ハニカム構造体成形用口金の製造方法
【課題】被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製することのできる、ハニカム構造体成形用口金の製造方法を提供する。
【解決手段】一方の端面と他方の端面を有した板状の口金基体の、坏土導入面とされる他方の端面に、坏土を導入するための複数の導入孔を形成する導入孔形成工程と、口金基体の坏土成形面とされる一方の端面において、スリットの溝幅に対応する複数の板状の突起電極23が配設された櫛歯電極21により櫛歯放電加工を行い、坏土が押出されることによりハニカム構造体の隔壁を形成するための、導入孔に連通させたスリットを形成するスリット形成工程と、を有するハニカム構造体成形用口金の製造方法である。
【解決手段】一方の端面と他方の端面を有した板状の口金基体の、坏土導入面とされる他方の端面に、坏土を導入するための複数の導入孔を形成する導入孔形成工程と、口金基体の坏土成形面とされる一方の端面において、スリットの溝幅に対応する複数の板状の突起電極23が配設された櫛歯電極21により櫛歯放電加工を行い、坏土が押出されることによりハニカム構造体の隔壁を形成するための、導入孔に連通させたスリットを形成するスリット形成工程と、を有するハニカム構造体成形用口金の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラー等の排ガス中の微粒子や有害物質は、環境への影響を考慮して排ガス中から除去する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される微粒子(以下「PM」ということがある。)の除去に関する規制は世界的に強化される傾向にあり、PMを除去するための捕集フィルタ(以下「DPF」ということがある。)としてハニカムフィルタの使用が注目され、種々のシステムが提案されている。上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数の断面形状が四角形や六角形等のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封じすることで、セルを構成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。ここで、断面形状とは、セルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの、その断面の形状をいう。
【0003】
DPFは、一方の端部側から微粒子を含有する、被処理流体の排ガス等を流入させ、隔壁で微粒子を濾過した後に、浄化されたガスを他方の端部側から排出するものであるが、排ガスの流入に伴い、排ガス中に含有される微粒子が上記一方の端部(排ガスが流入する側の端部)に堆積し、セルを閉塞させるという問題があった。これは、排ガス中に多量の微粒子が含有される場合や、寒冷地において発生し易い現象である。このようにセルが閉塞すると、DPFにおける圧力損失が急激に大きくなるという問題があった。このようなセルの閉塞を抑制するために、上記排ガスが流入する側の端部において開口しているセル(流入側セル)の断面積と、上記他方の端部(排ガスが流出する側の端部)において開口しているセル(流出側セル)の断面積とを異ならせた構造(HAC(High Ash Capacity)構造)のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、断面積とは、セルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの、その断面の面積をいう。流入側セルのセル開口部(セル断面)の大きさ(面積)を、流出側セルのセル開口部(セル断面)の大きさ(面積)より大きくすることにより、粒子状物質等が堆積する流入側セル表面の表面積が大きくなるため、圧力損失の増大を抑制することが可能となる。
【0004】
セラミック質のハニカム構造体の製造方法としては、従来から、成形原料(以下、「坏土」と言うことがある)を導入する裏孔(以下、「導入孔」と言うことがある)と、この裏孔に連通する六角形状等のスリットとが形成された口金基体を備えたハニカム構造体成形用口金(以下、「口金」と言うことがある)を用いて押出成形する方法が知られている。裏孔から導入されたセラミック原料等の成形原料は、比較的内径の大きな裏孔から、幅の狭いスリットへと移行して、このスリットの開口部からハニカム構造の成形体(ハニカム成形体)として押出される。
【0005】
このようなハニカム構造体成形用口金を製造する方法としては、四角形のセルの場合、研削加工する方法が知られている。また、六角形状のハニカム構造体成形用口金を製造する方法としては、例えば、上述したハニカム形状のスリットを放電加工(EDM加工)により形成する製造方法が開示されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−896号公報
【特許文献2】特許第1784822号公報
【特許文献3】特許第1784823号公報
【特許文献4】特開2002−273626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のハニカム構造体では、大きさが異なるセルが並んでいるため、隔壁が直線状に形成されていない。このため、成形原料を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の、ハニカム構造体の隔壁を形成するためのスリットは、直線状ではなく凹凸状に配置されている。そこで、このような構造のハニカム構造体成形用口金のスリットは、四角セルのハニカム構造体を押出成形するための口金のように、研削加工により製造することは不可能であった。
【0008】
そこで、被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のセル構造に対応したスリットを形成するために、そのスリットのセル構造を転写したような網目形状の電極を用いて放電加工にて口金を製造していた。しかしながら、網目形状の電極を製造するための工数は多く、また、DPFは径が大きいため、口金を製作するための電極の製作に数ヶ月〜半年程度の時間を要していた。そこで、被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製する方法が求められてきた。
【0009】
本発明の課題は、大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製することのできる、ハニカム構造体成形用口金の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、櫛歯電極を用いた放電加工により、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち本発明によれば、以下のハニカム構造体成形用口金の製造方法が提供される。
【0011】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記セルは、所定の開口面積を有する第1のセルと、前記第1のセルと開口面積が異なる第2のセルとが交互に配設されたハニカム構造体を製造するために、原料となる坏土を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法であって、一方の端面と他方の端面を有した板状の口金基体の、坏土導入面とされる前記他方の端面に、坏土を導入するための複数の導入孔を形成する導入孔形成工程と、前記口金基体の坏土成形面とされる前記一方の端面において、前記スリットの溝幅に対応する複数の板状の突起電極が配設された櫛歯電極により櫛歯放電加工を行い、前記坏土が押出されることにより前記ハニカム構造体の前記隔壁を形成するための、前記導入孔に連通させたスリットを形成するスリット形成工程と、を有するハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0012】
[2] 前記導入孔形成工程の前に、または後に、前記一方の端面と前記導入孔とが連通するように、前記スリットの幅よりも小さい開口径の加工液用液穴を前記スリットが形成される位置に形成する液穴形成工程を有し、前記導入孔形成工程および前記液穴形成工程の後に、加工液を前記加工液用液穴に流通させつつ前記スリット形成工程を行う前記[1]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0013】
[3] 前記スリット形成工程において、前記櫛歯電極にて所定の前記スリットを形成した後に、前記櫛歯電極を回転させ、次の所定の前記スリットを形成する前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0014】
[4] 前記スリット形成工程において、2種以上の前記櫛歯電極を用いる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法に用いる、突起電極が配設された櫛歯電極は、容易に作製することができる。このため、櫛歯電極を用いた櫛歯放電加工を行う本発明の製造方法は、大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】櫛歯電極の一部を模式的に示す斜視図である。
【図2A】導入孔を形成した口金基体の断面図である。
【図2B】導入孔を形成した口金基体の一部断面斜視図である。
【図2C】スリットの形成位置と導入孔の形成位置を説明するための口金基体を一方の端面側から見た模式図である。
【図3A】加工液用液穴を形成した口金基体の一部断面斜視図である。
【図3B】スリットを形成するところを示す口金基体の一部断面斜視図である。
【図4A】櫛歯電極による放電加工の第1工程を説明するための模式図である。
【図4B】櫛歯電極による放電加工の第2工程を説明するための模式図である。
【図4C】櫛歯電極による放電加工の第3工程を説明するための模式図である。
【図4D】櫛歯電極による放電加工の第4工程を説明するための模式図である。
【図4E】櫛歯電極による放電加工の第5工程を説明するための模式図である。
【図4F】櫛歯電極による放電加工の第6工程を説明するための模式図である。
【図5A】他の実施形態の櫛歯電極による放電加工の工程を説明するための模式図である。
【図5B】図5Aに続く、他の実施形態の櫛歯電極による放電加工の工程を説明するための模式図である。
【図6A】本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって作製した口金の断面図である。
【図6B】本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって作製した口金を一方の端面側から見た模式図である。
【図7】本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって作製した口金によって製造されたハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
本発明のハニカム構造体成形用口金(以下、単に口金1という場合がある)の製造方法は、流体の流路となる複数のセル42を区画形成する多孔質の隔壁41を備え、セル42は、所定の開口面積を有する第1のセルと、第1のセルと開口面積(セルの大きさ)が異なる第2のセルとが交互に配設されたハニカム構造体40(図7参照)を製造(成形)するために、原料となる坏土を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法である。本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって製造された口金1により製造されたハニカム構造体40は、例えば、第1のセルが、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封じされ、第2のセルが、一方の端部が目封じされ且つ他方の端部が開口されて、第1のセルが開口する一方の端部から流入した流体を、隔壁41を透過させて第2のセル内に透過流体として流出させ、透過流体を第2のセルが開口する他方の端部から流出させるハニカムフィルタとして使用することができる。
【0019】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法は、一方の端面7と他方の端面8を有した板状の口金基体2の、坏土導入面18とされる他方の端面8に、坏土を導入するための複数の導入孔4を形成する導入孔形成工程と、口金基体2の坏土成形面17とされる一方の端面7において、スリット5の溝幅に対応する複数の板状の突起電極23が配設された櫛歯電極21(図1参照)により櫛歯放電加工を行い、坏土が押出されることによりハニカム構造体の隔壁41を形成するための、導入孔4に連通させたスリット5を形成するスリット形成工程と、を有する。
【0020】
大きさが異なるセル42を有するハニカム構造体を成形するための口金1は、隔壁41を形成するためのスリット5が直線状ではないため、従来、網目状の電極を使用しており、電極を作製することに時間がかかり、コストアップの原因となっていた。本発明の製造方法は、図1に示すような櫛歯電極21を用いる方法である。櫛歯電極21は、口金1の溝幅に対応する複数の板状の突起電極23が板状の櫛歯電極支持部22に設けられたものである。櫛歯電極21は、放電ではなく切削、研削で加工することができるため、製造にかかる時間を削減し、製造コストを削減することができる。また、従来の網目状の電極では、電極を精度良く作製することが困難であるため、口金のスリット幅精度が低下していた。本発明の製造方法に用いる櫛歯電極21は、簡単な構造であり高精度な加工が可能である。つまり、櫛歯電極21は、短時間で精度よいものを作製可能であるため、これを用いた本発明の製造方法は、製造コストを削減することが可能である。
【0021】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法では、導入孔形成工程の前に、または後に、一方の端面7と導入孔4とが連通するように、スリット5の幅よりも小さい開口径の加工液用液穴3をスリット5が形成される位置に形成する液穴形成工程を有し、導入孔形成工程および液穴形成工程の後に、加工液10を加工液用液穴3を流通させつつスリット形成工程を行うことが好ましい。
【0022】
加工液を加工液用液穴3を流通させつつスリット形成工程を行うことにより、放電加工によって発生するスラッジを口金基体2の表面側に排出することが可能となり、櫛歯電極21による安定した放電を起こさせて正常な放電加工を実現し、ハニカム構造体成形用口金を高精度に製造することができる。
【0023】
ハニカム構造体成形用口金の製造方法では、スリット形成工程において、櫛歯電極21にて所定のスリット5を形成した後に、櫛歯電極21を一方の端面7上で回転させ、次の所定のスリット5を形成する。大きさが異なるセル42を有するハニカム構造体40は、隔壁41が直線状ではなく、成形するための口金1のスリット5も直線状ではない。このため、櫛歯電極21を回転させてスリット5を形成することにより、口金1の非直線状のスリット5を形成することができる。
【0024】
ハニカム構造体成形用口金の製造方法では、スリット形成工程において、2種以上の櫛歯電極21を用いる。大きさが異なるセル42を有するハニカム構造体42を成形するための口金1を作製するためには、2種以上の櫛歯電極21を用いる必要がある。
【0025】
本発明の実施の形態を以下、さらに詳しく説明する。まず、ハニカム構造体成形用口金1の口金基体2を構成する材料について説明する。
【0026】
(口金基体を構成する材質)
本実施形態で用いられる口金基体2を構成する材料としては、ハニカム構造体成形用口金の材料として一般的に用いられている金属又は合金を挙げることができる。例えば、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属を含む金属又は合金を挙げることができる。なお、このような第一の板状部材23を構成する金属又は合金は、炭素(C)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の添加剤を含んだものであることが更に好ましい。
【0027】
また、口金基体2を構成する合金の他の例として、ステンレス合金、より具体的には、SUS630(C;0.07以下,Si;1.00以下,Mn;1.00以下,P;0.040以下,S;0.030以下,Ni;3.00〜5.00,Cr;15.50〜17.50,Cu;3.00〜5.00,Nb+Ta;0.15〜0.45,Fe;残部(単位は質量%))を好適例として挙げることができる。このようなステンレス合金は、加工が比較的に容易であるとともに、安価な材料である。
【0028】
また、口金基体2を構成する合金の他の例として、耐摩耗性に優れた炭化タングステン基超硬合金から構成されたものを用いることが好ましい。これにより、スリット5の磨耗が有効に防止されたハニカム構造体成形用口金1を製造することができる。
【0029】
上記した炭化タングステン基超硬合金は、少なくとも炭化タングステンを含む合金であり、炭化タングステンを、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、及びクロム(Cr)からなる群より選択される少なくとも一つの金属で焼結した合金であることが好ましい。上記群より選択される少なくとも一つの金属を結合材として使用した炭化タングステン基超硬合金は、耐摩耗性や機械的強度に特に優れている。具体的なものとしては、例えば、コバルト(Co)を結合材として使用した炭化タングステン基超硬合金、WC−Co0.1〜50質量%等を挙げることができる。
【0030】
上記の材料からなる板状部材を口金基体2として、以下の工程によりハニカム構造体成形用口金1を製造することができる。
【0031】
(導入孔形成工程)
まず、図2A、図2Bに示すように、口金基体2の坏土導入面18とされる他方の端面8に厚さ方向に開口する導入孔4を形成する。また、口金基体2に導入孔4を形成する際には、図2Cに示すように、ハニカム構造体成形用口金1のハニカム形状のスリット5における交差部の部分と連通するような位置に形成することが好ましい。このような位置に導入孔4を形成することにより、ハニカム構造体成形用口金1を用いて押出成形を行う際に、導入孔4に導入した成形原料をスリット5全体に均一に広げることができ、高い成形性を実現することができる。
【0032】
導入孔4の開口径の大きさは、押出成形するハニカム構造体40(図7参照)の形状(隔壁の厚み・間隔)等によって適宜決定することができる。このような導入孔4を形成する方法については特に制限はないが、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等による従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0033】
(液穴形成工程)
図3Aに示すように、導入孔形成工程後(導入孔形成工程の前でも可)に、一方の端面7と導入孔4とが連通するように、スリット5の幅よりも小さい開口径の加工液用液穴3をスリット5が形成される位置に形成する。
【0034】
(スリット形成工程)
スリット形成工程で形成されるスリット5は、異なる大きさのセル42を有するハニカム構造体40を押出成形するためのハニカム状のスリット5である。スリット5の幅は、例えば、0.05〜1.00mmである。スリット5の坏土成形面17からの深さは、例えば、0.50〜5.00mmである。
【0035】
(櫛歯電極)
スリット形成工程においては、スリット5の一辺に対応する平行な板状の複数の突起電極23を突起電極支持部22に並列させた図1に示すような、櫛歯電極21を用いて、坏土成形面17上で、複数回に分けて櫛歯放電加工を行う。
【0036】
櫛歯電極21に設けられた複数の突起電極23は、厚みtをスリット5の幅に対応させて、例えば、0.020〜0.800mmとする。また突起電極23の高さHはスリット5の深さよりも長く、例えば、1.00〜8.00mmとする。そして突起電極23の幅Lは、例えば、0.40〜2.00mmとする。
【0037】
なお、スリット5の深さが深い場合には櫛歯電極21による加工を複数回行うことが好ましい。その理由は、電極の消耗により、スリット5が深い部分ほどスリット幅が狭いテーパ状になることがあるためである。この深い部分のスリット幅を広げるため、櫛歯放電加工を行った後で同じ位置に、櫛歯電極21を新たのものと交換し、複数回に分けて新しい櫛歯電極21で放電加工を行うことが好ましい。また、繰り返し時の櫛歯放電加工に突起電極23の厚みtを薄くしたものを用いることは、加工面の上面に近い部分ではほとんど加工が行われず、スリット幅がテーパ状に狭くなったスリット5の深い部分のみを加工可能であることから好ましい。
【0038】
(櫛歯電極を構成する材質)
本実施形態で用いられる櫛歯電極21を構成する材料としては特に限定するものではないが、微粒子高強度高密度カーボングラファイト材を挙げることができる。より具体的には平均粒子径5μm以下のものを好適例として挙げることができる。このようなカーボングラファイトを材質としたカーボン電極は、櫛歯電極21の突起電極23等の微細形状のものを高い精度で形成することが可能であるという利点や、高硬度で耐摩耗性に優れている、加工速度が速いという利点がある。しかし、高硬度であるが故に、破損しやすいため、微粒子高強度高密度カーボングラファイト材を櫛歯電極21を構成する材料として用いた場合には、放電加工に伴って発生するスラッジを加工液などによって効率良く排除することが特に好ましい。
【0039】
スリット形成工程について、図4A〜図4Fを用いて説明する。図3Bに示すように、スリット形成工程では、櫛歯電極21を用いて、加工液10を加工液用液穴3を流通させつつ加工を行うことが好ましい。図4A〜図4Fは、スリット5が形成される側(一方の端面7、坏土形成面17)から見た模式図であり、各工程においてスリット5が形成される部分(スリット5a)と、それ以前の工程により形成されたスリット5(スリット5b)とを区別して示している。形成されるスリット5aは、櫛歯電極21の突起電極23の配置に等しい。櫛歯電極21は、2種以上用いて、必要により、坏土形成面17上にて回転させて口金基体2を加工する。
【0040】
図4Aに示すように、第1の櫛歯電極21により、第1工程の加工を行ってスリット5aを形成する。スリット5aは、櫛歯電極21の突起電極23の配置に等しい。続いて、図4Bに示すように、同じ第1の櫛歯電極21を平行移動させ、第2工程の加工を行って、異なる列のスリット5aを形成する(図4Bでは、図4Aの第1工程において形成されたスリット5aをスリット5bとして示す)。
【0041】
続いて図4Cに示すように、第3工程では、第1の櫛歯電極21を一方の端面7(坏土成形面17)上にて90°回転させ、第1工程と第2工程で形成したスリット列に垂直なスリット列の加工を行ってスリット5aを形成する(図4Cでは、第1工程及び第2工程において形成されたスリット5aをスリット5bとして示す)。
【0042】
さらに図4Dに示すように、第4工程では、同じ第1の櫛歯電極21を平行移動させて加工を行って、異なる列のスリット5aを形成する。
【0043】
次に、図4Eに示すように、第5工程では、第2の櫛歯電極21を用いて加工を行い、第6工程では、図4Fに示すように、第2の櫛歯電極21を回転させて、スリット5aを形成する。
【0044】
このように2種類の電極を使う場合、準備する電極が少なくて済み、電極製作時間・コストが削減できる。また、電極交換が2回しかないため、位置決めなどの段取り工数が低減できる。さらに、HAC形状のセルであればどのようなものでも加工できる。
【0045】
或いは、図4Eに示す第5工程において、第1の櫛歯電極21を第4工程から45°回転させて第1の櫛歯電極21により加工を行うこともできる。この場合、第1の櫛歯電極21を90°回転させて図4Fに示す第6工程の加工を行うことができる。このように1種類の電極を使う場合、準備する電極が少なくて済み、電極製作時間・コストが削減できる。また、電極交換が1回しかないため、位置決めなどの段取り工数が低減できる。
【0046】
なお、第1の櫛歯電極21を、図5Aに示すスリット5aに対応した配置の突起電極23を有するものとすることにより、前述の第1工程と第2工程、第3工程と第4工程を同時に形成することもできる。
【0047】
さらに、第2の櫛歯電極21を、図5Bに示すスリット5aに対応した配置の突起電極23を有するものとすることにより、前述の第5工程と第6工程を同時に形成することもできる。このような2種類の電極を使う場合は、準備する電極が少なくて済み、電極製作時間・コストが削減できる。また、電極交換が2回しかないため、位置決めなどの段取り工数が低減できる。さらに、一度に加工する辺が多いため、図4の場合に比較して、櫛歯電極21の櫛歯形成には時間がかかる一方、スリット放電加工時間が短縮できる。
【0048】
また、第1工程〜第6工程を異なる6枚の櫛歯電極にて行ってもよい。このように6枚の電極を使用することにより、加工の都度、電極を交換するため消耗によるスリット加工精度のばらつきを大幅に低減できる。また、どのようなセル形状でも加工できる。さらに、粗加工用・中仕上加工用・仕上加工用の3種類の櫛歯電極を用意し、それぞれの工程を3回の加工に分けて行うことにより、効率よく、精度よく加工することもできる。
【0049】
上記の工程により作製することのできるハニカム構造体成形用口金1の断面図を図6Aに、一方の端面7(坏土成形面17)から見た模式図を図6Bに示す。この口金1を用いて、坏土を押出成形することにより、図7に示すような、ハニカム構造体を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例)
導入孔形成工程において、ステンレス製で、縦横440×440mm、厚さ50mmの板状の口金基体2の他方の端面8の直径390mmの範囲に、開口径が1.70mmの導入孔4を図2A〜2Cに示すように、押出成形するハニカム構造体40のセル42の頂点に相当する位置に、坏土導入面18から47.0mmの深さまで、約3万個形成した。
【0052】
次に図3Aに示すように、スリット5を形成する側の一方の端面7側の、導入孔4に相当する位置に、加工液用液穴3を形成した。
【0053】
次に図3Bに示すように櫛歯放電加工を行った。具体的には、櫛歯電極21に設けられた板状の突起電極23は、厚さtが0.08mm、高さHが4.50mm、突起電極23に平行な方向の幅Lが0.70mm、突起電極23の配列は図4A,4E等に示すようなものを使用した。
【0054】
口金基体2の他方の端面8側から導入孔4を経由して一方の端面7側に加工液10を流出させながら、図4A〜図4Fに示すように櫛歯電極21を用いて櫛歯放電加工を行った。
【0055】
(比較例)
スリット5のセル構造を転写したような網目形状の電極をCuW合金の素材にドリル加工後、ワイヤ放電加工することにより作製した。
【0056】
(結果)
実施例の櫛歯電極ではスリットを1辺ずつ6回に分けて加工したが、比較例の網目状の電極では全ての辺を1度に加工した。口金スリットの放電加工時間のみを捉えると、どちらの電極を使用しても時間はほぼ同じであった。
【0057】
しかし、電極製作に要する時間を比較すると、口金1型分の電極を準備するのに要する時間は、比較例の網目状の電極では実施例の櫛歯電極の約8倍であった。
【0058】
実施例の場合、加工範囲が広いため口金1型を4領域に分割して加工した。また、1辺ずつ6回に分けて異なる櫛歯電極にて加工を行った。さらに、粗加工・中仕上加工・仕上加工の3回の加工を異なる櫛歯電極にて行った。そのため必要となる電極数は、櫛歯電極では6回×3回仕上×4領域=72枚であった。また網目状電極の場合も、4領域に分割して加工したため、必要となる電極数は、1回×4領域=4枚であった。
【0059】
実施例の場合で電極を準備するのに必要となる時間は、櫛歯電極で1枚当たり12時間、網目状電極で1枚あたり1700時間であった。必要となる電極数をかけると、1型分の電極を準備するのに要する時間は、櫛歯電極で12時間×72枚=864時間、網目状電極では1,700時間×4枚=6,800時間であった。
【0060】
網目状電極では1型分の電極を準備するだけで1年弱の期間を要するため、現実的でない。一方、櫛歯電極では、1枚の電極を準備するのに12時間を要するが、1枚の電極を使い終わるまでの時間は粗加工・中仕上加工・仕上加工で異なるものの、平均して16時間程度であり、電極を使用している間に次に使用する電極を準備することができる。これによりスリット加工に要する時間は電極を準備する時間を考慮せずとも済み、口金スリットの放電加工時間は、16時間×3回(粗〜仕上)×6回×4領域≒1,150時間であった。したがって、口金の加工時間は、櫛歯電極の場合も網目状電極の場合もほぼ同じであるが、櫛歯電極の方が準備に要する時間が短く、電極の準備に必要な時間と口金の加工時間とを合わせると、櫛歯電極の方が大幅に時間を短縮することができる。また、電極の消耗によるスリット加工の経時変化を大幅に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:ハニカム構造体成形用口金、2:口金基体、3:加工液用液穴、4:導入孔、5:スリット、5a:形成されるスリット、5b:形成されたスリット、7:一方の端面、8:他方の端面、10:加工液、17:坏土成形面、18:坏土導入面、21:櫛歯電極、22:櫛歯電極支持部、23:突起電極、40:ハニカム構造体、41:隔壁、42:セル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラー等の排ガス中の微粒子や有害物質は、環境への影響を考慮して排ガス中から除去する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される微粒子(以下「PM」ということがある。)の除去に関する規制は世界的に強化される傾向にあり、PMを除去するための捕集フィルタ(以下「DPF」ということがある。)としてハニカムフィルタの使用が注目され、種々のシステムが提案されている。上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数の断面形状が四角形や六角形等のセルが区画形成されたものであり、セルを交互に目封じすることで、セルを構成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。ここで、断面形状とは、セルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの、その断面の形状をいう。
【0003】
DPFは、一方の端部側から微粒子を含有する、被処理流体の排ガス等を流入させ、隔壁で微粒子を濾過した後に、浄化されたガスを他方の端部側から排出するものであるが、排ガスの流入に伴い、排ガス中に含有される微粒子が上記一方の端部(排ガスが流入する側の端部)に堆積し、セルを閉塞させるという問題があった。これは、排ガス中に多量の微粒子が含有される場合や、寒冷地において発生し易い現象である。このようにセルが閉塞すると、DPFにおける圧力損失が急激に大きくなるという問題があった。このようなセルの閉塞を抑制するために、上記排ガスが流入する側の端部において開口しているセル(流入側セル)の断面積と、上記他方の端部(排ガスが流出する側の端部)において開口しているセル(流出側セル)の断面積とを異ならせた構造(HAC(High Ash Capacity)構造)のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、断面積とは、セルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの、その断面の面積をいう。流入側セルのセル開口部(セル断面)の大きさ(面積)を、流出側セルのセル開口部(セル断面)の大きさ(面積)より大きくすることにより、粒子状物質等が堆積する流入側セル表面の表面積が大きくなるため、圧力損失の増大を抑制することが可能となる。
【0004】
セラミック質のハニカム構造体の製造方法としては、従来から、成形原料(以下、「坏土」と言うことがある)を導入する裏孔(以下、「導入孔」と言うことがある)と、この裏孔に連通する六角形状等のスリットとが形成された口金基体を備えたハニカム構造体成形用口金(以下、「口金」と言うことがある)を用いて押出成形する方法が知られている。裏孔から導入されたセラミック原料等の成形原料は、比較的内径の大きな裏孔から、幅の狭いスリットへと移行して、このスリットの開口部からハニカム構造の成形体(ハニカム成形体)として押出される。
【0005】
このようなハニカム構造体成形用口金を製造する方法としては、四角形のセルの場合、研削加工する方法が知られている。また、六角形状のハニカム構造体成形用口金を製造する方法としては、例えば、上述したハニカム形状のスリットを放電加工(EDM加工)により形成する製造方法が開示されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−896号公報
【特許文献2】特許第1784822号公報
【特許文献3】特許第1784823号公報
【特許文献4】特開2002−273626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のハニカム構造体では、大きさが異なるセルが並んでいるため、隔壁が直線状に形成されていない。このため、成形原料を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の、ハニカム構造体の隔壁を形成するためのスリットは、直線状ではなく凹凸状に配置されている。そこで、このような構造のハニカム構造体成形用口金のスリットは、四角セルのハニカム構造体を押出成形するための口金のように、研削加工により製造することは不可能であった。
【0008】
そこで、被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のセル構造に対応したスリットを形成するために、そのスリットのセル構造を転写したような網目形状の電極を用いて放電加工にて口金を製造していた。しかしながら、網目形状の電極を製造するための工数は多く、また、DPFは径が大きいため、口金を製作するための電極の製作に数ヶ月〜半年程度の時間を要していた。そこで、被処理流体の流入側と流出側のセルの大きさが異なる構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製する方法が求められてきた。
【0009】
本発明の課題は、大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製することのできる、ハニカム構造体成形用口金の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、櫛歯電極を用いた放電加工により、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち本発明によれば、以下のハニカム構造体成形用口金の製造方法が提供される。
【0011】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記セルは、所定の開口面積を有する第1のセルと、前記第1のセルと開口面積が異なる第2のセルとが交互に配設されたハニカム構造体を製造するために、原料となる坏土を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法であって、一方の端面と他方の端面を有した板状の口金基体の、坏土導入面とされる前記他方の端面に、坏土を導入するための複数の導入孔を形成する導入孔形成工程と、前記口金基体の坏土成形面とされる前記一方の端面において、前記スリットの溝幅に対応する複数の板状の突起電極が配設された櫛歯電極により櫛歯放電加工を行い、前記坏土が押出されることにより前記ハニカム構造体の前記隔壁を形成するための、前記導入孔に連通させたスリットを形成するスリット形成工程と、を有するハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0012】
[2] 前記導入孔形成工程の前に、または後に、前記一方の端面と前記導入孔とが連通するように、前記スリットの幅よりも小さい開口径の加工液用液穴を前記スリットが形成される位置に形成する液穴形成工程を有し、前記導入孔形成工程および前記液穴形成工程の後に、加工液を前記加工液用液穴に流通させつつ前記スリット形成工程を行う前記[1]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0013】
[3] 前記スリット形成工程において、前記櫛歯電極にて所定の前記スリットを形成した後に、前記櫛歯電極を回転させ、次の所定の前記スリットを形成する前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0014】
[4] 前記スリット形成工程において、2種以上の前記櫛歯電極を用いる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法に用いる、突起電極が配設された櫛歯電極は、容易に作製することができる。このため、櫛歯電極を用いた櫛歯放電加工を行う本発明の製造方法は、大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するための口金をより容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】櫛歯電極の一部を模式的に示す斜視図である。
【図2A】導入孔を形成した口金基体の断面図である。
【図2B】導入孔を形成した口金基体の一部断面斜視図である。
【図2C】スリットの形成位置と導入孔の形成位置を説明するための口金基体を一方の端面側から見た模式図である。
【図3A】加工液用液穴を形成した口金基体の一部断面斜視図である。
【図3B】スリットを形成するところを示す口金基体の一部断面斜視図である。
【図4A】櫛歯電極による放電加工の第1工程を説明するための模式図である。
【図4B】櫛歯電極による放電加工の第2工程を説明するための模式図である。
【図4C】櫛歯電極による放電加工の第3工程を説明するための模式図である。
【図4D】櫛歯電極による放電加工の第4工程を説明するための模式図である。
【図4E】櫛歯電極による放電加工の第5工程を説明するための模式図である。
【図4F】櫛歯電極による放電加工の第6工程を説明するための模式図である。
【図5A】他の実施形態の櫛歯電極による放電加工の工程を説明するための模式図である。
【図5B】図5Aに続く、他の実施形態の櫛歯電極による放電加工の工程を説明するための模式図である。
【図6A】本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって作製した口金の断面図である。
【図6B】本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって作製した口金を一方の端面側から見た模式図である。
【図7】本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって作製した口金によって製造されたハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
本発明のハニカム構造体成形用口金(以下、単に口金1という場合がある)の製造方法は、流体の流路となる複数のセル42を区画形成する多孔質の隔壁41を備え、セル42は、所定の開口面積を有する第1のセルと、第1のセルと開口面積(セルの大きさ)が異なる第2のセルとが交互に配設されたハニカム構造体40(図7参照)を製造(成形)するために、原料となる坏土を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法である。本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法によって製造された口金1により製造されたハニカム構造体40は、例えば、第1のセルが、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封じされ、第2のセルが、一方の端部が目封じされ且つ他方の端部が開口されて、第1のセルが開口する一方の端部から流入した流体を、隔壁41を透過させて第2のセル内に透過流体として流出させ、透過流体を第2のセルが開口する他方の端部から流出させるハニカムフィルタとして使用することができる。
【0019】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法は、一方の端面7と他方の端面8を有した板状の口金基体2の、坏土導入面18とされる他方の端面8に、坏土を導入するための複数の導入孔4を形成する導入孔形成工程と、口金基体2の坏土成形面17とされる一方の端面7において、スリット5の溝幅に対応する複数の板状の突起電極23が配設された櫛歯電極21(図1参照)により櫛歯放電加工を行い、坏土が押出されることによりハニカム構造体の隔壁41を形成するための、導入孔4に連通させたスリット5を形成するスリット形成工程と、を有する。
【0020】
大きさが異なるセル42を有するハニカム構造体を成形するための口金1は、隔壁41を形成するためのスリット5が直線状ではないため、従来、網目状の電極を使用しており、電極を作製することに時間がかかり、コストアップの原因となっていた。本発明の製造方法は、図1に示すような櫛歯電極21を用いる方法である。櫛歯電極21は、口金1の溝幅に対応する複数の板状の突起電極23が板状の櫛歯電極支持部22に設けられたものである。櫛歯電極21は、放電ではなく切削、研削で加工することができるため、製造にかかる時間を削減し、製造コストを削減することができる。また、従来の網目状の電極では、電極を精度良く作製することが困難であるため、口金のスリット幅精度が低下していた。本発明の製造方法に用いる櫛歯電極21は、簡単な構造であり高精度な加工が可能である。つまり、櫛歯電極21は、短時間で精度よいものを作製可能であるため、これを用いた本発明の製造方法は、製造コストを削減することが可能である。
【0021】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法では、導入孔形成工程の前に、または後に、一方の端面7と導入孔4とが連通するように、スリット5の幅よりも小さい開口径の加工液用液穴3をスリット5が形成される位置に形成する液穴形成工程を有し、導入孔形成工程および液穴形成工程の後に、加工液10を加工液用液穴3を流通させつつスリット形成工程を行うことが好ましい。
【0022】
加工液を加工液用液穴3を流通させつつスリット形成工程を行うことにより、放電加工によって発生するスラッジを口金基体2の表面側に排出することが可能となり、櫛歯電極21による安定した放電を起こさせて正常な放電加工を実現し、ハニカム構造体成形用口金を高精度に製造することができる。
【0023】
ハニカム構造体成形用口金の製造方法では、スリット形成工程において、櫛歯電極21にて所定のスリット5を形成した後に、櫛歯電極21を一方の端面7上で回転させ、次の所定のスリット5を形成する。大きさが異なるセル42を有するハニカム構造体40は、隔壁41が直線状ではなく、成形するための口金1のスリット5も直線状ではない。このため、櫛歯電極21を回転させてスリット5を形成することにより、口金1の非直線状のスリット5を形成することができる。
【0024】
ハニカム構造体成形用口金の製造方法では、スリット形成工程において、2種以上の櫛歯電極21を用いる。大きさが異なるセル42を有するハニカム構造体42を成形するための口金1を作製するためには、2種以上の櫛歯電極21を用いる必要がある。
【0025】
本発明の実施の形態を以下、さらに詳しく説明する。まず、ハニカム構造体成形用口金1の口金基体2を構成する材料について説明する。
【0026】
(口金基体を構成する材質)
本実施形態で用いられる口金基体2を構成する材料としては、ハニカム構造体成形用口金の材料として一般的に用いられている金属又は合金を挙げることができる。例えば、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属を含む金属又は合金を挙げることができる。なお、このような第一の板状部材23を構成する金属又は合金は、炭素(C)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の添加剤を含んだものであることが更に好ましい。
【0027】
また、口金基体2を構成する合金の他の例として、ステンレス合金、より具体的には、SUS630(C;0.07以下,Si;1.00以下,Mn;1.00以下,P;0.040以下,S;0.030以下,Ni;3.00〜5.00,Cr;15.50〜17.50,Cu;3.00〜5.00,Nb+Ta;0.15〜0.45,Fe;残部(単位は質量%))を好適例として挙げることができる。このようなステンレス合金は、加工が比較的に容易であるとともに、安価な材料である。
【0028】
また、口金基体2を構成する合金の他の例として、耐摩耗性に優れた炭化タングステン基超硬合金から構成されたものを用いることが好ましい。これにより、スリット5の磨耗が有効に防止されたハニカム構造体成形用口金1を製造することができる。
【0029】
上記した炭化タングステン基超硬合金は、少なくとも炭化タングステンを含む合金であり、炭化タングステンを、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、及びクロム(Cr)からなる群より選択される少なくとも一つの金属で焼結した合金であることが好ましい。上記群より選択される少なくとも一つの金属を結合材として使用した炭化タングステン基超硬合金は、耐摩耗性や機械的強度に特に優れている。具体的なものとしては、例えば、コバルト(Co)を結合材として使用した炭化タングステン基超硬合金、WC−Co0.1〜50質量%等を挙げることができる。
【0030】
上記の材料からなる板状部材を口金基体2として、以下の工程によりハニカム構造体成形用口金1を製造することができる。
【0031】
(導入孔形成工程)
まず、図2A、図2Bに示すように、口金基体2の坏土導入面18とされる他方の端面8に厚さ方向に開口する導入孔4を形成する。また、口金基体2に導入孔4を形成する際には、図2Cに示すように、ハニカム構造体成形用口金1のハニカム形状のスリット5における交差部の部分と連通するような位置に形成することが好ましい。このような位置に導入孔4を形成することにより、ハニカム構造体成形用口金1を用いて押出成形を行う際に、導入孔4に導入した成形原料をスリット5全体に均一に広げることができ、高い成形性を実現することができる。
【0032】
導入孔4の開口径の大きさは、押出成形するハニカム構造体40(図7参照)の形状(隔壁の厚み・間隔)等によって適宜決定することができる。このような導入孔4を形成する方法については特に制限はないが、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等による従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0033】
(液穴形成工程)
図3Aに示すように、導入孔形成工程後(導入孔形成工程の前でも可)に、一方の端面7と導入孔4とが連通するように、スリット5の幅よりも小さい開口径の加工液用液穴3をスリット5が形成される位置に形成する。
【0034】
(スリット形成工程)
スリット形成工程で形成されるスリット5は、異なる大きさのセル42を有するハニカム構造体40を押出成形するためのハニカム状のスリット5である。スリット5の幅は、例えば、0.05〜1.00mmである。スリット5の坏土成形面17からの深さは、例えば、0.50〜5.00mmである。
【0035】
(櫛歯電極)
スリット形成工程においては、スリット5の一辺に対応する平行な板状の複数の突起電極23を突起電極支持部22に並列させた図1に示すような、櫛歯電極21を用いて、坏土成形面17上で、複数回に分けて櫛歯放電加工を行う。
【0036】
櫛歯電極21に設けられた複数の突起電極23は、厚みtをスリット5の幅に対応させて、例えば、0.020〜0.800mmとする。また突起電極23の高さHはスリット5の深さよりも長く、例えば、1.00〜8.00mmとする。そして突起電極23の幅Lは、例えば、0.40〜2.00mmとする。
【0037】
なお、スリット5の深さが深い場合には櫛歯電極21による加工を複数回行うことが好ましい。その理由は、電極の消耗により、スリット5が深い部分ほどスリット幅が狭いテーパ状になることがあるためである。この深い部分のスリット幅を広げるため、櫛歯放電加工を行った後で同じ位置に、櫛歯電極21を新たのものと交換し、複数回に分けて新しい櫛歯電極21で放電加工を行うことが好ましい。また、繰り返し時の櫛歯放電加工に突起電極23の厚みtを薄くしたものを用いることは、加工面の上面に近い部分ではほとんど加工が行われず、スリット幅がテーパ状に狭くなったスリット5の深い部分のみを加工可能であることから好ましい。
【0038】
(櫛歯電極を構成する材質)
本実施形態で用いられる櫛歯電極21を構成する材料としては特に限定するものではないが、微粒子高強度高密度カーボングラファイト材を挙げることができる。より具体的には平均粒子径5μm以下のものを好適例として挙げることができる。このようなカーボングラファイトを材質としたカーボン電極は、櫛歯電極21の突起電極23等の微細形状のものを高い精度で形成することが可能であるという利点や、高硬度で耐摩耗性に優れている、加工速度が速いという利点がある。しかし、高硬度であるが故に、破損しやすいため、微粒子高強度高密度カーボングラファイト材を櫛歯電極21を構成する材料として用いた場合には、放電加工に伴って発生するスラッジを加工液などによって効率良く排除することが特に好ましい。
【0039】
スリット形成工程について、図4A〜図4Fを用いて説明する。図3Bに示すように、スリット形成工程では、櫛歯電極21を用いて、加工液10を加工液用液穴3を流通させつつ加工を行うことが好ましい。図4A〜図4Fは、スリット5が形成される側(一方の端面7、坏土形成面17)から見た模式図であり、各工程においてスリット5が形成される部分(スリット5a)と、それ以前の工程により形成されたスリット5(スリット5b)とを区別して示している。形成されるスリット5aは、櫛歯電極21の突起電極23の配置に等しい。櫛歯電極21は、2種以上用いて、必要により、坏土形成面17上にて回転させて口金基体2を加工する。
【0040】
図4Aに示すように、第1の櫛歯電極21により、第1工程の加工を行ってスリット5aを形成する。スリット5aは、櫛歯電極21の突起電極23の配置に等しい。続いて、図4Bに示すように、同じ第1の櫛歯電極21を平行移動させ、第2工程の加工を行って、異なる列のスリット5aを形成する(図4Bでは、図4Aの第1工程において形成されたスリット5aをスリット5bとして示す)。
【0041】
続いて図4Cに示すように、第3工程では、第1の櫛歯電極21を一方の端面7(坏土成形面17)上にて90°回転させ、第1工程と第2工程で形成したスリット列に垂直なスリット列の加工を行ってスリット5aを形成する(図4Cでは、第1工程及び第2工程において形成されたスリット5aをスリット5bとして示す)。
【0042】
さらに図4Dに示すように、第4工程では、同じ第1の櫛歯電極21を平行移動させて加工を行って、異なる列のスリット5aを形成する。
【0043】
次に、図4Eに示すように、第5工程では、第2の櫛歯電極21を用いて加工を行い、第6工程では、図4Fに示すように、第2の櫛歯電極21を回転させて、スリット5aを形成する。
【0044】
このように2種類の電極を使う場合、準備する電極が少なくて済み、電極製作時間・コストが削減できる。また、電極交換が2回しかないため、位置決めなどの段取り工数が低減できる。さらに、HAC形状のセルであればどのようなものでも加工できる。
【0045】
或いは、図4Eに示す第5工程において、第1の櫛歯電極21を第4工程から45°回転させて第1の櫛歯電極21により加工を行うこともできる。この場合、第1の櫛歯電極21を90°回転させて図4Fに示す第6工程の加工を行うことができる。このように1種類の電極を使う場合、準備する電極が少なくて済み、電極製作時間・コストが削減できる。また、電極交換が1回しかないため、位置決めなどの段取り工数が低減できる。
【0046】
なお、第1の櫛歯電極21を、図5Aに示すスリット5aに対応した配置の突起電極23を有するものとすることにより、前述の第1工程と第2工程、第3工程と第4工程を同時に形成することもできる。
【0047】
さらに、第2の櫛歯電極21を、図5Bに示すスリット5aに対応した配置の突起電極23を有するものとすることにより、前述の第5工程と第6工程を同時に形成することもできる。このような2種類の電極を使う場合は、準備する電極が少なくて済み、電極製作時間・コストが削減できる。また、電極交換が2回しかないため、位置決めなどの段取り工数が低減できる。さらに、一度に加工する辺が多いため、図4の場合に比較して、櫛歯電極21の櫛歯形成には時間がかかる一方、スリット放電加工時間が短縮できる。
【0048】
また、第1工程〜第6工程を異なる6枚の櫛歯電極にて行ってもよい。このように6枚の電極を使用することにより、加工の都度、電極を交換するため消耗によるスリット加工精度のばらつきを大幅に低減できる。また、どのようなセル形状でも加工できる。さらに、粗加工用・中仕上加工用・仕上加工用の3種類の櫛歯電極を用意し、それぞれの工程を3回の加工に分けて行うことにより、効率よく、精度よく加工することもできる。
【0049】
上記の工程により作製することのできるハニカム構造体成形用口金1の断面図を図6Aに、一方の端面7(坏土成形面17)から見た模式図を図6Bに示す。この口金1を用いて、坏土を押出成形することにより、図7に示すような、ハニカム構造体を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例)
導入孔形成工程において、ステンレス製で、縦横440×440mm、厚さ50mmの板状の口金基体2の他方の端面8の直径390mmの範囲に、開口径が1.70mmの導入孔4を図2A〜2Cに示すように、押出成形するハニカム構造体40のセル42の頂点に相当する位置に、坏土導入面18から47.0mmの深さまで、約3万個形成した。
【0052】
次に図3Aに示すように、スリット5を形成する側の一方の端面7側の、導入孔4に相当する位置に、加工液用液穴3を形成した。
【0053】
次に図3Bに示すように櫛歯放電加工を行った。具体的には、櫛歯電極21に設けられた板状の突起電極23は、厚さtが0.08mm、高さHが4.50mm、突起電極23に平行な方向の幅Lが0.70mm、突起電極23の配列は図4A,4E等に示すようなものを使用した。
【0054】
口金基体2の他方の端面8側から導入孔4を経由して一方の端面7側に加工液10を流出させながら、図4A〜図4Fに示すように櫛歯電極21を用いて櫛歯放電加工を行った。
【0055】
(比較例)
スリット5のセル構造を転写したような網目形状の電極をCuW合金の素材にドリル加工後、ワイヤ放電加工することにより作製した。
【0056】
(結果)
実施例の櫛歯電極ではスリットを1辺ずつ6回に分けて加工したが、比較例の網目状の電極では全ての辺を1度に加工した。口金スリットの放電加工時間のみを捉えると、どちらの電極を使用しても時間はほぼ同じであった。
【0057】
しかし、電極製作に要する時間を比較すると、口金1型分の電極を準備するのに要する時間は、比較例の網目状の電極では実施例の櫛歯電極の約8倍であった。
【0058】
実施例の場合、加工範囲が広いため口金1型を4領域に分割して加工した。また、1辺ずつ6回に分けて異なる櫛歯電極にて加工を行った。さらに、粗加工・中仕上加工・仕上加工の3回の加工を異なる櫛歯電極にて行った。そのため必要となる電極数は、櫛歯電極では6回×3回仕上×4領域=72枚であった。また網目状電極の場合も、4領域に分割して加工したため、必要となる電極数は、1回×4領域=4枚であった。
【0059】
実施例の場合で電極を準備するのに必要となる時間は、櫛歯電極で1枚当たり12時間、網目状電極で1枚あたり1700時間であった。必要となる電極数をかけると、1型分の電極を準備するのに要する時間は、櫛歯電極で12時間×72枚=864時間、網目状電極では1,700時間×4枚=6,800時間であった。
【0060】
網目状電極では1型分の電極を準備するだけで1年弱の期間を要するため、現実的でない。一方、櫛歯電極では、1枚の電極を準備するのに12時間を要するが、1枚の電極を使い終わるまでの時間は粗加工・中仕上加工・仕上加工で異なるものの、平均して16時間程度であり、電極を使用している間に次に使用する電極を準備することができる。これによりスリット加工に要する時間は電極を準備する時間を考慮せずとも済み、口金スリットの放電加工時間は、16時間×3回(粗〜仕上)×6回×4領域≒1,150時間であった。したがって、口金の加工時間は、櫛歯電極の場合も網目状電極の場合もほぼ同じであるが、櫛歯電極の方が準備に要する時間が短く、電極の準備に必要な時間と口金の加工時間とを合わせると、櫛歯電極の方が大幅に時間を短縮することができる。また、電極の消耗によるスリット加工の経時変化を大幅に低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
大きさが異なるセルを有する構造のハニカム構造体を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:ハニカム構造体成形用口金、2:口金基体、3:加工液用液穴、4:導入孔、5:スリット、5a:形成されるスリット、5b:形成されたスリット、7:一方の端面、8:他方の端面、10:加工液、17:坏土成形面、18:坏土導入面、21:櫛歯電極、22:櫛歯電極支持部、23:突起電極、40:ハニカム構造体、41:隔壁、42:セル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記セルは、所定の開口面積を有する第1のセルと、前記第1のセルと開口面積が異なる第2のセルとが交互に配設されたハニカム構造体を製造するために、原料となる坏土を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法であって、
一方の端面と他方の端面を有した板状の口金基体の、坏土導入面とされる前記他方の端面に、坏土を導入するための複数の導入孔を形成する導入孔形成工程と、
前記口金基体の坏土成形面とされる前記一方の端面において、前記スリットの溝幅に対応する複数の板状の突起電極が配設された櫛歯電極により櫛歯放電加工を行い、前記坏土が押出されることにより前記ハニカム構造体の前記隔壁を形成するための、前記導入孔に連通させたスリットを形成するスリット形成工程と、
を有するハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項2】
前記導入孔形成工程の前に、または後に、前記一方の端面と前記導入孔とが連通するように、前記スリットの幅よりも小さい開口径の加工液用液穴を前記スリットが形成される位置に形成する液穴形成工程を有し、
前記導入孔形成工程および前記液穴形成工程の後に、加工液を前記加工液用液穴に流通させつつ前記スリット形成工程を行う請求項1に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項3】
前記スリット形成工程において、前記櫛歯電極にて所定の前記スリットを形成した後に、前記櫛歯電極を回転させ、次の所定の前記スリットを形成する請求項1または2に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項4】
前記スリット形成工程において、2種以上の前記櫛歯電極を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記セルは、所定の開口面積を有する第1のセルと、前記第1のセルと開口面積が異なる第2のセルとが交互に配設されたハニカム構造体を製造するために、原料となる坏土を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金の製造方法であって、
一方の端面と他方の端面を有した板状の口金基体の、坏土導入面とされる前記他方の端面に、坏土を導入するための複数の導入孔を形成する導入孔形成工程と、
前記口金基体の坏土成形面とされる前記一方の端面において、前記スリットの溝幅に対応する複数の板状の突起電極が配設された櫛歯電極により櫛歯放電加工を行い、前記坏土が押出されることにより前記ハニカム構造体の前記隔壁を形成するための、前記導入孔に連通させたスリットを形成するスリット形成工程と、
を有するハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項2】
前記導入孔形成工程の前に、または後に、前記一方の端面と前記導入孔とが連通するように、前記スリットの幅よりも小さい開口径の加工液用液穴を前記スリットが形成される位置に形成する液穴形成工程を有し、
前記導入孔形成工程および前記液穴形成工程の後に、加工液を前記加工液用液穴に流通させつつ前記スリット形成工程を行う請求項1に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項3】
前記スリット形成工程において、前記櫛歯電極にて所定の前記スリットを形成した後に、前記櫛歯電極を回転させ、次の所定の前記スリットを形成する請求項1または2に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項4】
前記スリット形成工程において、2種以上の前記櫛歯電極を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【公開番号】特開2011−194537(P2011−194537A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65879(P2010−65879)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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