説明

ハンダ回路基板の製造方法

【課題】 プリント配線板上の導電性回路電極表面に粘着性を付与し、ハンダ粉末を付着させ、該ハンダを溶解してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、より微細な回路パターンを実現できるハンダ回路基板の製造方法、電子部品を実装した電子回路部品の提供。
【解決手段】 プリント配線板上の導電性回路電極表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内に電極表面に粘着性を付与したプリント配線板を設置し、その容器を傾動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法および該方法により製造されたハンダ回路基板の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ回路基板の製造方法に関し、更に詳しくは、プリント配線板上の微細な導電性回路電極表面に、ハンダ層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック基板、セラミック基板、あるいはプラスチック等をコートした金属基板等の絶縁性基板上に、回路パターンを形成したプリント配線板が開発され、その回路パターン上にIC素子、半導体チップ、抵抗、コンデンサ等の電子部品をハンダ接合して電子回路を構成させる手段が広く採用されている。
【0003】
この場合、電子部品のリード端子を、回路パターンの所定の部分に接合させるためには、基板上の導電性回路電極表面に予めハンダ薄層を形成させておき、ハンダペーストまたはフラックスを印刷し、所定の電子部品を位置決め載置した後、ハンダ薄層またはハンダ薄層及びハンダペーストをリフローさせ、ハンダ接続させるのが一般的である。
【0004】
また最近では電子製品の小型化のためハンダ回路基板にはファインピッチ化が要求され、ファインピッチの部品、例えば0.3mmピッチのQFP(Quad Flat Package)タイプのLSI、CSP(Chip Size Package)、0.15mmピッチのFC(Flip Chip)などが多く搭載されている。このため、ハンダ回路基板には、ファインピッチ対応の精細なハンダ回路パターンが要求されている。
【0005】
プリント配線板にハンダ膜によるハンダ回路を形成するためには、メッキ法、HAL(ホットエアーレベラ)法、あるいはハンダ粉末のペーストを印刷しリフローする方法などが行われている。しかし、メッキ法によるハンダ回路の製造方法は、ハンダ層を厚くするのが困難であり、HAL法、ハンダペーストの印刷による方法は、ファインピッチパターンへの対応が困難である。
【0006】
そのため、回路パターンの位置合わせ等の面倒な操作を必要せずハンダ回路を形成する方法として、プリント配線板の導電性回路電極表面に、粘着性付与化合物を反応させることにより粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶解してハンダ回路を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1で開示された方法により、簡単な操作で微細なハンダ回路パターンを形成させ、信頼性の高い回路基板を提供することが可能となったが、この方法では乾式でハンダ粉末を回路基板に付着させるため、静電気により粉末が余分な部分に付着したり、粉末の飛散等が生じて、回路基板のファイン化の妨げとなったり、また粉末を効率に利用できないといった問題点があった。このような問題点は特に微粉のハンダ粉末を用いる場合に顕著となった。
【0008】
【特許文献1】特開平7−7244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、これらの問題点を解決し、特開平7−7244号公報で開示された、プリント配線板上の導電性回路電極表面を、粘着性付与化合物と反応させることにより粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶解してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、より微細な回路パターンを実現できるハンダ回路基板の製造方法、微細な回路パターンを有し信頼性の高いハンダ回路基板、高信頼性、高実装密度を実現できる電子部品を実装した電子回路部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意努力検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、
[1] プリント配線板上の導電性回路電極表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内に電極表面に粘着性を付与したプリント配線板を設置し、その容器を傾動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法、
[2] 容器を左右に傾動させることにより、ハンダ粉末をプリント配線板の両表面上に接触させ、ハンダ粉末を粘着部分に付着させる上記[1]1に記載のハンダ回路基板の製造方法、
【0011】
[3] プリント配線板上の導電性回路電極表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内にプリント配線板を設置し、その容器を振動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法。
[4] 容器を振動させることにより、ハンダ粉末をプリント配線板の両表面上に接触させ、ハンダ粉末を粘着部分に付着させる上記[3]に記載のハンダ回路基板の製造方法、
【0012】
[5] 容器が、密閉容器である上記[1]〜[4]の何れかに記載のハンダ回路基板の製造方法、
[6] ハンダ粉末が容器中で液体に分散している上記[1]〜[5]の何れかに記載のハンダ回路基板の製造方法、
[7] 液体が脱酸素した液体である上記[6]に記載のハンダ回路基板の製造方法、
【0013】
[8] 上記[1]〜[7]の何れかに記載のハンダ回路基板の製造方法であって、ハンダ粉末およびプリント配線板を入れる容器、容器にプリント配線板を投入する投入口および容器への配線板の挿入時には容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにする機構を有し、容器を開放または密閉状態で、傾動または振動させる機構を有するハンダ粉末付着装置に、容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにプリント配線板を一定の間隔を置いて垂直に平行に並べて固定した後、容器の傾斜を戻してハンダ粉末に接触させ容器を傾動または振動させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法、
【0014】
[9] プリント回線板に、上記[1]〜[8]に記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするハンダ回路基板、
[10C] プリント回線板に、上記[1]〜[8]に記載の方法を用いて製造されたハンダ回路基板を組みこんだ電子回路部品、
【0015】
[11] 上記[1]〜[7]の何れかに記載のハンダ回路基板の製造方法に用いられるハンダ粉末付着装置であって、該装置はハンダ粉末およびプリント配線板を入れる容器、容器にプリント配線板を水平方向に投入する投入口を有し、容器への配線板の挿入時には容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにする機構を有し、容器を開放または密閉状態で、傾動または振動させる機構を有することを特徴とするハンダ粉末付着装置を開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるハンダ回路基板製造方法により、簡単な操作で微細なハンダ回路パターンを形成することが可能となった。特に、微細な回路パターンにおいても隣接する回路パターン間でのハンダ金属による短絡が減少する効果が得られ、ハンダ回路基板の信頼性が著しく向上した。また本発明のハンダ回路基板の製造方法により、電子部品を実装した回路基板の小型化と高信頼性化が実現でき、優れた特性の電子機器を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の対象となるプリント配線板は、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板、ガラス布基板、紙基質エポキシ樹脂基板、セラミックス基板等に金属板を積層した基板、あるいは金属基材にプラスチックあるいはセラミックス等を被覆した絶縁基板上に、金属等の導電性物質を用いて回路パターンを形成した片面プリント配線板、両面プリント配線板、多層プリント配線板あるいはフレキシブルプリント配線板等である。その他、IC基板、コンデンサ、抵抗、コイル、バリスタ、ベアチップ、ウェーハ等への適用も可能である。
【0018】
本発明は、例えば上記プリント配線板上の導電性回路電極表面を、粘着性付与化合物と反応させることにより粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法を適用する。
【0019】
回路を形成する導電性物質としては、ほとんどの場合銅が用いられているが、本発明ではこれに限定されず、後述する粘着性付与物質により表面に粘着性が得られる導電性の物質であればよい。これらの物質として、例えば、Ni、Sn、Ni−Au、ハンダ合金等を含む物質が例示できる。
【0020】
本発明で用いることが好ましい粘着性付与化合物としては、ナフトトリアゾール系誘導体、べンゾトリアゾール系誘導体、イミダゾール系誘導体、べンゾイミダゾール系誘導体、メルカプトべンゾチアゾール系誘導体及びべンゾチアゾールチオ脂肪酸等が挙げられる。これらの粘着性付与化合物は特に銅に対しての効果が強いが、他の導電性物質にも粘着性を付与することができる。
【0021】
本発明においては、べンゾトリアゾール系誘導体は一般式(1)で表される。
【化1】


(但し、R1〜R4は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0022】
ナフトトリアゾール系誘導体は一般式(2)で表される。
【化2】


(但し、R5〜R10は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0023】
イミダゾール系誘導体は一般式(3)で表される。
【化3】


(但し、R11、R12は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0024】
べンゾイミダゾール系誘導体は一般式(4)で表される。
【化4】


(但し、R13〜R17は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0025】
メルカプトべンゾチアゾール系誘導体は一般式(5)で表される。
【化5】


(R18〜R21は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、5〜16のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0026】
べンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体は一般式(6)で表される。
【化6】


(但し、R22〜R26は、独立に水素原子、炭素数が1〜16、好ましくは、1または2のアルキル基、アルコキシ基、F、Br、Cl、I、シアノ基、アミノ基またはOH基を表す。)
【0027】
これらの化合物のうち、一般式(1)で示されるべンゾトリアゾール系誘導体としてはR1〜R4は、一般には炭素数が多いほうが粘着性が強い。
一般式(3)及び一般式(4)で示されるイミダゾール系誘導体及びべンゾイミダゾール系誘導体のR11〜R17においても、一般に炭素数の多いほうが粘着性が強い。
一般式(6)で示されるべンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘導体においては、R22〜R26は炭素数1または2が好ましい。
【0028】
本発明では、該粘着性付与化合物の少なくとも一つを水または酸性水に溶解し、好ましくはpH3〜4程度の微酸性に調整して用いる。pHの調整に用いる物質としては、導電性物質が金属であるときは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸をあげることができる。また有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸等が使用できる。該粘着性付与化合物の濃度は厳しく限定はされないが溶解性、使用状況に応じて適宜調整して用いるが、好ましくは全体として0.05質量%〜20質量%の範囲内の濃度が使用しやすい。これより低濃度にすると粘着性膜の生成が不十分となり、性能上好ましくない。
【0029】
処理温度は室温よりは若干加温したほうが粘着性膜の生成速度、生成量が良い。粘着性付与化合物濃度、金属の種類などにより変わり限定的でないが、一般的には30℃〜60℃位の範囲が好適である。浸漬時間は限定的でないが、作業効率から5秒〜5分間位の範囲になるように他の条件を調整することが好ましい。
【0030】
なおこの場合、溶液中に銅をイオンとして100〜1000ppmを共存させると、粘着性膜の生成速度、生成量などの生成効率が高まるので好ましい。
【0031】
処理すべきプリント配線板は、ハンダ不要の導電性回路部分をレジスト等で覆い、回路パターンの部分のみが露出した状態にしておき、粘着性付与化合物溶液で処理するのが好ましい。
【0032】
ここで使用する前述の粘着性付与化合物溶液にプリント配線板を浸漬するか、または溶液を塗布すると、導電性回路表面が粘着性を示す。
【0033】
本発明では、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内にプリント配線板を設置し、その容器を傾動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とする。ハンダ粉末を容器内に入れることによりハンダ粉末の飛散を防ぐことが可能となり、また容器を傾動させることでハンダ粉を付着させることにより、一旦付着したハンダ粉が脱離することが少なくなり、安定してハンダ粉を付着させることが可能となる。
【0034】
また本発明のハンダ回路基板の製造方法では、容器内に設置するプリント配線板を、冶具等を用いて容器から浮かせることにより、両面のプリント配線基板にハンダ粉末を付着させることが可能となる。
【0035】
本発明のハンダ回路基板の製造方法は、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内にプリント配線板を設置し、その容器を振動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とする。これによりハンダ粉末の飛散を防ぐことが可能となる。
【0036】
また本発明のハンダ回路基板の製造方法においても、容器内に設置するプリント配線板を、冶具等を用いて容器の底から浮かせることにより、両面のプリント配線基板にハンダ粉末を付着させることが可能となる。また他の方法としてはプリント配線基板をハンダ粉末層またはハンダ懸濁液が容器を傾動するときに流れる方向に一定間隔に平行に垂直に立てて容器内にセットすることにより行うことも出来る。
【0037】
本発明のハンダ回路基板の製造方法では、容器を密閉容器とすることが好ましい。これによりハンダ粉末の飛散を更に防ぐことが可能となる。
【0038】
本発明では粘着性を付与したハンダ回路基板へのハンダ粉末の付着を液体中で行うのが好ましい。ハンダ粉末の付着を液体中で行うことにより、ハンダ粉末が静電気により粘着性のない部分に付着したり、またハンダ粉末が静電気により凝集したりするのを防ぎ、ファインピッチの回路基板や、また微粉のハンダ粉を用いることが可能となる。
【0039】
本発明では、液体中でのハンダ粉末の付着を、ハンダ粉末を液中で液流により流動させて行うことが好ましい。
【0040】
液体中でハンダ粉末を傾動させ付着させる際の、液体中のハンダ粉末の濃度は、好ましくは0.5体積%〜10体積%の範囲内、より好ましくは、3体積%〜8体積%の範囲内とする。
【0041】
本発明では、ハンダ粉末の付着に用いる液体として、水を用いるのが好ましい。また液体によりハンダ粉末が酸化するのを防ぐため、脱酸素した液体を用いたり、液体に防錆剤を添加するのが好ましい。
【0042】
本発明のハンダ回路基板の製造方法に用いられるハンダ粉末付着装置は、ハンダ粉末およびプリント配線板を入れる容器、容器にプリント配線板を水平方向に投入する投入口を有し、容器への配線板の挿入時には容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにする機構を有し、容器を開放または密閉状態で、傾動または振動させる機構を有することを特徴とする。容器への配線板の挿入時に、容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにするのは、基板を容器内にセットする際に、治具と基板との間にハンダ粉末をはさみこむことが無いようにし、安定した基板のセッティングを可能とするためである。
【0043】
本発明の処理方法は前述したハンダプリコート回路基板のみならず、BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・サイズ・パッケージ)接合用等のバンプ形成しても有効に使用できるものであり、これらは本発明のハンダ回路基板に当然含まれるものである。
【0044】
本発明のハンダ回路基板の製造方法に使用するハンダ粉末の金属組成としては、例えばSn−Pb系、Sn−Pb−Ag系、Sn−Pb−Bi系、Sn−Pb−Bi−Ag系、Sn−Pb−Cd系が挙げられる。また最近の産業廃棄物におけるPb排除の観点から、Pbを含まないSn−In系、Sn−Bi系、In−Ag系、In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Au系、Sn−Bi−Ag−Cu系、Sn−Ge系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Cu−Sb−Ag系、Sn−Ag−Zn系、Sn−Cu−Ag系、Sn−Bi−Sb系、Sn−Bi−Sb−Zn系、Sn−Bi−Cu−Zn系、Sn−Ag−Sb系、Sn−Ag−Sb−Zn系、Sn−Ag−Cu−Zn系、Sn−Zn−Bi系が好ましい。
【0045】
上記の具体例としては、Snが63質量%、Pbが37質量%の共晶ハンダ(以下63Sn/37Pbと表す。)を中心として、62Sn/36Pb/2Ag、62.6Sn/37Pb/0.4Ag、60Sn/40Pb、50Sn/50Pb、30Sn/70Pb、25Sn/75Pb、10Sn/88Pb/2Ag、46Sn/8Bi/46Pb、57Sn/3Bi/40Pb、42Sn/42Pb/14Bi/2Ag、45Sn/40Pb/15Bi、50Sn/32Pb/18Cd、48Sn/52In、43Sn/57Bi、97In/3Ag、58Sn/42In、95In/5Bi、60Sn/40Bi、91Sn/9Zn、96.5Sn/3.5Ag、99.3Sn/0.7Cu、95Sn/5Sb、20Sn/80Au、90Sn/10Ag、90Sn/7.5Bi/2Ag/0.5Cu、97Sn/3Cu、99Sn/1Ge、92Sn/7.5Bi/0.5Cu、97Sn/2Cu/0.8Sb/0.2Ag、95.5Sn/3.5Ag/1Zn、95.5Sn/4Cu/0.5Ag、52Sn/45Bi/3Sb、51Sn/45Bi/3Sb/1Zn、85Sn/10Bi/5Sb、84Sn/10Bi/5Sb/1Zn、88.2Sn/10Bi/0.8Cu/1Zn、89Sn/4Ag/7Sb、88Sn/4Ag/7Sb/1Zn、98Sn/1Ag/1Sb、97Sn/1Ag/1Sb/1Zn、91.2Sn/2Ag/0.8Cu/6Zn、89Sn/8Zn/3Bi、86Sn/8Zn/6Bi、89.1Sn/2Ag/0.9Cu/8Znなどが挙げられる。また本発明に用いるハンダ粉末として、異なる組成のハンダ粉末を2種類以上混合したものでもよい。
【0046】
上記のハンダ粉末の中でもPbフリーハンダ、特に好ましくはSnおよびZn、又はSnおよびZnおよびBiを含有するハンダから選ばれた合金組成を用いて本発明のハンダ回路基板を作製した場合、Sn−Pb系のハンダと同等レベルまでリフロー温度が下げられるため、実装部品の長寿命化がはかられ、また部品の多様化にも対応できる。
【0047】
ハンダ粉末の粒径を変えることで形成されるハンダ膜厚を調整できることから、ハンダ粉末の粒径は形成するハンダコート厚から選定される。たとえば日本工業規格(JIS)には、ふるい分けにより63〜22μm、45〜22μm及び38〜22μm等の規格が定められている粉末や、80μm以上のボール等から選択する。本発明のハンダ粉末の平均粒径測定には通常、JISにより定められた、標準ふるいと天秤による方法を用いることができる。また、この他にも顕微鏡による画像解析や、エレクトロゾーン法によるコールターカウンターでも行うことができる。コールターカウンターについては「粉体工学便覧」(粉体工学会編、第2版p19〜p20)にその原理が示されているが、粉末を分散させた溶液を隔壁にあけた細孔に通過させ、その細孔の両側で電気抵抗変化を測定することにより粉末の粒径分布を測定するもので、粉径の個数比率を再現性良く測定することが可能である。本発明のハンダ粉末の平均粒径は上述の方法を用いて定めることができる。
【0048】
本発明で作製したハンダ回路基板は、電子部品を載置する工程と、ハンダをリフローして電子部品を接合する工程とを含む電子部品の実装方法に好適に用いることができる。例えば本発明で作製したハンダ回路基板の、電子部品の接合を所望する部分に、印刷法等でハンダペーストを塗布し、電子部品を載置し、その後加熱してハンダペースト中のハンダ粉末を溶融し凝固させることにより電子部品を回路基板に接合することができる。
【0049】
ハンダ回路基板と電子部品の接合方法(実装方法)としては、例えば表面実装技術(SMT)を用いることができる。この実装方法は、まず本発明方法またはハンダペーストを印刷法によりハンダ回路基板を準備する。例えば回路パターンの所望する箇所に塗布する。次いで、本発明方法によりハンダを付着またはリフローしたチップ部品やQFPなどの電子部品を回路パターンハンダペースト上に載置し、リフロー熱源により一括してハンダ接合をする。リフロー熱源には、熱風炉、赤外線炉、蒸気凝縮ハンダ付け装置、光ビームハンダ付け装置等を使用することができる。
【0050】
本発明のリフローのプロセスはハンダ合金組成で異なるが、91Sn/9Zn、89Sn/8Zn/3Bi、86Sn/8Zn/6BiなどのSn−Zn系の場合、プレヒートとリフローの2段工程で行うのが好ましく、それぞれの条件は、プレヒートが温度130〜180℃、好ましくは、130〜150℃、プレヒート時間が60〜120秒、好ましくは、60〜90秒、リフローは温度が210〜230℃、好ましくは、210〜220℃、リフロー時間が30〜60秒、好ましくは、30〜40秒である。なお他の合金系におけるリフロー温度は、用いる合金の融点に対し+20〜+50℃、好ましくは、合金の融点に対し+20〜+30℃とし、他のプレヒート温度、プレヒート時間、リフロー時間は上記と同様の範囲であればよい。
【0051】
上記のリフロープロセスを窒素中でも大気中でも実施することが可能である。窒素リフローの場合は酸素濃度を5体積%以下、好ましくは0.5体積%以下とすることで大気リフローの場合よりハンダ回路へのハンダの濡れ性が向上し、ハンダボールの発生も少なくなり安定した処理ができる。
【0052】
この後、ハンダ回路基板を冷却し表面実装が完了する。この実装方法による電子部品接合物の製造方法においては、プリント配線基板の両面に接合を行ってもよい。なお、本発明の電子部品の実装方法に使用することができる電子部品としては、例えば、LSI、抵抗器、コンデンサ、トランス、インダクタンス、フィルタ、発振子・振動子等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
最小電極間隔が50μmのプリント配線板を作製した。導電性回路には銅を用いた。
【0054】
粘着性付与化合物溶液として、一般式(3)のR12のアルキル基がC1123、R11が水素原子であるイミダゾール系化合物の2質量%水溶液を、酢酸によりpHを約4に調整して用いた。該水溶液を40℃に加温し、これに塩酸水溶液により前処理した前記プリント配線板を3分間浸漬し、銅回路表面に粘着性物質を生成させた。
【0055】
次いで該プリント配線板を、図1に示すような、容器内部の寸法が250mm×120mm×120mm、該容器にプリント配線板を水平方向に投入する投入口を有するハンダ粉末付着装置に入れた。容器には、96.5Sn/3.5Agの、平均粒径20μmのはんだ粉末(ハンダ粉末の平均粒径の測定には、マイクロトラックを用いた。)を、約400g入れた。ハンダ粉末付着装置を傾けて、ハンダ粉末が配線板に触れないようにして入れた。配線板をハンダ粉末付着装置に入れた後、10秒間、容器を左右に30°傾動させてハンダ粉末をプリント配線板に付着させた。傾動の周期は5秒/回とした。
【0056】
その後、装置からプリント配線板を取り出し、純水で軽く洗浄した後、プリント配線板を乾燥させた。
このプリント配線板を240℃のオーブンに入れ、ハンダ粉末を溶融し、銅回露出部上に厚さ約20μmの96.5Sn/3.5Agハンダ薄層を形成した。なお、ハンダ回路には、ブリッジ等は一切発生しなかった。
【0057】
(実施例2)
実施例1の粉末付着装置に96.5Sn/3.5Ag、平均粒径80μmのハンダボール400gと純水(酸素濃度1ppm以下)を1.2L加え、この中に電極径100μmφのプリント基板を投入し、容器を左右に30°傾動させて粉末を付着した。
その後実施例1と同様の処理によりハンダバンプ形成をおこない、銅回路露出部上に厚さ約50μmの96.5Sn/3.5Agハンダバンプを形成した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
基板上の金属露出部に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶解してハンダ回路を形成する電子回路基板の製造方法において、微細な回路パターンにおいても隣接する回路パターン間でのハンダ金属による短絡が減少する効果が得られ、信頼性が著しく向上した電子回路基板を製造することが出来た。この結果、微細な回路パターンを有し信頼性の高い電子部品を実装した回路基板の小型化と高信頼性化が実現でき、電子回路基板、高信頼性、高実装密度を実現できる電子部品を実装した回路基板、優れた特性の電子機器を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1で使用したハンダ粉末付着装置の傾動容器の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板上の導電性回路電極表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内に電極表面に粘着性を付与したプリント配線板を設置し、その容器を傾動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法。
【請求項2】
容器を左右に傾動させることにより、ハンダ粉末をプリント配線板の両表面上に接触させ、ハンダ粉末を粘着部分に付着させる請求項1に記載のハンダ回路基板の製造方法。
【請求項3】
プリント配線板上の導電性回路電極表面に粘着性を付与し、該粘着部にハンダ粉末を付着させ、次いで該プリント配線板を加熱し、ハンダを溶融してハンダ回路を形成するハンダ回路基板の製造方法において、ハンダ粉末を容器内に入れ、その容器内にプリント配線板を設置し、その容器を振動させることにより、粘着部にハンダ粉末を付着させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法。
【請求項4】
容器を振動させることにより、ハンダ粉末をプリント配線板の両表面上に接触させ、ハンダ粉末を粘着部分に付着させることを特徴とする請求項3に記載のハンダ回路基板の製造方法。
【請求項5】
容器が、密閉容器であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハンダ回路基板の製造方法。
【請求項6】
ハンダ粉末が容器中で液体に分散していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のハンダ回路基板の製造方法。
【請求項7】
液体が脱酸素した液体であることを特徴とする請求項6に記載のハンダ回路基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のハンダ回路基板の製造方法であって、ハンダ粉末およびプリント配線板を入れる容器、容器にプリント配線板を投入する投入口および容器への配線板の挿入時には容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにする機構を有し、容器を開放または密閉状態で、傾動または振動させる機構を有するハンダ粉末付着装置に、容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにプリント配線板を一定の間隔を置いて垂直に平行に並べて固定した後、容器の傾斜を戻してハンダ粉末に接触させ容器を傾動または振動させることを特徴とするハンダ回路基板の製造方法。
【請求項9】
プリント回線板に、請求項1〜87およびAに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするハンダ回路基板。
【請求項10】
プリント回線板に、請求項1〜7項1〜8およびAに記載の方法を用いて製造されたハンダ回路基板を組みこんだ電子回路部品。
【請求項11】
請求項1〜7の何れか1項に記載のハンダ回路基板の製造方法に用いられるハンダ粉末付着装置であって、該装置はハンダ粉末およびプリント配線板を入れる容器、容器にプリント配線板を水平方向に投入する投入口を有し、容器への配線板の挿入時には容器を傾けてハンダ粉末が配線板に触れないようにする機構を有し、容器を開放または密閉状態で、傾動または振動させる機構を有することを特徴とするハンダ粉末付着装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−278650(P2006−278650A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94622(P2005−94622)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(390023216)株式会社タイセー (8)
【Fターム(参考)】