説明

ハウス内の野菜苗植付装置及び野菜苗移植方法

【課題】本発明では、ハウス内の地面に野菜苗植付機の移動スペースを作ることなく全面に複数の畝条を形成してハウス内の全地面を畝として有効に活用しながら、従来のハウス内野菜苗植付装置よりも低価格なハウス内の野菜苗植付装置及び作業が楽な野菜苗移植方法を提供することが課題である。
【解決手段】ハウス1内の地面に形成する複数の畝条U,Uの最外側に畝条に沿って端から端まで二本のガイドレール2,3を設けると共に両ガイドレール2,3に掛け渡して畝条U方向へ移動可能に移動レール4,5を支持し、この移動レール4,5に野菜苗植付機7等を搭載可能な作業機台6を移動レール4,5方向へスライド可能に設けてハウス内野菜苗植付装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウス内でポット状の野菜苗を畝床に植え付けるハウス内の野菜苗植付装置及び野菜苗移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウス内野菜苗植付装置は、例えば、特開2006−94834号公報に記載の如く、ハウス内に形成した畝条に沿って走行しながら野菜苗の植付作業を行う野菜苗植付機とハウス内の天井付近に設ける前記野菜苗植付機の吊り下げ手段とから構成した技術がある。このハウス内野菜苗植付装置は、一つの畝条を植え終わって隣の畝条に移る場合に吊り下げ手段で野菜苗植付機を吊り上げて横移動し反転して隣の畝条の植付を行う。
【特許文献1】特開2006−94834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のハウス内野菜苗植付装置は、畝条を移るための地面スペースを作ることなく吊り下げ手段で野菜苗植付機を吊り下げて畝条を移るようにしているが、重い野菜苗植付機を吊り下げる吊り下げ手段のためにハウスを強固するか或いはハウス内に吊り下げ手段用の支持フレームを設ける構成にしなければならない。
【0004】
そこで、本発明では、ハウス内の地面に野菜苗植付機の移動スペースを作ることなく全面に複数の畝条を形成してハウス内の全地面を苗植付面として有効に活用しながら、従来のハウス内野菜苗植付装置よりも低価格なハウス内の野菜苗植付装置及び作業が楽な野菜苗移植方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、ハウス1内の地面に形成する複数の畝条U,Uの最外側に畝条に沿って端から端まで二本のガイドレール2,3を設けると共に両ガイドレール2,3に掛け渡して畝条U方向へ移動可能に移動レール4,5を支持し、この移動レール4,5に野菜苗植付機7等を搭載可能な作業機台6を移動レール4,5方向へスライド可能に設けてハウス内野菜苗植付装置を構成した。
【0006】
この構成で、野菜苗植付機7等を搭載した作業機台6を移動レール4,5に固定してガイドレール2,3の方向に移動レール4,5を移動することで畝条Uに沿った移動が可能で、移動レール4,5に沿って作業機台6をスライドすることで作業機台6が隣の畝条Uに移動することになり、結局野菜苗植付機7等を搭載した作業機台6がハウス内の任意位置へ移動可能になって、ハウス1内の畝条U全体へ苗を植え付けることが出来る。
【0007】
請求項2に記載の発明は、ハウス1内の地面に形成する複数の畝条U,Uの最外側に畝条Uに沿って端から端まで二本のガイドレール2,3を設けると共に両ガイドレール2,3に掛け渡して畝条U方向へ移動可能に移動レール4,5を支持し、この移動レール4,5に野菜苗植付機7等を搭載可能な作業機台6を移動レール4,5方向へスライド可能に設けて、作業機台6が畝条Uの上面から外れた位置で野菜苗植付機7へ苗を供給し、その後に作業機台6を畝条U上に移動して野菜苗植付機7を植え付け作動させるようにするハウス内の野菜苗移植方法とした。
【0008】
この野菜苗移植方法で、作業者がハウス1内を動き回ることなく、畝条Uの側部を畝条Uに沿って直線的に移動しながら楽に苗の移植作業を行なえる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明では、ハウス1内の側部に設けるガイドレール2,3とそのガイドレール2,3に掛け渡す移動レール4,5を設け、この移動レール4,5にスライド可能に支持した作業機台6に野菜苗植付機7等を搭載する構成であるために、ハウス1を補強したり野菜苗植付機7を吊り下げ移動する強固な構築部材を設けたりする必要が無く、全体の設備として安く構成できる。
【0010】
請求項1に記載の発明では、作業者が畝条Uから外れた位置を畝条Uに沿って直線的に移動しながら苗の植え付け作業を行なえるので、従来よりも作業が楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施例を、以下に説明する。この説明で畝条Uの長手方向を前後、直交方向を左右という。
【0012】
ハウス1内に二つの畝条U,Uを形成し、この畝条U,Uの外側に沿ってハウス1の内側に接近して畝条Uの上面よりやや高い位置に杆状のガイドレール2,3を前後方向へ設ける。
【0013】
この左右ガイドレール2,3に前後二本の杆状移動レール4,5をスライド可能に掛け渡し、畝条Uの左右幅と略同幅の作業機台6を移動レール4,5に左右スライド可能に搭載している。前後のレール4,5の間隔は、搭載する作業機台6の前後幅によって変更可能である。
【0014】
作業機台6には、左右一列にポット苗を受け入れる植付カップ20を設けた苗植付装置7を搭載している。苗植付装置7の詳細構造は省略しているが、待機の上側位置にある植付カップ20がボタン(図示省略)を押すと降下して畝面に苗を植え込み、その後上昇して待機位置に戻る動作を行う。
【0015】
苗の植付作業は、作業機台6にポット苗のトレイ10を載せて、作業者が左右の畝条U,Uの間に位置して、トレイ10からポット苗を取り出して植付カップ20に投入し、全ての植付カップ20がポット苗で満たされると作業機台6を一方の畝条Uの真上に移動し苗植付装置7のボタンを押す。すると、植付カップ20が降下してポット苗の植付を行う。再び作業機台6を左右の畝条U,Uの間に戻して植付カップ20への苗供給を行い、作業機台6を他方の畝条Uの真上に移動し苗植付装置7のボタンを押し苗の植付を行う。このような植付作業で左右の畝条U,Uに苗の植付が終わると、苗の畝間隔分だけ移動レール4,5を前進させ、前記と同じように左右の畝条U,Uへの植付作業を繰り返す。
【0016】
なお、前記の苗植付は手動であるが、作業者が一旦植付カップ20への苗供給が終了すると、作業機台6が自動で畝条U上に移動し植付カップ20が自動で降下して苗の植付を行い、作業者が待機している位置へ復帰するように自動制御しても良い。また、左右の畝条Uに種類の違う野菜苗を植え付ける場合に、作業機台6に搭載した一種類の苗トレイの苗を片側の畝条Uに集中して植えつける場合には移動範囲切換えボタンを押すことで片側の畝条Uのみを往復移動し植付を行うように出来る。
【0017】
畝条Uが二列の場合には、畝条Uの終端まで移動レール4,5を移動するとハウス1内での苗植付作業が終了するが、畝条U,Uが二列以上ある場合には、作業機台6を移動レール4,5に沿って横の未植付畝条U,Uに移動し、前記と同じ植付作業を繰り返す。
【0018】
作業機台6は、苗の植付作業だけでなく、図2に示すごとく、水や薬液のタンク8を作業機台6に載せてノズル9から水や薬剤を散布する管理作業にも使う。なお、この管理作業は、水や薬液のタンク8を左右の畝条U,Uの中間位置に設け、左右の畝条U,U上に配置するノズル9へ水や薬剤を供給して散布する構成で行うようにすることもある。この場合には複数のノズルを設けたノズル管を左右のガイドレール2,3に支架してタンク8と共に前後へ移動するようにする。この散布作業ではノズルの開閉を行う自動弁と苗の存在を感知するセンサを設けて、苗の無い位置ではノズルからの散布を停止するようにする。
【0019】
また、図3に示す如く、収穫容器15を作業機台6に載せて収穫作業で使用する場合もある。
図4と図5は、苗植付装置7で植え付けた苗19が浮き上がらないようにする構造で、作業機台6の底部に押さえ杆11,12と鎮圧輪13,14を設けている。押さえ杆11,12は取付部から押え部11a,12aに向けて下り傾斜しながら押え部11a,12aで苗19を両側から挟み込むみながら押し下げるように伸ばし、先端を地面に差し込まないように少し浮き上がらせている。
【0020】
図6と図7は、押さえ杆11,12の形状を変更した実施例で、取付部から押え部11a,12aに向けてループ状に湾曲させた形状としている。
苗植付装置7で苗を畝状Uに植えた後に作業機台6を横移動すると、まず、押さえ杆11,12がポット苗19のポット状土部を上から地面に押し込み、さらに鎮圧輪13,14でポット苗19の周囲の地面を踏み固める。
【0021】
図8と図9は、鎮圧輪13,14の対向外周を柔らかいスポンジローラ13a,14aで構成し、内側に嵌め込む高分子吸収体13b,14bからスポンジローラ13a,14aに水分を補給するようにしている。また、スポンジローラ13a,14aの上側に設ける給水管17,18からスポンジローラ13a,14aへ水を供給するようにしても良い。この鎮圧輪13,14でポット苗19を押さえると、スポンジローラ13a,14aがポット苗19の葉部を押さえ込むが水分を含み柔らかいので葉部を傷つけなく、レタス苗等の植付に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例を示すハウス内の斜視図である。
【図2】一部の斜視図である。
【図3】一部の斜視図である。
【図4】一部の拡大斜視図である。
【図5】一部の拡大正面図である。
【図6】一部の拡大斜視図である。
【図7】一部の拡大正面図である。
【図8】一部の拡大斜視図である。
【図9】一部の拡大正面図である。
【符号の説明】
【0023】
U 畝条
1 ハウス
2,3 ガイドレール
4,5 移動レール
6 作業機台
7 野菜苗植付機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウス(1)内の地面に形成する複数の畝条(U),(U)の最外側に畝条に沿って端から端まで二本のガイドレール(2),(3)を設けると共に両ガイドレール(2),(3)に掛け渡して畝条(U)方向へ移動可能に移動レール(4),(5)を支持し、この移動レール(4),(5)に野菜苗植付機7等を搭載可能な作業機台(6)を移動レール(4),(5)方向へスライド可能に設けてなるハウス内野菜苗植付装置。
【請求項2】
ハウス(1)内の地面に形成する複数の畝条(U),(U)の最外側に畝条に沿って端から端まで二本のガイドレール(2),(3)を設けると共に両ガイドレール(2),(3)に掛け渡して畝条(U)方向へ移動可能に移動レール(4),(5)を支持し、この移動レール(4),(5)に野菜苗植付機7等を搭載可能な作業機台(6)を移動レール(4),(5)方向へスライド可能に設けて、作業機台(6)が畝条(U)の上側から外れた位置で野菜苗植付機(7)へ苗を供給し、その後に作業機台(6)を畝条(U)上に移動して野菜苗植付機(7)を植え付け作動させるハウス内の野菜苗移植方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−261326(P2009−261326A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115517(P2008−115517)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】