説明

ハーネスクリップの構造及びその取付方法

【課題】車両のフレーム等に穿孔された貫通孔に配線または配管を通す場合、配線/配管が貫通孔に接触し損傷するのを防止すると共に、この手段に使用する部品点数を減らしてその管理工数を低減すること。
【解決手段】ハーネスクリップ(1)の一方の端部にはハーネス(2)を保持するハーネス保持部(1a)が形成され、他方の端部には前記板状部材(4)に固定する固定部(1c)が形成され、ハーネス保持部(1a)と固定部(1c)とは連結部(1b)で連結されており、前記ハーネス保持部(1a)は連結部(1b)の一端から直角方向に延び、その連結部対向面には配線/配管(2)を保持する溝(1d)が設けられ、前記固定部(1)は円柱状であって連結部(1b)の他端部から前記ハーネス保持部(1a)と平行に形成され、且つ複数の3角形状の爪(1e)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のフレームに穿設された貫通孔を通る配線/配管(以下、ハーネスと記す)を保持し、ハーネスが貫通孔と接触するのを防止する機能を有するハーネスクリップの構造およびそのフレームへの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフレーム・サイドレールに穿設された貫通孔にハーネスを貫通させている場合、貫通孔とハーネスとが接触し損傷するのを防止するためにハーネスをコルゲートチューブ等の保護用外装材で覆ったり、あるいは貫通孔にゴムやプラスチック製のグロメットを嵌めたりして互いに接触し損傷するのを防止している。
しかし、このような手段では、グロメット7の内径と保護材外径との間に隙間があり、車両の振動によって接触するので損傷防止としては不十分であり、ハーネス2をクリップで保持する必要がある。この場合、図7に示すようにフレーム4の貫通孔4aの両側にクリップ6を取り付けハーネス2をクランプする必要がある。
上記のように、クリップを用いた従来技術では、多くのクリップが必要であり、しかもハーネスでの固定が確実とは言えず、フレーム等と接触防止としては十分ではない。また、クリップ等の部品点数も多く管理工数も掛かっている。
【0003】
なお、ハーネスを支持するクリップに係る従来技術としては、ハーネスを束ねるバンドとその係合部に係脱自在としたロック部を設けたハーネス保護クリップ(特許文献1参照)や、同様にバンド部とクリップ部とを一体に形成し、その取付用軸部を取付部材の板厚の適用範囲を拡げるように構成したクリップ(特許文献2参照)が開示されている。しかし、これらの従来技術は、後記の本発明の課題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−50586号公報
【特許文献2】特開2009−168138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に対処し、車両のフレーム等の板状部材に穿孔された貫通孔に配線または配管を通す場合に、その配線/配管が貫通孔に接触し損傷するのを防止すると共に、この手段に使用する部品点数を減らしてその管理工数を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハーネスクリップの構造は、板状部材(フレーム)4に穿設された貫通孔4bを貫通する配線又は配管を保持するハーネスクリップ1であって、一方の端部にはハーネス2を保持するハーネス保持部1aが形成され、他方の端部には前記板状部材4に固定する固定部1cが形成され、ハーネス保持部1aと固定部1cとは連結部1bで連結されており、前記ハーネス保持部1aは、連結部1bの一端から直角方向に延び、その連結部対向面にはハーネスを保持する溝1dが設けられ、前記固定部1は、円柱状であって連結部1bの他端部から前記ハーネス保持部1aと平行に形成され、且つ複数の3角形状の係止爪1eが形成されており、貫通孔4aとクリップ挿通孔4bとの中心を結ぶ線上の両孔4a、4bの外縁間距離Aが、クリップ1のハーネス保持部1aの下端から固定部1cの上端までの距離Bより大きく(A>B)なるように構成されている。
【0007】
また、前記ハーネスクリップの固定部1cに設けた係止爪1eを連結部1bからの距離が複数位置(t1、t2)に設け、それぞれに円周方向に複数個設けるのが好ましい。
【0008】
上述した本発明のハーネスクリップを用いた取付方法は、一方の端部に配線/配管2を保持するハーネス保持部1aが形成され、他方の端部に板状部材(フレーム)4に固定する固定部1cが形成され、ハーネス保持部1aと固定部1cとが連結部1bで連結されており、前記ハーネス保持部1aは、連結部1bの一端から直角方向に延びており、前記固定部1は、円柱状で連結部1bの他端部から前記ハーネス保持部1aと平行に形成され、且つ複数の3角形状の係止爪1eが形成されているハーネスクリップを用意し、板状部材の貫通孔4aの近傍に、貫通孔4aとクリップ挿通孔4bとの中心を結ぶ線上の両孔4a、4bの外縁間距離Aが、クリップ1のハーネス保持部1aの下端から固定部1cの上端までの距離Bより大きく(A>B)なるようにクリップ挿通孔4bを穿孔し、クリップのハーネス保持部1aと配線/配管2とを帯状部材(ビニールテープ、バンド)3で一体に捲着し、板状部材の貫通孔4aに配線/配管2とハーネス保持部1aとを挿通し、同時にクリップ挿通孔4bに固定部1cを挿入し、係止爪1eで板状部材4に係止すると共に、貫通孔4aとクリップ挿通孔4bの外縁間をハーネス保持部1aと固定部1cとの間でその弾性力で挟持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下記の作用効果を奏する。
板状部材(フレーム・サイドレール)に穿設された貫通孔に配線/配管を貫通させて配設する場合、該配線/配管がクリップで貫通孔に保持されているので、振動が加わっても相対動きによる接触が起きず、配線/配管が損傷されることが防止される。
予め、配線/配管とクリップとを固着して貫通孔に挿入し、同時に固定部をクリップ挿通孔に挿入することで、ハーネス保持部と固定部との間に板状部材の貫通孔とクリップ挿通孔の間の部分が挟持される。これとともに、固定部の係止爪で抜け止めがされ、簡単な作業で実施することができる。
複数段の係止爪で板状部材の厚さ違いに対応でき、スペーサを介装すれば、さらに多くの板厚違いに対応できる。
従来技術のように、多くのクリップを必要とせず、部品管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるハーネスクリップの側面図
【図2】図1に示すハーネスクリップの正面図
【図3】本発明のハーネスクリップでハーネスを保持しフレームへ取り付ける説明図
【図4】クリップをフレームへ取り付けた状態を示す断面図
【図5】クリップにハーネスをバンドで取り付けた実施形態を示す図
【図6】本発明のハーネスクリップを板厚の相違するフレームに取り付ける説明図
【図7】従来のハーネス貫通部のクランプを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1および図2には、本発明によるハーネスクリップ(以下、クリップと記す)1の側面図および正面図を示している。クリップ1は、一方の端部にハーネス2を保持するハーネス保持部1aが形成され、他方の端部にはフレーム4(図3参照)にクリップを固定する固定部1cが形成されている。そして、ハーネス保持部1aと固定部1cとが、連結部1bで連結されている。
(なお、本クリップ1取り付けの上下方向は限定されるものではないが、便宜上、ハーネス保持部1aを上方とし、固定部1cはその鉛直方向下方になるよう配置されているものとして説明する。)
【0012】
ハーネス保持部1aは、連結部1bの上端から直角方向に延び、その上面(連結部1bの対向面)にはハーネス2を保持する溝1dが形成されている。
固定部1cは、円柱状であって連結部1bの下端部に突設されており、上記ハーネス保持部1aと平行に形成されている。そして、ハーネス保持部1aは、固定されるフレーム4のウェブの板厚に対応し複数段(この例では2段)の位置(t1、t2)について、円周方向に複数(この例では各2)の先端方向が鋭角をなす3角形状の係止爪1eが形成されている。
【0013】
図3に示すように、クリップ1は、フレーム(板状部材)4の貫通孔4aの下方にクリップ挿通孔4bを穿孔し、このクリップ挿通孔4bに固定部1cを挿入して取り付けられている。そのクリップ挿通孔4bは、係止爪1eが弾性変形して一方向に挿通可能な内径とされている。
【0014】
また、フレーム4の貫通孔4aの下縁部とクリップ挿通孔4bの上縁部との距離Aは、クリップ1のハーネス保持部1aの下端から固定部1cの上端までの距離B(図1参照)より僅かに大きく、クリップ1の固定部1cをクリップ挿通孔4bに、ハーネス保持部1aを貫通孔4aにそれぞれ挿入した際に、クリップ1が弾性変形し、挟着されるようになっている。勿論、この距離AとBとの差は、クリップ1の弾性限度を超えないものである。
【0015】
図4には、クリップ1にハーネス2を固着し、フレーム4に取り付けた状態を示している。ここで、ハーネス2は、クリップ1のハーネス保持部1aの溝1dに嵌め、ハーネス保持部1aとハーネス2とは、ビニールテープ(帯状部材)3で一体的に捲着されている。
【0016】
図5は、クリップ1とハーネス2とを上記のビニールテープではなく、バンド3Aを用いて固着した実施例である。
また、図6には、固定部1cに2段に設けた係止爪1dによって板厚が相違したフレーム4、4Aにクリップ1を取り付けた例を示している。なお、フレームが2枚構成、あるいは補強板の設けられた部位を貫通する場合も同様に対処できる。そして、この例に対してスペーサ(ワッシャ)を挿入することで更に多くの板厚に対して適用することができる。
【0017】
上記の構造を有するハーネスクリップ1を用い、ハーネス2をフレーム4の貫通孔4aに挿通し、クランプする手順を以下に説明する。
まず、フレーム4の貫通孔4aの近傍(下方が好ましい)に、クリップ挿通孔4bを穿孔する。この際、貫通孔4aとクリップ挿通孔4bとの中心を結ぶ線上の両孔の外縁間距離をA、クリップ1のハーネス保持部1aの下端から固定部1cの上端までの距離をB、とすると A>B となるよう穿孔にする。ここでこの差(α=A−B)は、クリップのハーネス保持部1aと固定部1cとの間(B)で、貫通孔4aとクリップ挿通孔4bとの間の部分(A)を弾性により挟んで保持できると共に、クリップ1の弾性変形の範囲内にあるように適宜選択する。
【0018】
次に、クリップのハーネス保持部の溝1dにハーネス2を嵌め、ハーネス保持部1aとハーネス2とをビニールテープ3またはバンド3Aで一体に捲着する。そして、フレームの貫通孔4aにその一体となったハーネス2とハーネス保持部1aとを挿通し、同時にクリップ挿通孔4bに固定部1cを挿入して係止爪1eでフレーム4に係止すると共に、貫通孔4aとクリップ挿通孔4bの外縁間(A)をハーネス保持部1aと固定部1cとの間(B)で弾性的に挟持する。
【符号の説明】
【0019】
1・・・ハーネスクリップ
1a・・・ハーネス保持部
1b・・・連結部
1d・・・固定部
1e・・・係止爪
2・・・ハーネス(配線/配管)
3・・・ビニールテープ(帯状部材)
4・・・フレーム(板状部材)
4a・・・貫通孔
4b・・・クリップ挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材(4)に穿設された貫通孔(4b)を貫通する配線又は配管を保持するハーネスクリップ(1)であって、一方の端部にはハーネス(2)を保持するハーネス保持部(1a)が形成され、他方の端部には前記板状部材(4)に固定する固定部(1c)が形成され、ハーネス保持部(1a)と固定部(1c)とは連結部(1b)で連結されており、前記ハーネス保持部(1a)は連結部(1b)の一端から直角方向に延び、その連結部対向面には配線/配管(2)を保持する溝(1d)が設けられ、前記固定部(1)は円柱状であって連結部(1b)の他端部から前記ハーネス保持部(1a)と平行に形成され、且つ複数の3角形状の爪(1e)が形成されており、貫通孔(4a)とクリップ挿通孔(4b)との中心を結ぶ線上の両孔(4a、4b)の外縁間距離(A)が、ハーネスクリップのハーネス保持部(1a)の下端から固定部(1c)の上端までの距離(B)より大きく(A>B)なるように構成されていることを特徴とするハーネスクリップの構造。
【請求項2】
前記ハーネスクリップの固定部(1c)に設けた係止爪(1e)の連結部(1b)からの距離が複数位置(t1、t2)に設け、それぞれに円周方向に複数個設けている請求項1記載のハーネスクリップの構造。
【請求項3】
一方の端部に配線/配管(2)を保持するハーネス保持部(1a)が形成され、他方の端部に板状部材(4)に固定する固定部(1c)が形成され、ハーネス保持部(1a)と固定部(1c)とは連結部(1b)で連結されており、前記ハーネス保持部(1a)は連結部(1b)の一端から直角方向に延びており、前記固定部(1)は円柱状で連結部(1b)の他端部から前記ハーネス保持部(1a)と平行に形成され、且つ複数の3角形状の係止爪(1e)が形成されているハーネスクリップ(1)を用意し、板状部材(4)の貫通孔(4a)の近傍に、貫通孔(4a)とクリップ挿通孔(4b)との中心を結ぶ線上の両孔の外縁間距離(A)が、ハーネスクリップのハーネス保持部(1a)の下端から固定部(1c)の上端までの距離(B)より大きく(A>B)なるようにクリップ挿通孔(4b)を穿孔し、クリップのハーネス保持部(1a)と配線/配管(2)とを帯状部材(3)で一体に捲着し、板状部材の貫通孔(4a)に配線/配管(2)とハーネス保持部(1a)とを挿通し、同時にクリップ挿通孔(4b)に固定部(1c)を挿入し、係止爪(1e)で板状部材(4)に係止すると共に、貫通孔(4a)とクリップ挿通孔(4b)の外縁間をハーネス保持部(1a)と固定部(1c)との間でその弾性力で挟持することを特徴とするハーネスクリップの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110116(P2012−110116A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256601(P2010−256601)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】