説明

ハードコート剤及び反射防止フィルム

【課題】 高い帯電防止性能を有し、全光線透過率、ヘーズ、硬度に優れ、かつ防汚性を有し、環境に配慮した反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】 透明基材上にハードコート層と低屈折率層を順次積層してなる二層反射防止フィルムであり、該ハードコート層をアクリレートと無機酸化物微粒子を必須成分とするハードコート剤により形成する。前記アクリレート100重量部に対して、前記無機酸化物微粒子の配合比は、10〜400重量部とする。前記低屈折率層はフッ素変性シリコーン樹脂により形成し、水に対する接触角が90度以上、かつオレイン酸に対する接触角が50度以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート剤及び反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビやPCにおいては、従来のブラウン管に代わってプラズマディスプレイや液晶ディスプレイによる大画面・薄型化が進んでいる。これらのディスプレイは高画質であるため、その画面部への光や物体の映りこみが画像の見栄えに与える影響が大きく、反射防止性能を付与することが必要となっている。
【0003】
また、液晶や有機EL(エレクトロルミネッセンス)等の表示方式が用いられる携帯電話、PDA、電子ペーパー等のモバイル機器の表示材においても、屋外で使用されることから光や物体の映りこみの画像に対する影響が大きく、反射防止性能を付与することが必要である。
【0004】
反射防止の一つの方法として、表示画面の表面に反射防止フィルムを装着することが行われてきた。この反射防止フィルムは、透明基材の片面にアクリル系樹脂等の硬度が高く、かつ屈折率の高いハードコート層と、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂等の屈折率が低い低屈折率層とを順次積層したものである。
【特許文献1】再表03/055950
【特許文献2】特開2004−122611
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から反射防止フィルムは蒸着やスパッタリングなどの乾式法により、前記多層膜を形成するが、これら乾式法では生産性が悪く製造コストが高くなる問題があった。ウェットコーティングで反射防止層を形成する湿式法では生産性が向上するが、乾式法と比較し、塗膜強度に問題があった。
【0006】
また、静電気による埃付着を防止する目的でハードコート層に帯電防止性能を付与させる必要があった。湿式法では無機材料を直接成膜する乾式法と異なり、帯電防止性能を付与させるために導電性ポリマーや各種活性剤、導電性無機微粒子を用いる必要があった。
【0007】
導電性ポリマーを用いた帯電防止ハードコートフィルムとして特許文献1があげられるが、導電性ポリマーは透明性や生産性に優れるが、導電性、耐久性の面からして必ずしも十分とは言えない。
【0008】
無機微粒子を用いた帯電防止ハードコートフィルムとして特許文献2があげられ、導電性ポリマーとは異なり、導電性、耐久性に優れる。しかし一般的に用いられるアンチモンドープ酸化スズや五酸化アンチモンは特有の着色があり、光学物性に劣る。また昨今、アンチモンの毒性が問題視されており、環境問題からアンチモンフリーの要求が高まっている。スズドープ酸化インジウムは導電性、耐久性、光学物性に優れるものの入手性やコストの面からデメリットが多い。
【0009】
各種活性剤は帯電防止層が最表面にくることで帯電防止性能を発現させるが、反射防止フィルムのように、帯電防止層の上に新しく層を形成する場合は、所望の帯電防止性能が得られない。また空気中の水分に影響を受けやすく、性能が安定しないという問題がある。
【0010】
また、上記反射防止フィルムを液晶やプラズマディスプレイなどディスプレイパネルに貼り付け、使用した場合、指紋などにより汚れが蓄積し、表示機能に障害をきたす場合があった。
【0011】
本発明は前記課題を解決し、高い帯電防止性能を有し、全光線透過率、ヘーズ、硬度に優れ、かつ防汚性を有し、環境に配慮した反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1の発明は、
アクリレートと無機酸化物微粒子を必須成分とするハードコートである。
【0013】
(2)請求項2の発明は、
前記アクリレート100重量部に対して、前記無機酸化物微粒子の配合比が、10〜400重量部であることを特徴とする請求項1記載のハードコート剤である。
【0014】
(3)請求項3の発明は、
前記無機酸化物微粒子がリンドープ酸化スズであることを特徴とする請求項1又は2記載のハードコート剤である。
【0015】
(4)請求項4の発明は、
透明基材上に前記ハードコート剤よりなるハードコート層と低屈折率層を順次積層してなる二層反射防止フィルムである。
【0016】
(5)請求項5の発明は、
前記低屈折率層がフッ素変性シリコーン樹脂からなり、水に対する接触角が90度以上、かつオレイン酸に対する接触角が50度以上であることを特徴とする請求項4記載の反射防止フィルムである。
【0017】
(6)請求項6の発明は、
前記反射防止フィルムが全光線透過率92%以上であり、かつヘーズ値が1%未満であり、かつL*a*b*表色系による標準光Cに対するa*およびb*値が−1.5≦a*≦1.5および、−1.5≦b*≦1.5であることを特徴とする請求項4又は5記載の反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた帯電防止性、高透明性、硬度、防汚性を有し、低コストかつ環境に配慮した反射防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に使用する透明基材層は、特に限定されるものではなく、厚み10μm〜5mmの公知の透明プラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このような透明基材層としては、例えば、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂をフィルム状またはシート状に加工したものを用いることができる。更に具体的には、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。
【0020】
アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、イソシアヌレートジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、また市販されているウレタンアクリレートやメラミンアクリレートなどが挙げられ、官能基数の多いアクリレートほど表面硬度が高くなり、好ましい。これらは単独あるいは2種以上を混合して使用してもよい。アクリレートは、モノマーでもプレポリマーであってもよい。
【0021】
本発明のハードコート層を形成するために用いるハードコート剤には更にメタクリレートを配合することもできる。メタクリレートはアクリレートの硬化遅延剤として作用し、ハードコート層としたときに、それに隣接する低屈折率層との密着性を向上させる。その配合比は、アクリレート100重量部に対して、メタクリレート0.5〜50重量部が適している。0.5重量部未満では遅延効果がなく、また50重量部を超えると紫外線照射等による硬化後もタックが残り、低屈折率層の塗布が困難となる。好ましくは、1〜30重量部である。
【0022】
前記の如く、メタクリレートは、アクリレートの硬化遅延剤として作用する。これは、メタクリレート中のメチル基の共役電子依存性によるものと考えられる。好ましいメタクリレートは、2あるいは3官能以下のメタクリレートであり、例えば、2官能としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジメタクレート、1.9−ノナンジオールジメタクリレート、1.10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジメタクリレート、3官能としては、トリメチロールプロパントリメタクリレートやエトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられ、官能基数の多いメタクリレートほど硬化遅延の効果が大きく、特に3官能のメタクリレートを用いることにより、添加量を減らすことができ、好ましい。また、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
前記無機酸化物微粒子は、前記ハードコート層の透明性を低下させないために、その一次粒子径が1〜100nmであることが好ましく、特に1〜50nmであることが好ましい。粒子径が1nm未満では無機酸化物微粒子同士の結合が困難になり、導電性が低下する。100nmを越えると光の散乱が発生し、透過率の低下による透明性の低下が発生するため好ましくない。
【0024】
また、前記無機酸化物微粒子の量は、前記アクリレート100重量部に対し、10〜400重量部であることが好ましい。10重量部未満では無機酸化物微粒子の量が少なく、導電性が発現しない。400重量部を越えると無機酸化物微粒子が過剰であり、アクリレートが不足し硬度が落ち、かつコスト高になる。より好ましくは10〜200重量部である。
【0025】
本発明に用いる無機酸化物微粒子は、特に限定されるものではないが、以下の点からリンドープ酸化スズを含むことが好ましい。
【0026】
リンドープ酸化スズは高い帯電防止性能を有するとともに、アンチモンドープ酸化スズや五酸化アンチモンと異なり、着色が少なく、透過率の低下が見られない。またアンチモンフリーであるため毒性の懸念がなく、安全に用いることができる。
【0027】
紫外線にて硬化させる際には光重合開始剤を配合する。光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン、2、2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのカルボニル化合物、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物などを用いることができる。
【0028】
これらの光重合開始剤の市販品としてはIrgacure184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61(以上、チバガイギー社製);LucirinLR8728(BASF社製);Darocure1116、1173(以上、メルク社製);ユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0029】
ハードコート剤を透明基材層に塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。ハードコート層の厚さは、1μm〜10μmが好ましい。ハードコート層の厚みが1μm未満であると、十分な硬度が発生せず、10μmを越えるとクラックが発生するため好ましくない。また、ハードコート層の屈折率は、1.50以上が好ましい。屈折率が1.50未満であると、低屈折率層との屈折率差が小さく反射防止効果が得られない。
【0030】
これにより、ハードコート剤で形成した層と、それに隣接する低屈折率層との密着性が高くなり、層間の剥離が生じ難くなる。
【0031】
前記低屈折率層をフッ素変性シリコーン樹脂で形成することで、前記ハードコート層と屈折率差が生じ反射防止機能が発現する。さらに水に対する接触角を90度以上、かつオレイン酸に対する接触角を50度以上とすることで、ディスプレイパネルに貼り付けた際、指紋などの汚れが蓄積されず優れた防汚性を有することができる。
【0032】
フッ素変性シリコーン樹脂としては特に限定されないが、パーフルオロアルキルアルコキシシランを主とするものが挙げられる。具体的には、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0033】
本発明の低屈折率層を形成する方法は、特に制限はなく、前述した各種の塗工法、印刷法により形成できる。低屈折率層の厚さは、屈折率及び目的とする最小反射率波長によって変化するが、50nm〜150nmが好ましい。50nm未満もしくは150nmを越えると、最小反射率となる波長が可視光領域をはずれるため、反射防止フィルムとしては好ましくない。また、低屈折率層の屈折率は、1.45以下が好ましい。屈折率が1.45を超える範囲ではハードコート層との屈折率差が小さく反射防止効果が得られない。
【0034】
酸素阻害を受けやすい樹脂に対しては、窒素雰囲気下にて硬化させても良い。また、必要に応じて低屈折率層を硬化させた後に紫外線照射機を用いてハードコート層を完全硬化させても良い。
【0035】
本発明で用いるハードコート剤には、必要に応じて、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ化合物、二酸化チタン等の無機充填剤の他、シラン系やチタネート系などのカップリング剤、殺菌剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、レベリング調整剤、消泡剤、着色顔料、防錆顔料等の配合材料を添加してもよい。また、耐光性向上を目的に酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加しても良い。
【0036】
ハードコート剤の粘度は、塗布性、レベリング性ならびに塗布方法などから、1〜50000mPa・s/20℃の範囲で使用でき、前記の配合材料の選択ならびに配合比率のほか、適宜溶剤あるいは重合反応を阻害しない各種添加物を添加して、塗布液の粘度を調整することができる。
【0037】
本発明の反射防止フィルム用ハードコート剤を構成する溶媒としては、例えば、有機溶媒であるメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサン等のケトン系溶剤、キシレン等の芳香族系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、等のアミド系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。
【0038】
また、粘度調整剤として単官能メタクリレートであるメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレートなどを添加してもよい。
【0039】
前記ハードコート剤を硬化させるには、紫外線照射機を用いて500mW/cm〜3000mW/cmの照射強度で、仕事量が50〜400mJ/cmの紫外線処理を行う。照射硬度500mW/cm、仕事量50mJ/cm以下の紫外線処理では低屈折率層塗工後の反射率を引き上げてしまい、また照射強度3000mW/cm、仕事量400mJ/cmの紫外線処理では低屈折率層との密着性が悪く、耐擦傷性や表面硬度が低くなる問題が発生する。
【0040】
また、前記反射防止フィルムの裏面に粘着層を設けてもよい。粘着層は、反射防止フィルムの透明性を維持しながら、反射防止フィルムとディスプレイ等の表面とを密着させることができる粘着剤又は接着剤から成るものであればよく、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の粘着剤、熱可塑型、熱硬化型、UV硬化型などの接着剤から成るものを使用できる。特に、光学特性上、耐光性、耐候性、耐熱性、透明性から、アクリル系樹脂が好適である。アクリル系樹脂を構成するモノマーには、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸エチル、またこれらに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル基含有化合物を共重合しても良い。更に、粘着層の密着耐久性能を良好にし、アウトガスの発生を抑制するためには、粘着剤の主剤がアクリル系樹脂で重量平均分子量が50万以上、かつ多分散度は5以下であることがよい。
【0041】
粘着層には、必要に応じて、架橋剤、触媒、酸化防止剤、着色顔料、ガラスビーズ、フィラー、難燃剤、抗菌剤、光安定剤、着色剤、流動性改良剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、架橋助剤等を配合することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤としては、要求特性に支障を来すものでなければ特に制限無く用いることができる。例えば、ポリイソシアネート、キレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アマイド樹脂などが挙げられる。また、粘着層に、赤外吸収剤、UV吸収剤等を添加して人体に悪影響を及ぼすと思われる有害光をカットする仕組みを入れ込んでも良い。
【0042】
粘着層を形成する方法は特に制限されないが、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコート、ノズルコーター、ディップコート、バーコート、ブレードコートなどを用いる塗工方法が例示される。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着層の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、60〜180℃程度でよい。粘着層の膜厚は特に限定されないが、0.1μm〜50μmが好ましく、10μm〜50μmが特に好ましい。
【0043】
粘着層の上には、さらに、粘着層を保護するための離型フィルムを貼り付けてもよい。離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、紙、布、ガラス、セラミック、金属板、アクリル板、オレフィン樹脂、PPS樹脂、TACフィルム、アクリル樹脂フィルム、またはこれらに離型処理を施したもの等が使用できる。離型フィルムの厚さは、特に限定されないが、500μm未満が好ましく、1μm〜100μmが一層好ましく、10μm〜50μmが特に好ましい。
【0044】
また、前記反射防止フィルムの裏面に、粘着層の代わりに近赤外線吸収層を形成することができる。近赤外線吸収層は近赤外線吸収色素を含有し、850nm〜1100nmの波長全域において透過率を20%以下とすることで、不要な近赤外線の放出を防止でき、プラズマディスプレイパネル前面板に貼り付けた際、リモコン等の誤動作を防止することができる。
【0045】
近赤外線吸収層は、例えばポリエステル樹脂などの透明性樹脂に近赤外線吸収色素を添加攪拌したものを基材裏面に前述した各種の塗工法、印刷法により形成できる。近赤外線吸収層の厚みは5〜20μmが好ましい。
【0046】
近赤外線吸収色素は、近赤外線を吸収し、かつ透光性を有する材料であれば特に限定されない。このような色素としては、ジイモニウム系、フタロシアニン系、シアニン系、アミニウム系、アゾ系、アジン系、アントラキノン系、インジゴイド系、オキサジン系、キノフタロニン系、スクワリウム系、スチルベン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ポリメチン系などを用いることができる。これらは材料に特有の吸収波長を有し、単独あるいは2種以上を混合して使用することで幅広い波長域において吸収性能を付与することもできる。
【0047】
前記近赤外吸収層にネオンカット色素を含有し、最大吸収波長の透過率を50%以下とすることで、プラズマディスプレイに特有のネオンガスによる不要なオレンジ色をカットし、高い赤の色純度を得ることができる。このような色素としては、シアニン系、アズレニウム系、スクワリウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯塩系、アザポルフィリン系、ビスアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系などを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
前記近赤外線吸収層を形成した反射防止フィルムに、さらに前述した粘着層を形成することもできる。
【0049】
リンドープ酸化スズを用いることにより、反射防止フィルムは、全光線透過率92%以上であり、かつヘーズ値が1%未満であり、かつL*a*b*表色系による標準光Cに対するa*およびb*値が−1.5≦a*≦1.5および、−1.5≦b*≦1.5となり、高い可視光透明性を有し、例えばプラズマディスプレイ用フィルターに最適なフィルムとなる。
【0050】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例1】
【0051】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPH 固形分100%)100重量部に対し、リンドープ酸化スズコロイド(日産化学工業株式会社製 商品名CX−S300M 粒子径20nm 固形分30%)を50重量部、MEK165重量部混合し攪拌した。開始剤としてIrgacure184(チバスペシャリティーケミカル株式会社製)を5重量部加え、粘度20mPa・sのハードコート剤を得た。次いで、厚み100μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート:東レ株式会社製 商品名ルミラーU34)に、硬化後の膜厚が3μmとなるように、ハードコート剤を塗布し、紫外線照射機を用い紫外線処理を行い、ハードコート層を得た。次に、後述するフッ素変性シリコーン樹脂溶液を硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、100℃にて硬化させ反射防止フィルムを得た。フッ素変性シリコーン樹脂溶液は次の手順で作製した。トリフルオロプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名KBM7103)12g、テトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBE04)3gを混合し、20℃に冷却、次に、0.25Nの酢酸2gを添加した後、20〜30℃で一晩熟成して加水分解を行った。この溶液にイソプロピルアルコール(IPA)35g、メチルエチルケトン(MEK)100gを添加し、固形分10%のフッ素変性シリコーン樹脂溶液を作製した。
【実施例2】
【0052】
実施例1において、リンドープ酸化スズコロイド50重量部を150重量部とした以外は同様に実施して、反射防止フィルムを得た。そのときのハードコート剤の粘度は22mPa・sであった。
【実施例3】
【0053】
実施例1において、リンドープ酸化スズコロイド50重量部を300重量部とした以外は同様に実施して、反射防止フィルムを得た。そのときのハードコート剤の粘度は25mPa・sであった。
【実施例4】
【0054】
実施例1において、リンドープ酸化スズコロイド50重量部を600重量部とした以外は同様に実施して、反射防止フィルムを得た。そのときのハードコート剤の粘度は27mPa・sであった。
【実施例5】
【0055】
実施例1において、リンドープ酸化スズコロイド50重量部を1260重量部とした以外は同様に実施して、反射防止フィルムを得た。そのときのハードコート剤の粘度は30mPa・sであった。
【0056】
比較例1
前記実施例1において、リンドープ酸化スズコロイド50重量部を15重量部とした以外は同様に実施した。そのときのハードコート剤の粘度は19mPa・sであった。
【0057】
比較例2
前記実施例1において、リンドープ酸化スズコロイド50重量部を2000重量部とした以外は同様に実施した。そのときのハードコート剤の粘度は35mPa・sであった。
【0058】
比較例3
実施例3において、フッ素変性シリコーン樹脂溶液の代わりに、後述するシリコーン樹脂溶液を用いた以外は同様に実施した。シリコーン樹脂溶液は次の手順で作製した。ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製50%メタノール溶液)4g、メチルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製)10gを混合し、20℃に冷却、次に、1Nの塩酸4gを添加した後、20〜30℃で一晩熟成して加水分解を行った。この溶液に酢酸7g、イソプロピルアルコール(IPA)25g、メチルエチルケトン(MEK)70gを添加し、固形分10%のシリコーン樹脂溶液を作製した。
【0059】
比較例4
実施例3において、リンドープ酸化スズコロイド300重量部の代わりに、五酸化アンチモン・酸化亜鉛の複酸化物コロイド(日産化学工業株式会社製 商品名CX−Z210IP−F2 粒子径50nm 固形分20%)450重量部を用いた以外は同様に実施した。そのときのハードコート剤の粘度は20mPa・sであった。
尚、本実施例および比較例の粒子径および粘度の測定は下記の通りである。
粒子径
レーザーゼータ電位計(大塚電子(株)製 ELS−8000)
粘度
回転粘度計(BM型No1ローター 30rpm 23℃)

表1に結果を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
試験・評価方法
(1)全光線透過率(Tt)の測定
JIS K 7361−1(2000年版)3.2の規定に基づいて行った。測定装置は、株式会社東洋精機製作所製のヘーズガードIIを用いた。
(2)ヘーズ値(Hz)の測定
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づいて行った。測定装置は、株式会社東洋精機製作所製のヘーズガードIIを用いた。
(3)色調b*の測定
JIS K 7105(1981年版)の規定に基づいて行った。測定装置は、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計V−550を用い、380nm〜780nmの透過スペクトルを測定し、視野角2°、光源Cを用い算出した。
(4)表面抵抗値の測定
JIS K 6911(1995年版)の規定に基づいて行った。測定装置は、株式会社アドバンテスト製のデジタル超高抵抗/微少電流計R8340Aおよび同社製レジスティビティチャンバーR12704Aを用いた。
(5)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づいて行った。測定装置は、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。
(6)最小反射率の測定
作製した反射防止フィルムの裏面をサンドペーパーで均一に研磨し、マーカーの黒色で塗りつぶしたサンプルを作製し、380〜780nmの5°、−5°分光反射スペクトルを日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計V−550を用いて測定し、反射率スペクトルより最小反射率を読み取った。反射スペクトルに振幅がある場合はその中心を最小反射率とした。
(7)接触角の測定
反射防止フィルムの表面に、イオン交換水およびオレイン酸(キシダ化学株式会社製)を滴下し、接触角を測定した。測定装置は、協和界面科学株式会社製接触角計CA−X型を用いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートと無機酸化物微粒子を必須成分とするハードコート剤。
【請求項2】
前記アクリレート100重量部に対して、前記無機酸化物微粒子の配合比が、10〜400重量部であることを特徴とする請求項1記載のハードコート剤。
【請求項3】
前記無機酸化物微粒子がリンドープ酸化スズであることを特徴とする請求項1又は2記載のハードコート剤。
【請求項4】
透明基材上に前記ハードコート剤よりなるハードコート層と低屈折率層を順次積層してなる二層反射防止フィルム。
【請求項5】
前記低屈折率層がフッ素変性シリコーン樹脂からなり、水に対する接触角が90度以上、かつオレイン酸に対する接触角が50度以上であることを特徴とする請求項4記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記反射防止フィルムが全光線透過率92%以上であり、かつヘーズ値が1%未満であり、かつL*a*b*表色系による標準光Cに対するa*およびb*値が−1.5≦a*≦1.5および、−1.5≦b*≦1.5であることを特徴とする請求項4又は5記載の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2008−127413(P2008−127413A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311120(P2006−311120)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】