ノーブロー工法用フィッティングおよびノーブロー工法用フィッティングの製造方法
【課題】上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接すること。
【解決手段】管材2がその管軸方向に分割されてなる上部フィッティング3および下部フィッティング4を備え、管材2には、管軸に直交する挿通軸と同軸に既設本管用の挿通孔が形成されるとともに、管材2は、管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ挿通軸に沿って延びる仮想切断面S2に沿って切断されることで分割され、上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a間には、全周にわたって開先10が形成され、直交面に対する仮想切断面S2の傾斜角度θの大きさは、開先10のうち、最も上側に位置する最上部分10Aにおける上部フィッティング3側の第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における下部フィッティング4側の第2ベベル角度の大きさ以下とされたノーブロー工法用フィッティング1を提供する。
【解決手段】管材2がその管軸方向に分割されてなる上部フィッティング3および下部フィッティング4を備え、管材2には、管軸に直交する挿通軸と同軸に既設本管用の挿通孔が形成されるとともに、管材2は、管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ挿通軸に沿って延びる仮想切断面S2に沿って切断されることで分割され、上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a間には、全周にわたって開先10が形成され、直交面に対する仮想切断面S2の傾斜角度θの大きさは、開先10のうち、最も上側に位置する最上部分10Aにおける上部フィッティング3側の第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における下部フィッティング4側の第2ベベル角度の大きさ以下とされたノーブロー工法用フィッティング1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設本管内の流体を止めずにかつ減圧することなく分岐管を設けるノーブロー工法に使用されるノーブロー工法用フィッティング、およびノーブロー工法用フィッティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のノーブロー工法用フィッティングとして、例えば下記特許文献1に示されるような上下2分割型の構成が知られている。このノーブロー工法用フィッティングは、鋼管を素材として、その鋼管の外径および肉厚を変化させる加工を施した後、加工された鋼管を切断することで形成された上部フィッティングおよび下部フィッティングを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−18489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記従来のノーブロー工法用フィッティングでは、更なるコスト改善の余地があり、例えば、図11および図12に示すような第1の構成を採用することが考えられる。このノーブロー工法用フィッティング100では、上部フィッティング101および下部フィッティング102は、管材103がその管軸104方向に分割されてなる。管材103には、管軸104に直交する挿通軸105と同軸に既設本管106用の一対の挿通孔107が形成されるとともに、図12に示すように、管材103は、管軸104に直交し、挿通軸105に沿って延びる仮想切断面108に沿って切断されることで分割されている。また、下部フィッティング102において、管材103の周方向で一対の挿通孔107の間に位置する部分には、分岐用開口部109が配設されている。
この構成によれば、管材103として例えば鋼管を採用した場合であっても、その鋼管の外径および肉厚を変化させる加工を省略することが可能になり、低コスト化を図ることができる。
【0005】
ところで、既設本管106が例えば地中に埋設されている場合、ノーブロー工法用フィッティング100を既設本管106に溶接するためには、地面を掘削して既設本管106を露出させる必要がある。このとき、下部フィッティング102を既設本管106の下側に配置するために、単に既設本管106を露出させるだけでなく、既設本管106よりも深い位置まで地面を掘削する必要があり、手間がかかるという問題がある。また例えば、既設本管106よりも深い位置に他の既設本管などが埋設されていて、既設本管106よりも深い位置まで地面を掘削することが困難な場合には、下部フィッティング102を既設本管106の下側に配置できないおそれがある。
【0006】
そこで、これらの問題を解決するために、ノーブロー工法用フィッティングとして、以下に示す第2の構成を採用することが考えられる。すなわち、このノーブロー工法用フィッティングでは、管材は、管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断されることで分割される。
この構成によれば、前記第1の構成に比べて、分岐用開口部を上方に配設することが可能になり、下部フィッティングにおいて、既設配管よりも下方に位置することとなる部分の上下方向に沿った大きさを小さくすることができる。これにより、ノーブロー工法用フィッティングを既設本管に溶接するときに、地面を掘削する深さを小さく抑えることができる。
【0007】
ところで、前記第2の構成におけるノーブロー工法用フィッティングでは、上部フィッティングおよび下部フィッティングの既設本管への溶接の高精度化について改善の余地があった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接することができるノーブロー工法用フィッティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るノーブロー工法用フィッティングは、管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングであって、前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成されるとともに、前記管材は、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断されることで分割され、前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングの切断端部間には、全周にわたって開先が形成され、前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさは、前記開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とされていることを特徴とする。
【0010】
また、管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングの製造方法であって、前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成され、前記管材を、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断して分割し、上部フィッティング材および下部フィッティング材を形成する切断工程と、前記上部フィッティング材および前記下部フィッティング材の切断端部を全周にわたって開先加工して、前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングを形成する開先形成工程と、を有し、前記切断工程の際、前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさを、前記開先形成工程で形成予定の開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とすることを特徴とする。
【0011】
この発明では、前記傾斜角度の大きさが、開先の前記第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度の大きさ以下とされているので、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接することができる。
【0012】
すなわち、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度の大きさ以下とすることで、管材において、切断工程の切断により切除される切除領域のうちの最も上側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先の形成予定領域内に収め易くすることができる。これに対して、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度の大きさよりも大きくすると、前記切除領域のうちの最も上側に位置する部分の管軸方向に沿った大きさが大きくなりすぎ、前記開先の形成予定領域内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域よりも広い領域を切除し、形成予定の開先よりも開先面間の大きさを大きくした開先を形成しなくてはならず、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎる。
【0013】
また、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第2ベベル角度の大きさ以下とすることで、前記切除領域のうちの最も下側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先の形成予定領域内に収め易くすることができる。これに対して、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第2ベベル角度の大きさよりも大きくすると、前記切除領域のうちの最も下側に位置する部分の管軸方向に沿った大きさが大きくなりすぎ、前記開先の形成予定領域内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域よりも広い領域を切除し、形成予定の開先よりも開先面間の大きさを大きくした開先を形成しなくてはならず、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎる。
【0014】
以上より、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度の大きさ以下とすることで、開先形成工程の際、形成予定の開先を形成することができる。したがって、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングの側面図である。
【図2】図1に示すノーブロー工法用フィッティングの上部フィッティングおよび下部フィッティングとなる管材の側面図である。
【図3】図2に示す領域Cの拡大断面図である。
【図4】図2に示す領域Dの拡大断面図である。
【図5】図1に示す領域Aの拡大断面図である。
【図6】図1に示す領域Bの拡大断面図である。
【図7】図1に示すノーブロー工法用フィッティングの製造方法の切断工程を説明する図である。
【図8】図1に示すノーブロー工法用フィッティングの製造方法の作用を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングの変形例の拡大断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングの変形例の側面図である。
【図11】第1の構成に係るノーブロー工法用フィッティングの正面図である。
【図12】図11に示すノーブロー工法用フィッティングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングを説明する。
図1に示すように、ノーブロー工法用フィッティング1は、管材2がその管軸O1方向に分割されてなり、既設本管Pを上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティング3および下部フィッティング4を備えている。このノーブロー工法用フィッティング1は、下部フィッティング4に形成された分岐用開口部5を通して既設本管Pを分岐可能とされている。
【0018】
ここで、図2に示すように、管材2は、例えば圧力配管用炭素鋼鋼管で形成され、管材2の内径は、既設本管Pの外径よりも大きくなっている。また管材2の肉厚は、例えば約9mm〜25mmとなっている。
また、管材2には、管軸O1に直交する挿通軸O2と同軸に既設本管P用の一対の挿通孔6が形成されるとともに、管材2は、管軸O1に直交する直交面S1に対して傾斜し、かつ挿通軸O2に沿って延びる仮想切断面S2に沿って切断されることで分割されている。
【0019】
図示の例では、挿通軸O2方向からみた側面視における挿通孔6の形状は、円形状となっており、挿通孔6内には、既設本管Pが挿通軸O2と同軸に挿通可能となっている。また、図3および図4に示すように、仮想切断面S2は一定の切断幅L1を有しており、この切断幅L1は、例えば約2mm〜3mmとなっている。管材2は、この仮想切断面S2に沿って切断され、この管材2のうちの傾斜環状に延びる切除領域2Aが切除されることで分断される。
【0020】
また図2に示すように、管材2において、その周方向で一対の挿通孔6の間に位置する部分には、前記分岐用開口部5が配設されている。この分岐用開口部5は、前記切除領域2A(仮想切断面S2)から外れた位置に配設されており、図示の例では、前記切除領域2Aよりも下方に位置する部分に配設されている。さらに図示の例では、分岐用開口部5は、管軸O1に直交しかつ挿通軸O2に直交する方向に向けて開口している。そして、分岐用開口部5の軸線O3は、前記挿通軸O2よりも下方に位置している。
【0021】
ここで図1に示すように、上部フィッティング3において切断端部3aと反対側の上端部には、その全周にわたって延びる溶接W1によってネック部フィッティング7の下端部が固定されている。
また、下部フィッティング4において切断端部4aと反対側の下端部には、その全周にわたって延びる溶接W2によってキャップ状の鏡板8が固定されている。
【0022】
さらに、上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a側にはそれぞれ、挿通孔6が管軸O1方向に分割されてなる半円状開口部6aが形成されている。そして、上部フィッティング3および下部フィッティング4それぞれにおける半円状開口部6aの周縁部にはその全長にわたって、半筒状のサドル部材9において挿通軸O2方向の各フィッティング3、4側に位置する内端部が溶接W3により固定されている。
【0023】
サドル部材9は、例えば鋼製平板を、ロール曲げ加工等の板曲げ加工することで形成されている。このようにサドル部材9が溶接W3により固定されていることで、各フィッティング3、4が補強されるとともに、既設本管Pに各フィッティング3、4を仮置き、設置する場合にその姿勢を安定させることができる。
【0024】
また図5および図6に示すように、上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a間には、ルートギャップ11を有する開先10が全周にわたって形成されている。
そして本実施形態では、直交面S1に対する仮想切断面S2の傾斜角度θの大きさは、開先10のうち、最も上側に位置する最上部分10Aにおける上部フィッティング3側の第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分10Bにおける下部フィッティング4側の第2ベベル角度θ2の大きさ以下とされている。本実施形態では、これらの傾斜角度θ、第1ベベル角度θ1および第2ベベル角度θ2は、互いに同等となっている。
【0025】
図示の例では、開先10の上部フィッティング3側のベベル角度は、全周にわたって一定とされている。また、開先10の下部フィッティング4側のベベル角度は、全周にわたって一定とされている。さらに、開先10の上部フィッティング3側のベベル角度と、開先10の下部フィッティング4側のベベル角度と、は、同等とされており、開先10は、全周にわたっていわゆる両開先(図示の例では、V形開先)となっている。なお開先10の上部フィッティング3側のベベル角度、および開先10の下部フィッティング4側のベベル角度は、例えば15度〜45度、好ましくは30度となっている。
また、開先10のルートギャップ11の大きさL2は、例えば約1.5mm〜4.0mmとなっているとともに、ルートフェイス12の大きさL3は、例えば約0.8mm〜2.4mmとなっている。
【0026】
ここで図1に示すように、前記既設本管Pは水平方向に延在しており、上部フィッティング3と下部フィッティング4は、既設本管Pにおいて分岐すべき分岐位置の外周面を上下方向の両側から挟み込み、この分岐位置を囲むように、かつ互いに同軸に配設されている。また、既設本管Pは、上部フィッティング3および下部フィッティング4の半円状開口部6aによって形成される挿通孔6(挿通軸O2)と同軸となっている。
【0027】
上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a同士は、間に前記開先10が形成された状態で互いに突き合わされるとともに、各フィッティング3、4に溶接されたサドル部材9の周端部同士は、互いに突き合わされている。そして、これらの切断端部3a、4a同士、および周端部同士はそれぞれ、溶接W4、W5によって固定されている。さらに、各サドル部材9の内端部とは反対の外端部と、既設本管Pの外周面と、は、隅肉溶接W6によって固定されている。なお、前述した各溶接W1〜W5は、完全溶け込み溶接であることが好ましい。
【0028】
次に、以上のように構成されたノーブロー工法用フィッティング1の製造方法の一例について説明する。
まず、管材2を形成する管材形成工程を行う。本実施形態ではまず、所定の長さとされた図示しない圧力配管用炭素鋼鋼管に、前記分岐用開口部5を形成する。このとき例えば、玉抜き治具を用いて熱間玉抜き加工による枝出し成形を施したり、切削加工を施したりすることにより分岐用開口部5を形成することができる。
【0029】
次いで、分岐用開口部5が形成された前記圧力配管用炭素鋼鋼管に、ネック部フィッティング7および鏡板8をそれぞれ溶接した後、前記挿通孔6を形成する。その後、後に前記サドル部材9となる図示しない筒部材の開口端部を、挿通孔6の周縁部にその全長にわたって溶接する。なおこの筒部材は、例えば、鋼製平板からサドル部材9を形成した後、サドル部材9の周端部同士を仮付け溶接することで形成することができる。この場合、サドル部材9の仮付け溶接部が、後述する切断工程で切除される切断領域に位置するように、前記筒部材を溶接することが好ましい。
以上により、ネック部フィッティング7、鏡板8およびサドル部材9が溶接され固定された管材2が形成され、管材形成工程が終了する。
【0030】
次に図7に示すように、管材2を、前記仮想切断面S2に沿って切断して分割し、上部フィッティング材3Aおよび下部フィッティング材4Aを形成する切断工程を行う。このとき例えば、管材2および前記筒部材をグラインダー等で仮想切断面S2に沿って切断する。
【0031】
ここで本実施形態では、切断工程の際、直交面S1に対する仮想切断面S2の傾斜角度θの大きさを、後述する開先形成工程で形成予定の開先10のうち、最も上側に位置する最上部分10Aにおける上部フィッティング3側の第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分10Bにおける下部フィッティング4側の第2ベベル角度θ2の大きさ以下とする。
このように切断工程を行うことで、管材2のうち、この切断工程で切除される前記切除領域2Aが、後述する開先形成工程で切除される開先10の形成予定領域2B内に収められることとなる。
【0032】
次に、上部フィッティング材3Aおよび下部フィッティング材4Aの切断端部を全周にわたって開先加工して、上部フィッティング3および下部フィッティング4を形成する開先形成工程を行う。またこのとき、切断工程で切断された前記筒部材の切断端部も開先加工してサドル部材9を形成する。
以上により、ノーブロー工法用フィッティング1が製造される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るノーブロー工法用フィッティング1およびノーブロー工法用フィッティングの製造方法によれば、前記傾斜角度θの大きさが、開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下とされているので、開先10の開先面10a間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、上部フィッティング3および下部フィッティング4を既設本管Pに高精度に溶接することができる。
【0034】
すなわち図3に示すように、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下とすることで、管材2において、切断工程の切断により切除される前記切除領域2Aのうちの最も上側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先10の形成予定領域2B内に収め易くすることができる。
【0035】
これに対して、図8に示すように、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさよりも大きくすると、以下に示す問題が生じる。なお図8では、図面の見易さのために、管材2の断面を白抜きで示している。
すなわちこの場合、前記切除領域2Aのうちの最も上側に位置する部分の管軸O1方向に沿った大きさL4が大きくなりすぎ、前記開先10の形成予定領域2B内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域2Bよりも広い領域(図8で示す斜線領域2C)を切除し、形成予定の開先10よりも開先面10a間の大きさを大きくした開先10を形成しなくてはならず、開先10の開先面10a間の大きさが大きくなりすぎる。
【0036】
また図4に示すように、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下とすることで、前記切除領域2Aのうちの最も下側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先10の形成予定領域2B内に収め易くすることができる。これに対して、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第2ベベル角度θ2の大きさよりも大きくすると、前記切除領域2Aのうちの最も下側に位置する部分の管軸O1方向に沿った大きさL5が大きくなりすぎ、前記開先10の形成予定領域2B内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域2Bよりも広い領域を切除し、形成予定の開先10よりも開先面10a間の大きさを大きくした開先10を形成しなくてはならず、開先10の開先面10a間の大きさが大きくなりすぎる。
【0037】
以上より、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下とすることで、開先形成工程の際、形成予定の開先10を形成することができる。したがって、開先10の開先面10a間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0038】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、開先10は、いわゆる両開先であるものとしたが、これに代えて、図9に示すノーブロー工法用フィッティング20のように、いわゆる片開先(図示の例では、レ形開先)であっても良い。この場合であっても、前記傾斜角度θの大きさが、開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下であれば良い。
【0039】
また、前記実施形態では、分岐用開口部5の軸線O3は、前記挿通軸O2よりも下方に位置しているものとしたが、これに限られるものではない。例えば図10に示すノーブロー工法用フィッティング30のように、分岐用開口部5の軸線O3が、挿通軸O2に直交しても良い。
また、前記実施形態では、分岐用開口部5は、下部フィッティング4に形成されているものとしたが、上部フィッティング3に形成されていても良い。
【0040】
また、前記実施形態では、切断工程の前に、ネック部フィッティング7、鏡板8およびサドル部材9がそれぞれ管材2に溶接されるものとしたが、切断工程の後にそれぞれ溶接されても良い。
ただし、前記実施形態のように、切断工程の前に、ネック部フィッティング7、鏡板8およびサドル部材9を管材2に溶接することで、溶接変形によって上部フィッティング3および下部フィッティング4が合わなくなってしまうことが抑えられるので、好ましい。
【0041】
また、前記実施形態では、上部フィッティング3および下部フィッティング4には、サドル部材9が固定されているものとしたが、サドル部材9は無くても良い。この場合、挿通孔6は、例えば玉抜き治具を用いて熱間玉抜き加工による枝出し成形により形成することが好ましい。また、ネック部フィッティング7および鏡板8の溶接前に、つまり分岐用開口部5と同時に挿通孔6を形成しても良い。
【0042】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
次に、前述した作用効果を検証するための第1〜第3の検証試験を行った。
(第1の検証試験)
第1の検証試験では、実施例および比較例の計2例のノーブロー工法用フィッティングの製造方法を実施した。
【0044】
実施例としては、前記実施形態に示したノーブロー工法用フィッティングの製造方法を採用した。比較例では、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度θ1の大きさよりも大きく、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさよりも大きくした。
【0045】
具体的には、実施例および比較例ではいずれも、開先の上部フィッティング側および下部フィッティング側のベベル角度をそれぞれ全周にわたって30度とし、前記第1ベベル角度θ1および前記第2ベベル角度θ2をいずれも30度とした。そして実施例では、前記傾斜角度θを30度(=θ1、θ2)とし、比較例では、前記傾斜角度θを45度(>θ1、θ2)とした。
また、実施例および比較例ではいずれも、前記切断幅L1の大きさを2mmとした。
【0046】
また、実施例および比較例それぞれで用いる管材として、肉厚が異なる2種類の管材を各2本、計4本ずつ準備した。そして、実施例および比較例の製造方法によって、4本の管材から4種類の上部フィッティングおよび下部フィッティングをそれぞれ製造した。なお実施例および比較例のいずれにおいても、肉厚が同等の2本の管材からは、ルートフェイスの大きさL3が異なる2種類の上部フィッティングおよび下部フィッティングを製造した。
【0047】
このようにして製造された各上部フィッティングおよび下部フィッティングの間に形成された開先のルートギャップの大きさL2を測定した結果を表1に示す。この表において、実施例および比較例の列の数値は、ルートギャップの大きさL2(mm)を示す。なお開先形成工程では、ルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mmの開先を形成する予定だった。
【0048】
【表1】
【0049】
この結果、実施例では、いずれもルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mm以内であることから、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができることが確認された。
一方、比較例では、いずれもルートギャップの大きさL2が4.0mmよりも大きいことから、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎることが確認された。
【0050】
(第2の検証試験)
第2の検証試験では、実施例として、前記実施形態に示したノーブロー工法用フィッティングの製造方法を採用した。具体的には、開先の上部フィッティング側および下部フィッティング側のベベル角度をそれぞれ全周にわたって45度とし、前記第1ベベル角度θ1および前記第2ベベル角度θ2をいずれも45度とするとともに、前記傾斜角度θを45度(=θ1、θ2)とした。
さらに、この実施例では、前記切断幅L1の大きさを2mmとした。
【0051】
そして、この実施例では、肉厚が10mmの管材から上部フィッティングおよび下部フィッティングを製造した。なお、ルートフェイスの大きさL3は0.8mmとした。
このようにして製造された上部フィッティングおよび下部フィッティングの間の開先のルートギャップの大きさL2を測定したところ、3.6mmであった。
【0052】
この結果、この実施例では、ルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mm以内となったことから、前記第1ベベル角度θ1および前記第2ベベル角度θ2が、30度でなく45度の場合であっても、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができることが確認された。
【0053】
(第3の検証試験)
第3の検証試験では、実施例および比較例の計2例のノーブロー工法用フィッティングの製造方法を実施した。
なお、この第3の検証試験においては、第1の検証試験と同一の部分については、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0054】
実施例および比較例ではいずれも、前記切断幅L1の大きさを3mmとした。
そして、実施例および比較例の各製造方法によって、肉厚が20mmの管材から上部フィッティングおよび下部フィッティングを製造した。なお、ルートフェイスの大きさL3は0.8mmとした。
このようにして製造された各上部フィッティングおよび下部フィッティングの間に形成された開先のルートギャップの大きさL2を測定したところ、実施例では3.9mmであり、比較例では13.1mmであった
【0055】
この結果、実施例では、切断幅L1が3mmであっても、ルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mm以内であることから、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができることが確認された。
一方、比較例では、ルートギャップの大きさL2が4.0mmよりも大きいことから、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎることが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1、20、30 ノーブロー工法用フィッティング
2 管材
3 上部フィッティング
3A 上部フィッティング材
3a 切断端部
4 下部フィッティング
4A 下部フィッティング材
4a 切断端部
5 分岐用開口部
6 挿通孔
10 開先
10A 最上部分
10B 最下部分
O1 管軸
O2 挿通軸
P 既設本管
S1 直交面
S2 仮想切断面
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設本管内の流体を止めずにかつ減圧することなく分岐管を設けるノーブロー工法に使用されるノーブロー工法用フィッティング、およびノーブロー工法用フィッティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のノーブロー工法用フィッティングとして、例えば下記特許文献1に示されるような上下2分割型の構成が知られている。このノーブロー工法用フィッティングは、鋼管を素材として、その鋼管の外径および肉厚を変化させる加工を施した後、加工された鋼管を切断することで形成された上部フィッティングおよび下部フィッティングを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−18489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記従来のノーブロー工法用フィッティングでは、更なるコスト改善の余地があり、例えば、図11および図12に示すような第1の構成を採用することが考えられる。このノーブロー工法用フィッティング100では、上部フィッティング101および下部フィッティング102は、管材103がその管軸104方向に分割されてなる。管材103には、管軸104に直交する挿通軸105と同軸に既設本管106用の一対の挿通孔107が形成されるとともに、図12に示すように、管材103は、管軸104に直交し、挿通軸105に沿って延びる仮想切断面108に沿って切断されることで分割されている。また、下部フィッティング102において、管材103の周方向で一対の挿通孔107の間に位置する部分には、分岐用開口部109が配設されている。
この構成によれば、管材103として例えば鋼管を採用した場合であっても、その鋼管の外径および肉厚を変化させる加工を省略することが可能になり、低コスト化を図ることができる。
【0005】
ところで、既設本管106が例えば地中に埋設されている場合、ノーブロー工法用フィッティング100を既設本管106に溶接するためには、地面を掘削して既設本管106を露出させる必要がある。このとき、下部フィッティング102を既設本管106の下側に配置するために、単に既設本管106を露出させるだけでなく、既設本管106よりも深い位置まで地面を掘削する必要があり、手間がかかるという問題がある。また例えば、既設本管106よりも深い位置に他の既設本管などが埋設されていて、既設本管106よりも深い位置まで地面を掘削することが困難な場合には、下部フィッティング102を既設本管106の下側に配置できないおそれがある。
【0006】
そこで、これらの問題を解決するために、ノーブロー工法用フィッティングとして、以下に示す第2の構成を採用することが考えられる。すなわち、このノーブロー工法用フィッティングでは、管材は、管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断されることで分割される。
この構成によれば、前記第1の構成に比べて、分岐用開口部を上方に配設することが可能になり、下部フィッティングにおいて、既設配管よりも下方に位置することとなる部分の上下方向に沿った大きさを小さくすることができる。これにより、ノーブロー工法用フィッティングを既設本管に溶接するときに、地面を掘削する深さを小さく抑えることができる。
【0007】
ところで、前記第2の構成におけるノーブロー工法用フィッティングでは、上部フィッティングおよび下部フィッティングの既設本管への溶接の高精度化について改善の余地があった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接することができるノーブロー工法用フィッティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るノーブロー工法用フィッティングは、管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングであって、前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成されるとともに、前記管材は、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断されることで分割され、前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングの切断端部間には、全周にわたって開先が形成され、前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさは、前記開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とされていることを特徴とする。
【0010】
また、管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングの製造方法であって、前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成され、前記管材を、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断して分割し、上部フィッティング材および下部フィッティング材を形成する切断工程と、前記上部フィッティング材および前記下部フィッティング材の切断端部を全周にわたって開先加工して、前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングを形成する開先形成工程と、を有し、前記切断工程の際、前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさを、前記開先形成工程で形成予定の開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とすることを特徴とする。
【0011】
この発明では、前記傾斜角度の大きさが、開先の前記第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度の大きさ以下とされているので、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接することができる。
【0012】
すなわち、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度の大きさ以下とすることで、管材において、切断工程の切断により切除される切除領域のうちの最も上側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先の形成予定領域内に収め易くすることができる。これに対して、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度の大きさよりも大きくすると、前記切除領域のうちの最も上側に位置する部分の管軸方向に沿った大きさが大きくなりすぎ、前記開先の形成予定領域内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域よりも広い領域を切除し、形成予定の開先よりも開先面間の大きさを大きくした開先を形成しなくてはならず、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎる。
【0013】
また、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第2ベベル角度の大きさ以下とすることで、前記切除領域のうちの最も下側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先の形成予定領域内に収め易くすることができる。これに対して、切断工程の際、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第2ベベル角度の大きさよりも大きくすると、前記切除領域のうちの最も下側に位置する部分の管軸方向に沿った大きさが大きくなりすぎ、前記開先の形成予定領域内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域よりも広い領域を切除し、形成予定の開先よりも開先面間の大きさを大きくした開先を形成しなくてはならず、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎる。
【0014】
以上より、前記傾斜角度の大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度の大きさ以下とすることで、開先形成工程の際、形成予定の開先を形成することができる。したがって、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上部フィッティングおよび下部フィッティングを既設本管に高精度に溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングの側面図である。
【図2】図1に示すノーブロー工法用フィッティングの上部フィッティングおよび下部フィッティングとなる管材の側面図である。
【図3】図2に示す領域Cの拡大断面図である。
【図4】図2に示す領域Dの拡大断面図である。
【図5】図1に示す領域Aの拡大断面図である。
【図6】図1に示す領域Bの拡大断面図である。
【図7】図1に示すノーブロー工法用フィッティングの製造方法の切断工程を説明する図である。
【図8】図1に示すノーブロー工法用フィッティングの製造方法の作用を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングの変形例の拡大断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングの変形例の側面図である。
【図11】第1の構成に係るノーブロー工法用フィッティングの正面図である。
【図12】図11に示すノーブロー工法用フィッティングの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るノーブロー工法用フィッティングを説明する。
図1に示すように、ノーブロー工法用フィッティング1は、管材2がその管軸O1方向に分割されてなり、既設本管Pを上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティング3および下部フィッティング4を備えている。このノーブロー工法用フィッティング1は、下部フィッティング4に形成された分岐用開口部5を通して既設本管Pを分岐可能とされている。
【0018】
ここで、図2に示すように、管材2は、例えば圧力配管用炭素鋼鋼管で形成され、管材2の内径は、既設本管Pの外径よりも大きくなっている。また管材2の肉厚は、例えば約9mm〜25mmとなっている。
また、管材2には、管軸O1に直交する挿通軸O2と同軸に既設本管P用の一対の挿通孔6が形成されるとともに、管材2は、管軸O1に直交する直交面S1に対して傾斜し、かつ挿通軸O2に沿って延びる仮想切断面S2に沿って切断されることで分割されている。
【0019】
図示の例では、挿通軸O2方向からみた側面視における挿通孔6の形状は、円形状となっており、挿通孔6内には、既設本管Pが挿通軸O2と同軸に挿通可能となっている。また、図3および図4に示すように、仮想切断面S2は一定の切断幅L1を有しており、この切断幅L1は、例えば約2mm〜3mmとなっている。管材2は、この仮想切断面S2に沿って切断され、この管材2のうちの傾斜環状に延びる切除領域2Aが切除されることで分断される。
【0020】
また図2に示すように、管材2において、その周方向で一対の挿通孔6の間に位置する部分には、前記分岐用開口部5が配設されている。この分岐用開口部5は、前記切除領域2A(仮想切断面S2)から外れた位置に配設されており、図示の例では、前記切除領域2Aよりも下方に位置する部分に配設されている。さらに図示の例では、分岐用開口部5は、管軸O1に直交しかつ挿通軸O2に直交する方向に向けて開口している。そして、分岐用開口部5の軸線O3は、前記挿通軸O2よりも下方に位置している。
【0021】
ここで図1に示すように、上部フィッティング3において切断端部3aと反対側の上端部には、その全周にわたって延びる溶接W1によってネック部フィッティング7の下端部が固定されている。
また、下部フィッティング4において切断端部4aと反対側の下端部には、その全周にわたって延びる溶接W2によってキャップ状の鏡板8が固定されている。
【0022】
さらに、上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a側にはそれぞれ、挿通孔6が管軸O1方向に分割されてなる半円状開口部6aが形成されている。そして、上部フィッティング3および下部フィッティング4それぞれにおける半円状開口部6aの周縁部にはその全長にわたって、半筒状のサドル部材9において挿通軸O2方向の各フィッティング3、4側に位置する内端部が溶接W3により固定されている。
【0023】
サドル部材9は、例えば鋼製平板を、ロール曲げ加工等の板曲げ加工することで形成されている。このようにサドル部材9が溶接W3により固定されていることで、各フィッティング3、4が補強されるとともに、既設本管Pに各フィッティング3、4を仮置き、設置する場合にその姿勢を安定させることができる。
【0024】
また図5および図6に示すように、上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a間には、ルートギャップ11を有する開先10が全周にわたって形成されている。
そして本実施形態では、直交面S1に対する仮想切断面S2の傾斜角度θの大きさは、開先10のうち、最も上側に位置する最上部分10Aにおける上部フィッティング3側の第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分10Bにおける下部フィッティング4側の第2ベベル角度θ2の大きさ以下とされている。本実施形態では、これらの傾斜角度θ、第1ベベル角度θ1および第2ベベル角度θ2は、互いに同等となっている。
【0025】
図示の例では、開先10の上部フィッティング3側のベベル角度は、全周にわたって一定とされている。また、開先10の下部フィッティング4側のベベル角度は、全周にわたって一定とされている。さらに、開先10の上部フィッティング3側のベベル角度と、開先10の下部フィッティング4側のベベル角度と、は、同等とされており、開先10は、全周にわたっていわゆる両開先(図示の例では、V形開先)となっている。なお開先10の上部フィッティング3側のベベル角度、および開先10の下部フィッティング4側のベベル角度は、例えば15度〜45度、好ましくは30度となっている。
また、開先10のルートギャップ11の大きさL2は、例えば約1.5mm〜4.0mmとなっているとともに、ルートフェイス12の大きさL3は、例えば約0.8mm〜2.4mmとなっている。
【0026】
ここで図1に示すように、前記既設本管Pは水平方向に延在しており、上部フィッティング3と下部フィッティング4は、既設本管Pにおいて分岐すべき分岐位置の外周面を上下方向の両側から挟み込み、この分岐位置を囲むように、かつ互いに同軸に配設されている。また、既設本管Pは、上部フィッティング3および下部フィッティング4の半円状開口部6aによって形成される挿通孔6(挿通軸O2)と同軸となっている。
【0027】
上部フィッティング3および下部フィッティング4の切断端部3a、4a同士は、間に前記開先10が形成された状態で互いに突き合わされるとともに、各フィッティング3、4に溶接されたサドル部材9の周端部同士は、互いに突き合わされている。そして、これらの切断端部3a、4a同士、および周端部同士はそれぞれ、溶接W4、W5によって固定されている。さらに、各サドル部材9の内端部とは反対の外端部と、既設本管Pの外周面と、は、隅肉溶接W6によって固定されている。なお、前述した各溶接W1〜W5は、完全溶け込み溶接であることが好ましい。
【0028】
次に、以上のように構成されたノーブロー工法用フィッティング1の製造方法の一例について説明する。
まず、管材2を形成する管材形成工程を行う。本実施形態ではまず、所定の長さとされた図示しない圧力配管用炭素鋼鋼管に、前記分岐用開口部5を形成する。このとき例えば、玉抜き治具を用いて熱間玉抜き加工による枝出し成形を施したり、切削加工を施したりすることにより分岐用開口部5を形成することができる。
【0029】
次いで、分岐用開口部5が形成された前記圧力配管用炭素鋼鋼管に、ネック部フィッティング7および鏡板8をそれぞれ溶接した後、前記挿通孔6を形成する。その後、後に前記サドル部材9となる図示しない筒部材の開口端部を、挿通孔6の周縁部にその全長にわたって溶接する。なおこの筒部材は、例えば、鋼製平板からサドル部材9を形成した後、サドル部材9の周端部同士を仮付け溶接することで形成することができる。この場合、サドル部材9の仮付け溶接部が、後述する切断工程で切除される切断領域に位置するように、前記筒部材を溶接することが好ましい。
以上により、ネック部フィッティング7、鏡板8およびサドル部材9が溶接され固定された管材2が形成され、管材形成工程が終了する。
【0030】
次に図7に示すように、管材2を、前記仮想切断面S2に沿って切断して分割し、上部フィッティング材3Aおよび下部フィッティング材4Aを形成する切断工程を行う。このとき例えば、管材2および前記筒部材をグラインダー等で仮想切断面S2に沿って切断する。
【0031】
ここで本実施形態では、切断工程の際、直交面S1に対する仮想切断面S2の傾斜角度θの大きさを、後述する開先形成工程で形成予定の開先10のうち、最も上側に位置する最上部分10Aにおける上部フィッティング3側の第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分10Bにおける下部フィッティング4側の第2ベベル角度θ2の大きさ以下とする。
このように切断工程を行うことで、管材2のうち、この切断工程で切除される前記切除領域2Aが、後述する開先形成工程で切除される開先10の形成予定領域2B内に収められることとなる。
【0032】
次に、上部フィッティング材3Aおよび下部フィッティング材4Aの切断端部を全周にわたって開先加工して、上部フィッティング3および下部フィッティング4を形成する開先形成工程を行う。またこのとき、切断工程で切断された前記筒部材の切断端部も開先加工してサドル部材9を形成する。
以上により、ノーブロー工法用フィッティング1が製造される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るノーブロー工法用フィッティング1およびノーブロー工法用フィッティングの製造方法によれば、前記傾斜角度θの大きさが、開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下とされているので、開先10の開先面10a間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、上部フィッティング3および下部フィッティング4を既設本管Pに高精度に溶接することができる。
【0034】
すなわち図3に示すように、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下とすることで、管材2において、切断工程の切断により切除される前記切除領域2Aのうちの最も上側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先10の形成予定領域2B内に収め易くすることができる。
【0035】
これに対して、図8に示すように、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさよりも大きくすると、以下に示す問題が生じる。なお図8では、図面の見易さのために、管材2の断面を白抜きで示している。
すなわちこの場合、前記切除領域2Aのうちの最も上側に位置する部分の管軸O1方向に沿った大きさL4が大きくなりすぎ、前記開先10の形成予定領域2B内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域2Bよりも広い領域(図8で示す斜線領域2C)を切除し、形成予定の開先10よりも開先面10a間の大きさを大きくした開先10を形成しなくてはならず、開先10の開先面10a間の大きさが大きくなりすぎる。
【0036】
また図4に示すように、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下とすることで、前記切除領域2Aのうちの最も下側に位置する部分を、開先形成工程で切除される開先10の形成予定領域2B内に収め易くすることができる。これに対して、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第2ベベル角度θ2の大きさよりも大きくすると、前記切除領域2Aのうちの最も下側に位置する部分の管軸O1方向に沿った大きさL5が大きくなりすぎ、前記開先10の形成予定領域2B内に収めておくことができなくなる。すると、開先形成工程の際、前記開先の形成予定領域2Bよりも広い領域を切除し、形成予定の開先10よりも開先面10a間の大きさを大きくした開先10を形成しなくてはならず、開先10の開先面10a間の大きさが大きくなりすぎる。
【0037】
以上より、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下とすることで、開先形成工程の際、形成予定の開先10を形成することができる。したがって、開先10の開先面10a間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0038】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、開先10は、いわゆる両開先であるものとしたが、これに代えて、図9に示すノーブロー工法用フィッティング20のように、いわゆる片開先(図示の例では、レ形開先)であっても良い。この場合であっても、前記傾斜角度θの大きさが、開先10の前記第1ベベル角度θ1の大きさ以下で、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさ以下であれば良い。
【0039】
また、前記実施形態では、分岐用開口部5の軸線O3は、前記挿通軸O2よりも下方に位置しているものとしたが、これに限られるものではない。例えば図10に示すノーブロー工法用フィッティング30のように、分岐用開口部5の軸線O3が、挿通軸O2に直交しても良い。
また、前記実施形態では、分岐用開口部5は、下部フィッティング4に形成されているものとしたが、上部フィッティング3に形成されていても良い。
【0040】
また、前記実施形態では、切断工程の前に、ネック部フィッティング7、鏡板8およびサドル部材9がそれぞれ管材2に溶接されるものとしたが、切断工程の後にそれぞれ溶接されても良い。
ただし、前記実施形態のように、切断工程の前に、ネック部フィッティング7、鏡板8およびサドル部材9を管材2に溶接することで、溶接変形によって上部フィッティング3および下部フィッティング4が合わなくなってしまうことが抑えられるので、好ましい。
【0041】
また、前記実施形態では、上部フィッティング3および下部フィッティング4には、サドル部材9が固定されているものとしたが、サドル部材9は無くても良い。この場合、挿通孔6は、例えば玉抜き治具を用いて熱間玉抜き加工による枝出し成形により形成することが好ましい。また、ネック部フィッティング7および鏡板8の溶接前に、つまり分岐用開口部5と同時に挿通孔6を形成しても良い。
【0042】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
次に、前述した作用効果を検証するための第1〜第3の検証試験を行った。
(第1の検証試験)
第1の検証試験では、実施例および比較例の計2例のノーブロー工法用フィッティングの製造方法を実施した。
【0044】
実施例としては、前記実施形態に示したノーブロー工法用フィッティングの製造方法を採用した。比較例では、切断工程の際、前記傾斜角度θの大きさを、開先形成工程で形成予定の開先の前記第1ベベル角度θ1の大きさよりも大きく、かつ前記第2ベベル角度θ2の大きさよりも大きくした。
【0045】
具体的には、実施例および比較例ではいずれも、開先の上部フィッティング側および下部フィッティング側のベベル角度をそれぞれ全周にわたって30度とし、前記第1ベベル角度θ1および前記第2ベベル角度θ2をいずれも30度とした。そして実施例では、前記傾斜角度θを30度(=θ1、θ2)とし、比較例では、前記傾斜角度θを45度(>θ1、θ2)とした。
また、実施例および比較例ではいずれも、前記切断幅L1の大きさを2mmとした。
【0046】
また、実施例および比較例それぞれで用いる管材として、肉厚が異なる2種類の管材を各2本、計4本ずつ準備した。そして、実施例および比較例の製造方法によって、4本の管材から4種類の上部フィッティングおよび下部フィッティングをそれぞれ製造した。なお実施例および比較例のいずれにおいても、肉厚が同等の2本の管材からは、ルートフェイスの大きさL3が異なる2種類の上部フィッティングおよび下部フィッティングを製造した。
【0047】
このようにして製造された各上部フィッティングおよび下部フィッティングの間に形成された開先のルートギャップの大きさL2を測定した結果を表1に示す。この表において、実施例および比較例の列の数値は、ルートギャップの大きさL2(mm)を示す。なお開先形成工程では、ルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mmの開先を形成する予定だった。
【0048】
【表1】
【0049】
この結果、実施例では、いずれもルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mm以内であることから、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができることが確認された。
一方、比較例では、いずれもルートギャップの大きさL2が4.0mmよりも大きいことから、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎることが確認された。
【0050】
(第2の検証試験)
第2の検証試験では、実施例として、前記実施形態に示したノーブロー工法用フィッティングの製造方法を採用した。具体的には、開先の上部フィッティング側および下部フィッティング側のベベル角度をそれぞれ全周にわたって45度とし、前記第1ベベル角度θ1および前記第2ベベル角度θ2をいずれも45度とするとともに、前記傾斜角度θを45度(=θ1、θ2)とした。
さらに、この実施例では、前記切断幅L1の大きさを2mmとした。
【0051】
そして、この実施例では、肉厚が10mmの管材から上部フィッティングおよび下部フィッティングを製造した。なお、ルートフェイスの大きさL3は0.8mmとした。
このようにして製造された上部フィッティングおよび下部フィッティングの間の開先のルートギャップの大きさL2を測定したところ、3.6mmであった。
【0052】
この結果、この実施例では、ルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mm以内となったことから、前記第1ベベル角度θ1および前記第2ベベル角度θ2が、30度でなく45度の場合であっても、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができることが確認された。
【0053】
(第3の検証試験)
第3の検証試験では、実施例および比較例の計2例のノーブロー工法用フィッティングの製造方法を実施した。
なお、この第3の検証試験においては、第1の検証試験と同一の部分については、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0054】
実施例および比較例ではいずれも、前記切断幅L1の大きさを3mmとした。
そして、実施例および比較例の各製造方法によって、肉厚が20mmの管材から上部フィッティングおよび下部フィッティングを製造した。なお、ルートフェイスの大きさL3は0.8mmとした。
このようにして製造された各上部フィッティングおよび下部フィッティングの間に形成された開先のルートギャップの大きさL2を測定したところ、実施例では3.9mmであり、比較例では13.1mmであった
【0055】
この結果、実施例では、切断幅L1が3mmであっても、ルートギャップの大きさL2が1.5mm〜4.0mm以内であることから、開先の開先面間の大きさを確保した上で、この大きさが大きくなりすぎるのを抑制することができることが確認された。
一方、比較例では、ルートギャップの大きさL2が4.0mmよりも大きいことから、開先の開先面間の大きさが大きくなりすぎることが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1、20、30 ノーブロー工法用フィッティング
2 管材
3 上部フィッティング
3A 上部フィッティング材
3a 切断端部
4 下部フィッティング
4A 下部フィッティング材
4a 切断端部
5 分岐用開口部
6 挿通孔
10 開先
10A 最上部分
10B 最下部分
O1 管軸
O2 挿通軸
P 既設本管
S1 直交面
S2 仮想切断面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、
前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングであって、
前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成されるとともに、前記管材は、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断されることで分割され、
前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングの切断端部間には、全周にわたって開先が形成され、
前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさは、前記開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とされていることを特徴とするノーブロー工法用フィッティング。
【請求項2】
管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、
前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングの製造方法であって、
前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成され、
前記管材を、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断して分割し、上部フィッティング材および下部フィッティング材を形成する切断工程と、
前記上部フィッティング材および前記下部フィッティング材の切断端部を全周にわたって開先加工して、前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングを形成する開先形成工程と、を有し、
前記切断工程の際、前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさを、前記開先形成工程で形成予定の開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とすることを特徴とするノーブロー工法用フィッティングの製造方法。
【請求項1】
管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、
前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングであって、
前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成されるとともに、前記管材は、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断されることで分割され、
前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングの切断端部間には、全周にわたって開先が形成され、
前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさは、前記開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とされていることを特徴とするノーブロー工法用フィッティング。
【請求項2】
管材がその管軸方向に分割されてなり、既設本管を上下方向の両側から挟み込んだ状態で溶接される上部フィッティングおよび下部フィッティングを備え、
前記上部フィッティング若しくは前記下部フィッティングに形成された分岐用開口部を通して前記既設本管を分岐可能なノーブロー工法用フィッティングの製造方法であって、
前記管材には、前記管軸に直交する挿通軸と同軸に前記既設本管用の挿通孔が形成され、
前記管材を、前記管軸に直交する直交面に対して傾斜し、かつ前記挿通軸に沿って延びる仮想切断面に沿って切断して分割し、上部フィッティング材および下部フィッティング材を形成する切断工程と、
前記上部フィッティング材および前記下部フィッティング材の切断端部を全周にわたって開先加工して、前記上部フィッティングおよび前記下部フィッティングを形成する開先形成工程と、を有し、
前記切断工程の際、前記直交面に対する前記仮想切断面の傾斜角度の大きさを、前記開先形成工程で形成予定の開先のうち、最も上側に位置する最上部分における前記上部フィッティング側の第1ベベル角度の大きさ以下で、かつ最も下側に位置する最下部分における前記下部フィッティング側の第2ベベル角度の大きさ以下とすることを特徴とするノーブロー工法用フィッティングの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−256912(P2011−256912A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130407(P2010−130407)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(500171811)日鉄パイプライン株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(500171811)日鉄パイプライン株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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