説明

ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物。

【課題】本発明は、高度に清浄化されたガラス表面を得ることが可能な、ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物、及び、それを用いて行うガラス表面の洗浄方法、並びにハードディスクの製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ剤(成分A)、アルドン酸類(成分B)及び水を含有し、pHが10以上である、ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物。上記アルドン酸類は、グルコン酸及び/又はその塩であると好ましい。ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物には、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物(成分C)が含まれていると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物、及びそれを用いて行うガラス表面の洗浄方法、並びにハードディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のメモリーハードディスクドライブには、高容量・小径化を目的として、記録密度を上げるために磁気ヘッドの浮上量を低下させて、単位記録面積を小さくすることが求められている。それに伴い、ハードディスクの製造工程においても、研磨対象物を研磨して得られる研磨面に要求される清浄度等の表面品質が高くなってきている。
【0003】
ハードディスクの製造過程には、サブストレート形成工程とメディア工程とが含まれる。サブストレート形成工程では、被研磨基板に対して少なくとも研磨処理と洗浄処理とがこの順で複数回行われることにより、ハードディスク用基板が作製される。上記メディア工程では、必要に応じて研磨によりハードディスク用基板の少なくとも一方の主面に浅い凸凹をつけた後(テクスチャー工程)、洗浄がなされ(洗浄工程)、次いで、上記基板の少なくとも一方の主面側に磁性層が形成される(磁性層形成工程)。
【0004】
特許文献1には、ガラス表面を有する被研磨基板を研磨した後に、上記被研磨基板を有機カルボン酸水溶液を用いて酸性洗浄することを特徴とする磁気媒体用ガラス基板の製造方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−89363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ハードディスク用基板がガラス製である場合、アルカリ性の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理を行うと、当該洗浄処理後のハードディスク用基板上に物質が析出するという不具合が生じることがあった。
【0007】
本発明は、高度に清浄化されたガラス表面を得ることが可能な、ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物、及びそれを用いて行うガラス表面の洗浄方法、並びにハードディスクの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物は、アルカリ剤(成分A)、アルドン酸類(成分B)、及び水を含有し、pHが10以上である。
【0009】
本発明のガラス表面の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物を用いて、ガラス表面を有し当該ガラス表面に対して研磨剤組成物を用いた研磨が施された被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含み、
前記洗浄工程において、前記ガラス表面を前記洗浄剤組成物に浸漬するか、及び/又は、前記洗浄剤組成物を射出して前記洗浄剤組成物を前記ガラス表面上に供給する。
【0010】
本発明のハードディスクの製造方法は、
ガラス表面を有する基板(以下、被研磨基板という)の当該ガラス表面を、研磨剤組成物を用いて研磨処理する工程を有する、ハードディスク用ガラス基板と、前記ハードディスク用ガラス基板の少なくとも一方の主面側に配置された磁性層とを含むハードディスクの製造方法であって、
前記被研磨基板に対して少なくとも前記研磨処理と洗浄処理とをこの順で複数回繰り返し行うことにより、前記ハードディスク用ガラス基板を形成するサブストレート形成工程と、
前記磁性層を形成する磁性層形成工程と、を含み、
複数回行われる前記洗浄処理のうちの少なくとも1回の洗浄処理を行う際に、本発明の洗浄剤組成物を用いて前記被研磨基板を洗浄する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高度に清浄化されたガラス表面を得ることが可能な、ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物、及びそれを用いて行うガラス表面の洗浄方法、並びにハードディスクの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、アルカリ性の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理を行った場合に生じる析出物が、被研磨基板の研磨に用いられる研磨剤組成物中の無機微粒子(砥粒)等に不純物として含まれる鉄元素、及び/又は、研磨機定盤,洗浄槽等を構成する金属材料内に存在する鉄元素に由来すること、及び、酸性下では鉄元素はイオンとして存在できるが、アルカリ性下では鉄は酸化物となって沈殿すること、を発見した。
【0013】
そこで、本発明者らは、鉄イオンが酸化物となることを阻止するために、キレート剤をアルカリ性の洗浄剤組成物に添加することを試みたところ、種々のキレート剤のうち、アルドン酸類が、鉄の酸化物の生成に対して極めて高い抑止効果を発現することを見出した。以下、本発明のハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」と略する場合もある。)について説明する。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、アルカリ剤(成分A)、アルドン酸類(成分B)及び水を含有し、pHが10以上である。
【0015】
以下、本発明の洗浄剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0016】
(アルカリ剤)
アルカリ剤(成分A)は、無機アルカリ剤及び有機アルカリ剤のうちのいずれであってもよい。無機アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。有機アルカリ剤としては、例えば、ヒドロキシアルキルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、及びコリンからなる群より選ばれる一種以上が挙げられる。これらのアルカリ剤は、単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。
【0017】
ヒドロキシアルキルアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン、メチルジプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等が挙げられる。なかでも、製品安定性及び環境保全性を向上させる観点から、モノエタノールアミン及びメチルジエタノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。これらのヒドロキシアルキルアミンは単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。
【0018】
上記アルカリ剤のうち、洗浄剤組成の無機微粒子に対する高い洗浄性を発現させる観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン及びメチルジエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ガラス表面のダメージを抑制する観点から、水酸化カリウム、モノエタノールアミン及びメチルジエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物中におけるアルカリ剤の含有量は、洗浄剤組成の無機微粒子に対する高い洗浄性を発現させ、かつ、と取扱時の安全性を高める観点から、0.1〜10重量%であると好ましく、0.3〜3重量%であるとより好ましい。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物の25℃におけるpHは10以上であり、ガラス表面を損傷させない限りその上限について特に制限がないが、無機微粒子の分散性を向上させる観点から、10〜14であると好ましく、11〜13であるとさらに好ましく、12〜13であるとより好ましい。尚、上記のpHは、25℃における洗浄剤組成物のpHであり、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の洗浄剤組成物への浸漬後40分後の数値である。
【0021】
(アルドン酸類)
本発明の洗浄剤組成物に含まれるアルドン酸類は、アルカリ性下での鉄酸化物等の沈殿抑止効果を高める観点から、例えば、カルボキシル基を有する単糖類及びその塩が好ましい。具体的には、グリセリン酸、テトロン酸、ペントン酸、ヘキソン酸、ヘプトン酸等及びそれらの塩が挙げら、好ましくはグルコン酸、グルコヘプトン酸等及びそれらの塩であり、より好ましくはグルコン酸、グルコヘプトン酸等及びそれらのアルカリ金属塩もしくはアミン塩であり、さらに好ましくはグルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム、よりさらに好ましくはグルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムである。これらのアルドン酸類は、単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物中におけるアルドン酸類の含有量は、析出物量を効果的に低減できるという理由から、1.0〜10.0重量%が好ましく、3.0〜10.0重量%がより好ましい。
【0023】
(水)
本発明の洗浄剤組成物に含まれる水は、溶媒としての役割を果たすことができるものであれば特に制限はなく、例えば、超純水、純水、イオン交換水、又は蒸留水等を挙げることができるが、超純水、純水、又はイオン交換水が好ましく、超純水がより好ましい。尚、純水及び超純水は、例えば、水道水を活性炭に通し、イオン交換処理し、さらに蒸留したものを、必要に応じて所定の紫外線殺菌灯を照射、又はフィルターに通すことにより得ることができる。例えば、25℃での電気伝導率は、多くの場合、純水で1μS/cm以下であり、超純水で0.1μS/cm以下を示す。尚、洗浄剤組成物は、溶媒として上記水に加えて水系溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)をさらに含んでいてもよいが、洗浄剤組成物に含まれる溶媒は水のみからなると好ましい。
【0024】
<任意成分>
本発明の洗浄剤組成物には、成分A,B以外に、界面活性剤(成分D)、下記芳香族スルホン酸(成分C)、成分B以外のキレート剤(成分E)、水溶性高分子(成分F)、消泡剤(成分Dに該当する界面活性剤は除く。)、アルコール類、防腐剤、酸化防止剤等が含まれていてもよい。
【0025】
(界面活性剤)
界面活性剤(成分D)としては、例えば、下記の一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤が、洗浄性の向上、排水処理性の向上、及び環境保全性の向上の観点から好ましい。
1−O−(EO)m(PO)n−H (1)
式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数8〜18のアシル基、又は炭素数14〜18のアルキルフェニル基である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基である。m及びnは、それぞれEO及びPOの平均付加モル数である。mは1〜20の数、nは0〜20の数を表す。(EO)m(PO)nにおける、EOとPOの配列はブロックでもランダムでもよい。
【0026】
1は、洗浄剤組成物による洗浄性をより向上させる観点から、炭素数8〜14のアルキル基、炭素数8〜14のアルケニル基、炭素数8〜14のアシル基、又は炭素数14〜16のアルキルフェニル基であるとより好ましく、洗浄性の向上と、排水処理性の向上、及び環境保全性の向上とを両立させる観点から、炭素数8〜14のアルキル基がより好ましい。
【0027】
(EO)m(PO)nは、オキシエチレン基単独で構成されていてもよいが、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とから構成されていてもよい。(EO)m(PO)nが、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とから構成される場合、EOとPOの配列はブロックでもランダムでもよい。EOとPOの配列がブロックである場合、EOのブロックの数、POのブロックの数は、各平均付加モル数が上記範囲内にある限り、それぞれ1個であってもよいが2個以上であってもよい。また、EOからなるブロックの数が2個以上である場合、各ブロックにおけるEOの繰り返し数は、相互に同じであってもよいが、異なっていてもよい。POのブロックの数が2個以上である場合も、各ブロックにおけるPOの繰り返し数は、相互に同じであってもよいが、異なっていてもよい。
【0028】
EOとPOの配列がブロック又はランダムである場合、EOとPOとのモル比〔MEO/MPO〕が9.5/0.5〜5/5であると、油分の溶解性と高い水溶性とを両立させることができる点で好ましい。また、mは、水溶性及び低泡性の両立の観点から、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10である。nは、水溶性及び低泡性の両立の観点から、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、m+nは、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20である。
【0029】
一般式(1)で示される化合物としては、具体的には、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、イソデシルアルコール、トリデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類;オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のフェノール類;等の化合物に、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が付加された化合物等が挙げられる。一般式(1)で示される化合物は、単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物中における非イオン性界面活性剤の含有量は、十分な洗浄性と、強アルカリ下での洗浄剤組成物の安定性とをバランスさせるという理由から、0.5〜20重量%であると好ましく、洗浄剤組成物による良好な洗浄性と良好なすすぎ性とを両立させる観点から、1〜10重量%がより好ましく、2〜5重量%がさらに好ましい。
【0031】
(成分C)
本発明の洗浄剤組成物に、非イオン性界面活性剤(成分D)が含まれる場合、本発明の洗浄剤組成物中に、下記化合物(成分C)が含まれていると、25℃におけるpHが10以上であり、比較的高温下(好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、よりさらに好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上)でも洗浄剤組成物の保存安定性が良好であるので好ましい。
【0032】
上記成分Cは、好ましくは、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物であり、より好ましくは、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物であり、さらに好ましくは、トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物である。
【0033】
保存安定性の向上効果のメカニズムについては明らかではないが、後述する実施例の結果が示すように、成分Cが曇点上昇剤として作用しているものと推測される。
【0034】
ここで、曇点(℃)とは、非イオン性界面活性剤を含む水溶液の温度を上げていったとき、上記水溶液が白濁し始める温度のことである。水溶液の温度が上昇して水分子の運動が活発になると、界面活性剤の親水基部分と水分子との水素結合が切れて、界面活性剤は溶解性を失い、上記水溶液は白濁する。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物の曇点は、下記のようにして得ることができる。(1)まず、30ccの試験管に洗浄剤組成物を10cm3入れる。(2)温浴槽に試験管を入れ、ガラス棒状の温度計を用いて手動で洗浄剤組成物を攪拌しながら、洗浄剤組成物の温度を1℃/5秒の速度で上げる。(3)攪拌しても濁る状態になったところで洗浄剤組成物の温度を読み取る。(4)試験管を温浴槽から取り出し、25℃の雰囲気下で、攪拌棒での洗浄剤組成物を攪拌しながら、温度を徐々に下げる。(5)洗浄剤組成物が透明になった温度を読み取る。(6)上記(2)〜(5)を2回繰り返し、(3)で読み取った温度の平均値を曇点とする。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物では、成分Cを含むことにより洗浄剤組成物の高温下での保存安定性が向上しているが、良好なリンス性を確保するという理由から、本発明の洗浄剤組成物には、例えば、家庭用洗剤等に含まれる安定剤として知られる金属と親和性の強いグリセリンが過剰に含まれていないことが好ましく、グリセリンが含まれていないことがより好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、成分Cである低級アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩を含むことで、高温下での保存安定性が向上しているが、洗浄剤組成物に、高い界面活性能を有するドデシルベンゼンスルホン酸のような高級アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩が含まれる場合、当該成分の含有量は成分Cによりもたらされる保存安定性の向上効果が損なわれない量であると好ましく、本発明の洗浄剤組成物には、上記高級アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩は含まれていないことがより好ましい。
【0038】
(成分B以外のキレート剤)
本発明の洗浄剤組成物には、金属イオンに対する洗浄性を向上させる観点から、成分B以外キレート剤(成分E)が含まれていると好ましい。キレート剤としては、アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸などのホスホン酸類;及びこれらのアルカリ金属塩、低級アミン塩、アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩が挙げられる。より好ましくは、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸ナトリウムである。これらのキレート剤は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
キレート剤(成分E)の含有量は、金属イオンに対する洗浄性を向上させる観点から、1〜10重量%であると好ましく、1〜5重量%であるとさらに好ましい。
【0040】
(水溶性高分子)
本発明の洗浄剤組成物には、無機微粒子の分散性を向上させる観点から、水溶性高分子(成分F)が含まれていてもよい。水溶性高分子としては、カルボン酸系共重合体が好ましい。
【0041】
カルボン酸系共重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる1以上の化合物由来の、好ましくはアクリル酸系由来の、より好ましくはアクリル酸由来の、構成単位(A1)を含む水溶性高分子が挙げられる。水溶性高分子には、全構成単位中、構成単位(A1)が好ましくは20モル%以上含まれるが、洗浄剤組成物による良好な洗浄性と良好なすすぎ性とを両立させる観点から、80モル%以上含まれているとより好ましく、90モル%を越えて含まれているとさらに好ましい。
【0042】
水溶性高分子は、具体的には、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸の共重合体、アクリル酸/マレイン酸の共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸ジメチルアミノエステルの共重合体、メタクリル酸/アクリル酸メチルエステルの共重合体等が挙げられる。
【0043】
水溶性高分子が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸由来の構成単位(A2)含む場合、構成単位A1のモル%と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸由来の構成単位A2のモル%の合計は、無機微粒子の分散性を向上させる観点から、水溶性高分子の全構成単位中の90モル%以上であると好ましい。
【0044】
構成単位A1と構成単位A2とのモル比(MA1/MA2)は、無機微粒子の分散性を向上させる観点から、(20/80)〜(98/2)であると好ましく、(50/50)〜(95/5)であるとより好ましく、91/9〜95/5であるとより好ましい。
【0045】
モル比(MA1/MA2)が91/9〜95/5の水溶性高分子(成分f)は、成分Fのうち、90重量%以上、より好ましくは100重量%含まれていると好ましい。
【0046】
(成分f)
成分fは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群より選ばれる1又は2以上の化合物由来の構成単位A1を、全構成単位中好ましくは20モル%以上含有し、かつ、構成単位A1と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸由来の構成単位A2とを91/9〜95/5のモル比(MA1/MA2)で含有する共重合体である。洗浄剤組成物に、この共重合体が含まれていると、洗浄剤組成物の良好なすすぎ性を維持しつつ、ゼータ電位の向上に伴う洗浄剤組成物の分散性が良好な状態で基板の洗浄ができるという優れた効果が奏される。
【0047】
成分fの全構成単位中における構成単位A1と構成単位A2の合計含有量は、成分fの共重合体の水溶性を高め、また、微粒子の凝集防止と成分fの水溶性の低下による微粒子除去性の悪化防止とを両立する観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0048】
かかる割合(モル比)でA1とA2とを含有する共重合体(成分f)は、微粒子に対して適度な電荷を付与し得るため、微粒子の凝集防止に有効であると考えられる。
【0049】
成分Fである共重合体の重量平均分子量は、凝集性の発現により微粒子除去性が低下することを防ぎ、充分な微粒子除去性を得る観点から、500〜150,000が好ましく、1000〜100,000がより好ましく、1000〜50,000がさらに好ましい。成分Fの共重合体の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0050】
(GPC条件)
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソ−(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファ−/CH3CN=9/1(容量比)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0051】
成分Fは上記共重合体の塩であってもよい。かかる塩としては、特に限定されないが、具体的にはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;分子量300以下の含窒素系化合物による塩が好ましい。分子量300以下の含窒素系化合物としては、例えば、アンモニア、アルキルアミン又はポリアルキルポリアミンにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が付加されたモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン、モノブタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等のアミノアルコール類;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン等の四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0052】
本発明の洗浄剤組成物中における、水溶性高分子の含有量は、充分な微粒子の除去性、水溶性高分子の良好な分散安定性及び良好な排水処理性を発揮させる観点から、0.001〜30重量%が好ましく、0.01〜20重量%がより好ましく、0.1〜10重量%がさらに好ましく、1〜10重量%がさらにより好ましい。
【0053】
本発明の洗浄剤組成物は、そのpHが非常に高く、pHは適量のアルカリ剤を使用して確保されることが望ましい。したがって、本発明の洗浄剤組成物に、成分B、成分E,成分F以外の緩衝作用を呈する成分が含まれる場合、当該成分はpHの緩衝作用を呈しない含有量で含まれていると好ましく、成分B、成分E、成分F以外の緩衝剤は含まれないとより好ましい。すなわち、本発明の洗浄剤組成物に含まれる、緩衝作用を呈する成分は、成分B、成分E、及び成分Fのみであると好ましい。
【0054】
本発明の洗浄剤組成物は、そのまま、又は必要に応じて希釈して用いられる。希釈倍率は、洗浄効率を考慮すると、好ましくは10〜500倍、より好ましくは20〜200倍、更に好ましくは50〜100倍である。希釈用の水は、上記記載と同様のものでよい。
【0055】
(ガラス表面の洗浄方法、ハードディスクの製造方法)
本発明のガラス表面の洗浄方法では、ガラス表面を有し当該ガラス表面に対して研磨剤組成物を用いた研磨が施された被洗浄基板を、本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄する洗浄工程を含む。上記洗浄工程では、例えば、(a)被洗浄基板を洗浄剤組成物に浸漬するか、及び/又は、(b)洗浄剤組成物を射出して、被洗浄基板の表面上に洗浄剤組成物が供給される。
【0056】
上記方法(a)において、被洗浄基板の洗浄剤組成物への浸漬条件としては、特に制限はないが、例えば、洗浄剤組成物の温度は、安全性及び操業性の観点から20〜100℃であると好ましく、浸漬時間は、洗浄剤組成物による洗浄性と生産効率の観点から10秒〜30分間であると好ましい。また、微粒子の除去性及び微粒子の分散性を高める観点から、洗浄剤組成物には超音波振動が付与されていると好ましい。超音波の周波数としては、好ましくは20〜2000kHzであり、より好ましくは100〜2000kHzであり、さらに好ましくは1000〜2000kHzである。
【0057】
上記方法(b)では、微粒子の洗浄性や油分の溶解性を促進させる観点から、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出して、被洗浄基板の表面に洗浄剤組成物を接触させて当該表面を洗浄するか、又は、洗浄剤組成物を被洗浄基板の表面上に射出により供給し、洗浄剤組成物が供給された当該表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄することが好ましい。さらには、超音波振動が与えられている洗浄剤組成物を射出により洗浄対象の表面に供給し、かつ、洗浄剤組成物が供給された当該表面を洗浄用ブラシでこすることにより洗浄することが好ましい。
【0058】
本発明の洗浄剤組成物を被洗浄基板の表面上に供給する手段としては、スプレ−ノズル等の公知の手段を用いることができる。また、洗浄用ブラシとしては、特に制限はなく、例えばナイロンブラシやPVA(ポリビニルアルコール)スポンジブラシ等の公知のものを使用することができる。超音波の周波数としては、上記方法(a)で好ましく採用される値と同様であればよい。
【0059】
本発明のガラス表面の洗浄方法は、上記方法(a)及び/又は上記方法(b)に加えて、揺動洗浄、スピンナー等の回転を利用した洗浄、パドル洗浄等の公知の洗浄を用いる工程を1つ以上含んでもよい。
【0060】
本発明のガラス表面の洗浄方法が好適に適用される被洗浄基板としては、例えば、アルミノシリケートガラスまたは結晶化ガラスを含むガラス基板、アルミノシリケートガラスまたは結晶化ガラスをからなるガラス基板である。これらのガラス基板のヤング率やビッカース硬度に代表される硬さの指標は、一般的な食器用、家庭用ガラス製品に比べ高い。また、ハードディスク用ガラス基板は、一般的な食器用、家庭用ガラス製品に比べ、そのガラス表面の粗さが非常に低い(表面平均粗さ:3Å以下)。そのため、ハードディスク用ガラス基板は、一般的な食器用、家庭用ガラス製品等と比較すると、例えば、無機微粒子等との接触面積が大きく、ゆえに、無機微粒子等に対する吸着力が高く、非常に洗浄し難い表面特性を持つ。
【0061】
これらのハードディスク用ガラス基板上に、スパッタ等の方法により、磁気記録領域を有し、金属薄膜を含む磁性層が形成されることによって、ハードディスクが得られる。上記金属薄膜を構成する金属材料としては、例えば、クロム、タンタル、又は白金等とコバルトとの合金である、コバルト合金等が挙げられる。尚、磁性層は、ハードディスク用ガラス基板の両主面側に形成されてもよいし、一方の主面側にのみ形成されてもよい。
【0062】
ハードディスクの製造過程には、ハードディスク用ガラス基板の少なくとも一方の主面の表面平滑性を向上させるために、被研磨基板に対して少なくとも研磨処理と洗浄処理とをこの順で複数回繰り返し行うことにより、ハードディスク用ガラス基板を形成するサブストレート形成工程が含まれる。研磨処理は、例えば、無機微粒子と、この無機微粒子の分散溶媒(例えば水)とを含む研磨剤組成物を用いて行われる。研磨剤組成物には、鉄の酸化物や鉄の水酸化物等の鉄元素を含む化合物が含まれる。上記鉄元素は、研磨剤組成物中の無機微粒子(砥粒)等に含まれる不純物、及び/又は、研磨機定盤,洗浄槽等を構成する金属材料に由来すると考えられる。本発明の洗浄剤組成物は、研磨剤組成物中の無機微粒子(砥粒)等に含まれる不純物に由来すると考えられる鉄元素の存在化で効果を奏することから、上記無機粒子の純度の選択の幅が向上することが期待される。
【0063】
サブストレート形成工程では、粗研磨処理と仕上げ研磨処理とがこの順で行われる。仕上げ研磨処理を経た直後の被研磨基板の表面粗さXは、粗研磨処理を経た直後の被研磨基板の表面粗さYよりも小さく、表面粗さXは表面粗さYの1/2以下であると好ましく、1/3以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましい。
【0064】
具体的には、粗研磨処理を経た直後の被研磨基板の表面粗さYは、3.0〜5.0Åであると好ましく、2.0〜3.0Åであるとより好ましい。一方、仕上げ研磨処理を経た直後の被研磨基板の表面粗さXは、1.5〜1.0Åであると好ましく、0.5〜1.0Åであるとより好ましい。
【0065】
なお、表面粗さX及び表面粗さYは、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、ハードディスク用ガラス基板の一方の主面においてランダムに3点測定し、それらを平均して得た。測定条件は下記のとおりとした。
原子間力顕微鏡:Veeco製 Nanoscope-IIIa
カンチレバー:NCHV-10
測定エリア:10μm×10μm
走査回数:256
【0066】
一般に研磨処理に用いられる研磨剤組成物に含まれる無機微粒子としては、アルミナ粒子、シリカ粒子、酸化セリウム粒子、酸化セリウムと酸化ジルコニウムとを用いて形成される複合酸化物粒子等が挙げられるが、上記粗研磨処理の際に用いられる研磨剤組成物に含まれる無機微粒子は、高速研磨が可能であるという理由から、酸化セリウム粒子が好ましい。上記仕上げ研磨処理の際に用いられる研磨剤組成物に含まれる無機微粒子は、表面の平坦性(低粗さ)を向上させるという理由から、シリカ粒子が好ましい。酸化セリウム粒子には、不純物由来の鉄元素を多く含むものがあり、本発明の洗浄剤組成物は、このような鉄元素の存在化で効果を奏することから、酸化セリウム粒子の純度の選択の幅が向上することが期待される。
【0067】
研磨処理を経た被研磨基板の主面には、研磨剤組成物由来の汚れ(無機微粒子、有機物など)や装置などの設備由来の金属イオンなどが付着している。本発明の洗浄剤組成物は、これらの汚れを効率よく洗浄できるとともに、鉄の酸化物等に由来すると考えられる沈殿物の生成に対して極めて高い抑止効果を発現する。本発明の洗浄剤組成物は、上記複数回行われる洗浄処理のうちの最後の洗浄処理を行う際に、用いられると好ましい。
【0068】
本発明のハードディスクの製造方法を構成するサブストレート形成工程の一例では、粗研磨処理の後、本発明の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理(第1洗浄処理)、すすぎ処理(第1すすぎ処理)、乾燥処理(第1乾燥処理)、仕上げ研磨処理、本発明の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理(第2洗浄処理)、すすぎ処理(第2すすぎ処理)、及び乾燥処理(第2乾燥処理)がこの順で行われる。この場合、粗研磨処理後、第1すすぎ処理の前に行われる洗浄処理が1回ですみ、好ましい。上記サブストレート形成工程では、粗研磨処理の後、第1洗浄処理の前に、酸化セリウムの溶解性が高い酸性の洗浄剤組成物を用いた洗浄処理、及び、すすぎ処理を行ってもよい。この場合、ガラス表面に化学吸着しやすい酸化セリウム粒子の除去性が向上するので好ましい。
【0069】
本発明のガラス表面の洗浄方法では、被洗浄基板を一枚ずつ洗浄してもよいが、複数枚の洗浄すべき被洗浄基板を一度にまとめて洗浄してもよい。また、洗浄の際に用いる洗浄槽の数は1つでも複数でも良い。
【実施例】
【0070】
1.洗浄剤組成物の調製
表1に記載の組成となるように各成分を配合及び混合することにより、実施例1〜4及び比較例1〜3の洗浄剤組成物を得た。尚、表1中のKOHは市販の水酸化カリウム水溶液(KOH濃度48重量%)である。
【0071】
得られた洗浄剤組成物を用いて、以下の洗浄性試験を行った。60℃の雰囲気下で1ヶ月間保存した後の上記洗浄剤組成物を水にて100倍に希釈し、それを用いて以下の洗浄性試験を行った。
【0072】
尚、表1中の成分DのCに付された数値は、炭化水素の炭素数を示す。C(12-14)−O−(EO)5(PO)1.5(EO)5−Hは、C12−O−(EO)5(PO)1.5(EO)5−HとC14−O−(EO)5(PO)1.5(EO)5−Hとの混合物である。
【0073】
2.被洗浄基板の洗浄性試験
下記組成の研磨液スラリー(研磨剤組成物)を用いた研磨を施すことにより、研磨液スラリー由来の砥粒及び基板材料由来の研磨屑等の微粒子によって汚染された被洗浄基板を用意し、該基板を用いて洗浄剤組成物の希釈液の微粒子に対する洗浄性を評価した。
【0074】
2−1.被洗浄基板の調整
酸化セリウム粒子(砥粒)を含有するスラリーで予め2段研磨して得たアルミノシリケ−ト製のガラス基板(外径:65mmφ、内径:20mmφ、厚さ:0.635mm)をさらに下記研磨条件で研磨した基板を被洗浄基板とした。
<研磨条件>
研磨機:両面9B研磨機(スピ−ドファム(株)製)
研磨パッド:スエードタイプ(厚さ:0.9mm、平均開孔径:30μm、フジボウ(株)製)
研磨液:コロイダルシリカスラリ−(品番:メモリードGP2-317、花王(株)製)
予備研磨:荷重 60g/cm2、時間 60秒、研磨液流量 100mL/min
本研磨:荷重 100g/cm2、時間 900秒、研磨液流量 100mL/min
水リンス:荷重 30g/cm2、時間 300秒、リンス水流量 約2L/min
【0075】
2−2.洗浄
2−1.で調製した被洗浄基板を洗浄装置にて以下の条件で洗浄した。
(1)洗浄:ローラーで3点保持された被洗浄基板に常温の洗浄剤組成物を射出し、該洗浄剤組成物の存在下で洗浄ブラシを該基板の両主面、内周面、及び外周面に各々押し当てることにより、両主面、内周面、及び外周面を各々60秒間洗浄した。洗浄ブラシの回転数は300rpmとした。
(2)すすぎ:ローラーで3点保持され、上記(1)の洗浄を経た被洗浄基板に、常温の超純水を射出し、洗浄ブラシを該基板の両主面、内周面、及び外周面に各々押し当てることにより、両主面、内周面、及び外周面を各々60秒間洗浄した。洗浄ブラシの回転数は300rpmとした。
(3)乾燥:スピンチャックに保持され、(2)のすすぎを経た被洗浄基板を、3000rpmで30秒間高速回転させて、液切り乾燥を行った。
【0076】
2−3.微粒子に対する洗浄性の評価
上記(3)の乾燥を経た被洗浄基板における微粒子の洗浄性を以下の方法で評価した。結果は表1に示している。
【0077】
(微粒子に対する洗浄性の評価の)方法
走査電子顕微鏡を用いて1000倍(視野範囲:約100μm角)の倍率下で、(3)の乾燥を経た基板を観察し、観察視野内で観察される基板表面に残存する微粒子の数を数えた。この観察を、5枚の基板のそれぞれにつき、一主面の表面に対して、略均間隔で30点(合計:30点×5枚=150点)実施した。観察された150点における全微粒子個数及び下記評価基準に基づき、微粒子の洗浄性を4段階で評価した。
【0078】
<微粒子の洗浄性評価基準>
◎:全微粒子個数が0個である。
○:全微粒子個数が1〜2個である。
△:全微粒子個数が3〜5個である。
×:全微粒子個数が6個以上である。
【0079】
表1の結果より、実施例1〜4の洗浄剤組成物の希釈液は、微粒子に対する洗浄性が優れている事がわかる。
【0080】
3.鉄分析出試験
(1)各洗浄剤組成物30gに、硫酸第一鉄鉄7水和物0.08gを添加した。この混合物中の理論上の鉄の含有量は約500ppmである。
(2)次いで、(1)で得た希釈液を5分間揺動しながら、析出物の有無を観察する。
(3)次いで、上記希釈液を30分間放置した後、析出物の有無を観察する。
【0081】
<鉄分析出量の評価基準>
◎:希釈液を揺動すると硫酸第一鉄が溶解し(透明になり)、放置しても析出物が発生しない(沈殿しない)。
○:希釈液を揺動すると硫酸第一鉄が一度溶解するが(透明になるが)、放置すると析出物が発生する。
×:希釈液を揺動しても硫酸第一鉄は溶解せず、沈殿する。
尚、合格品は評価が◎であるものである。
【0082】
表1の結果より、実施例1〜4の洗浄剤組成物の希釈液は、鉄に対するキレート力が高く、アルカリ性であっても、鉄の酸化物および/または鉄の水酸化物等の析出物の生成を抑制している。よって、実施例1〜4の洗浄剤組成物を用いた洗浄では、ガラス基板表面への、上記析出物の付着量を低減できる。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の洗浄剤組成物を必要に応じて希釈し、洗浄剤組成物又はその希釈液を使用することにより、ハードディスク用ガラス基板について高度に清浄化されたガラス表面を得ることができる。よって、本発明は、製品の歩留まり向上に寄与し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤(成分A)、アルドン酸類(成分B)、及び水を含有し、pHが10以上である、ハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記アルドン酸類が、グルコン酸及び/又はその塩である請求項1記載のハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の化合物(成分C)を含有する請求項1又は2のいずれかの項に記載のハードディスク用ガラス基板用洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の洗浄剤組成物を用いて、ガラス表面を有し当該ガラス表面に対して研磨剤組成物を用いた研磨が施された被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含み、
前記洗浄工程において、前記被洗浄基板を前記洗浄剤組成物に浸漬するか、及び/又は、前記洗浄剤組成物を射出して前記洗浄剤組成物を前記ガラス表面上に供給するガラス表面の洗浄方法。
【請求項5】
ガラス表面を有する基板(以下、被研磨基板という)の当該ガラス表面を、研磨剤組成物を用いて研磨処理する工程を有する、ハードディスク用ガラス基板と、前記ハードディスク用ガラス基板の少なくとも一方の主面側に配置された磁性層とを含むハードディスクの製造方法であって、
前記被研磨基板に対して少なくとも前記研磨処理と洗浄処理とをこの順で複数回繰り返し行うことにより、前記ハードディスク用ガラス基板を形成するサブストレート形成工程と、
前記磁性層を形成する磁性層形成工程と、を含み、
複数回行われる前記洗浄処理のうちの少なくとも1回の洗浄処理を行う際に、請求項1〜3のいずれかの項に記載の洗浄剤組成物を用いて前記被研磨基板を洗浄する、ハードディスクの製造方法。
【請求項6】
前記研磨剤組成物が、鉄元素を含む化合物を含有する請求項5に記載のハードディスクの製造方法。

【公開番号】特開2010−86563(P2010−86563A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251309(P2008−251309)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】