説明

ハイブリッドシール

【課題】 金属要素(127)と、黒鉛等の可撓性非金属耐熱要素(129)とを含み、これらの要素が完成時において完全に一体化されて剥離を生じることのないハイブリッドシール(117)が提供される。
【解決手段】 このハイブリッドシール(117)は、ハイブリッド耐熱ストリップ(107)から製造することができ、該ハイブリッド耐熱ストリップ(107)を巻いて予備成形物(109)とした後圧縮成形することによって形成される。ハイブリッドストリップ(107)は、可撓性非金属耐熱材料から成るコアシート(111)と、コアシートの周りに編み付けられた金属メッシュ(113)とを有する。予備成形物(109)として形成する前に、コアシートと金属メッシュを圧着してシールの金属要素と非金属要素の一体化工程を開始する。圧縮成形によってその一体化が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性非金属耐熱材料(例えば黒鉛や雲母等)と、かぶせ編みしたワイヤメッシュとの複合材料を用いたハイブリッドシールおよびハイブリッドパッキン(ここではまとめて「ハイブリッドシール」と呼ぶ)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、燃焼排ガス用導管のような高温用途に適するハイブリッド滑りシールを含むハイブリッドシールに関する。高温シ−ルを利用する用途については、米国特許第4683010号公報(特許文献1)、米国特許第4951954号公報(特許文献2)、米国特許第6286840号公報(特許文献3)、米国特許第7012195号公報(特許文献4)、国際特許公開公報WO2007/103327号(特許文献5)に記載されている。
【0003】
米国特許第3404061号公報(特許文献6)に記載されているような可撓性黒鉛は何十年も前から公知となっており、GRAFOILI(オハイオ州パルマのグラテック・インターナショナル・ホールディング・インコーポレイテッド(GRAFTECH INTERNATIONAL HOLDINGS INC.))の商品名等で市販されている。可撓性黒鉛シートは、高品質の粒子状黒鉛フレークを強い鉱酸を用いたインターカレーション工程に通すことによって製造されるロールシート製品である。フレークを加熱して酸を揮発させ、元の大きさの何倍にも拡張する。この拡張工程では、蠕虫状・樹枝状の構造体が製造され、該構造体は成形またはカレンダリングによって容易にシート状に形成することができる。通常は製造工程に結合材を導入することはない。その結果得られるガスケットシート製品は、優れた引張強度を示し、工業用途用としては通常の場合元素状炭素が97重量%超となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4683010号公報
【特許文献2】米国特許第4951954号公報
【特許文献3】米国特許第6286840号公報
【特許文献4】米国特許第7012195号公報
【特許文献5】国際特許公開公報WO2007/103327号
【特許文献6】米国特許第3404061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可撓性黒鉛シートから成るシールは、シートから円形片(または所望形状の周縁部)を打ち抜きまたは切断によって製造するのが普通であり、高価な黒鉛材料に相当量の無駄が生じる結果となっている。
【0006】
黒鉛を使用することと、可撓性黒鉛シート材料の無駄を減らすことが望ましいことに鑑みて、本発明は、可撓性黒鉛シートを用いて、しかも製造工程において黒鉛シートの無駄をほとんど生じない高温シ−ルを提供する。本発明では黒鉛に代るものとして、雲母のような黒鉛以外の可撓性非金属耐熱材料を用いた高温シ−ルも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様により提供されるハイブリッド耐熱ストリップ(107)は、縦軸を有し、(a)可撓性非金属耐熱材料から成るストリップ状のコアシート(111)と、(b)前記コアシート(111)の周りに編み付けられた金属メッシュ(113)と、を含んで成るハイブリッド耐熱ストリップであって、前記金属メッシュ(113)を前記コアシート(111)の周りに編み付けた後、前記コアシート(111)と前記金属メッシュ(113)とが圧着され、前記圧着によって前記ストリップの縦軸に略垂直に配向された波形が形成されている。
【0008】
第2の態様によると、可撓性黒鉛ストリップ(111)にワイヤメッシュ(113)をかぶせ編みし、圧着し、円環状に圧縮成形して成る耐熱シール(117)が提供される。
【0009】
第3の態様によるハイブリッド耐熱シール(117)の製造方法は、(a)可撓性非金属耐熱材料を含むコアシート(111)を提供するステップと、(b)前記コアシート(111)の周りに金属メッシュ(113)を編み付けて複合材料(115)を形成するステップと、(c)前記複合材料(115)を圧着するステップと、(d)前記圧着した複合材料(115)から予備成形物(109)を形成するステップと、(e)前記予備成形物(109)を圧縮してシール(117)を形成するステップと、を含んで成り、前記(e)のステップの後、金属メッシュ(113)は可撓性非金属耐熱材料の略全体に分散される。
【0010】
なお、本発明の各種態様の概要説明において用いた参照符号は、読者の便宜を図るものに過ぎず、それによって発明の範囲を限定することを意図するものではない。より一般的に言うと、以上の概要説明と以下の詳細な説明とは、本発明を例示するものに過ぎず、発明の本質および性質を理解するための要旨または骨子を提供することを目的とするものである。
【0011】
本発明のその他の特長と利点については、以下の詳細な説明に記載するが、当業者にはその記載から容易に理解され、またここに記載した発明を実施することで認識されるであろう。図面は本発明の理解を助けるために添付したものであり、本明細書に包含されると共にその一部を構成するものである。なお、本明細書および図面に開示した本発明の種々の特長は、任意の全ての組み合わせで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の態様によるハイブリッドシールの形成方法を示す図である。
【図2】本発明によるハイブリッドシールの4つの代表的断面を示す図である。
【図3】本発明によるハイブリッドシールの一体化構造を示す顕微鏡写真である。
【図4】先行技術によるシールの層状構造を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述のように、本発明のある態様では、巻き付けて巻回構造体109(予備成形物)とした後、圧縮成形して排気システムで使用するハイブリッドシール等のハイブリッドシール117とすることができるハイブリッド耐熱ストリップ107が提供される。ハイブリッドストリップ107は、(1)可撓性非金属耐熱材料から成るコアシート111と、(2)コアシートの周りに編み付けた金属メッシュ113とを含み、メッシュをコアシートの周りに編み付けた後、コアシートと金属メッシュとは圧着される。圧着は、ハイブリッドストリップの縦軸(長さ方向)に対して略垂直に配向された波形を形成するように行われる。
【0014】
コアシートを形成する可撓性非金属耐熱材料は、GRAFOILの商品名(上記参照)で市販されているもののような可撓性黒鉛とすることができる。また、可撓性非金属耐熱材料は雲母でも良い。コアシートは単一の材料で形成しても良いし、複数の材料を組み合わせても良い。例えば、コアシートを1本またはそれ以上の黒鉛のストリップと、1本またはそれ以上の雲母のストリップとで構成しても良い。コアシートの形成にどのような材料を用いた場合でも、コアシートが帯状であるため、耐熱材料シートを打ち抜きまたは切断して所望のシール構造を製造していた従来技術に比較すると、無駄になる材料の量が格段に減少する。実際には、多くの用途において、廃棄分が実質的に皆無となる。
【0015】
コアシート111が形成されると、従来のワイヤ編機を用いてワイヤメッシュ113をかぶせ編みする。かぶせ編みに使用するワイヤは、例えば直径0.004〜0.008インチの範囲のフェライトワイヤまたはオーステナイトワイヤを用いることができる。例えば、304,316または430ステンレス鋼から成るワイヤを使用することができるが、用途によっては他の種類のワイヤを用いても良い。網目の密度はそれぞれの用途によって決まる。例えば、6〜18本の針を有するニッティングヘッドを用いて網目を形成すると、コアシートを取り囲む満足すべきワイヤメッシュを形成することができる。かぶせ編みを施したコアシートの両端を90度に切断するか、あるいは斜めに切断して圧縮工程(下記参照)において最終的なシールの構造体の中で該両端部を接着するためにより大きな表面積を確保できるようにする。
【0016】
図1はハイブリッドシールを製造する工程を示している。この工程は、可撓性非金属耐熱材料、例えば黒鉛のシート103を用いて開始される。ステップ(a)において、シートはその縁部に平行な線105に沿って切断され、コアシート111が形成される。このコアシート111は、シート103の長さ以下の長さを有し、その幅が上側と下側を画定し、その厚さが最小の寸法となる。ステップ(b)において、コアシート111にフェライトまたはオーステナイトのワイヤ113がかぶせ編みされて複合材料115が形成される。次に、ステップ(c)において、この複合材料115がローラ123との接触により圧着されるが、ローラ123の一方または両方が圧着パターンを付与する隆線を有しており、波形のハイブリッドストリップ107が形成される。
【0017】
ステップ(d)では、ハイブリッドストリップ107が巻き込まれて予備成形物109となる。予備成形物の巻き込みはいろいろな方法で行うことができる。例えば、ハイブリッドストリップの幅方向を巻き込み軸に対して平行に向けて巻いても良いし、あるいはその軸に対して斜めに巻いても良い。また、平面において巻き込みを行っても良いし、平面から出て螺旋状となるように、通常は後の巻きが前の巻きに重なるように巻き込んでも良い。波形のピッチ(周波数)は、ストリップを巻く半径に基づいて、ストリップに許容不能なレベルのストレスがかからないように、および/または波形が許容不能な程度に押潰されないに決定される。一般に、ピッチが短いほど(単位長さあたりの周波数が高いほど)巻き込み半径を小さくすることができる。一般的な指針として、直径4インチのシールの場合、波形のピッチは3/16インチ〜1/4インチとなり、直径12インチのシールの場合、波形のピッチは1/4インチ〜5/16インチとなるが、直径がこれらの数値および他の数値の場合は他のピッチとすることができるのは勿論である。一般に、波形の深さはワイヤメッシュを可撓性非金属耐熱材料と結合するのに十分な深さとする必要がある。波形の深さが1/16インチ〜3/16インチの範囲にある場合に、この目的に適することが分かっているが、用途によって必要であればこれより深さを深くも浅くもすることもできる。
【0018】
最後に、ステップ(e)では、成形工具または圧縮ダイを用いて予備成形物109の圧縮成形を行い所望のシールを製造する。金型またはダイの形状に応じて、完成されたシールの断面は多様な形状をとることができる。図2はその代表例を示したものであり、図の左から右へ、長方形の断面、V字状断面、周縁に突出部125を有する断面、湾曲した断面を示している。
【0019】
使用する特定の断面とは関係なく、重要なのは127(金属要素)と129(非金属要素)のようにハイブリッドシールの金属要素が実質的に非金属要素全体に分散されているということである。この分散構成をここでは「一体化」構造体と呼ぶ。この一体化は、一体化を開始する波形形成ステップ(c)とワイヤメッシュと可撓性非金属耐熱材料とを完全に一体化する圧縮成形ステップ(e)とを組み合わせた結果得られるものである。このように完全に一体化したものを示したが図3であり、可撓性非金属耐熱材料としての黒鉛から図1の方法を用いて製造したシールの断面を示す顕微鏡写真である。図3で分かるように、ワイヤメッシュと黒鉛が完全に結合されて丈夫で剥離不能な構造体が形成されている。
【0020】
可撓性非金属耐熱材料のシート、例えば可撓性黒鉛シートと金属要素とを含むシールを製造するこれまでの試みでは、金属要素を耐熱材料のシートとシートの間に挟むことが必要であった。このような構造体を成形すると、剥離しやすい部分ができてしまう。図4は、サンドイッチ法を用いて製造したシールの断面を示す顕微鏡写真であり、この場合も黒鉛を可撓性非金属耐熱材料として使用している。図から分かるように、金属要素と黒鉛はお互いに分離したままであり、使用中にバラバラになる恐れがある。これに対して、可撓性材料のストリップをワイヤメッシュで囲み、その結果として得られる複合材料を波形にして複合材料から予備成形物を形成した後、予備成形物を圧縮してシールを製造する方法では、剥離することのない部品が提供される。
【0021】
本装置は、導管内のガス流を処理装置(例えば触媒コンバーター)に導き、処理装置において一方の導管をもう一方の導管の内部に滑入することによって結合する構造、および同様の構造の用途に用いるシールおよび/またはパッキンとして有用である。従って、シールは成形後に円形または楕円形の形状を有する円環とするのが好ましいが、必要に応じて任意の湾曲形状または多角形形状(またはその組み合わせ)として製造することもできる。
【0022】
要約すると、本発明は、黒鉛等の可撓性非金属耐熱材料から成るシートにかぶせ編みし、圧着し、圧縮(形成)して楕円形または円形の形状とした高温シ−ルを提供する。
【0023】
以上の説明から、当業者には、発明の範囲と精神を逸脱しない様々な変更が明らかとなろう。例えば、1種類またはそれ以上の可撓性非金属耐熱材料から成るコアシートについて本発明の説明を行って来たが、コアシートはさらに、織りメッシュまたは編みメッシュのストリップのような金属基材から成る層を1つまたはそれ以上含んでも良い。このような基材を含ませることによって、通常より合成の高いシールが得られる。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載した特定の実施形態だけでなく、上述およびその他の種類の実施形態の変形、変更および同等物を包含することを意図したものである。
【符号の説明】
【0024】
103 可撓性非金属耐熱材料のシート
105 切断線
107 ハイブリッドストリップ
109 予備成形物(巻回構造体とも称する)
111 ハイブリッドストリップ(ストリップとも称する)のコアシート
113 ハイブリッドストリップの金属メッシュ
115 複合材料、すなわち波形にする前のかぶせ編みしたコアシート
117 ハイブリッドシール
123 圧着ローラ
125 突出部
127 ハイブリッドシールの金属要素
129 ハイブリッドシールの可撓性非金属の耐熱要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸を有し、
(a)可撓性非金属耐熱材料から成るストリップ状のコアシートと、
(b)前記コアシートの周りに編み付けられた金属メッシュと、を含んで成るハイブリッド耐熱ストリップであって、
前記金属メッシュを前記コアシートの周りに編み付けた後、前記コアシートと前記金属メッシュとが圧着され、前記圧着によって前記ストリップの縦軸に対して略垂直に配向された波形が形成されているハイブリッド耐熱ストリップ。
【請求項2】
前記可撓性非金属耐熱材料が黒鉛を含む請求項1に記載のストリップ。
【請求項3】
前記可撓性非金属耐熱材料が雲母を含む請求項1に記載のストリップ。
【請求項4】
前記コアシートが、第1の可撓性非金属耐熱材料層と第2の可撓性非金属耐熱材料層とを含んで成る請求項1に記載のストリップ。
【請求項5】
前記第1の層と第2の層が同じ組成を有している請求項4に記載のストリップ。
【請求項6】
前記第1の層と第2の層が異なる組成を有している請求項4に記載のストリップ。
【請求項7】
前記コアシートが可撓性金属材料から成る層を含む請求項1に記載のストリップ。
【請求項8】
請求項1に記載のストリップを含んで成る耐熱シールであって、前記ストリップが予備成形物に形成され、前記予備成形物が圧縮されてシールに形成される耐熱シール。
【請求項9】
前記シールが長方形の断面を有する請求項8に記載の耐熱シール。
【請求項10】
前記シールが屈曲された断面を有する請求項8に記載の耐熱シール。
【請求項11】
前記シールの断面が周縁に少なくとも1つの突出部を含んでいる請求項8に記載の耐熱シール。
【請求項12】
前記シールが湾曲した断面を有する請求項8に記載の耐熱シール。
【請求項13】
シール完成品において、前記ストリップの金属メッシュが該ストリップの可撓性非金属耐熱材料の略全体に分布している請求項8に記載の耐熱シール。
【請求項14】
可撓性黒鉛ストリップにワイヤメッシュをかぶせ編みし、圧着し、円環状に圧縮成形されて成る耐熱シール。
【請求項15】
(a)可撓性非金属耐熱材料を含むコアシートを提供するステップと、
(b)前記コアシートの周りに金属メッシュを編み付けて複合材料を形成するステップと、
(c)前記複合材料を圧着するステップと、
(d)前記圧着した複合材料から予備成形物を形成するステップと、
(e)前記予備成形物を圧縮してシールを形成するステップと、を含んで成り、
前記(e)のステップの後、金属メッシュが可撓性非金属耐熱材料の略全体に分散されるハイブリッド耐熱シールの製造方法。
【請求項16】
前記可撓性非金属耐熱材料が黒鉛である請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記可撓性非金属耐熱材料が雲母である請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記コアシートが1種類より多い可撓性非金属耐熱材料を含む請求項15記載の製造方法。
【請求項19】
前記コアシートが黒鉛と雲母とを含む請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記コアシートが金属材料を含む請求項15記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−181029(P2010−181029A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11597(P2010−11597)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(508307584)エイシーエス インダストリーズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】