(a)Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の混合物を形成する工程と、
(b)本質的にHFC−43−10meeを含有しないフッ化水素およびZ−HFC−1429の共沸組成物または近共沸組成物を含む塔留出組成物が形成される蒸留工程に前記混合物を供する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記蒸留工程がHFC−43−10meeを含む塔底物組成物を更に形成することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記塔底物組成物が本質的にフッ化水素を含有しないHFC−43−10meeを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の前記混合物が各成分の等モル量を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の前記混合物が過剰のZ−HFC−1429を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
Z−HFC−1429およびフッ化水素の共沸組成物または近共沸組成物を含む混合物からZ−HFC−1429を分離する方法であって、
a)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第1の留出組成物として除去し、第1の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第1の蒸留工程に前記混合物を供する工程と、
b)工程(a)における第1の塔底物組成物として富む成分を第2の留出組成物中に除去し、第2の塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、異なる圧力で行われる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1の塔底物組成物が本質的にフッ化水素を含有しないZ−HFC−1429を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の塔底物組成物が本質的にZ−HFC−1429を含有しないフッ化水素を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の蒸留工程を前記第2の蒸留工程の圧力より高い圧力で行うことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物が有効量のフッ化水素と組み合わせたZ−HFC−1429から本質的になって、フッ化水素を有する共沸組成物または近共沸組成物を形成し、前記共沸組成物または近共沸組成物が約64.5モル%〜約69.0モル%のZ−HFC−1429を含有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
Z−HFC−1429、HFC−43−10meeおよびフッ化水素の混合物からZ−HFC−1429を精製する方法であって、
a)前記混合物を第1の蒸留工程に供して、Z−HFC−1429およびフッ化水素を含有する共沸組成物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物およびHFC−43−10meeを含む第1の塔底物組成物を形成する工程と、
b)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第2の留出組成物として除去し、第2の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第2の蒸留工程に第1の留出組成物を供する工程と、
c)工程(b)における第2の塔底物組成物中に富む成分を第3の留出組成物中に除去し、第3の塔底物組成物を前記第2の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第2の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第3の蒸留工程に前記第2の留出組成物を供する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
Z−HFC−1429を生成する方法であって、
a)脱フッ化水素のための反応域にHFC−43−10meeをフィードして、Z−HFC−1429、未反応HFC−43−10meeおよびフッ化水素を含む反応生成組成物を形成する工程と、
b)前記反応生成組成物を第1の蒸留工程に供して、Z−HFC−1429およびフッ化水素を含有する共沸組成物または近共沸組成物を含む第1の留出組成物およびHFC−43−10meeを含む第1の塔底物組成物を形成する工程と、
c)(i)フッ化水素または(ii)Z−HFC−1429のいずれかに富む組成物を第2の留出組成物として除去し、第2の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程と、
d)工程(c)における第2の塔底物組成物中に富む成分を第3の留出組成物中に除去し、第3の塔底物組成物を前記第2の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、第2の蒸留工程とは異なる圧力で行われる第3の蒸留工程に前記第2の留出組成物を供する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記第1の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を前記反応域に再循環する工程を更に含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を前記反応域に再循環する工程を更に含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
本質的にHFC−43−10meeおよびフッ化水素を含有しないZ−HFC−1429として前記第2の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を回収する工程を更に含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の塔底物組成物の少なくともいくらかの部分を前記第1の蒸留工程に再循環する工程を更に含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
HFC−43−10meeおよびフッ化水素の共沸組成物または近共沸組成物を含む混合物からHFC−43−10meeを分離する方法であって、
a)(i)フッ化水素または(ii)HFC−43−10meeのいずれかに富む組成物を第1の留出組成物として除去し、第1の塔底物組成物を前記成分(i)または(ii)の他方に富ませる第1の蒸留工程に前記混合物を供する工程と、
b)工程(a)における第1の塔底物組成物として富む成分を第2の留出組成物として除去し、第2の蒸留工程の塔底物組成物を前記第1の留出組成物中に富んでいた同じ成分に富ませる、異なる圧力で行われる第2の蒸留工程に前記第1の留出組成物を供する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記第1の塔底物組成物が本質的にフッ化水素を含有しないHFC−43−10meeを含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の塔底物組成物が本質的にHFC−43−10meeを含有しないフッ化水素を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の塔底物組成物が本質的にHFC−43−10meeを含有しないフッ化水素を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の塔底物組成物が本質的にフッ化水素を含有しないHFC−43−10meeを含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の蒸留工程が前記第1の蒸留工程の圧力より高い圧力で行われることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の蒸留工程が前記第1の蒸留工程の圧力より低い圧力で行われることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項33】
HFC−43−10meeとフッ化水素とを含むことを特徴とする共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項34】
HFC−43−10meeと有効量のフッ化水素とを含むことを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項35】
約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeとフッ化水素とを含むことを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項36】
約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeと約97.4モル%〜約79.9モル%のフッ化水素とを含むことを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項37】
約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeと約97.4モル%〜約79.9モル%のフッ化水素とを含み、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)であることを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項38】
前記組成物が約2.6モル%〜約20.1モル%のHFC−43−10meeおよび約97.4モル%〜約79.9モル%のフッ化水素から本質的になり、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)であることを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物または近共沸組成物。
【請求項39】
約2.7モル%〜約18.2モル%のHFC−43−10meeと約97.3モル%〜約81.8モル%のフッ化水素とを含み、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)であることを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物。
【請求項40】
前記組成物が約2.7モル%〜約18.2モル%のHFC−43−10meeおよび約97.3モル%〜約81.8モル%のフッ化水素から本質的になり、蒸気圧が約−20℃〜約100℃の温度で約3.0psi(20.7kPa)〜約198psi(1365kPa)であることを特徴とする請求項30に記載の共沸組成物。
【請求項41】
前記組成物が(泡立ち点圧力を基準にして)3%以下である露点圧力と泡立ち点圧力との間の差によって特徴付けられることを特徴とする請求項33に記載の共沸組成物または近共沸組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513817(P2009−513817A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539019(P2008−539019)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/042773
【国際公開番号】WO2007/053738
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】