説明

ハーフトーンイメージを備える回折セキュリティエレメント

【課題】ハーフトーンイメージ(2)を有する回折セキュリティエレメント(1)を提供すること。
【解決手段】回折セキュリティエレメント(1)は、透明エンボス層及び保護ラッカー層の間の合成層に組み込まれた反射層に回折構造を備える。ハーフトーンイメージ(2)は、少なくとも1次元の1mm未満のイメージエレメント(4)に分割され、各イメージエレメント(4)の表面は、背景領域(5)及びイメージエレメントパターン(6)に分割される。イメージエレメント(4)の位置(P)でのハーフトーンイメージ(2)の表面輝度は、イメージエレメント(4)の表面に対するイメージエレメントパターン(6)の割合により決まる。背景領域(5)は、光変更効果においてイメージエレメントパターン(6)と異なる第1回折構造体を備える。0.3mmまでの幅のパターンストリップは、さらに、ハーフトーンイメージ(2)の表面に広がる。パターンストリップは、背景領域(5)及びイメージエレメントパターン(6)の表面の小さな割合を占め、ハーフトーンイメージ(2)に有色ストリップ(43)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の分類部分に記載のハーフトーンイメージを備える回折セキュリティエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなセキュリティエレメントは、ドキュメント、預金通帳、通行証及び身分証明書の認証、あらゆる種類の貴重品等に用いられており、それらは、容易に証明できるが、模倣することは難しい。一般的に、セキュリティエレメントは、被認証物に接着剤により固定されている。
【0003】
回折イメージエレメントからモザイク状に構成されるグラフィック構造のセキュリティパターンが、EP−A0105099に開示されている。セキュリティパターンを視認する人がその面でセキュリティパターンを傾けたとき及び/又は回転させたとき、セキュリティパターンはその外観を変える。
【0004】
EP−A0330738には、セキュリティパターンの構造で個々に又は並んで配列された0.3mm未満の回折表面部を有するセキュリティパターンが記載されている。特に、表面部は、0.3mmより低い高さのテキスト文字を形成する。表面部の形状又は文字は、優れた拡大鏡を用いることによってのみ認識することができる。
【0005】
セキュリティエレメントに配置されるピクセルからなる複数の回折セキュリティパターンが、EP―A0375833に開示されている。これによれば、通常の読字距離で所定の方向において裸眼で各セキュリティパターンを見ることができる。各セキュリティパターンは、セキュリティエレメントにより予め決められたラスタ領域のピクセルに分割される。セキュリティエレメントのラスタ領域は、セキュリティパターンの数に応じて回折表面割合に再分割される。各ラスタ領域において、ラスタ領域に関連したセキュリティパターンのピクセルは、それらの所定の表面割合を占める。
【0006】
ドイツ公開特許公報No1957475及びCH653752には、光学回折効果を有するキノフォームを用いた極めて微細なリリーフ構造の更なる種類が開示されている。キノフォームのリリーフ構造では、光を所定の立体角で偏向させる。キノフォームに保存された情報がディスプレイスクリーン上で見ることができるのは、キノフォームに十分なコヒーレント光が照射された場合だけである。キノフォームは、白色光又は日光をキノフォームにより予め決められた立体角で散乱させるが、その角の外側では、キノフォームの表面は、ダークグレーのように見える。
【0007】
回折セキュリティパターンは、対象物に適用されるように設計されたプラスチック材料の合成層に設けられている。米国特許公報No4856857には、合成層の種々の構成が記載されており、適切な材料もそこに記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、印刷手段により形成されたハーフトーンイメージが米国特許公報No6198545に開示されており、イメージエレメント及び文字を備えるハーフトーンイメージは、ピクセルからなる。この場合、他のホワイト画素背景のブラック要素が選択されるため、視認者は、30cmから1mの視認距離でハーフトーンイメージを見ると共に、より慎重に視認した場合にのみ近接距離又は拡大鏡でイメージエレメント又は文字を認識することができる。その画像合成技術は、従来よく知られているように、「アーティスティックスクリーニング」と称される。複写技術における継続的に進歩した解像度の結果として、アーティスティックスクリーニングを用いることなくハーフトーンイメージの良質のコピーを形成することは容易である。
【0009】
本発明の目的は、ハーフトーンイメージを示し且つ模倣又は複製することが困難な回折セキュリティエレメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、特定の目的は、請求項1の特徴部分に記載された特徴により達成される。本発明の有益な構成は、従属項に記載されている。
【0011】
本発明の考案は、少なくとも2つの異なる認識パターンを有する回折セキュリティエレメントを形成することである。この場合、一つのパターンは、複数のイメージエレメントパターンからなるハーフトーンイメージであり、30cmから1mの視認距離で視覚的に認識可能である。イメージエレメントパターンは、背景に配置され、例えば、画素であり、ハーフトーンイメージにおいて部分的な表面輝度により予め決められた背景の割合を局所的に覆う。背景面及びイメージエレメントパターンの表面は、ホログラム、回折格子、マット構造及び反射面等の光学能動素子である。この場合、イメージエレメントパターンの表面の光学能動素子と背景面の光学能動要素とは、回折又は反射特性の点で異なっている。ハーフトーンイメージのイメージエレメントパターンは、例えば、拡大鏡を用いて又は用いずに30cm未満の読字距離で視認されることのみにより認識可能である。セキュリティエレメントの別の実施例では、幅25μmまでのパターンストリップは、更なるストリップとしてハーフトーンイメージの表面に広がる。直線又は曲線のパターンストリップは、例えば、組み紐飾りパターン及びピクトグラムパターン等の背景パターンを形成する。パターンストリップの表面において、ラインエレメントは背景に配置される。パターンストリップの単位長さあたりのラインエレメントの表面の割合は、パターンストリップが広がるイメージエレメントパターンの部分的な表面輝度により決まる。ラインエレメントの表面は、それらの光学能動素子に基づいて、背景の表面及び/又はイメージエレメントパターンの表面と異なる。イメージエレメントパターン及びラインパターンは、キャラクタ、線、波状及びフリーズ状のパターン、文字等からなる。EP−A0105099及びEP−A0330738に記載のセキュリティエレメントを、本明細書の初めの部分に記載された回折セキュリティパターンに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明し図面に示す。
【0013】
図1は、回折セキュリティエレメント1、パターンエレメントのハーフトーンイメージ2、セキュリティエレメント1の拡大部分3、イメージエレメント4、背景エリア又は領域5、及びイメージエレメントパターン6を示す。ハーフトーンイメージ2のパターンエレメントは、表面部からモザイク形状に形成されたピクセル状のイメージエレメント4である。イメージエレメント4の表面部における極めて微細な表面構造では、セキュリティエレメント1への入射光は、照明及び視認方向に依存して変更される。光変更表面構造による表面部は、少なくとも背景領域5及びイメージエレメントパターン6を含む。表面構造には、光変更作用を強化するための反射層を設けることができる。
【0014】
図1において、説明を簡略化するために、セキュリティエレメント1の表面は、座標軸X及びYを有する座標に対して配置されている。また、明瞭性に関する理由で、背景領域5の表面及びイメージエレメントパターン6の表面は、それぞれラスタイメージ又は白の非ラスタイメージで示されており、この場合、印刷技術により形成されたハーフトーンイメージの状況と異なり、背景領域5及びイメージエレメントパターン6は、それらの照明及び視認方向を特定せずに、それらの表面輝度を表示しない。
【0015】
図1の拡大部分3に示すように、1つの実施例では、セキュリティエレメント1の表面は、少なくとも1次元で1mm未満の複数のイメージエレメント4に分割されており、イメージエレメント4は、例えば、四角形、三角形又は多角形の形状、又は、これらの表面の1つの等角写像である。イメージエレメント4の間の境界線は、説明の明瞭化のためだけに図示されている。各イメージエレメント4の表面は、少なくとも背景領域5と、該背景領域5に配置されたイメージエレメントパターン6とを備え、この場合、イメージエレメントパターン6は、連続的な表面部又は表面部の集まりからなる。
【0016】
座標(XP;YP)を有するイメージエレメント6の表面におけるイメージエレメントパターン6の表面の割合は、好ましくは、隣接するイメージエレメント4に対応するハーフトーンイメージ2での位置の表面輝度及び/又は位置Pでの表面輝度の変化度を考慮して、座標(XP;YP)を有するイメージエレメント4に対応する位置Pでのハーフトーンイメージ2の表面輝度により決まる。
【0017】
例えば、ハーフトーンイメージ2のオリジナルのイメージの位置Pでの大きな表面輝度に従って、座標(XP;YP)を備えるイメージエレメント4のイメージエレメントパターン6の表面の割合は大きい。背景領域5は、ハーフトーンイメージ2が形成されるように、できるだけ少量の光を観察方向へ偏向させると共に、全てのイメージエレメントパターン6は、所定の照明及び観察方向で同じ光変更作用を備える必要がある。
【0018】
イメージエレメントパターン6の形状がイメージエレメント4の形状に類似している場合、イメージエレメント4のイメージエレメントパターン6の表面の割合を、0%から100%の間の範囲とすることができる。「類似形状」とは、対応する角は同一であるが、寸法は異なっていることを意味する。例えば、星型のイメージエレメントパターン6の境界形状がイメージエレメント4の形状と異なっている場合、イメージエレメント4のイメージエレメントパターン6の表面の割合は、上端部で制限される。即ち、イメージエレメント4にはまだ背景領域5の割合がある。しかしながら、イメージエレメントにおけるイメージエレメントパターン6の必要な表面割合を得るために、好ましくは、表面割合に応じて、異なったサイズ又は細いストリップでも、イメージエレメントパターン6の境界形状において、各イメージエレメントのイメージエレメントパターン6を認識することができる。ハーフトーンイメージ2の表示は、イメージエレメント4でのイメージエレメントパターン6の表面割合に関する所定のステップを備えるスケールに基づいており、オリジナルのイメージの表面輝度は、そのスケールによりハーフトーンイメージに変換される。
【0019】
一例として、ハーフトーンイメージ2のオリジナルのイメージは、折り重ねたストリップ8及びストリップ8の中心に配置された矢印9をベース面7に備える。ハーフトーンイメージ2の表面は、イメージエレメント4に分割されている。オリジナルイメージの表面輝度は、例えば、ベース面7、ストリップ8及び矢印9等のパターンエレメントに応じてイメージエレメント4に関連している。図1では、異なるラスタで示されたベース面7、矢印9及びストリップ8の視認面は、それらの表面輝度に基づいて、オリジナルのイメージのように異なる。視認者は、異なる表面輝度クラデーションによって、セキュリティエレメント1で少なくともオリジナルのイメージのハーフトーンイメージ2を認識する。比較的大きなイメージエレメント4により、ハーフトーンイメージ2を十分認識するために、セキュリティエレメント1は、約0.3m以上の最短視認距離から視認される。視認者は、30cm未満の読字距離から、肉眼又はシンプルな拡大鏡により所定のイメージエレメントパターン6を認識することができる。例えば、図1では、イメージエレメントパターン6は星型である。セキュリティエレメント1の他の構成では、隣接するイメージエレメントパターン6は異なる。イメージエレメントパターン6の粗ラスタは、30cm未満の読字距離からのハーフトーンイメージ2の認識を妨げる。
【0020】
ハーフトーンイメージ2の実施例では、イメージエレメントパターン6は、全てのイメージエレメント4に類似している。図1に示された例では、部分3において、低レベルの表面輝度を含む部分、ここでは、ベース面7では、イメージエレメント4の星型のイメージエレメントパターン6は小さく示されている。例えば、ベース面7と異なる表面輝度の段階的に高いレベルを備えるストリップ8の部分が表されている場合、それに応じてイメージエレメントパターン6の表面割合は、イメージエレメント4において大きくなる。背景領域5の表面及びイメージエレメントパターン6の表面の両方は、例えば、反射層を備える一般的な回折表面構造を有する。背景領域5は、例えば、方位角、空間周波数、断面形状、断面の深さ及び溝の曲率等の表面構造の少なくとも一つの構造パラメータにおいてイメージエレメントパターン6と異なり、又は、例えば、反射層の部分的な除去により、背景領域5の表面又はイメージエレメントパターン6表面が透明又はカラー層(例えば、白又は黒)により覆われた場合、背景領域5は、イメージエレメントパターン6と異なる。従って、背景領域5の表面は、それらの表面構造の光変更作用によりイメージエレメントパターン6の表面と異なる。ハーフトーンイメージの実施例において、表面構造は、背景領域5の表面及び/又はイメージエレメントパターン6の表面に座標(X;Y)に依存した他の構造パラメータを有する。
【0021】
ハーフトーンイメージ2のその簡単な例以外で、特に、有名な人物の表示(例えば、ポートレイト)はハーフトーンイメージ2に適しており、イメージエレメント6は、例えば、その人物により書かれた連続テキストの文字及び/又は楽譜に作曲されたメロディのような表示された人物に関する参考資料を有益に有する。
【0022】
図2に示す例では、各イメージエレメント4は、背景領域5の背景に対して単一の文字の形式でそれぞれのイメージエレメントパターン6を有する。イメージエレメントパターン6の文字がテキストに対応した順序を含むように、イメージエレメント4は互いに並んで配列されている。イメージエレメント4の領域において、ハーフトーンイメージ2により予め決められた文字の表面割合は、文字の厚さ及び/又は大きさを変更することにより得られる。ハーフトーンイメージ2に良い解像度を提供する場合、文字の厚さは、連続的又は段階的に変化する。図2には、それは、文字S、E及びUの場合で示されている。文字を有するイメージエレメント4の寸法は、文字が近くから視認された場合、即ち、通常の読字距離で視認された場合に、それらの文字を読むことができるように小さくなっているが、上述の視認距離ではそれらの文字を読むことはできない。他の実施例では、イメージエレメント4は極めて小さく、文字又は記録を顕微鏡のみで認識することができる。以下、少なくとも20倍の倍率のみで認識することができるテキストを「ナノテキスト」と称す。図2は、簡略図であり、図2には、イメージエレメント4の寸法は示されていない。図2は、例えば、原稿テキストのような連続の長方形を含むイメージエレメント4の例えば比例スクリプト又はナノテキストに適応された文字を示す。
【0023】
図3は、セキュリティエレメント1の典型的な断面図を示す。セキュリティエレメント1は、ハーフトーンイメージ2(図1)を含む合成層10の一部である。合成層10は、少なくともエンボス層11及び保護ラッカー層12を有する。それら2つの層11及び12は、プラスチック材料からなり、それらの間に反射層13を有する。他の実施例では、ポリカーボネート、ポリエチレン及びテレフタル酸エステル等の傷が付き難く、硬く、透明な保護層14は、反射層13と反対側のエンボス層11の側面の全面を覆う。少なくともエンボス層11及び保護ラッカー層14は、入射光15のために少なくとも部分的に透明である。保護ラッカー層12又は反射層13と反対側の保護ラッカー層12側に配置された任意の粘着層16は、セキュリティエレメント1を基板17に結合するために設けられている。基板17は、セキュリティエレメント1で認証される貴重品、書類、預金通帳等である。合成層10の更なる構成は、例えば、上述のUS No4856857に記載されている。その文献には、合成層10の構成に適した材料及び反射層13に適した材料についてまとめて記載されている。反射層13は、アルミニウム、銀、金、クロム、銅、ニッケル、テルル等のクループからの金属の薄層形状であり、例えば、MgF、ZnS、ZnSe、TiO、SiO等の無機誘電体からなる薄層により形成されている。反射層13を、異なる無機誘電体の複数の層部分又は金属及び誘電体層の組み合わせで構成することも可能である。反射層13の厚さ及び反射層13の材料の選択は、セキュリティエレメント1が純粋に反射するか否によって行われるものであり、上述したように表面部だけの透明部分、即ち、部分的な透明部分又は所定の透明度を備える透明部分によって行われるものである。特に、テルル反射層13は、個々のセキュリティエレメント1の個性化に適しており、反射テルル層は、照射位置での合成層10のプラスチック層を介した細いレーザビームの効果に基づき透明になると共に、合成層10に損害を与えずに窓46が形成される。そのように形成された透明窓46は、例えば、個々のコードを形成する。同じ方法で、個々のハーフトーンイメージ2が形成される場合、反射層13は、それぞれ背景領域5の表面又はイメージエレメントパターン6の表面において除去される。
【0024】
ハーフトーンイメージ2の領域における反射層13は、入射光15を回折する極めて微細な表面構造を有する。背景領域5の表面は第1構造体18に占められており、第2構造体19はイメージエレメントパターン6の表面に形成されている。これらの構造体18、19は、回折格子、ホログラム、マット構造、キノフォーム、モスアイ構造及び反射面から形成されたグループから選択された回折表面構造を用いることにより形成される。反射面は、平坦な色消し反射ミラー面及び有色ミラーのように作用する回折格子を有する。これらの有色反射回折格子は、線状格子又は交差格子で構成されており、2300本/mmより大きい空間周波数fを有し、光学活性構造の深さTに応じて、反射法則に基づいて選択的に入射光の有色成分を反射する。光学活性構造の深さTの値が約50nmより小さいと、入射光は部分的に且つ無色に反射される。また、合成層10の表面に平行な平坦なミラー面は、極めて微細な表面構造のグループを備える単一のリリーフ構造として結合され、平坦な色消し反射ミラー面が有する空間周波数及び構造の深さは、それぞれ空間周波数f=∞又は0及び構造の深さT=0である。キノフォームは、上述のドイツ公開特許公報No1957475及びCH653782に記載されている。
【0025】
一例として、上述の表面構造の一つは、ハーフトーンイメージ2に設けられた全面に背景領域5として広がる。その次に、イメージエレメントパターン6の表面は、所定の色で覆われる。45で示されたカラーアプリケーションは、インクジェットプリント又はインタリオプリントにより、例えば、合成層10の自由面、イメージエレメントパターン6の表面に作用する。セキュリティエレメント1の最も簡単な構成は、複写機により形成されたセキュリティエレメント1のコピーがオリジナルとは明らかに異なるという利益をもたらす。他の構成では、背景領域5の表面及びイメージエレメントパターン6の表面におけるカラーアプリケーション45は、それぞれエンボス層11と反射層13との間に直接設けられる。図3とは対象的に、カラーアプリケーション45は、背景領域5の全面又はイメージエレメントパターン6の全面にそれぞれ広がる。同様に、上記したような反射面13除去作業により形成された窓46は、それぞれ背景領域5の全面及びイメージエレメントパターン6の全面を有する。
【0026】
一例として、背景領域5の反射層13は、平坦なミラー面形状又は有色ミラーのように機能する回折格子形状の反射面を第1構造体18として有する。日光又は多色人工光による照明により、入射光15は、入射角αで合成層10に作用する。この場合、入射角αは、入射角15の方向と合成層10の表面に対する垂線20の間で測定される。第1構造体18で反射された光21は、反射法則に応じて、垂線20に対して測定され且つ入射角αと同一な反射角βで合成層10から離れる。背景領域5が明るい印象を与えるのは、視認者が直接反射光21に近接した立体角を見る場合のみであり、その場合、平坦なミラーが変化していない日光を反射し、一方、2300本/mmより大きい空間周波数fの回折格子が典型的な混合色を反射する。上述の合成層10のハーフトーンイメージ2の他の方向では、背景領域5は、実質的に黒である。
【0027】
従って、特に、入射光15を吸収し、「モスアイ構造」により知られ、規則的に配置されたピン型のリリーフ構造エレメントがリリーフのベース面上におよそ200nmから500nmで突出するリリーフは、第1構造体18に適している。リリーフ構造エレメントは、400nm以下で互いに間隔をおいて配置されている。そのようなモスアイ構造を有する表面は、あらゆる方向から入射した光15の2%未満を反射させ且つ視認者が見たときに黒色であると認識させる。
【0028】
第2構造体19は、イメージエレメントパターン16に形成され、第2構造体19は、実質的に、反射光21の方向の外側に入射光15を偏向させる。100本/mmから2300本/mmの範囲からの空間周波数fを備える線状回折格子の極めて微細なリリーフは、その条件を満たす。色消し回折格子のために、空間周波数fは、f=100本/mmからf=250本/mmの値の範囲から選択される。入射光15を色に分割する回折格子は、f=500本/mmとf=2000本/mmとの間の範囲からの空間周波数に関する好ましい値を有する。格子ベクトルK(図1)の方向は、方位角θ(図1)により座標軸X(図1)に対して規定される。線状回折格子に関する特別なケースは、曲がった溝により形成されるが、曲がった溝が平均して直線に続くように形成される。これらの回折格子は、視認者が視認できる限り広い範囲の方位角を有する。
【0029】
入射光15は、反射光の方向からの波長に応じて、第2構造体19で回折され、マイナスの第1回折次数に光波22、23の形状及びプラスの第1回折次数に光波24、25の形状に偏向する。この場合、ブルーバイオレット光波23、24は、最小の回折角±εにより反射光21の方向から回折する。それに応じて、より大きな波長の光波22、25は、より大きな回折角で偏向する。
【0030】
図3において、入射光15及び垂線20は、図面の面と一致し且つ座標軸yに平行なある視認面を規定する。視認方向及び垂線20が反射角βを含む場合、観察者の視認方向は、観察面に向いており、観察者の目は、反射背景領域5の反射光21を受ける。
【0031】
格子ベクトルKが、この場合、回折面と同一の観察面に平行に向けられていると、回折格子は、最適に作用する。
【0032】
その場合、回折光線21乃至24は、観察面にあり、視認方向に応じて、観察者の目に所定の色の印象を与える。格子ベクトルKが観察面に存在しない場合、即ち、観察面に対して約±10oの視認角内に存在しない場合、又は、光線21乃至24が視認方向ではない場合、第2構造体19で散乱した少量の光を受けることにより、観察者は、回折格子の表面又はイメージエレメントパターン6の表面の色がダークグレーであると認識する。従って、ハーフトーンイメージ2の内容に対する構造パラメータに関する賢い選択では、回折格子の1つを背景領域5の第1構造体18として用いることもできる。一方、後述するマット構造の1つを回折格子に重ね合わせた場合、イメージエレメントパターン6の視認角は増加する。
【0033】
図3に示す例では、第2構造体19の断面は、周期的な格子の対称的な鋸歯状をなしている。また、特に、直線の溝、曲がった溝又は円形又は別の形に曲がった溝を形成する、例えば、非対称的な鋸歯状の断面、矩形断面、正弦及び正弦状の断面等のような他の周知の断面の1つは、構造体18、19に適している。値がおよそ1.5の屈折率nを有するエンボス層11の材料は、構造体18、19を満たすと共に、光学活性構造の深さTの値は、形成された幾何学構造の深さのn倍である。構造体18、19に用いられる周期的な格子の光学活性構造の深さTの値は、80nmから10μmの範囲である。この場合、技術的な理由で、大きな構造深さTを備えるリリーフ構造は、空間周波数fに対して低い値を有する。
【0034】
イメージエレメントパターン6の第2構造体19が、入射光15を合成層10上のハーフスペースの大きな立体角領域に偏向させる必要がある場合、例えば、キノフォームのようなマット構造、等方又は非等方なマット構造等が有益である。イメージエレメントパターン6は、マット構造により決められた立体角内で全ての視認方向から光の面として見える。これらの極めて微細なリリーフのリリーフ構造エレメントは、回折格子のように規則的に配置されていない。マット構造の形態は、例えば、平均粗さ値R、相関長I等の統計的なパラメータにより実施される。セキュリティエレメント1に適したマット構造の極めて微細なリリーフ構造エレメントは、平均粗さ値Rに関して20nmから2500nmの範囲の値を有する。この値の範囲は、好ましくは、50nmから1000nmの間である。少なくとも一つの方向では、相関長Icは、200nmから50000nmの範囲の値である。この値の範囲は、好ましくは、1000nmから10000nmである。極めて微細なリリーフ構造エレメントが方位角の優先方向を有していない場合は、マット構造は等方的であり、散乱光は、例えば視認認知度により予め決められた上限値より大きな強度により、均等に、全ての方位角方向において、マット構造の散乱能力により予め決められた立体角に分散される。立体角は、その先端が入射光15により照明された合成層10の一部である円錐をなしており、その軸は反射光21の方向と一致する。積極的に散乱するマット構造は、弱く散乱するマット構造よりも大きな立体角で散乱光を分散する。一方、極めて微細なリリーフ構造エレメントが方位角で好ましい方向を有すると、非等方に入射光15を散乱させる非等方のマット構造がある。この場合、非等方マット構造の散乱能力により予め決められた立体角は、大きな主軸がリリーフ構造エレメントの好ましい方向に直行する断面楕円形状を有する。非色消しの回折格子と反対に、散乱光の色がマット構造に入射した光15に実質的に対応するように、マット構造は入射光15を無色に散乱させる、即ち、その波長とは別に散乱させる。観察者のために、マット構造の表面は、日光の照射時に高いレベルの表面輝度を有し、白い紙のように、マット構造の方位角の方向とは実質的に独立して見える。
【0035】
図4は、エンボス層11と保護ラッカー層12との間に第2構造体19として設けられたマット構造の一例を示す断面図である。回折格子の構造の深さT(図3)に応じて、マット構造の断面は平均粗さ値Rであるが、マット構造の極めて微細なリリーフ構造の間には平均粗さ値Rの約10倍までの高さHに大きな違いがある。従って、形成作業に重要なマット構造の高さの違いHは、周期的な回折格子に関する構造の深さTに対応する。マット構造の高さの違いHの値の範囲は、構造の深さTに関して上記した範囲である。
【0036】
特別な実施として、マット構造は、「弱作用回折格子」に重ね合わされる。弱作用回折格子は、60nmから70nmの間の小さな構造の深さTにより、低い回折効率を有する。この使用のためには、空間周波数の値の範囲は、f=800本/mmから1000本/mmの間であることが好ましい。
【0037】
0.5μmから3μmの周期を含み且つスパイラル形状又は円形の溝を備える円形の回折格子を、イメージエレメントパターン6に用いることができる。視認角を増加させる回折構造は、以下に、「回折散乱体」と略称する。従って、「回折散乱体」は、等方及び非等方マット構造、キノフォーム、0.5μmから3μmの溝間隔の円形の溝を備える回折格子及び弱作用回折格子に重ね合わされたマット構造のグループからの構造を示す。
【0038】
図3に戻り、第1の構成において、ハーフトーンイメージ2(図1)は静止イメージであり、即ち、所定の視認距離で白色入射光15の照明による通常の観察条件に基づく空間的定位に関する広範囲では、ハーフトーンイメージ2は変わらない。観察者は、精密検査のみによって、ハーフトーンイメージがイメージエレメント4(図1)に分割されイメージエレメントパターン6が所定の形状を有すると判断することができる。背景領域5の第1構造体18は、入射光15を反射又は吸収する。イメージエレメントパターン6の第2構造体19は、回折散乱体の一つである。第2構造体19は、イメージエレメントパターン6が回折散乱体により予め決められた大きな立体角で見えるように、入射光15を散乱又は回折する。白色光15によるセキュリティエレメント1の照明により、観察者は、グレースケールで上記視認距離に配置されたハーフトーンイメージ2を視認すると共に、観察者は、高レベルな表面輝度でのイメージエレメントパターン6の大きな表面割合を備えるイメージエレメント4及びより高レベルな表面輝度でイメージエレメントパターン6の小さな表面割合を備えるイメージエレメント4を知覚する。ハーフトーンイメージ2の視認性は、実質的に白黒で紙に印刷されたハーフトーンイメージ2のように機能する。しかしながら、視認方向が散乱又は回折光の立体角の外側であると、ハーフトーンイメージ2の認識は難しく又は認識できない、又は、ハーフトーンイメージのコントラスト反転が発生する。第1構造体18が反射特性を有すると、ハーフトーンイメージ2が反射光21の方向と反対に正確に視認できるようにセキュリティエレメント1が正確に配置される場合、コントラストは変換する。セキュリティエレメント1を傾ける前の光であるイメージエレメント4は、反射光21でより明るい光である前の暗いイメージエレメント4より暗く、逆の場合も同じである。セキュリティエレメント1の傾斜動作は、観察面に直交し且つセキュリティエレメント1の面に平行な軸に成立する。
【0039】
表1に要約された第1及び第2構造体18、19の組み合わせは、ハーフトーンイメージ2の表示に好ましい。
【0040】
第2の構成では、セキュリティエレメント1が垂線20に平行な軸についての回転角を介して傾く又は回転した場合、ハーフトーンイメージ2のコントラストが変わるように、構造体18、19は選択される。従って、セキュリティエレメント1の第1実施例と比較して、コントラスト反転を容易に観察することができる。背景領域5の第1構造体18は、回折ベクトルKが方位角θ=0°(図1)、即ち、座標軸Xの方向である、例えば、線状回折格子である。イメージエレメントパターン6は、回折散乱体の1つで占められる。第1構造体18の回折ベクトルKが実質的に観察面に平行に配置され且つ観察者の視認方向が光線21乃至25の1つの方向に向けられた場合以外は、観察者は、垂線20についてセキュリティエレメント1を回転させ、50cm以上の視認距離で配置されたハーフトーンイメージ2をグレースケールで視認する。座標軸Xに平行な軸について向けられたセキュリティエレメント1の傾きにより、コントラスト反転のハーフトーンイメージ2は、観察者の目に偏向した回折光線22乃至25に応じてその色を変える。ハーフトーンイメージ2は、回折次数の回折光線22乃至25により占められていない角度領域においてグレースケールモードで認識可能である。
【0041】
セキュリティエレメント1の第3実施例では、両領域、背景領域5及びイメージエレメントパターン6は、入射光15を色に分割し、格子ベクトルKの方位角θに関してのみ異なる回折格子の構造18、19を有する。イメージエレメントパターン6の回折格子のための格子ベクトルKは、座標軸yと平行に向けられており、即ち、それぞれ方位角θ=90°及び270°である。背景領域5の回折格子のための格子ベクトルKは、方位角に関して、イメージエレメントパターン6における格子ベクトルKと異なっており、例えば、それぞれ方位角θ=0°及び180°である。座標軸y及び第1構造体18の格子ベクトルKを含む回折面に平行な視認方向を有する観察者は、オリジナルのイメージに対比して回折色の一つにおいて上記視認距離でハーフトーンイメージ2を視認する。即ち、観察者は、背景領域5の散乱光よりも明るい第2構造体を備えるイメージエレメント6のライトアップ表面を見る。背景領域5の第1構造体18の格子ベクトルKは、観察面と平行に向けられ、これにより、背景領域5は明るくなると共に、合成層10の回転中、それぞれ回転角α90°及び270°で再生するように、コントラストは、ハーフトーンイメージ2において消える。観察者は、ハーフトーンイメージ2を逆コントラスト及び同じ色の条件で視認可能である。また、第1及び第2構造体18、19の空間周波数fが、例えば、15%から25%で異なると、回転により、単にハーフトーンイメージ2のコントラストだけではなく色も変わる。回折次数の回折光線22、23、24、25の外側の視認角で、ハーフトーンイメージ2は、コントラスト不足により認識不可能である。
【0042】
第1及び/又は第2構造体18、19の空間周波数fが位置に依存して選択されると、ハーフトーンイメージ2は、所定の傾斜角で、例えば、オリジナルのイメージの色に対応するカラーイメージを示す。
【0043】
図1の第2及び第3実施例の変形例では、背景領域5の第1構造体18(図3)は、回折ベクトルKの異なる方向を含む。即ち、セキュリティエレメント1の濃いコントラストのイメージにおいて少ない方位角範囲で合成層10の回転中、回折ベクトルKが観察面と厳密に平行であるこれらの構造体18の表面が色づくように、方位角θの範囲は、−80°≦θ≦80°である。
【0044】
図1の他の好ましい実施形態では、平行に向けられた格子ベクトルKを備える回折格子が配列されるように、線状回折格子は、イメージエレメント4に並んで背景領域5に形成される。しかしながら、1つの列の格子ベクトルKの方位角θは、イメージエレメント4の2つの隣接する列における背景領域5の格子ベクトルKの方位角θと異なっている。例えば、所定の方位角値を有する3つの列A、B、Cがある。イメージエレメントパターン6の格子ベクトルKの場合のように、背景領域5の格子ベクトルKは座標軸yと平行に向けられていない。従って、ハーフトーンイメージ2の座標軸yが観察面にあると、観察者は、正確なコントラストでハーフトーンイメージ2を視認する。イメージエレメントパターン6は明るく、背景領域5は暗い。垂線20(図3)についての回転により、図1に示すように、合成層10(図1)が同一の照明及び観察状況に基づき視認されると、セキュリティエレメント1はその外観を変える。列A、B及びCにおいて、回折ベクトルKが観察面と厳密に平行である背景領域5が色づく場合、ハーフトン2イメージ2が、濃いコントラストの少ないイメージになる。
【0045】
図5は、回転角δでの回転後の図1の部分3を示す。ハーフトーンイメージ2(図1)は、特定の視認距離で濃いコントラストの少ない表面として見える。背景領域5を備えるイメージエレメント4(図1)のA列26により形成された明るく照らされたストリップは、ハーフトーンイメージ2の上に配置されており、回折ベクトルK(図1)は、回転角δで、合成層10の面の観察面のトレース27と平行に向けられている。
【0046】
図6は、角度δでの図1の部分3を示し、B列28において背景領域5の格子ベクトルK(図1)がトレース27と平行に向けられると、B列28の背景領域5は直ちに明るくなる。A列26の背景領域5は、A列26の格子ベクトルKが観察面から回転すると共にセキュリティエレメント1のコントラストの少ない暗い表面の一部を形成する。図7でも、同じ理由で、回転角δで、C列28の背景領域5は明るく、これらの他の列26、28、29は暗い。即ち、連続のABC等の列26、28、29が循環的に繰り返しセキュリティエレメント1(図1)に配置され、その後、セキュリティエレメント1の回転により、背景領域5で用いられる第1構造体18(図3)の空間周波数fに依存して明るく色づいたストリップが、それぞれ回転角δ=180°及び0°までセキュリティエレメント1の表面に続くと、イメージエレメントパターン6の第2構造体19(図3)の回折ベクトルK(図1)及び座標軸yは、トレース27と平行に配置されると共に、ハーフトーンイメージ2は、再び着色ストリップなしで視認可能になる。
【0047】
第2構造体19が回折散乱体の一つであると、ハーフトーンイメージ2は、回転角δと実質的に関係なく見える。この場合、セキュリティエレメント1の回転により、列26、28、29の着色ストリップは、ハーフトーンイメージ2を移動するように見える。
【0048】
読字距離より小さい距離で視認した場合、イメージエレメント4の列26、28、29は分割され、背景領域5及びイメージエレメントパターン6(図1)は、それぞれ上述のように同じ状況のもとで認識可能である。
【0049】
図8では、ハーフトーンイメージ2は、境界線30で区切られたストリップ8がベース面7に配置された旗状の領域を有する。拡大部分3に見えるイメージエレメント4は、ベース面7よりもストリップ8のためのイメージエレメントパターン6の大きな表面割合を有する。イメージエレメントパターン6の表面は、回折散乱体の一つにより占められており、背景領域5の表面は、回折構造体の一つにより占められている。第1構造体18(図3)が同一の空間周波数f及び互いに平行な格子ベクトルK(図1)、即ち、それぞれ、同じ方位角θ≠90°及び270°(図1)を含む背景領域5は、イメージエレメント4のシンプルな直線ストリップ26(図7)、28(図7)、29(図7)に配置されていないが、これらの背景領域5を備えるイメージエレメント4が、所定の視認角で視認可能な少なくとも1つの小さなイメージ31を形成するように配置されている。図8では、例えば、小さなイメージ31乃至35は、円形のリングセグメントを示す。小さなイメージ31乃至35は、空間周波数f及び格子ベクトルK(図1)の方位角θ(図1)に関する値により区別される。これらの値は、背景領域5の第1構造体18に用いられる。小さなイメージ31乃至35に用いられていない背景領域5は、例えば、反射面又はモスアイ構造を有する。観察者は、特定の視認距離で、回転角δ(図5)に関わりなくグレートーンでハーフトーンイメージ2を見る。観察者は、セキュリティエレメント1の回転により格子ベクトルが観察面に不規則に生じるこれらの小さなイメージ31、32、33、34、35をセキュリティエレメント1の面(図1)で認識する。この場合、視認可能な小さなイメージ31乃至35の色は、空間周波数f及びセキュリティエレメント1の傾斜角で決まる。
【0050】
例えば、セキュリティエレメント1が垂線20について回転すると、小さなイメージ31乃至35の1つ以上が所定の順番で明るくなり、連鎖印象を生み出す。即ち、垂線20(図3)についての回転により、視認可能な小さなイメージ31乃至35の位置は、セキュリティエレメント1の表面を移動する。座標軸Xについての傾斜により、視認可能な小さなイメージ31乃至35の色は変わる。実施例において、これらの複数の小さなイメージ31乃至35が配置されているため、ここでは符号31及び32で示されたいくつかの小さなイメージは、回転角δ及び傾斜角により決められたセキュリティエレメント1の方向で、所定の文字を形成する。即ち、小さなイメージ31乃至35は、有益に、セキュリティエレメント1の所定の方向を空間で構築する。
【0051】
小さなイメージ31乃至35は、シンプルな文字に限定されず、実施例では、小さなイメージ31乃至35を、例えば、ハーフトーンイメージ2の縮小コピー又は線及び/又は面素からなるグラフィック表示のようなピクセルに基づくイメージで構成することもできる。
【0052】
ハーフトーンイメージ2の別の実施例では、例えば小さなイメージ31の背景領域5は、第1構造体として、空間周波数f≧2300本/mmを含む反射交差格子を有する。観察者が、反射光21(図3)を直視し、小さなイメージ31を高い周波数の回折格子の特性を示す混合色で認識した場合、又は、観察者が、大きな回折角ε(図3)を考慮して、対応する傾斜角で小さなイメージ31を視認し、小さなイメージ31をセキュリティエレメント1の暗いい領域に対して明るいブルーグリーン色で認識した場合のみ、観察者は、小さなイメージ31を視認することができる。
【0053】
他の実施例では、背景領域5は、入射光15を色に分割する方位角θ=0°を備える回折格子を有する。回折散乱体は、イメージエレメントパターン6に仕上られる。ハーフトーンイメージ2は、回転角δ=90°及び270°で、逆コントラストの色の輝度段階及びこれらの回転角の外側でオリジナルイメージのコントラストのグレースケールで視認可能である。
【0054】
別の実施例では、第1構造体18としての背景領域5は、方位角θ=0°、座標軸yと平行に配置された溝を備える非対称の回折格子を有する。イメージエレメントパターン6は、同一の非対称回折格子により占められているが、第2構造体19の格子ベクトルKは、第1構造体18の格子ベクトルKと反対、即ち、方位角の値θ=180°に向けられている。ハーフトーンイメージ2は、空間周波数f及び観察状況に依存した色で、又は、色消し非対称回折格子の場合、入射光15(図3)の色で、回転角δがδ=0°及び180°のときのみに視認可能である。この場合、180°の回転後、ハーフトーンイメージ2のコントラストはそれぞれ逆転する。これらの2つの回転角の外側で、ハーフトーンイメージ2のコントラストは消える。
【0055】
表2は、背景領域5及びイメージエレメントパターン6の回折構造体の組み合わせを表しており、所定の回転角の値δでの色彩効果を備えるコントラストの反転又はコントラストの損失を含む。
【0056】
図9は、イメージエレメント4の他の実施例を示す。イメージエレメントパターン6は、ストリップ形状をなしており、パターンの輪郭を示す。ここでは、星型である。ストリップ形状のイメージエレメントパターン6が閉まっている場合、背景領域5は少なくとも2つの表面部に分割される。イメージエレメント4におけるイメージエレメントパターン6の表面割合は、イメージエレメント6の幅により決まる。ハーフトーンイメージ2(図8)がイメージエレメント4及び背景領域5の過剰の一定配置により輝度の不要な変調を含まないように、隣接するイメージエレメント4のイメージエレメントパターン6は、例えば、座標系x、yに対する方向に応じて異なる。観察距離で、観察者は、イメージエレメント4に配置されたイメージエレメントパターン6に分割するハーフトーンイメージ2を読字距離のみで見る。
【0057】
セキュリティエレメント1の他の実施例では、図9の拡大部分3に示すように、パターンストリップ36は、ハーフトーンイメージ2の表面に配置され、パターンストリップ36は、少なくともハーフトーンイメージ2の表面の一部に広がる。パターンストリップ36の幅Bの値の範囲は、15μmから300μmの間である。簡略化のために、図9は、互いに平行なパターンストリップ36を示し、それらは、部分3から分かるように、例えば、ギリシャ風の装飾のような表面ストリップ40からなるラインパターンを有する。他の実施例では、パターンストリップ36のラインパターンは、文字がパターンストリップ36の幅Bより小さい文字高さを有するナノテキストの形状である。ラインパターンの他の実施例は、シンプルな直線又は曲線、連続のピクトグラム等を含む。また、シンプルな直線又は曲線エレメントの配置は、単独又は装飾及び/又はナノテキスト及び/又はピクトグラムの組み合わせでラインパターンを形成する。ラインパターンの表面は、回折パターン構造体37により占められ、その線幅の値の範囲は、5μmから50μmの間である。第1及び第2構造体18(図3)、19(図3)により形成されたハーフトーンイメージ2が著しく乱されないように、ラインパターンは、背景領域5及び又はイメージエレメントパターン6をパターンストリップ36の表面内で部分的に覆う。パターン構造体37は、少なくとも1つの構造パラメータにおいて第1及び第2構造体18、19で異なる。好ましくは、入射光15(図3)を色に分割し、800本/mmから2000本/mmの空間周波数fを含む回折格子は、ミクロ構造体37に適している。第1及び/又は第2構造体18、19が回折散乱体により占められていない場合、回折散乱体は、また、パターン構造体37に適している。パターンストリップ36の実施例では、少なくとも、構造パラメータ、空間周波数f及び/又はパターン構造37の格子ベクトルの方位角方向は、位置に依存して選択され、即ち、特定の構造パラメータは、座標(x,y)の関数である。
【0058】
図10は、パターンストリップ36を備えるイメージエレメント4を詳細に示す。パターンストリップ36は、背景領域5及びイメージエレメントパターン6に広がる。一例として、簡略化のために、接続部により接続されたリム38、39を備えるU字形状に示されている。表面輝度は、パターンストリップ36のラインパターンの表面割合によりイメージエレメント6内で制御される。図10に示すように、表面輝度は、パターンストリップ36のラインパターンの表面ストリップ40の幅の増大により、イメージエレメントパターン6内で変化する。左側リム38のイメージエレメントパターン6の表面輝度は、接続部分と比べて表面ストリップ40の幅の増大に基づき減少する。接続部分の輝度に関して、例えば、右側のリム39のイメージエレメントパターン6の輝度の増加のために、表面ストリップ40の幅を減らす。効果的にするために、回折格子は、表面ストリップ40において少なくとも3つ乃至5つの溝を有する必要があると共に、表面ストリップ40の線幅の大きさは、空間周波数f及び格子ベクトルK(図1)の方向に依存した最小値より小さくないかもしれない。より大きな領域がイメージエレメントパターン6の輝度の増加に寄与するように、イメージエレメントパターン6の輝度の増加により、表面ストリップ40は小さなスポット41に分割される。同じことが背景領域5の変更、例えば、領域42に適応される。
【0059】
図9に示すイメージエレメント4の実施例では、例えば、背景領域5の表面ストリップ40の線幅は、ハーフトーンイメージ2の全面と同じであると同時に、イメージエレメントパターン6の表面輝度は、パターンストリップ36の表面ストリップ40の線幅によりハーフトーンイメージ2のオリジナルイメージに応じて制御される。表面ストリップ40(図10)及びスポット41(図10)の小さな寸法は、例えば、拡大鏡、顕微鏡等なしでは観察者の目により認識されないと同時に、イメージエレメントパターン6の表面輝度は、第2構造体19(図3)の残りの面に比例する。
【0060】
パターンストリップ36がナノテキストの文字を含むと、図2に示したように、表面輝度の制御は、例えば、文字の厚さを増加又は減少、又は、文字間隔を増加させることにより行われる。
【0061】
図10の構成とは関係なく、観察者の目は、30cm未満の通常の読字距離及び適切な観察状況でさえ、パターンストリップ36をシンプルな光ラインとして認識すると共に、パターンストリップ36のパターンを、拡大鏡又は顕微鏡によってのみ認識する。傾斜及び/又は回転により、パターンストリップ36は、観察者の視点から、それらの色の変更し及び/又は明るくなり又は再び消える。パターン構造体37(図9)の構造パラメータに関する適切な選択では、日光により照明され且つ特定の視認距離に配置されたハーフトーンイメージ2は、傾斜又は回転による複数のパターンストリップ36により形成された虹色の有色ストリップ43(図1)を有し、ストリップ43は、色を変え及び/又はセキュリティエレメント1の表面を移動するように見える。
【0062】
実施例では、ハーフトーンイメージ2は、ハーフトーンイメージ2から独立した回折格子により占められた表面エレメント44からなるモザイクの一部であり、表面エレメント44は、上記EP−A0105099に応じて光学効果を分散する。特に、実施例では、パターンストリップ36は、ハーフトーンイメージ2に広がる表面エレメント44からなるモザイク部分である。
【0063】
表3は、背景領域5、イメージエレメントパターン6及びパターンストリップ36の構造体18(図3)、19(図3)及び37の好ましい組み合わせを表す。
【0064】
ここで記載された様々な実施例の特徴を組み合わせることは可能である。特に、「背景領域5」及び「イメージエレメントパターン6」又は「第1構造体18」及び「第2構造体19」は交換可能である。
【表1】

【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】拡大部分を有するセキュリティエレメントを示す図である。
【図2】イメージエレメントにおけるイメージエレメントパターンとしての文字を示す図である。
【図3】セキュリティエレメントの断面図である。
【図4】マット構造を示す図である。
【図5】回転角δでの拡大部分を示す図である。
【図6】回転角δでの拡大部分を示す図である。
【図7】回転角δでの拡大部分を示す図である。
【図8】セキュリティエレメントにおける小さいサイズのイメージを示す図である。
【図9】イメージエレメントにおける詳細な構造を示す図である。
【図10】パターンストリップを備える輝度制御を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面構造を備える少なくとも透明エンボス層(11)、保護ラッカー層(12)及び前記エンボス層(11)と前記保護ラッカー層(12)との間に組み込まれた反射層(13)を含む合成層(10)に設けられた極めて微細な表面構造に占められた表面部分を備え、ハーフトーンイメージ(2)の表面が前記表面部分からなり且つ少なくとも1次元で1mm未満のイメージエレメント(4)に分割されたハーフトーンイメージ(2)を備える回折セキュリティエレメント(1)において、
前記イメージエレメント(4)のそれぞれは、背景領域(5)及びイメージエレメントパターン(6)のグループから少なくとも1つの前記表面部分を含み、
前記イメージエレメントパターン(6)は、暗い領域(5)に配置され、
前記イメージエレメント(4)の表面に対するイメージエレメントパターン(6)の表面の割合は、隣接する前記イメージエレメント(4)の表面輝度を考慮して、前記イメージエレメント(4)の位置での前記ハーフトーンイメージ(2)のオリジナルイメージの少なくとも表面輝度により決まり、
前記背景領域(5)の表面が、光変更作用において前記合成層(10)の半分のスペースで所定の視認方向でのみ前記イメージエレメントパターン(6)の表面と異なるように、前記背景領域(5)の表面は、第1表面構造体(18)を有し、イメージエレメントパターン(6)の全ての表面は、前記第1表面構造体(18)とは異なる第2表面構造体(19)を有することを特徴とするハーフトーンイメージ(2)を備える回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項2】
前記イメージエレメントパターン(6)の形状は、全てのイメージエレメント(4)で同様の形状であることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項3】
前記イメージエレメントパターン(6)の前記表面は、文字形状であり、前記イメージエレメント(4)における前記イメージエレメントパターン(6)の前記表面の割合は、前記文字の厚さ及び/又は文字の高さにより決まることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項4】
前記表面構造体(18、19)は、格子ベクトル(K)を備える線状の回折格子であり、前記イメージエレメントパターン(6)において、前記格子ベクトル(K)は平行であり、前記イメージエレメントパターン(6)の格子ベクトル(K)は、前記背景領域(5)の前記第1表面構造(18)の格子ベクトル(K)と方位角(θ)において異なることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項5】
前記背景領域(5)において前記格子ベクトル(K)の同じ方位角(θ)を有する前記イメージエレメント(4)は、前記格子ベクトル(K)の方位角(θ)に応じて、前記ハーフトーンイメージ(2)で列(26、28、29)に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項6】
前記格子ベクトル(K)の前記方位角(θ)が異なる隣接する前記列(26、28、29)は、ABCの順序で循環的に繰り返し配列されていることを特徴とする請求項5に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項7】
前記第1表面構造体(18)及び前記第2表面構造体(19)は、空間周波数が150本/mmから2000本/mmの範囲から選択される蛇行回折格子であり、前記背景領域(5)及び前記イメージエレメントパターン(6)の前記蛇行回折格子は、前記格子ベクトル(K)の少なくとも前記方位角(θ)で異なっていることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項8】
前記第1表面構造体(18)及び前記第2表面構造体(19)は、非対称回折格子であり、前記第1表面構造体(18)の前記非対称回折格子の格子ベクトル(K)は、前記第2表面構造体(19)の格子ベクトル(K)と反対に向けられていることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項9】
前記イメージエレメントパターン(6)の前記表面において、前記第2表面構造体(19)は、等方及び非等方マット構造、キノフォーム、1から3μmの溝間隔の円形の溝を備える回折格子及び回折格子に重ねられたマット構造のグループから選択された回折散乱体であることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項10】
前記第1表面構造体(18)としての前記背景領域(5)は、平坦ミラー、2300本/mmより大きい空間周波数を備える交差格子及びモスアイ構造を含むグループからの構造であることを特徴とする請求項9に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項11】
前記第1表面構造体(18)としての前記背景領域(5)は、150本/mmから2000本/mmの範囲からの空間周波数及び互いに平行に向けられた格子ベクトル(K)を備える線状の回折格子であることを特徴とする請求項9に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項12】
前記第1表面構造体(18)及び前記第2表面構造体(19)は、空間周波数(f)が異なる線状又は蛇行回折格子であることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項13】
15μmから300μmの幅のパターンストリップ(36)は、少なくとも前記ハーフトーンイメージ(2)の表面の一部に広がり、前記パターンストリップ(36)において、5μmから50μmの範囲の線幅の表面ストリップ(40)は、文字、テキスト、ラインエレメント及びピクトグラムを含むグループからのラインパターンを形成し、前記パターンストリップ(36)の表面の前記ラインパターンの前記表面ストリップ(40)は、パターン構造体(37)を備える前記背景領域(5)及び前記イメージエレメントパターン(6)を部分的に覆い、前記パターン構造体(37)は、少なくとも1つの構造パラメータにおいて前記第1及び第2表面構造体(18、19)と異なることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項14】
前記全てのイメージエレメント(4)において、前記イメージエレメントパターン(6)は同じサイズであり、前記背景領域(5)の前記表面ストリップ(40)の線幅は一定であると共に、前記イメージエレメントパターン(6)の表面輝度は、前記パターンストリップ(36)の前記表面ストリップ(40)の線幅により前記ハーフトーンイメージ(2)のオリジナルイメージに応じて制御されることを特徴とする請求項13に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項15】
前記パターン構造体(37)の前記線状回折格子の前記空間周波数(f)は、前記ハーフトーンイメージ(2)の位置に依存していることを特徴とする請求項12又は13に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項16】
前記ハーフトーンイメージ(2)は、前記ハーフトーンイメージ(2)から独立した表面構造により占められた表面部分(44)のモザイクの一部であることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。
【請求項17】
前記合成層(10)は、基板(17)に接着剤により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の回折セキュリティエレメント(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−510178(P2007−510178A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537236(P2006−537236)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012378
【国際公開番号】WO2005/042268
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506151626)オーファウデー キネグラム アーゲー (30)
【Fターム(参考)】