説明

ハードコート膜付基材、ハードコート膜形成用塗布液および該ハードコート膜に用いるポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法

【課題】基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐アルカリ性に優れたハードコート膜付基材を提供する。
【解決手段】基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、該ハードコート膜が、(i)有機樹脂マトリックス成分と、(ii)重合性モノマーと反応性シラン化合物との反
応物であるポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる被覆金属酸化物粒子とからなり、該ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmにあり、かつ基材中の含有量が0.5〜80重量%の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート膜付基材であって、ハードコート膜が、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐アルカリ性に優れたハードコート膜付基材および該ハードコート膜の形成に用いる塗布液ならびに該ハードコート膜に用いるポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ、樹脂フィルム、表示装置前面板等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート膜を形成することが知られており、このようなハードコート膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。さらに、シランカップリング剤で表面処理した無機粒子を用いることが行われている。
【0003】
また、樹脂で被覆した金属酸化物粒子を透明被膜に用いることも知られている(特開平11−116240号公報、特許文献1)。
また、樹脂で被覆した金属酸化物粒子の製造方法については、他に、特開2000−554782号公報(特許文献2)、特開2003−327641号公報(特許文献3)、特開2005−290036号公報(特許文献4)等に開示されている。
【特許文献1】特開平11−116240号公報
【特許文献2】特開2000−554782号公報
【特許文献3】特開2003−327641号公報
【特許文献4】特開2005−290036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金属酸化物粒子を樹脂で被覆して得られる粒子は凝集体であり、単分散粒子を得ることが困難で、このような樹脂被覆金属酸化物粒子をハードコート膜に用いても、基材との密着性、耐擦傷性等に問題があった。
【0005】
また、ハードコート膜付の樹脂基材を表示装置前面板等に貼り付けて使用される場合があるが、この時、接着剤との接着性を向上させるためにハードコート膜付基材をアルカリ処理してハードコート膜の反対側の基材表面の平滑性を低下させたり、表面に粗さを設けることが行われる。さらには、従来のシリカ等の無機酸化物粒子を含むハードコート膜では少なくともこの無機酸化物粒子の一部がアルカリに溶解し、ハードコート機能が低下したり、透明性が低下して白化する等の問題があった。
【0006】
このようなハードコート膜のアルカリによる浸食を防ぐためにハードコート膜上に耐アルカリ性の保護薄膜を形成することが行われているが、保護膜を形成する工程およびこれを剥離する工程を必要とし経済性が問題となることから耐アルカリ性を有するハードコート膜の開発が求められていた。
【0007】
また、ハードコート膜に五酸化アンチモン、ジルコニア、ITO、ATO等の無機酸化物粒子を用いる場合、耐アルカリ性はある程度改良されるものの、粒子の屈折率が高く、このためハードコート膜の屈折率も高くなるため、屈折率の低い基材を用いる場合は干渉
縞を生じる場合があった。
【0008】
なお、本願出願人も、特開2005−119909号公報にて、基材上に有機樹脂のみからなるハードコート膜を形成し、その上に表面を酸化アンチモンで被覆した多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子を含む反射防止・帯電防止膜を有する透明被膜付基材を提案しているが、ハードコート機能(耐擦傷性、膜強度等)が必ずしも満足するものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況の下、本発明者等は、上記問題点を解消すべく鋭意検討した結果、ハードコート膜中に有機樹脂マトリックスとシランカップリング剤とを反応させて得られるポリマーシランカップリング剤を予め被覆した金属酸化物粒子を配合すると、基材との密着性、耐擦傷性を低下させることなく耐アルカリ性が大幅に向上することを見いだして本発明を完成するに至った。
【0010】
[1]基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜が、(i)有機樹脂マトリックス成分と、(ii)重合性モノマーと反応性
シラン化合物との反応物であるポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる被覆金属酸化物粒子とからなり、
該ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmにあり、かつ基材中の含有量が0.5〜80重量%の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。
[2]前記ポリマーシランカップリング剤のポリスチレン換算分子量が2,500〜150,
000の範囲にある[1]のハードコート膜付基材。
[3]前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子のポリマーシランカップリン
グ剤被覆層の厚みが、1〜10nmの範囲にある[1]または[2]のハードコート膜付基材。[4]前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子を構成する金属酸化物粒子が
、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなる[1]〜[3]のハードコート膜付基材。
[5]前記金属酸化物粒子がシリカまたはシリカ系複合酸化物粒子であり、屈折率が1.1
5〜1.55の範囲にある[1]〜[4]のハードコート膜付基材。
[6]前記ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が0.3以下である[1]〜[5]のハ
ードコート膜付基材。
[7]前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)である[1]〜[6]のハードコート膜付基
材。
[8](i)有機樹脂マトリックス形成成分と、(ii)重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物であるポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる被覆金属酸化物粒子と、(iii)分散媒とを含んでなり、該ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあるハードコート膜形成用塗布液。
[9]前記ポリマーシランカップリング剤のポリスチレン換算分子量が2,500〜150,
000の範囲にある[8]のハードコート膜形成用塗布液。
[10]前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子に設けられたポリマーシランカップリング剤の被覆層の厚みが1〜10nmの範囲にある[8]または[9]のハードコート膜形成用塗布液。
[11]前記ポリマーシランカップリング剤被覆被覆金属酸化物粒子を構成する金属酸化物粒子が、
シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなる[8]〜[10]のハードコート膜形成用塗布液。
[12]前記金属酸化物粒子がシリカ系複合酸化物粒子であり、屈折率が1.15〜1.55
の範囲にある[8]〜[11]のハードコート膜形成用塗布液。
[13]金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物であるポリマーシランカップリング剤を加え、アルカリ存在下にポリマーシランカップリング剤で金属酸化物粒子を被覆するポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法。
[14]前記ポリマーシランカップリング剤のポリスチレン換算分子量が2,500〜150,000の範囲の範囲にあり、前記アルカリが塩基性窒素化合物(アンモニアおよび/またはアミン類)である[14]のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、基材表面に設けられたハードコート膜に含まれる金属酸化物粒子が有機樹脂とシランカップリング剤とを反応させて得られるポリマーシランカップリング剤で被覆されているために分散性および耐アルカリ性に優れ、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐アルカリ性に優れたハードコート膜付基材および該ハードコート膜の形成に用いる塗布液ならびにハードコート膜に用いるポリマーシランカップリング剤被覆酸化物粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、まず、本発明に係るハードコート膜付基材について説明する。
ハードコート膜付基材
本発明のハードコート膜付基材は、基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなる。
【0013】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等を用いることができるが、なかでも屈折率が低く耐アルカリ性を要求されるトリアセチルセルロース(TAC)基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリエーテルスルフォン系樹脂機材等が好適に用いられる。
【0014】
これらの基材は表示装置前面板等に貼り付けて使用する際にアルカリ処理をすることによって接着性よく貼り付けることができる。なかでも、TACは透明性高く、機械的強度に優れ、且つ、温度、湿度等の変化に対する寸法安定性がよく、また、屈折率が低く汎用性の高い基材であるので好ましい。
このような基材は、屈折率が1.45〜1.55、さらには1.48〜1.52の範囲にあることが好ましい。
【0015】
ハードコート膜
ハードコート膜は、マトリックス成分とポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子とを含んでなる。
【0016】
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子
本発明に用いるポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子は金属酸化物粒子がポリマーシランカップリング剤で被覆されている。
【0017】
金属酸化物粒子としては、ハードコート膜に使用されるものであれば特に制限されないが、通常シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなるものが望ましい。なお、複合酸化物粒子としては、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・酸化アンチモン、アルミナ
・ジルコニア、ジルコニア・酸化チタン等が挙げられる。
【0018】
反射防止性能を付与するには、金属酸化物粒子として、シリカ、またはシリカを主成分とし、他の酸化物としてアルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化アンチモン、ボリア等を含むシリカ系複合酸化物粒子を用いることが望ましい。この場合に、シリカ系複合酸化物粒子は屈折率が1.15〜1.55、さらには1.15〜1.50の範囲にあるものが望ましい。
【0019】
なお、前記範囲下限よりも屈折率の低い粒子は得ることが困難である。また前記範囲を越えて屈折率が高いと、ハードコート膜の屈折率が高くなり、基材の屈折率が低い場合はハードコート膜の屈折率が高くなりすぎて干渉縞を生じることがある。なお反射防止性能が要求されない用途では、屈折率は特に制限されず、またシリカ系粒子に使用は限定されない。
【0020】
シリカ系複合酸化物粒子としては、シリカを主成分とし、内部に空洞を有する中空粒子は屈折率が低いので好適である。このような中空粒子としては本願出願人の出願による特開2001−167637号公報、特開2001−233611号公報等に開示した内部に空洞を有するシリカ系粒子が挙げられる。
【0021】
さらに、シリカ系複合酸化物粒子として、シリカ系微粒子と酸化アンチモン被覆層とからなる微粒子であって、屈折率が1.35〜1.60の範囲にある酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子を用いることも可能である。前記シリカ系微粒子としては、多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子が望ましい。このようなシリカ系微粒子は、本願出願人による特開2005−119909号公報に開示されている。
【0022】
なお、本発明のシリカ系複合酸化物粒子の屈折率は標準屈折率法によって測定することができる。
本発明に用いる金属酸化物粒子の平均粒子径は、最終的に得られるポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲となれば特に制限はないが、概ね5〜500nmの範囲(ただし、ポリマーシランカップリング剤被覆層が形成されるので、当然、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の大きさを越えることはない)にあることが望ましい。
【0023】
前記金属酸化物粒子はポリマーシランカップリング剤で被覆されている。
(I)ポリマーシランカップリング剤
本発明に用いるポリマーシランカップリング剤は、重合性モノマーとシランカップリング剤(シラン化合物)との反応物をいう。このようなポリマーシランカップリング剤は、例えば、特開平11−116240号公報に開示された重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物の製法に準じて得ることができる。
【0024】
重合性モノマーとして具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソ
プロピル、(メタ)-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メ
タ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジバーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルシチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール、アクリル樹脂モノマー類;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
さらに、これら重合性モノマーの重合物(オリゴマー、プレポリマー)を用いることも可能である。これらの重合性モノマーは、単独で用いても良いし、複数を用いても良い。ここで、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0026】
なお、上記の重合性モノマーとして官能基を2個,3個有するものを用いると、長鎖のポリマーシランカップリング剤が得られ、官能基を4〜6個有するものを用いると、嵩高いポリマーシランカップリング剤を得ることができる。
【0027】
後述するハードコート膜のマトリックス成分としてアクリル系樹脂を用いる場合は、アクリル系の重合性モノマーを用いたポリマーシランカップリング剤を用いると、親和性が高くなるので、混合・分散を均一にしやすくできる。
【0028】
反応性シラン化合物としては、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を用いることが
好ましい。
X-R-Si(OR)3 (1)
(式中、Rは、置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の有機基を表す。Xは(メタ)アクロイル基、エポキシ基(グリシド基)、ウレタン基、アミノ基、フルオロ基から選ばれる1種または2種以上の官能基。)
式(1)で表される有機ケイ素化合物として具体的には、3,3,3−トリフルオロプロピルト
リメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-
エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメト
キシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(β-グリシ
ドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリ
メトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシ
シラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシ
シラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロ
ピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
上記した重合性モノマーと反応性シラン化合物と反応させてポリマーシランカップリング剤が調製される。具体的には、重合性モノマー100重量部に対し反応性シラン化合物を0.5〜20重量部、さらには1〜10重量部の範囲で混合した有機溶媒溶液を調製し、これに重合開始剤を添加し、加熱することによって得ることができる。
【0030】
有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは混合して用いることもできる。
【0031】
この時の重合性モノマーと反応性シラン化合物との合計の濃度は、固形分として概ね1
〜40重量、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
また、重合開始剤としては、アゾイソブチルニトリル、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサイノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化物重合開始剤、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。
【0032】
反応温度は概ね30〜100℃、さらには50〜95℃の範囲にあることが望ましい。反応温度が低いと、反応が遅く、分子量の大きいポリマーシランカップリング剤を調製するには時間がかかりすぎることがあり、反応温度が高すぎるとかえって、反応速度が速すぎてしまい、所望の分子量に制御できない場合がある。
【0033】
本発明に用いるポリマーシランカップリング剤の分子量はポリスチレン換算で2,50
0〜150,000、さらには2,000〜100,000の範囲にあることが好ましい

ポリマーシランカップリング剤の分子量が小さいと、ある程度の厚みを有するポリマーシランカップリング剤の被覆層を形成することが困難な場合があり、ポリマーシランカッ
プリング剤の分子量が大きすぎても、塗布液を調製時に、粒子からポリマーシランカップリング剤が剥離するためか充分な耐アルカリ性が得られないことがある。
【0034】
(II)被覆層
ポリマーシランカップリング剤で金属酸化物粒子表面が被覆されている。この被覆層の厚みは1〜10nm、さらには1〜5nmの範囲にあることが好ましい。被覆層が薄いと、金属酸化物粒子のマトリックス成分への分散性が不充分となり、ハードコート膜の強度、耐擦傷性の向上効果が不充分であったり、耐アルカリ性の向上効果が充分得られないことがある。また、被覆層が厚すぎると、後述する本発明に好適に採用される方法では得ることが困難であり、得られたとしてもポリマーシランカップリング剤の利用率が低くなり、経済性が問題となる。
【0035】
さらに、被覆層の厚みは、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径の1/100〜1/1、さらには2/100〜1/2の範囲にあることが望ましい。また、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子中の被覆層の含有量は、固形分として0.5〜20重量%、さらには1〜15重量%の範囲にあることが望ましい。
【0036】
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の調製方法
本発明に用いるポリマーシランカップリング被覆金属酸化物粒子の調製方法は、凝集することなく金属酸化物粒子に厚みが1〜10nmのポリマーシランカップリング剤の被覆層を形成できれば特に制限はないが、以下のようにして製造することができる。
【0037】
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法
本発明に係るポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法は、金属酸化物粒子の有機溶媒分散液にポリマーシランカップリング剤を加え、アルカリ存在下にポリマーシランカップリング剤で金属酸化物粒子を被覆することによって調製される。
【0038】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0039】
本発明では、金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に前記したポリマーシランカップリング剤を、得られるポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子中の被覆層の含有量が所望の量となるように混合する。
【0040】
また、分散液中の金属酸化物粒子とポリマーシランカップリング剤の合計の濃度は固形分として1〜30重量%、さらには2〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
ついで、分散液にアルカリを添加して金属酸化物粒子にポリマーシランカップリング剤を吸着させる。理由は明確ではないものの、アルカリを添加すると、(1)金属酸化物粒子
によっては表面が活性化(OH基の生成)、(2)ポリマーシランカップリング剤と金属酸化
物粒子との親和性が高くなり、強く結合する、(3)ポリマーシランカップリング剤のOH基
と金属酸化物粒子のOH基との脱水反応を促進して結合を促進する、などが考えられる。
【0041】
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の他、アンモニア、アミン類等の塩基性窒素化合物が用いられる。なかでも、塩基性窒素化合物は金属酸化物粒子へのポリマーシランカップリング剤の吸着および結合が促進され、未吸着のポリマーシランカップリング剤が少なく、効率的に所望量のポリマーシランカップリング剤で金属酸化物粒子を被覆した粒子を得ることができるので好適に用いることができる。
【0042】
アルカリの使用量は金属酸化物粒子の種類、平均粒子径等によっても異なるが、金属酸化物粒子の概ね0.001〜0.2重量%、さらには0.005〜0.1重量%の範囲にあることが好ましい。
【0043】
アルカリの使用量が少ない場合、ポリマーシランカップリング剤が吸着しにくくなり、多すぎると、かえって吸着を阻害することが有るので好ましくない。
この時、必要に応じて加温することもでき、さらに、吸着処理後、未吸着のポリマーシランカップリング剤を除去することもできる。ついで、ポリマーシランカップリング剤を吸着した金属酸化物粒子を分離し、乾燥することによってポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子を得ることができる。
【0044】
得られるポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径は5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の小さいものは、必然的に金属酸化物粒子の平均粒子径も小さくしなければならず、前記範囲の下限よりも小さいものは得ること自体が困難であるとともに、粒径が小さければ、粒子同士が凝集してしまうことがある。平均粒子径が大きすぎると、これを用いて得られるハードコート膜のヘーズが悪化する傾向にある。
【0045】
ハードコート膜中のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の含有量は固形分として0.5〜80重量%、さらには1〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
ハードコート膜中のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の含有量が少ないと、粒子を含有する効果が発現されず、ハードコート膜の硬度が不充分であったり、耐擦傷性が不充分となることがある。また、ハードコート膜中のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の含有量が多すぎると、粒子が多すぎてしまい、ヘーズが高くなったり、マトリックス成分が少ないために基材との密着性が低くなったり、ハードコート膜の耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等が低下することがある。
【0046】
マトリックス成分
ハードコート膜に含まれているマトリックス成分としては、有機樹脂系のマトリックスが用いられる。
【0047】
有機樹脂系マトリックス成分として、具体的には塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などが挙げられる。具体的にはペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、硬化触媒が含まれていてもよい。なお、熱硬化性樹脂の場合、マトリックス成分は硬化物であり、重合物・反応物となっている。
【0049】
ハードコート膜中のマトリックス成分の含有量は固形分として20〜99.5重量%、さらには40〜99重量%の範囲にあることが好ましい(なお、前記金属酸化物粒子との合計が100重量%を越えることはない)。
【0050】
マトリックス成分の含有量が少なければ、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の含有量が多くなり、前記したように、ヘーズが高くなったり、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等が低下することがある。マトリックス成分の含有量が多すぎても固形分として99.5重量%を越えると、ハードコート膜の硬度が不充分であったり、耐擦傷性が不充分となることがある。
【0051】
ハードコート膜の厚さは0.1〜30μm、さらには0.2〜20μm、特に0.2〜1
0μmの範囲にあることが好ましい。
ハードコート膜の厚さが前記範囲の下限未満の場合は、ハードコート膜が薄いためにハードコート膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、ハードコート機能が不充分となる。
【0052】
ハードコート膜の厚さが前記範囲の上限を越えると、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥することが困難となり、さらに収縮が大きくなるのでカーリング(ハードコート膜付基材が湾曲)が生じることがある。また、膜厚が厚すぎて透明性が不充分となることがある。
【0053】
このようなハードコート膜の屈折率は基材の屈折率との差が0.3以下、さらには0.2以下であることが好ましい。ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が小さければ干渉縞を生じることもない。
【0054】
接着剤層
さらに、本発明に係るハードコート膜付基材は、基材のハードコート膜が形成された面の他方の面上に接着剤層が設けられていてもよい。
【0055】
接着剤層の接着剤としては透明性の良好なものであれば特に制限はなく従来公知の接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系、ゴム系、ポリビニルエーテル系、シリコーン系等の接着剤が挙げられる。接着剤層を設けるには、前記接着剤を、必要に応じて架橋剤を添加し、溶剤を用いて所望の濃度、粘度になるように調節後、ハードコート膜を設けた反対側に塗布し、ついで、加熱、乾燥等により溶剤を除去する。また、別の方法としては、接着剤層を有する剥離紙の接着剤層の面を貼り付けることによっても設けることができる。
【0056】
このようなハードコート膜は、後述する本発明に係るハードコート膜形成用塗布液を塗布、乾燥、硬化することによって形成することができる。
本発明のハードコート膜には前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の
他に耐擦傷性を阻害しない範囲で酸化物微粒子、顔料微粒子、金属(合金含む)微粒子から選ばれる1種または2種以上を含むことができる。
【0057】
酸化物微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化インジウム、低次酸化チタン、酸化マグネシウム、ボリア、酸化ニオブ等の他、これらの複合酸化物、あるいはSbドープ酸化スズ(ATO)、Fドープ酸化スズ、Pドープ酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、Fドープ酸化インジウム等が挙げられる。
【0058】
接着剤層がこのような酸化物微粒子を含んでいると、ハードコートの屈折率調整だけでなく、耐擦傷性の向上、鉛筆硬度の向上、導電性の付与またはまたは向上の効果がある。
顔料微粒子としては、亜鉛華、チタン白、リトポン、鉛白、バライト、ベンガラ、黄鉛、コバルトブルー、カーボングラック、黄土、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリン、プルシアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、金、銀の無機顔料、ベンジンイエロー、カーミンFB、等のアゾ系黄色、ペリレン、ペリノン、ジオキサジン、チオイソジゴ、イソインドリノン、キノフタロン、キナクリドン、フタロシアニン系顔料、レーキレッド、メチルバイオレットレーキ、エオシンレーキ、グリーンゴールド、ピロメテン顔料、テトラアザポルフィリン系、スクワリリウム等の有機顔料が挙げられる。このような顔料微粒子を含んでいると、特定波長の吸収が得られ選択吸収フィルターとしての機能が付与できる。
【0059】
金属微粒子としては、Ag、Pd、Au、Ru、Cu、Nd、Pt、等とこれらの合金が挙げられる。このような金属微粒子を含んでいると、屈折率の向上、導電性付与、選択吸収フィルターとしての機能が付与される。
【0060】
また、本発明のハードコート膜付基材には、ハードコート膜の他に従来公知のプライマー膜、高屈折率膜、導電性膜、低屈折率反射防止膜等が設けられていてもよい。
このようなハードコート膜付基材は、以下の塗布液を基材表面に塗布した後、乾燥・硬化処理を行うことによって形成できる。
【0061】
ハードコート膜形成用塗布液
本発明に係るハードコート膜形成用塗布液は、マトリックス形成成分とポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子と分散媒とを含んでなることを特徴としている。
【0062】
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子としては前記したポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子が用いられる。
【0063】
ハードコート膜形成用塗布液中のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の濃度は、ハードコート膜中のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の含有量が前記したように0.5〜80重量%、好ましくは1〜60重量%となるように用いるが、固形分濃度として、塗布液の流動性が損なわれず、しかも効率よい塗布ができれば特に制限されるものではなく、通常0.1〜36重量%、さらには0.5〜32重量%の範囲にあることが好ましい。
【0064】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、前記した有機樹脂系マトリックス形成成分が用いられる。なお、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などでは、マトリックス形成成分として、重合・反応前のものが使用される。また、これらの硬化性樹脂には、硬化触媒や重合促進剤、光増感剤などが含まれていても良い。
【0065】
ハードコート膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、ハードコート膜中の有機樹脂系マトリックス成分の含有量が前記したように固形分として20〜99.5重量%、好ましくは40〜99重量%となるように用いるが、樹脂を固形分として1〜80重量%、さらには2〜70重量%の範囲にあることが好ましい。
【0066】
ハードコート膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分とポリマーシランカップリング剤被覆酸化物粒子の合計濃度は固形分として0.5〜99重量%、さらには1〜99重量%の範囲にあることが好ましい。
【0067】
かかる合計濃度が少なすぎると一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性において不利となることがある。かかる合計濃度が高すぎるとハードコート膜の厚さが不均一になる傾向がある。
【0068】
なお、本発明では、上記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子を用いると、合計濃度が固形分として99重量%と高く、実質的には溶媒がほとんど含まれていない塗布液を得ることができ、このため、塗布液の安定性の問題がなく、長期保存性に優れ、また乾燥工程を経ることなく、基材との密着性、強度、耐擦傷性、耐アルカリ性に優れたハードコート膜を形成することができる。
【0069】
分散媒
分散媒としては水分散媒であってもアルコールなどの有機溶媒であってもよく、適宜選択して用いることができる。
【0070】
また、塗布液には、マトリックス形成成分を溶解するとともに、容易に揮発しうる溶剤が含まれていてもよく、マトリックス形成成分が熱硬化性樹脂の場合は、必要に応じて硬化剤が配合されていてもよい。さらに、塗布液には分散性、安定性を高めるために界面活性剤等を添加することもできる。
【0071】
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによってハードコート膜を形成することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)の調製
ガラス製容器に、メタクリル酸メチル(共栄社化学(株)製:ライトエステルM)30ml、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-803)1mlと溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)100ml、重合開始剤としてアゾイソブチロニ
トリル(関東化学(株)製:AIBN)50mgを添加し、Nガスで置換した後、80℃で2時間加熱してポリマーシランカップリング剤(1)を調製した。得られたポリマーシラン
カップリング剤(1)の分子量は15,000であった。なお、分子量の測定は次の方法に
よった。
【0073】
ポリマーシランカップリング剤(1)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー(株)製:HLC-8120GPC、カラム:TSK-GEL G2500H×L)で測定した。分子量基準物質としては、TSK standard POLYSTYRENE(東ソー(株)製:006476 Pオリゴマーセット)を使用した。
【0074】
別途、シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-45P、SiO濃度30重量%、平均粒
子径45nm、分散媒:水)をイオン交換樹脂にてイオン交換し、限外濾過膜法で水をエタノールに溶媒置換してシリカ微粒子のエタノール分散液100g(SiO濃度30重
量%)を調製した。
【0075】
このシリカ微粒子エタノール分散液100gとポリマーシランカップリング剤(1)1.
5gとをアセトン20g(25ml)に分散し、これに濃度29.8重量%のアンモニア水20mgを添加し、室温で24時間攪拌してポリマーシランカップリング剤(1)をシリ
カ微粒子に吸着させた。その後、平均粒子径20μmのシリカ粒子(触媒化成工業(株)製:P-4000、粉末)を添加し、さらに1時間攪拌して溶液中の未吸着の金属酸化物粒子被
覆用樹脂をシリカ粒子に吸着させ、ついで、遠心分離により未吸着であったポリマーシランカップリング剤(1)を吸着した平均粒子径20μmのシリカ粒子を除去した。その後、
ポリマーシランカップリング剤(1)を吸着したシリカ微粒子分散液にエタノール1000
g加え、シリカ微粒子を沈降させ、これを分離した後、減圧乾燥し、ついで、25℃で5時間乾燥してポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)を得た。
【0076】
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
ここで、平均粒子径はレーザー粒子径測定装置(大塚電子(株)製:PAR-III)により
測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL 製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
【0077】
粒子の屈折率の測定方法
屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これにポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)の粉末を混合する。
上記(1)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率をポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)の屈折率とする。
【0078】
ポリマーシランカップリング剤被覆量の測定
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)を示差熱分析計(エスアイ・ナ
ノテクノロジー(株)製:TG/DTA6300)を用い、室温から1000℃まで昇温し、温度100℃〜1000℃間の重量減少割合を求め、これを被覆量として表に示した。
【0079】
ハードコート膜形成用塗布液(1)の調製
アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒
:イソプロピルアルコール)をイソプロピルアルコールで希釈して樹脂濃度30重量%のハードコート膜形成用樹脂成分(1)を調製した。
このハードコート膜形成用樹脂成分(1)10gに、ポリマーシランカップリング剤被覆
酸化物粒子(1)3gをメチルイソブチルケトン(MIBK)7gに分散させた分散液を混合し
てハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0080】
ハードコート膜付基材(1)の製造
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコ
ーター法(#20)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、600mJ/cmの紫外
線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(1)を製造した。このときのハードコート
膜の厚さは3μmであった。
【0081】
得られたハードコート膜の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(
株)製)により測定し、結果を表1に示した。さらに、耐擦傷性および耐アルカリ性を評価した。結果を表1に示した。
【0082】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重1000g/cmで20回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示した。
【0083】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
耐アルカリ性の評価
ハードコート膜付基材(1)の透明被膜上に、0.01NのNaOH水溶液を滴下し、3
分間放置した後拭き取り、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0084】
評価基準:
息を吹きかけても滴下跡が認められない :◎
息を吹きかけると滴下後が認められる :○
滴下跡が認められる :△
膜面が全体的に剥れている :×
【0085】
[実施例2]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(2)の調製
ガラス製容器に、ポリビニルアルコール(関東化学(株)製:PVA)30ml、3-メル
カプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-803)1mlと溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)100mlを混合し、重合開始剤としてNH3を20ppm添加し、N2ガスで置換した後、80℃で2時間加熱してポリマーシランカップリング剤(2)を調製した。得られたポリマーシランカップリング剤(2)の分子量は16,000であった

【0086】
ついで、ポリマーシランカップリング剤(2)1.5gを用いた以外は実施例1と同様に
してポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(2)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(2)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
ハードコート膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(2)3gを用い
た以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0088】
ハードコート膜付基材(2)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(2)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0089】
[実施例3]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(3)の調製
実施例1と同様にして調製したポリマーシランカップリング剤(1)0.9gを用いた以
外は同様にしてポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(3)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(3)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
ハードコート膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(3)3gを用い
た以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0091】
ハードコート膜付基材(3)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(3)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性の評価結果を表1に示した。
【0092】
[実施例4]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(4)の調製
実施例1と同様にして調製したポリマーシランカップリング剤(1)3.0gを用いた以
外は同様にしてポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(4)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(4)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
ハードコート膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(4)3gを用い
た以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0094】
ハードコート膜付基材(4)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(4)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0095】
[実施例5]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(5)の調製
ガラス製容器に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-6A)30g、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-803)1mlと溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)100ml、重合
開始剤としてアゾイソブチロニトリル(関東化学(株)製:AIBN)50mgを添加し、Nガスで置換した後、80℃で1時間加熱してポリマーシランカップリング剤(5)を調製
した。得られたポリマーシランカップリング剤(5)の分子量は14,000であった。
【0096】
ついで、実施例1において、ポリマーシランカップリング剤(5)を1.5g用いた以外
は同様にしてポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(5)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(5)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
ハードコート膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1において、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(5)3gを用い
た以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0098】
ハードコート膜付基材(5)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(5)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0099】
[実施例6]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(6)の調製
実施例5において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりに1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製:ライトエステル1.6HX)30gを用いた以外は同様にしてポリマーシランカップリング剤(6)を調製した。得られたポリ
マーシランカップリング剤(6)の分子量は12,000であった。
【0100】
ついで、実施例1において、ポリマーシランカップリング剤(6)を1.5g用いた以外
は同様にしてポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(6)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(6)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
ハードコート膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1において、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(6)3gを用い
た以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0102】
ハードコート膜付基材(6)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(6)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0103】
[実施例7]
ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(7)の調製
実施例1において、金属酸化物粒子として、シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-45P、SiO濃度30重量%、平均粒子径45nm、分散媒:水)の代わりに中空シリカ
微粒子分散液(触媒化成工業(株)製:カタロイド特殊品、平均粒子径60nm、固形分
20.5重量%、IPA分散品、粒子屈折率1.20)を用いた以外は同様にしてポリマ
ーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(7)を得た。
得られたポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(7)の平均粒子径、粒子中
のポリマーシランカップリング剤被覆量および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
ハードコート膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1において、ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(7)3gを用い
た以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0105】
ハードコート膜付基材(7)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(7)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0106】
[実施例8]
ハードコート膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1において、ハードコート膜形成用樹脂成分(1)13g、ポリマーシランカップ
リング剤被覆金属酸化物粒子(1)2.1gを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成
用塗布液(8)を調製した。
【0107】
ハードコート膜付基材(8)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(1)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0108】
[実施例9]
ハードコート膜形成用塗布液(9)の調製
実施例1において、ハードコート膜形成用樹脂成分(1)7g、ポリマーシランカップリ
ング剤被覆金属酸化物粒子(1)3.9gを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用
塗布液(9)を調製した。
【0109】
ハードコート膜付基材(9)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(9)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0110】
[実施例10]
ハードコート膜形成用塗布液(10)の調製
実施例1において、マトリックス成分としてアクリル系樹脂の代わりに、アクリル・ウレタン系樹脂を用いて樹脂濃度30重量%のハードコート膜形成用樹脂成分(2)を調製し
た。
【0111】
このハードコート膜形成用樹脂成分(2)10gに、実施例1と同様にして調製したポリ
マーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子(1)3gをメチルイソブチルケトン(MIBK
)7gに分散させた分散液を混合してハードコート膜形成用塗布液(10)を調製した。
【0112】
ハードコート膜付基材(10)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(10)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0113】
[実施例11]
反射防止膜形成塗布液(1)の調製
中空シリカ微粒子分散液(触媒化成工業(株)製:カタロイド特殊品、平均粒子径60
nm、固形分20.5重量%、IPA分散品、粒子屈折率1.20)100gにメタクリ
ロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製;KBM−503、SiO2成分
81.2重量%)2.52gを加え、50℃で15時間加熱撹拌して固形分濃度22.5重量%の表面処理した中空シリカ微粒子分散液を調製した。得られた表面処理した低屈折率微粒子の屈折率は1.24であり平均粒子径は60nmであった。
【0114】
表面処理した中空シリカ微粒子分散液6.67gにシリコーン系樹脂(信越化学(株)製:X−12−2400、固形分濃度28.5重量%)4.74gと応力緩和剤用アクリル系樹脂1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製;ライトアクリ
レート1.6HX−A)0.15gと撥水化材用反応性シリコンオイル(信越化学(株)
;X−22−174DX、IPAで固形分濃度10重量%に溶解)0.3gと光重合開始剤(ビ−エ−エスエフジャパン(株))製:ルシリンTPO:IPAで固形分濃度10重量%に溶解)0.9gとイソプロピルアルコール58.24g、メチルイソブチルケトン15g、イソプロピルグリコール9g、エチレングリコールモノブチルエーテル5gを混合して、固形分濃度3.0重量%の反射防止膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0115】
反射防止膜・ハードコート膜付基材(11)の調製
実施例1と同様にして製造したハードコート膜付基材(1)の上に、反射防止膜形成用塗
布液(1)をバーコーター法(#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、600m
J/cmの紫外線を照射して硬化させて反射防止膜を設けたハードコート膜付基材(11)を製造した。このときの反射防止膜の膜厚は100nmであった。
【0116】
得られた反射防止膜を設けたハードコート膜付基材(11)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、耐擦傷性を測定し、結果を表1に示した。反射率は反射率計(大塚電子(株)製:MCPD-3000)で測定した。
【0117】
[比較例1]
金属酸化物粒子(R1)分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-45P、SiO濃度30重量%、平均粒子径45
nm、分散媒:水)をイオン交換樹脂にてイオン交換し、限外濾過膜法で水をエタノールに溶媒置換してシリカ微粒子のエタノール分散液100g(SiO濃度30重量%)を
調製した。これにγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製;
KBM−503、SiO2成分81.2重量%)3.6gを加え、50℃で15時間加熱
撹拌して固形分濃度22.5重量%のシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R1)分散液を調製した。
【0118】
ついで、メチルイソブチルケトン(MIBK)に溶媒置換し、固形分濃度30重量%のシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R1) MIBK分散液を調製した。
得られたシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R1)の平均粒子径、および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
ハードコート膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1と同様にして調製したハードコート膜形成用樹脂成分(1)10gに、シランカ
ップリング剤処理した金属酸化物粒子(R1) MIBK分散液10gを混合してハードコート膜
形成用塗布液(R1)を調製した。
【0120】
ハードコート膜付基材(R1)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R1)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0121】
[比較例2]
金属酸化物粒子(R2)分散液の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SI-45P、SiO濃度30重量%、平均粒子径4
5nm、分散媒:水)をイオン交換樹脂にてイオン交換し、限外濾過膜法で水をエタノールに溶媒置換し、ついでメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶媒置換し、固形分濃度30重量%の金属酸化物粒子(R2) MIBK分散液を調製した。
金属酸化物粒子(R2)の平均粒子径および屈折率を表に示した。
【0122】
ハードコート膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、金属酸化物粒子(R2) MIBK分散液を10g用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0123】
ハードコート膜付基材(R2)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R2)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0124】
[比較例3]
ハードコート膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例10と同様にして調製したハードコート膜形成用樹脂成分(2)10gに、比較例
1と同様にして調製したシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R1) MIBK分散液
10gを混合した以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0125】
ハードコート膜付基材(R3)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R3)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0126】
[比較例4]
金属酸化物粒子(R4)分散液の調製
中空シリカ微粒子分散液(触媒化成工業(株)製:カタロイド特殊品、平均粒子径60
nm、固形分20.5重量%、IPA分散品、粒子屈折率1.20)100gにγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製;KBM−503、SiO2
分81.2重量%)2.5gを加え、50℃で15時間加熱撹拌して固形分濃度22.5重量%のシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R4)分散液を調製した。
【0127】
ついで、ロータリーエバポレーターでメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶媒置換し、固形分濃度30重量%のシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R4) MIBK分散液
を調製した。
得られたシランカップリング剤処理した金属酸化物粒子(R4)の平均粒子径、および屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0128】
ハードコート膜形成用塗布液(R4)の調製
比較例1において、金属酸化物粒子(R4)分散液を10g用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R4)を調製した。
【0129】
ハードコート膜付基材(R4)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R4)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0130】
得られたハードコート膜の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および耐アルカリ性を測定し、結果を表1に示した。
【0131】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜が、(i)有機樹脂マトリックス成分と、(ii)重合性モノマーと反応性
シラン化合物との反応物であるポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる被覆金属酸化物粒子とからなり、
該ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmにあり、かつ基材中の含有量が0.5〜80重量%の範囲にあることを特徴とするハードコート膜付基材。
【請求項2】
前記ポリマーシランカップリング剤のポリスチレン換算分子量が2,500〜150,000の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のハードコート膜付基材。
【請求項3】
前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子のポリマーシランカップリング剤被覆層の厚みが、1〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート膜付基材。
【請求項4】
前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子を構成する金属酸化物粒子が、
シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子が、シリカまたはシリカ系複合酸化物粒子であり、屈折率が1.15〜1.55の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項6】
前記ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が0.3以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項7】
前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のハードコート膜付基材。
【請求項8】
(i)有機樹脂マトリックス形成成分と、(ii)重合性モノマーと反応性シラン化合物との
反応物であるポリマーシランカップリング剤で被覆されてなる被覆金属酸化物粒子と、(iii)分散媒とを含んでなり、該ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあることを特徴とするハードコート膜形成用塗布液。
【請求項9】
前記ポリマーシランカップリング剤のポリスチレン換算分子量が2,500〜150,000の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項10】
前記ポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子に設けられたポリマーシランカップリング剤の被覆層の厚みが1〜10nmの範囲にあることを特徴とする請求項8または9に記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項11】
前記ポリマーシランカップリング剤被覆被覆金属酸化物粒子を構成する金属酸化物粒子が、
シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項12】
前記金属酸化物粒子がシリカ系複合酸化物粒子であり、屈折率が1.15〜1.55の範囲にあることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のハードコート膜形成用塗布液。
【請求項13】
金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に重合性モノマーと反応性シラン化合物との反応物であるポリマーシランカップリング剤を加え、アルカリ存在下にポリマーシランカップリング剤で金属酸化物粒子を被覆することを特徴とするポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項14】
前記ポリマーシランカップリング剤のポリスチレン換算分子量が2,500〜150,000の範囲の範囲にあり、前記アルカリが塩基性窒素化合物(アンモニアおよび/またはアミン類)であることを特徴とする請求項13に記載のポリマーシランカップリング剤被覆金属酸化物粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−83223(P2009−83223A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254366(P2007−254366)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】