説明

ハイドロスタティッククラッチアクチュエータ

本発明は、ハイドロスタティックアクチュエータ、特にハイドロスタティッククラッチアクチュエータであって、ハウジングと、ハウジング内を軸方向で移動可能な、圧力チャンバに圧力を加えるピストンとを含むマスターシリンダを備えるとともに、回転駆動を軸方向運動に変換する伝動装置と、伝動装置を回転駆動する、ステータ及びロータを備える電動モータと、を備えるハイドロスタティックアクチュエータに関する。構成スペースを制限するために、ハイドロスタティックアクチュエータの構成部材は、省スペースに互いに組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロスタティックアクチュエータ(Hydrostataktor)、特にハイドロスタティッククラッチアクチュエータであって、ハウジングと、ハウジング内を軸方向で移動可能な、圧力チャンバに圧力を加えるピストンとを含むマスターシリンダを備えるとともに、回転駆動を軸方向運動に変換する伝動装置と、伝動装置を回転駆動する、ステータ及びロータを備える電動モータと、を備えるハイドロスタティックアクチュエータに関する。
【0002】
前提となるハイドロスタティックアクチュエータは、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータの形態でドイツ連邦共和国特許出願公開第19700935号明細書において公知である。この場合、マスターシリンダのピストンは、電動モータにより駆動される。電動モータの回転運動は、ウォーム型伝動装置の形態の伝動装置により軸方向の運動に変換される。その際、ピストンは、ウォームホイールに配置された偏心ピンにより駆動される。
【0003】
本発明の課題は、この種のハイドロスタティックアクチュエータを、特に効率の向上、所要構成スペースの減少及びマスターシリンダの運転圧の上昇を背景に改良・発展させることである。
【0004】
上記課題は、ハイドロスタティックアクチュエータ、特にハイドロスタティッククラッチアクチュエータであって、ハウジングと、ハウジング内を軸方向で移動可能な、圧力チャンバに圧力を加えるピストンとを含むマスターシリンダを備えるとともに、回転駆動を軸方向運動に変換する伝動装置と、伝動装置を回転駆動する、ステータ及びロータを備える電動モータと、を備えるハイドロスタティックアクチュエータにおいて、ピストンが、電動モータの回転軸線に関して軸方向で圧力チャンバと電動モータとの間に配置されていることにより解決される。
【0005】
択一的には、上記課題は、ハイドロスタティックアクチュエータ、特にハイドロスタティッククラッチアクチュエータであって、ハウジングと、ハウジング内を軸方向で移動可能な、圧力チャンバに圧力を加えるピストンとを含むマスターシリンダを備えるとともに、回転駆動を軸方向運動に変換する伝動装置と、伝動装置を回転駆動する、ステータ及びロータを備える電動モータと、を備えるハイドロスタティックアクチュエータにおいて、圧力チャンバが、電動モータの回転軸線に関して軸方向でピストンと電動モータとの間に配置されていることにより解決される。この種の配置を使用した場合、圧力チャンバをピストンにより圧縮するとき、マスターシリンダのハウジングには、電動モータに向かって力が加えられる。その際、ピストンは、伝動装置がピストンに引っ張り力を及ぼすことにより、電動モータに向かって引っ張られる。例えば、伝動装置の伝動装置スピンドルは、ピストンと一体的に結合されていてよい。その際、ピストンがリングピストンとして、環状に形成された圧力チャンバ内を移動するようになっていると、有利であることが判っている。
【0006】
提案するハイドロスタティックアクチュエータは、大きな運動行程のための摩擦クラッチの操作に使用可能である他、特に、大きな力が比較的小さな電動モータで変換されなければならない自動車において使用可能である。これには、常用ブレーキ及び駐車ブレーキ等のブレーキの操作、トランスミッションの操作、パークロックの操作、ドア及びフラップの操作、並びにこれらに類するものの操作が例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
伝動装置として、ピストンを軸方向で駆動する、選択的にピストンに一体的に結合されたスピンドルと、スリーブから形成されていてよいスピンドルナットとを備えるスピンドル型伝動装置(Spindelgetriebe)が好適である。スリーブは、直接、電動モータのロータにより駆動されるか、又はロータから形成されていてよい。さらに、摩擦を低減するために、スピンドルは、ボール循環スピンドルあるいはボールねじとして設けられていてもよい。伝動装置が、ピストンを軸方向で移動させる、回転軸線に沿って配置されるねじ山付きスピンドルと、ねじ山付きスピンドルに対して同軸的に配置される、回転駆動されるスリーブと、ねじ山付きスピンドルとスリーブとの間で転動する遊星歯車とを備える遊星転動機構型伝動装置(Planetenwaelzgetriebe)から形成されていると、特に有利であることが判っている。遊星転動機構型伝動装置は、例えば欧州特許出願公開第0320621号明細書において詳細に開示されている。好ましくは、遊星転動機構型伝動装置の使用時、遊星転動機構型伝動装置の高い減速比により、高回転の、その出力に関して比較的弱く設計される電動モータが使用可能である。
【0008】
特に軸方向の構成スペースを減じるために、伝動装置、例えば遊星転動機構型伝動装置は、ロータの半径方向内側に配置されていてよい。その際、ロータは、伝動装置、例えば遊星転動機構型伝動装置のスリーブに支承されていてよい。この場合、伝動装置全体は、ロータの構成スペース内に格納可能である。ロータとスリーブの機能は、互いに組み合わせ可能である。例えば、ロータの永久磁石が直接スリーブに収容、例えばスリーブに接着されることにより、ロータの金属薄板構造は省略可能である。さらに、例えばロータが遊星転動機構型伝動装置の遊星歯車のための内歯列を形成することにより、伝動装置がロータ内に組み込まれていてもよい。
【0009】
特にコンパクトなハイドロスタティックアクチュエータを実現するために、ハイドロスタティックアクチュエータの構成部材あるいは構成群は、入れ子に配置されていてよい。例えば、マスターシリンダハウジングの、圧力チャンバを形成するハウジング区分は、伝動装置の半径方向外側に配置されており、かつ電動モータは、軸方向で圧力チャンバに隣接配置されていてよい。この場合、電動モータが、圧力チャンバの外径あるいは圧力チャンバを形成するハウジング区分の外径より小さな直径を有していると、有利であることが判っている。
【0010】
さらにハイドロスタティックアクチュエータ内に、流体静力学的な圧力媒体のための後供給容器(Nachlaufbehaelter)が、好ましくは追加の構成スペースをとらずに、すなわち、電動モータ、伝動装置及びマスターシリンダのハウジング用として予定される、有利には電動モータの回転軸線周りに柱状に配置される構成スペース内に組み込まれていると、有利であることが判っている。
【0011】
後供給容器は、いわゆるスニッファ孔あるいはブリーダ孔(Schnueffelbohrung)を介して圧力チャンバに接続可能である。スニッファ孔あるいはブリーダ孔は、ピストンを弛めた状態で圧力チャンバに接続され、圧力チャンバに圧力をかける際にはピストンにより閉鎖される。後供給容器は、組み付けられた状態で圧力チャンバの上にくるような配置の場合、周囲と圧力の均衡がとれた状態にしておき、圧力媒体が流体静力学的に後供給可能であるようにしてもよいし、又はダイヤフラム、例えばベローズ、又は圧縮ばねにより予め加圧しておき、圧力媒体を必要なときに軽い正圧下で圧力チャンバに後供給可能であるようにしてもよい。
【0012】
環状に形成された圧力チャンバにおいて、後供給容器が、圧力チャンバの半径方向内側に、例えば、ピストンロッドと、マスターシリンダのハウジングの内周面とにより残された構成スペース内に配置されていると、特に有利であることが判っている。この場合、ピストンロッドか、又は伝動装置の、ピストンロッドに固く結合されたか、若しくはピストンロッドと一体的に形成されたねじ山付きスピンドルが、ピストンの移動中、少なくとも部分的に軸方向で後供給容器に係合するようになっていてよい。
【0013】
択一的な形態では、後供給容器が、環状に形成された圧力チャンバの半径方向外側に配置されていてよい。この場合、後供給容器の直径は、半径方向で電動モータの外径にか、又は構成スペースに基づいてハイドロスタティックアクチュエータの直径を決める別の構成部材の外径に制限されてもよい。
【0014】
外部へのマスターシリンダの漏れをシールするために、ハウジングとピストンとの間に、漏れシール、例えばリップシール又はベローズが設けられていてよい。択一的には、漏れシールは、ハウジングと伝動装置との間かつ/又は伝動装置の伝動装置スピンドルとハウジングとの間に配置されていてよい。
【0015】
ハイドロスタティックアクチュエータの有利な態様では、マスターシリンダのハウジングと遊星転動機構型伝動装置のスリーブとが一体的に、例えば金属薄板から絞り加工により形成されていてよい。この場合、マスターシリンダと遊星転動機構型伝動装置とは、構成ユニットとして形成されていてよい。
【0016】
ハイドロスタティックアクチュエータには、センサ装置が設けられている。センサ装置は、少なくとも電動モータの回転運動を検出し、好ましくはブラシレスの電動モータとして設けられる電動モータの整流のためにデータを提供する。付加的に、付加的なセンサによってか、又はセンサ装置に設けられたセンサによって、ピストンの軸方向のストロークが検出され、求められてもよい。さらにセンサ装置は、遊星転動機構型伝動装置のスリップを求めるために機能してもよい。データは、ハイドロスタティックアクチュエータの制御装置に読み込まれ、制御装置内で処理される。センサ装置は、信号を直接制御装置に伝達するか、又はローカル型あるいはインサイチュ型の電子装置(Vorortelektronik)に提供することができる。ローカル型あるいはインサイチュ型の電子装置は、相応の信号を処理し、変換して制御装置に伝送する。制御装置は、ハイドロスタティックアクチュエータ、例えば電動モータに組み込まれているか、又はこれに取り付けられていてよい。制御装置は、マスターシリンダのハウジングを収容する端面に対向する端面にか、又はマスターシリンダのハウジングを収容する端面、例えばマスターシリンダのハウジングと電動モータのハウジングとの間に配置されていてよい。
【0017】
本発明について、図1乃至図7に示した実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ハイドロスタティックアクチュエータの断面図である。
【図2】図1のハイドロスタティックアクチュエータに対して軽微な変更を加えた、リングピストンを備えるハイドロスタティックアクチュエータの断面図である。
【図3】図1のハイドロスタティックアクチュエータに対して軽微な変更を加えた、マスターシリンダのハウジングと遊星転動機構型伝動装置のスリーブとからなる一体的な構成ユニットを備えるハイドロスタティックアクチュエータの断面図である。
【図4】図1のハイドロスタティックアクチュエータに対して軽微な変更を加えた、組み込まれた後供給容器を備えるハイドロスタティックアクチュエータの部分断面図である。
【図5】遊星転動機構型伝動装置により引っ張られるピストンを備えるハイドロスタティックアクチュエータの断面図である。
【図6】センサ装置の多様な配置可能性を示すハイドロスタティックアクチュエータの電動モータの断面図である。
【図7】図2のハイドロスタティックアクチュエータに対して軽微な変更を加えた、圧力チャンバの半径方向内側に配置された後供給容器を備えるハイドロスタティックアクチュエータの部分断面図である。
【0019】
図1は、ハイドロスタティックアクチュエータ1、例えばハイドロスタティッククラッチアクチュエータの断面図であり、ハイドロスタティックアクチュエータ1は、電動モータ2、遊星転動機構型伝動装置3及びマスターシリンダ4を有している。電動モータ2、遊星転動機構型伝動装置3及びマスターシリンダ4は、電動モータ2のロータ6の回転軸線5周りに配置されている。電動モータ2のステータ7は、ハウジング8内でキャップ9に不動に結合されている。ロータ6は、半径方向内側に遊星転動機構型伝動装置3を有している。遊星転動機構型伝動装置3は、スリーブ10と、伝動装置スピンドル11と、スリーブ10と伝動装置スピンドル11との間で転動する、周方向で分配されスリーブ10に回動可能に取り付けられた複数の遊星転動体12とを有している。減速比を高めるために、遊星転動体12は、スリーブ10の内歯列14と噛み合っている粗歯列13と、伝動装置スピンドル11の雄ねじ山16上を転動する細目ねじ山区分15とを有している。遊星転動機構型伝動装置3の機能については、欧州特許出願公開第0320621号明細書及びドイツ連邦共和国特許第19540634号明細書を参照されたい。
【0020】
図示の実施の形態では、遊星転動機構型伝動装置3は、ロータ6に対して同軸的にロータ6内に収容されている。伝動装置スピンドル11は、機能に応じて、ロータ6の回転時に軸方向で移動する。本実施の形態では、スリーブ10は、不動にロータ6に結合されている。ロータ6は、通常、永久磁石17を備える金属薄板構造から形成可能である。金属薄板構造は、スリーブ10に不動に結合、例えば溶接又はプレスばめされている。択一的には、永久磁石17は、個別にスリーブ10に取着、例えば接着されていてもよい。その結果、金属薄板構造のための相応の構成スペースは、節減される。スリーブ10は、ハウジング8に対するロータ6の支承を請け負うとともに、遊星転動機構型伝動装置3の支承を請け負う。このために、好ましくは金属薄板から形成されるスリーブ10は、2つの軸方向の付設部18,19を有している。付設部18,19上には、それぞれ1つの転がり軸受20,21が収容されている。転がり軸受20は、軸方向で不動にハウジング8のハウジング区分22に収容されており、転がり軸受21は、ハウジング8にセンタリングされたインサート23により支持される。遊星転動機構型伝動装置3を備えるロータ6の組み付けは、ハウジング8の開放側から行われ、開放側は、ロータ6の組み付け後、キャップ9により閉鎖される。
【0021】
マスターシリンダ4は、マスターシリンダ4の、好ましくは金属薄板から形成されるハウジング24により不動に電動モータのハウジング8に結合、例えば溶接されている。ハウジング8に対するハウジング24のセンタリングは、例えばセンタリングカラー25において達成可能である。ピストン26は、ハウジング24とともに圧力チャンバ27を形成している。圧力チャンバ27は、圧力ポート28により圧力管路に接続可能である。圧力ポート28は、図面には開口として概略的にのみ示されているにすぎないが、圧力管路への所望の接続形態に応じて迅速継手、ねじ継手又はこれに類するものを有していてもよい。好ましくは液状の圧力媒体で満たされた圧力チャンバ27内にピストン26の移動時に形成される圧力の結果、圧力管路の他端に接続されるスレーブシリンダが操作される。スレーブシリンダは、摩擦クラッチの皿ばね、レバーばね又はその他の付勢手段に作用して、摩擦クラッチを、実施の形態が強制開放型の摩擦クラッチとして形成されているか、又は強制閉鎖型の摩擦クラッチとして形成されているかに応じて、ミートあるいはレリーズする。
【0022】
圧力チャンバ27は、ピストン26の、電動モータ2とは反対の側に接続されている。その結果、圧力チャンバ27には、ピストン26の押動時、圧力が加えられる。圧力の印加は、ねじ山付きスピンドル11の軸方向の移動により実施される。ねじ山付きスピンドル11は、ピストン26を軸方向ガイド29に収容している。この場合、伝動装置スピンドル11は、軸方向で不動にピストン26に結合されている。圧力チャンバ27は、弛緩した状態で、図示しない後供給容器に接続されていてよい。後供給容器は、図示の構成スペース、例えば、圧力チャンバ27の弛緩時にピストン26とハウジング24との間に残される、ハッチングで示すフリースペース30に組み込まれていてよい。例えば引き戻された状態でピストン26により開放され、ピストン26が軸方向で移動して圧力チャンバ27を圧縮したときに閉鎖される相応の接続は、図示していない。
【0023】
図2は、図1のハイドロスタティックアクチュエータ1に対してマスターシリンダ4aの形態に関して変更されたハイドロスタティックアクチュエータ1aの断面図である。遊星転動機構型伝動装置を備える電動モータは、詳細には図示していないが、実質的に図1の遊星転動機構型伝動装置3を備える電動モータ2に相当する。マスターシリンダ4aのハウジング24aは、図示の実施の形態では環状の圧力チャンバ27aを形成している。圧力チャンバ27aは、相応に環状に形成されたピストン面31を備えて形成されたピストン26aにより画成される。圧力チャンバ27aは、図1の圧力チャンバ27と同様に、電動モータとは反対の側に配置されている。その結果、ピストン26aの操作は、ねじ山付きスピンドル11の押動方向で実施される。後供給容器は、圧力チャンバ27aの半径方向内側のフリースペース30a内に設けられていてよい。
【0024】
図3は、ハイドロスタティックアクチュエータ1bの部分断面図である。このハイドロスタティックアクチュエータ1bにおいて、図1及び図2のハイドロスタティックアクチュエータ1,1aとは異なり、図示しない遊星転動機構型伝動装置のスリーブ10aと、マスターシリンダ4bのハウジング24bとは、一体的に、好ましくは金属薄板から例えば深絞り加工法により製造されている。ハウジング24bの端面側の端部には、ピストン26bにより画成される圧力チャンバ27bが形成されている。ピストン26bは、直接、伝動装置スピンドル11に一体成形されているか、又は伝動装置スピンドル11に結合されていてよい。ピストン26bと伝動装置スピンドル11との間に存在する回転数差は、動的なシール、例えばシールリップを備えるシールにより補償される。択一的又は付加的に、ハイドロスタティックアクチュエータのピストンと伝動装置スピンドルとの間に、軸方向で不動の、ただし相対回動可能な結合部が設けられていてよい。さらに伝動装置スピンドルは、回動防止された状態で固定のハウジング部分、例えばハウジング24bに配置されていてよい。
【0025】
図4は、ハイドロスタティックアクチュエータ1cの回転軸線5の上側の部分断面図である。ハイドロスタティックアクチュエータ1cにおいて、マスターシリンダ4cの構造は、図1乃至図3のハイドロスタティックアクチュエータ1,1a,1bとは変更されている。図示のハイドロスタティックアクチュエータ1cにおいて、ピストン26cとハウジング24cとにより形成される、圧力ポート28cを備える圧力チャンバ27cは、軸方向でピストン26cと、電動モータと遊星転動機構型伝動装置とにより形成される構成ユニット32との間に配置されている。その結果、圧力チャンバ27c内には、ピストン26cが伝動装置スピンドル11によって構成ユニット32に向かって軸方向で移動される際に、圧力が形成される。これに応じて、圧力は、ピストン26cの引っ張り方向で形成される。その結果、マスターシリンダ4cは、構成ユニット32に対して締め付けられ、ハイドロスタティックアクチュエータ1cの静的な設計に関して利点が達成可能である。後供給容器33は、ハウジング24cに組み込まれており、圧力チャンバ27cの半径方向外側に設けられている。圧力チャンバ27cが弛緩した状態で、後供給容器33の容積は、後供給開口34、例えばスニッファ孔あるいはブリーダ孔を介して連通している。その結果、圧力媒体の補償が可能であり、場合によっては、スレーブシリンダ及び圧力管路から圧力チャンバ27c内に掃気された気泡が、後供給容器33に送られる。後供給容器33は、充填開口35を介して充填される。充填開口35は、例えば、図示したように、ボール36により閉鎖されている。後供給容器33の圧力補償は、概略的にのみ示したダイヤフラム37により実施される。ダイヤフラム37は、軸方向のひだを有していてもよいベローズとして形成可能である。後供給容器33の正圧は、場合によっては、図示しない液密の開口、例えばラビリンス開口及び/又はダイヤフラム開口により補償されてもよい。圧力チャンバを形成するためにハウジング24c内に設けられる開口38には、特に異物の侵入を回避するために、カバー38a、例えばダイヤフラム又はベローズが、設けられる。
【0026】
図5は、図4のハイドロスタティックアクチュエータ1cに対して択一的な、ハイドロスタティックアクチュエータ1dの形態の実施の形態の断面図である。この場合、構成ユニット32は、図1の電動モータ2及び遊星転動機構型伝動装置3から形成される構成ユニットと実質同一である。伝動装置スピンドル11の引っ張り方向でのピストン26dの操作の結果、圧力チャンバ27dに作用する圧力に抗した遊星転動機構型伝動装置3の軸方向の支持は、ハウジング側で、例えばマスターシリンダ4dのハウジング24dにおいて支持可能である。その結果、力伝達経路は、電動モータ2を介在しない。図示の実施の形態では、ピストン26dにより圧力チャンバ27dに圧力を加えたとき、ロータ6に固く結合されたスリーブ10dは、転がり軸受20を介して軸方向でハウジング8dのストッパに対して締め付けられる。ハウジング8dは、マスターシリンダのハウジング24dに固く結合されている。その結果、力伝達経路は、スリーブ10dから遊星転動体12及びねじ山付きスピンドル11を介してピストン26dに、そしてピストン26dからハウジング24d、ハウジング8d、転がり軸受20を介してスリーブ10dへと閉じられる。フリースペース30d内には、圧力チャンバ27dの半径方向内側に、図示しない後供給容器が格納可能である。
【0027】
図6は、電動モータ2及び遊星転動機構型伝動装置3を備えるハイドロスタティックアクチュエータの構成ユニット32と、ロータ3あるいはスリーブ10の回転数を検出するためのセンサ装置39の可能な配置とを示している。この図面は、センサ40,41の2つの配置態様を示している。センサ40,41は、ホールセンサとして形成可能である。この場合、場合によっては、ホールセンサのセンサ磁石42が、センサ40,41に対して相対回動可能な構成部材に配置されていてよい。センサ40,41は、能動型又は受動型に作動可能であり、ローカル型あるいはインサイチュ型の電子装置43は、センサ40,41と、図示しない制御装置との間に設けられていてよい。ローカル型あるいはインサイチュ型の電子装置43は、例えば、センサ40,41から得られたローデータから標準化された低抵抗のデータを生成して、これを制御装置に伝送する。獲得されたデータにより、ブラシレスモータとして形成された電動モータ2は、整流され、かつ/又は遊星転動機構型伝動装置3の既知の減速比を介して、ピストンの軸方向のストロークが特定され得る。さらにセンサ装置39は、遊星転動機構型伝動装置3がスリップレスに形成されていない場合、スリップを検出可能である。スリップは、制御装置内で評価され、補償される。さらにセンサ装置39は、マスターシリンダの圧力チャンバ内の圧力を求めるための圧力センサを含んでいてよい。特別な場合、ピストンのストローク測定システムが設けられていてよい。
【0028】
図7は、図5のハイドロスタティックアクチュエータ1dに類似のハイドロスタティックアクチュエータ1eの、回転軸線5の上側の部分の概略断面図である。図5のハイドロスタティックアクチュエータ1dとは異なり、マスターシリンダ4eには、ピストン26e及びハウジング24eにより形成され圧力ポート28eを備える圧力チャンバ27eの半径方向内側に配置される後供給容器33eが設けられている。後供給容器33eは、流体静力学的に圧力チャンバ27eの下に配置されている。その結果、後供給容器33eには、圧力チャンバ27e内への圧力媒体の、場合によっては必要な後供給を保証するためにプリロードがかけられている。このために、後供給容器の容積には、シール45を備えるピストン44によりプリロードがかけられる。この場合、ピストン44と、ハウジング24eあるいはこのハウジング24eに結合された電動モータのハウジング8eとの間に、エネルギアキュムレータ46、例えば圧縮ばね又はこれに類するものの形態のエネルギアキュムレータ46が緊縮されている。後供給開口34eを介して、後流入する圧力媒体は、ハウジング24eのシール区分47に到達する。シール区分47において、ピストン26eは、一方では、シール、例えば溝付きリングシール48により外部に対してシールされ、他方では、圧力チャンバ27eに対してシール、例えば溝付きリングシール49によりシールされる。ピストン26eがマスターシリンダの放圧位置に移動すると、ピストン26eに設けられたスニッファ溝あるいはブリーダ溝(Schnueffelnut)50は、溝付きリングシール49にオーバラップし、後供給容器33eと圧力チャンバ27eとの間の接続を開放する。この接続を介して、場合によっては圧力媒体が交換可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ハイドロスタティックアクチュエータ
1a ハイドロスタティックアクチュエータ
1b ハイドロスタティックアクチュエータ
1c ハイドロスタティックアクチュエータ
1d ハイドロスタティックアクチュエータ
1e ハイドロスタティックアクチュエータ
2 電動モータ
3 遊星転動機構型伝動装置
4 マスターシリンダ
4a マスターシリンダ
4b マスターシリンダ
4c マスターシリンダ
4d マスターシリンダ
4e マスターシリンダ
5 回転軸線
6 ロータ
7 ステータ
8 ハウジング
8d ハウジング
8e ハウジング
9 キャップ
10 スリーブ
10a スリーブ
10d スリーブ
11 伝動装置スピンドル
12 遊星転動体
13 粗歯列
14 内歯列
15 細目ねじ山区分
16 雄ねじ山
17 永久磁石
18 付設部
19 付設部
20 転がり軸受
21 転がり軸受
22 ハウジング区分
23 インサート
24 ハウジング
24a ハウジング
24b ハウジング
24c ハウジング
24d ハウジング
24e ハウジング
25 センタリングカラー
26 ピストン
26a ピストン
26b ピストン
26c ピストン
26d ピストン
26e ピストン
27 圧力チャンバ
27a 圧力チャンバ
27b 圧力チャンバ
27c 圧力チャンバ
27d 圧力チャンバ
27e 圧力チャンバ
28 圧力ポート
28c 圧力ポート
28e 圧力ポート
29 軸方向ガイド
30 フリースペース
30a フリースペース
30d フリースペース
31 ピストン面
32 構成ユニット
33 後供給容器
33e 後供給容器
34 後供給開口
34e 後供給開口
35 充填開口
36 ボール
37 ダイヤフラム
38 開口
38a カバー
39 センサ装置
40 センサ
41 センサ
42 センサ磁石
43 ローカル型の電子装置
44 ピストン
45 シール
46 エネルギアキュムレータ
47 シール区分
48 溝付きリングシール
49 溝付きリングシール
50 スニッファ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロスタティックアクチュエータ(1c,1d,1e)、特にハイドロスタティッククラッチアクチュエータであって、ハウジング(24c,24d,24e)と、該ハウジング(24c,24d,24e)内を軸方向で移動可能な、圧力チャンバ(27c,27d,27e)に圧力を加えるピストン(26c,26d,26e)とを含むマスターシリンダ(4c,4d,4e)を備えるとともに、回転駆動を軸方向運動に変換する伝動装置と、該伝動装置を回転駆動する、ステータ(7)及びロータ(6)を備える電動モータ(2)と、を備えるハイドロスタティックアクチュエータ(1c,1d,1e)において、前記圧力チャンバ(27c,27d,27e)が、前記電動モータ(2)の回転軸線(5)に関して軸方向で前記ピストン(26c,26d,26e)と前記電動モータ(2)との間に配置されていることを特徴とする、ハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項2】
ハイドロスタティックアクチュエータ(1,1a,1b)、特にハイドロスタティッククラッチアクチュエータであって、ハウジング(24,24a,24b)と、該ハウジング(24,24a,24b)内を軸方向で移動可能な、圧力チャンバ(27,27a,27b)に圧力を加えるピストン(26,26a,26b)とを含むマスターシリンダ(4,4a,4b)を備えるとともに、回転駆動を軸方向運動に変換する伝動装置と、該伝動装置を回転駆動する、ステータ(7)及びロータ(6)を備える電動モータ(2)と、を備えるハイドロスタティックアクチュエータ(1,1a,1b)において、前記ピストン(26,26a,26b)が、前記電動モータ(2)の回転軸線(5)に関して軸方向で前記圧力チャンバ(27,27a,27b)と前記電動モータ(2)との間に配置されていることを特徴とする、ハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項3】
前記伝動装置が、前記ピストン(26,26a,26b,26c,26d,26e)を軸方向で移動させる、前記回転軸線(5)に沿って配置されるねじ山付きスピンドル(11)と、該ねじ山付きスピンドル(11)に対して同軸的に配置される、回転駆動されるスリーブ(10,10a,10d)と、前記ねじ山付きスピンドル(11)と前記スリーブ(10,10a,10d)との間で転動する遊星転動体(12)とを備える遊星転動機構型伝動装置(3)から形成されている、請求項1又は2記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項4】
前記伝動装置が前記ロータ(6)の半径方向内側に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項5】
前記ロータ(6)が前記伝動装置に支承されている、請求項4記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項6】
前記伝動装置が前記ロータ(6)内に組み込まれている、請求項1から5までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項7】
前記圧力チャンバが前記伝動装置の半径方向外側に配置されており、かつ前記電動モータが、軸方向で前記圧力チャンバに隣接配置されており、該圧力チャンバの外径より小さな直径を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項8】
前記ハイドロスタティックアクチュエータ(1c,1e)内に、流体静力学的な圧力媒体のための後供給容器(33,33e)が組み込まれている、請求項1から7までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項9】
前記後供給容器(33e)にプリロードがかけられている、請求項8記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項10】
前記後供給容器(33e)が、環状に形成された圧力チャンバ(27e)の半径方向内側に配置されている、請求項8又は9記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項11】
前記伝動装置のねじ山付きスピンドルが、ピストンの移動中、少なくとも部分的に軸方向で前記後供給容器に係合する、請求項10記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項12】
前記後供給容器が、環状に形成された圧力チャンバの半径方向外側に配置されている、請求項9又は10記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項13】
前記ハウジングと前記ピストンとの間に漏れシールが配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項14】
前記ハウジングと前記伝動装置との間に漏れシールが配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項15】
前記漏れシールが、前記伝動装置の伝動装置スピンドルと前記ハウジングとの間に配置されている、請求項14記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項16】
前記ハウジング(24b)と前記スリーブ(10a)とが一体的に形成されている、請求項3から15までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項17】
前記電動モータ(2)を制御するためのセンサ装置(39)が、前記マスターシリンダの前記ハウジングを収容する端面に対向する端面に配置されている、請求項1から16までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。
【請求項18】
前記電動モータを制御するためのセンサ装置(39)が、前記マスターシリンダの前記ハウジングを収容する端面に配置されている、請求項1から16までのいずれか1項記載のハイドロスタティックアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509540(P2013−509540A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535622(P2012−535622)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001183
【国際公開番号】WO2011/050766
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512006239)シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (59)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】