説明

ハンダ吸取機

【課題】ハンダ吸取スイッチのオン操作を完了した時点でハンダを効率よく吸取ることができる。
【解決手段】モータによってダイヤフラム式のポンプ(真空ポンプ)が駆動されて真空タンク内の空気が吸引され、真空タンクの吸込側にエアー通路43を介してノズル(ヒータ付ハンダ吸取ノズル)41が接続され、ノズル41によって溶融状態のハンダを吸い取る。エアー通路43の中途部には、エアー通路43を開閉する開閉弁51が配設されている。また、溶融状態のハンダの吸取りを開始するハンダ吸取スイッチ44は、先にモータを駆動させて、モータを駆動開始させた後に開閉弁51を開放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ吸取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプリント基板にダイオードやトランジスタ等の半導体素子を取り付ける際、ハンダが利用されるが、ハンダが所定接点からはみ出したとき、または、修理のためダイオードやトランジスタ等電子部品を取り除くときに、ハンダを取り除くためハンダ吸取機が用いられている。
【0003】
一般に、ハンダ吸取機は、真空ポンプや該真空ポンプを駆動させるためのモータを収納する据置型の吸取機本体と、該吸取機本体とエアーチューブを介して接続されるとともに実際に作業員によって把持され、その先端のノズルがプリント基板等に押し当てられて余分なハンダを吸い取る吸取操作部とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3051705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハンダ吸取機では、ハンダの吸取りを開始するトリガなどの操作部材であるハンダ吸取スイッチをオンとすると、真空ポンプを駆動させるためのモータのスイッチがオンとなるが、駆動開始した直後の真空ポンプは、その吸引力(真空度)が規定の値に達していなく、また均一でないため、ハンダをうまく吸取ることができず、操作が行いにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ハンダ吸取スイッチの操作部材のオン操作を完了した時点でハンダを効率よく吸取ることができるハンダ吸取機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るハンダ吸取機は、モータによって真空ポンプが駆動されて前記真空ポンプの吸込側に接続された真空タンクの内部および前記真空タンクの吸込側に接続されたエアー通路の内部の空気が吸引され、前記エアー通路を介して前記真空タンクに接続されたハンダ吸取ノズルによって溶融状態のハンダを吸い取るハンダ吸取機において、前記エアー通路の中途部には、前記エアー通路を開閉する開閉弁が配設され、前記溶融状態のハンダの吸取りを開始するハンダ吸取スイッチは、先に前記モータを駆動させて、前記モータを駆動開始させた後に前記開閉弁を開放させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、エアー通路の中途部には、エアー通路を開閉する開閉弁が配設され、溶融状態のハンダの吸取りを開始するハンダ吸取スイッチは、モータを駆動させて、モータを駆動開始させた後に開閉弁を開放させている。これにより、開閉弁が開放された時点では、既にモータが駆動していて、真空ポンプおよび真空タンクの吸引力、並びにエアー通路を介して真空タンクに接続されたハンダ吸取ノズルの吸引力が、ハンダを吸引するために必要な吸引力のレベルに達しているようにできるので、ハンダの吸取りを良好な状態で行うことができる。
また、真空ポンプの駆動と、開閉弁の開放を一連の動作として1つのスイッチで行うことができるので、作業が行いやすい。
また、真空ポンプと開閉弁との間に真空タンクを備えていることにより、大きな吸引力を長く維持することができる。
【0009】
また、本発明に係るハンダ吸取機では、前記モータは、駆動および停止を切り替えるマイクロスイッチに接続され、前記開閉弁は、弁体が閉鎖方向に付勢されていて前記エアー通路を閉鎖し、開放方向に押圧されると前記エアー通路を開放する構成であり、前記ハンダ吸取スイッチは、操作方向に移動して前記マイクロスイッチを押圧して前記モータを駆動させると共に、前記弁体を押圧してエアー通路を開放する操作部材であり、前記マイクロスイッチおよび弁体は、前記ハンダ吸取スイッチの操作方向における軌道上に設けられていて、前記マイクロスイッチとオフ状態の前記ハンダ吸取スイッチとの前記軌道上の距離は、前記弁体とオフ状態の前記ハンダ吸取スイッチとの前記軌道上の距離よりも短いことが好ましい。
【0010】
本発明では、マイクロスイッチおよび弁体は、ハンダ吸取スイッチの操作方向における軌道上に設けられていて、マイクロスイッチとオフ状態のハンダ吸取スイッチとの軌道上の距離は、弁体とオフ状態のハンダ吸取スイッチとの軌道上の距離よりも短いことにより、ハンダ吸取スイッチは、操作方向に移動すると、まず、マイクロスイッチを押圧してモータおよび真空ポンプを駆動させ、その後に、弁体を押圧してエアー通路を開放することになる。これにより、開閉弁がエアー通路を開放した時点で、真空ポンプおよび真空タンクの吸引力、並びにエアー通路を介して真空タンクに接続されたハンダ吸取ノズルの吸引力がハンダを吸引するために必要な吸引力のレベルに達しているようにできるので、ハンダの吸取りを良好な状態で行うことができる。
また、真空ポンプの駆動と、開閉弁の開放を一連の動作として1つの操作部材で行うことができるので、作業が行いやすい。
【0011】
また、本発明に係るハンダ吸取機では、前記ハンダ吸取スイッチに対する前記開閉弁の位置は可変とすることが好ましい。
【0012】
本発明では、ハンダ吸取スイッチに対する開閉弁の位置は可変とすることにより、開閉弁の弁体とオフ状態のハンダ吸取スイッチとの距離を調整できる。これにより、ハンダ吸取スイッチのオン操作の際に、ハンダ吸取スイッチがマイクロスイッチを押圧してから弁体を押すまでの時間を調整することができる。
また、モータや真空ポンプ、真空タンクなどを交換した際にも、ハンダの吸取りを良好な状態で行うことができるように調整することができる。
また、使用者に合わせてハンダ吸取りスイッチがマイクロスイッチを押圧してから弁体を押すまでの時間を調整することができる。
【0013】
また、本発明に係るハンダ吸取機では、前記開閉弁は、ケーシング内に収容され、前記ケーシング側に突出するピンを備えていて、前記ケーシングには、前記ピンが嵌合する凹部と、前記開閉弁側に突出して前記開閉弁の外殻部と当接するリブとが形成されていてもよい。
【0014】
本発明では、開閉弁は、ケーシング内に収容され、前記ケーシング側に突出するピンを備えていて、前記ケーシングには、前記ピンが嵌合する凹部と、前記開閉弁側に突出して前記開閉弁の外殻部と当接するリブとが形成されていることにより、開閉弁の位置が保持され、開閉弁がケーシングから脱落したり、位置ずれしたりすることを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明に係るハンダ吸取機では、前記真空タンクは、エアコネクタと一体化されていてもよい。
【0016】
本発明では、真空タンクは、エアコネクタと一体化されていることにより、ハンダ吸取機をコンパクトな形状とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、真空ポンプおよび真空タンクの吸引力、並びにエアー通路を介して真空タンクに接続されたハンダ吸取ノズルの吸引力がハンダを吸引するために必要な吸引力のレベルに達した後に、ハンダの吸取りを開始するようにできるので、安定したハンダの吸取りを実現することができると共に、真空ポンプの駆動と、開閉弁の開放を一連の動作として1つのスイッチで行うことができて操作が行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の実施の形態によるハンダ吸取機の一例を示す斜視図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】図1に示すハンダ吸取機のモータおよびダイヤフラム式のポンプとそれを支持するサブフレームを示す斜視図である。
【図3】吸取操作部を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は開閉弁の閉鎖状態を説明する図、(b)は開閉弁の開放状態を示す図である。
【図5】図3のB−B線断面図で開閉弁とケーシングの関係を説明する図である。
【図6】(a)、(b)、(c)はハンダ吸取スイッチの動作を説明する図である。
【図7】ハンダ吸取りスイッチをオンとした後の時間経過と真空ポンプの真空到達度(吸引力)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態によるハンダ吸取機1について、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、本実施の形態によるハンダ吸取機1は、ツインのダイヤフラム式のポンプ(真空ポンプ)2、2(図2参照)およびそれらダイヤフラム式のポンプ2を駆動させるためのモータ3を収納する据置型の吸取機本体5と、実際に作業員によって把持され、その先端が図示しないプリント基板等に押し当てられて余分なハンダを吸い取る吸取操作部6とから構成されている。そして、図1に示すように、吸取操作部6は、吸取機本体5とエアーチューブ7および電気配線8を介して接続されている。
【0020】
吸取機本体5について説明すると、吸取機本体5のケーシング10の底部10aには、サブフレーム11がその両端部をゴム製の脚部12を介して支持されており、図2に示すように、サブフレーム11には前記ダイヤフラム式のポンプ2及びモータ3が一体に組み付けられている。
【0021】
ダイヤフラム式のポンプ2は、開閉状態が繰り返されながら空気を吸い込む周知の構成のものであって、左右とも同一構成である。ダイヤフラム式のポンプ2は、図2に示すように、柔軟性材料からなる有底筒状のダイヤフラム15をそれぞれ備えていて、左右のダイヤフラム15の底部にはそれぞれ駆動ロッド21、21が連結され、それら駆動ロッド21、21の他端にはリング部22,22が形成されている。両リング部22、22は上下方向にずれた状態で互いに同心状に配置されていて、それらにはロッド23が回転自在に嵌挿されている。そして、ロッド23の上端は偏心駒24の端部に嵌挿され、偏心駒24の中央部分にはモータ3の出力軸3aが一体に回転するように挿入固定されている。
【0022】
上記駆動ロッド21、ロッド23、及び偏心駒24はモータ3の回転をダイヤフラム式のポンプ2に伝える動力伝達系29を構成しており、仮に、モータ3が駆動されて出力軸3aが回転されると、偏心駒24が回転されこれにより駆動ロッド21,21を介して左右のダイヤフラム15,15が交互に凹凸変形されてダイヤフラム式のポンプ2を駆動するようになっている。つまり、それらのダイヤフラム式のポンプ2は、いずれか一方のダイヤフラム式のポンプ2が「開」状態のときに他方のダイヤフラム式のポンプ2が「閉」状態になるように駆動される。なお、モータ3は従来用いられいるものと同様な構造のものが用いられる。
【0023】
モータ3が駆動すると、偏心駒24が回転し、該偏心駒24にモータ3の出力軸3aに対して偏心して取り付けられているロッド23が公転し、その結果、駆動ロッド21が左右後方に往復動する。この結果、左右のダイヤフラム式のポンプ2,2が駆動されて、ダイヤフラム式のポンプ2の吸込側からはエアーが吸い込まれる。
ダイヤフラム式のポンプ2の吸込側には、エアーチューブ30aを介してエアー室31に接続され、エアー室31の吸込側には、エアコネクタを兼ねる真空タンク32が接続されている。図1(b)に示すように、真空タンク32は、吸取機本体5の外側に取り付けられていて、エアコネクタ部32aと、真空タンク部32bを備えている。
なお、エアコネクタ部32aを備える真空タンク32としなくてもよく、エアコネクタと真空タンクとを個別に設けてもよい。真空タンク32は、例えば、吸取機本体5と吸取操作部6との間に設けられていてもよいし、吸取機本体5や吸取操作部6に内蔵されてもよい。
本実施の形態では、真空タンク32は、吸取機本体5の外側に取り付けられているので、邪魔にならずハンダ吸取機1をコンパクトな形状とすることができる。
図1(a)に示すように、真空タンク32の吸込側には、エアーチューブ7を介して吸取操作部6が接続されているので、結果として、吸取操作部6の先端からエアーとともにハンダが吸い取られる。
【0024】
図3に示すように、吸取操作部6は、内部にヒータが組み込まれかつ中心軸心に沿って吸取孔が設けられた先細状のノズル41と、該ノズル41の基端側に接続されたフィルタ42と、フィルタ42から吸取操作部6本体内を通りエアーチューブ7に接続されるエアー通路43と、ヒータのON/OFFを操作する図示しないヒータ用スイッチと、ハンダの吸取のON(開始)/OFF(停止)を操作するトリガ状のハンダ吸取スイッチ44と、ハンダ吸取スイッチ44に押圧されてモータ3(図2参照)を駆動させるマイクロスイッチ45と、この他ハンダ吸取機1の動き(例えば、ノズル41に組み込まれたヒータの温度制御等)を制御するための図示しない種々の電子部品と、上述した部材の一部または全部が収納されるケーシング46とから概略構成されている。
【0025】
ノズル41は、先端部がヒータにより加熱された状態で、除去しようとするハンダに押しつけられ、余分なハンダをエアーとともに吸い込む構造で、吸い込まれたハンダは、フィルタ42に貯溜される。
【0026】
エアー通路43は、その中途部にエアー通路43を開閉する開閉弁51を備えている。ここで、開閉弁51よりもフィルタ42側のエアー通路43を第一のエアー通路43aとし、開閉弁51よりもエアーチューブ7側のエアー通路43を第二のエアー通路43bとする。
図4(a)に示すように、開閉弁51は、内部に空間52が形成された外殻部53と、外殻部53に連結されていて第一のエアー通路43aが接続される管状の第一の接続部54と、外殻部53と連結されていて第二のエアー通路43bが接続される管状の第二の接続部55と、外殻部53内部の空間52を2つに遮断可能な弁部56と、弁部56を閉鎖方向に付勢するバネ部材57とを備えている。第一の接続部54および第二の接続部55の内部54a、55aは外殻部53内部と連通している。
【0027】
外殻部53は、開口部61aが形成された本体61と、この開口部61aを塞ぐ蓋62とからなり、本体61に第二の接続部55が連結されて、蓋62に第一の接続部54が連結されている。
本体61の内周面には、第二の接続部55と開口部61aとの間に、第二の接続部55側から開口部61a側に向って径寸法が大きくなるテーパ面63が形成されている。
また、本体61と蓋62との間には、Oリングやゴムなどの気密部材64が設置され、本体61と蓋62とは密着している。
【0028】
弁部56は、バネ部材57に付勢されて本体61のテーパ面63と当接可能な弁体66と、弁体66からバネ部材57の付勢方向(図中の矢印の方向)Aに突出する軸部材67とから構成される。
弁体66は、テーパ面63と対向する面66aに、Oリングやゴムなどの気密部材68が設置されていて、バネ部材57に付勢された弁体66は、気密部材68を介してテーパ面63と密着している。そして、弁体66は、テーパ面63に密着することにより、外殻部53内部の空間52を、第一の接続部54側の空間と、第二の接続部55側の空間に遮断している。
【0029】
軸部材67は、棒状の部材で、弁体66と反対側の端部67aが、外殻部53から突出している。外殻部53には軸部材67が貫通する貫通孔が形成されている。
軸部材67は、端部67aを軸方向(付勢方向Aの逆方向)に押圧されると、外殻部53内部の弁体66もこの方向に押圧され、図4(b)に示すように、弁体66は、テーパ面63と離間し、外殻部53の内部の空間52の遮断が解除され、開閉弁51が開放される。これにより、第一の接続部54と第二の接続部55とが連通する。このときのエアーの流れは図中の矢印の流れとなる。
【0030】
図5に示すように、外殻部53の本体61の外周には、両ケーシング46側に突出するピン61bが形成されている。また、ケーシング46には、ピン61bが嵌合する凹部46aが形成されている。
また、ケーシング46には、外殻部53の蓋62と当接するリブ46bが突出して形成されている。蓋62は、第一の接続部54の連結部が第一の接続部54側に突出した突出部62aとなっており、この突出部62aの側面にリブ46bが当接している。
このように、外殻部53本体61のピン61bが、ケーシング46の凹部46aに嵌合し、ケーシング46のリブ46bが蓋62と当接することによって、開閉弁51の位置が保持され、開閉弁51がケーシング46から脱落したり、位置ずれしたりすることを防ぐことができる。
【0031】
図3および図6(a)に示すように、ハンダ吸取スイッチ44は、ケーシング46を把持する作業員に押圧されることによってマイクロスイッチ45および開閉弁51の軸部材67を押圧するトリガ状に形成されている。
図6(a)に示すように、ハンダ吸取スイッチ44は、ケーシング46に回転可能に保持された回転軸71と、作業員に押圧される被押圧部72と、マイクロスイッチ45を押圧する第一の押圧部73と、開閉弁51の軸部材67の端部67aを押圧する第二の押圧部74とを備えている。
【0032】
マイクロスイッチ45は、回転軸71を中心に回転するハンダ吸取スイッチ44の第一の押圧部73の軌道上に設置されている。図6(b)に示すように、マイクロスイッチ45は、操作方向Bに回転した第一の押圧部73に押圧されることで、スイッチがオンとなり、モータ3(図1参照)を回転させてダイヤフラム式のポンプ2(図2参照)を駆動させる。
また、開閉弁51の軸部材67の端部67aは、回転軸71を中心に回転するハンダ吸取スイッチ44の第二の押圧部74の軌道上に設置されている。図6(c)に示すように、開閉弁51の軸部材67が、操作方向Bに回転した第二の押圧部74に押圧されることで、弁体66も押圧され、軸部材67および弁体66が軸方向(バネ部材57の付勢方向Aと逆の方向)に移動し、弁体66が外殻部53と離間して第一の接続部54と、第二の接続部55とが連通する。
【0033】
このとき、ハンダ吸取スイッチ44がオフの状態における第一の押圧部73とマイクロスイッチ45との回転軌道上の距離は、第二の押圧部74と軸部材67の端部67aとの回転軌道上の距離よりも短く、ハンダ吸取スイッチ44をオンとすると、まず、第一の押圧部73がマイクロスイッチ45を押圧してオンとする。そして、これに遅れて第二の押圧部74が軸部材67の端部67aを押圧して、エアー通路43を連通させる。
【0034】
ここで、開閉弁51は、ケーシング46内の設置位置を調整できる構成としてもよい。この場合、ケーシング46に凹部46aやリブ46bを複数設けておき、開閉弁51の設置位置にあわせて最適な凹部46aやリブ46bを選択してもよい。また、ケーシング46に凹部46aやリブ46bを設けずに、任意の位置に開閉弁51を固定具などで固定してもよい。
また、ケーシング46内の第二の押圧部74の回転軌道に沿ったガイドを設け、開閉弁51をガイドに沿って移動可能とすると共にガイド上の任意の位置に固定具などで固定できる構成としてもよい。このとき、開閉弁51の移動と任意の位置への固定は、ケーシング46の外部から行うことができる構成としてもよい。
【0035】
次に、本実施の形態のハンダ吸取機1によるハンダ吸取り方法について説明する。
まず、図示せぬメインスイッチをオンにすると、ヒータにより吸取操作部6のノズル41が加熱され、その先端の温度がハンダを溶融できる程度まで上昇する。ノズル41の先端を対象となるハンダに押し当て、ハンダを溶融する。
【0036】
続いて、この状態でハンダ吸取スイッチ44の被押圧部72を押圧し、ハンダ吸取スイッチ44を回転軸71を中心に回転させる。すると、まず、第一の押圧部73がマイクロスイッチ45を押圧して、モータ3が駆動し、ダイヤフラム式のポンプ2,2が駆動する。そして、ダイヤフラム式のポンプ2の吸込側からは真空タンク32のエアーが吸い込まれ、エアーチューブ7および第二のエアー通路43bのエアーも吸い込まれる。
そして、ハンダ吸取スイッチ44を更に回転させ、第二の押圧部74で軸部材67の端部67aを押圧し、開閉弁51を開放してエアー通路43を連通させる。
そして、ダイヤフラム式のポンプ2が駆動してエアーを吸い取り、開閉弁51が開放されたことにより、ノズル41の先端からエアーとともに溶融したハンダが吸い取られる。
このとき、開閉弁51は、モータ3の駆動に遅れて開放されるので、開閉弁51が開放された時点ではダイヤフラム式のポンプ2,2の吸引力がハンダを吸引するために必要な吸引力のレベルに達していて、ノズル41の真空度が一気に高くなり、吸引力が増大する。
ハンダの吸取りが完了したら、作業員がハンダ吸取りスイッチ44の押圧を解除する。これにより、図6(a)に示すように、弁体66がテーパ面63と接触して開閉弁51が閉鎖されると共に、マイクロスイッチ45がオフとなりモータ3の駆動が停止する。
【0037】
ここで、図7に本実施の形態によるハンダ吸取機1におけるハンダ吸取スイッチ44のオン操作を開始した時点からの経過時間と、エアー室31(図1参照)およびノズル(図1参照)41の真空度との関係を示す。図中のL1はエアー室31の真空度を示し、L2は、ノズルの真空度を示す。
図7から、エアー室31は、ハンダ吸取スイッチ44の操作が開始され、モータ3が駆動した時点から時間経過と共に徐々に真空度が増加し、0.4秒程経過した後に真空度が安定すると共に最適値付近に達していることがわかる。これに対し、開閉弁51がモータ3の駆動開始よりも約0.2秒後に開放されるので、ノズル41の真空度は、開閉弁51を開放した直後に急速に増加して安定すると共に、最適値に達していることがわかる。
【0038】
本実施の形態では、ハンダ吸取スイッチ44は、オン操作を開始した約0.05秒後にマイクロスイッチ45を押圧し、その約0.2秒後に軸部材67(図4参照)を押圧して開閉弁51を開放するように、ハンダ吸取スイッチ44、マイクロスイッチ45、開閉弁51の位置を調節している。このように、ハンダ吸取スイッチ44、マイクロスイッチ45、開閉弁51(軸部材67)の位置を調節することで、ノズル41は、真空度が一気に上がり、ハンダの吸引に必要な吸引力でハンダの吸取りを行うことができる。
なお、ダイヤフラム式のポンプ(真空ポンプ)2により、モータ3を駆動させた後、真空度が最適値に達するまでの時間は異なるので、個々の真空度が最適値に達するまでの時間に合わせてハンダ吸取スイッチ44、マイクロスイッチ45、開閉弁51の位置を調節すればよい。
【0039】
上述した本実施の形態によるハンダ吸取機1では、ハンダ吸取スイッチ44は、マイクロスイッチ45を押圧してモータ3を駆動させた後に、軸部材67を押圧して開閉弁51を開放するので、開閉弁51が開放された時点で、ダイヤフラム式のポンプ2は所定の真空到達度に達しているため、吸引力(真空度)がハンダを吸引するために必要な吸引力のレベルに達した状態でハンダを吸い込むことができる効果を奏する。
また、モータ3の駆動と、開閉弁51の開放を一連の動作として1つのトリガ状のハンダ吸取スイッチ44の操作で行うことができるので、作業が行いやすい。
また、真空タンク32を備えていることにより、大きな吸引力を長く維持することができる。
【0040】
以上、本発明による実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、ハンダ吸取スイッチ44は、回転軸71を中心に回転するトリガ状に形成されているが、直線上を移動してマイクロスイッチ45および開閉弁51の軸部材67を押圧するトリガ状に形成されていてもよい。
また、上記の実施の形態では、ハンダ吸取スイッチ44は、吸取操作部6に設けられたトリガであるが、トリガに代わって、例えば、作業員が脚で踏むことでマイクロスイッチ45をオンとし、これに遅れて開閉弁51を開閉するスイッチとしてもよい。
【0041】
また、上記の実施の形態では、モータ3の駆動をマイクロスイッチ45で行っているが、マイクロスイッチ45に代わって、近接スイッチなどの他のスイッチとしてもよい。
また、上記の実施の形態では、外殻部53の本体61の外周には、ピン61bが形成されて、ケーシング46には、ピン61bが嵌合する凹部46aが形成されているが、開閉弁51が脱落したり、ずれたりすることが防止されていれば、ピン61bおよび凹部46aは形成されていなくてもよい。また、ケーシング46の外殻部53の蓋62と当接するリブ46bも形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ハンダ吸取機
2 ダイヤフラム式のポンプ(真空ポンプ)
3 モータ
32 真空タンク
41 ノズル
43 エアー通路
43a 第一のエアー通路(エアー通路)
43b 第二のエアー通路(エアー通路)
44 ハンダ吸取スイッチ
45 マイクロスイッチ
46 ケーシング
51 開閉弁
73 第一の押圧部
74 第二の押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって真空ポンプが駆動されて前記真空ポンプの吸込側に接続された真空タンクの内部および前記真空タンクの吸込側に接続されたエアー通路の内部の空気が吸引され、前記エアー通路を介して前記真空タンクに接続されたハンダ吸取ノズルによって溶融状態のハンダを吸い取るハンダ吸取機において、
前記エアー通路の中途部には、前記エアー通路を開閉する開閉弁が配設され、前記溶融状態のハンダの吸取りを開始するハンダ吸取スイッチは、先に前記モータを駆動させて、前記モータを駆動開始させた後に前記開閉弁を開放させることを特徴とするハンダ吸取機。
【請求項2】
前記モータは、駆動および停止を切り替えるマイクロスイッチに接続され、前記開閉弁は、弁体が閉鎖方向に付勢されていて前記エアー通路を閉鎖し、開放方向に押圧されると前記エアー通路を開放する構成であり、
前記ハンダ吸取スイッチは、操作方向に移動して前記マイクロスイッチを押圧して前記モータを駆動させると共に、前記弁体を押圧してエアー通路を開放する操作部材であり、
前記マイクロスイッチおよび弁体は、前記ハンダ吸取スイッチの操作方向における軌道上に設けられていて、前記マイクロスイッチとオフ状態の前記ハンダ吸取スイッチとの前記軌道上の距離は、前記弁体とオフ状態の前記ハンダ吸取スイッチとの前記軌道上の距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のハンダ吸取機。
【請求項3】
前記ハンダ吸取スイッチに対する前記開閉弁の位置を可変とすることを特徴とする請求項2に記載のハンダ吸取機。
【請求項4】
前記開閉弁は、ケーシング内に収容され、前記ケーシング側に突出するピンを備えていて、前記ケーシングには、前記ピンが嵌合する凹部と、前記開閉弁側に突出して前記開閉弁の外殻部と当接するリブとが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハンダ吸取機。
【請求項5】
前記真空タンクは、エアコネクタと一体化されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のハンダ吸取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218429(P2011−218429A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92330(P2010−92330)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000204136)太洋電機産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】