説明

バイオアベイラビリティーエンハンサを含む第四級アンモニウム化合物の組成物

有機酸と共に治療用第四級アンモニウム化合物を含有する、増強された胃腸透過性(gastrointestinal permeability)を有する経口医薬剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容の全体が本明細書中に参考として援用される、2003年11月4日に出願された仮出願番号60/517,196に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、バイオアベイラビリティーエンハンサ(bioavailability enhancer)を含む第四級アンモニウム化合物の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
胃腸管の管腔からの第四級アンモニウム化合物の比較的乏しい吸収は、実際、治療におけるそれらの有用性を制限する。高用量が与えられることまたは代替的な投与経路が探求されることがしばしば要求される。当然、高用量は、ほぼいつも所望されない副作用を伴う。
【0004】
塩化トロスピウムは、1967年に鎮痙剤として市場に導入された第四級アンモニウム化合物である(ドイツ国特許第1 194 422号)。この活性剤は、経口投与が可能な、固体投与形態(錠剤及び糖衣錠)として、注射溶液として静脈または筋肉注射に、そして坐剤として直腸投与に利用可能であり、そして主に、膀胱不全(切迫尿失禁、不安定膀胱)の治療のために用いられている。その恒久的な正電荷、従って低透過性(low permeability)、に起因して、そのバイオアベイラビリティーは、非常に低い(ヒトにおいてたった10%まで)。経口剤形は、非常に高用量で与えられ、従って、抗コリン作用性の典型的な副作用(例えば、心拍数増加、口渇、調節困難等)を伴う。
【0005】
吸収性の乏しい薬物の透過性及びバイオアベイラビリティーを増強するための種々の試みがなされてきた。Cavallitoら(米国特許第2,899,357号)は、薬理学的に活性な第四級アンモニウム化合物の吸収を増強するために薬理学的に不活性な第四級アンモニウム化合物を用いた。彼らの発明の背後にある理論は、以下の原理に基づく:そのような化合物が管壁におけるアニオン性レセプタに強固に結合し従って容易には吸収に利用されないので、胃腸管における第四級アンモニウム化合物の吸収は、明らかに低い。例えば、ムチンは、主に、第四級アンモニウム化合物をイオン性相互作用により保持する酸性官能基を有する多糖から構成される。他の薬理学的に不活性な化合物を用いることによって、Cavallitoは、これらの結合部位を飽和させ、これにより薬理学的に活性な化合物が結合する部位がほとんどない状態にすることが可能であると考えた。このアプローチの問題点は、利用可能な第四級アンモニウム化合物の多くが、薬理学的に活性であり、不活性でないことである。また、それを有効にするために、高レベルの不活性第四級アンモニウム塩が必要とされる。
【0006】
Schepkyら(米国特許第4,650,664号)は、塩基性媒体中に難溶であるモピダモールのような薬物の溶解度を増強するために有機酸及びこれらの誘導体を用いた。そのような酸は、微小環境のpHを下げることによって、塩基性薬物の溶解度を改善する。機構的に、それらが媒体のpHに依存せずに水性媒体中に高溶解性であるので、このアプローチは、第四級アンモニウムまたは他の恒久的に荷電した分子には適さない。Sternら(米国特許第6,086,918号)は、胃の酸性環境からペプチドを保護し、同時に腸液のpHを低下させ従って蛋白質分解酵素の活性により好ましくない環境を提供することによってペプチドの吸収を増強する製剤を開示した。彼らは、小腸においてpH低下剤として有機酸(例えば、クエン酸及び酒石酸)を用いた。
【0007】
難透過性薬物のバイオアベイラビリティーを増強するための他のアプローチとしては、血管拡張薬(例えば、ニコチン酸の使用(米国特許第5,126,348号)、活性剤の溶解度を増強するための不飽和脂肪酸のポリグリセロールエステルの使用(4,650,664)、カルニチン誘導体及びシクロデキストリンの使用(EPO119737)、カルシウム及び他のミネラルの吸収を増強するための複合炭水化物の使用(米国特許第4,689,228号)、薬物のバイオアベイラビリティーを増強するための界面活性剤の使用(米国特許第4,571,334号、同第4,334,934号、及びEPO031603)ならびにプロドラッグアプローチ(米国特許第4,673,534号、同第4,443,435号、同第4,694,006号、及びEPO 036534)が挙げられる。
【0008】
これらは、なお、治療用第四級アンモニウム化合物のバイオアベイラビリティーを増強するための当該分野のまだ満たされていない必要性を残している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、恒久的に荷電した分子(例えば、第四級アンモニウム化合物)のバイオアベイラビリティーを、これらの透過性を増強することによって増強することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、これは、種々の鎖長の有機酸の使用を通じて達成される。短鎖有機酸が長鎖有機酸より有効であることを見出した。
【0011】
さらなる局面において、本発明は、有機酸と、第四級アンモニウム化合物と複合体を形成するポリマーとを組み合わせることに関する。これらのポリマーは、その構造中の電気陰性官能基(例えば、ポリビニルピロリドン)または負電荷(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)の存在に起因して正に荷電した治療用分子と複合体を形成する。有機酸と組み合わせられたこれらのポリマーは、相乗的に第四級アンモニウム化合物の透過性を増強する。
【0012】
いずれの特定の理論にも束縛されないが、電気陰性または負に荷電した官能基を有するポリマーは、第四級アンモニウム化合物の正電荷を完全または部分的に中和するイオン性(電荷−電荷)またはイオン−双極子型複合体形成を始めると考えられる。
【0013】
複合体を形成しそして電気陰性原子を有するポリマーとしては、全てのセルロース系ポリマー(cellulosic polymer)、アルギネート、ガム類(例えば、グアーガム及びキサンタンガム)、ポリアクリル酸誘導体(例えば、カルボマー)、カラギーナン、ポビドン及びその誘導体(例えば、クロスポビドン(crospovidone))、ポリエチレンオキシド、及びポリビニルアルコールが挙げられる。本発明の製剤に適するセルロース系ポリマーの例としては:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、粉末セルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、及びエチルセルロースが挙げられる。好ましくはセルロース系化合物であり、最も好ましくはHPMCである。本発明の製剤は、エンハンサ含有組成物中に1つ以上のそのようなポリマーを使用し得る。
【0014】
そのようなポリマー(単数または複数)による治療剤の電荷中和は、本発明において所望されかつ好ましいが、正に荷電した第四級アンモニウム化合物の吸収をそれ自身で増強するのに十分または助けにならない。この複合体は、これ自身では、遊離の第四級アンモニウム化合物より良好な透過性を有さない。
【0015】
有機酸は、細胞−細胞の緊密な連結を開く(open−up)ことによって機能し、それにより分子がそれを通って拡散することを可能にする。しかし、複合体形成ポリマーが緊密な連結を開く分子と組み合わせて用いられる場合、電荷中和及び緊密な連結を開くことが同時に生じ、第四級アンモニウム化合物の透過性の相乗的な増強をもたらす。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、薬理学的に活性な第四級アンモニウムまたは他の制限された透過性/バイオアベイラビリティーを有する恒久的に荷電した分子の透過性/バイオアベイラビリティー増強を提供する。胃腸管(消化管(gut)としても知られている)の上皮層を通る透過性は、薬物吸収において重要なステップである。他のステップとしては消化管表面に並ぶ粘膜層を通る透過、消化管腔及び消化管壁における代謝が挙げられる。バイオアベイラビリティーは、生理学的システムにおける薬物のアベイラビリティーとして定性的に規定される。第四級アンモニウム化合物のような薬物に関して、薬物吸収のプロセスにおいて最も重要なステップは、上皮障壁を通る薬物の透過である。従って、そのような薬物の透過性を増強することは直接的にこれらのバイオアベイラビリティーを増加することと言い換えることができる。
【0017】
透過性/バイオアベイラビリティー増強は、用量低下をもたらし、従って、高用量に伴う望まれない副作用を低減させる。それは、GI管における吸収の狭いウインドウを有する薬物の長期放出調製物に関連するバイオアベイラビリティーの損失も補償する。
【0018】
本発明において、透過性/バイオアベイラビリティー増強組成物は、透過性/バイオアベイラビリティー増強賦形剤が薬物と同時にそして同一の微小環境中に放出されるような様式で処方される。薬物と透過性エンハンサとの同調化された放出は、薬物及び透過性増強賦形剤を、pH依存性の腸溶性ポリマー(これらが同一または類似のpHで溶解する限り、これらは、同一でも異なっていてもよい)でコーティングすること、または薬物分子上の電荷を部分的または全体的に中和する複合体形成を始める、電気陰性に荷電したポリマーのような化合物を含ませることのいずれかによって達成される。この同調された放出は、本発明の剤形における透過性エンハンサの最適性能のために最も好ましい。
【0019】
恐らく、薬物及び透過性エンハンサの同調された放出を達成する本発明により企図される組成物の多数の剤形が存在する。
【0020】
好ましい実施形態の例として、投薬単位は、(活性剤と複合体を形成するポリマーを有するまたは有さない)第四級アンモニウム活性剤の層、及び薬物層形成された(drug layered)増強剤を包む腸溶性または非腸溶性ポリマーの層により包まれた顆粒状透過性増強剤の形態を取り得る。より詳細には、顆粒状形態の透過性増強賦形剤(例えば、クエン酸顆粒)が、商業的供給者から入手可能である。市販の賦形剤の粒径範囲は、変化し得る;しかし、本発明の目的については、150μm〜800μmの範囲の粒径の顆粒状賦形剤が用いられ得、そして好ましくは、このサイズの範囲は、300μm〜700μmである。この用途のために最も好ましい粒径範囲は、400μm〜600μmである。好ましい局面において、賦形剤顆粒は、保護ポリマーでコートされ得る。保護層を提供するために用いられ得るポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、Eudragit(登録商標)L30D55、Eudragit(登録商標)FS30D、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RLが挙げられる。この保護ポリマーのコーティング重量増加は、1重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜5重量%、そして最も好ましくは5重量%で変化し得る。
【0021】
(コートされたまたはコートされていない)ポリマー顆粒は、次いで、活性薬物、及び必要に応じてこの薬物と複合体を形成する1つ以上のポリマーを含む溶液で層形成(layer)される。この層形成溶液中の薬物の濃度は、所望される薬物充填量または所望されるプロセシングパラメータに依存して10重量%〜50重量%で変化する。このコーティング溶液中の好ましい薬物濃度は30重量%〜40重量%である。
【0022】
薬物コートされた顆粒は、次いで、必要に応じて、薬物と透過性増強賦形剤の両方のカスタマイズされた放出プロフィールを達成するように、腸溶性または非腸溶性ポリマーでコートされる。
【0023】
腸溶性ポリマーコーティングの例としては、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、及び共重合したメタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル(例えば、商標EUDRAGIT(登録商標)L12.5、L100、またはEUDRAGIT(登録商標)S12.5、S100等の下で知られている材料)が挙げられるが、これらに限定されない。水性コロイド状ポリマーディスパージョンまたはリディスパージョン(re-dispersion)(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L30D-55、EUDRAGIT(登録商標)L100-55、EUDRAGIT(登録商標)S100、EUDRAGIT(登録商標)preparation 4110D(Rohm Pharma);AQUATERIC(登録商標)、AUQACOAT(登録商標)CPD30(FMC)、KOLLICOAT MAE(登録商標)30D及び30DP(BASF)、及びEASTACRYL(登録商標)30D(Eastman Chemical)が挙げられる)も腸溶性コーティングとして用いられ得る。
【0024】
徐放を達成するのに有用な非腸溶性ポリマーとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、脂肪酸及びこれらのエステル、ワックス、ゼイン、及び水性ポリマーディスパージョン(例えば、EUDRAGIT(登録商標)RS及びRL 30D、EUDRAGIT(登録商標)NE 30D、AQUACOAT(登録商標)、及びSURELEASE(登録商標))が挙げられる。上記ポリマーと親水性ポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL(登録商標)、Hercules Corp.)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL(登録商標)Dow Chemical Corp.))との組み合わせが用いられ得る。この組み合わせは、放出プロフィールを所望されるものに調整(tailor)することを可能とする。
【0025】
別の好ましい実施形態において、透過性増強賦形剤は、コートされた顆粒中に含まれ、そして薬物層形成された球が、別個のペレット中に含まれる。この実施形態において、顆粒状透過性増強賦形剤は、上記のような特定の粒径範囲の商業的供給者から得られるか、または所望のサイズ分布を達成するように篩い分けされ得る。これらの賦形剤顆粒は、次いで、上記のような腸溶性または非腸溶性ポリマー(単数または複数)でコートされる。薬物含有(活性)ペレットは、ノンパレイルシード(nonpareil seed)(例えば、シュガースフィア)上に薬物の溶液(薬物と複合体を形成する1つ以上のポリマーを伴うまたは伴わない)の層形成によって別個に調製される。活性剤ペレットは、次いで、腸溶性または非腸溶性ポリマー(単数または複数)のいずれかでコートされる。コートされた活性剤ペレット及びコートされた透過性増強賦形剤は、次いで、適切なサイズのカプセル中に充填されるか、または錠剤へと圧縮される。
【0026】
なお別の好ましい実施形態において、薬物と複合体を形成するポリマーを伴いまたは伴わず、そして好ましくは他の不活性の賦形剤を伴う、活性剤及び透過性エンハンサ(単数または複数)を含む組成物が、混合され、そしてローラーコンパクションによって造粒される。得られる顆粒は、ファイン(fine)を除去するために篩い分けされ得る。これらの顆粒は、必要に応じて、カスタマイズされた放出プロフィールを達成するために、上記に列挙した腸溶性または非腸溶性ポリマーでコートされ得る。コートされたまたはコートされていない顆粒は、硬カプセル中に充填され得、またはさらに錠剤へと加工される。
【0027】
別の好ましい実施形態において、活性剤と複合体を形成するポリマーを伴うまたは伴わない、薬物及び透過性増強剤(単数または複数)、ならびに好ましくは他の、不活性の、賦形剤は、高剪断造粒機を用いて混合及び造粒される。結合剤溶液または水(結合剤が乾燥賦形剤として組み込まれる場合)が、造粒液として用いられる。得られる湿潤塊は、エクストルーダーデバイスを用いて押出し成型される。糸状押出物は、次いで、マルメライザー(スフェロナイザー)を用いてスフェロナイズ(spheronize)される。得られるペレットがオーブンまた流動層プロセッサ中で乾燥される。顆粒は、非腸溶性または腸溶性ポリマーでコートされても、されなくてもよい。コートされたまたはコートされていない顆粒が、カプセル中に充填、または錠剤へと加工され得る。
【0028】
活性薬物:透過性増強賦形剤の比率は、約1:1〜約1:10の間で変化し得る。好ましい比率は1:5である。
【0029】
製剤中の活性薬物の量は、その意図される用途について所望される治療剤の用量により必然的に定まる。例えば、塩化トロスピウム製剤は、製剤の型及び投薬レジメンに依存して、10mg〜80mgの薬物を提供するように調製される。透過性増強賦形剤の量は、用いられる透過性エンハンサの型に依存して変化し得る。有機酸の場合、1:5〜1:100の薬物:透過性増強剤比率が用いられ得る。有機酸が複合体形成(complexing)ポリマーと混合される場合、有機酸:複合体形成ポリマーの比率は、いずれの場合も約1:1〜約9:1であり得る。
【0030】
ヒト患者における頻尿、尿意促迫、夜間多尿、及び不安定膀胱(detrusor instability)に関連する切迫尿失禁、切迫症候群(urge syndrome)、及び/または不安定膀胱(detrusor hyperreflexia)の有効な治療のための塩化トロスピウムの送達のための医薬製剤は、患者への経口投与の際に塩化トロスピウムの徐放を提供する徐放組成物;及び1つ以上の有機酸を含む(塩化トロスピウム:有機酸の比率は1:5〜1:100の比率である);ここで、この医薬製剤は、さらなる塩化トロスピウムの投与を伴いまたは伴わずに24時間までの経過にわたり患者における塩化トロスピウムの有効なレベルを維持するのに十分である。塩化トロスピウムの総用量は、約20mg〜70mgであり得、これは、ヒト患者において、
【0031】
【数1】

【0032】
の曲線下面積を有する血漿濃度対時間曲線をもたらす。血漿濃度は、約1.5ng/ml〜約6.0ng/mlの最大濃度を有し得る。血漿濃度は、約0.5ng/ml〜約1.5ng/mlの最小濃度を有し得る。この血漿濃度曲線の最大濃度の値には、経口投与後、約3〜約24時間で達し得る。
【0033】
ヒト患者における頻尿、尿意促迫、夜間多尿、及び不安定膀胱に関連する切迫尿失禁、切迫症候群、及び/または不安定膀胱の有効な処置のための塩化トロスピウムの送達のための医薬製剤は、患者への経口投与の際に塩化トロスピウムの即時放出を提供する即時放出組成物;及び1つ以上の有機酸を含む(塩化トロスピウム:有機酸(単数または複数)の比率が1:5〜1:100の比率である);ここで、この医薬製剤は、さらなる塩化トロスピウムの投与を伴わずに少なくとも10時間までの経過にわたり患者における塩化トロスピウムの有効なレベルを維持するのに十分である。1日当りの塩化トロスピウムの総用量は、約30mg〜80mgであり得、これは、ヒト患者において、
【0034】
【数2】

【0035】
の曲線下面積を有する血漿濃度対時間曲線をもたらし、血漿濃度は、約1.5ng/ml〜約6.0ng/mlの最大濃度を有し得る。血漿濃度は、約0.5ng/ml〜約1.5ng/mlの最小濃度を有し得る。この血漿濃度曲線の最大濃度の値には、経口投与後、約3〜約24時間で達し得る。
【0036】
保護オーバーコート及び放出制御コーティングも、周知の材料を用いそして公知の様式で、本発明の組成物に適用され得る。
【0037】
他に規定されない限り、本明細書中で用いられる全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、これらの全体が本明細書中に参考として援用される。矛盾を生じる場合、定義を含め、本明細書が支配する。さらに、材料、方法及び実施例は、例示のみであり、そして限定することが意図されない。
【0038】
ここで、本発明は、以下の実施例を用いて詳細に記載される;しかし、本発明の範囲は、以下の例示的な実施形態に限定されることは意図されておらず、またそうされるべきではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
透過性増強賦形剤のCaco-2細胞スクリーニング
1%濃度までの透過性増強賦形剤溶液を、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、pH7.4中に調製し、そして一晩攪拌した。これらの溶液を、0.45mm Teflon (登録商標)Acrodisc filterを用いて濾過した。塩化トロスピウム(16mg/ml)のストック溶液をHBSS中に調製し、賦形剤溶液中へ160ug/mlまで希釈し、一晩攪拌した。Caco-2細胞株の透過性試験を3連で実施した。Caco-2モノレイヤーの完全性を、細胞毒性アッセイを用いる実験後にモニターした。図1に示されるように、有機酸を含む複数の製剤が、トロスピウムの透過性を予想外に有意に増強させた。
【0040】
実施例2
薬物(単数または複数)及び増強賦形剤を含む製剤の調製ならびに溶解媒体中での薬物及び増強賦形剤の放出パターン
商業的供給者から購入した不規則なクエン酸顆粒を、流動層コーター造粒機において、1:5の薬物:クエン酸比で、トロスピウムを用いてコートした。第一に不規則な形状のクエン酸顆粒を、Eudragit(登録商標)L30-55を用いて5%の重量増加までコートし、引き続きOpadry(登録商標)whiteを用いて2%の重量増加までコートした。次いで、得られる顆粒を、結合剤としてHPMC E5(1.15%)を含む塩化トロスピウム(17.7%)溶液から塩化トロスピウムでコートした。次いで、これらの顆粒を、Eudragit(登録商標)L30D55、引き続きOpadry(登録商標)Whiteを用いて、夫々、40%及び2%の重量増加までコートした。これらの顆粒は、最後のコーティングが適用された後、これらの不規則な形状を維持していた。図2は、最初の2時間について希HCl、pH1.1、引き続きリン酸緩衝液(pH6.8)中で得られる平均溶解プロフィールを提供する。
【0041】
実施例3
トロスピウムコートされたクエン酸顆粒を、実施例2と同一の方法で製造した。次いで、これらの顆粒を、Eudragit(登録商標)FS30D、引き続きOpadry(登録商標)whiteで、夫々40%及び2%の重量増加までコートした。図3は、平均溶解プロフィールを提供する。
【0042】
実施例4
腸溶性ポリマーで40%の重量増加までコートされた別個の活性ペレット及びエンハンサペレット
クエン酸顆粒及び活性剤ペレット(トロスピウム層形成されたシュガースフィア)を、別個に、Eudragit(登録商標)L30D-55L、引き続きOpadryを用いて、夫々、40%及び2%重量増加までコートした。トロスピウム層形成されたシュガースフィア(活性剤ペレット)を、Glatt’s流動層プロセッサにおいて、市販の糖球体を塩化トロスピウム溶液でコートすることによって製造する。コートされた活性剤及びエンハンサのペレットを、カプセル中で合わせ、そしてクエン酸及びトロスピウム両方の溶解について試験した。図4は、クエン酸及びトロスピウムについての平均溶解プロフィールを示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本明細書中実施例1における塩化トロスピウム製剤の透過性試験の結果を示す。
【図2】図2は、Eudradit L30D-55、引き続きOpadry Whiteでコートされた、トロスピウムコーテッドクエン酸コアについての平均溶解プロフィール(n=6)を示す。溶解媒体:0−2時間:0.1N HCl、pH1.1;2−8時間:リン酸緩衝液、pH6.8。USP Apparatus II、37℃で50RPM。
【図3】図3は、Eudradit FS30D、引き続きOpadry whiteでコートされた、トロスピウムコーテッドクエン酸コアについての平均溶解プロフィール(n=6)を示す。溶解媒体:0−2時間:0.1N HCl、pH1.1;2−8時間:リン酸緩衝液、pH7.5。USP Apparatus II、37℃で50RPM。
【図4】図4は、別個にコートされそしてカプセル中に組み合わせられたクエン酸及びトロスピウムペレットを含有するカプセルからのトロスピウム及びクエン酸の平均溶解プロフィール(n=6)を示す。溶解媒体:0−2時間:0.1N HCl、pH1.1;2−8時間:リン酸緩衝液、pH7.5。USP Apparatus II、37℃で50RPM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸と共に治療用第四級アンモニウム化合物を含む、増強された胃腸透過性を有する経口医薬剤形。
【請求項2】
前記有機酸が短鎖有機酸である、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
前記短鎖有機酸がクエン酸である、請求項2に記載の剤形。
【請求項4】
前記第四級アンモニウム化合物がクリジニウム、グリコピロレート、プロパンテリン、またはトロスピウムである、請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
前記第四級アンモニウム化合物が塩化トロスピウムである、請求項4に記載の剤形。
【請求項6】
その分子中に電気陰性エレメントを有する少なくとも1つのポリマーをさらに含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリマーがセルロース系ポリマー(cellulosic polymer)、アルギネート、ガム類、ポリアクリル酸誘導体、ポビドン及びその誘導体、ポリエチレンオキシド、またはポリビニルアルコールから選択される、請求項6に記載の剤形。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリマーが、グアーガム、キサンタンがム、カルボマー、カラギーナン、またはクロスポビドン(crospovidone)から選択される、請求項7に記載の剤形。
【請求項9】
前記少なくとも1つのポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、粉末セルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、またはエチルセルロースから選択される、請求項7に記載の剤形。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリマーがHPMCである、請求項9に記載の剤形。
【請求項11】
治療用第四級アンモニウム化合物の層により包まれた透過性増強剤の顆粒状コアを含み、その全体が腸溶性または非腸溶性ポリマーコーティングにより包まれている、剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−510655(P2007−510655A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538424(P2006−538424)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/036393
【国際公開番号】WO2005/046663
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506339316)スパーナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】