ハニカム構造体
【課題】高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させ、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを効率良く浄化することが可能なハニカム構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】ハニカム構造体10は、第1の気孔率を有する第1隔壁1aと、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁1bの2種の異なる気孔率を有する隔壁1によってセル2が形成されている。第1隔壁1aの気孔率、つまり第1の気孔率は、25〜80%である。第2隔壁1bの気孔率、つまり第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低い。第1隔壁領域3aを形成する境界線の境界線間距離の最小距離と、第2隔壁領域3bを形成する境界線の境界線間距離の最小距離とがそれぞれ5〜40mmである。
【解決手段】ハニカム構造体10は、第1の気孔率を有する第1隔壁1aと、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁1bの2種の異なる気孔率を有する隔壁1によってセル2が形成されている。第1隔壁1aの気孔率、つまり第1の気孔率は、25〜80%である。第2隔壁1bの気孔率、つまり第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低い。第1隔壁領域3aを形成する境界線の境界線間距離の最小距離と、第2隔壁領域3bを形成する境界線の境界線間距離の最小距離とがそれぞれ5〜40mmである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。さらに詳しくは、高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させ、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを効率良く浄化することが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンに関する排ガス規制の強化に伴い、ディーゼルエンジンからの排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)の捕集にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を使用する方法が種々提案されている。一般的には、DPFにはPMを酸化する触媒がコートされており、且つDPFの前段には同じく触媒がコートされたハニカム構造体が搭載され、このハニカム構造体では排ガスに含まれるNOをNO2とすることで、DPFに堆積したPMを燃焼させたり、エンジン制御によってポストインジェクションを実施し、未燃焼燃料を酸化し、排ガス温度を上昇させ、DPFに堆積したPMを燃焼再生する方法が採られている。
【0003】
DPFに堆積したPMを円滑に燃焼再生させる為には上述のハニカム構造体にコートされている触媒が活性化温度に達している時間をできるだけ長くする必要がある。しかしながら、ディーゼルエンジンは排気温度が低く、低負荷状態ではハニカム構造体が触媒活性温度に至らず、或いは高負荷運転後でも急激な低負荷への移行の際には、ハニカム構造体の温度が急速に低下し触媒活性温度以下となる場合があり、PMの燃焼性を阻害させたり、強制再生が完結しないという問題があった。また、近年、エンジンの小型化によりエンジン出口の排ガス温度が低下し、触媒機能が十分に働かない場合が発生するようになってきていた。
【0004】
上述の問題に鑑み、ハニカム構造体のセル隔壁を薄くしたり、気孔率を上げる等、ハニカム構造体の熱容量を下げ、基材の昇温特性を向上させる事で、触媒活性化温度に早く到達させる事が一般的に行われてきた。近年は、ディーゼル車の浄化装置として用いられる触媒担体としてのハニカム構造体は、隔壁の厚さ102μm、セル密度62セル/cm2や、隔壁の厚さ89μm、セル密度62セル/cm2の隔壁の薄いものが多くなってきている。
【0005】
しかしながら、ハニカム構造体の低熱容量化はハニカム構造体の昇温特性を向上させ、コートされた触媒を早く触媒活性化温度に到達させる事ができるものの、逆に排ガス温度が低下した時には急激に触媒活性化温度以下となる。また、排ガス温度低下時にハニカム構造体の温度低下を阻止する為にハニカム構造体の熱容量を上げると昇温特性が悪化してしまい、互いに背反の関係となる。すなわち、単純にハニカム構造体の隔壁厚さや気孔率を変え、熱容量を変更するだけではハニカム構造体にコートされた触媒が活性化温度に達している時間を延長する事は困難であった。
【0006】
そこで、2種以上の厚さを有する隔壁で構成されたハニカム構造体が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1のハニカム構造体は、高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させることは困難であるという二律背反の問題を解決し、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM)を捕集するフィルターの前段に設置する事で、フィルターに捕集されたPMの再生を円滑に完結させたり、排ガスを効率良く浄化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−289924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、隔壁の厚い部分で熱容量が大であることによる保温性大、薄い部分で熱容量が小であることによる昇温性大の効果があったが、昇温性及び保温性がさらに良好なハニカム構造体が望まれている。例えば、ディーゼル車等が、頻繁に走行と停車を繰り返した場合であっても、浄化装置として用いられるハニカム構造体の保温性が良い場合、再出発時に排ガスの浄化効率があまり低下することなく、再出発時の初期段階から触媒機能を活性化させて効率よく排ガスを浄化することが可能となるハニカム構造体が望まれている。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させ、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを効率良く浄化することが可能なハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、ハニカム構造体を、第1の気孔率を有する第1隔壁と、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁の2種の異なる気孔率を有する隔壁によってセルが形成されるように構成することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のハニカム構造体が提供される。
【0011】
[1] 複数の隔壁によって2つの端面間を互いに並行して連通する複数のセルが形成され、第1の気孔率を有する第1隔壁により形成される第1隔壁領域と、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁により形成される第2隔壁領域の少なくとも2種の異なる気孔率を有する領域が形成され、前記第1の気孔率は、25〜80%であり、前記第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、前記第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低く、前記第1隔壁領域と、前記第2隔壁領域とが、少なくとも1方向において交互に繰り返し配置され、連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離と、前記第2隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離とがそれぞれ5〜40mmであるハニカム構造体。
【0012】
[2] 前記第1の気孔率は、25〜65%であり、前記第2の気孔率は、第1の気孔率よりも10〜55%低く、連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域の境界線間距離の最小距離と前記第2隔壁領域の境界線間距離の最小距離のそれぞれが10〜30mmである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] コージェライト化原料、アルミナ、ムライト及びリチウムアルミノシリケート(LAS)、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、活性炭、及びゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種のセラミックスから構成される前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[4] 前記第1隔壁領域と前記第2隔壁領域とが、連通方向に垂直な断面において、市松模様、同心円状、または1方向に繰り返されている縞模様に形成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造体は、高気孔率の第1隔壁において熱容量が小となり、昇温性が向上する。また、低気孔率の第2隔壁において熱容量が大となり、第2隔壁に囲まれたセルでは、保温性が向上する。本発明のハニカム構造体をディーゼル車等の排ガス浄化に利用すると、頻繁にエンジン停止、始動、走行を繰り替えした場合でも、すぐに触媒を活性化させて効率よくガスを浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】ハニカム構造体の一方の端面の実施形態を示す説明図である。
【図3A】領域を形成する境界線の境界線間距離について説明するための説明図である。
【図3B】領域が長方形の場合の領域を形成する境界線の境界線間距離について説明するための説明図である。
【図4】高気孔率領域と低気孔率の領域を長方形として形成した実施形態を示す模式図である。
【図5】領域が斜め方向にずれて積層された形態で並んで配置された実施形態を示す模式図である。
【図6】領域が同心円状に形成された実施形態を示す模式図である。
【図7】領域が同心の四角形状に形成された実施形態を示す模式図である。
【図8】円形の領域が点在して形成された実施形態を示す模式図である。
【図9】四角形の領域が点在して形成された実施形態を示す模式図である。
【図10】1方向において領域が交互に繰り返して配置された実施形態を示す模式図である。
【図11】本発明のハニカム構造体の製造工程を説明する模式図である。
【図12】高気孔率領域と低気孔率の領域の好ましい範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施の形態を示す斜視図であり、図2は図1に示すハニカム構造体における一方の端面の実施形態を示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態のハニカム構造体は、複数の隔壁1によって2つの端面S1,S2間を互いに並行して連通する複数のセル2が形成されたハニカム構造体10である。そして、ハニカム構造体10は、複数の隔壁1が、セラミックスから構成されるとともに、第1の気孔率を有する第1隔壁1aと、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁1bの2種の異なる気孔率を有する隔壁1によってセルが形成されている(図2参照)。
【0019】
本発明のハニカム構造体10は、第1隔壁1aによって形成される第1隔壁領域3aと、第1隔壁1aの気孔率よりも気孔率の低い第2隔壁1bによって形成される第2隔壁領域3bとが、少なくとも1方向において繰り返し配置されている。ハニカム構造体10が車等の排ガスの浄化装置として用いられた場合、第1隔壁領域3aの面積(高気孔率領域の面積)が多くなればなるほど、昇温しやすくなるが、エンジンを停止した場合に、降温しやすい。また、第2隔壁領域3bの面積(低気孔率領域の面積)が多くなればなるほど、昇温しにくくなり、エンジンを停止した場合に、降温しにくくなる。したがって、第1隔壁領域3aと、第2隔壁領域3bとが、少なくとも1方向において繰り返し配置され、第1の気孔率は、25〜80%であり、第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低いことが好ましい。さらに、連通方向に垂直な断面における、領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離22が5〜40mmであることが好ましい。
【0020】
第1隔壁1aの気孔率、つまり第1の気孔率は、25〜80%であることが好ましい。より好ましくは、25〜65%である。気孔率をこの範囲とすることにより、昇温性を良くすることができる。
【0021】
第2隔壁1bの気孔率、つまり第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低いことが好ましい。第1の気孔率よりも10〜55%低いことが、さらに好ましい。気孔率を10%未満にすると、触媒がつきにくくなる。第2の気孔率を第1の気孔率よりも5〜70%低くすることにより、保温性を向上させることができる。
【0022】
本発明のハニカム構造体10は、隔壁1の厚さが、0.076〜0.127mmであることが好ましい。薄壁が薄くなればなるほど、昇温しやすくなるが、エンジンを停止した場合に、降温しやすい。また、厚壁が厚くなればなるほど、昇温しにくくなり、エンジンを停止した場合に、降温しにくくなる。したがって、降温性と昇温性のバランスが重要であり、上記範囲とすることが好ましい。
【0023】
図3A及び図3Bを用いて領域を形成する境界線の境界線間距離について説明する。境界線間距離とは、その領域を形成する境界線のうち、対向する2つの境界線間の距離(最短距離)をいう。図3Aは、正方形の第1隔壁領域3aと第2隔壁領域3bが交互に並んだ実施形態である。この場合、図に示す距離が境界線間の最小距離22となる。また、図3Bは、長方形の第1隔壁領域3aと第2隔壁領域3bが交互に並んだ実施形態である。この場合、図に示すように境界線間距離のうち短い方の距離(図の縦方向の距離)が境界線間の最小距離22となる。第1隔壁領域3aの境界線間距離の最小距離22、及び第2隔壁領域3bの境界線間距離の最小距離22を5〜40mmとすることにより、熱しやすく冷めにくいハニカム構造体10とすることができる。
【0024】
本実施の形態において、ハニカム構造体10を構成する隔壁1は、セラミックスを用いて構成されることが好ましく、コージェライト化原料、アルミナ、ムライト及びリチウムアルミノシリケート(LAS)、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、活性炭、ゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種のセラミックスから構成されることがより好ましい。
【0025】
降温性と昇温性のバランスが重要であり、ハニカム構造体10は、第1隔壁領域3a(高気孔率領域)の周囲が第2隔壁領域3b(低気孔率領域)に囲まれ、第2隔壁領域3bの周囲が第1領域に囲まれていることがより好ましい。具体的には、図2に示すように連通方向の両端面S1,S2(または、連通方向に垂直な断面)において、第1隔壁1aによって形成される領域(第1隔壁領域3a)と、第2隔壁1bによって形成される領域(第2隔壁領域3b)は、それぞれが四角形に形成され、交互に規則的に配置されることが好ましく、市松模様として形成されることがさらに好ましい。なお、それぞれの領域は、正方形に限られず、長方形であってもよい(図4参照)が、正方形の方が、それぞれの領域間の熱交換が行われやすい。このように高気孔率領域と低気孔率領域とを規則的に配置すると、それぞれの領域間の熱交換が効率よく行われる。これにより、高気孔率領域が昇温すると、低気孔率領域に熱を伝達し、低気孔率領域にて熱を保持することが可能となる。
【0026】
このように構成することにより、また、高気孔率の第1隔壁1aにおいて熱容量が小となり、第1隔壁1aに囲まれたセル2では、熱伝達による昇温が速いため、より昇温性が向上する。第2隔壁1bにおいて熱容量が大となり、第2隔壁1bに囲まれたセル2では、熱伝達による降温が遅いため、より保温性が向上する。そして、ディーゼル車等に設置して使用する場合に、頻繁にエンジン停止、始動、走行を繰り替えした場合でも、すぐに触媒を活性化させて効率よくガスを浄化することができる。
【0027】
従って、上記のように構成することによって、加熱時には高気孔率の隔壁1aの部分が先に加熱され、ハニカム構造体10にコートされている触媒が速やかに活性温度に達するとともに、排ガス温度の低下時には、低気孔率の隔壁1bの部分の冷却が遅れ、触媒活性温度域に達している時間を延長することが可能となる。
【0028】
第1隔壁1aで構成された第1隔壁領域3a、及び第2隔壁1bで構成された第2隔壁領域3bが正方形として形成され市松模様に配置された場合に、連通方向に垂直な断面における、第1隔壁領域3a、第2隔壁領域3bの境界線間距離の最小距離22は、5〜40mmであることが好ましい。連通方向に垂直な断面におけるそれぞれの領域の境界線間の最小距離22をこの範囲にすることにより、熱容量に差を付けることができる。
【0029】
図5〜図10に、第1隔壁領域3aと第2隔壁領域3bのパターンの他の実施形態を示す。これらの図は、領域のパターンの実施形態を示し、ハニカム構造体10のセル2の形状ではない。各領域内に複数のセル2が存在している(図2参照)。
【0030】
図5に領域が斜め方向にずれて積層された形態で並んで配置されたハニカム構造体10の実施形態を示す。図5に示す実施形態は、第1隔壁領域3aと、第2隔壁領域3bとが、少なくとも1方向(図の横方向)において繰り返し配置され、繰り返し方向21に対し斜めの方向にそれぞれの領域がシフトするように形成されている。図4の場合、各領域は、長方形であり、短辺の長さが境界線間距離の最小距離22となる。
【0031】
図6に領域が同心円状に形成されたハニカム構造体10の実施形態を示す。図6の場合、径方向に領域が繰り返し配置されている。径方向が繰り返し方向21であり、境界線間距離の最小距離22は、径方向の境界線間距離である。
【0032】
図7に領域が同心の四角形状に形成されたハニカム構造体10の実施形態を示す。境界線間距離の最小距離22は、対向する2つの境界線間の距離である。
【0033】
図8に円形、図9に四角形の領域が点在して形成されたハニカム構造体10の実施形態を示す。これらの実施形態においても領域が交互に繰り返し配置されている。
【0034】
図10に1方向において領域が交互に繰り返して配置された縞模様のハニカム構造体10の実施形態を示す。図の縦方向が繰り返し方向21である。本実施形態は、繰り返し方向が1方向のみであるため、作製が容易である。
【0035】
次に図11を用いて、気孔率の異なる領域を有する本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。例えば、コージェライトのハニカム構造体10を得る場合には、焼成後にコージェライトとなるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等を所定の配合割合で調合し、バインダー、界面活性剤、水を加え、所定の配合割合で混合して坏土を得る。コージェライト化原料については、粒度、成分等は最終的には気孔率、熱膨脹率に影響するが、適宜、当業者であれば選定することが可能であり、また、バインダー、界面活性剤についても適宜設定することが可能である。得られた坏土を、押出成形機を用いて押出成形を行い、ハニカム構造体を得る。
【0036】
次に、図11の工程1に示すように、ハニカム構造体(生素地、または、前述の押出成形したハニカム構造体を焼成した焼成体)に目封じ用テープ11、または目封じ材のコージェライト材料を塗布し、テープ及び目封じ箇所にスラリーが入らないようにする。
【0037】
水、造粘材(CMC)、分散材、コージェライト焼成体を細かく粉砕したもの(Cdセルベン,1〜20μm)、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等を混合することにより、スラリーを作製する。粉末の比率は、例えば、Cdセルベン(1〜20μm):(タルク+カオリン+アルミナ)=1:1とすることが好ましい。そして、図11の工程2に示すように、ハニカム構造体をスラリーに浸す。テープ及び目封じ箇所以外に、スラリーが浸入しその部分を低気孔率領域とすることができる。
【0038】
次に、図11の工程3に示すように、ハニカム構造体10をスラリーを入れた容器12から取り出し、担体に付着したスラリーを圧縮エアーで吹き飛ばす。その後、図11の工程4に示すように、乾燥(120〜140℃、10〜20分)を数回繰り返した。乾燥終了後テープで目封じした場合テープを剥がす。またコージェライト材を塗布した場合は、塗布した上下端面5〜10mmを切り落とす。焼成(1420〜1430℃、10〜30時間)することにより、本発明のハニカム構造体10を得ることができる。
【0039】
なお、前述の実施形態のうち、領域を市松模様に形成する実施形態(図2)、領域が1方向において領域が交互に繰り返して配置された実施形態(図10)は、特に作製が容易であり、製造コスト削減のためには、これらの実施形態が好ましい。
【0040】
気孔率の異なる領域を有するハニカム構造体10の製造方法としては、上記以外の方法として、気孔率の異なる材料を一緒に押し出す、気孔率の異なるセグメントを貼り合わせる、等の方法も挙げられる。
【0041】
本発明のハニカム構造体10は、触媒をコートし、ハニカム触媒体とすることもできる。触媒としては、例えば、酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒、SCR触媒、三元触媒等を挙げることができる。
【0042】
触媒は、例えば、三元触媒(ハニカム構造体に、白金(Pt)とロジウム(Rh)との割合(Pt:Rh)が、5:1〜3:1となるように調製された白金族金属を担持したγアルミナを含む触媒)を、触媒担持量が160〜290g/1000cm3となるように担持し、ハニカム触媒体を製造することができる。なお、担持した触媒の助触媒としては、セリウム(Ce)の酸化物(CeO2)とジルコニウム(Zr)の酸化物(ZrO2)を用いることができる。また、白金族金属担持量は1〜10g/1000cm3となるように担持した場合、触媒コート量は、50〜300g/1000cm3であることが好ましい。50g/1000cm3未満では、保温性と昇温性の向上効果を十分に得ることができない。300g/1000cm3を超えると、触媒コートにより目詰まりしやすくなる。
【0043】
以上のように構成することにより、ハニカム構造体10(ハニカム触媒体)は、エンジン始動時、第1隔壁1aは昇温性に優れ触媒活性温度にすぐ到達することが可能であり、また、走行時は第2隔壁1bが保温性に優れているため、街中走行で頻繁に停止する時も触媒活性領域を維持することが可能である。従って、アイドリング後の運転始動時には、高気孔率の第1隔壁1aは極めて早く触媒活性温度に達し、低気孔率の第2隔壁1bは、比較的高温をアイドリング中も維持しているため、通常品に比較して極めて短時間で全ハニカム構造体での機能発揮ができる。
【0044】
また、上述のいずれかに記載のハニカム構造体10をフィルターの前段に設置した浄化装置として用いることができる。具体的には、本発明は、ディーゼル車の浄化装置のフィルターの前段に設置される、DOC(Diesel Oxidation Catalyst、ディーゼル用酸化触媒)用途のハニカムとして利用することができる。ディーゼル車の排ガス温度は低く、DOCに付いている触媒が有効に働かないということがある。それを改善する技術として、早期昇温、遅い降温を実現する技術が重要であるが、本発明のハニカム構造体10は、昇温しやすく、保温性も有する。また、ガソリン車に用いられる三元触媒でも、早期昇温、遅い降温を実現することができるため、ガソリン車の浄化装置として用いることにより、更なる排ガスクリーン化が実現可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1〜40,比較例1〜11)
焼成後にコージェライトとなるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等を所定の配合割合で調合し、バインダー、界面活性剤、水を加え、所定の配合割合で混合して坏土を得た。得られた坏土を、焼成後に表1に示すセル構造となるように乾燥、焼成段階での収縮率を考慮して、スリット幅を調整した口金を付けた押し出し成形機を用いて押し出し成形を行い、乾燥、焼成後に直径が100mmで長さが120mmの、セルの形状が略正方形となるハニカム構造体を作製した(図1参照)。触媒は、三元触媒を担持させた。実施例1〜40、比較例2〜11は、隔壁の厚さ(リブ厚)が89μmの隔壁1により、セル密度が62セル/cm2、各領域における領域を形成する境界線間の最小距離22が12.7mm(図2参照)で形成された評価担体で、気孔率が異なるものである。高気孔率領域が第1隔壁領域3a、低気孔率領域が第2隔壁領域3bである。比較例1は、全ての領域において気孔率が同一のセル構造(0.089mm、62セル/cm2)を持つ試料である。
【0047】
[気孔率の測定]
水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって気孔率を測定した。
【0048】
[浄化性能評価]
排気量2.0Lのガソリンエンジン車の排気管にハニカム構造体をキャニングした。排ガス規制モード(JC−08)走行時に、排気管と接続したパイプから、排ガスをサンプリングした。具体的には、バッグ(袋)に排ガスを貯め、走行終了後に溜まった排ガスを分析計に通すことでHCエミッション(排出ガス中の未燃炭化水素(HC))を測定した(JC−08の規定によった)。比較例1を基準にしてHC浄化性能として表に示す。
【0049】
[アイソスタティック破壊強度試験]
気孔率差アイソスタティック破壊強度試験は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されている方法に基づいて測定した。
【0050】
表1〜表3に各試料の実測値、及び評価結果を示す。表1は、領域が市松模様(図2参照)に形成されたハニカム構造体である。表2は、領域が、同心円状(図6参照)、市松模様(図2参照)、縞模様(図10参照)に形成されたハニカム構造体である。表3は、比較例1〜11を示す。なお、HC浄化性能は、比較例1と比較した比で表したため、比が1より大きいことが好ましい。表に示す浄化性能評価結果の◎は、1.30≦浄化性能比(比較例1)≦1.50、○は、1.15≦浄化性能比(比較例1)<1.30、△は1.0≦浄化性能比(比較例1)<1.15、×は、浄化性能比(比較例1)<1.0を意味する。アイソスタティック強度は、実用上、0.3MPa以上であることが好ましい。表に示すアイソスタティック強度評価結果の◎は、6.0MPa≦アイソスタティック強度、○は、5.0MPa≦アイソスタティック強度<6.0MPa、△は、0.3MPa<アイソスタティック強度<5.0MPa、×は、0.3MPa>アイソスタティック強度を意味する。なお、◎は最適を意味し、○は良好、△は使用可、×は使用不可を意味する。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
比較例2,5,8は、高気孔率のためアイソスタティック強度が低下した。比較例7は、低気孔率箇所と高気孔率箇所の気孔率差が大きく応力差が発生したためアイソスタティック強度が低下した。また比較例4,7,9,10は、低気孔率部が10%以下のため、触媒担持量が少なかった。比較例3,11は気孔率差が小さいために担体温度差が生じず、浄化性能は向上しなかった。実施例1,3,6,7,8,9,13,14はアイソスタティック強度が比較例1に比べ低下しているものの、浄化率は担体温度差が生じ向上した。実施例2,4,5,9,10〜12、13〜18は、アイソスタティック強度は比較例1に比べ大きく低下せず、且つ担体温度差が生じ、浄化性能が向上した。
【0055】
実施例19〜29はデザインを同心円状にした場合でも、浄化率は比較例1の通常担体に比べ向上した。実施例30〜32はセル構造を隔壁の厚さ89μm及びセル密度62セル/cm2から隔壁の厚さ51μm及びセル密度140セル/cm2、隔壁の厚さ64μm及びセル密度47セル/cm2、隔壁の厚さ102μm及びセル密度93セル/cm2へと変更した場合の結果を示す。セル構造を変えても担体内に気孔率差を付けることで浄化率は向上した。実施例33〜35では径を大きくした場合の結果を示した。実施例36〜39は、縞模様(図10参照)に形成されたハニカム構造体の結果である。ハニカム構造体の径や領域のパターンを変化させても、市松模様の場合と同様の結果が得られた。したがって、第1隔壁領域(高気孔率領域)と、第2隔壁領域(低気孔率領域)とが、少なくとも1方向において交互に繰り返し配置され、第1の気孔率は、25〜80%であり、第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低い場合、良好な浄化性能が得られることが分かった。図12に高気孔率領域と低気孔率の領域の好ましい範囲を示す。好ましい範囲は、(高気孔率,低気孔率)が(25%,10%)、(25%,20%)、(80%,75%)、(80%,10%)の点で形成される台形の範囲内である。また、より好ましい範囲は、(高気孔率,低気孔率)が(25%,15%)、(65%,55%)、(65%,15%)の点で形成される三角形の範囲内である。
【0056】
(実施例40〜52、比較例1,12〜16)
次に気孔率を固定し、連通方向に垂直な断面における、第1隔壁領域3aを形成する境界線の境界線間距離の最小距離22と、第2隔壁領域3bを形成する境界線の境界線間距離の最小距離22とを変化させて浄化性能について調べた。表4に各試料の実測値、その評価結果を示す。
【0057】
【表4】
【0058】
表4の比較例12,13,15は、各領域の距離が近すぎて熱容量差がつかず、良い結果が得られなかった。また、比較例14,16は、各領域の距離が遠すぎて熱移動が起きにくかった。実施例40〜52は各領域の距離が最適であるため、浄化率が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のハニカム触媒体は、比較的排ガス温度が低いディーゼルエンジンの排ガス浄化に特に有効であり、DPF前段用のハニカム触媒体の他、排ガス中のNOx浄化のためのSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒用の基材、ディーゼル酸化触媒としても有効に利用することが可能である。また、比較的高温の排ガスとなるガソリンエンジンにおいても、排気対応としては有効に利用される。
【符号の説明】
【0060】
1:隔壁、1a:第1隔壁(高気孔率)、1b:第2隔壁(低気孔率)、2:セル、3a:第1隔壁領域(高気孔率領域)、3b:第2隔壁領域(低気孔率領域)、10:ハニカム構造体、11:目封じ用テープ、12:容器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。さらに詳しくは、高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させ、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを効率良く浄化することが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンに関する排ガス規制の強化に伴い、ディーゼルエンジンからの排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)の捕集にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を使用する方法が種々提案されている。一般的には、DPFにはPMを酸化する触媒がコートされており、且つDPFの前段には同じく触媒がコートされたハニカム構造体が搭載され、このハニカム構造体では排ガスに含まれるNOをNO2とすることで、DPFに堆積したPMを燃焼させたり、エンジン制御によってポストインジェクションを実施し、未燃焼燃料を酸化し、排ガス温度を上昇させ、DPFに堆積したPMを燃焼再生する方法が採られている。
【0003】
DPFに堆積したPMを円滑に燃焼再生させる為には上述のハニカム構造体にコートされている触媒が活性化温度に達している時間をできるだけ長くする必要がある。しかしながら、ディーゼルエンジンは排気温度が低く、低負荷状態ではハニカム構造体が触媒活性温度に至らず、或いは高負荷運転後でも急激な低負荷への移行の際には、ハニカム構造体の温度が急速に低下し触媒活性温度以下となる場合があり、PMの燃焼性を阻害させたり、強制再生が完結しないという問題があった。また、近年、エンジンの小型化によりエンジン出口の排ガス温度が低下し、触媒機能が十分に働かない場合が発生するようになってきていた。
【0004】
上述の問題に鑑み、ハニカム構造体のセル隔壁を薄くしたり、気孔率を上げる等、ハニカム構造体の熱容量を下げ、基材の昇温特性を向上させる事で、触媒活性化温度に早く到達させる事が一般的に行われてきた。近年は、ディーゼル車の浄化装置として用いられる触媒担体としてのハニカム構造体は、隔壁の厚さ102μm、セル密度62セル/cm2や、隔壁の厚さ89μm、セル密度62セル/cm2の隔壁の薄いものが多くなってきている。
【0005】
しかしながら、ハニカム構造体の低熱容量化はハニカム構造体の昇温特性を向上させ、コートされた触媒を早く触媒活性化温度に到達させる事ができるものの、逆に排ガス温度が低下した時には急激に触媒活性化温度以下となる。また、排ガス温度低下時にハニカム構造体の温度低下を阻止する為にハニカム構造体の熱容量を上げると昇温特性が悪化してしまい、互いに背反の関係となる。すなわち、単純にハニカム構造体の隔壁厚さや気孔率を変え、熱容量を変更するだけではハニカム構造体にコートされた触媒が活性化温度に達している時間を延長する事は困難であった。
【0006】
そこで、2種以上の厚さを有する隔壁で構成されたハニカム構造体が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1のハニカム構造体は、高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させることは困難であるという二律背反の問題を解決し、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM)を捕集するフィルターの前段に設置する事で、フィルターに捕集されたPMの再生を円滑に完結させたり、排ガスを効率良く浄化することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−289924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、隔壁の厚い部分で熱容量が大であることによる保温性大、薄い部分で熱容量が小であることによる昇温性大の効果があったが、昇温性及び保温性がさらに良好なハニカム構造体が望まれている。例えば、ディーゼル車等が、頻繁に走行と停車を繰り返した場合であっても、浄化装置として用いられるハニカム構造体の保温性が良い場合、再出発時に排ガスの浄化効率があまり低下することなく、再出発時の初期段階から触媒機能を活性化させて効率よく排ガスを浄化することが可能となるハニカム構造体が望まれている。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高昇温性能及び高熱容量のいずれをも同時に満足させ、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを効率良く浄化することが可能なハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、ハニカム構造体を、第1の気孔率を有する第1隔壁と、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁の2種の異なる気孔率を有する隔壁によってセルが形成されるように構成することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のハニカム構造体が提供される。
【0011】
[1] 複数の隔壁によって2つの端面間を互いに並行して連通する複数のセルが形成され、第1の気孔率を有する第1隔壁により形成される第1隔壁領域と、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁により形成される第2隔壁領域の少なくとも2種の異なる気孔率を有する領域が形成され、前記第1の気孔率は、25〜80%であり、前記第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、前記第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低く、前記第1隔壁領域と、前記第2隔壁領域とが、少なくとも1方向において交互に繰り返し配置され、連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離と、前記第2隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離とがそれぞれ5〜40mmであるハニカム構造体。
【0012】
[2] 前記第1の気孔率は、25〜65%であり、前記第2の気孔率は、第1の気孔率よりも10〜55%低く、連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域の境界線間距離の最小距離と前記第2隔壁領域の境界線間距離の最小距離のそれぞれが10〜30mmである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] コージェライト化原料、アルミナ、ムライト及びリチウムアルミノシリケート(LAS)、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、活性炭、及びゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種のセラミックスから構成される前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[4] 前記第1隔壁領域と前記第2隔壁領域とが、連通方向に垂直な断面において、市松模様、同心円状、または1方向に繰り返されている縞模様に形成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造体は、高気孔率の第1隔壁において熱容量が小となり、昇温性が向上する。また、低気孔率の第2隔壁において熱容量が大となり、第2隔壁に囲まれたセルでは、保温性が向上する。本発明のハニカム構造体をディーゼル車等の排ガス浄化に利用すると、頻繁にエンジン停止、始動、走行を繰り替えした場合でも、すぐに触媒を活性化させて効率よくガスを浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】ハニカム構造体の一方の端面の実施形態を示す説明図である。
【図3A】領域を形成する境界線の境界線間距離について説明するための説明図である。
【図3B】領域が長方形の場合の領域を形成する境界線の境界線間距離について説明するための説明図である。
【図4】高気孔率領域と低気孔率の領域を長方形として形成した実施形態を示す模式図である。
【図5】領域が斜め方向にずれて積層された形態で並んで配置された実施形態を示す模式図である。
【図6】領域が同心円状に形成された実施形態を示す模式図である。
【図7】領域が同心の四角形状に形成された実施形態を示す模式図である。
【図8】円形の領域が点在して形成された実施形態を示す模式図である。
【図9】四角形の領域が点在して形成された実施形態を示す模式図である。
【図10】1方向において領域が交互に繰り返して配置された実施形態を示す模式図である。
【図11】本発明のハニカム構造体の製造工程を説明する模式図である。
【図12】高気孔率領域と低気孔率の領域の好ましい範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施の形態を示す斜視図であり、図2は図1に示すハニカム構造体における一方の端面の実施形態を示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態のハニカム構造体は、複数の隔壁1によって2つの端面S1,S2間を互いに並行して連通する複数のセル2が形成されたハニカム構造体10である。そして、ハニカム構造体10は、複数の隔壁1が、セラミックスから構成されるとともに、第1の気孔率を有する第1隔壁1aと、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁1bの2種の異なる気孔率を有する隔壁1によってセルが形成されている(図2参照)。
【0019】
本発明のハニカム構造体10は、第1隔壁1aによって形成される第1隔壁領域3aと、第1隔壁1aの気孔率よりも気孔率の低い第2隔壁1bによって形成される第2隔壁領域3bとが、少なくとも1方向において繰り返し配置されている。ハニカム構造体10が車等の排ガスの浄化装置として用いられた場合、第1隔壁領域3aの面積(高気孔率領域の面積)が多くなればなるほど、昇温しやすくなるが、エンジンを停止した場合に、降温しやすい。また、第2隔壁領域3bの面積(低気孔率領域の面積)が多くなればなるほど、昇温しにくくなり、エンジンを停止した場合に、降温しにくくなる。したがって、第1隔壁領域3aと、第2隔壁領域3bとが、少なくとも1方向において繰り返し配置され、第1の気孔率は、25〜80%であり、第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低いことが好ましい。さらに、連通方向に垂直な断面における、領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離22が5〜40mmであることが好ましい。
【0020】
第1隔壁1aの気孔率、つまり第1の気孔率は、25〜80%であることが好ましい。より好ましくは、25〜65%である。気孔率をこの範囲とすることにより、昇温性を良くすることができる。
【0021】
第2隔壁1bの気孔率、つまり第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低いことが好ましい。第1の気孔率よりも10〜55%低いことが、さらに好ましい。気孔率を10%未満にすると、触媒がつきにくくなる。第2の気孔率を第1の気孔率よりも5〜70%低くすることにより、保温性を向上させることができる。
【0022】
本発明のハニカム構造体10は、隔壁1の厚さが、0.076〜0.127mmであることが好ましい。薄壁が薄くなればなるほど、昇温しやすくなるが、エンジンを停止した場合に、降温しやすい。また、厚壁が厚くなればなるほど、昇温しにくくなり、エンジンを停止した場合に、降温しにくくなる。したがって、降温性と昇温性のバランスが重要であり、上記範囲とすることが好ましい。
【0023】
図3A及び図3Bを用いて領域を形成する境界線の境界線間距離について説明する。境界線間距離とは、その領域を形成する境界線のうち、対向する2つの境界線間の距離(最短距離)をいう。図3Aは、正方形の第1隔壁領域3aと第2隔壁領域3bが交互に並んだ実施形態である。この場合、図に示す距離が境界線間の最小距離22となる。また、図3Bは、長方形の第1隔壁領域3aと第2隔壁領域3bが交互に並んだ実施形態である。この場合、図に示すように境界線間距離のうち短い方の距離(図の縦方向の距離)が境界線間の最小距離22となる。第1隔壁領域3aの境界線間距離の最小距離22、及び第2隔壁領域3bの境界線間距離の最小距離22を5〜40mmとすることにより、熱しやすく冷めにくいハニカム構造体10とすることができる。
【0024】
本実施の形態において、ハニカム構造体10を構成する隔壁1は、セラミックスを用いて構成されることが好ましく、コージェライト化原料、アルミナ、ムライト及びリチウムアルミノシリケート(LAS)、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、活性炭、ゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種のセラミックスから構成されることがより好ましい。
【0025】
降温性と昇温性のバランスが重要であり、ハニカム構造体10は、第1隔壁領域3a(高気孔率領域)の周囲が第2隔壁領域3b(低気孔率領域)に囲まれ、第2隔壁領域3bの周囲が第1領域に囲まれていることがより好ましい。具体的には、図2に示すように連通方向の両端面S1,S2(または、連通方向に垂直な断面)において、第1隔壁1aによって形成される領域(第1隔壁領域3a)と、第2隔壁1bによって形成される領域(第2隔壁領域3b)は、それぞれが四角形に形成され、交互に規則的に配置されることが好ましく、市松模様として形成されることがさらに好ましい。なお、それぞれの領域は、正方形に限られず、長方形であってもよい(図4参照)が、正方形の方が、それぞれの領域間の熱交換が行われやすい。このように高気孔率領域と低気孔率領域とを規則的に配置すると、それぞれの領域間の熱交換が効率よく行われる。これにより、高気孔率領域が昇温すると、低気孔率領域に熱を伝達し、低気孔率領域にて熱を保持することが可能となる。
【0026】
このように構成することにより、また、高気孔率の第1隔壁1aにおいて熱容量が小となり、第1隔壁1aに囲まれたセル2では、熱伝達による昇温が速いため、より昇温性が向上する。第2隔壁1bにおいて熱容量が大となり、第2隔壁1bに囲まれたセル2では、熱伝達による降温が遅いため、より保温性が向上する。そして、ディーゼル車等に設置して使用する場合に、頻繁にエンジン停止、始動、走行を繰り替えした場合でも、すぐに触媒を活性化させて効率よくガスを浄化することができる。
【0027】
従って、上記のように構成することによって、加熱時には高気孔率の隔壁1aの部分が先に加熱され、ハニカム構造体10にコートされている触媒が速やかに活性温度に達するとともに、排ガス温度の低下時には、低気孔率の隔壁1bの部分の冷却が遅れ、触媒活性温度域に達している時間を延長することが可能となる。
【0028】
第1隔壁1aで構成された第1隔壁領域3a、及び第2隔壁1bで構成された第2隔壁領域3bが正方形として形成され市松模様に配置された場合に、連通方向に垂直な断面における、第1隔壁領域3a、第2隔壁領域3bの境界線間距離の最小距離22は、5〜40mmであることが好ましい。連通方向に垂直な断面におけるそれぞれの領域の境界線間の最小距離22をこの範囲にすることにより、熱容量に差を付けることができる。
【0029】
図5〜図10に、第1隔壁領域3aと第2隔壁領域3bのパターンの他の実施形態を示す。これらの図は、領域のパターンの実施形態を示し、ハニカム構造体10のセル2の形状ではない。各領域内に複数のセル2が存在している(図2参照)。
【0030】
図5に領域が斜め方向にずれて積層された形態で並んで配置されたハニカム構造体10の実施形態を示す。図5に示す実施形態は、第1隔壁領域3aと、第2隔壁領域3bとが、少なくとも1方向(図の横方向)において繰り返し配置され、繰り返し方向21に対し斜めの方向にそれぞれの領域がシフトするように形成されている。図4の場合、各領域は、長方形であり、短辺の長さが境界線間距離の最小距離22となる。
【0031】
図6に領域が同心円状に形成されたハニカム構造体10の実施形態を示す。図6の場合、径方向に領域が繰り返し配置されている。径方向が繰り返し方向21であり、境界線間距離の最小距離22は、径方向の境界線間距離である。
【0032】
図7に領域が同心の四角形状に形成されたハニカム構造体10の実施形態を示す。境界線間距離の最小距離22は、対向する2つの境界線間の距離である。
【0033】
図8に円形、図9に四角形の領域が点在して形成されたハニカム構造体10の実施形態を示す。これらの実施形態においても領域が交互に繰り返し配置されている。
【0034】
図10に1方向において領域が交互に繰り返して配置された縞模様のハニカム構造体10の実施形態を示す。図の縦方向が繰り返し方向21である。本実施形態は、繰り返し方向が1方向のみであるため、作製が容易である。
【0035】
次に図11を用いて、気孔率の異なる領域を有する本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。例えば、コージェライトのハニカム構造体10を得る場合には、焼成後にコージェライトとなるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等を所定の配合割合で調合し、バインダー、界面活性剤、水を加え、所定の配合割合で混合して坏土を得る。コージェライト化原料については、粒度、成分等は最終的には気孔率、熱膨脹率に影響するが、適宜、当業者であれば選定することが可能であり、また、バインダー、界面活性剤についても適宜設定することが可能である。得られた坏土を、押出成形機を用いて押出成形を行い、ハニカム構造体を得る。
【0036】
次に、図11の工程1に示すように、ハニカム構造体(生素地、または、前述の押出成形したハニカム構造体を焼成した焼成体)に目封じ用テープ11、または目封じ材のコージェライト材料を塗布し、テープ及び目封じ箇所にスラリーが入らないようにする。
【0037】
水、造粘材(CMC)、分散材、コージェライト焼成体を細かく粉砕したもの(Cdセルベン,1〜20μm)、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等を混合することにより、スラリーを作製する。粉末の比率は、例えば、Cdセルベン(1〜20μm):(タルク+カオリン+アルミナ)=1:1とすることが好ましい。そして、図11の工程2に示すように、ハニカム構造体をスラリーに浸す。テープ及び目封じ箇所以外に、スラリーが浸入しその部分を低気孔率領域とすることができる。
【0038】
次に、図11の工程3に示すように、ハニカム構造体10をスラリーを入れた容器12から取り出し、担体に付着したスラリーを圧縮エアーで吹き飛ばす。その後、図11の工程4に示すように、乾燥(120〜140℃、10〜20分)を数回繰り返した。乾燥終了後テープで目封じした場合テープを剥がす。またコージェライト材を塗布した場合は、塗布した上下端面5〜10mmを切り落とす。焼成(1420〜1430℃、10〜30時間)することにより、本発明のハニカム構造体10を得ることができる。
【0039】
なお、前述の実施形態のうち、領域を市松模様に形成する実施形態(図2)、領域が1方向において領域が交互に繰り返して配置された実施形態(図10)は、特に作製が容易であり、製造コスト削減のためには、これらの実施形態が好ましい。
【0040】
気孔率の異なる領域を有するハニカム構造体10の製造方法としては、上記以外の方法として、気孔率の異なる材料を一緒に押し出す、気孔率の異なるセグメントを貼り合わせる、等の方法も挙げられる。
【0041】
本発明のハニカム構造体10は、触媒をコートし、ハニカム触媒体とすることもできる。触媒としては、例えば、酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒、SCR触媒、三元触媒等を挙げることができる。
【0042】
触媒は、例えば、三元触媒(ハニカム構造体に、白金(Pt)とロジウム(Rh)との割合(Pt:Rh)が、5:1〜3:1となるように調製された白金族金属を担持したγアルミナを含む触媒)を、触媒担持量が160〜290g/1000cm3となるように担持し、ハニカム触媒体を製造することができる。なお、担持した触媒の助触媒としては、セリウム(Ce)の酸化物(CeO2)とジルコニウム(Zr)の酸化物(ZrO2)を用いることができる。また、白金族金属担持量は1〜10g/1000cm3となるように担持した場合、触媒コート量は、50〜300g/1000cm3であることが好ましい。50g/1000cm3未満では、保温性と昇温性の向上効果を十分に得ることができない。300g/1000cm3を超えると、触媒コートにより目詰まりしやすくなる。
【0043】
以上のように構成することにより、ハニカム構造体10(ハニカム触媒体)は、エンジン始動時、第1隔壁1aは昇温性に優れ触媒活性温度にすぐ到達することが可能であり、また、走行時は第2隔壁1bが保温性に優れているため、街中走行で頻繁に停止する時も触媒活性領域を維持することが可能である。従って、アイドリング後の運転始動時には、高気孔率の第1隔壁1aは極めて早く触媒活性温度に達し、低気孔率の第2隔壁1bは、比較的高温をアイドリング中も維持しているため、通常品に比較して極めて短時間で全ハニカム構造体での機能発揮ができる。
【0044】
また、上述のいずれかに記載のハニカム構造体10をフィルターの前段に設置した浄化装置として用いることができる。具体的には、本発明は、ディーゼル車の浄化装置のフィルターの前段に設置される、DOC(Diesel Oxidation Catalyst、ディーゼル用酸化触媒)用途のハニカムとして利用することができる。ディーゼル車の排ガス温度は低く、DOCに付いている触媒が有効に働かないということがある。それを改善する技術として、早期昇温、遅い降温を実現する技術が重要であるが、本発明のハニカム構造体10は、昇温しやすく、保温性も有する。また、ガソリン車に用いられる三元触媒でも、早期昇温、遅い降温を実現することができるため、ガソリン車の浄化装置として用いることにより、更なる排ガスクリーン化が実現可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1〜40,比較例1〜11)
焼成後にコージェライトとなるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等を所定の配合割合で調合し、バインダー、界面活性剤、水を加え、所定の配合割合で混合して坏土を得た。得られた坏土を、焼成後に表1に示すセル構造となるように乾燥、焼成段階での収縮率を考慮して、スリット幅を調整した口金を付けた押し出し成形機を用いて押し出し成形を行い、乾燥、焼成後に直径が100mmで長さが120mmの、セルの形状が略正方形となるハニカム構造体を作製した(図1参照)。触媒は、三元触媒を担持させた。実施例1〜40、比較例2〜11は、隔壁の厚さ(リブ厚)が89μmの隔壁1により、セル密度が62セル/cm2、各領域における領域を形成する境界線間の最小距離22が12.7mm(図2参照)で形成された評価担体で、気孔率が異なるものである。高気孔率領域が第1隔壁領域3a、低気孔率領域が第2隔壁領域3bである。比較例1は、全ての領域において気孔率が同一のセル構造(0.089mm、62セル/cm2)を持つ試料である。
【0047】
[気孔率の測定]
水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって気孔率を測定した。
【0048】
[浄化性能評価]
排気量2.0Lのガソリンエンジン車の排気管にハニカム構造体をキャニングした。排ガス規制モード(JC−08)走行時に、排気管と接続したパイプから、排ガスをサンプリングした。具体的には、バッグ(袋)に排ガスを貯め、走行終了後に溜まった排ガスを分析計に通すことでHCエミッション(排出ガス中の未燃炭化水素(HC))を測定した(JC−08の規定によった)。比較例1を基準にしてHC浄化性能として表に示す。
【0049】
[アイソスタティック破壊強度試験]
気孔率差アイソスタティック破壊強度試験は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されている方法に基づいて測定した。
【0050】
表1〜表3に各試料の実測値、及び評価結果を示す。表1は、領域が市松模様(図2参照)に形成されたハニカム構造体である。表2は、領域が、同心円状(図6参照)、市松模様(図2参照)、縞模様(図10参照)に形成されたハニカム構造体である。表3は、比較例1〜11を示す。なお、HC浄化性能は、比較例1と比較した比で表したため、比が1より大きいことが好ましい。表に示す浄化性能評価結果の◎は、1.30≦浄化性能比(比較例1)≦1.50、○は、1.15≦浄化性能比(比較例1)<1.30、△は1.0≦浄化性能比(比較例1)<1.15、×は、浄化性能比(比較例1)<1.0を意味する。アイソスタティック強度は、実用上、0.3MPa以上であることが好ましい。表に示すアイソスタティック強度評価結果の◎は、6.0MPa≦アイソスタティック強度、○は、5.0MPa≦アイソスタティック強度<6.0MPa、△は、0.3MPa<アイソスタティック強度<5.0MPa、×は、0.3MPa>アイソスタティック強度を意味する。なお、◎は最適を意味し、○は良好、△は使用可、×は使用不可を意味する。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
比較例2,5,8は、高気孔率のためアイソスタティック強度が低下した。比較例7は、低気孔率箇所と高気孔率箇所の気孔率差が大きく応力差が発生したためアイソスタティック強度が低下した。また比較例4,7,9,10は、低気孔率部が10%以下のため、触媒担持量が少なかった。比較例3,11は気孔率差が小さいために担体温度差が生じず、浄化性能は向上しなかった。実施例1,3,6,7,8,9,13,14はアイソスタティック強度が比較例1に比べ低下しているものの、浄化率は担体温度差が生じ向上した。実施例2,4,5,9,10〜12、13〜18は、アイソスタティック強度は比較例1に比べ大きく低下せず、且つ担体温度差が生じ、浄化性能が向上した。
【0055】
実施例19〜29はデザインを同心円状にした場合でも、浄化率は比較例1の通常担体に比べ向上した。実施例30〜32はセル構造を隔壁の厚さ89μm及びセル密度62セル/cm2から隔壁の厚さ51μm及びセル密度140セル/cm2、隔壁の厚さ64μm及びセル密度47セル/cm2、隔壁の厚さ102μm及びセル密度93セル/cm2へと変更した場合の結果を示す。セル構造を変えても担体内に気孔率差を付けることで浄化率は向上した。実施例33〜35では径を大きくした場合の結果を示した。実施例36〜39は、縞模様(図10参照)に形成されたハニカム構造体の結果である。ハニカム構造体の径や領域のパターンを変化させても、市松模様の場合と同様の結果が得られた。したがって、第1隔壁領域(高気孔率領域)と、第2隔壁領域(低気孔率領域)とが、少なくとも1方向において交互に繰り返し配置され、第1の気孔率は、25〜80%であり、第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低い場合、良好な浄化性能が得られることが分かった。図12に高気孔率領域と低気孔率の領域の好ましい範囲を示す。好ましい範囲は、(高気孔率,低気孔率)が(25%,10%)、(25%,20%)、(80%,75%)、(80%,10%)の点で形成される台形の範囲内である。また、より好ましい範囲は、(高気孔率,低気孔率)が(25%,15%)、(65%,55%)、(65%,15%)の点で形成される三角形の範囲内である。
【0056】
(実施例40〜52、比較例1,12〜16)
次に気孔率を固定し、連通方向に垂直な断面における、第1隔壁領域3aを形成する境界線の境界線間距離の最小距離22と、第2隔壁領域3bを形成する境界線の境界線間距離の最小距離22とを変化させて浄化性能について調べた。表4に各試料の実測値、その評価結果を示す。
【0057】
【表4】
【0058】
表4の比較例12,13,15は、各領域の距離が近すぎて熱容量差がつかず、良い結果が得られなかった。また、比較例14,16は、各領域の距離が遠すぎて熱移動が起きにくかった。実施例40〜52は各領域の距離が最適であるため、浄化率が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のハニカム触媒体は、比較的排ガス温度が低いディーゼルエンジンの排ガス浄化に特に有効であり、DPF前段用のハニカム触媒体の他、排ガス中のNOx浄化のためのSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒用の基材、ディーゼル酸化触媒としても有効に利用することが可能である。また、比較的高温の排ガスとなるガソリンエンジンにおいても、排気対応としては有効に利用される。
【符号の説明】
【0060】
1:隔壁、1a:第1隔壁(高気孔率)、1b:第2隔壁(低気孔率)、2:セル、3a:第1隔壁領域(高気孔率領域)、3b:第2隔壁領域(低気孔率領域)、10:ハニカム構造体、11:目封じ用テープ、12:容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隔壁によって2つの端面間を互いに並行して連通する複数のセルが形成され、
第1の気孔率を有する第1隔壁により形成される第1隔壁領域と、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁により形成される第2隔壁領域の少なくとも2種の異なる気孔率を有する領域が形成され、
前記第1の気孔率は、25〜80%であり、
前記第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、前記第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低く、
前記第1隔壁領域と、前記第2隔壁領域とが、少なくとも1方向において交互に繰り返し配置され、
連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離と、前記第2隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離とがそれぞれ5〜40mmであるハニカム構造体。
【請求項2】
前記第1の気孔率は、25〜65%であり、
前記第2の気孔率は、第1の気孔率よりも10〜55%低く、
連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域の境界線間距離の最小距離と前記第2隔壁領域の境界線間距離の最小距離のそれぞれが10〜30mmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
コージェライト化原料、アルミナ、ムライト及びリチウムアルミノシリケート(LAS)、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、活性炭、及びゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種のセラミックスから構成される請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記第1隔壁領域と前記第2隔壁領域とが、連通方向に垂直な断面において、市松模様、同心円状、または1方向に繰り返されている縞模様に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項1】
複数の隔壁によって2つの端面間を互いに並行して連通する複数のセルが形成され、
第1の気孔率を有する第1隔壁により形成される第1隔壁領域と、その第1の気孔率よりも気孔率が低い第2の気孔率を有する第2隔壁により形成される第2隔壁領域の少なくとも2種の異なる気孔率を有する領域が形成され、
前記第1の気孔率は、25〜80%であり、
前記第2の気孔率は、10%以上であり、かつ、前記第1の気孔率よりも5〜70%気孔率が低く、
前記第1隔壁領域と、前記第2隔壁領域とが、少なくとも1方向において交互に繰り返し配置され、
連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離と、前記第2隔壁領域を形成する境界線の境界線間距離の最小距離とがそれぞれ5〜40mmであるハニカム構造体。
【請求項2】
前記第1の気孔率は、25〜65%であり、
前記第2の気孔率は、第1の気孔率よりも10〜55%低く、
連通方向に垂直な断面における、前記第1隔壁領域の境界線間距離の最小距離と前記第2隔壁領域の境界線間距離の最小距離のそれぞれが10〜30mmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
コージェライト化原料、アルミナ、ムライト及びリチウムアルミノシリケート(LAS)、チタン酸アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、活性炭、及びゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも一種のセラミックスから構成される請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記第1隔壁領域と前記第2隔壁領域とが、連通方向に垂直な断面において、市松模様、同心円状、または1方向に繰り返されている縞模様に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図4】
【図11】
【図12】
【図3A】
【図3B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図11】
【図12】
【図3A】
【図3B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−195400(P2011−195400A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65648(P2010−65648)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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