ハンチ加工された鉄骨柱梁接合部構造
【課題】
そのハンチ先端の梁フランジの内側にスティフナーを設ける方法がとられているけれども、スティフナーの取り付ける位置によっては大きな応力がウエブに発生することが認められ、ハンチの勾配が大きいほど顕著であった。このようなハンチ取り付けに関しては明らかにされていない。従来のハンチには、梁端のフランジの曲げ加工と溶接が伴うので製作上大きな工数が掛かる。
【解決手段】
ハンチ先端部ウエブの応力低減には、ハンチ部先端に設けられた梁フランジ内部のスティフナーは、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として45°の延長線上に来る梁フランジ内表面にスティフナーの端部中心が来るようにスティフナーを設けることが有効である。また、ハンチ加工の製作工数低減には、梁フランジの加工が不要な追加型のハンチを用いることにより解決する。
そのハンチ先端の梁フランジの内側にスティフナーを設ける方法がとられているけれども、スティフナーの取り付ける位置によっては大きな応力がウエブに発生することが認められ、ハンチの勾配が大きいほど顕著であった。このようなハンチ取り付けに関しては明らかにされていない。従来のハンチには、梁端のフランジの曲げ加工と溶接が伴うので製作上大きな工数が掛かる。
【解決手段】
ハンチ先端部ウエブの応力低減には、ハンチ部先端に設けられた梁フランジ内部のスティフナーは、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として45°の延長線上に来る梁フランジ内表面にスティフナーの端部中心が来るようにスティフナーを設けることが有効である。また、ハンチ加工の製作工数低減には、梁フランジの加工が不要な追加型のハンチを用いることにより解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨構造物において、柱に取り付ける梁端部をハンチ加工し、梁フランジから一定の勾配で立ち上がるハンチ部分即ちハンチ先端の梁フランジ内面にスティフナーを設けた鉄骨柱梁接合部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの柱に複数の梁が取り付けられ梁同士のせいが異なる場合に、梁せいの小さい梁端のせいを鉛直方向に拡大して大きい方の梁サイズに合わせるようにハンチ加工を行われることがある。そして、ハンチ加工を行った場合に、梁フランジの面外変形がおきやすく、その梁フランジの座屈防止のために、そのハンチ先端の梁フランジの内側にスティフナーを設ける方法がとられている。
【0003】
これに対して、ハンチの構造に対しいくつか提案がなされている。例えば、特開2008−121419及び特開2004−257005及び特開2003−293448
においては、H形鋼を上下に重ねて製作した梁端をガセットプレートを介して柱にボルト接合した構造があり、特開2004−169298には、横断面がT形のハンチを柱に溶接取り付ける方法が提案されている。しかし、ハンチ先端の梁フランジの内側にスティフナーを設ける方法については記載がない。
現在用いられている梁端のハンチ加工は、図1に示すように、梁端の一方のフランジ5を一定の長さだけ切り裂いてウエブ6と分離させてその根本で梁フランジを加熱して曲げ加工で曲げ部5Bを作り、開口したウエブ部分に鋼板9を嵌め込み溶接9Bを行う。このようなハンチをここでは嵌め込み型ハンチという。また、図2に示すように、梁ブラケットを溶接で製作する場合に予め梁フランジ部分の鋼板を曲げ加工して、その形状に合わせてウエブを製作してハンチ付きの梁ブラケットを製作するタイプがある。このようなハンチをここではビルトH型ハンチという。また、嵌め込み型ハンチとビルトH型ハンチを総称して、曲げ型ハンチという。なお、ハンチは、通常梁フランジの下側に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121419
【特許文献2】特開2004−257005
【特許文献3】特開2003−293448
【特許文献4】特開2004−169298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのハンチ先端の梁フランジの内側に、通常、スティフナーを設ける方法がとられているけれども、スティフナーの取り付ける位置によっては大きな応力がウエブに発生することが認められ、ハンチの勾配が大きいほど顕著であった。このようなハンチ取り付けに関しては詳細が明らかにされていない。また、特許文献1〜4の追加型ハンチではスティフナーは用いられていない。
また、特許文献1〜4の追加型ハンチでは、ウエブ部分でガセットプレートにボルト接合した場合は、梁の曲げモーメントに対しボルト接合部が弱いのでウエブの曲げモーント負担が期待できない。その場合は、梁端部の曲げモーメントに対し梁端部に大きな耐力の損失がある。また、梁フランジの曲がり部は形状不連続で、梁フランジおよびウエブに大きな応力集中が働くと言う問題がある。
更に、特許文献1〜4のハンチには多くのダイアフラムが用いられており、製作上効率が
悪い。ダイアフラム1枚入る毎にダイアフラム材料と柱との溶接接合が増加し、柱製作上大きな製作手間がかかる。従来型のハンチ加工では曲げ加工に伴う材料劣化が起こり、特許文献1〜4に係るハンチ加工では材料を多く使い資源の多消費である。
更に、図1及び図2において、ハンチ先端部分5Bのウエブ6にはスティフナー10を梁フランジ内部に取り付けても応力集中15が発生し、この応力集中はハンチ勾配が大きくなるほど顕著になることが検討の結果明らかになった。即ち、このハンチの勾配は通常1/4〜1/3程度であるが、1/2〜1/1になると応力集中が顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ハンチ先端部ウエブの応力低減には、ハンチ部先端に設けられた梁フランジ内部のスティフナーは、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として大凡45°の延長線上に来る梁フランジ内表面にスティフナーの端部中心が来るようにスティフナーを設けることが有効である。また、ハンチ加工の製作工数低減には、梁フランジの曲げ加工が不要な追加型のハンチを用いることにより解決できる。請求項1に係る発明は、
鉄骨構造物の柱3と梁1の接合部において、図1及び図2に示す梁端フランジを曲げ加工して設けたハンチ又は図3に示す梁端フランジ外面に新たに追加して設けたハンチ部材のフランジの先端において、図4及び図5に示すように、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として大凡45°の延長線上に来る梁フランジ内面にスティフナー10の端部中心が来るように配置したハンチを有する柱梁接合部構造である。
請求項2に係る発明は、
請求項1に係かる発明において、図3に示すように、鉄骨構造物の柱3と梁1の溶接接合部において、H形鋼のウエブ10および梁フランジ5を梁軸方向19に柱7から梁フランジ5に斜めに1:2(27°)乃至1:1(45°)の勾配を持ち側面を3角形状にして断面がT字形にしたH形鋼の一部であるウエブおよびフランジから成る鉛直ハンチ4Aを、柱3とハンチが取り付けられる真っ直ぐな梁1の端部の下側又は上側に溶接接合させて、且つ該ハンチ4Aのフランジ5Fを柱に接合されたダイアフラム7の面内に溶接接合させた柱梁接合部構造である。追加型ハンチでは、図3において、ハンチ4Aのフランジ5F及びウエブ6HはロールH形鋼又は溶接製作のビルトH形鋼から切り出して製作することができる。ロールH形鋼の場合はフランジとウエブの板厚比は限られてものになるが、溶接製作のビルトH形鋼の場合はフランジとウエブの板厚比を任意に帰ることができる。なお、図3でダイアフラム7Eを用いた場合は、梁5の端部のより大きな耐力が得られることは自明の理である。
請求項3に係る発明は、
請求項2に係る発明の追加型ハンチにおいて、図3に示すように、追加型ハンチ4Aが取り付けられた側の梁端フランジ5に対するダイアフラム7Eを省略し、図7に示すように該梁端フランジ5の角を斜めにカットしたことを特徴とする柱梁接合部である。該梁端フランジ5の角を斜めにカットする角度は溶接施工が難しくない程度であれば良くて大凡45°であり、カットする量は梁フランジ半幅乃至1/4程度である。また、該梁端フランジ5の角を斜めにカットする場合、カットされた梁フランジは左右対称が望ましい。このように該梁端フランジ5の角を斜めにカットする理由は、ダイアフラム7Eがない場合は、柱スキンプレート部分が面外変形を起こして該梁フランジをサポートできないからであり、梁端の側端では柱端部に近くなると発生応力が大きくなるのを防止すると共に、ウエブの溶接量も低減できるからである。
請求項4に係る発明は、
請求項1又は2に係る発明において、図8に示すように、該鉛直ハンチ4の先端部に取り付けられたスティフナー10とハンチ側梁フランジ5で形成される角隅部の梁軸方向梁中央側ウエブ6、又は図9又は図10に示すようにスティフナーの柱側と梁中央側の両側のウエブ6に、半円形、1/4円形、楕円形又は四辺形の当て板11を溶接で取り付けるこ
とを特徴とする柱梁接合部構造である。該鉛直ハンチ4の先端部のH形鋼梁ウエブ6は、特にハンチフランジ5A又は5Bの面内方向のウエブ部分に大きな応力集中が発生させるので、該鉛直ハンチ4の先端部のスティフナーの梁軸方向の梁中央側のH形鋼梁ウエブ6の片側に当て板11を取り付けるのが特に有効である。
請求項5に係る発明は、
請求項1乃至4に係る発明において、図11に示すように、梁端部フランジ5に、追加型ハンチ4に重ねて、更に水平フランジ22を持つ追加型ハンチを備えた重ね追加型ハンチ21を取り付けたことを特徴とする柱梁接合部構造である。本発明は、梁フランジウエブ6と追加型ハンチウエブ6Hと重ね追加型ハンチウエブ23は同一面内にあり、重ね追加型ハンチの梁中央側端部即ちハンチ先端の形状は、通常10〜150Rの曲率を持つ円弧又は1/4〜1/2の勾配を持つテーパである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果については、上記の説明の中でも行っているが、要点を列挙すると次の通りである。
【0008】
1 梁端部の応力の緩和とハンチ先端のウエブの応力の緩和が図れる。
【0009】
2 追加型ハンチを用いた場合は、梁端加工が容易で製作の効率が図れる。
【0010】
3 梁端及びハンチ先端部のウエブ応力の緩和により、より安全な構造となり、ハンチのない場合に比較して梁せいの低減に役立ち、鉄骨重量の軽減に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の嵌め込み型ハンチを備えた柱梁接合部側面図
【図2】従来のビルトH型ハンチを備えた柱梁接合部側面図
【図3】請求項1に係る発明において、追加型ハンチにスティフナーを取り付け状況の正面図
【図4】請求項1に係る発明において、従来の曲げ型ハンチにスティフナーを取り付け状況のハンチ先端の詳細正面図
【図5】請求項1に係る発明において、追加型ハンチにスティフナーを取り付け状況のハンチ先端の詳細正面図
【図6】請求項2に係る発明において、追加型ハンチのフランジが柱に取り付けられるダイアフラムの面内の例として次の4通りのケースの断面図。
【0012】
・ 柱から突出した通しダイアフラムの端部
・ 柱からの突出が0〜10mmの通しダイアフラムの端部
・ 内ダイアフラム面内でその端部の延長線上の柱スキンプレート外表面
・ 柱側面に設けられた貫通溝からダイアフラムと柱をスロット溶接した溶接部
【図7】追加型ハンチが取り付けられた梁フランジの上面図
【図8】追加型ハンチ先端のスティフナーの梁中央側ウエブに鋼製当て板を取り付けた正面図(イ)は正面図で、(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【図9】追加型ハンチ先端のスティフナーの梁中央側及び柱側のウエブに鋼製当て板を取り付けた正面図。(イ)は正面図で、(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【図10】曲げ型ハンチ先端のスティフナーの梁中央側及び柱側のウエブに鋼製当て板を取り付けた正面図。(イ)は正面図で(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【図11】梁端部に、追加型ハンチに重ねて、更に追加型ハンチを取り付けた正面図。梁中央側のハンチ先端の形状は10〜150Rの曲率を持つ円弧又は1/4〜1/2の勾配を持つテーパである。(イ)は正面図で、(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
請求項1に係る発明において、望ましい形として、梁端フランジを曲げ加工して設けたハ
ンチ即ち曲げ型フランジでは、図4に示すように、梁フランジ5の外表面から梁フランジ板厚16の5%乃至15%の高さ18の該ハンチ5F外表面位置を起点として45°の延長線上に来る梁フランジ内面にスティフナー10の端部中心が来るように配置し、図5に示すように、梁端フランジ5F外面に新たに追加して設けた追加型ハンチでは、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚16の0%乃至10%高さの該ハンチ5F外表面位置を起点として大凡45°の延長線上に来る梁フランジ5の内面にスティフナー10の端部中心が来るように配置する。上記大凡45°の角度としては、40°〜50°が望ましい。
実施例2
請求項2に係る発明において、図6に示すように、柱に接合されたダイアフラムの面内にハンチフランジを溶接接合する例として次の4通りがある。
【0014】
・ 柱から25〜30mm突出した通しダイアフラムの端部への溶接接合
・ 柱からの突出が0〜10mmの通しダイアフラムの端部への溶接接合
・ 内ダイアフラム面内でその端部の延長線上の柱スキンプレート外表面
・ 柱側面に設けられた貫通溝からダイアフラムと柱をスロット溶接した溶接部
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、従来のハンチに比較して製作が容易で且つ加工工数が少なくて、発生応力も少ないので、発明効果が大きく、また、構造設計の従来方式で応用できるので適用が容易である。これらの理由で、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0016】
1 大梁
2 小梁
3 柱
4 ハンチ
4A 追加型ハンチ
4B 曲げ型ハンチ
5 梁フランジ
5B フランジ曲げ部
5F ハンチフランジ
6 ウエブ
6H ハンチ部分のウエブ
7 ダイアフラム
7E 請求項3に係る除去可能なダイアフラム
8 ガセットプレート
9 嵌め込み板
9w 嵌め込み板の溶接部
10 スティフナー
11 鋼製当て板
12 鋼製当て板溶接部
13 突合せ溶接又は完全溶け込み溶接
14 すみ肉溶接
15 高応力発生部分
16 梁フランジ板厚tf
17 ハンチフランジ板厚th
18 梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの寸法h0
19 梁軸方向
20 梁端フランジ斜めカット部分
21 重ね追加型ハンチ
22 重ね追加型ハンチのフランジ
23 重ね追加型ハンチのウエブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨構造物において、柱に取り付ける梁端部をハンチ加工し、梁フランジから一定の勾配で立ち上がるハンチ部分即ちハンチ先端の梁フランジ内面にスティフナーを設けた鉄骨柱梁接合部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの柱に複数の梁が取り付けられ梁同士のせいが異なる場合に、梁せいの小さい梁端のせいを鉛直方向に拡大して大きい方の梁サイズに合わせるようにハンチ加工を行われることがある。そして、ハンチ加工を行った場合に、梁フランジの面外変形がおきやすく、その梁フランジの座屈防止のために、そのハンチ先端の梁フランジの内側にスティフナーを設ける方法がとられている。
【0003】
これに対して、ハンチの構造に対しいくつか提案がなされている。例えば、特開2008−121419及び特開2004−257005及び特開2003−293448
においては、H形鋼を上下に重ねて製作した梁端をガセットプレートを介して柱にボルト接合した構造があり、特開2004−169298には、横断面がT形のハンチを柱に溶接取り付ける方法が提案されている。しかし、ハンチ先端の梁フランジの内側にスティフナーを設ける方法については記載がない。
現在用いられている梁端のハンチ加工は、図1に示すように、梁端の一方のフランジ5を一定の長さだけ切り裂いてウエブ6と分離させてその根本で梁フランジを加熱して曲げ加工で曲げ部5Bを作り、開口したウエブ部分に鋼板9を嵌め込み溶接9Bを行う。このようなハンチをここでは嵌め込み型ハンチという。また、図2に示すように、梁ブラケットを溶接で製作する場合に予め梁フランジ部分の鋼板を曲げ加工して、その形状に合わせてウエブを製作してハンチ付きの梁ブラケットを製作するタイプがある。このようなハンチをここではビルトH型ハンチという。また、嵌め込み型ハンチとビルトH型ハンチを総称して、曲げ型ハンチという。なお、ハンチは、通常梁フランジの下側に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121419
【特許文献2】特開2004−257005
【特許文献3】特開2003−293448
【特許文献4】特開2004−169298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのハンチ先端の梁フランジの内側に、通常、スティフナーを設ける方法がとられているけれども、スティフナーの取り付ける位置によっては大きな応力がウエブに発生することが認められ、ハンチの勾配が大きいほど顕著であった。このようなハンチ取り付けに関しては詳細が明らかにされていない。また、特許文献1〜4の追加型ハンチではスティフナーは用いられていない。
また、特許文献1〜4の追加型ハンチでは、ウエブ部分でガセットプレートにボルト接合した場合は、梁の曲げモーメントに対しボルト接合部が弱いのでウエブの曲げモーント負担が期待できない。その場合は、梁端部の曲げモーメントに対し梁端部に大きな耐力の損失がある。また、梁フランジの曲がり部は形状不連続で、梁フランジおよびウエブに大きな応力集中が働くと言う問題がある。
更に、特許文献1〜4のハンチには多くのダイアフラムが用いられており、製作上効率が
悪い。ダイアフラム1枚入る毎にダイアフラム材料と柱との溶接接合が増加し、柱製作上大きな製作手間がかかる。従来型のハンチ加工では曲げ加工に伴う材料劣化が起こり、特許文献1〜4に係るハンチ加工では材料を多く使い資源の多消費である。
更に、図1及び図2において、ハンチ先端部分5Bのウエブ6にはスティフナー10を梁フランジ内部に取り付けても応力集中15が発生し、この応力集中はハンチ勾配が大きくなるほど顕著になることが検討の結果明らかになった。即ち、このハンチの勾配は通常1/4〜1/3程度であるが、1/2〜1/1になると応力集中が顕著になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ハンチ先端部ウエブの応力低減には、ハンチ部先端に設けられた梁フランジ内部のスティフナーは、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として大凡45°の延長線上に来る梁フランジ内表面にスティフナーの端部中心が来るようにスティフナーを設けることが有効である。また、ハンチ加工の製作工数低減には、梁フランジの曲げ加工が不要な追加型のハンチを用いることにより解決できる。請求項1に係る発明は、
鉄骨構造物の柱3と梁1の接合部において、図1及び図2に示す梁端フランジを曲げ加工して設けたハンチ又は図3に示す梁端フランジ外面に新たに追加して設けたハンチ部材のフランジの先端において、図4及び図5に示すように、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として大凡45°の延長線上に来る梁フランジ内面にスティフナー10の端部中心が来るように配置したハンチを有する柱梁接合部構造である。
請求項2に係る発明は、
請求項1に係かる発明において、図3に示すように、鉄骨構造物の柱3と梁1の溶接接合部において、H形鋼のウエブ10および梁フランジ5を梁軸方向19に柱7から梁フランジ5に斜めに1:2(27°)乃至1:1(45°)の勾配を持ち側面を3角形状にして断面がT字形にしたH形鋼の一部であるウエブおよびフランジから成る鉛直ハンチ4Aを、柱3とハンチが取り付けられる真っ直ぐな梁1の端部の下側又は上側に溶接接合させて、且つ該ハンチ4Aのフランジ5Fを柱に接合されたダイアフラム7の面内に溶接接合させた柱梁接合部構造である。追加型ハンチでは、図3において、ハンチ4Aのフランジ5F及びウエブ6HはロールH形鋼又は溶接製作のビルトH形鋼から切り出して製作することができる。ロールH形鋼の場合はフランジとウエブの板厚比は限られてものになるが、溶接製作のビルトH形鋼の場合はフランジとウエブの板厚比を任意に帰ることができる。なお、図3でダイアフラム7Eを用いた場合は、梁5の端部のより大きな耐力が得られることは自明の理である。
請求項3に係る発明は、
請求項2に係る発明の追加型ハンチにおいて、図3に示すように、追加型ハンチ4Aが取り付けられた側の梁端フランジ5に対するダイアフラム7Eを省略し、図7に示すように該梁端フランジ5の角を斜めにカットしたことを特徴とする柱梁接合部である。該梁端フランジ5の角を斜めにカットする角度は溶接施工が難しくない程度であれば良くて大凡45°であり、カットする量は梁フランジ半幅乃至1/4程度である。また、該梁端フランジ5の角を斜めにカットする場合、カットされた梁フランジは左右対称が望ましい。このように該梁端フランジ5の角を斜めにカットする理由は、ダイアフラム7Eがない場合は、柱スキンプレート部分が面外変形を起こして該梁フランジをサポートできないからであり、梁端の側端では柱端部に近くなると発生応力が大きくなるのを防止すると共に、ウエブの溶接量も低減できるからである。
請求項4に係る発明は、
請求項1又は2に係る発明において、図8に示すように、該鉛直ハンチ4の先端部に取り付けられたスティフナー10とハンチ側梁フランジ5で形成される角隅部の梁軸方向梁中央側ウエブ6、又は図9又は図10に示すようにスティフナーの柱側と梁中央側の両側のウエブ6に、半円形、1/4円形、楕円形又は四辺形の当て板11を溶接で取り付けるこ
とを特徴とする柱梁接合部構造である。該鉛直ハンチ4の先端部のH形鋼梁ウエブ6は、特にハンチフランジ5A又は5Bの面内方向のウエブ部分に大きな応力集中が発生させるので、該鉛直ハンチ4の先端部のスティフナーの梁軸方向の梁中央側のH形鋼梁ウエブ6の片側に当て板11を取り付けるのが特に有効である。
請求項5に係る発明は、
請求項1乃至4に係る発明において、図11に示すように、梁端部フランジ5に、追加型ハンチ4に重ねて、更に水平フランジ22を持つ追加型ハンチを備えた重ね追加型ハンチ21を取り付けたことを特徴とする柱梁接合部構造である。本発明は、梁フランジウエブ6と追加型ハンチウエブ6Hと重ね追加型ハンチウエブ23は同一面内にあり、重ね追加型ハンチの梁中央側端部即ちハンチ先端の形状は、通常10〜150Rの曲率を持つ円弧又は1/4〜1/2の勾配を持つテーパである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果については、上記の説明の中でも行っているが、要点を列挙すると次の通りである。
【0008】
1 梁端部の応力の緩和とハンチ先端のウエブの応力の緩和が図れる。
【0009】
2 追加型ハンチを用いた場合は、梁端加工が容易で製作の効率が図れる。
【0010】
3 梁端及びハンチ先端部のウエブ応力の緩和により、より安全な構造となり、ハンチのない場合に比較して梁せいの低減に役立ち、鉄骨重量の軽減に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の嵌め込み型ハンチを備えた柱梁接合部側面図
【図2】従来のビルトH型ハンチを備えた柱梁接合部側面図
【図3】請求項1に係る発明において、追加型ハンチにスティフナーを取り付け状況の正面図
【図4】請求項1に係る発明において、従来の曲げ型ハンチにスティフナーを取り付け状況のハンチ先端の詳細正面図
【図5】請求項1に係る発明において、追加型ハンチにスティフナーを取り付け状況のハンチ先端の詳細正面図
【図6】請求項2に係る発明において、追加型ハンチのフランジが柱に取り付けられるダイアフラムの面内の例として次の4通りのケースの断面図。
【0012】
・ 柱から突出した通しダイアフラムの端部
・ 柱からの突出が0〜10mmの通しダイアフラムの端部
・ 内ダイアフラム面内でその端部の延長線上の柱スキンプレート外表面
・ 柱側面に設けられた貫通溝からダイアフラムと柱をスロット溶接した溶接部
【図7】追加型ハンチが取り付けられた梁フランジの上面図
【図8】追加型ハンチ先端のスティフナーの梁中央側ウエブに鋼製当て板を取り付けた正面図(イ)は正面図で、(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【図9】追加型ハンチ先端のスティフナーの梁中央側及び柱側のウエブに鋼製当て板を取り付けた正面図。(イ)は正面図で、(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【図10】曲げ型ハンチ先端のスティフナーの梁中央側及び柱側のウエブに鋼製当て板を取り付けた正面図。(イ)は正面図で(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【図11】梁端部に、追加型ハンチに重ねて、更に追加型ハンチを取り付けた正面図。梁中央側のハンチ先端の形状は10〜150Rの曲率を持つ円弧又は1/4〜1/2の勾配を持つテーパである。(イ)は正面図で、(ロ)は梁及びハンチ部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
請求項1に係る発明において、望ましい形として、梁端フランジを曲げ加工して設けたハ
ンチ即ち曲げ型フランジでは、図4に示すように、梁フランジ5の外表面から梁フランジ板厚16の5%乃至15%の高さ18の該ハンチ5F外表面位置を起点として45°の延長線上に来る梁フランジ内面にスティフナー10の端部中心が来るように配置し、図5に示すように、梁端フランジ5F外面に新たに追加して設けた追加型ハンチでは、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚16の0%乃至10%高さの該ハンチ5F外表面位置を起点として大凡45°の延長線上に来る梁フランジ5の内面にスティフナー10の端部中心が来るように配置する。上記大凡45°の角度としては、40°〜50°が望ましい。
実施例2
請求項2に係る発明において、図6に示すように、柱に接合されたダイアフラムの面内にハンチフランジを溶接接合する例として次の4通りがある。
【0014】
・ 柱から25〜30mm突出した通しダイアフラムの端部への溶接接合
・ 柱からの突出が0〜10mmの通しダイアフラムの端部への溶接接合
・ 内ダイアフラム面内でその端部の延長線上の柱スキンプレート外表面
・ 柱側面に設けられた貫通溝からダイアフラムと柱をスロット溶接した溶接部
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、従来のハンチに比較して製作が容易で且つ加工工数が少なくて、発生応力も少ないので、発明効果が大きく、また、構造設計の従来方式で応用できるので適用が容易である。これらの理由で、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0016】
1 大梁
2 小梁
3 柱
4 ハンチ
4A 追加型ハンチ
4B 曲げ型ハンチ
5 梁フランジ
5B フランジ曲げ部
5F ハンチフランジ
6 ウエブ
6H ハンチ部分のウエブ
7 ダイアフラム
7E 請求項3に係る除去可能なダイアフラム
8 ガセットプレート
9 嵌め込み板
9w 嵌め込み板の溶接部
10 スティフナー
11 鋼製当て板
12 鋼製当て板溶接部
13 突合せ溶接又は完全溶け込み溶接
14 すみ肉溶接
15 高応力発生部分
16 梁フランジ板厚tf
17 ハンチフランジ板厚th
18 梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの寸法h0
19 梁軸方向
20 梁端フランジ斜めカット部分
21 重ね追加型ハンチ
22 重ね追加型ハンチのフランジ
23 重ね追加型ハンチのウエブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨構造物の柱と梁の溶接接合部において、梁端フランジを曲げ加工して設けたハンチ又は梁端フランジ外面に新たに追加して設けたハンチ部材のフランジの先端において、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として凡そ45°の延長線上に来る梁フランジ内面にスティフナーの端部中心が来るように配置したハンチを有する柱梁接合部構造
【請求項2】
請求項1に係かる発明において、鉄骨構造物の柱と梁の溶接接合部において、H形鋼のウエブおよび梁フランジを梁軸方向に柱から梁フランジに斜めの勾配を持ち側面を3角形状にして断面がT字形にしたH形鋼の1部のウエブおよびフランジから成る鉛直ハンチを、柱とハンチが取り付けられる真っ直ぐな梁の端部の下側又は上側に溶接接合させて、且つ該ハンチのフランジを柱に接合されたダイアフラムの面内に溶接接合させた柱梁接合部構造
【請求項3】
請求項2に係る発明の追加型ハンチにおいて、ハンチ側の梁端フランジに対するダイアフラムを省略し、該梁端フランジの角を斜めにカットしたことを特徴とする柱梁接合部
【請求項4】
請求項1又は2又は3に係る発明において、該鉛直ハンチの先端部に取り付けられたスティフナーとハンチ側梁フランジの角隅部の梁軸方向梁中央側ウエブ又は、柱と梁中央側の両側に、半円形、1/4円形、楕円形又は四辺形の当て板を溶接で取り付けることを特徴とする柱梁接合部構造
【請求項5】
請求項1乃至4に係る発明において、梁端部フランジに、追加型ハンチに重ねて、更に水平フランジを持つ重ね追加型ハンチを取り付けたことを特徴とする柱梁接合部構造
【請求項1】
鉄骨構造物の柱と梁の溶接接合部において、梁端フランジを曲げ加工して設けたハンチ又は梁端フランジ外面に新たに追加して設けたハンチ部材のフランジの先端において、梁フランジ外表面から梁フランジ板厚の0%乃至15%高さの該ハンチ外表面位置を起点として凡そ45°の延長線上に来る梁フランジ内面にスティフナーの端部中心が来るように配置したハンチを有する柱梁接合部構造
【請求項2】
請求項1に係かる発明において、鉄骨構造物の柱と梁の溶接接合部において、H形鋼のウエブおよび梁フランジを梁軸方向に柱から梁フランジに斜めの勾配を持ち側面を3角形状にして断面がT字形にしたH形鋼の1部のウエブおよびフランジから成る鉛直ハンチを、柱とハンチが取り付けられる真っ直ぐな梁の端部の下側又は上側に溶接接合させて、且つ該ハンチのフランジを柱に接合されたダイアフラムの面内に溶接接合させた柱梁接合部構造
【請求項3】
請求項2に係る発明の追加型ハンチにおいて、ハンチ側の梁端フランジに対するダイアフラムを省略し、該梁端フランジの角を斜めにカットしたことを特徴とする柱梁接合部
【請求項4】
請求項1又は2又は3に係る発明において、該鉛直ハンチの先端部に取り付けられたスティフナーとハンチ側梁フランジの角隅部の梁軸方向梁中央側ウエブ又は、柱と梁中央側の両側に、半円形、1/4円形、楕円形又は四辺形の当て板を溶接で取り付けることを特徴とする柱梁接合部構造
【請求項5】
請求項1乃至4に係る発明において、梁端部フランジに、追加型ハンチに重ねて、更に水平フランジを持つ重ね追加型ハンチを取り付けたことを特徴とする柱梁接合部構造
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−57449(P2012−57449A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204879(P2010−204879)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(503318518)株式会社アークリエイト (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(503318518)株式会社アークリエイト (16)
【Fターム(参考)】
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