説明

ハイブリッド車両

【課題】段差を乗り越えるときに、ドライバに違和感を与えるのを抑制することが可能なハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両100は、駆動輪8を駆動するためのエンジン1およびモータMG2と、エンジン1およびモータMG2を制御するHVECU11とを備える。そして、HVECU11は、エンジン1の間欠運転時において段差を乗り越えるときにエンジン1の始動を禁止するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよび電動機を備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動輪を駆動するためのエンジンおよびモータ(電動機)を備えたハイブリッド車両が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなハイブリッド車両では、走行状態およびバッテリの状態などに基づいてエンジンが間欠運転される。たとえば、このようなハイブリッド車両は、バッテリの充電が不要なときの発進時などでは、エンジンの運転を停止し、モータの動力のみで走行する。
【0004】
また、特許文献1のハイブリッド車両は、路面の段差を検出した場合に、その段差を乗り越えるときに駆動力を増大させるように構成されている。これにより、段差を乗り越えるときにアクセルペダルの踏込量を極端に大きくする必要がなくなるので、運転操作性の改善を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−83993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記したエンジンを間欠運転するハイブリッド車両において、段差を乗り越えるときにエンジンが始動された場合には、ドライバ(運転手)に違和感を与える可能性があるという問題点がある。とくに、ハイブリッド車両が段差を乗り越えるときには、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれ、駆動輪に出力される駆動力の要求値が大きくなり、エンジンが始動されやすくなるので、ドライバに違和感を与える可能性が高い。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、段差を乗り越えるときに、ドライバに違和感を与えるのを抑制することが可能なハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるハイブリッド車両は、駆動輪を駆動するためのエンジンおよび電動機と、エンジンおよび電動機を制御する制御装置とを備える。そして、制御装置は、エンジンを間欠運転可能に構成されており、エンジンの間欠運転時において路面の段差を乗り越えるときにエンジンの始動を禁止するように構成されている。
【0009】
このように構成することによって、段差の乗り越えタイミングにエンジンの始動が重なるのを抑制することができるので、ドライバに違和感を与えるのを抑制することができる。
【0010】
上記ハイブリッド車両において、制御装置は、駆動輪に出力される駆動力に応じた車速が得られていない場合に段差が存在すると判定し、段差が存在すると判定したときに予め設定された期間だけエンジンの始動を禁止するように構成されていてもよい。
【0011】
このように構成すれば、段差が存在すると判定した場合に、その段差を乗り越えるときにエンジンの始動を禁止することができる。
【0012】
この場合において、車速を検出するための車速センサと、アクセルペダルの踏込量を検出するためのアクセルペダルポジションセンサとを備え、制御装置は、車速センサおよびアクセルペダルポジションセンサの検出結果に基づいて、段差が存在するか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成すれば、段差が存在するか否かを容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド車両によれば、段差を乗り越えるときに、ドライバに違和感を与えるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態によるハイブリッド車両の全体構成を示した図である。
【図2】図1のハイブリッド車両のHVECUを示したブロック図である。
【図3】図1のハイブリッド車両のHVバッテリおよびPCUを示したブロック図である。
【図4】図1のハイブリッド車両の段差乗り越え時の制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4の段差判定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
−機械的構成−
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態によるハイブリッド車両100の機械的構成(駆動機構)について説明する。
【0018】
ハイブリッド車両100は、たとえば、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式であり、左右の前輪(駆動輪)8を駆動する。このハイブリッド車両100は、図1に示すように、エンジン(内燃機関)1と、ジェネレータMG1と、モータMG2と、動力分割機構2と、リダクション機構3と、減速装置4と、デファレンシャル装置5と、ドライブシャフト6とを備えている。
【0019】
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置である。エンジン1は、たとえば、吸気通路に設けられたスロットルバルブのスロットル開度(吸気空気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御可能に構成されている。
【0020】
エンジン1の出力は、クランクシャフト1aおよびダンパ7を介して動力分割機構2のインプットシャフト2aに伝達される。ダンパ7は、たとえば、コイルスプリング式トランスアクスルダンパであってエンジン1のトルク変動を吸収する。
【0021】
ジェネレータMG1は、主に発電機として機能し、状況によっては電動機としても機能する。ジェネレータMG1は、たとえば、交流同期発電機であり、インプットシャフト2aに対して回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG1Rと、3相巻線が巻回されたステータMG1Sとを有する。
【0022】
モータMG2は、主に電動機として機能し、状況によっては発電機としても機能する。モータMG2は、たとえば、交流同期電動機であり、永久磁石からなるロータMG2Rと、3相巻線が巻回されたステータMG2Sとを有する。なお、モータMG2は、本発明の「電動機」の一例である。
【0023】
動力分割機構2は、エンジン1の出力を、左右の前輪8を駆動する動力と、発電のためにジェネレータMG1を駆動する動力とに分割する機構であり、たとえば、遊星歯車機構である。
【0024】
具体的には、動力分割機構2は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤ2Sと、サンギヤ2Sに外接(噛合)しながらその周辺を自転しつつ公転する外歯歯車のピニオンギヤ2Pと、ピニオンギヤ2Pと噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤ2Rと、ピニオンギヤ2Pを支持するとともに、このピニオンギヤ2Pの公転を通じて自転するプラネタリキャリア2Cとを有する。
【0025】
プラネタリキャリア2Cは、エンジン1側のインプットシャフト2aに回転一体に連結されている。サンギヤ2Sは、ジェネレータMG1のロータMG1Rに回転一体に連結されている。
【0026】
この動力分割機構2を設けることにより、エンジン1から出力された動力が、プラネタリキャリア2Cから、サンギヤ2Sに伝達される動力と、リングギヤ2Rに伝達される動力とに分割される。
【0027】
これらの分割された動力のうち、サンギヤ2Sに伝達された動力は、ジェネレータMG1のロータMG1Rに伝達され、その動力によりロータMG1Rが駆動されることにより、ジェネレータMG1で発電が行われる。なお、エンジン1の始動時には、HVバッテリ13から供給される電力によりジェネレータMG1が駆動されることによって、エンジン1がクランキングされる。すなわち、ジェネレータMG1はエンジン1の始動時にはスタータモータとしても機能する。
【0028】
一方、エンジン1からリングギヤ2Rに伝達された動力は、モータMG2が出力した動力と統合されて、リングギヤ2Rから、減速装置4、デファレンシャル装置5およびドライブシャフト6を介して前輪8に伝達され、その伝達された動力により前輪8が駆動される。
【0029】
リダクション機構3は、モータMG2の回転を減速し、駆動トルクの増幅を行う機構であり、たとえば、遊星歯車機構である。
【0030】
具体的には、リダクション機構3は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤ3Sと、サンギヤ3Sに外接しながら自転する外歯歯車のピニオンギヤ3Pと、ピニオンギヤ3Pと噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤ3Rとを有する。
【0031】
リダクション機構3のリングギヤ3Rと、動力分割機構2のリングギヤ2Rとは互いに一体となっている。また、サンギヤ3SはモータMG2のロータMG2Rと回転一体に連結されている。
【0032】
このリダクション機構3を設けることにより、モータMG2が駆動したときには、このモータMG2の出力(動力)が、エンジン1から動力分割機構2のリングギヤ2Rに伝達された動力に統合される。これにより、エンジン1の出力を補助(アシスト)することができ、前輪8の駆動力を高めることができる。なお、低速の軽負荷走行時などには、エンジン1を停止させたまま、モータMG2の動力のみで走行(EV走行)を行うことができる。また、回生制動時には、モータMG2が運動エネルギを電気エネルギに変換することにより発電を行うことができる。
【0033】
−電気的構成−
次に、図1〜図3を参照して、本実施形態によるハイブリッド車両100の電気的構成(電気系統)について説明する。
【0034】
ハイブリッド車両100は、図1に示すように、HVECU11と、エンジンECU12と、HVバッテリ13と、PCU(パワーコントロールユニット)14とを備えている。
【0035】
[HVECU]
HVECU11は、ハイブリッド車両100を統括的に制御するように構成されている。たとえば、HVECU11は、ハイブリッドシステム(車両システム)を実行してハイブリッド車両100の走行を制御する。なお、HVECU11は、本発明の「制御装置」の一例である。
【0036】
ここで、ハイブリッドシステムとは、エンジン1の運転制御、ジェネレータMG1およびモータMG2の駆動制御、エンジン1、ジェネレータMG1およびモータMG2の協調制御などを含む各種制御を実行することにより、ハイブリッド車両100の走行を制御するシステムである。
【0037】
このHVECU11は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、バックアップRAM114と、入出力インターフェース115と、通信インターフェース116とを含んでいる。
【0038】
CPU111は、ROM112に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。ROM112には、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されている。RAM113は、CPU111による演算結果や各センサの検出結果などを一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM114は、イグニッションをオフする際に保存すべきデータなどを記憶する不揮発性のメモリである。
【0039】
入出力インターフェース115は、各センサの検出結果などが入力されるとともに、各部に制御信号などを出力する機能を有する。入出力インターフェース115には、たとえば、車速センサ21、アクセルペダルポジションセンサ22、ブレーキペダルポジションセンサ23、セレクタレバーポジションセンサ24、Pポジションスイッチ25、および、パワースイッチ26などが接続されている。
【0040】
車速センサ21は、ハイブリッド車両100の車速を検出するためのセンサである。アクセルペダルポジションセンサ22は、アクセルペダル22aの踏込量を検出するためのセンサであり、ブレーキペダルポジションセンサ23は、ブレーキペダル23aの踏込量を検出するためのセンサである。パワースイッチ26は、ハイブリッドシステムを起動および停止させるためのスイッチである。なお、セレクタレバーポジションセンサ24およびPポジションスイッチ25については、後で説明する。
【0041】
通信インターフェース116は、各ECU(たとえば、エンジンECU12)などと通信するために設けられている。通信インターフェース116には、たとえば、ヨーレートセンサ27およびリニアGセンサ28などが接続されている。ヨーレートセンサ27は、鉛直方向を中心とする回転角速度を検出するためのセンサであり、リニアGセンサ28は、水平方向に対する加速度(減速度)を検出するためのセンサである。
【0042】
[エンジンECU]
エンジンECU12(図1参照)は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、入出力インターフェースおよび通信インターフェースなどを含んでいる。エンジンECU12は、HVECU11からの出力要求に応じて、吸入空気量制御、燃料噴射量制御および点火時期制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
【0043】
[HVバッテリ]
HVバッテリ13は、図3に示すように、走行用の高電圧電源であるバッテリモジュール131と、バッテリモジュール131を監視する電池監視ユニット132と、システムメインリレー133とを含んでいる。
【0044】
バッテリモジュール131は、ジェネレータMG1およびモータMG2を駆動する電力を供給するとともに、ジェネレータMG1およびモータMG2により発電された電力を蓄電するように構成されている。このバッテリモジュール131は、たとえば、充放電可能なニッケル水素電池またはリチウムイオン電池である。
【0045】
電池監視ユニット132には、バッテリモジュール131の充放電電流を検出する電流センサ、バッテリモジュール131の電圧を検出する電圧センサ、および、バッテリモジュール131の温度(電池温度)を検出する温度センサが接続されている。そして、電池監視ユニット132は、バッテリモジュール131に関する情報(充放電電流、電圧および電池温度)をHVECU11に送信する。これにより、HVECU11は、たとえば、充放電電流の積算値に基づいてバッテリモジュール131のSOC(State of Charge:充電状態)を演算するとともに、SOCおよび電池温度に基づいて入力制限Winおよび出力制限Woutを演算する。
【0046】
システムメインリレー133は、バッテリモジュール131とPCU14とを接続または遮断するために、バッテリモジュール131とPCU14との間に設けられている。システムメインリレー133は、HVECU11からの制御信号に基づいてオン/オフ状態が切り替えられる。
【0047】
そして、システムメインリレー133がオン状態の場合には、バッテリモジュール131の電力をPCU14に供給可能であり、かつ、PCU14から供給される電力によりバッテリモジュール131を充電可能である。また、システムメインリレー133がオフ状態の場合には、バッテリモジュール131をPCU14と電気的に分離することが可能である。
【0048】
[PCU(パワーコントロールユニット)]
PCU14は、昇降圧コンバータ141と、インバータ142および143と、MGECU144とを含んでいる。
【0049】
昇降圧コンバータ141は、HVバッテリ13の直流電圧を昇圧してインバータ142および143に供給するために設けられている。また、昇降圧コンバータ141は、ジェネレータMG1により発電され、インバータ142により直流に変換された電圧を降圧してHVバッテリ13に供給するとともに、モータMG2により発電され、インバータ143により直流に変換された電圧を降圧してHVバッテリ13に供給する機能も有する。
【0050】
具体的には、昇降圧コンバータ141は、たとえば、チョッパ型の昇降圧コンバータであり、リアクトルと、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)と、ダイオードとを有する。そして、昇降圧コンバータ141は、MGECU144から供給される駆動信号により、IGBTのオン/オフ状態が制御されることによって、昇圧または降圧を行うように構成されている。
【0051】
インバータ142および143は、たとえば、IGBTおよびダイオードを有する三相ブリッジ回路であり、MGECU144から供給される駆動信号によりIGBTのオン/オフ状態が制御されることによって回生制御または力行制御される。
【0052】
具体的には、インバータ142は、エンジン1の動力によりジェネレータMG1で発電された交流電流を直流電流に変換して昇降圧コンバータ141に出力する(回生制御)とともに、昇降圧コンバータ141から供給される直流電流を交流電流に変換してジェネレータMG1を駆動する(力行制御)。
【0053】
また、インバータ143は、昇降圧コンバータ141から供給される直流電流を交流電流に変換してモータMG2を駆動する(力行制御)とともに、回生制動時にモータMG2で発電された交流電流を直流電流に変換して昇降圧コンバータ141に出力する(回生制御)。
【0054】
MGECU144は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、入出力インターフェースおよび通信インターフェースなどを含んでいる。MGECU144は、HVECU11から送信される出力要求を受信するとともに、その出力要求などに基づいて昇降圧コンバータ141、インバータ142および143の駆動信号を生成し、その駆動信号を昇降圧コンバータ141、インバータ142および143に出力する。
【0055】
−シフトポジション−
次に、本実施形態によるハイブリッド車両100のシフトポジションについて説明する。
【0056】
ハイブリッド車両100は、前進走行用のドライブポジション(Dポジション)、アクセルオフ時の制動力(エンジンブレーキ)が大きな前進走行用のブレーキポジション(Bポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、および、駐車用のパーキングポジション(Pポジション)のいずれかのシフトポジションに設定可能に構成されている。ハイブリッド車両100では、HVECU11によりシフトポジションが管理されている。
【0057】
具体的には、HVECU11は、ドライバによるセレクタレバー(図示省略)の操作に応じてセレクタレバーポジションセンサ24から出力される信号などに基づいて、シフトポジションをDポジション、Bポジション、RポジションまたはNポジションに設定する。
【0058】
また、HVECU11は、ドライバの操作に応じてPポジションスイッチ25から出力される信号などに基づいてシフトポジションをPポジションに設定する。なお、Pポジションに設定された場合には、パーキングロック機構(図示省略)が作動されることにより、ハイブリッド車両100の移動が規制される。
【0059】
−走行状態−
次に、本実施形態によるハイブリッド車両100の走行状態の一例について説明する。
【0060】
たとえば、ハイブリッド車両100は、発進時および低車速の軽負荷走行時などにおいて、エンジン1の運転を停止し、モータMG2を力行制御して走行(EV走行)を行う。
【0061】
また、ハイブリッド車両100は、定常走行時などにおいて、エンジン1を主動力源として走行を行い、ジェネレータMG1を回生制御するとともに、その回生制御で得られた電気エネルギでモータMG2を補助的に力行制御する。
【0062】
また、ハイブリッド車両100は、加速時などにおいて、エンジン1を駆動するとともに、ジェネレータMG1を回生制御して得られた電気エネルギおよびHVバッテリ13の電気エネルギでモータMG2を力行制御して走行を行う。
【0063】
また、ハイブリッド車両100は、減速時(アクセルをオフ時)などにおいて、モータMG2を回生制御することにより、制動トルクを付与するとともに、エネルギ回収を行ってHVバッテリ13の充電を行う。
【0064】
また、ハイブリッド車両100は、後進時には、モータMG2を前進時に対して逆回転方向に力行制御する。
【0065】
すなわち、ハイブリッド車両100は、走行状態およびバッテリモジュール131のSOCなどに基づいてエンジン1を間欠運転する。たとえば、ハイブリッド車両100は、エンジン1の運転が停止されているときにおいて、要求駆動力(トータル出力)が大きくなった場合、およびバッテリモジュール131のSOCが低下した場合などに、エンジン1を始動するように構成されている。
【0066】
−段差乗り越え時の制御−
次に、図4および図5を参照して、本実施形態によるハイブリッド車両100の段差乗り越え時の制御について説明する。なお、以下の制御は、ハイブリッドシステムが起動しているとき(エンジン1の間欠運転時)に繰り返し行われ、通常の走行制御などと並行して行われる。ここで、エンジン1の間欠運転時とは、エンジン1の始動および停止が許容される状態(エンジン1の間欠運転が禁止されていない状態)のときである。また、以下の各ステップは、HVECU11(図2参照)により実行される。
【0067】
まず、図4のステップS1において、シフトポジションが走行ポジションであるか否かが判断される。なお、走行ポジションとは、Dポジション、BポジションおよびRポジションである。そして、走行ポジションである(Dポジション、BポジションまたはRポジションである)と判断された場合には、ステップS2に移る。その一方、走行ポジションではない(NポジションまたはPポジションである)と判断された場合には、リターンに移る。
【0068】
次に、ステップS2において、ブレーキおよびパーキングブレーキがオフであるか否かが判断される。そして、ブレーキおよびパーキングブレーキがオフであると判断された場合には、ステップS3に移る。その一方、ブレーキおよびパーキングブレーキがオフではない(ブレーキまたはパーキングブレーキがオンである)と判断された場合には、リターンに移る。なお、ブレーキがオフであるか否かは、たとえば、ブレーキペダルポジションセンサ23の検出結果に基づいて判断される。また、パーキングブレーキがオフであるか否かは、たとえば、パーキングロック機構の作動状態に基づいて判断される。
【0069】
次に、ステップS3において、道路勾配(路面の傾斜状態)が平坦であるか否かが判断される。そして、道路勾配が平坦であると判断された場合には、ステップS4に移る。その一方、道路勾配が平坦ではない(道路が上り勾配または下り勾配である)と判断された場合には、リターンに移る。なお、道路勾配は、たとえば、ヨーレートセンサ27およびリニアGセンサ28の検出結果に基づいて判断される。
【0070】
次に、ステップS4において、段差判定処理が行われる。この段差判定処理は、路面に段差が存在するか否かを判定するための処理である。
【0071】
具体的には、図5のステップS11において、車速センサ21の検出結果(車速V)の絶対値が閾値Vt以下であるか否かが判断される。なお、閾値Vtは、予め設定されており、たとえば、停車していると判定できる車速から平坦な路面でのクリープ車速の間で設定されている。そして、車速Vの絶対値が閾値Vt以下であると判断された場合には、ステップS12に移る。その一方、車速Vの絶対値が閾値Vt以下ではないと判断された場合には、ステップS14において、段差が存在しないと判定され、エンドに移る。
【0072】
次に、ステップS12において、アクセルペダルポジションセンサ22の検出結果(アクセルペダル22aの開度APO)が閾値APOt以上であるか否かが判断される。なお、閾値APOtは、予め設定されており、たとえば、ドライバが意図的にアクセルペダル22aを踏んだと判定できる程度の値に設定されている。そして、アクセルペダル22aの開度APOが閾値APOt以上であると判断された場合には、ステップS13において、段差が存在すると判定され、エンドに移る。その一方、アクセルペダル22aの開度APOが閾値APOt以上ではないと判断された場合には、ステップS14において、段差が存在しないと判定され、エンドに移る。
【0073】
すなわち、この段差判定処理では、車速センサ21およびアクセルペダルポジションセンサ22の検出結果に基づいて、要求された駆動力(前輪8に出力される駆動力)に応じた車速が得られていないと判断された場合に段差が存在すると判定する。つまり、アクセルペダル22aがドライバにより意図的に踏み込まれているにもかかわらず、その踏込量に応じた車速になっていない場合(たとえば、車速がクリープ車速以下である場合)には、段差が存在すると判定される。その一方、車速がたとえばクリープ車速を超えている場合、および、アクセルペダル22aがドライバにより踏み込まれていない場合には、段差が存在しないと判定される。
【0074】
そして、図4のステップS5において、上記した段差判定処理により段差が存在すると判定されたか否かが判断される。そして、段差が存在すると判定されていた場合には、ステップS6に移る。その一方、段差が存在しないと判定されていた場合には、リターンに移る。
【0075】
次に、ステップS6において、エンジン1が停止状態であるか否かが判断される。そして、エンジン1が停止状態であると判断された場合には、ステップS7に移る。その一方、エンジン1が停止状態ではない(エンジン1が運転状態である)と判断された場合には、段差を乗り越えるときにエンジン1が始動されることはないので、そのままリターンに移る。
【0076】
次に、ステップS7において、予め設定された期間Tだけエンジン1の始動が禁止され、リターンに移る。なお、この期間Tは、たとえば、エンジン1を停止してモータMG2のみを駆動するEV走行を継続しても、モータMG2の過熱、インバータ143の過熱およびバッテリモジュール131の過放電が生じない程度の期間である。
【0077】
−効果−
本実施形態では、上記のように、エンジン1が間欠運転可能に構成されたハイブリッド車両100において、段差が存在すると判定された場合に、予め設定された期間Tだけエンジン1の始動を禁止することによって、段差を乗り越えるときにエンジン1が始動されるのを抑制することができるので、ドライバに違和感を与えるのを抑制することができる。たとえば、ハイブリッド車両100が段差を乗り越えるときに、ドライバによりアクセルペダル22aが踏み込まれ、前輪8に出力される駆動力の要求値が大きくなった場合にも、エンジン1の始動が禁止されることにより、段差の乗り越えタイミングにエンジン1の始動が重なるのを抑制することができるので、ドライバに違和感を与えるのを抑制することができる。その結果、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、要求された駆動力に応じた車速が得られていない場合に段差が存在すると判定することによって、段差が存在するか否かを容易に判定することができる。
【0079】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
たとえば、本実施形態では、FF方式のハイブリッド車両100に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、FR方式または4WD方式のハイブリッド車両に本発明を適用してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、2個のモータジェネレータ(ジェネレータMG1およびモータMG2)がハイブリッド車両100に設けられる例を示したが、これに限らず、1個または3個以上のモータジェネレータがハイブリッド車両に設けられていてもよい。たとえば、本実施形態によるハイブリッド車両100において、ジェネレータMG1およびモータMG2に加えて、後輪車軸を駆動するモータジェネレータが設けられていてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、車速センサ21およびアクセルペダルポジションセンサ22の検出結果に基づいて段差が存在するか否かを判定する例を示したが、これに限らず、路面を撮像する撮像装置(図示省略)を設け、その撮像装置により撮像された画像に基づいて段差が存在するか否かを判定するようにしてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、道路勾配が平坦な場合に段差判定処理を行い、段差が存在すると判定された場合に、エンジン1の始動を禁止する例を示したが、これに限らず、道路勾配が下り勾配または上り勾配の場合に段差判定処理を行い、段差が存在すると判定された場合に、エンジン1の始動を禁止するようにしてもよい。この場合における段差判定処理では、勾配の度合いに応じて上記した閾値APOtを補正するようにしてもよい。たとえば、上り勾配の場合には、平坦な場合に比べて、閾値APOtを大きくするようにしてもよい。また、下り勾配の場合には、平坦な場合と同じ閾値APOtを用いるようにしてもよい。
【0084】
また、本実施形態において、エンジン1の始動が禁止される期間Tは、一定期間であってもよいし、不定期間(可変期間)であってもよい。たとえば、期間Tがバッテリモジュール131のSOCなどに基づいて算出されるようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態において、期間Tの間は、段差乗り越え時の制御を行わないようにし、期間Tの経過後、再び段差乗り越え時の制御を繰り返し行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 エンジン
8 前輪(駆動輪)
11 HVECU(制御装置)
21 車速センサ
22 アクセルペダルポジションセンサ
22a アクセルペダル
100 ハイブリッド車両
MG2 モータ(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動するためのエンジンおよび電動機と、
前記エンジンおよび前記電動機を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記エンジンを間欠運転可能に構成されており、前記エンジンの間欠運転時において路面の段差を乗り越えるときに前記エンジンの始動を禁止するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記制御装置は、前記駆動輪に出力される駆動力に応じた車速が得られていない場合に段差が存在すると判定し、段差が存在すると判定したときに予め設定された期間だけ前記エンジンの始動を禁止するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両において、
車速を検出するための車速センサと、
アクセルペダルの踏込量を検出するためのアクセルペダルポジションセンサとを備え、
前記制御装置は、前記車速センサおよび前記アクセルペダルポジションセンサの検出結果に基づいて、段差が存在するか否かを判定するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107432(P2013−107432A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252494(P2011−252494)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】