説明

ハイブリッド車両の駆動制御装置

【課題】 エンジン回転数と車速との関係により設定される擬似的な変速段の走行状態において、電力収支の破綻を回避させることを目的とする。
【解決手段】 エンジンとモータ・ジェネレータと蓄電装置とを備え、エンジンの回転数に制限回転数Nemax,Neminを設定することで車速に対するエンジン回転数の比率が一定になるようにエンジン回転数を制御することができるハイブリッド車両の駆動制御装置において、蓄電装置の出力可能な電力量Woutが減少する状態に応じてエンジンに係る回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させる制限回転数変更手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車速に対するエンジン回転数の比率である変速比を連続的に変化させることができ、かつその変速比を所定値に保持する擬似的な変速段を設定して走行するハイブリッド車両の駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、プラネタリギヤにエンジンが接続されるとともにリングギヤに出力部材が連結され、さらにサンギヤに接続された第1モータと、その出力部材側に接続された第2モータとを備えたハイブリッド車両において、エンジンの回転数に対して異なるトルクを出力する二つの動作ラインを用いてエンジンを運転して走行するハイブリッド動力源が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車速変化量に対するエンジン回転数変化量の比を固定した複数の仮想目標シフト段、いわゆるシーケンシャルシフトポジションと、走行状態に応じて仮想目標シフト段と上下限値に基づいて緩変化する実行用シフト段とに基づいて、要求トルクやエンジンの運転ポイントを適正に設定する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、第2モータ・ジェネレータと駆動輪の間に設けられた有段変速機の変速時に、バッテリの入出力制限が制限される場合、エンジン要求パワーを変更することが記載されている。特許文献3には、シフトポジションの変化に応じて供給発電パワーが大きくなる場合、制限値に加えエンジンパワーを増大させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247073号公報
【特許文献2】特開2006−182272号公報
【特許文献3】特開2011−105259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2モータタイプのハイブリッド車両では、加速時の車速変化とエンジン回転変化との乖離があるため、運転者の感じる加速感を損なわせるという課題があった。上記特許文献1に記載の技術は、エンジン回転数と車速の上昇比を固定し、擬似的に有段変速のような動作を可能とするようにエンジン回転数を制御するものであり、運転者の感じる加速感を改善するものであった。
【0007】
しかしながら、変速比固定制御を行った場合、運転者の要求するトルクに対して、エンジンが出力できる動力が制限されるので、運転者の要求トルクひいては要求パワーを実現するためには、要求駆動力に対するエンジン出力の不足分をバッテリから出力される放電電力によるモータトルクによって補うことになる。その際、バッテリに蓄積された電力が消費され、バッテリの充電状態を示すSOC(State Of Charge)を低下させる。したがって、要求パワーを満たすための不足分をモータ出力で補うため、電力収支がマイナスに作用し続け電力収支を破綻させる虞があり、改良の余地があった。
【0008】
そこで、この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、車速とエンジン回転数との比率である変速比を保持することによる擬似的な変速段が設定される場合において、電力収支の破綻を回避するとともに運転者が要求するパワーを実現するハイブリッド車両の駆動制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関と、蓄電装置の電力によって駆動されるモータとを動力源として備え、前記内燃機関の回転数に制限回転数を設定することで車速に対する前記内燃機関の回転数の比率が一定になるように前記内燃機関の回転数を制御することができるハイブリッド車両の駆動制御装置において、前記比率が一定になるように前記内燃機関の回転数を制御している状態で、前記ハイブリッド車両に対する駆動要求量を満たすべく前記蓄電装置が放電する際に、その蓄電装置で出力可能な電力量が減少する状態に応じて、前記制限回転数に係る回転数上限値を高回転数側に変更させる制限回転数変更手段を備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記制限回転数変更手段は、前記電力量と予め定めた前記蓄電装置に係る制御下限値との差分が予め定めた差分閾値より小さい場合に、前記電力量が減少する状態に応じて、前記回転数上限値を高回転数側に変更させることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置である。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1の発明において、前記制限回転数変更手段は、前記放電し始める際に、前記回転数上限値を高回転数側に変更させることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置である。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1の発明において、前記制限回転数変更手段は、前記電力量が予め定めた前記蓄電装置に係る制御下限値よりも大きな値である電力量閾値より小さくなった場合に、前記電力量が減少する状態に応じて、前記回転数上限値を高回転数側に変更させることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置である。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかの発明において、前記比率が一定になるように前記内燃機関の回転数を制御している状態が解除されるまでは、前記回転数上限値の変更状態を維持する手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、内燃機関の回転数上限値を高回転数側に変更させることにより、蓄電装置からの放電電力を低減できる。また、動力を発電にまわせるような内燃機関の回転数を可能とする制限回転数に変更された場合には、その放電電力をゼロにできかつ充電できるので電力収支の破綻を回避できる。したがって、内燃機関の回転数が制限されている場合であっても、電力収支の破綻を回避しつつ運転者が要求するパワーを満たす動力を出力することを可能にする。さらに、蓄電装置の出力可能電力量の減少する状態に応じて、内燃機関の回転数上限値を高回転数側に徐々に変更させることができ、急激な内燃機関の回転数の変更を防止することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加え、蓄電装置の電力量が減少し始めるとともに、その電力量の減少する状態に応じて徐々に高回転数側に変更させるので、内燃機関の回転数変化により運転者へ与える違和感を低減できる。また、その電力量が減少する状態は、回転数上限値の変更前に比べて緩やかであり、急激な電力量の消費を防止させることができる。
【0016】
請求項3または4の発明によれば、請求項1の効果に加え、蓄電装置の出力可能な電力量がある程度減少するまでは、制限回転数の変更が行われないので、内燃機関の回転数変化による違和感を運転者に与えることが防止できる。また、蓄電装置の出力可能な電力量が制御下限値にある程度近づいた際に回転数上限値を高回転数側に変更させるので、急激な内燃機関の回転数変化を防止できる。さらに、その電力量が蓄電装置に係る制御下限値より小さくなる前に回転数上限値を高回転数側に変更させるので、電力量が急激に制御下限値へ向かうことを防止できる。蓄電装置の電力量が制御下限値に達した際に、仮に、回転数上限値を高回転数側に変更させるような場合においては、急激な内燃機関の回転数変化を防止することもできる。
【0017】
請求項5の発明によれば、車速に対する前記内燃機関の回転数の比率である変速比を保持することにより擬似的かつ有段的にその変速比を変化させる制御状態が維持されている間は、内燃機関に係る回転数上限値が変更された場合にこの変更制御状態を維持できるので、車両の状態に応じて何度もその回転数上限値の変更が行われることを防止できる。これにより、内燃機関の回転数変化により運転者が感じる違和感を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る車両における駆動系統の一例であるハイブリッド駆動機構を模式的に示した図である。
【図2】蓄電装置の充電状態が制御下限値に達した際のエンジンの制限回転数の変更処理フローを示した図である。
【図3】蓄電装置の充電状態が制御下限値に達した際の車両の車速とエンジン回転数と蓄電装置の出力可能電力量との関係を示し、エンジンの制限回転数の変更処理前後の状態を示した図である。
【図4】蓄電装置の充電状態が制御下限値に達する前のエンジンの制限回転数の変更処理フローを示した図である。
【図5】蓄電装置の充電状態が制御下限値に達する前の車両の車速とエンジン回転数と蓄電装置の出力可能電力量との関係を示し、エンジンの制限回転数の変更処理前後の状態を示した図である。
【図6】2モータタイプのハイブリッド車両における動力分割機構についての共線図である。
【図7】エンジン回転数とエンジントルクとエンジンパワーとの関係を示したエンジン運転点設定用マップを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明における実施形態について説明する。この発明で対象とするハイブリッド車両は、内燃機関と二つの発電電動機とを駆動力源とする車両である。まず、その車両における駆動系統の構成について図1を参照して説明する。図1は、その車両における駆動系統の一例であって、ハイブリッド駆動機構を模式的に示した図である。車両20は、いわゆる2モータタイプのハイブリッド車両であって、エンジン(E/G)1と第1モータ・ジェネレータ(MG1)2と第2モータ・ジェネレータ(MG2)3とが、動力分割機構4を介してそれぞれに連結されている。すなわち、このエンジン1と第1モータ・ジェネレータ2とは、第1モータ・ジェネレータ2によってエンジン1の回転数を制御するように構成されている。
【0020】
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、水素ガスエンジン、天然ガスエンジンなどのいずれかであって、特に回転数や出力トルクに応じて燃料消費量もしくは燃料消費率が変化する内燃機関である。したがって、エンジン1は、燃費を重視した運転を行う場合には、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeが個別に制御される内燃機関である。この実施形態ではガソリンエンジンをエンジン1とし、エンジントルクTeは、吸気量によって制御され、具体的には電子スロットルバルブ12によって制御される。なお、ディーゼルエンジンの場合には燃料噴射量によってエンジントルクTeが制御される。
【0021】
動力分割機構4は、複数の回転要素が差動作用をなす遊星歯車機構によって構成されている。図1に例示する動力分割機構4は、三つの回転要素を含むシングルピニオン型遊星歯車機構である。具体的には、この動力分割機構4における反力要素であるサンギヤ4Sに第1モータ・ジェネレータ2が連結され、そのサンギヤ4Sと同心円上に配置されている内歯歯車であるリングギヤ4Rが出力要素となっている。そのリングギヤ4Rに第2モータ・ジェネレータ3が連結されている。そして、これらサンギヤ4Sとリングギヤ4Rとに噛み合っているピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持しているキャリヤ4Cが入力要素となっており、そのキャリヤ4Cにエンジン1が連結されている。
【0022】
また、動力分割機構4の出力要素となっているリングギヤ4Rは、出力軸5を介してデファレンシャル6に連結され、そのデファレンシャル6から左右の駆動輪7に動力を伝達するように構成されている。その出力軸5には、駆動トルクを付加し力行作用を行い、またエネルギ回生を行うための第2モータ・ジェネレータ4が連結されている。なお、リングギヤ4Rと出力軸5との間、あるいは第2モータ・ジェネレータ3と出力軸5との間に減速機や変速機を配置することもできる。
【0023】
ここで、エンジン1と第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3とに連結された動力分割機構4についての共線図について説明する。図6は、シングルピニオン型遊星歯車機構により構成された動力分割機構4についての共線図である。サンギヤ4Sに連結された第1モータ・ジェネレータ2を示す線とリングギヤ4Rに連結された第2モータ・ジェネレータ4を示す線との間にキャリヤ4Cに連結されたエンジン1を示す線が位置する。また、サンギヤ4Sを示す線とキャリヤ4Cを示す線との間隔を「1」とした場合、キャリヤ4Cに連結されたエンジン1を示す線とリングギヤ4Rに連結された第2モータ・ジェネレータ3を示す線との間隔がギヤ比ρに相当する間隔となっている。なお、ギヤ比ρは、動力分割機構4を構成している遊星歯車機構におけるサンギヤ4Sの歯数Zsとリングギヤ4Rの歯数Zrとの比(Zs/Zr)である。これら各回転要素および連結された構成を示す線上における基線からの距離が、それぞれの回転要素の回転数すなわち各構成の回転数を示し、各回転要素および各構成の回転数を示す点を結んだ線は直線となる。また、図6に例示する矢印の示す方向は、各回転要素のトルクの方向を示すものである。
【0024】
例えば、エンジン1が動力を出力して走行している状態では、図6に示すように、リングギヤ4Rに走行抵抗などのいわゆる負のトルクが作用し、また入力要素であるキャリヤ4Cにはエンジン1が出力したトルクTe、すなわち正方向のトルクが作用している。この状態でサンギヤ4Sに負方向のトルク、いわゆるサンギヤ4Sの回転数を減じる方向のトルクを作用させると、リングギヤ4RにはエンジントルクTeを増幅した正方向のトルクが作用し、これが走行抵抗などの負方向のトルクに打ち勝つことにより車両20が走行する。そのサンギヤ4Sに作用させる負方向のトルクは、これに連結されている第1モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させることにより発生させることができる。この第1モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合、図6から明らかなように、第1モータ・ジェネレータ2の回転数Nm1を低下させればエンジン回転数Neが低下する。一方、第1モータ・ジェネレータ2の回転数Nm1を上昇させればエンジン回転数Neが上昇する。
【0025】
したがって、この動力分割機構4を介して連結されたエンジン1と第1モータ・ジェネレータ2において、エンジン1の回転数Neは、第1モータ・ジェネレータ2によって制御される。言い換えれば、動力分割機構4が差動作用をなすことにより、発電機能を有する電動機である第1モータ・ジェネレータ2の回転数Nm1に応じてエンジン1の回転数Neを変化させることができる。
【0026】
第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3とは、いずれも、モータと発電機のいずれか一方もしくは両方の機能を有するものである。この第1モータ・ジェネレータ2は、エンジン回転数Neの制御のために発電機として機能するとともに、例えばエンジン1のモータリング(クランキング)のために電動機として機能させることも可能である。これらの機能もしくは動作の制御のために、第1モータ・ジェネレータ2はインバータ8を介してバッテリもしくはキャパシタなどの蓄電装置10に接続されている。また、第2モータ・ジェネレータ3は、出力軸5に付加するトルクを制御し、すなわち力行制御の際にモータとして機能し、またはエネルギ回生の際には発電機として機能する。これらの機能もしくは動作の制御のために、第2モータ・ジェネレータ3はインバータ9を介して蓄電装置10に接続されている。さらに、モータ・ジェネレータ2,3の間で電力を相互に授受できるようになっている。また、これら第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3はいずれも、ハイブリッドコントローラ11によりインバータ8,9を介して駆動制御される。
【0027】
この車両2では、第1モータ・ジェネレータ2によってエンジン1の回転数Neを制御するとともに、この第1モータ・ジェネレータ2が発電した電力を使用して、第2モータ・ジェネレータ3をモータとして機能させることにより、出力軸5に駆動トルク付加するように構成されている。また、この第2モータ・ジェネレータ3でエネルギ回生を行うこともできる。例えば、車両20が惰性走行もしくは減速している場合、エンジン1に対する燃料の供給および点火を停止させ、この状態で第2モータ・ジェネレータ3を出力軸5から伝達されるトルクで駆動させて発電機として機能させる。この結果、第2モータ・ジェネレータ3は発電に要するトルクを出力軸5に対して、その回転を止める方向の負のトルク(制動トルク)として作用させて制動力を生じさせる。
【0028】
蓄電装置10は、電力を充放電する二次電池などであり、第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3のいずれかにより生じた電力を充電し、もしくは不足する出力に応じた電力を放電する。この蓄電装置10は、ハイブリッドコントローラ11により充電率や出力可能電力量などが管理される。蓄電装置10が二次電池である場合、過充電や過放電により電池が劣化することを防止するため、ハイブリッドコントローラ11の制御により蓄電装置10の使用状況や温度などに応じて、適正な中間領域における蓄電状態に維持される。なお、中間領域とは、温度条件や健全度などによって変化するものであって、例えば蓄電装置10で許容できる電力量の制限値(電力量上限値)と、蓄電装置10から放電できる電力量の制限値(電力量下限値)との間における幅である。
【0029】
また、第2モータ・ジェネレータ3で発電された電力は蓄電装置10に供給されて、第2モータ・ジェネレータ3を駆動させる電力は蓄電装置10から供給される。このため、蓄電装置10がいわゆる満充電もしくはこれに近い状態になっていれば、第2モータ・ジェネレータ3で発電した電力は蓄電装置10に供給されず、また蓄電装置10の保有電力量Woutが低下していれば、第2モータ・ジェネレータ3に電力は供給されなくなる。なお、第2モータ・ジェネレータ3で発電した電量は、インバータ9,8を介して第1モータ・ジェネレータ2へ供給されモータとして機能させる電力として消費されてもよい。
【0030】
ハイブリッドコントローラ11は、エンジン1の出力トルクTeの制御すなわち電子スロットルバルブ12の開度の制御や、各インバータ8,9を介した各モータ・ジェネレータ2,3の駆動制御などを行う。このハイブリッドコントローラ11は、CPU(Central Processing Unit)を中心とするいわゆるマイクロコンピュータを主体として構成された電子制御装置であって、各種処理プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)や、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)や、データの送受信を可能にさせるインターフェイスなどを備えている。したがって、ハイブリッドコントローラ11は、入力されたデータおよび予め記憶部に記憶されたデータに基づいてプログラムを使用して演算処理を実行し、電子スロットルバルブ12や各インバータ8,9に指令信号を出力するように構成されている。また、ハイブリッドコントローラ11には、車速Vを示す車速検出信号や、車輪速センサ13によって検出した車輪速信号や、アクセルペダル14の踏み込み量を検出するアクセル開度センサ15からのアクセル開度信号などがデータとして入力される。
【0031】
このハイブリッドコントローラ11は、いわゆるモータ用電子制御装置やバッテリ用電子制御装置として作動するものである。例えば、モータ用電子制御装置として作動する場合、第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3とを駆動制御するための各種検出信号が入力され、各インバータ8,9へのスイッチング制御信号などが出力される。具体的には、第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3との回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからの検出値を示す入力信号に基づいて、第1モータ・ジェネレータ2の回転数Nm1と、第2モータ・ジェネレータ3の回転数Nm2とを算出する。この算出した回転数Nm1,Nm2に基づいて、目標回転数Nm1*,Nm2*となるように各モータ・ジェネレータ2,3を制御する。
【0032】
また、バッテリ用電子制御装置として作動する場合、蓄電装置10を管理するための各種検出信号が図示しない各種センサからハイブリッドコントローラ11に入力される。例えば、端子間電圧や充放電電流や蓄電装置10の温度などのデータが入力される。この場合、ハイブリッドコントローラ11は、図示しない電流センサから入力された充放電電流の積算値に基づいて、蓄電の装置10から出力可能な電力量Woutを算出する。この出力可能電力量Woutに基づき蓄電装置10の充放電を管理する。例えば、出力可能電力量Woutが電力量上限値の付近の場合、すなわち蓄電装置10が満充電もしくはそれに近い状態の場合、モータ・ジェネレータ2,3で発電した電力は蓄電装置10に充電されない。また、出力可能電力量Woutが電力量下限値よりも低下した場合、モータ・ジェネレータ2,3に蓄電装置10からの電力は供給されない。なお、電力下限値はゼロ以上の値であってもよい。すなわち、蓄電装置20の完全放電を示す充電率0%の状態を電力量下限値と設定した場合に電力量下限値はゼロであり、その充電率が0%よりも大きい状態を電力量下限値と設定した場合に電力量下限値はゼロよりも大きい値である。
【0033】
また、このハイブリッドコントローラ11は、運転者によるアクセルペダル14の踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ15からの検出値に対応するアクセル開度Accと、その際の車両20の速度である車速Vとに基づいて駆動輪7,7に連結された出力軸5に出力すべき運転者要求駆動力を算出する。したがって、この車両20の動作として、運転者要求トルク駆動力に対応する動力、すなわち運転者要求パワー(駆動要求量)Preqが出力軸5に伝達され出力されるように、エンジン1と第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3とを駆動制御をする。
【0034】
さらに、燃費の効率性が高いエンジン1の運転点すなわちエンジントルクTeとエンジン回転数Neとによって、エンジン1が駆動するように制御される。例えば、等燃費率線と等出力線との関係から、同一出力を得る際に燃費率が最良となる運転条件が決定される運転点設定用マップなどを参照して運転点が設定される。その運転条件を満たす動作ライン上、いわゆる最適燃費線Cf上もしくは高効率燃費性の領域内を、運転点が動作するようにエンジン1を駆動制御する。
【0035】
上述した車両20を対象とするこの発明に係る駆動制御装置は、エンジン回転数Neと車速Vとの関係に基づいた擬似的な有段変速制御を行い、蓄電装置10から出力可能な電力量Woutに応じてエンジン1の回転数の制限値(制限回転数)を変更もしくは一部解除し、すなわち蓄電装置10の電力を緩やかに消費させるように制限回転数の一部を変更することもしくは蓄電装置10の電力を消費する必要がないように制限回転数の一部を解除することにより、電力収支の破綻を回避するように制御するものである。これは、蓄電装置10から出力可能な電力を維持するために、エンジン1の運転点(動作点)のうち主にエンジン回転数Neを制御して、電力収支の破綻を回避させるためである。
【0036】
また、この発明に係る実施形態の説明において、擬似とは、機械要素に対する制御上のことを表現するものである。例えば、擬似的な変速段とは、変速機など機械要素によって設定される変速比に対して、制御上で設定されかつ固定される変速比を擬似的と表現するものである。より具体的には、この擬似変速段は、車速に対するエンジン回転数の比率を変速比(擬似変速比)として、その比率が所定値に制御上で固定されるものである。また、擬似的な有段変速制御とは、擬似的に有段的な変速をさせる制御であって、複数の所定値に固定された複数の擬似変速段を使用した有段変速を制御することである。
【0037】
さらに、この発明に係る駆動制御装置は、擬似的な有段変速制御における走行中、車両全体における変速比が現在設定されている擬似変速段に係る擬似変速比となるようにエンジン1の回転数Neを制御するとともに、車速に対するエンジン回転数の比率を一定に制御するものである。例えば、動力分割機構4に連結されたエンジン1と第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3とを含む機構を第1の減速機もしくは変速機(第1減速機)とみなし、上述したリングギヤ4Rと出力軸5との間あるいは第2モータ・ジェネレータ3と出力軸5との間に第2の減速機もしくは変速機(第2減速機)を配置することもできる。その場合、この実施形態における擬似変速比は、それら第1,2の減速機もしくは変速機毎の変速比を示すものではなく、車両全体の駆動系統による変速比である。例えば、所定の擬似変速比に固定されている制御下では、出力軸5の回転数が一定のときエンジン1の回転数Neが上昇し第1減速機に係る変速比(第1変速比)が大きくなった場合、出力軸5の回転数に対して駆動輪7,7に伝達される回転数を上昇させ第2減速機に係る変速比(第2変速比)を小さくさせ、この擬似変速比を一定に維持する制御を行う。
【0038】
次に、シフトポジションに応じた車両20の動作および運転制御について説明する。この車両20は、図示しないシフトレバーにより選択されるシフトポジションとして、駐車時に用いる駐車ポジションであるPポジション、後進走行用のリバースポジションであるRポジション、中立のニュートラルポジションであるNポジション、通常の前進走行用のドライブポジションであるDポジションを備えている。これらのシフトポジションに加えて、車速Vに対するエンジン回転数Neの比率(擬似変速比)を所定値に固定した複数の擬似的な変速段(擬似変速段)において走行する擬似有段変速モードを可能にするシーケンシャルシフトポジションであるSポジションを備えている。よって、この発明に係る駆動制御装置を備えた車両20は、オートマチックトランスミッションやCVTをベースにした自動変速制御を行う車両であって、Sポジションが選択された際に、変速比を固定した有段変速のように制御する擬似有段変速モードが選択可能な車両、いわゆるシーケンシャルシフトマチックを備えたハイブリッド車両である。
【0039】
その擬似変速段は擬似変速比を所定値に固定制御した変速段であり、それぞれ整数の段数をもった複数の擬似変速段を有する車両である。Sポジションであるシーケンシャルシフトポジションは、この複数の擬似変速段のうちいずれかの擬似変速段を選択可能にする制御を実施して走行させるものである。さらに、この車両20は、Sポジションに加え、任意の擬似変速段をアップシフトさせるアップシフト指示ポジションと、ダウンシフトさせるダウンシフト指示ポジション等を備え、図示しないシフトレバーに基づく運転者の変速段選択操作を受け付けるものであってもよい。すなわち、エンジン回転数Neに制限回転数を設定することで、車速Vに対するエンジン回転数Neの比率が一定になるようにエンジン回転数Neを制御するものである。また、複数の擬似変速段ごとに予め変速比を設定しておき、その擬似変速段に対応する変速比と、取得された車速Vとに基づいてエンジン1の制限回転数を設定してもよい。言い換えれば、その取得された車速Vすなわち駆動輪7の回転数が同一であっても、その際の擬似変速段が異なる場合では、それらにおける変速比は異なり、それらの擬似変速段における制限回転数が異なるものである。
【0040】
例えば、シフトポジションとしてDポジションを選択すると、エンジン1が効率よく運転されるように運転制御される。これは、車両20のアクセル開度に基づく駆動力特性が、Dポジション選択中にはDポジション用の駆動力特性に制御されるためである。また、シフトポジションとしてSポジションを選択すれば、擬似有段変速モードにより運転されるように運転制御される。より具体的には、運転者により図示しないシフトレバーのシフトポジションとしてSポジションが選択されると、その際の車速Vなどに応じて擬似変速段中の何れかが初期段として設定される。さらに、Sポジション選択中にはSポジション用の駆動力特性に制御される。Sポジションが選択された後、例えば後述する制限回転数の変更が実施された場合であっても、Sポジションにシフトレバーが選択されている限り、Sポジション用の駆動力特性に制御されるものである。
【0041】
この擬似変速走行モードにおける初期段の設定後は、シフトレバーがアップシフト指示ポジションにセットされるごとに擬似変速段が1段ずつ上げられる。一方、シフトレバーがダウンシフト指示ポジションにセットされるごとに擬似変速段が1段ずつ下げられる。したがって、Sポジションを選択中において、車両20の車速Vの増減など走行状態が変化した際であっても、すなわちアップシフト指示ポジションまたはダウンシフト指示ポジションのいずれかが選択されない限り、現在設定されている擬似変速段を維持したまま擬似有段変速モードにおける運転制御が継続される。
【0042】
次に、エンジン1の制限回転数の一部解除処理について説明する。ここで説明する制限回転数の一部解除処理は、蓄電装置10の電力状態に応じて行われるものであって、電力収支の破綻を回避するために、運転者要求パワーPreqをエンジンパワーPeのみで満たせるように制限回転数に係る回転数上限値Nemaxを解除させるものである。より具体的には、その電力量Woutが蓄電装置10における制御下限値である第1閾値Woutth1にまで減少した際に、制限回転数のうち回転数上限値Nemaxを解除させるものである。すなわち、制限回転数には回転数上限値Nemaxと回転数下限値Neminとが含まれるものであって、そのうち回転数上限値Nemaxの制限のみを解除するため、制限回転数の一部解除となる。また、制御下限値とは、蓄電装置10が電力を放電できる蓄電容量の下限値である。なお、その制御下限値は、制御上の下限値であって、蓄電装置10の電力量下限値すなわち蓄電量ゼロよりも大きい値であってもよい。図2は、蓄電装置10における出力可能電力量Woutが制御下限値である第1閾値Woutth1に達した際に、エンジン回転数Neの制限回転数のうち回転数上限値Nemaxを解除する処理フローを示した図である。ハイブリッドコントローラ11は、運転者がアクセルペダル14を踏み込んだことに対応するアクセル開度Accと、その際の車両20における車速Vとに基づいて、運転者が要求する駆動力を算出する。この運転者要求駆動力と、その車速Vとに基づいて、駆動要求量である運転者が要求するパワーPreqを算出する(ステップS101)。
【0043】
上記運転者が要求するパワーPreqが算出されると、ハイブリッドコントローラ11は、現在の走行モードが擬似有段変速モードであるか否かを判別する(ステップS102)。例えば、この走行モード判別は、図示しないシフトレバーがSポジションを選択しているか否かにより判別される。また、車両20の状態や走行状態などを示す各種の車両データを含む車両状態テーブルがRAMなどの記憶部に記憶されており、この車両状態テーブルを参照し、走行モード項目が擬似有段変速モードを示すフラグであるか否かを判別し、走行モードを判別するものであってもよい。なお、この車両状態テーブルには、蓄電装置10の充電率や充放電可能な電力量や充放電を管理する制御上下限値などの車両データが格納されていてもよい。
【0044】
上記走行モード判別の結果、擬似有段変速モードでないと判別した場合(ステップS102でNoの場合)、上記算出した運転者要求パワーPreqに基づき、予めROMなどの記憶部に記憶されているエンジン運転点設定用マップを参照し、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線Cfなどの動作ライン上を動作するエンジン回転数NeとエンジントルクTeとを算出し(ステップS107)、エンジン回転数Neの回転数上限値Nemaxを解除せずにこの処理フローを終了する。なお、エンジン運転点設定用マップとは、図7に例示するようなエンジン回転数NeとエンジントルクTeと等出力線と最適燃費線Cfで示される動作ラインとの関係を予め定めたものである。また、このエンジン運転点設定用マップにおける運転者要求パワーPreqは、いずれかの等出力線により示されるものである。
【0045】
一方、上記走行モード判別の結果、擬似有段変速モードであると判別された場合(ステップS102でYesの場合)、記憶部に記憶された車両データを参照し、蓄電装置10の出力可能な電力量Woutと、エンジン1の上昇側の制限回転数である回転数上限値Nemaxおよび下降側の制限回転数である回転数下限値Neminとを読み出す(ステップS103,S104)。なお、これら出力可能電力量Woutやエンジン1の回転数上限値Nemaxおよび回転数下限値Neminは、ほかの車両データとともに車両状態テーブルに格納されており、もしくはこれ以外のテーブルに格納され記憶部に記憶されているものであってもよい。また、蓄電装置10のSOCや充放電を管理する制御上下限値に基づき、その際の出力可能な電力量Woutを算出するものであってもよい。
【0046】
上記出力可能電力量Woutが読み込まれると、この出力可能電力量Woutが、第1閾値Woutth1よりも小さいか否かを判別する(ステップS105)。この第1閾値Woutth1は、蓄電装置10から出力が可能な電力を維持できるように設定されるものであって、例えば電力量下限値より大きい値に設定される。
【0047】
上記電力量判別の結果、出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1以上の場合(ステップS105でNoの場合)、上記算出した運転者要求パワーPreqに基づき、エンジン運転点設定用マップを参照し、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線Cfなどの動作ライン上を動作するエンジン回転数NeとエンジントルクTeとを算出し(ステップS107)、エンジン回転数Neの回転数上限値Nemaxを解除せずにこの処理フローを終了する。なお、算出されるエンジン回転数Neは、制限回転数の範囲内、すなわち回転数上限値Nemaxと回転数下限値Neminとの範囲内に含まれる回転数である。
【0048】
一方、上記電力量判別の結果、出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1よりも小さいと判別された場合(ステップS105でYesの場合)、エンジン回転数Neの上昇側の制限回転数である回転数上限値Nemaxを解除する(ステップS106)。なお、この解除処理は、制限回転数のうち上昇側の制限値である回転数上限値Nemaxのみを解除するものであって、回転数下限値Neminが高低回転のどちらかに変更されたり解除されない。この回転数下限値Neminを変更または解除しないことによって、車両20の加速レスポンスの低下を防止させることができる。また、回転数下限値Neminは、この回転数上限値Nemaxの解除処理前におけるエンジン1の制限回転数を推移するものであってもよい。
【0049】
上記回転数上限値Nemaxを解除した後、ハイブリッドコントローラ11は、予めROMなどの記憶部に記憶されているエンジン運転点設定用マップを参照し、この上限値Nemaxを解除したエンジン1の制限回転数と上記算出した運転者要求パワーPreqとに基づき、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線Cfなどの動作ライン上を動作するエンジン回転数Neとエンジン出力トルクTeとを算出し(ステップS107)、この処理フローを終了する。また、その運転点の決定処理は、エンジン1の出力トルクTeと回転数Neとで決定されるものであって、所定の等出力線上の運転点のうち、燃費性能が良い運転点に設定することもできる。
【0050】
その擬似有段変速モードの走行状態では、車速に対するエンジン回転数の比率が一定となるようにエンジン回転数Neが制御される。その制御状態において、運転者による加速要求による車速Vの増加に応じて、エンジン1の回転数Neは擬似変速比を満たすように増加する。現在設定されているエンジン1の制限回転数において出力可能なエンジンパワーPeにより、運転者要求パワーPreqを満たすことができる状態では、蓄電装置10の放電パワーPbatoutは使用されない。したがって、蓄電装置20の電力は消費されず、出力可能電力量Woutが減少しない。しかし、運転者要求パワーPreqの増加に伴い、現在の制限回転数の範囲内において出力が可能なエンジンパワーPeだけでは、この運転者要求パワーPreqを満たさなくなった場合、蓄電装置10からの持ち出しパワーである放電パワーPbatoutを使用する。したがて、蓄電装置10に充電されている電力が消費され、出力可能電力量Woutが減少する。すなわち、エンジン回転数Neは回転数制限の制御を受けるために、エンジンパワーPeが制限され、運転者要求パワーPreqを満たすために蓄電装置10から出力される放電パワーPbatoutを使用する。この放電パワーPbatoutの出力に伴い蓄電装置10の電力が消費され、出力可能電力量Woutが減少する。
【0051】
その制御状態では、モータ・ジェネレータ2,3はいずれもモータとして機能し電力収支がマイナスに作用するため、蓄電装置10の出力可能電力量Woutが減少し続ける。言い換えれば、蓄電装置10の電力が消費されるものの、エンジン1が出力する動力(エンジンパワー)Peと蓄電装置10が出力する電力(放電パワー)Pbatoutとの和により運転者要求パワーPreqが満たされる。しかし、運転者要求パワーPreqに対する不足分のパワーを蓄電装置10からの放電パワーPbatoutで補うために、この蓄電装置10から出力可能な電力が減少し、電力収支がマイナスに作用し続ける。
【0052】
そこで電力収支の破綻を回避するため、図3に例示するように、蓄電装置10と出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1に達した場合に、エンジン1の回転数上限値Nemaxを解除する。この解除後の回転数上限値Nemaxは、エンジンパワーPeと蓄電装置10から持ち出した放電パワーPbatoutとの和が運転者要求パワーPreqを満たし、かつ電力収支をゼロもしくは蓄電装置10に充電できる制御状態となるようなエンジン回転数Neである。また、エンジン1の回転数上限値Nemaxを解除した後であっても、車両20のアクセル開度Accに基づく駆動力特性は、Sポジション用の駆動力特性に制御され、Dポジション用の駆動力特性とは異なるように制御される。
【0053】
さらに、擬似有段変速モードが選択されているときに、第1閾値Woutth1に基づきエンジン1の制限回転数のうち回転数上限値Nemaxが解除された場合、その回転数上限値Nemaxを解除後の制御によって、蓄電装置10の充電状態が回復したとしても、一度第1閾値Woutth1に基づき実行された回転数上限値Nemaxの解除状態は維持され、エンジン1の回転数Neが制御され続ける。すなわち、擬似有段変速モードの選択中に蓄電装置10の出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1に達して回転数上限値Nemaxが一度解除されると、その擬似有段変速モードが解除されるまで、その回転数上限値Nemaxを解除させた制御状態は維持される。例えば、車両20の電力状態などに応じて、回転数上限値Nemaxが解除された状態から、その解除前の制御状態へと自動で変更されない。なお、回復した出力可能電力量Woutが再度第1閾値Woutth1に達したとしても回転数上限値Nemaxは再解除されない制御であってもよい。さらに、擬似変速段を変速された場合や、SポジションからDポジションなどにシフトポジションが変更された場合には、その回転数上限値Nemaxを変更できるものとしてもよい。
【0054】
次に、運転者要求パワーPreqを満たしつつ、蓄電装置10の出力可能電力量Woutの急激な減少を防止させるように、エンジン1の制限回転数を変更させる処理について説明する。ここで説明する制限回転数の変更処理は、蓄電装置10で出力可能な電力量Woutの減少する状態に応じて、エンジン1の制限回転数に係る回転数上限値Nemaxを高回転数側に徐々にもしくは連続的に変更させる処理である。具体的には、運転者要求パワーPreqを満たすために蓄電装置10からの放電パワーPbatoutを使用する必要が生じた場合であって、その蓄電装置10で出力可能な電力量Woutが減少し始めた際もしくはその電力量Woutがある程度減少した際、その出力可能電力量Woutの減少する状態に応じて、制限回転数を高回転数側に変更させる処理である。図4は、蓄電装置10で出力可能な電力量Woutの減少する状態に応じて、エンジン1の制限回転数を高回転数側に徐々にもしくは連続的に変更させる処理フロー図である。なお、上述の出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1に達した場合の処理と同様の処理内容については詳細な説明を省略する。
【0055】
ハイブリッドコントローラ11は、運転者がアクセルペダル14を踏み込んだことに対応するアクセル開度Accと、その際の車両20における車速Vとに基づいて、運転者が要求する駆動力を算出する。この運転者要求駆動力と、その際の車速Vとに基づいて、駆動要求量である運転者が要求するパワーPreqを算出する(ステップS201)。この運転者要求パワーPreqが算出されると、ハイブリッドコントローラ11は、現在の走行モードが擬似有段変速モードであるか否かを判別する(ステップS202)。
【0056】
上記走行モード判別の結果、擬似有段変速モードでないと判別した場合(ステップS202でNoの場合)、上記算出した運転者要求パワーPreqに基づき、予めROMなどの記憶部に記憶されているエンジン運転点設定用マップを参照し、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線Cfなどの動作ライン上を動作するエンジン回転数Neとエンジン出力トルクTeとを算出し(ステップS208)、エンジン回転数の制限回転数を変更せずにこの処理フローを終了する。
【0057】
一方、上記走行モード判別の結果、擬似有段変速モードであると判別された場合(ステップS202でYesの場合)、記憶部に記憶された車両データを参照し、エンジン1の回転数上下限値Nemax,Neminを読み出す(ステップS203)。この制御上下限値である回転数上下限値Nemax,Neminの範囲内にエンジン回転数Neが推移するものである。例えば、図7に例示するようなエンジン運転点設定用マップを参照し、その範囲内におけるエンジン回転数Neに基づき、エンジン1が出力可能なエンジンパワーPeを算出する。より具体的には、エンジン運転点設定用マップを参照し、制限回転数の上下限値Nemax,Nemin内におけるエンジン回転数Neで最適燃費線Cf上を動作可能となるライン上において、この最適燃費線Cfと交差するエンジンパワーPeを示す等出力線に基づき出力できる範囲が、エンジンパワーPeの出力範囲となる。したがって、エンジン運転点参照マップに基づき、現在の制限回転数内における出力可能なエンジンパワーPeが算出される。
【0058】
上記算出した出力可能なエンジンパワーPeと、上記算出した運転者要求パワーPreqとを比較し、このエンジンパワーPeで運転者要求パワーPreqを満たすことができるか否かを判別する(ステップS204)。なお、運転者要求パワーPreqをエンジンパワーPeのみで満たせなくなったか否かを判別するものであればよく、例えば蓄電装置10の出力可能電力量Woutが減少し始めたか否かを判別するものであってもよい。
【0059】
上記パワー判別の結果、そのエンジンパワーPeで運転者要求パワーPreqを満たす、すなわちエンジンパワーPeが運転者要求パワーPreq以上であると判別された場合(ステップS204でNoの場合)、上記算出した運転者要求パワーPreqに基づき、エンジン運転点設定用マップを参照し、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線Cfなどの動作ライン上を動作するエンジン回転数Neとエンジン出力トルクTeとを算出し(ステップS208)、エンジン回転数の制限回転数を変更せずにこの処理フローを終了する。
【0060】
一方、上記パワー判別の結果、そのエンジンパワーPeだけでは運転者要求パワーPreqを満たすことができない、すなわちエンジンパワーPeが運転者要求パワーPreqよりも小さいと判別された場合(ステップS204でYesの場合)、記憶部に記憶された車両データを参照し、蓄電装置10の出力可能な電力量Woutを読み出す(ステップS205)。なお、この車両データとして格納されている出力可能電力量Woutは、ハイブリッドコントローラ11により随時算出されてデータの書き換えが行われているものであってもよい。
【0061】
上記蓄電装置10が出力可能な電力量Woutが読み出されると、この出力可能電力量Woutに基づき、この出力可能電力量Woutが第2閾値Woutth2よりも小さいか否かを判別する(ステップS206)。この第2閾値Woutth2は、この発明における電力量閾値に相当するものであって、上述した第1閾値Woutth1よりも大きな値である。なお、この判別処理では、出力可能電力量Woutと第2閾値Woutth2による比較を行ったが、この発明はそれに限定されない。例えば、出力可能電力量Woutから第1閾値Woutth1を減じた差分を算出し、この差分が所定値ΔWより小さいか否かに基づいて判別するものであってもよい。この所定値ΔWは、この発明における差分閾値に相当するものである。例えば、所定値ΔW>0に設定した場合、蓄電装置10の制御下限値である第1閾値Woutth1にまで出力可能電力量Woutが減少する前に、回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させることになる。すなわち、差分閾値による判別は、制御下限値である第1閾値Woutth1よりも大きな値である第2閾値Woutth2と出力可能電力量Woutとの比較判別を行ったこととも言える。したがって、出力可能電力量Woutが制御下限値である第1閾値Woutth1より小さくなる前であって、所定の電力量に減少していることが判別されればよい。
【0062】
上記電力量判別の結果、出力可能電力量Woutが第2閾値Woutth2以上の場合(ステップS206でNoの場合)、上記算出した運転者要求パワーPreqに基づき、エンジン運転点設定用マップを参照し、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線Cfなどの動作ライン上を動作するエンジン回転数NeとエンジントルクTeとを算出し(ステップS208)、エンジン回転数の制限回転数を変更せずにこの処理フローを終了する。
【0063】
一方、上記電力量判別の結果、出力可能電力量Woutが第2閾値Woutth2よりも小さいと判別された場合(ステップS206でYesの場合)、エンジン回転数Neの上昇側の制限回転数である回転数上限値Nemaxを算出し高回転数側に変更する(ステップS207)。この制限回転数の変更処理は、制限回転数のうち回転数上限値Nemaxのみを高回転数側に変更させる一部変更処理であり、出力可能電力量Woutの減少する状態に応じて変更後の回転数上限値Nemaxが算出させるものである。したがって、出力可能電力量Woutが減少し続けた場合、その減少する状態に応じて回転数上限値Nemaxは算出されかつ変更される。すなわち、車両20の電力状態や蓄電装置10の充電状態に応じて、エンジン回転数Neの上昇側の制限値である回転数上限値Nemaxを連続的に高回転数側へ変更させる制御である。なお、出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1に近づくに伴い、算出変更後の回転数上限値Nemaxはより高回転数側の回転数への変更されることになる。言い換えれば、出力可能電力量Woutから第1閾値Woutth1を減じた差分が減少するにつれて、回転数上限値Nemaxの変更量が増加することになる。
【0064】
その回転数上限値Nemaxの変更状態について、図5を参照して説明する。図5は、アクセル開度Accと車速Vとエンジン回転数Neと出力可能電力量Woutとの関係図である。現在設定されているエンジン1の制限回転数において出力可能なエンジンパワーPeにより運転者要求パワーPreqを満たすことができる状態では、出力可能電力量Woutが減少しないが、出力可能なエンジンパワーPeのみでは運転者要求パワーPreqを満たせなくなった場合に、出力可能電力量Woutが減少する。
【0065】
その運転者要求パワーPreqが現在の制限回転数内で出力可能なエンジンパワーPeを越えたとき、不足する分のパワーすなわち蓄電装置10から出力される放電パワーPbatoutに対応して、出力可能電力量Woutが減少する。また、図5の出力可能電力量Woutの関係図を例示するタイムチャートにおいて、実際の出力可能電力量Woutが減少する状態は実線で示し、回転数上限値Nemaxを変更せずに固定したままの蓄電装置10の出力可能電力量Woutが減少し続ける推移は一点鎖線で示す。さらに、制限回転数内におけるエンジンパワーPeが運転者要求パワーPreqよりも大きい場合、蓄電装置10から放電されず電力量は減少しない。したがって、制限回転数が変更されない場合の出力可能電力量Woutが減少する状態に比べ、回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させた場合の出力可能電力量Woutが減少する状態は、電力量が緩やかに減少する。
【0066】
その出力可能電力量Woutが減少する状態に基づき、エンジン1の制限回転数のうち回転数上限値Nemaxを、出力可能電力量Woutが減少する状態に応じて、徐々に高回転数側に変更させる。言い換えれば、この制限回転数の再計算および再設定を連続的に行い、エンジン回転数Neの上昇側の制限値Nemaxを徐々に高回転数側に変化させる。なお、制限回転数のうち下降側の制限値である回転数下限値Neminは変更させないものとする。また、図示しないが、蓄電装置10が放電し始めた際、すなわち蓄電装置10の出力可能電力量Woutが減少し始めた際に、回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させ、その出力可能電力量Woutが減少する状態に応じて、回転数上限値Nemaxを徐々に高回転数側に変更させるものであってもよい。
【0067】
ここで処理フォローの説明に戻り、上記ステップS207においてエンジン1の回転数上限値Nemaxが変更された後、ハイブリッドコントローラ11は、エンジン運転点設定用マップを参照し、この変更したエンジン1の制限回転数と上記算出した運転者要求パワーPreqとに基づき、このマップ上において運転者要求パワーPreqを満たし、かつ最適燃費線などの動作ライン上を動作するエンジン回転数Neとエンジン出力トルクTeとを算出し(ステップS208)、この処理フローを終了する。
【0068】
なお、図4などを参照して上述した出力可能電力Woutが第1閾値Woutth1に達する前に回転数上限値Nemaxを連続的に変更する制御(第1変更制御)は、出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1にある程度近づいた際に処理が開始させる制御である。さらに、その図2などを参照して上述した出力可能電力Woutが第1閾値Woutth1に達した際に回転数上限値Nemaxを高回転数側の所定の回転数に変更する制御(第2変更制御)に先だって上記第1変更制御を実行し、その第1変更制御から連続して第2変更制御を開始するものであってもよい。これにより、第2変更制御の実行に伴う回転数上限値Nemaxの変更量は、第1変更制御から連続しなかった場合に比べて相対的に減少され、急激なエンジン回転数Neの変更を防止できる。
【0069】
さらに、擬似有段変速モードが選択されているときに、出力可能電力量Woutと第1閾値Woutth1との差分に基づき、または出力可能電力量Woutと第2閾値Woutth2との比較判別により、エンジン1の制限回転数のうち回転数上限値Nemaxが高回転数側に変更された場合、一度実行された回転数上限値Nemaxの変更状態は維持され、エンジン1の回転数Neが制御され続ける。すなわち、擬似有段変速モードの選択中に蓄電装置10の出力可能電力量Woutが第2閾値Woutth2に達して回転数上限値Nemaxが一度高回転数側に変更されると、その擬似有段変速モードが解除されるまで、その回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させた制御状態は維持される。例えば、車両20の電力状態などに応じて、回転数上限値Nemaxが高回転数側に変更された状態から、その変更前の制御状態へと自動で変更されない。なお、図5には出力可能電力量Woutが減少し続ける場合を例示したが、仮に蓄電装置10の電力量が増加し、その回復した出力可能電力量Woutが再度第2閾値Woutth2に達したとしても回転数上限値Nemaxは高回転数側に再変更されない制御であってもよい。さらに、擬似変速段を変速された場合や、SポジションからDポジションなどにシフトポジションが変更された場合には、その回転数上限値Nemaxを変更できるものとしてもよい。
【0070】
以上説明してきた通り、この発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置によれば、ハイブリッド車両の電力状態や蓄電装置10の充電状態に応じて、エンジン1に係る回転数上限値Nemaxを高回転数側の回転数に変更することができる。
【0071】
エンジン回転数制限の制御中、すなわち擬似有段変速モードで走行中には、エンジン1の制限回転数の変更前後に拘わらず、エンジン回転数Neと、エンジン出力トルクTeと、ドライバーの要求するパワーPreqと、蓄電装置10からの持ち出しパワーPbatoutと、等出力線であるエンジンパワーPeと、エンジン1における最適燃費線Cfとの関係から、このエンジン回転数Neおよびエンジン出力トルクTeは最適燃費線Cf上を動作する制御が可能である。
【0072】
また、エンジン1の回転数上限値Nemaxの変更処理を、車両20が出力可能な電力量Woutの制限値である各閾値に基づいて実施させることができる。
【0073】
擬似有段変速モードが継続中に、第1閾値Woutth1に出力可能電力量Woutが達した際にエンジン1の回転数上限値Nemaxが一度変更された場合、何度も制限回転数されないので、運転者への違和感を軽減させることができる。
【0074】
また、エンジン1の制限回転数を変更した後であっても、車両20のアクセル開度Accに基づく駆動力特性は、Sレンジの設定を用いることとし、Dレンジと異なる設定を用いることができる。
【0075】
なお、この発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置は、上述してきた実施形態に限定されるものではなく、この発明の目的を逸脱しない範囲内において適宜変更が可能である。
【0076】
例えば、ハイブリッドコントローラ11はモータ用電子制御装置およびバッテリ用電子制御装置として機能することを説明したが、この発明はこれに限定されず、ハイブリッドコントローラ11とは別にモータ用電子制御装置とバッテリ用電子制御装置とを備えているものであってもよい。具体的には、ハイブリッドコントローラ11は図示しないモータ用電子制御装置およびバッテリ用電子制御装置と各種信号の入出力可能に電気的接続され、モータ用電子制御装置およびバッテリ用電子制御装置は、ハイブリッドコントローラ11からの制御を受け、第1モータ・ジェネレータ2と第2モータ・ジェネレータ3とを駆動制御し、蓄電装置10およびインバータ8,9を制御するものであってもよい。
【0077】
また、上述の実施形態において、ハイブリッドコントローラ11が蓄電装置10の出力可能電力量Woutに基づき放充電を管理することを説明したが、この発明はそれに限定されず、出力可能電力量Woutに代わりSOCに基づき放充電を管理するものでもよい。例えば、ハイブリッドコントローラ11は、電流センサから入力された充放電電流の積算値に基づいて、蓄電装置10の充電率を示すSOCを算出する。このSOCに基づき蓄電装置10の充放電を管理する。SOCが制御上限値の付近の場合、すなわち蓄電装置10が満充電もしくはそれに近い状態の場合、モータ・ジェネレータ2,3で発電した電力は蓄電装置10に充電されない。また、蓄電装置10のSOCが制御下限値よりも低下した場合、モータ・ジェネレータ2,3に蓄電装置10からの電力は供給されない。したがって、蓄電装置10の適切なSOCを維持するために、エンジン1の運転点(動作点)のうち主にエンジン回転数Neを制御して、電力収支の破綻を回避させる制御であってもよい。
【0078】
また、上述の電力量判別は、出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1以下であるか否かにより判別してもよい。これは蓄電装置10の完全放電状態を示す充電率0%を第1閾値Woutth1と設定することが可能であり、このとき第1閾値Woutth1は電力量下限値と等しくなりゼロに設定されるためである。すなわち、出力可能電力量Woutが電力量下限値を下回らなければよいものであって、その第1閾値Woutth1が電力量下限値と等しい値であってもよい。
【0079】
さらに、制限回転数の変更処理は、上述したように別々に処理が実行させる場合に限定されず、連続して処理が実行させるものであってもよい。例えば、蓄電装置10の出力可能電力量Woutが減少し始めてから、その電力量Woutの減少する状態に応じて、回転数上限値Nemaxを徐々に高回転数側に変更させつつ、電力量Woutが第1閾値Woutth1に達した際には、運転者要求パワーPreqをエンジンパワーPeのみで満たすように回転数上限値Nemaxを解除させるものであってもよい。その際、運転者要求パワーPreqを満たすためには、それまでに徐々に上昇させてきた回転数上限値Nemaxを更に解除させるものであったもよい。
【0080】
また、上述した出力可能電力量Woutが緩やかに減少するようにエンジン1の制限回転数を変更する処理において、ステップS204における運転者要求パワーPreqとエンジンパワーPeとの比較判別処理の後に、ステップS206における蓄電装置10の出力可能電力量Woutと第2閾値Woutth2との比較判別処理の結果に基づいて、ステップS207における回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させる処理について説明したが、これに限定されない。例えば、ステップS204における運転者要求パワーPreqとエンジンパワーPeとの比較判別処理の後に、ステップS206における蓄電装置10の出力可能電力量Woutと第2閾値Woutth2との比較判別処理は行わずに、ステップS204でYesの場合にステップS207における回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させる処理を行うものであってもよい。これによれば、蓄電装置10の出力可能電力量Woutが減少し始めたときから、回転数上限値Nemaxの変更を実施することができる。
【0081】
さらに、この発明に係る制限回転数の変更状態には、蓄電装置10の出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1に達する前における制限回転数のうち回転数上限値Nemaxを高回転数側に変更させた状態が含まれることに加え、その出力可能電力量Woutが第1閾値Woutth1に達した際に制限回転数のうち回転数上限値Nemaxを解除させた状態が含まれてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態では擬似有段変速モードを、マニュアルトランスミッションのようにシフトレバーによる選択操作に応じてシーケンシャルシフトポジションを選択する場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、車両20の運転席近傍に設置された操作パネルや操作ボタンなどにより擬似有段変速モードが選択されるものであってもよい。また、擬似有段変速モード中における変速動作もマニュアルトランスミッションのような変速操作に基づくものでなく、オートマチックトランスミッションなどのように自動変速するものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…エンジン(E/G)、 2…第1モータ・ジェネレータ(MG1)、 3…第2モータ・ジェネレータ(MG2)、 4…動力分割機構、 5…出力軸、 6…デファレンシャル、 7…駆動輪、 8,9…インバータ、 10…蓄電装置、 11…ハイブリッドコントローラ、 12…電子スロットルバルブ、 13…車輪速センサ、 14…アクセルペダル、 15…アクセル開度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、蓄電装置の電力によって駆動されるモータとを動力源として備え、前記内燃機関の回転数に制限回転数を設定することで車速に対する前記内燃機関の回転数の比率が一定になるように前記内燃機関の回転数を制御することができるハイブリッド車両の駆動制御装置において、
前記比率が一定になるように前記内燃機関の回転数を制御している状態で、
前記ハイブリッド車両に対する駆動要求量を満たすべく前記蓄電装置が放電する際に、その蓄電装置で出力可能な電力量が減少する状態に応じて、前記制限回転数に係る回転数上限値を高回転数側に変更させる制限回転数変更手段を備えることを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項2】
前記制限回転数変更手段は、前記電力量と予め定めた前記蓄電装置に係る制御下限値との差分が予め定めた差分閾値より小さい場合に、前記電力量が減少する状態に応じて、前記回転数上限値を高回転数側に変更させる
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制限回転数変更手段は、前記放電し始める際に、前記回転数上限値を高回転数側に変更させる
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記制限回転数変更手段は、前記電力量が予め定めた前記蓄電装置に係る制御下限値よりも大きな値である電力量閾値より小さくなった場合に、前記電力量が減少する状態に応じて、前記回転数上限値を高回転数側に変更させる
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項5】
前記比率が一定になるように前記内燃機関の回転数を制御している状態が解除されるまでは、前記回転数上限値の変更状態を維持する手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハイブリッド車両の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103577(P2013−103577A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248092(P2011−248092)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】