説明

ハイブリッド薄膜、そのハイブリッド薄膜の製造方法、ならびにその種のハイブリッド薄膜を使用した燃料電池

この発明は、有機ポリマーおよび無機ポリマーからなるハイブリッド薄膜、ハイブリッド薄膜の製造方法、ならびにそのハイブリッド薄膜のポリマー電解薄膜燃料電池内における使用に関する。本発明に係るハイブリッド薄膜は少なくとも1つの塩基性有機ポリマーと少なくとも1つの無機ポリマーとから形成される。それらのポリマーは分子レベルで混合される。前記無機ポリマーは、薄膜形成中に少なくとも1つの前駆物質モノマーから形成される。本発明に係るハイブリッド薄膜は、ドーピング剤に対して高い吸収能力を有し、ドーピングされていてもいなくても高い機械的および温度安定性を有し、またドーピングされた形態においては長期的に高い陽子伝導能力を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機ポリマーおよび無機ポリマーからなるハイブリッド薄膜、ハイブリッド薄膜の製造方法、ならびにそのハイブリッド薄膜のポリマー電解薄膜燃料電池内における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高温燃料電池用としてポリベンゾイミダゾール(PBI)に基づいたポリマー電解薄膜が知られている(米国特許第5525436号明細書(特許文献1)、国際公開第200118894号A2パンフレット(特許文献2)、独国特許出願公開第10301810号A1明細書(特許文献3)、独国特許第10155543号C2明細書(特許文献4)、ならびにM.リクカワ、K.サヌイ氏等によるプログレスインポリマーサイエンス、2000年、第1463−1502頁(非特許文献1))。基礎ポリマーはリン酸をドーピングした後陽子を伝導する相を形成し、その中において陽子の伝搬は水分の存在に束縛されることはなく、従って200℃までの温度領域におけるこの燃料電池の稼働が可能になる。ドーピングプロセスによってPBIの高い温度安定性には影響は与えられず、一方で機械的な安定性は低下する。従ってポリベンゾイミダゾールを共有結合によって架橋結合することが一般的である。架橋結合させる試薬としては、エポキシドあるいはイソシアネート基(国際公開第200044816号A1パンフレット(特許文献5)、米国特許第6790553号B1明細書(特許文献6)、独国特許出願公開第10301810号A1明細書(特許文献7))を有する炭化水素を基礎にした二官能化合物が使用され、これはポリベンゾイミダゾールのNH基との反応によってポリマー鎖を互いに架橋結合させる。しかしながら、架橋結合部の化学および温度安定性、特に架橋結合する有機残留物の高温における酸化剤に対する安定性は限られたものとなる。この種の脂肪族の架橋結合鎖は陽子伝導能力に全く寄与しない。システム全体の運動性の制約、ならびに陽子伝導能力をもたらすドーピング剤に対する架橋結合性ポリマーの吸収能力の制約のため、PBIがジエポキシドまたはジイソシアネートによって架橋結合される場合は薄膜の伝導能力が追加的に制限される可能性がある。
【0003】
有機ポリマー基質の安定性は珪酸塩ベースの補強材料の形成によって改善することができる。従来の技術において例えば、それぞれヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリ弗化ビニリデン(PVDF)および珪酸塩材料からなるハイブリッド薄膜が知られている。このハイブリッド薄膜の製造は、ポリマーを例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等のアルコキシ置換されたシランと混合することによって実施され、その際酸触媒の液相プロセスによって無機材料が有機ポリマー基質内で沈殿する。有機相と無機相の間の交互作用は水素(架橋)結合によって伝導することができ、そのハイブリッド材料の機械的安定性は珪酸塩材料の比率が高まるに従って上昇する(S.ヤノ氏の材料科学および技術、第C6巻(1998年)第75−90頁(非特許文献2)参照)。しかしながら、無機相に対して到達可能な酸触媒凝結物の凝結レベルは65ないし75%に留まり、一方塩基触媒においては80ないし90%の凝結レベルに到達する(D.A.ロイ氏、K.J.シェア氏等による化学総論(Chemical Reviews)1995年、第95巻、第1431−1442頁(非特許文献3)参照)。ポリマー基質としての原重合体に対して酸触媒性液相凝結物は方法として適しておらず、その理由は酸−塩基相互作用によって生じる塩形成が有機溶媒中におけるポリマーの非溶性を促進するためである。文献中においてポリベンゾイミダゾール基質に対しての有機改質されたNaベントナイトの添加が知られており、そこで形成されるベントナイトPBIナノ複合材は改質されていないPBIに比べて高い温度安定性を有するものとなる(T.セキン氏による材料科学および工業、第B107巻(2004年)第166−171頁(非特許文献4)参照)。燃料電池内のポリマー電解質としての使用のためのポリベンゾイミダゾール基質内への充填材(“フィラー”)としての珪酸塩上に固定化されたリンタングステン酸の添加が知られている(P.スタイチ氏、M.ミヌトリ氏、S.ホセバ氏等によるパワーソースジャーナル、第90巻(2000年)第231−235頁(非特許文献5)参照)。この種の薄膜は、N,N−ジメチルアセタミド中のポリベンゾイミダゾールからなる溶液への珪酸−リンタングステン酸混合物の添加によって製造される。これは110℃より高い領域において小さな陽子伝導能力を有するものとなる。ポリベンゾイミダゾール改質物としてのAB−PBIに対してリンモリブデン酸の直接添加によってリン酸ドーピングされた状態における伝導性の改善が達成された(P.ゴメス−ロメロ氏、J.A.アセンシオ氏、S.ボロス氏等による電気化学アクタ、第50巻(2005年)第4715−4720頁(非特許文献6)参照)。ここで、薄膜製造プロセスの前にメタンスルホン酸中のAB−PBIからなる溶液内にヘテロポリ酸が溶解され、均質の溶液が得られた。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5525436号明細書
【特許文献2】国際公開第200118894号A2パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第10301810号A1明細書
【特許文献4】独国特許第10155543号C2明細書
【特許文献5】国際公開第200044816号A1パンフレット
【特許文献6】米国特許第6790553号B1明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10301810号A1明細書
【非特許文献1】M.リクカワ、K.サヌイ氏等によるプログレスインポリマーサイエンス、2000年、第1463−1502頁
【非特許文献2】S.ヤノ氏の材料科学および技術、第C6巻(1998年)第75−90頁
【非特許文献3】D.A.ロイ氏、K.J.シェア氏等による化学総論(Chemical Reviews)1995年、第95巻、第1431−1442頁
【非特許文献4】T.セキン氏による材料科学および工業、第B107巻(2004年)第166−171頁
【非特許文献5】P.スタイチ氏、M.ミヌトリ氏、S.ホセバ氏等によるパワーソースジャーナル、第90巻(2000年)第231−235頁
【非特許文献6】P.ゴメス−ロメロ氏、J.A.アセンシオ氏、S.ボロス氏等による電気化学アクタ、第50巻(2005年)第4715−4720頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、ドーピングをしてもしなくても高い機械的および温度安定性を有し、ドーピング剤に対して高い結合力を有するとともにドーピングされた形態において恒常的に高い陽子伝導能力を備える薄膜と、その種の薄膜の製造方法と、その種の薄膜を使用した燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は請求の範囲に定義された対象によって解決される。
【0007】
本発明に係るハイブリッド薄膜は、少なくとも1つの塩基性有機ポリマーと少なくとも1つの無機ポリマーとから形成される。それらのポリマーは分子レベルで混合される。薄膜形成に中にこの無機ポリマーは少なくとも1つの前駆物質モノマーから形成される。無機ポリマーとしては、主族および遷移族元素からの少なくとも1つの種類の原子Aが反復単位(−A−O−)を介して少なくとも2回互いに連結されているポリマーが理解される。その際原子Aは反復単位(−A−O−)を介して同じ元素の原子ならびに別の元素の原子の両方と連結させることができる。本発明において“分子レベルで混合”とは、任意の数xの反復単位(−A−O−)を有するオリゴマーおよびポリマー構造が鎖状、帯状、星型、あるいは層状構造において有機ポリマーの鎖あるいは網状体と相互貫入することを意味する。ここでA=Siに対して、反復単位(−A−O−)の珪素原子が少なくとも1つの同じ種類の別の単位の構成要素となる。
【0008】
本発明に係るハイブリッド薄膜のポリマー間には相互作用が存在する。この相互作用は、ファンデルワールス力および/または吸着力および/またはイオン結合および/または共有結合からなる。それによって、本発明に係るハイブリッド薄膜が高い温度および機械的安定性を有することが達成される。その高められた機械的安定性のため本発明に係るハイブリッド薄膜は少なくとも5000N/mmの弾性係数を有し、その際室温中において少なくとも150N/mmの引張力に耐久するものとなる。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、前記少なくとも1つの有機ポリマーがポリベンゾイミダゾール、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、および/またはポリ(テトラザピレン)からなる一群から選択される塩基性ポリマーからなる。好適にはポリ(2,2′−(m−フェニレン)−5,5′−ジベンゾイミダゾール)および/またはポリ−2,5−ベンゾイミダゾールである。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、N,Nジメチルアセトアミド中におけるポリ(2,2′−(m−フェニレン)−5,5′−ジベンゾイミダゾール)の1重量%の溶液が少なくとも0.85dl/gの内部粘度を有する。別の極めて好適な実施形態によれば、3重量%の水酸化ナトリウムを含んだエタノール中における1重量%のポリ−2,5−ベンゾイミダゾールの溶液が少なくとも1.5dl/gの内部粘度を有する。
【0011】
本発明に係るハイブリッド薄膜の前記少なくとも1つの無機ポリマーは前記少なくとも1つの有機ポリマーに対する補強を提供する。補強とは、少なくとも1つの有機ポリマーのみから形成された比較用薄膜に比べて、無機ポリマーによってハイブリッド薄膜がより高い機械的および温度長期間安定性を有し、またドーピング後により高い陽子伝導能力を有することを意味する。
【0012】
好適な構成形態において、無機ポリマーはA=W,Si,Sb,P,Ta,Nb,Ti,S,As,Bi,Se,Ge,Sn,Pb,B,Al,Cr,Zrおよび/またはMoを多様な原子種かつ可変の順序で有する反復単位(−A−O−)からなり、ここでAはさらに別の置換基を有することが可能である。本発明の極めて好適な実施形態によれば、ハイブリッド薄膜の無機ポリマーはA=Siのみを有する珪酸ベースのポリマーから形成される。
【0013】
無機ポリマーのための前駆物質モノマーとしては以下の一般式を有する結合基が理解される:
Si(OR)4−x、ここでx=0〜3、R=C1−C15−アルキル基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基であり、および/または;(X−RSi(OR4−x、ここでx=1〜3、R=−(CH−でy=1〜5,−CHO(CH−でy=1〜5,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、X=ヒドロキシ,アミノ,エポキシ,イソシアネート,無水物,メタクリロキシ,ビニルまたは−COZ,−PO,−SOZでZ=水素,アルカリ金属陽イオン(Li,Na,K,Cs),C1−C15−アルキル基,C1−C15−アルコキシ基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,SiRでR=C1−C15−アルキル基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,C1−C15−アルコキシ基またはエチレンオキシ基、ここで前記の成分Zおよび/またはRはハロゲン、OH−、CN−基によって置換されており、および/または;(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−x、ここでx=1〜3、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=−(CHでy=1〜5およびC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=水素,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリール基、Het=好適には環内に窒素を含んだ芳香族ヘテロシクレンを有するヘテロアリール基である。
【0014】
これらのシランの基からの前駆物質モノマーRSi(OR)4−x、(X−RSi(OR4−x、または(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−xの共通の構造特徴は、少なくとも1つの凝結可能あるいは加水分解可能なアルコキシあるいはアリロキシ置換基OR,ORまたはORであり、その分裂から無機ポリマーの(−Si−O−)−反復単位が生じる。
【0015】
SiOR4−xの基の好適なシランは、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラメトキシシランである。
【0016】
前駆物質モノマー(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−xの基からは次の式:
【0017】
【化1】

【0018】
に従って、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−ベンゾイミダゾール−5−炭酸アミドおよびN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−イミダゾール−4−炭酸アミドが極めて好適である。
【0019】
(X−RSi(OR4−xの基の好適なシランには、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、特に好適には(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランならびにジエチルフォスファートエチルトリエトキシシランが含まれる。上記のシラン(X−RSi(OR4−xの置換基X−Rのエポキシ−、イソシアナート−、無水−、あるいはメタクリロキシ官能基Xは、次の式に例示されるようにポリアゾールポリマーのNH官能基上への前駆物質モノマーの共有結合を可能にする:
【0020】
【化2】

【0021】
このため、本発明に係るハイブリッド薄膜の機械的および温度安定性が前記少なくとも1つの有機ポリマーと前記少なくとも1つの無機ポリマーの間の共有結合によって高められる。この共有結合が、無機ポリマーのSi−OH官能基と好適なポリベンゾイミダゾールのNH−官能基の間の水素架橋結合につながる。
【0022】
さらに、前記少なくとも1つの無機ポリマーのための前駆物質モノマーとして、主族および遷移族元素のアルコキシ−およびアリロキシ派生物、好適にはM(OR)(y=3〜4、M=B,Al,Ti,Zr等の無機中心原子、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)、および/または複数塩基のオキソ酸のアルキル−およびアリール派生物RXO(n>1、m>2、かつm>n、X=P,S,Se,Mo,W,As,Bi,Ge,Sn,Pb,Cr;R=H,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基またはSiR,ここでR=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)が理解される。ここで珪酸塩モノマーの場合と同様にOR基が凝結可能である。
【0023】
M(OR)の基からの前駆物質モノマーとして、硼酸トリフェニルエステル、硼酸トリエチルエステル、チタン(IV)エチラート、ジルコニウム(IV)エチラート、アルミニウムトリエチラートが特に好適である。RXOの基からは、リン酸−トリス−(トリメチルシリルエステル)、リン酸−トリス−(トリエチルシリルエステル)、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸塩、リン酸ジフェニル、リン酸トリトリルエステル、およびリン酸トリフェニルが極めて好適である。
【0024】
加えて、本発明に係るハイブリッド薄膜は好適な実施形態において以下の材料類から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでおり、それらは:
タングステン,珪素,アンチモン,リン,タンタル,ニオブ,チタン,硫黄,ヒ素,ビスマス,セレン,ゲルマニウム,錫,鉛,硼素,クロム,および/またはモリブデンを中心原子として有する主族および遷移族元素のオキソ酸派生物、好適にはHPW1240 x nHO(n=21〜29),HSiW1240 x nHO(n=21〜29),HWO(x=0.3ないし1),HSbWO,HPMo1240,HSb11,HTaWO,HNbO,HTiNbO,HTiTaO,HSbTeO,HTi,HSbO,HMoOであるか;および/または酸化物Mであり、ここでx=1〜2およびy=2〜5、好適にはM=Al,Sb,Th,Sn,Zr,Moであるか;および/または層状、帯状、および/または立体網状珪酸塩、特にゼオライト,H−ナトロライト,H−モルデナイト,H−モンモリロナイト,アンモニウム−アナルシン,アンモニウム−ソーダライト,アンモニウム没食子酸塩である。本発明に係るハイブリッド薄膜中の添加剤の含有率は有機ポリマーに対して1ないし20重量%となる。
【0025】
前記の添加剤の少なくとも1つの添加によって、本発明に係る薄膜の高温領域における機械的安定性がさらに高まる。
【0026】
N,N−ジメチルアセトアミド中の本発明に係るハイブリッド薄膜の溶解性レベルは最大でも30重量%であり、他方PBI比較薄膜は少なくとも55重量%であるより高い溶解性レベルを有する。
【0027】
本発明に係るハイブリッド薄膜は既に元々陽子伝導能力を有することが可能であるが、その陽子伝導能力をドーピング剤の吸収によって著しく高めることができる。意外なことに、本発明に従ってドーピングされたハイブリッド薄膜が無機ポリマーおよび添加剤を含んでいない同様な薄膜に比べて顕著に高い陽子伝導能力を有することが判明した。添加剤が不純物の形成によって陽子伝導能力を高めるため、それによって製造される燃料電池の出力を低下させることなく、例えばハイブリッド薄膜のドーピングレベルを低減することが可能である。固定されるドーピング剤は例えばリン酸である。意外なことに、本発明に係るハイブリッド薄膜はドーピング剤を長期安定的に固定し、それによって燃料電池稼働に際して高い長時間耐久性が得られる。
【0028】
本発明に係るハイブリッド薄膜の製造方法は:
(A) 少なくとも1つの塩基性有機ポリマーと、1つの無機ポリマーのための1つの前駆物質モノマーと、1つの塩基触媒と、溶媒からなる薄膜成形用溶液を薄膜形態に成形し、
(B) 自立的なポリマー薄膜が形成されるまで50ないし150℃の温度領域において前記薄膜形態から溶媒ならびに揮発性の凝結生成物を除去し、
(C) ステップ(B)において得られたポリマー薄膜を150ないし400℃の範囲の温度で1分から5時間までの持続時間にわたって焼鈍しする、
ステップからなる。
【0029】
ステップ(A)において使用される少なくとも1つの塩基性有機ポリマーに対して、ポリベンゾイミダゾール、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、および/またはポリ(テトラザピレン)からなる一群から1つのポリマーを選択することが好適である。ステップ(A)においてポリベンゾイミダゾールの群の中から少なくとも1つの有機ポリマー、特にポリ(2,2′−(m−フェニレン)−5,5′−ジベンゾイミダゾール)および/またはポリ−2,5−ベンゾイミダゾールを使用すれば極めて好適である。
【0030】
別の好適な実施形態によれば、ステップ(A)においてそれから無機ポリマーを生成する前記少なくとも1つの前駆物質モノマーが以下の一般式を有する化合物の一群の中から選択され、それらは:
SiOR4−x、ここでx=0〜3、R=C1−C15−アルキル基,またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基であり、および/または;(X−RSi(OR4−x、ここでx=1〜3、R=−(CH−でy=1〜5,−CHO(CH−でy=1〜5,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、X=ヒドロキシ,アミノ,エポキシ,イソシアネート,無水物,メタクリロキシ,ビニルまたは−COZ,−PO,−SOZでZ=水素,アルカリ金属陽イオン(Li,Na,K,Cs),C1−C15−アルキル基,C1−C15−アルコキシ基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,SiRでR=C1−C15−アルキル基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,C1−C15−アルコキシ基またはエチレンオキシ基、ここで前記の成分Zおよび/またはRはハロゲン、OH−、CN−基によって置換されており、および/または;(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−x、ここでx=1〜3、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=−(CHでy=1〜5およびC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=水素,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリール基、Het=好適には環内に窒素を含んだ芳香族ヘテロシクレンを有するヘテロアリール基である。
【0031】
SiOR4−xの基の好適なシランとしては、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラメトキシシランが本発明に係る方法のステップ(A)において使用される。
【0032】
(X−RSi(OR4−xの基の好適なシランとして、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、特に好適には(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランならびにジエチルフォスファートエチルトリエトキシシランがステップ(A)において処理される。
【0033】
(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−xの基からは、本発明に係る方法のステップ(A)においてN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−ベンゾイミダゾール−5−炭酸アミドおよびN−(3−トリメトキシシリルプロピル)−イミダゾール−4−炭酸アミドが好適に使用される。
【0034】
前記少なくとも1つの無機ポリマーのための前駆物質モノマーとして珪酸塩モノマーとならんで、主族および遷移族元素のアルコキシ−およびアリロキシ派生物、好適にはM(OR)(y=3〜4、M=B,Al,Ti,Zr等の無機中心原子、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)、および/または複数塩基のオキソ酸のアルキル−およびアリール派生物RXO(n>1、m>2、かつm>n、X=P,S,Se,Mo,W,As,Bi,Ge,Sn,Pb,Cr;R=H,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基またはSiR,ここでR=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)が本発明に係る方法のステップ(A)において使用される。
【0035】
M(OR)の基からの前駆物質モノマーとして、硼酸トリフェニルエステル、硼酸トリエチルエステル、チタン(IV)エチラート、ジルコニウム(IV)エチラート、アルミニウムトリエチラートがステップ(A)において特に好適に使用される。RXOの基からは、リン酸−トリス−(トリメチルシリルエステル)、リン酸−トリス−(トリエチルシリルエステル)、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸塩、リン酸ジフェニル、リン酸トリトリルエステル、およびリン酸トリフェニルが本発明に係る方法のステップ(A)において極めて好適に使用される。
【0036】
ステップ(A)において前駆物質モノマーは薄膜成形用溶液の有機ポリマーに対して2ないし200%、特に50−100%の比率で使用することが好適である。
【0037】
前記少なくとも1つの前駆物質モノマーは成形体または例えばN,N−ジメチルアセトアミド等の極性の中性溶媒中の溶液として薄膜成形用溶液に添加される。
【0038】
意外なことに本発明に係る方法のステップ(A)からの薄膜成形用溶液は室温中で凝結が生じることなく24時間超保存可能である。(−A−O−)−反復単位を有する無機ポリマーはステップ(B)において初めて前記少なくとも1つの前駆物質モノマーから50℃超の領域で形成される。本発明に係る方法は、無機ポリマーがその前駆物質モノマーの適用によって成形用溶液の製造に統合されプロセス中においてその場で形成されるため、高い効率を有するものとなる。そのためのプロセス温度領域は50ないし150℃、特に65ないし70℃である。
【0039】
凝結プロセスは塩基性の触媒を使用して実施される。本発明に係る方法の好適な実施形態において、加水分解可能あるいは凝結可能な前駆物質モノマーの置換基の分離下における凝結反応を導入するために一般式MOHでM=Li,Na,K,またはCsのアルカリ金属水酸化物を使用する。それによって非溶性の有機ポリマー塩の形成が防止される。
【0040】
塩基性触媒は有機ポリマーに対して0.2ないし5重量%、特に1ないし3重量%の分量で使用することが好適である。アルカリ金属水酸化物は少なくとも同量の水中に溶解して成形用溶液中に滴下させる。次の化学式に塩基性触媒性凝結プロセスの反復単位(−A−O−)内のA=Siについて示されている:
【0041】
【化3】

【0042】
本発明に係る方法の別の好適な実施形態によれば、本発明に係るハイブリッド薄膜の実用上の特性をさらに向上させるためにステップ(A)において薄膜成形用溶液に少なくとも1つの添加剤をさらに添加する。その際前記少なくとも1つの添加剤は以下の材料種からなることが好適であり、それらは:タングステン,珪素,アンチモン,リン,タンタル,ニオブ,チタン,硫黄,ヒ素,ビスマス,セレン,ゲルマニウム,錫,鉛,硼素,クロム,および/またはモリブデンを中心原子として有する主族および遷移族元素のオキソ酸派生物、好適にはHPW1240 x nHO(n=21〜29),HSiW1240 x nHO(n=21〜29),HWO(x=0.3ないし1),HSbWO,HPMo1240,HSb11,HTaWO,HNbO,HTiNbO,HTiTaO,HSbTeO,HTi,HSbO,HMoOであるか;および/または酸化物Mであり、ここでx=1〜2およびy=2〜5、M=Al,Sb,Th,Sn,Zr,Moであるか;および/または層状、帯状、および/または立体網状珪酸塩、特にゼオライト,H−ナトロライト,H−モルデナイト,H−モンモリロナイト,アンモニウム−アナルシン,アンモニウム−ソーダライト,アンモニウム没食子酸塩である。本発明に係る方法によれば、M(OR)の基から硼酸トリフェニルエステル、硼酸トリエチルエステル、チタン(IV)エチラート、ジルコニウム(IV)エチラート、アルミニウムトリエチラートを使用することが極めて好適である。RXOの基からは、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸塩、リン酸ジフェニル、リン酸トリトリルエステル、リン酸−トリス−(トリエチルシリルエステル)、リン酸−トリス−(トリメチルシリルエステル)、およびリン酸トリフェニルを使用することが極めて好適である。
【0043】
前記の少なくとも1つの添加剤は有機ポリマーに対して1ないし20重量%の分量で、好適にはステップ(A)の薄膜成形用溶液に、また極めて好適には塩基性触媒の添加前に添加することが好適である。
【0044】
液体状の前駆物質モノマー、特に珪酸塩モノマーまたはその溶液の希釈効果によって、ステップ(A)における薄膜成形用溶液の動的粘性は20ないし200dPasまで低下する。この粘性低下によって少なくとも14ないし15重量%のより高いポリアゾール固形分含有率と300μm未満のより低い湿潤層厚が可能になる。従って本発明に係る薄膜成形用溶液から単位時間当たりにより大きな薄膜面を製造することができる。それに対して前駆物質モノマー、特に珪酸塩モノマーを使用しない比較薄膜成形用溶液においては僅か11ないし12重量%のポリアゾール含有率と約350μmの湿潤層厚が可能であり、その結果製造技術的に劣ったものとなる。
【0045】
本発明に係る方法のステップ(C)において20ないし60μm、特に20ないし45μmの乾燥厚を有するハイブリッド薄膜が製造され、それをステップ(C)の終了後にその後の加工のためにロールすることができる。
【0046】
本発明に係る方法の別の実施形態によれば、さらに後の工程(D)において陽子伝導能力を達成するためにハイブリッド薄膜にドーピング剤を付加する。
【0047】
本発明に係るドーピングされたハイブリッド薄膜は、少なくとも85重量%のリン酸をドーピングした場合に、添加剤および無機ポリマーを使用しないドーピングされた薄膜と比べてより高い機械的強度を有する。その少なくとも1つの無機ポリマーが珪酸塩ポリマーである、本発明に係るドーピングされたハイブリッド薄膜は5N/mmの引張力および84%の膨張に際して初めて破裂し、他方ドーピングされた比較薄膜においてはそれらが僅か3N/mmおよび23%の数値となる。
【0048】
前述した本発明に係る方法によって製造されたハイブリッド薄膜は、薄膜電極ユニット(MEA)の製造および高温度燃料電池の製造に極めて適している。この種の本発明に係る燃料電池は、2つの平面状ガス拡散電極とその間にサンドイッチ状に配置された本発明に係るハイブリッド薄膜が組み合わされた少なくとも1つのMEAから形成される。そのハイブリッド薄膜は高い陽子伝導能力を達成するためにドーピング剤が付加されており、その際そのドーピング剤は好適にはリン酸であり、それが好適に固定されている。ハイブリッド薄膜のドーピングは、例えばこの本発明に係るハイブリッド薄膜をリン酸中で浸漬することによって実施される。本発明に係るハイブリッド薄膜のリン酸浸漬したガス拡散電極上への陽子伝導性の付着は圧力および温度作用による熱圧工程の後に実施することが好適である。
【0049】
リン酸のOH基は、ポリアゾールのイミダゾール基との水素架橋結合を形成しながら相互作用する。加えて、無機ポリマーのシラノール基が凝結しながらリン酸を共有結合によって次の式のようにリン酸エステルとして結合する。
【0050】
【化4】

【0051】
本発明に係るハイブリッド薄膜のリン酸に対する高い結合力によって90重量%までのドーピング率が可能となる。同時に、燃料電池内における薄膜の劣化に対して、生産水によるリン酸の溶離が抵抗作用をもたらす。この種のハイブリッド薄膜は、24℃の燃料電池稼働に際して少なくとも2S/mの伝導能力を示し、160℃においては少なくとも10S/mの伝導能力を示す。好適な実施形態によれば、本発明に係るハイブリッド薄膜は24℃において少なくとも4S/mの伝導能力を有する。
【0052】
本発明に係る燃料電池は少なくとも250℃までの稼働温度領域において水素/空気稼働で動作可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
次に、添付の図1および図2ならびに実施例1ないし7を参照しながら本発明についてさらに詳細に説明する。
【0054】
例1
ハイブリッド薄膜の製造
527gのテトラエトキシシラン(ワッカー社)と59gの3−(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(アルファ・エサー社)を600gのN,N−ジメチルアセトアミド中に溶解し、攪拌しながら70分以内で、2847gのN,N−ジメチルアセトアミド中の586gのPBIの溶液(1%のPBI溶液の固有粘度が1.09dL/gであることを特徴とする)に滴下漏斗を使用して滴下して付加する。10mlの水中に溶解された5.9gの水酸化カリウムを添加した後混合物を30分間室温中で攪拌し、ザルトリウスAG社製のPP2ザルトピュア(R)P8カプセル(20μm)によって濾過し、その後室温かつ100ミリバールの圧力下で19時間ガス抜きする。成形用溶液を280μmの層厚で塗付し65℃で10分間乾燥させる。ハイブリッド薄膜を支持フィルムから剥離し、6分間190℃で、さらにその後4時間250℃で後乾燥させる。薄膜成形用溶液(例1)の組成および特性が表1中に記載されている。比較薄膜(“比較例”)は同様な方法で製造した。
【0055】
【表1】

【0056】
例2
溶解度の判定
例1によって製造された薄膜から抽出によって溶解度を判定する。7.7cm×7.7cmの辺の長さを有するポリマー薄膜片から試験片を打ち抜き、重量を測定して丸底フラスコ内に収容する。ポリマー薄膜片が完全に液体に浸るまでN,N−ジメチルアセトアミドを丸底フラスコ内に注入する。油槽を使用して丸底フラスコを130℃に加熱する。130℃で1時間加熱して室温まで冷却した後溶媒を濾過して試料を200℃で一晩乾燥させる。乾燥後に試料を室温まで冷却するために乾燥ペレットを充填した乾燥器内に設置し100ミリバールに減圧する。試料の非溶性の成分を重量測定によって判定する。非溶性の成分は55%超である。比較例については45%の溶解度が判定される。結果は表2に記載されている。
【0057】
【表2】

【0058】
例3
引張力測定
薄膜の機械的安定性を判定するために引張力検査を実施する。10cmの長さと2cmの幅を有する薄膜試料をツウィックGmbH&Co.社の測定装置Z2.5内に締め付け、室温中で5mm/分の速度で引張試験を実施する。例1によって製造されたドーピングされていないハイブリッド薄膜は5600N/mmあるいはそれ以上の弾性率を有し、比較薄膜と比べて高い160N/mm超の引張力および7%超の膨張率において破裂する。比較薄膜は5500N/mmの弾性率を有し、141N/mmの引張力かつ僅か5%の膨張率で既に破裂する。結果は表2に記載されている。
【0059】
例4
リン酸によるドーピング
ドーピング剤の吸収能力を判定するために、11.8cm×13.5cmの大きさの薄膜試料を85重量%リン酸内で130℃の温度で30分間浸漬させる。付着したリン酸を除去した後重量測定し以下の公式に従って質量増加を判定する。
[(ドーピング前の質量−ドーピング後の質量)/ドーピング後の質量]×100=ドーピング率[%]
【0060】
ハイブリッド薄膜は比較薄膜と比べて多い85%超のリン酸を吸収する。より高いドーピング率にもかかわらず、ドーピングされたハイブリッド薄膜は5N/mmおよび84%の膨張率で初めて破裂する。結果は表3に記載されている。
【0061】
【表3】

【0062】
例5
陽子伝導能力の測定
陽子伝導能力を判定するために、ドーピングされたハイブリッド薄膜を4.5cm×2cmの断片に切断し、平均厚を少なくとも3点上での測定によって判定し、測定セル内に設置する。その測定セルは4本の電極からなり、抵抗の判定は室温中で環境湿気を排除しながらインピーダンススペクトロスコピーによって実施する。3.2S/mの伝導能力を有する比較薄膜に対して、ドーピングされたハイブリッド薄膜は24℃において4S/m超の伝導能力を有する(表3)。
【0063】
例6
燃料電池の製造
例1によって製造された薄膜を104cmの大きさの正方形の断片に切断して、2.0mg/cmの白金が付加され50cmの面積を有するE−TEK社製の市販ELAT電極と組み合わせ、それらはいずれも0.27gのリン酸がドーピングされる。薄膜電極サンドイッチは平行なプレート間で160℃かつ50バールで4時間薄膜−電極ユニットとしてプレスされる。そのようにして得られた薄膜−電極ユニットをヒューエル・セル・テクノロジーINC.社製の試験燃料電池内に一般的な構成で組み込み、15バールの圧力で封入する。
【0064】
例7
例6の燃料電池の伝導パラメータの判定
例6の電池をハイドロジニクスINC.社製の市販燃料電池検査スタンドFCATSアドバンスドスクリーナーに接続し、空気および水素の充填によって160℃および3バールの稼働状態に転換する。水素のガス流は783sml/分で、空気については2486sml/分となる。図1には160℃および3バールにおけるハイブリッド薄膜の電流−電圧特性曲線が示されている。図2には、同様な稼働条件における比較薄膜の電流−電圧特性曲線が示されている。それらの特性曲線は乾燥ガスを使用して記録したものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】160℃および3バールで水素/空気稼働中における本発明に係る燃料電池の電流−電圧曲線を示した説明図である。
【図2】160℃および3バールで水素/空気稼働中における比較薄膜を使用した燃料電池の電流−電圧曲線を示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの塩基性有機ポリマーと少なくとも1つの無機ポリマーとからなり、それらが分子レベルで混合され、薄膜形成中に少なくとも1つの前駆物質モノマーから前記無機ポリマーが形成されるハイブリッド薄膜。
【請求項2】
ポリマー間に相互作用が存在してなる請求項1記載のハイブリッド薄膜。
【請求項3】
相互作用はファンデルワールス力および/または吸着力および/またはイオン結合および/または共有結合からなる請求項2記載のハイブリッド薄膜。
【請求項4】
少なくとも1つの塩基性有機ポリマーがポリベンゾイミダゾール、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、および/またはポリ(テトラザピレン)からなる一群から選択されるポリマーからなる、請求項1記載のハイブリッド薄膜。
【請求項5】
少なくとも1つの有機ポリマーがポリベンゾイミダゾール、ポリ(2,2′−(m−フェニレン)−5,5′−ジベンゾイミダゾール)および/またはポリ−2,5−ベンゾイミダゾールの一群からのものである請求項4記載のハイブリッド薄膜。
【請求項6】
N,Nジメチルアセトアミド中におけるポリ(2,2′−(m−フェニレン)−5,5′−ジベンゾイミダゾール)の1重量%の溶液が少なくとも0.85dl/gの内部粘度を有する、請求項5記載のハイブリッド薄膜。
【請求項7】
3重量%の水酸化ナトリウムを含んだエタノール中における1重量%のポリ−2,5−ベンゾイミダゾールの溶液が少なくとも1.5dl/gの内部粘度を有する、請求項5記載のハイブリッド薄膜。
【請求項8】
少なくとも1つの無機ポリマーが少なくとも1つの有機ポリマーに対する補強を成すものである請求項1記載のハイブリッド薄膜。
【請求項9】
無機ポリマーが珪酸塩ポリマーである請求項1および8記載のハイブリッド薄膜。
【請求項10】
前駆物質モノマーが以下の一般式を有する化合物の一群から選択される請求項1ないし9のいずれかに記載のハイブリッド薄膜:
Si(OR)4−x、ここで
x=0〜3、R=C1−C15−アルキル基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基であり、および/または;
(X−RSi(OR4−x、ここでx=1〜3、R=−(CH−でy=1〜5,−CHO(CH−でy=1〜5,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、X=ヒドロキシ,アミノ,エポキシ,イソシアネート,無水物,メタクリロキシ,ビニルまたは−COZ,−PO,−SOZでZ=水素,アルカリ金属陽イオン(Li,Na,K,Cs),C1−C15−アルキル基,C1−C15−アルコキシ基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,SiRでR=C1−C15−アルキル基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,C1−C15−アルコキシ基またはエチレンオキシ基、ここで前記の成分Zおよび/またはRはハロゲン、OH−、CN−基によって置換されており、および/または;
(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−x、ここで
x=1〜3、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=−(CH−でy=1〜5およびC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=水素,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリール基、Het=好適には環内に窒素を含んだ芳香族ヘテロシクレンを有するヘテロアリール基であり、および/または;
主族および遷移族元素のアルコキシ−およびアリロキシ派生物、好適にはM(OR)(y=3〜4、M=B,Al,Ti,Zr等の無機中心原子、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)、および/または;
複数塩基のオキソ酸のアルキル−およびアリール派生物RXO(n>1、m>2、かつm>n、X=P,S,Se,Mo,W,As,Bi,Ge,Sn,Pb,Cr;R=H,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基またはSiR,ここでR=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)。
【請求項11】
タングステン,珪素,アンチモン,リン,タンタル,ニオブ,チタン,硫黄,ヒ素,ビスマス,セレン,ゲルマニウム,錫,鉛,硼素,クロム,および/またはモリブデンを中心原子として有する主族および遷移族元素のオキソ酸派生物の材料類;および/または酸化物Mの材料類、ここでx=1〜2およびy=2〜5、M=Al,Sb,Th,Sn,Zr,Mo;および/または層状、帯状、および/または立体網状珪酸塩類、特にゼオライト,H−ナトロライト,H−モルデナイト,H−モンモリロナイト,アンモニウム−アナルシン,アンモニウム−ソーダライト,アンモニウム没食子酸塩、
からなる少なくとも1つの添加剤を含んでなる請求項1ないし10のいずれかに記載のハイブリッド薄膜。
【請求項12】
添加剤の含有率は有機ポリマーに対して1ないし20重量%である請求項1および11記載のハイブリッド薄膜。
【請求項13】
ハイブリッド薄膜が陽子伝導能力を達成するためにドーピング剤を固定してなる請求項1ないし12のいずれかに記載のハイブリッド薄膜。
【請求項14】
ドーピング剤がリン酸を含んでなる請求項13記載のハイブリッド薄膜。
【請求項15】
24℃において少なくとも4S/mの伝導能力を有する請求項13および14記載のハイブリッド薄膜。
【請求項16】
(A) 少なくとも1つの塩基性有機ポリマーと、1つの無機ポリマーのための1つの前駆物質モノマーと、1つの塩基触媒と、溶媒からなる薄膜成形用溶液を薄膜形態に成形し、
(B) 自立的なポリマー薄膜が形成されるまで50ないし150℃の温度領域において前記薄膜形態から溶媒ならびに揮発性の凝結生成物を除去し、
(C) ステップ(B)において得られたポリマー薄膜を150ないし400℃の範囲の温度で1分から5時間までの持続時間にわたって焼鈍しする、
ステップからなる、請求項1ないし15のいずれかに記載のハイブリッド薄膜の製造方法。
【請求項17】
少なくとも1つの有機ポリマーとして、ポリベンゾイミダゾール、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリイミダゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、および/またはポリ(テトラザピレン)からなる一群から選択される塩基性ポリマーを使用してなる請求項16記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの有機ポリマーとして、ポリベンゾイミダゾールの群の中から特にポリ(2,2′−(m−フェニレン)−5,5′−ジベンゾイミダゾール)および/またはポリ−2,5−ベンゾイミダゾールを使用してなる請求項16記載の方法。
【請求項19】
前駆物質モノマーが以下の一般式を有する化合物の一群から選択される請求項16記載の方法:
Si(OR)4−x、ここで
x=0〜3、R=C1−C15−アルキル基,またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基であり、および/または;
(X−RSi(OR4−x、ここでx=1〜3、R=−(CH−でy=1〜5,−CHO(CH−でy=1〜5,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、X=ヒドロキシ,アミノ,エポキシ,イソシアネート,無水物,メタクリロキシ,ビニルまたは−COZ,−PO,−SOZでZ=水素,アルカリ金属陽イオン(Li,Na,K,Cs),C1−C15−アルキル基,C1−C15−アルコキシ基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,SiRでR=C1−C15−アルキル基,C5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基,C1−C15−アルコキシ基またはエチレンオキシ基、ここで前記の成分Zおよび/またはRはハロゲン、OH−、CN−基によって置換されており、および/または;
(Het(C=O)−N(R)−RSi(OR4−x、ここで
x=1〜3、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=−(CH−でy=1〜5およびC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基、R=水素,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリール基、Het=好適には環内に窒素を含んだ芳香族ヘテロシクレンを有するヘテロアリール基であり、および/または;
主族および遷移族元素のアルコキシ−およびアリロキシ派生物、好適にはM(OR)(y=3〜4、M=B,Al,Ti,Zr等の無機中心原子、R=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)、および/または;
複数塩基のオキソ酸のアルキル−およびアリール派生物RXO(n>1、m>2、かつm>n、X=P,S,Se,Mo,W,As,Bi,Ge,Sn,Pb,Cr;R=H,C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基またはSiR,ここでR=C1−C15−アルキル基またはC5−C20−アリールあるいはヘテロアリール基)。
【請求項20】
少なくとも1つの前駆物質として珪酸塩モノマーを使用してなる請求項16および19記載の方法。
【請求項21】
有機ポリマーに対して2ないし200重量%の比率で少なくとも1つの前駆物質モノマーを含んだ薄膜成形用溶液を使用してなる請求項16ないし20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
無機ポリマーはステップ(B)において初めて少なくとも1つの前駆物質モノマーから50℃超の領域で形成される請求項16ないし21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
塩基性触媒として一般式MOHでM=Li,Na,K,またはCsのアルカリ金属水酸化物を使用してなる請求項16ないし22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
有機ポリマーに対して0.2ないし5重量%の分量で塩基性触媒を含んだ薄膜成形用溶液を使用してなる請求項23記載の方法。
【請求項25】
タングステン,珪素,アンチモン,リン,タンタル,ニオブ,チタン,硫黄,ヒ素,ビスマス,セレン,ゲルマニウム,錫,鉛,硼素,クロム,および/またはモリブデンを中心原子として有する主族および遷移族元素のオキソ酸派生物の材料類;および/または酸化物Mの材料類、ここでx=1〜2およびy=2〜5、M=Al,Sb,Th,Sn,Zr,Mo;および/または層状、帯状、および/または立体網状珪酸塩類、特にゼオライト,H−ナトロライト,H−モルデナイト,H−モンモリロナイト,アンモニウム−アナルシン,アンモニウム−ソーダライト,アンモニウム没食子酸塩、
からなる少なくとも1つの添加剤をステップ(A)において薄膜成形用溶液に添加する請求項16記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの添加剤は有機ポリマーに対して1ないし20重量%の分量で添加してなる請求項25記載の方法。
【請求項27】
後続のステップ(D)において陽子伝導能力を強化するためにハイブリッド薄膜にドーピング剤を付加する請求項16記載の方法。
【請求項28】
2つの平面状ガス拡散電極とその間にサンドイッチ状に配置された請求項1ないし19のいずれかに従って形成されたハイブリッド薄膜が組み合わされた少なくとも1つの薄膜−電極ユニットからなり、ハイブリッド薄膜が陽子伝導能力を強化するためにドーピング剤を固定してなる燃料電池。
【請求項29】
ドーピング剤はリン酸である請求項27および28記載の燃料電池。
【請求項30】
250℃までの稼働温度領域において水素/空気稼働で動作可能である請求項29記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−529072(P2009−529072A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557616(P2008−557616)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001434
【国際公開番号】WO2007/101537
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508271458)エルコマックス メンブランズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】ELCOMAX MEMBRANES GMBH
【Fターム(参考)】