説明

ハナビラタケの菌核を含有する食品

【課題】真菌類や細菌類の汚染が極めて少なく生食又はこれに近い調理による食品利用が可能なハナビラタケ、キクラゲ、シロキクラゲ、アラゲキクラゲを含む食品を提供する。
【解決手段】ハナビラタケ、キクラゲ、シロキクラゲ、アラゲキクラゲの菌核を含むことを特徴とする食品類とする。食品類とは、食品組成物又は飲料又は健康食品またはペット用健康食品を含む。なお、菌核とは菌糸体から分化した菌糸の塊であり、胞子が存在しない点で子実体と区別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用茸の菌核を利用した食品に関する。より具体的には、特有の風味と食感を有し、雑菌の混入が非常に少ない、ハナビラタケ、キクラゲ、シロキクラゲ、アラゲキクラゲの菌核を含む食品組成物、健康食品、及びペット用健康食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茸類の中には薬理作用のあるものが存在することが古来より知られているが、近年、多糖類、特にβ−グルカン等の生理活性が注目されている。このような茸類の中で、β−グルカン含有量の高さや特有の風味・食感、外観の美しさといった理由から食用に適するハナビラタケが注目されており、特開2004−290159号公報に佃煮の原料としての利用が開示されているなど食材として利用される他、特開2004−290157号公報に開示されているようにその成分を溶媒で抽出して健康食品等に利用することも行われている。また、同様に特有の風味・食感を有するキクラゲ、シロキクラゲ、アラゲキクラゲは、中華料理を中心として健康的な食材として古くから利用されている。
【0003】
しかし、ハナビラタケ、キクラゲ、シロキクラゲ、アラゲキクラゲ(以下、「ハナビラタケ等」という)は多湿条件で栽培され、しかもその子実体は花弁状で薄い形態であり表面積が極めて大きいため、子実体の表面に酵母・カビなど真菌類や細菌類の汚染を発生しやすく、食品として使用する際に問題となっていた。もちろん、真菌類や細菌類の汚染を生じやすくても十分な加熱調理等によって食品としての利用は可能であり、前記特開2004−290159号公報に開示されている佃煮等はその代表例である。しかし、ハナビラタケ等、特にハナビラタケの子実体は厚みが薄く面積が広い形態であって長時間の加熱調理や加工を行うと食感や風味が失われる傾向がある為、生食又はこれに近い調理による食用利用を可能とすることが求められていた。
【0004】
また、ハナビラタケ等の子実体は薄く面積が広い形態であり、特徴的な美感を有するのであるが、その形状のために食品としての利用範囲が限られてしまう。つまり、薄い子実体形状をそのまま利用する、または細かく粉砕(いわゆる「みじん切り」状態)して利用することは可能であるが、厚みがあるほうがより好ましいと思われる食品形態(例えば、厚いハナビラタケ等のスライスを油で焼いた「ハナビラタケ等のステーキ」のようなもの)への適用は不可能であった。
【0005】
また、ハナビラタケ等の栽培は例えば特開平11−56098号公報に開示された菌床を用いて行われるが、菌床の重量あたりの子実体の収量はハナビラタケ等の生産コストを大きく左右する。従って、菌床の重量あたりの収量をできる限り多くしなければならないが、さまざまな努力がなされているもののいまだ十分満足できる収量を得るには至っていない。
【0006】
菌床の重量あたりの収量を多くするための方策として、特開平10−113168号公報にアガリクス茸について開示されているように、菌床を豆類、穀物類によって調整することで、菌床と菌床に培養された菌糸体の両者を加工食品として利用することも試みられている。しかし、ハナビラタケ等への適用例は無く、加えて生食又はこれに近い調理による食品利用を行えるものでもない。
【0007】
また、これに近い発明として、特開平2006−006265号公報に記載の発明がある。これは、アガリクス茸と他の食用茸類を特定の含水量で育成することで、乾燥した食用茸の菌糸塊、菌核を育成し、これを粉末、粒状、錠剤、またはカプセル詰めした加工食品に関する発明である。しかし、やはりハナビラタケ等への適用例は無く、加えて生食又はこれに近い調理による食品利用を行えるものでもない。
【0008】
ところで、子実体や菌糸塊以外の茸類の利用に関して、限られた種類の茸類についてではあるが特開2000−092986号公報や特開2006−008645号公報に開示されている通り、菌核を利用することが開示されている。前者には漢方薬原料としてブクリョウの菌核の人工栽培方法が開示されており、後者にはカバノアナタケの菌核等から有効物質の抽出を行う方法が開示されている。しかし、ブクリョウやカバノアナタケの菌核はその固さ、風味の点で食用に適したものではなく、前記の通り漢方薬原料として利用されてきたにすぎない。
【特許文献1】特開2004−290159号公報
【特許文献2】特開2004−290157号公報
【特許文献3】特開平11−56098号公報
【特許文献4】特開平10−113168号公報
【特許文献5】特開2006−006265号公報
【特許文献6】特開2000−092986号公報
【特許文献7】特開2006−008645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した問題点を解決しようとしてなされたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、真菌類や細菌類の汚染が極めて少なく生食又はこれに近い調理による食品利用が可能なハナビラタケ等を提供することである。
【0010】
また、より厚い塊状で、用途に応じてさまざまな食品形態に加工・適用できるハナビラタケ等を提供することも本発明は解決しようとする課題としている。
【0011】
さらに、菌床の重量あたりの収量を増やすことにより生産コストの低いハナビラタケ等を供給することをも、本発明は解決しようとする課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)以上説明した課題を解決するため、本発明は、ハナビラタケ等の菌核を含むことを特徴とする食品類としている。
【0013】
本発明におけるハナビラタケ等の菌核とは、主に人工栽培によって得られるものであるが、子実体や菌糸体とは全く異なる形態である。これは、菌糸体から分化した菌糸の塊であり胞子が存在しない点で子実体と区別される。さらに、本発明におけるハナビラタケ等の菌核は収穫時、即ち、切断や粉砕などの加工前の体積が100cm以上のものであり、傘や襞、肢、袋状・貝殻状・花弁状等の子実体に特徴的な構造を持たない。また、菌核から子実体が発生し、菌核と子実体が一体化した形態をとることがあるが、本発明におけるハナビラタケ等の菌核とは、前記菌核が収穫時の全重量(すなわち子実体と菌核の合計重量)の20乃至100重量%を占めるものをいう。
【0014】
前記の通り、ハナビラタケ等の菌核は養分を蓄えた菌糸の塊であり、子実体のように厚みが薄く面積が広い形状ではなく塊状である。従って、真菌類や細菌類といった雑菌の付着・混入が起こりにくい。加えて、菌核は菌糸から分化した子実体の発生する前段階の形態であり、したがって菌核を収穫するということは、子実体を発生させる工程を経ずに収穫を行うことになる。よって、より無菌的な栽培工程となり、食品素材としての安全性や品質保持の面で極めて有利である。このため、生食またはこれに近い調理による食品利用が可能である。
【0015】
なお、食品利用が可能であることと、食品利用に適することは明らかに同義ではない。例えば、茸類の菌核を直接食品利用する例は前記のような漢方薬原料としての利用のような例外を除けば報告が無いが、これはブクリョウやカバノアナタケの菌核がその固さや風味の点で、食品利用には適さないからであると想像される。しかし、本発明の発明者の研究によれば、ハナビラタケ等の菌核はその固さや風味といった食品利用上不可欠な性質を備えており、食品利用に適していることが明らかになった。中でも、特にハナビラタケの菌核には後に説明するとおり、その子実体よりも呈味物質が多く含まれているなどの性質を有すことから子実体以上に食品利用に適している事実を見出し、本発明に到達した。
【0016】
ここで、ハナビラタケの菌核及びハナビラタケの子実体について、一般生菌数及び真菌類の検査をした結果を表1に示す。ハナビラタケの菌核に付着している雑菌類は子実体に付着している雑菌類として圧倒的に少ないことが検査結果にはっきりとあらわれている。
【0017】
【表1】

【0018】
また、ハナビラタケ等の菌核は前記の通り、その子実体のように厚みが薄く面積が広い形状ではなく塊状である。従って、利用用途に応じてさまざまな食品形態に利用が可能である。例えば、ハナビラタケ等の菌核を厚くスライスして油で焼いた「ハナビラタケ等のステーキ」のような食品形態が実現可能である。
【0019】
また、ハナビラタケの菌核はその子実体以上に良好な風味を有している。ここで、ハナビラタケの菌核に含まれる有機酸及び遊離アミノ酸を分析した結果をそれぞれ表2、表3に示す。分析結果から明らかな通り、ハナビラタケの菌核には、その子実体以上のグルタミン酸等の遊離アミノ酸やコハク酸、リンゴ酸、クエン酸等の呈味性物質が含まれており、これらの成分がハナビラタケの菌核に子実体以上の風味を与えていると考えられる。
【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
さらに、ハナビラタケ等、特にハナビラタケの子実体はその成長スピードが遅く、子実体形成時の製造コストが高くなるという問題を有する。一方、ハナビラタケ等の菌核は子実体を発生させる工程を経ずに収穫することやそもそも菌床の重量あたりの収量がより大きくなる性質があることから製造コストを低くでき、より安価に市場に提供することが可能である。
【0023】
従って、上記説明した本発明に係るハナビラタケ等の菌核を含むことを特徴とする食品は、上記効果をそのまま享受したものとなる。ここで食品とは、食品としての利用を意図したハナビラタケ等の菌核そのものやこれを利用した食品、もしくは、原材料の一部にハナビラタケ等の菌核を含む食品が含まれる。
【0024】
本発明において食品とは食事として供される食物のみならず、嗜好品として食される食物や風味材料をも含むことはいうまでも無い。本発明に係るハナビラタケ等の菌核を含む食品とは、好ましくは、ハナビラタケ等の菌核をそのまま食用として利用したり、ブロック形状やスライス形状に切り分けたり、粉砕したり、さらにはこれを素材として各種加工食品としたものである。
【0025】
(2)また、本発明は好ましくは、前記食品類としてハナビラタケ等の菌核を含む食品組成物または飲料としたことを特徴としている。
【0026】
前記の通り、ハナビラタケ等の菌核は真菌類や細菌類の汚染を受けにくく、しかもより低いコストで製造できるという特徴がある。従って、ハナビラタケ等の子実体そのものの特有な美感を必要としない加工食品や風味材料等の食品組成物や飲料をより安価に、しかも安全なものを製造できるという効果が得られる。
【0027】
(3)さらに、本発明は好ましくは、前記食品類として健康食品またはペット用健康食品とすることもできる。
【0028】
ここでハナビラタケの菌核の成分分析した結果を表4に示す。ハナビラタケの菌核には、β−グルカンが37.7重量%含まれ、これはその子実体にほぼ匹敵する高い含有量である。β−グルカンは免疫賦活効果を有する機能性成分として知られ、茸類の主要有効成分として有名である。ハナビラタケは、他の茸と比べてもβ−グルカン含有量が非常に多いことで知られ、注目を集めている。即ち、ハナビラタケの菌核はハナビラタケの子実体と同様、多量のβ−グルカンを含むことが判明し、健康素材として有用であることが分かった。
【0029】
【表4】

【0030】
従って、しばしば粉末状や顆粒状等に加工され、よってハナビラタケ等の子実体そのものの特有な美感を要しない健康食品やペット用健康食品に適用することで、ハナビラタケ等の子実体を原料とした場合以上の効果の期待できるものをより安価に製造できるという効果が得られる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明に係る食品では、次のような効果を得られる。
【0032】
(1)ハナビラタケ等の菌核は真菌類や細菌類の汚染が極めて少ない為、生食又はこれに近い調理による食品利用が可能である。また、良好な風味と食感を有する塊状であるため、ブロック状やスライス状等、ハナビラタケ等の子実体では実現し得ない形態の食品を実現することができる。
【0033】
(2)ハナビラタケ等の菌核は子実体よりも菌床の重量当たりの収量が多いために、より低いコストで製造することが可能で、よってこれを含む食品組成物や飲料をより安価に市場に提供することができる。
【0034】
(3)ハナビラタケ等の菌核には、その子実体とほぼ同等のβ−グルカンを含むと共に、その子実体以上の呈味性物質が含まれている。しかも低カロリーであるなどの現代食生活上優れた特徴を有し、よって優れた健康食品やペット用健康食品を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明に係る食品は、上記特徴を有するハナビラタケ等の菌核を組成物として含有するものであり、好ましくは、ハナビラタケ等の菌核を適当な大きさの角形や球形、スライス形に成形し、その成形品を用いて各種調理・加工食品を提供する。また、ハナビラタケ等の菌核を粉砕し、健康食品や調味料、食品組成物、飲料、ペットフードの素材として利用する。具体的な用途として、例えば下記のような用途を想定できるがこれに限られるものではない。以下、これらのうちいくつかについて実施例と官能評価結果について説明する。
1.ヨーグルトなどの乳製品の具材。
2.スープ、味噌汁、吸い物、シチューなどの汁物食品の具材。
3.蒲鉾などの練り製品の材料。
4.豆腐、白和えなどの大豆関連食品の具材。
5.オリーブオイル漬け、バター焼きなどの油関連調理・加工食品。
6.パウンドケーキ、クッキーなどの菓子類の具材。
7.クリームソース、ドレッシング、天然旨味調味料などの調味料及び香辛料。
8.素麺、パスタなどの麺類の材料。
9.リキュール酒、お茶などの飲料・酒類の材料。
10.しば漬け、奈良漬などの漬物の材料。
11.炊き込みご飯、リゾット、雑炊などの穀類食品、ご飯ものの具材。
12.寒天など多糖類やゼラチンなど粘性物質を使用したゼリー様食品及びジャム類の材料。
13.佃煮など煮物の材料。
14.乾燥品、水煮缶詰、など缶詰・瓶詰・レトルトパックなど真空処理や加熱処理、乾燥処理による保存加工食品の材料。
【実施例1】
【0036】
本実施例は、ハナビラタケ菌核を含むヨーグルトに関するものである。ハナビラタケ菌核を一辺約0.5cmの角形にカットし、一晩液糖に漬け込む。液糖に漬け込んだハナビラタケ菌核2gをプレーンヨーグルト約100gと混ぜ合わせる。以上のようにしてハナビラタケ菌核を含むヨーグルトを作成した。
【0037】
本食品について、15名からなる官能評価パネルによる官能評価を行った。対象にはプレーンヨーグルトにハナビラタケ菌核を加えず液糖のみを添加したものを用いた。評価結果を表5に示す。表中の数値はより好ましいとして選択した人数を示しているが、本発明にかかるハナビラタケ菌核を含むヨーグルトが総合評価として好まれた。
【表5】

【0038】
なお、本実施例ではハナビラタケ菌核は加熱殺菌等の工程を経ずに食用に供しているが、これはハナビラタケ菌核が極めて雑菌の汚染が少なく安全性が高いことにより実現できているものである。
【実施例2】
【0039】
本実施例は、ハナビラタケ菌核を含むポタージュスープに関するものである。ハナビラタケ菌核を角切りにし、具材としてジャガイモのポタージュスープに加えて煮込む。以上のようにしてハナビラタケ菌核を具材として含むポタージュスープを作成した。
【0040】
本食品について、15名からなる官能評価パネルによる官能評価を行った。対象にはジャガイモのポタージュスープにハナビラタケ菌核を添加しないものを用いた。評価結果を表6に示す。表中の数値はより好ましいとして選択した人数を示しているが、本発明にかかるハナビラタケ菌核を含むジャガイモのポタージュスープが総合評価として好まれた。
【表6】

【0041】
なお、本実施例ではポタージュスープの具材としてハナビラタケ菌核を角切りにしたものを使用している。角切りとしたことで、特有の食感がより顕著となり、本発明に係るポタージュスープの食感が好ましいと評価されたと想像される。一方、ハナビラタケ子実体は厚みが薄い形状であり角切りの具材にはなりえない。したがって、本結果はハナビラタケ菌核が塊状であるという特徴によって得られたものと考えられるのである。
【実施例3】
【0042】
本実施例は、ハナビラタケ菌核を含む蒲鉾に関するものである。ハナビラタケ菌核をみじん切りに刻み、刻んだ菌核を蒲鉾原料の1重量%練り込み、その後常法によって成形加工した。以上のようにしてハナビラタケ菌核を蒲鉾を作成した。
【0043】
本食品について、15名からなる官能評価パネルによる官能評価を行った。対象には蒲鉾にハナビラタケ菌核を添加しないものを用いた。評価結果を表7に示す。表中の数値はより好ましいとして選択した人数を示しているが、本発明にかかるハナビラタケ菌核を含む蒲鉾が総合評価として好まれた。
【表7】

【0044】
なお、本実施例ではハナビラタケ菌核はみじん切りにされ、かつ蒲鉾の原材料に練りこまれている。このため、本実施例では消費者にとってハナビラタケの視覚的な美しさはほとんど視認されることがない。当然に、ハナビラタケの風味等が重要なのであり、このような場合はハナビラタケの子実体よりも風味に優れ、しかもより安価に製造できるハナビラタケの菌核を使用する方が合理的である。つまり、本発明に係る蒲鉾が風味及び製造コストの両観点においてよりすぐれた食品であるといえる。
【実施例4】
【0045】
本実施例は、ハナビラタケ菌核のオイル漬けに関するものである。ハナビラタケ菌核をみじん切りに刻み、刻んだ菌核の大さじ3杯分を、オリーブオイル100cc及び塩一つまみとともに鍋に入れてかき混ぜながら弱火にて泡が立たないくらいの低温で温める。冷ました後、冷蔵保存し、ハナビラタケ菌核オイルを作成した。
【0046】
本食品について、15名からなる官能評価パネルによる官能評価を行った。対象にはオリーブオイルにハナビラタケ菌核を添加しないものを用いた。評価結果を表8に示す。表中の数値はより好ましいとして選択した人数を示しているが、本発明にかかるハナビラタケ菌核を含むオイルが総合評価として好まれた。
【表8】

【0047】
なお、本実施例ではハナビラタケ菌核はオリーブオイルへの風味付けに使用されている。このため、実施例3の場合以上に、消費者にとってハナビラタケの視覚的な美しさは全く視認されない。したがって、実施例3の場合と同じく、ハナビラタケの子実体よりも風味に優れ、しかもより安価に製造できるハナビラタケの菌核を使用する方が合理的である。つまり、本発明に係るハナビラタケ菌核のオイル漬けが風味及び製造コストの両観点においてよりすぐれた食品であるといえる。
【実施例5】
【0048】
本実施例は、ハナビラタケ菌核を具材として用いたステーキソースに関するものである。ハナビラタケ菌核をスライス形及びみじん切りにし、これをもとに常法によりクリームソースを作る。このようにして得たハナビラタケ菌核入りクリームソースを、ステーキ用の牛フィレ肉を焼いたものにかけて食品を作成した。
【0049】
本食品について、15名からなる官能評価パネルによる官能評価を行った。対象にはハナビラタケ菌核の代わりにマッシュルームをもとに作成したクリームソースを牛フィレ肉を焼いたものにかけたものを用いた。評価結果を表9に示す。表中の数値はより好ましいとして選択した人数を示しているが、本発明にかかるハナビラタケ菌核をもとに作成したクリームソースを牛フィレ肉を焼いたものにかけた食品が総合評価として好まれた。
【表9】

【0050】
なお、本実施例ではクリームソースの具材としてハナビラタケ菌核をみじん切りにしたものに加えてスライス形にしたものを使用している。スライス形状としたことで、特有の食感がより顕著となり、本発明に係るクリームソースの食感が好ましいと評価されたと想像される。一方、ハナビラタケ子実体は厚みが薄い形状でありスライス形の具材として使用しやすいものではない。また、みじん切りにした具材部分については消費者にとってハナビラタケの視覚的な美しさはほとんど視認されない。したがって、ハナビラタケの子実体よりも風味に優れ、しかもより安価に製造できるハナビラタケの菌核を使用する方が合理的であり、本発明に係るハナビラタケ菌核を具材として用いたステーキソースが食感、風味及び製造コストの観点においてよりすぐれた食品であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかるハナビラタケ等の菌核を含む食品は、真菌類や細菌類の汚染の恐れが極めて少なく、優れた風味・食感を有し、免疫賦活効果を有する機能性成分として知られたβ−グルカン含有量がハナビラタケ等の子実体を用いた食品と同等であり、しかも生産コストが低いという優れた特徴を有し、産業上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用茸の菌核を含むことを特徴とする、食品類。
【請求項2】
前記食品類とは、食品組成物または飲料であることを特徴とする、請求項1に記載の食品類。
【請求項3】
前記食品類とは、健康食品またはペット用健康食品であることを特徴とする、請求項1に記載の食品類。
【請求項4】
前記食用茸とは、ハナビラタケ、キクラゲ、シロキクラゲ、アラゲキクラゲのいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1の請求項に記載の食品類。

【公開番号】特開2009−50192(P2009−50192A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219140(P2007−219140)
【出願日】平成19年8月26日(2007.8.26)
【出願人】(592048420)
【出願人】(307029098)
【Fターム(参考)】