説明

ハニカム構造体およびハニカム構造体の製造方法

【課題】本発明では、ハニカムユニットに体積変化が生じても、ハニカムユニット間に適正な結束力が維持されるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体であって、前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、各ハニカムユニットの間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在されていることを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを処理するハニカム構造体およびハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガスの浄化に関しては、多くの技術が開発されているが、交通量の増大もあって、まだ十分な排ガス対策がとられているとは言い難い。日本国内においても、世界的にも自動車排ガス規制は、さらに強化されていく方向にある。その中でも、ディーゼル排ガス中のNOx規制については、非常に厳しくなってきている。従来は、エンジンの燃焼システムの制御によってNOx低減を図ってきたが、それだけでは対応しきれなくなってきている。このような課題に対応するディーゼルエンジンのNOx浄化システムとして、尿素水添加によるNOx還元システム(尿素SCRシステムと呼ばれている。)が提案されている。また、このシステムに用いられる触媒担体として、ハニカム構造体が知られている。
【0003】
このハニカム構造体は、例えば、長手方向に沿って、該ハニカム構造体の一方の端面から他方の端面まで延伸する複数のセル(貫通孔)を有し、これらのセルは、触媒が担持されたセル壁により、相互に区画されている。従って、このようなハニカム構造体に排ガスを流通させた場合、セル壁に担持された触媒によって、排ガスに含まれるNOxが改質されるため、排ガスを処理することができる。
【0004】
一般に、このようなハニカム構造体は、コージェライトで構成され、そのセル壁には、触媒として、例えばゼオライト(鉄または銅等でイオン交換されたもの)が担持される。その他、ハニカム構造体自身をゼオライトで構成することが提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、触媒担体に使用するためのハニカム構造体として、例えば、接着層を介して、ハニカムユニットを所定の数だけ結束させた後、この結束体を所望の形状に切削加工し、さらに切削加工された外周面にコート層を設置したハニカム構造体が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−171539号公報
【特許文献2】国際公開第2005/1063653号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに、近年、NOx浄化率を高くすることができるハニカム構造体が求められている。そのため、NOx浄化率をより一層高めるため、ハニカム構造体に、ゼオライトの類似体であるアルミノリン酸塩のAlイオンおよび/またはPイオンをSi4+イオンで置換した、シリコアルミノリン酸塩(SAPO:silico−aluminophosphate)と呼ばれる物質を使用することが考えられる。
【0008】
このようなSAPOを含むハニカム構造体は、良好なNOx浄化特性を示すと考えられる。しかしながら、SAPOは、一般に、モレキュラーシーブ用の材料として使用できることからも明らかなように、吸湿性が高く、多量の水分を吸収する性質を有する。また、SAPOは、水分の吸着または脱離により、その体積が大きく変化する。
【0009】
従って、SAPOを含むハニカムユニットを結束したハニカム構造体を実際に作製して、このハニカム構造体を大気中に放置しておくと、ハニカム構造体を構成する各ハニカムユニットが収縮してしまうことがわかった。また、このようなハニカムユニットの体積変化が顕著になると、各ハニカムユニットを結束している接着層にクラックが生じてしまうという問題があることがわかった。接着層のクラックが顕著になると、接着層によるハニカムユニット間の結束力が失われ、排ガスの圧力によって、一部のハニカムユニットが抜け落ちてしてしまう可能性が生じる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、ハニカムユニットに体積変化が生じても、ハニカムユニット間に適正な結束力が維持されるハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、
長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体であって、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
各ハニカムユニットの間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在されていることを特徴とするハニカム構造体が提供される。
【0012】
本発明によるハニカム構造体において、前記マット材に含まれる第一の無機繊維は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、およびムライトからなる群から選定された、少なくとも一つを含んでも良い。
【0013】
また本発明によるハニカム構造体において、前記マット材は、隙間嵩密度(GBD)が0.2g/cm〜0.6g/cmの範囲であっても良い。
【0014】
また本発明によるハニカム構造体において、前記マット材は、面圧が0.3MPa〜3.5MPaの範囲であっても良い。
【0015】
また本発明によるハニカム構造体において、前記リン酸塩系のゼオライトは、SAPO、MeAPO、およびMeAPSOからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0016】
また特に、前記SAPOは、SAPO−5、SAPO−11、およびSAPO−34からなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0017】
また本発明によるハニカム構造体において、前記リン酸塩系のゼオライトは、イオン交換されていても良い。
【0018】
また本発明によるハニカム構造体において、
前記第二の無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、およびベーマイトの群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0019】
また本発明によるハニカム構造体において、前記ハニカムユニットは、さらに第二の無機繊維または無機フレーク状物質を含んでも良い。
【0020】
前記第二の無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムの群から選定された少なくとも一つであっても良く、前記無機フレーク状物質は、ガラスフレーク、雲母、アルミナフレーク、シリカフレーク、および酸化亜鉛フレークから選定された少なくとも一つであっても良い。
【0021】
また本発明によるハニカム構造体において、さらに、結束されたハニカムユニットの外周面に、第一の無機繊維を含むマット材が設置されても良い。
【0022】
また、本発明では、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
当該方法は、
(a)所定の形状の複数のハニカムユニット成形体を作製するステップと、
(b)前記ハニカムユニット成形体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット成形体の組立体を形成するステップであって、各ハニカムユニット成形体同士の間に、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップと、
(c)前記ハニカムユニット成形体の組立体を焼成するステップと、
を有するハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0023】
ここで、本発明によるハニカム構造体の製造方法において、前記ステップ(b)は、さらに、前記ハニカムユニット成形体の組立体の外周面に、第一の無機繊維を含むマット材を設置するステップを有しても良い。

また本発明によるハニカム構造体の製造方法は、
長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
当該方法は、
(a)所定の形状の複数のハニカムユニット成形体を作製するステップと、
(b)前記ステップ(a)の後、前記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製するステップと、
(c)前記ステップ(b)の後、前記ハニカム焼成体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット焼成体を形成するステップであって、各ハニカムユニット焼成体同士の間に、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップと、
を有しても良い。
【0024】
この場合、前記ステップ(c)は、さらに、前記ハニカム焼成体の組立体の外周面に、第一の無機繊維を含むマット材を設置するステップを有しても良い。
【0025】
また本発明によるハニカム構造体の製造方法において、前記リン酸塩系のゼオライトは、SAPO、MeAPO、およびMeAPSOからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0026】
また、前記SAPOは、SAPO−5、SAPO−11、およびSAPO−34からなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0027】
また、本発明では、前述のいずれか一つに記載の製造方法で製造されたハニカム構造体が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、ハニカム構造体を構成するハニカムユニットに体積変化が生じても、ハニカムユニット間に適正な結束力が維持されるハニカム構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】従来のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの材料として、SAPOを使用した場合の断面拡大写真である。
【図3】本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図4】図3のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明に係る面圧測定装置を概略的に示した図である。
【図6】本発明のハニカム構造体を作製する際のフロー図の一例を概略的に示した図である。
【図7】本発明の実施例1に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置の断面概略図である。
【図8】本発明の実施例1に係るハニカム構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0031】
まず、図1を参照して、従来のハニカム構造体において、ハニカムユニットを構成する無機粒子として、SAPO(シリコアルミノリン酸塩)を使用した場合の問題点について、簡単に説明する。図1は、従来のハニカム構造体の一例を概略的に示した図である。
【0032】
図1に示すように、従来のハニカム構造体1は、2つの端面11および15を有する。また、通常の場合、従来のハニカム構造体1の両端面を除く外周面には、コート層12が設置される。
【0033】
従来のハニカム構造体1は、柱状のセラミック製ハニカムユニット13を、接着層16を介して複数個(図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(図1の例では、円柱状)に沿って切削加工することにより構成される。
【0034】
各ハニカムユニット13は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル(貫通孔)と、該セルを区画するセル壁とを有する。従来のハニカム構造体において、接着層16に、クラックは発生しなかった。
【0035】
従来のハニカム構造体1を構成するハニカムユニットに含まれる無機粒子を、NOx浄化率を向上させるため、SAPO(シリコアルミノリン酸塩)に変更したハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体を構成するハニカムユニット23は、NOx浄化反応の触媒として機能するSAPO(シリコアルミノリン酸塩)を含む。従って、このハニカム構造体に、排ガスを流通させると、排ガス中のNOxは、SAPOによる触媒作用により浄化される。従って、このようなハニカム構造体は、高いNOx浄化率を示すNOx浄化用の触媒担体として使用することができると考えられる。
【0036】
しかしながら、このハニカム構造体を構成するハニカムユニット23に含まれるSAPOは、一般にモレキュラーシーブに使用できる材料であるので、吸湿性が高く、多量の水分を吸収する性質を有する。また、SAPOは、水分の吸着または脱離により、その体積が大きく変化することがわかった。
【0037】
従って、このSAPOを含むハニカムユニット23で構成されたハニカム構造体を大気中に放置しておくと、このハニカム構造体を構成する各ハニカムユニット23が収縮してしまう。また、このようなハニカムユニット23の体積変化が顕著になると、各ハニカムユニット23を結束している接着層26にクラックが生じたり、接着層26が崩壊してしまうという問題があることがわかった。接着層26のクラックまたは崩壊が顕著になると、隣接するハニカムユニット23同士の結束力が失われ、排ガスの圧力によって、一部のハニカムユニット23が抜け落ちてしてしまうという問題が生じ得る。
【0038】
図2には、従来のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの材料としてSAPO(シリコアルミノリン酸塩)を使用した場合の断面拡大写真を示す。
【0039】
図2において、中心から縦横に十字状に延びる太い白い部分が接着層26に相当する。また、その接着層26によって分割された左上、左下、右上、および右下の各部分は、SAPO(シリコアルミノリン酸塩)で構成された、別個のハニカムユニット23に相当し、図2には、各ハニカムユニット23のセル壁(細い白い部分)およびセル(黒い部分)が認められる。また、この図2から、ハニカムユニット23の吸湿による体積収縮により、接着層26には、横方向に延伸する複数のクラックが生じていることがわかる。
【0040】
この接着層26に生じるクラックは、ハニカムユニット23が水分を吸着または脱離することで体積変化を起こし、接着層26に応力が生じた場合に発生すると考えられる。すなわち、使用前、使用中、または使用後であっても、吸湿または乾燥した時にクラックが発生することがわかった。なお、図2の断面拡大写真は、ハニカム構造体の使用前に、ハニカムユニットが吸湿してクラックが発生したときの写真である。
【0041】
これに対して、本発明によるハニカム構造体は、
長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成され、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
各ハニカムユニットの間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在されていることを特徴とする。
【0042】
すなわち、本発明によるハニカム構造体では、各ハニカムユニットを結束する際に、従来のような接着層(接着材ペーストを乾燥、固化させたもの)による接着方式を利用しないという特徴がある。そのため、本発明によるハニカム構造体では、各ハニカムユニットが例えばSAPOを含んでおり、水分の吸着または脱離により、ハニカムユニットの体積が大きく変化した場合であっても、接着層にクラックが生じたり、接着層が破損したりすることを回避することができる。
【0043】
また、本発明によるハニカム構造体では、各ハニカムユニット同士の間に、第一の無機繊維で構成されたマット材が設置されるという特徴を有する。このようなマット材は、柔軟性(応力に対する追随性)を有するため、水分の吸着または脱離によりハニカムユニットの体積が大きく変化した場合であっても、マット材は、その体積変化に追随することができる。
【0044】
従って、本発明によるハニカム構造体では、ハニカムユニットの吸湿または乾燥により、その体積が大きく変化しても、各ハニカムユニット間に適正な結束力が維持される。また、これにより、排ガスの圧力により、ハニカムユニットが抜け落ちるという問題も回避することができる。
【0045】
次に、図3および図4を参照して、本発明によるハニカム構造体について、より具体的に説明する。
【0046】
図3には、本発明によるハニカム構造体を模式的に示す。また、図4には、図3に示したハニカム構造体の基本単位である、ハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0047】
図3に示すように、本発明のハニカム構造体100は、2つの端面110および115を有する。
【0048】
ハニカム構造体100は、例えば、図4に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、第一の無機繊維で構成されたマット材120を介して、複数個(図3の例では、縦横4列ずつ16個)配列させ、組立体135を構成した後、この組立体135の外周部を所定の形状(図3の例では、円柱状)に加工することにより構成される。
【0049】
なお、通常の場合、マット材120自身は、接着機能を有さないため、ハンドリングの際に、各ハニカムユニット13が相互に分離しないよう、各種対処を行っても良い。例えば、図3に示すように、組立体135の外周面に、第一の無機繊維で構成された外周用マット材150を巻き回して、この外周用マット材150を接着テープ等で固定することにより、各ハニカムユニット130を結束させても良い。あるいは、マット材120に接着剤を塗布しておき、これにより、各ハニカムユニット130同士を固定しても良い。また、マット材120を両面テープを介して各ハニカムユニット130同士を固定しても良い。また、マット材120を介した各ハニカムユニットを金属製(例えばステンレス鋼等)のリング、針金(ステンレス鋼)等で結束しても良い。外周用マット材150を巻き回して、金属製のリング、または針金等で固定しても良い。さらに、外周用マット材を巻き回して、金属管(シェル)にキャニングして固定しても良い。
【0050】
その他にも、ハンドリングの際に、各ハニカムユニット130が相互に分離しないような、様々な対処法が考えられることは明らかであろう。
【0051】
また、外周用マット材150は、端部に凹凸部があり、ハニカムユニットの組立体に外周用マット材を配置した際に、外周マット材の凹部と凸部が合うようになっている。外周用マット材の端部は、直線であっても良く、その他どのような形状であっても良い。
【0052】
図3に示すハニカム構造体は、マット材120を4個のハニカムユニット130間に介在させて、4個のハニカムユニットの集合体が4つ存在し、4つのハニカムユニット集合体の間に、3つのマット材120が介在した構成で作製されている。
【0053】
また、各ハニカムユニットとハニカムユニットの間に、一つのマット材120が存在するようにしても良い(図示しないが、図3の場合、24個のマット材が存在することになる)。すなわち、ハニカムユニット間に、マット材が介在していれば良く、介在のさせ方は、限定されず、ハニカムユニット間にマット材が存在しない空間があっても良い。
【0054】
図4に示すように、ハニカムユニット130は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル(貫通孔)121と、該セルを区画するセル壁123とを有する。セル121の長手方向(Z方向)に垂直な断面は、実質的に正方形状となっている。
【0055】
ハニカムユニット130は、NOx浄化反応の触媒として機能するSAPO等の、いわゆる「リン酸塩系のゼオライト」を含んでいる。
【0056】
ここで、「リン酸塩系のゼオライト」とは、アルミノリン酸塩(AlPO)に加えて、該アルミノリン酸塩(AlPO)のAlイオンおよび/またはPイオンの一部をSi4+イオンで置換したSAPO(silico−aluminophosphate)、アルミノリン酸塩(AlPO)のAl3+イオンの一部を金属カチオンMen+で置換したMeAPO、ならびにSAPOのSi4+イオンの一部を金属カチオンMen+で置換したMeAPSOを含む概念である。
【0057】
なお、SAPOは、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−34等であることが好ましい。また、SAPOは、Fe、Cu、Ni、Co、Zn、Mn、Ti、AgまたはVでイオン交換されたものであっても良い。また、MeAPOおよびMeAPSOの金属カチオンMen+は、例えば、Ti、Mg、Fe、Mn、Co、およびZn等のイオンであっても良く、同様にイオン交換されたものであっても良い。
【0058】
前述のように、SAPOのような「リン酸塩系のゼオライト」は、吸湿または乾燥により体積が変化する特性を有する。しかしながら、本発明では、各ハニカムユニット130同士は、従来のような接着層(接着材ペーストを乾燥、固化させたもの)で固定されてはいない。その代わり、本発明では、各ハニカムユニット130の間に、柔軟性(応力に対する追随性)を有するマット材120が設置されている。この特徴的な構成により、本発明では、水分の吸着または脱離によりハニカムユニット130の体積が大きく変化した場合であっても、各ハニカムユニット130間に、適正な結束力が維持される。従って、前述のような、従来の問題を回避することができる。
【0059】
マット材120、および存在する場合、外周用マット材150(以下、これらをまとめて単に、「マット材(120、150)」と称する)は、第一の無機繊維の他、第一の有機バインダを有する。
【0060】
マット材に含まれる第一の無機繊維は、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、またはムライト等の繊維が好ましい。また、マット材に含まれる第一の有機バインダには、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂などが使用でき、例えばアクリル系(ACM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)樹脂等が好ましい。マット材は、さらに、第一の無機バインダを含んでも良く、無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル等が好ましい。
【0061】
このようなマット材120、150は、例えば、ニードル処理法、抄造法等のプロセスで作製されていても良い。ただし、第一の無機繊維からなるマット材の製作方法は、当業者には広く知られているため、ここでは、これ以上説明しない。
【0062】
なおマット材120、150の面圧は、0.3〜3.5MPaの範囲であることが好ましい。
【0063】
ここで、マット材120、150の「面圧」は、以下の方法により測定された値を意味する。
【0064】
図5には、本発明に係るマット材120の「面圧」を測定するための面圧測定装置1100を示す。面圧測定装置1100は、略水平な試料保持台1120を備える門型の支柱1130で構成される。この装置1100の中央(試料保持台1120の上部)には、荷重計測機能を備え、上下に昇降するクロスヘッド1140が設けられており、このクロスヘッド1140の下面側には、ステンレス鋼製の上部押さえ板1150が設置されている。この上部押さえ板1150には、変位計1160が取り付けられている。また試料保持台1120上には、ステンレス鋼製の下部受け板1170が設置されている。試験の際には、下部受け1170の内表面に、重量が既知のマット材120のサンプル1180が設置される。
【0065】
このような装置1100を用いて以下の方法により、面圧測定を行う。まずクロスヘッド1140は、サンプル1180と上部押さえ1150との間に僅かの隙間しか生じなくなくなる程度まで、予め下降させておく。この状態で、クロスヘッド1140を1mm/分の速度で下降させ、サンプル1180を圧縮し、サンプル1180の隙間嵩密度(以下、GBDという)が所定の値(例えば0.35g/cm)となったときにサンプル1180に生じる荷重を測定する。
【0066】
なおサンプル1180のGBDは、(サンプル1180の重量)/(サンプル1180の面積)/(上部押さえ1150と下部受け1170の間隔)で求められる。得られた荷重をサンプル面積で除することにより、面圧(kPa)が求められる。
【0067】
マット材150の場合も、同様の方法で面圧を測定することができる。
【0068】
マット材120、150の面圧が0.3MPa未満の場合、ハニカム構造体100のハンドリングの際、または使用中に、ハニカムユニット130が抜け落ちる可能性がある。また、マット材120、150の面圧が3.3MPaを超えると、ハニカムユニット130が破損する危険性が高くなる。
【0069】
また、マット材120、150のGBDは、0.2g/cm〜0.6g/cmの範囲であることが好ましく、0.3g/cm〜0.5g/cmの範囲であることがより好ましい。
【0070】
また、マット材120、150の厚さは、1mm〜10mmの範囲であり、2mm〜5mmの範囲であることがより好ましい。
【0071】
マット材120、150、およびハニカムユニット130が結束された後のマット材120、150の厚さは、1〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0072】
このように構成されたハニカム構造体100は、例えば、尿素タンクを有する尿素SCRシステムの触媒担体として使用することができる。この尿素SCRシステムに、排ガスが流通されると、尿素タンクに収容されている尿素が排ガス中の水と反応して、アンモニアが生じる(式(1))。

CO(NH+HO → 2NH+CO 式(1)

このアンモニアが、NOxを含む排ガスとともに、ハニカム構造体100の一方の端面(例えば端面110)から、各セルに流入した場合、セル壁に含まれている「リン酸塩系のゼオライト」の触媒作用により、以下の式(2−1)および式(2−2)の反応が生じる。

4NH+4NO+O → 4N+6HO 式(2−1)
8NH+6NO → 7N+12HO 式(2−2)

その後、浄化された排ガスは、ハニカム構造体100の他方の端面(例えば端面115)から排出される。このように、ハニカム構造体100内に排ガスを流通させることにより、排ガス中のNOxを処理することができる。
【0073】
(ハニカム構造体100の構成)
次に、本発明によるハニカム構造体100の構成について、より詳しく説明する。
【0074】
(ハニカムユニット130)
以下、特に、ハニカムユニット130がSAPOを主体とする材料で構成される場合について説明する。
【0075】
ハニカム構造体100を構成するハニカムユニット130は、SAPO(リン酸塩系のゼオライト)に加えて第二の無機バインダを含む。さらに、ハニカムユニット130は、SAPO以外の無機粒子、および/または第二の無機繊維、および/または無機フレーク状物質を含んでも良い。
【0076】
ハニカムユニット130に含まれる第二の無機バインダとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ベーマイト等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0077】
第二の無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、およびベーマイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
【0078】
ハニカムユニットには、強度補強材としての第二の無機繊維および/またはフレーク状物質が含まれることが好ましい。
【0079】
ハニカムユニットに第二の無機繊維を加える場合、第二の無機繊維の材料としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等からなる群から選定された少なくとも一つが望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第二の無機繊維としては、アルミナがより望ましい。
【0080】
ここで、「無機フレーク状物質」とは、「無機繊維」とは異なり、鱗片状の形状を有する無機添加物を意味する。「無機フレーク状物質」は、厚さが0.2μm〜5μmの範囲にあり、最大長さが10μm〜160μmの範囲にあり、アスペクト比(厚さ/最大長さの比)が3〜250の範囲が望ましい。なお、無機フレーク状物質の厚さおよび最大長さは、いずれも、SEM写真から求めた平均値である。このうち、無機フレーク状物質の厚さは、無機フレーク状物質20個について求めた平均値である。また無機フレーク状物質の最大長さは、無機フレーク状物質を(扁平)粒子に近似したときの最大直径を、無機フレーク状物質20個について求めた平均値である。
【0081】
ハニカムユニット130に含まれる無機フレーク状物質は、例えば、ガラスフレーク、雲母、アルミナフレーク、シリカフレーク、酸化亜鉛フレーク等からなる群から選定された少なくとも一つであることが好ましい。
【0082】
このような無機フレーク状物質は、ハニカムユニット中において、長手方向に垂直な方向に、無機フレーク状物質の幅が無秩序に配向される傾向にある。従って、第二の無機繊維を添加した場合に比べて、ハニカムユニットの強度に対する方向依存性が小さくなり、ハニカムユニットの長手方向に垂直な方向の強度が向上する。
【0083】
ハニカムユニットに含まれる無機粒子(SAPO等のリン酸塩系のゼオライト)の量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は90重量%であり、より望ましい上限は80重量%であり、さらに望ましい上限は75重量%である。無機粒子(SAPO等のリン酸塩系のゼオライト)の含有量が30重量%未満では、浄化に寄与する無機粒子(SAPO等のリン酸塩系ゼオライト)の量が相対的に少なくなる。一方、無機粒子(SAPO等のリン酸塩系のゼオライト)の含有量が90重量%を超えると、ハニカムユニットの強度が低下する可能性がある。
【0084】
ハニカムユニットに含まれる第二の無機バインダは、固形分として、5重量%以上含まれることが好ましく、10重量%以上含まれることがより好ましく、15重量%以上含まれることがさらに好ましい。一方、ハニカムユニットに含まれる第二の無機バインダの含有量は、固形分として、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。ハニカムユニットに含まれる第二の無機バインダの量が5重量%未満では、製造したハニカムユニットの強度が低くなることがある。一方、ハニカムユニットに含まれる第二の無機バインダの量が50重量%を超えると、原料組成物の成型性が悪くなることがある。
【0085】
ハニカムユニットに第二の無機繊維または無機フレーク状物質が含まれる場合、第二の無機繊維および無機フレーク状物質の合計量について、望ましい下限は3重量%であり、より望ましい下限は5重量%であり、さらに望ましい下限は8重量%である。一方、望ましい上限は50重量%であり、より望ましい上限は40重量%であり、さらに望ましい上限は30重量%である。第二の無機繊維および無機フレーク状物質の含有量が3重量%未満では、ハニカムユニットの強度向上の寄与が小さくなり、第二の無機繊維および無機フレーク状物質の含有量が50重量%を超えると浄化に寄与するSAPO(リン酸塩系のゼオライト)の量が相対的に少なくなる。
【0086】
ハニカムユニット130のセル密度は、15.5〜186個/cm(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm(300〜1100cpsi)の範囲であることがより好ましく、62.0〜155個/cm(400〜1000cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
【0087】
ハニカムユニット130のセル壁123の厚さは、特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、浄化性能の観点から望ましい上限は、0.4mmである。
【0088】
なお、図3には示していないが、ハニカム構造体100は、その外周面にコート層を有しても良い。なお、外周用マット材150が存在する場合、コート層は、ハニカムユニットの組立体135と外周用マット材150の間に設置される。
【0089】
コート層は、前述のようなハニカムユニット130を構成する材料と同様の無機粒子、第二の無機バインダ、第二の無機繊維および/または無機フレーク状物質を含み、さらに第二の有機バインダを含むペーストを原料として形成される。コート層の最終的な厚さは、0.1mm〜2.0mmが好ましい。
(ハニカム構造体の作製方法)
次に、図6を参照して、本発明のハニカム構造体100の製造方法の一例について説明する。図6は、本発明のハニカム構造体100を作製する際のフロー図の一例を概略的に示した図である。
【0090】
図6に示すように、本発明によるハニカム構造体100は、所定の形状の複数のハニカムユニット成形体を作製するステップ(ステップS110)と、前記ハニカムユニット成形体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット成形体の組立体を形成するステップであって、各ハニカムユニット成形体同士の間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップ(ステップS120)と、前記ハニカムユニット成形体の組立体を焼成するステップ(ステップS130)と、を有する。
【0091】
以下、各ステップについて説明する。
【0092】
(ステップS110)
まず、SAPO(リン酸塩系のゼオライト)を含む無機粒子、および第二の無機バインダを主成分とし、さらに必要に応じて第二の無機繊維等を添加した原料ペーストを用いて押出成形等を行い、所定の形状の、複数のハニカムユニット成形体を作製する。
【0093】
各ハニカムユニット成形体は、図4に示したような角柱状の形状を有する。あるいは、ステップS120以降でのハニカムユニット成形体の組立体の外周加工の工程を排除するため、ハニカムユニット成形体は、予め、複数の成形体を組み合わせた際に、丁度円柱状の組立体が得られるような形状に成形しても良い。
【0094】
原料ペーストには、これらの他に第二の有機バインダ、分散媒および成形助剤を成形性にあわせて適宜加えても良い。第二の有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。第二の有機バインダの配合量は、無機粒子、第二の無機バインダ、第二の無機繊維および無機フレーク状物質の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0095】
分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコール等を挙げることができる。
【0096】
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合・混練することが好ましく、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0097】
得られたハニカムユニット成形体を乾燥処理しても良い。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。
【0098】
(ステップS120)
次に、ステップS110で得られた各ハニカムユニット成形体を組み合わせて、所望の形状の(例えば、ハニカムユニットが縦横4個ずつ配列された)ハニカムユニット成形体の組立体を構成する。この際に、隣接するハニカムユニット成形体の間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在される。
【0099】
また、ハンドリング中に、ハニカムユニット成形体の組立体を構成する各ハニカムユニット成形体が相互に分離しないよう、各種処置が行われる。例えば、ハニカムユニット成形体の組立体の外周面に、リング状、紐状または帯状の締結手段を巻き回して、各ハニカムユニット成形体を固定しても良い。あるいは、マット材に接着剤を塗布しておき、これにより、各ハニカムユニット成形体同士を固定しても良い。さらに、各ハニカムユニット成形体の接合面に接着剤を設置しておき、これによりマット材を介して、成形体同士を仮留めしても良い。リング状、紐状、または帯状の締結部材としては、金属が好ましく、ステンレス鋼、銅、ニッケルアルミニウム、鉄等を使用することができ、特にステンレス鋼が好ましい。また、締結部材は、ハニカムユニット成形体の組立体の両端部付近の2箇所で締結することが好ましいが、締結部材の設置場所は、1箇所、または3箇所以上であっても良い。
【0100】
次に、ハニカムユニット成形体の組立体の側面が所定の形状(例えば円柱状)になるように、ダイヤモンドカッター等を用いて、ハニカムユニット成形体の組立体を加工する。ただし、前述のように、ハニカムユニットの成形体を、これらを組み合わせて組立体としたときに、丁度所望の形状になるように成形しておいた場合、ハニカムユニット成形体の組立体の加工工程が省略できる。
【0101】
その後、組立体の加工された外周面には、第一の無機繊維からなるマット材が設置されても良い。
【0102】
この他、必要な場合、加工された組立体の外周面には、コート層が設置されても良い。
【0103】
コート層が設置される場合、組立体の外周面(加工面)にコート層用ペーストを塗布後、これを乾燥、固化させることにより形成される。
【0104】
なお、コート層が設置される場合、外周用のマット材は、コート層を形成した後に、組立体の外周面(すなわちコート層の表面)に設置される。
【0105】
一般に、ハニカムユニット成形体を焼成すると、第二の有機バインダが消失し、これにより、ハニカムユニットの強度が低下することが知られている。しかしながら、本発明による方法では、ハニカムユニット成形体が第二の有機バインダを含んだ状態で、組み立て等のハンドリング操作を行うことができる。従って、この方法では、ハニカムユニット成形体の組立体を構成する操作をより安定に行うことができる。
【0106】
(ステップS130)
次に、ハニカムユニット成形体の組立体が焼成される。焼成条件は、ハニカムユニットの成形体の組成にもよるが、600〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。
【0107】
以上の工程により、本発明によるハニカム構造体を作製することができる。
【0108】
なお、外周用のマット材を設置する場合は、ステップS120のハニカムユニット成形体の外周部にマット材を設置して、外周部のマット材を締結してから、ステップS130のハニカムユニット成形体の焼成を行っても良い。
【0109】
また、ハニカムユニット成形体の焼成(ステップS130)を行った後に、外周部にマット材を設置しても良い。
【0110】
なお、上記説明では、所定の形状の複数のハニカムユニット成形体を作製するステップ(ステップS110)の後、前記ハニカムユニット成形体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット成形体の組立体を形成するステップであって、各ハニカムユニット成形体同士の間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップ(ステップS120)と、前記ハニカムユニット成形体の組立体を焼成するステップ(ステップS130)とが行われる場合を例に、本発明による方法を説明した。
【0111】
しかしながら、本発明は、このような態様に限られるものではない。
【0112】
例えば、ステップS120およびステップS130に替えて、
(d)前記ステップS110の後、前記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製するステップと、
(e)前記ステップ(d)の後、前記ハニカム焼成体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット焼成体を形成するステップであって、各ハニカムユニット焼成体同士の間に、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップと、
を実施しても良い。
【0113】
この場合、前記ステップ(e)は、さらに、前記ハニカム焼成体の組立体の外周面に、第一の無機繊維を含むマット材を設置するステップを有しても良い。
【0114】
なお、通常の場合、マット材は、第一の有機バインダを含んでいる。このため、ハニカムユニットを焼成してからハニカムユニット(ハニカムユニット焼成体)の組立体を組み立てる場合、その後、マット材の脱脂処理を行っても良い。
【0115】
ハニカム成形体を焼成した後に組み立てを行う方法ではなく、成形体の状態のハニカムユニットを用いて、組立体を構成する方法では、その後のマット材の脱脂工程と組立体の焼成処理とを一度にまとめて行うことができ、この方法では、より簡便で、低コストなハニカム構造体の製造方法を得ることができる。
【0116】
上記のように、本発明によるハニカム構造体の製造方法では、ハニカムユニットに体積変化が生じても、ハニカムユニット間に適正な結束力が維持されるハニカム構造体を提供することができる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
【0118】
(実施例1)
Cuでイオン交換されたSAPO粒子(平均粒子径2μm)41wt%、アルミナ繊維6.4wt%、無機バインダ(ベーマイト)11.8wt%、有機バインダ(メチルセルロース)5.0wt%、潤滑剤(オレイン酸)3.7wt%、イオン交換水32.1wt%を混合、混練して混合組成物を得た。次に、この混合組成物を押出成形機により押出成形を行い、半径が68mmの扇形状(1/4円型)のハニカムユニットの成形体を4個作製した。
【0119】
次に、マイクロ波乾燥機および熱風乾燥機を用いてこれらのハニカムユニット成形体を十分乾燥させた。
【0120】
次に、乾燥したハニカムユニット成形体を700℃で2時間焼成して、ハニカムユニット焼成体を得た。
【0121】
次に、これらの4個のハニカムユニット焼成体を、全長が100mmの円柱状のハニカムユニット焼成体の組立体が形成されるように組み立てた。この際に、各ハニカムユニット焼成体同士の間には、厚さ5mmのマット材(以下、「介在マット材」と称する)を介在させた。ハニカムユニットの焼成体の組立体の外径は、143.8mmであった。
【0122】
介在マット材には、アルミナ−シリカ繊維と、有機バインダ(ラテックス)とを含むものを使用した。
【0123】
さらに、このハニカムユニット焼成体の組立体の外周面全体に、外周用マット材を巻き回した。外周用マット材には、介在マット材と同一のものを使用した。
【0124】
このハニカムユニット焼成体の組立体を金属ケース内に装着した状態で、400℃で1時間、脱脂し、実施例1に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。
【0125】
介在マット材および外周用マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.4g/cmとした。
【0126】
図7には、実施例1に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置700の断面図を示す。また、図8には、排ガス浄化装置に含まれるハニカム構造体の斜視図を示す。図7および図8において、図3と同様の部材には、図3と同一の参照符号が付されていることに留意する必要がある。
【0127】
図7に示すように、排ガス浄化装置700は、ハニカム構造体100が装着された金属ケース730を有し、この金属ケース730には、排ガス入口712および排ガス出口714が設けられている。また、図8に示すように、実施例1に係るハニカム構造体100は、図3のハニカム構造体(ハニカムユニット130の数が16個のもの)に比べて、含まれるハニカムユニット130の数が4個になっている点が異なっている。
【0128】
(実施例2)
Cuでイオン交換されたSAPO粒子(平均粒子径2μm)41wt%、アルミナ繊維6.4wt%、無機バインダ(ベーマイト)11.8wt%、有機バインダ(メチルセルロース)5.0wt%、潤滑剤(オレイン酸)3.7wt%、イオン交換水32.1wt%を混合、混練して混合組成物を得た。次に、この混合組成物を押出成形機により押出成形を行い、半径が68mmの扇形状(1/4円型)のハニカムユニット成形体を4個作製した。
【0129】
各成形体の全長は、100mmであった。
【0130】
次に、マイクロ波乾燥機および熱風乾燥機を用いてこれらのハニカムユニット成形体を十分乾燥させた。
【0131】
次に、これらの4個のハニカムユニット成形体を、全長が100mmの円柱状のハニカムユニット成形体の組立体が形成されるように組み立てた。この際に、各ハニカムユニット成形体同士の間には、厚さ5mmの介在マット材を介在させた。ハニカムユニット成形体の組立体の外径は、143.8mmであった。
【0132】
介在マット材には、アルミナ−シリカ繊維と、有機バインダ(ラテックス)とを含むものを使用した。
【0133】
さらに、この組立体の外周面全体に、外周用マット材を巻き回した。外周用マット材には、介在マット材と同一のものを使用した。
【0134】
このハニカムユニット成形体の組立体を金属ケース内に装着した状態で、700℃で2時間、焼成し、実施例2に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した(図7、図8参照)。
【0135】
ハニカム構造体を構成するハニカムユニット(焼成されたハニカムユニット)において、セル壁123の厚さは、0.25mmであった。セル密度は、93個/cmであった。
介在マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.4g/cmとした。
【0136】
(実施例3)
実施例2と同様の方法により、実施例3に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この実施例3では、4個の成形体および介在マット材を組み合わせてハニカムユニット成形体の組立体を形成する際に、各ハニカムユニット成形体の介在マット材と接する部分に、両面テープを設置し、各成形体および介在マット材を仮留めした。また、ハニカムユニット成形体の組立体の外周面(すなわち外周用マット材の表面)に、針金を巻き回し、各ハニカムユニット成形体および介在マット材を固定した。その他の条件は、実施例2と同様である。
【0137】
(実施例4)
実施例2と同様の方法により、実施例4に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この実施例4では、4個のハニカムユニット成形体および介在マット材を組み合わせてハニカムユニット成形体の組立体を形成する際に、各成形体の介在マット材と接する部分に、厚さ0.5mmの無機接着剤を設置し、各ハニカムユニット成形体および介在マット材を仮留めした。無機接着剤には、ゼオライトとシリカゾルからなるものを使用した。また、介在マット材の厚さは、4mmとした。その他の条件は、実施例2と同様である。
【0138】
(実施例5)
実施例2と同様の方法により、実施例5に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した(図3参照)。ただし、この実施例5では、押出成形法により、4個の1/4型成形体の代わりに、16個の四角柱状のハニカムユニット成形体を作製した。各成形体の縦、横、全長の寸法は、それぞれ、34.3mm、34.3mm、および100mmとした。
【0139】
また、ハニカムユニット成形体の組立体の外周面を、ダイヤモンドカッターを用いて加工し、外形が143.8mmの円柱状のハニカムユニット成形体の組立体を形成した。さらに、この外周面に、外周用マット材を巻き回した。外周用マット材には、介在マット材と同一のものを使用した。その他の条件は、実施例2と同様である。
【0140】
セル壁123の厚さは、0.2mmであった。また、セル幅は、0.69mmであった。成形体の開口率は、60%であり、セル密度は、124個/cmであった。
【0141】
(実施例6)
実施例1と同様の方法により、実施例6に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この実施例6では、介在マット材および外周用マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.3g/cmとした。
【0142】
(実施例7)
実施例1と同様の方法により、実施例7に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この実施例7では、介在マット材および外周用マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.5g/cmとした。
【0143】
(実施例8)
実施例1と同様の方法により、実施例8に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この実施例8では、介在マット材および外周用マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.2g/cmとした。
【0144】
(実施例9)
実施例1と同様の方法により、実施例9に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この実施例9では、介在マット材および外周用マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.6g/cmとした。
【0145】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、比較例1に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この比較例1では、各ハニカムユニット焼成体の間には、介在マット材の代わりに、厚さ2.0mmの接着層用ペーストを設置した。また、ハニカムユニット焼成体の組立体の外周面には、厚さ約1.5mmのコート層用ペーストを設置した。
【0146】
接着層用ペーストには、無機繊維18.1wt%、β型ゼオライト粒子59.1wt%、シリカゾル14.2wt%(固形成分30wt%)、有機バインダ(メチルセルロース)0.4wt%、撥水剤(ポリビニルアルコール)3.9wt%、界面活性剤3.9wt%、および発泡剤(アルミナバルーン)0.4wt%を混合、混練したものを使用した。
【0147】
コート層用ペーストには、接着用ペーストと同じものを使用した。
【0148】
接着層用ペーストおよびコート層用ペーストは、それぞれ、ハニカムユニット焼成体の組立体を400℃で1時間保持することにより乾燥、固化させた。
【0149】
さらに、このハニカムユニット焼成体の組立体(ハニカム構造体)の外周面全体に、外周用マット材を巻き回した。この外周用マット材には、実施例1の介在マット材と同一のものを使用した。
【0150】
このハニカムユニット焼成体の組立体(ハニカム構造体)を金属ケース内に装着した状態で、400℃で1時間、脱脂し、比較例1に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。
【0151】
(比較例2)
実施例1と同様の方法により、比較例2に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を作製した。ただし、この比較例2では、ハニカムユニットの成形体において、一部のセルの端部を、封止材ペーストで目封じした。目封じは、ハニカム構造体の第1の端面の側において、目封じされたセルのパターンが丁度市松模様になるように実施した。一方、ハニカム構造体の第2の端面の側においては、第1の端面の側が目封じされていないセルについて目封じを行った。従って、第1の端面から第2の端面まで貫通されたセルは、存在しない。封止材ペーストには、成形体の原料ペーストと同じものを使用した。その後、ハニカム成形体を焼成して目封じされたハニカム焼成体を作製した。その他の条件は、実施例1と同様である。
【0152】
(評価試験)
実施例1〜9、および比較例1、2で作製したハニカム構造体を含む各排ガス浄化装置を室温(25℃)の大気中に放置した。
【0153】
2時間後に、実施例1〜9、および比較例1、2の各ハニカム構造体を金属ケースから取り外し、各ハニカム構造体を構成するハニカムユニット(ハニカムユニット焼成体)の状態(クラックまたはワレの発生)を観察した。
【0154】
上記評価試験を「放置試験」と称することにする。
【0155】
また、実施例1〜9、および比較例1、2で作製したハニカム構造体を含む各排ガス浄化装置を、室温(25℃)の大気中に2時間放置した後、送風機を用いて20リットル/秒の流速で、排ガス浄化装置中のハニカム構造体に空気を流通させた。
【0156】
1時間後に、各ハニカム構造体における、ハニカムユニット(ハニカム焼成体)のずれ濃霧を目視で観察した。
【0157】
ハニカム構造体の端面から、ハニカムユニット(ハニカム焼成体)がずれた距離が0.5mm未満の場合を位置ずれなしとする。
【0158】
上記評価試験を「流通試験」と称することにする。
【0159】
実施例1、および実施例6〜9で作製した各ハニカム構造体を含む排ガス浄化装置を用いて、風食試験を行った。
【0160】
風食試験は、各排ガス浄化装置を700℃に保持した状態で、排ガス浄化装置の中のハニカム構造体の第1の端面側から、風圧0.45MPaの空気流を断続的に流通させることにより実施した。空気流は、0.5秒(流通)/1.0秒(遮断)の繰り返しサイクルで、排ガス浄化装置のハニカム構造体中に流通させた。試験時間は、30分とした。
【0161】
風食試験に、ハニカム構造体の状態(ハニカムユニット(ハニカム焼成体)の位置ずれの有無)を、目視で観察した。
【0162】
ハニカム構造体の端面から、ハニカムユニットがずれた距離が0.5mm未満の場合を位置ずれなしとする。
【0163】
(評価結果)
表1には、評価試験の結果をまとめて示す。
【0164】
【表1】

実施例1〜9は、放置試験でクラック等の以上は認められず、流通試験でハニカムユニットの位置ずれは認められなかった。比較例1は、流通試験でのハニカムユニットの位置ずれは生じなかったが、放置試験で接着層にクラックが生じていることが確認された。
【0165】
比較例2では、放置試験で、ハニカムユニットに、クラック等の異常は認められなかったが、流通試験では、一部のハニカムユニットにおいて、位置ずれが生じていることが確認された。
【0166】
比較例2に係るハニカム構造体は、セルが第1または第2の端部のいずれかで目封じされており、空気を流通させたときの圧力の影響により、位置ずれが発生したものと考えられる。
【0167】
また、実施例9に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置(マット材の隙間嵩密度(GBD)0.5g/cm)と、実施例8に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置(マット材の隙間嵩密度(GBD)0.2g/cm)の場合、風食が生じていることが観察された。具体的には、実施例8のハニカム構造体の風食試験後のハニカムユニットのずれた距離は、0.5mmを超え、1mm以下であった。また、実施例9のハニカム構造体の風食試験後のハニカムユニットのずれた距離は、1mmを超え、2mm以下であった。
【0168】
風食試験により、介在マット材がダメージを受け、ハニカムユニットの保持力が低下し、ハニカムユニットの位置ずれが発生することが考えられる。
【0169】
これに対して、実施例1に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置(マット材の隙間嵩密度(GBD)0.4g/cm)、実施例6に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置(マット材の隙間嵩密度(GBD)0.3g/cm)、および実施例7に係るハニカム構造体を含む排ガス浄化装置(マット材の隙間嵩密度(GBD)0.5g/cm)では、風食は認められなかった。具体的には、実施例1、6、7のハニカム構造体の風食試験後のハニカムユニットのずれた距離は、0.5mm未満であった。
【0170】
この結果から、耐風食性の観点からは、介在マット材の隙間嵩密度(GBD)は、0.3g/cm〜0.5g/cmの範囲であることが好ましいと言える。
【符号の説明】
【0171】
1 従来のハニカム構造体
11 第1の端面
12 コート層
13、23 ハニカムユニット
15 第2の端面
16、26 接着層
100 本発明によるハニカム構造体
110 第1の端面
115 第2の端面
120 マット材
121、122 セル
123、124 セル壁
130 ハニカムユニット
135 ハニカムユニットの組立体
150 外周用マット材
700 排ガス浄化装置
712 排ガス入口
714 排ガス出口
730 金属ケース
1100 面圧測定装置
1180 サンプル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体であって、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
各ハニカムユニットの間には、第一の無機繊維を含むマット材が介在されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記マット材に含まれる第一の無機繊維は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、およびムライトからなる群から選定された、少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記マット材は、隙間嵩密度(GBD)が0.2g/cm〜0.6g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記マット材は、面圧が0.3MPa〜3.5MPaの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記リン酸塩系のゼオライトは、SAPO、MeAPO、およびMeAPSOからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記SAPOは、SAPO−5、SAPO−11、およびSAPO−34からなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記リン酸塩系のゼオライトは、イオン交換されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記第二の無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、およびベーマイトの群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記ハニカムユニットは、さらに第二の無機繊維または無機フレーク状物質を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記ハニカムユニットに含まれる第二の無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムの群から選定された少なくとも一つであり、
前記ハニカムユニットに含まれる無機フレーク状物質は、ガラスレーク、雲母、アルミナフレーク、シリカフレーク、および酸化亜鉛フレークから選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
さらに、結束されたハニカムユニットの外周面に、第一の無機繊維を含むマット材が設置されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項12】
長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
当該方法は、
(a)所定の形状の複数のハニカムユニット成形体を製作するステップと、
(b)前記ハニカムユニット成形体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット成形体の組立体を形成するステップであって、各ハニカムユニット成形体同士の間に、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップと、
(c)前記ハニカムユニット成形体の組立体を焼成するステップと、
を有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項13】
前記ステップ(b)は、さらに、前記ハニカムユニット成形体の組立体の外周面に、第一の無機繊維を含むマット材を設置するステップを有することを特徴とする請求項12に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項14】
長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面に延伸する複数の貫通セルがセル壁によって区画された柱状のハニカムユニットが複数結束されて構成されたハニカム構造体の製造方法であって、
前記ハニカムユニットは、リン酸塩系のゼオライトと、第二の無機バインダとを含み、
当該方法は、
(a)所定の形状の複数のハニカムユニット成形体を製作するステップと、
(b)前記ステップ(a)の後、前記ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製するステップと、
(c)前記ステップ(b)の後、前記ハニカム焼成体を組み合わせて、所定の形状のハニカムユニット焼成体を形成するステップであって、各ハニカムユニット焼成体同士の間に、第一の無機繊維を含むマット材が介在されるステップと、
を有することを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
前記ステップ(c)は、さらに、前記ハニカム焼成体の組立体の外周面に、第一の無機繊維を含むマット材を設置するステップを有することを特徴とする請求項14に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項16】
前記リン酸塩系のゼオライトは、SAPO、MeAPO、およびMeAPSOからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一つに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項17】
前記SAPOは、SAPO−5、SAPO−11、およびSAPO−34からなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項16に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれか一つに記載の方法で製造されたハニカム構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−125847(P2011−125847A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221900(P2010−221900)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】