説明

バイオコンポジット及びその製造方法

一般的に、本発明は、バイオポリマーおよびバイオコンポジットの材料および構造物、ならびにこれらの作成方法および使用方法に関する。ある実施形態において、本発明は、配向したコラーゲンによるバイオコンポジットの材料および構造物、ならびに作成方法に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的に、本発明は、バイオポリマーおよびバイオコンポジットの材料および構造物、ならびにこれらの作成方法および使用方法に関する。ある実施形態において、本発明は、配向したコラーゲンによるバイオコンポジットの材料および構造物、ならびに作成方法に向けられている。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンゲル、包帯、スポンジおよび繊維は、幹細胞の担体として用いられてきた。コラーゲンは多くの組織内に存在する天然タンパク質である。コラーゲンは組織に引っ張り強さを与え、また、細胞が結合、遊走および増殖するための接着部位を提供する。しかし、コラーゲンゲルおよび微粉砕コラーゲンは引っ張り強さを欠き、圧力下で散逸する傾向があるため、規定された位置に細胞を維持する役割にはあまり適さない。
【0003】
コラーゲンは、繊維に再構成可能な溶解性タンパク質として、種々の組織から純粋な形で単離することができる。一般的に、繊維は、様々な組織において繊維が示す上部構造を欠いている。このことは、多くの医療用途でコラーゲンが成功裡に用いられることを制限してきた。
【0004】
心臓、横紋筋、皮膚、骨および軟骨、脊髄等への組織損傷はしばしば進行し、周囲正常組織の破壊を引き起こし、損傷領域を広げ、組織機能を著しく損なう。直接注射により、損傷領域に種々の因子または細胞を導入することが可能であり、更なる損傷を防止し、損傷領域を修復することさえ可能であることが、最新の概念により示唆されている。実際、前臨床治験ならびに臨床治験により、組織損傷部位に間葉系幹細胞が注射された場合、心機能が改善されることが示された。しかし、このような研究は、注射された細胞の著しい量が組織から漏れ出し、残った細胞のほとんどが急速に死ぬことも示した。従って、種々の細胞を損傷組織の特定部位に送達することを可能にし、その生存および増殖を維持する装置が必要である。しかし、異なる組織の物性は、著しく異なる(横紋筋を有した心筋と皮膚または脊髄を比較のこと)。従って、送達担体は、物理的要因があまり調和しないことによる組織機能における変化を引き起こさずに、特定の組織に送達担体を位置させることが可能なほどに十分な強度を有しているべきである。これには、用いられる組織に適した物性を備えた材料が要求される。また、細胞は、その生存、遊走および特定の修復因子の生産を補助する因子および表面を必要とする。手短に言えば、損傷組織の治療は、幹細胞および他の細胞を特定の部位に送達および維持し、この組織が生存し、危険な状態にある組織を維持する因子を産出することを可能とする新規な装置により改善されるべきである。
【0005】
腱および靱帯の損傷は、成人に影響を与える最もありふれた健康問題である。175,000件の前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament(ACL))再建が2000年に米国で20億ドルを超える費用で行われたと推定されている。米国のみで毎年、回旋筋腱板の外科的再建を必要とする5万人の患者およびテニス肘の新患が5百万人存在する。加えて、よく走る人の11%がアキレス腱障害を患う。2000年、肩部痛治療により米国政府は70億ドルに至る費用を負担し、腱および靱帯の損傷についての総費用は、年間300億ドルと推定された。Chen,J.,Xu J.,Wang A.,Zheng M.,2009.Scaffolds for tendon and ligament repair: review of the efficacy of commercial products.Expert Rev.Med.Devices.6.1:61−73を参照。
【0006】
手足の腱および靱帯を修復するための現行の方法は、ほんの僅かしか成功してない。あるケースでは、瘢痕組織が発達する間の4週間の間、関節が固定される。機械的特性に劣るこの瘢痕組織は、元の腱/靱帯の機能を引き受けなければならないが、不成功率が高い。他のケースでは、骨に固定される非吸収性縫合糸が使用される。これらの縫合糸は適切な弾性を欠いており、しばしば、免疫反応を誘起する。他のケースでは、修復が不可能であり、利用可能な交換手順には様々な制限がある。
【0007】
現在の診療および研究実践においては、動物およびヒトの移植片を日常の診療での主要な材料として用い、腱および靱帯の欠陥を修復する。生物学的な代用物としては、自家移植片、同種移植片、および異種移植片が挙げられる。
【0008】
膝蓋腱およびハムストリング腱の自己移植片は、組織修復における「至適基準」と考えられており、拒絶反応を避けるのに通常好ましい。しかし、これらの自家移植片は、多くの欠点を抱えている。例えば、自家移植では、ドナー部位罹患、回復時間の増加、および/または収集部位において見込まれる疼痛に加え、収集部位での感染、神経損傷、および膝蓋骨骨折の原因となり得る更なる手術を患者に行うことが必要となる。ACL再建のためのハムストリング腱を使用することの更なる欠点は、腱骨接合部分の不安定性により、効果的に腱骨が治癒されないことであり、このことは患者の回復に影響を与える。
【0009】
同種移植片は屍体の腱、真皮および他の組織から得られる。異種移植片は動物の腱、小腸粘膜下組織、真皮および皮膚、ならびに心膜から収集される。同種移植片および異種移植片は、ヒトの腱と同様の機械的特性を備えたI型コラーゲンから主に構成される。しかし、同種・異種移植片は、潜在的に疾病または感染症を伝染させる可能性があり、宿主からの好ましくない免疫反応を誘発させ得る。
【0010】
人工移植片は、短期的には良好な結果を示したが、長期的な予後は不良であり、最終的には関節炎および滑膜炎へとつながる、断片化、新しい組織による遮蔽応力、疲労、クリープおよび摩耗粉による不成功率は40〜78%である。
【0011】
現在の細胞播種方法は、a)細胞−ゲルコンポジットを足場の領域に送達し、b)静的状態または動的状態で足場に細胞懸濁液を送達する、ことを含む。しかし、これらの方法には、例えば、高密度な繊維性マトリックスまたは足場への細胞付着の効率が悪いこと、および、ゲルシステムの機械的強さが低いこと、といったいくつかの不都合が存在する。これらの不都合により、著しい数の細胞を高密度の組織グラフトに播種することが非常に困難になる。従って、現在の技術の限界によって、組織修復のための大きな組織グラフトの効率を改善するために幹細胞を使用することが妨げられている。この限界に取り組むため、播かれた細胞を移植前に培養腱に浸潤させるために部分的な厚み方向への切開および超音波処理が開発された。切開または超音波処理がないと、腱表面に播かれた外因性細胞は、腱に侵入するのが困難である。しかし、切開および超音波処理があれば、グラフトの機械的強度が減少し、臨床応用の可能性を限定してしまう。
【0012】
いくつかの研究グループが、Hairfield−Stein M.et al.2007.Development of Self−Assembled,Tissue−Engineered Ligament from Bone Marrow Stromal Cells.Tissue Engineering.13.4:703−710に記載のような、腱のためのインビトロでの新生靱帯の組織工学および靱帯置換を試みた。この方向への最初の有望な結果の1つは、Goldstein JD et al.in Goldstein,JD,et al.1989.Development of a Reconstituted Collagen Tendon Prosthesis.The Journal of Bone and Joins Surgery.71.A.8:1183−1191;and Dunn et al.Dunn,MG.et al.1992.Anterior cruciate ligament reconstruction using a composite collagenous prosthesis.A biomechanical & histological rabbit study.Am J Sports Med.20.507−515により、公表された。構築されたコラーゲン繊維の足場は、それらを固定するコラーゲンゲルによっておよびコラーゲンゲルなしに、異なる構成で束ねられる。Dunnらおよび他のグループは、播いた細胞によりおよび播いた細胞なしにコラーゲンの足場を用いた。このアプローチの主要な問題は:a)足場のコラーゲンの分解速度が、新しく合成されたコラーゲンの速度より高く、新生靱帯がインビボのローディングにおいて支持できなかったこと、b)生産コストが高過ぎ、再現性が低いこと、であった。
【0013】
分解速度を下げるために、いくつかの研究グループは絹および他の合成材料を用いた。これにより、酵素的分解の問題が解決されたが、免疫反応、繊維症、および摩耗粉を含む他の問題を生み出した。細胞外基質の足場を除去する試みは、Calve,S.,Dennis RG,Kosnik PE,Baar K,Grosh K,Arruda EM.2004.Engineering of functional tendon.Tissue Engineering.10,755−761に記載のような、いわゆる「機能的組織工学」または「自発的3次元組織発達」という新しいアプローチにつながった。この方法は、新しく形成された組織の生理学的または機械的特性を制限する、既存の人工または生物学的足場の材料特性に大きく依存しない。むしろ、コラーゲンゲル、フィブリンゲル、マトリゲルまたは合成ゲルのような培地は、新しく形成された組織の形成を組織化するために用いられる。Chen et al in Chen X,Zou XH,Yin GL,Ouyang HW.2009.Tendon tissue engineering with mesenchymal stem cells and biografts: an option for large tendon defects? Frontiers in Bioscience.Sl.23−32は、腱の修復のためのこれらのおよび他の幹細胞組織工学方法の包括的なレビューである。しかし、上記で強調されている問題(a)および(b)は、機能的な組織工学においてもなお有効である。
【0014】
ある程度の配向異方性を有した再構成されたコラーゲン構造を与えるための様々な努力がなされてきた。機械的荷重、マイクロ流体チャネル、流れおよび磁界により誘起される配列、電気化学処理、組織内の流れ、高磁場、配向電界紡糸法、ラングミュア−ブロジェット堆積法および押し出し法による、分子およびフィブリルの配列が研究所で示されてきた。これらの工程のそれぞれによって産出されたコラーゲン基質は、首尾よく異なる細胞の配列を引き起こした。しかし、これらは自然の細胞外基質(ECM)をまねたものではなく、例えば、制御されたフィブリル径、配列されたフィブリル、しわ、周期性および角分布等の必須の自然な空間的複雑性を欠いている。二次構造が欠けているため、合成の足場の強度が低くなり、細胞の生存および細胞の行動に影響を与える。Builles et al.(2007)は、新しく合成されたECM上の細胞環境の重要性を示している。フィブリルサイズのよりよい制御を達成し、組織様のパターンの形成を示すものもある。しかし、それらが産出する構築物のサイズに問題があり、長い工程が必要である。腱及び靭帯の組織は、強さ、柔軟性および修復が行われるために細胞が付着し遊走するためのガイドを必要とするため、ナノ構造およびミクロ構造ならびにこれらの配向の重要性は、腱および靱帯にとって特に重要である。例えば、ヒト組織の細胞−細胞外構造を扱った最近のレビューでは、「組織工学における足場構造の重要性は、次第に認識されつつあり、これが、細胞の組織(例えば、配列またはクラスター形成)および/または検討中の組織のECMを模倣することを目標としつつ、等方性足場から不均一かつ異方性の「生体模倣型」足場へと、足場の設計の趨勢を変化させた」と述べているが、ECM内のフィブリル配向または配列についての議論はない。30.Singh M.,Tech B,Berkland C,and Detamore MS.2008.Strategies and Applications for Incorporating Physical and Chemical Signal Gradients in Tissue Engineering.Tissue Engineering.Part B.14.4:341−366を参照。
【0015】
つい最近では、皮膚様、腱様、整列編みおよび他のフィブリル構造を備えた薄いフィルムを製造するためにガラスやプラスチックの基質に規則的な配列でコラーゲンを堆積させる方法が、米国特許出願公報第2009/0069893号および米国特許出願第11/951,324号に記載されており、そのすべては、参照により本明細書に組み込まれているものとする。重要なことは、これらの整列された規則的なコラーゲン堆積物は、これに適用された細胞の配向の向きを決めることである。特に、細胞はフィルムに付着し配列し、そして配列の軸に沿って遊走する。このようなフィルムは細胞生存、遊走および増殖を促進する成長因子等の因子によって処理することができる。他のバイオポリマーは組織へ細胞を送達することができ、そして、送達するように考案されてきたが、多くは生体適合性を欠き、消失せず、もしくは組織に組み込まれず、または、組織と極めて異なる物性を有し、その機能を変えてしまう。
【0016】
腱、皮膚および他のコラーゲンを基礎としたフィブリル組織を模倣するための生体材料を開発するための多大な努力にもかかわらず、今日まで、これらの材料を産出するための工業的な製造方法は存在しない。従って、更なる大きな進展が切望されている。
【発明の概要】
【0017】
一般的に、本発明は、バイオコンポジットの材料および構造物、ならびにこれらの作成方法および使用方法に関する。ある実施形態において、本発明は、配向コラーゲンに基づくバイオコンポジットの材料および構造物、ならびに作成方法に向けられている。ある実施形態において、コラーゲンが様々な形態(整列された形態、ねじれた形態、編まれた形態またはこれらの組み合わせ)に配列された、コラーゲンに基づくフィルムの形成方法が提供される。コラーゲンに基づくフィルムは、溶媒空気界面で水性溶媒および力を連続的に適用することにより、個々の擬繊維へと転換または形成され得る。ある実施形態において、このような擬繊維は、その強度を高めるために架橋することができ、また、成長因子を貯蔵する能力を高めるためおよび/または水和作用を高めるためにヘパリン等の種々の因子または材料で処理することができる。
【0018】
ある態様において、本発明の実施形態は、所望の相のフィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを調製し;実質的に層流様式または方式でフィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを流し;および、フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを液相から固相へと変換させ配向したフィブリルバイオポリマーの材料を形成するステップを含む、配向したフィブリルバイオポリマーの製造方法を提供する。ある実施形態において、フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルの所望の相は、液晶層である。ある実施形態において、フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルは、0.001Mから0.5Mの範囲のイオン強度を示し、pHは2から9の範囲である。他の実施形態において、イオン強度は、0.1Mから0.3Mの範囲であり、pHは2から5の範囲である。ある実施形態において、フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを液相から固相へと変換させるステップは、この溶液またはゲルを乾燥させることを含む。乾燥は、例えば、湿度、温度および静電気的な条件に限定されないがこれらの環境条件を制御することにより蒸発を促進させる等の種々の方法により、実現することができる。
【0019】
ある実施形態において、フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルは、機能化された基板上を流され、堆積される。この基板は、接着、分離を促進する化合物、フィブリルの組織化に影響を与える化合物等のいくつかの所望の化合物によって機能化されていてよい。
【0020】
特に有利には、本発明の実施形態のバイオポリマーは更に加工され、バイオコンポジットの材料および構造物を形成してもよい。一実施形態において、1種以上のリボンの形態を有した配向したフィブリルの材料が提供される。ある実施形態においては、層表面に平行ないずれかの方向の平均的なフィブリル配向を有した層の形態である、配向したフィブリルバイオポリマー材料が提供される。他の実施形態において、この層が、層表面に垂直な方向の平均的なフィブリル配向を有している。ある実施形態においては、チューブの軸と平行またはある角度をなしている平均的なフィブリルの配向を有したチューブの形態のフィブリルバイオポリマー材料が提供される。配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、シングルクリンプパターンを有していてもよい。あるいは、配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、クリンプ構成間に任意の角度を有したダブルクリンプパターンを有していてもよい。ある実施形態において、配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、左巻きらせんおよび右巻きらせんのフィブリルによって形成されるクリンプパターンを示す。他の実施形態において、配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、実質的に等しい錯角で実質的に平行な線のV字型の形態のクリンプパターンを有している。
【0021】
別の態様において、本発明の実施形態は、バイオポリマー材料を実質的にpHが中性の溶液に浸すこと;および、該バイオポリマー材料を、該材料が気液界面で擬繊維に折りたたまれるようにこの溶液から取り出すことを含む、擬繊維等の1種以上のフィブリルバイオポリマーの形成方法を提供する。形成されたフィブリルバイオポリマーの擬繊維は、所望の用途に応じて、乾燥され、架橋され、および/または殺菌されてよい。
【0022】
更に有利には、本発明のフィブリルバイオポリマーの擬繊維は、バイオコンポジットの材料および構造物へと形成されてもよい。ある実施形態においては、少なくとも1つの配向したフィブリルバイオポリマーの材料および生分解性の生体適合性のマトリックスを含む、バイオコンポジットの構造物が提供される。他の実施形態において、任意の配向を有し、生分解性の生体適合性のマトリックスによって結合された複数の配向したフィブリルバイオポリマーの材料を含む、バイオコンポジットの構造物が提供される。生体適合性のマトリックスは、例えば、これらに限定される、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン類、バナジン酸塩、リン酸カルシウム、生きた細胞、成長因子およびその組み合わせ等の、いずれかの適した材料により構成されていてもよい。
【0023】
ある実施形態において、配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、細胞および組織培養用途におけるマトリックスおよび基板として使用されることが見出される。他の実施形態において、配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、インビボで細胞をガイドする足場として用いられる。更に別の実施形態において、配向したフィブリルバイオポリマーの材料は、所望の部位または標的へと成分を送達するように構成された送達ビヒクルを含む。ある例において、この材料は多血小板血漿の成分を送達する。別の実施形態において、この材料は、組織修復および組織再生のために生きた細胞を送達するように構成されている。別の実施形態において、この材料は、ペプチド、薬剤、成長因子および小分子を送達するように構成されている。
【0024】
ある実施形態において、バイオポリマー材料は、(i)平行なくさび状のレールの形態を有し、その土台が基板と同一平面内に存在する、少なくとも2つの長軸方向の縦材;(ii)少なくとも1つの平らな面を有し、少なくとも1点で前記レールのそれぞれと接する前記縦材の間のブリッジの形態を有した交差部材;および(iii)前記レール上の予め設定されたいずれの位置でもブリッジが厳密に固定されることを確保するクランプ装置、ここで、前記ブリッジは、前記ブリッジの平らな面が基板の平面と0〜10分角以内のある一定の二面角をなし、前記平らな面と前記基板の面の間の隙間が5〜50ミクロンの幅であるように前記レールの双方に沿って動かすことができる、を含むリキッドフィルムアプリケーターによって製造される。
【0025】
ある実施例においては、バイオポリマー材料は、コラーゲン溶液を第一のプレートおよび第二のプレートに運ぶ、ここで、前記第二のプレートは前記第一のプレートと5〜50ミクロンの幅の間隔で実質的に平行に保持され、コラーゲン溶液は前記第一のプレートと第二のプレートの間に捕捉される;および、前記第二のプレートを前記第一のプレートと平行に移動させ、実質的に層流様式または方式でコラーゲン溶液を流すために前記コラーゲン溶液上に適したせん断力を生じさせる、ここで、前記第一のプレートは前記移動ステップの間静止した状態が保持され、そして、第二のプレートを移動させる方向はコーティング方向である、ステップによって製造される。ある実施例においては、コーティング方向は前記一軸方向に平行である。ある実施例においては、前記コラーゲン溶液の濃度は、約20mg/ml〜100mg/mlである。ある実施例においては、前記コラーゲン溶液の濃度は、少なくとも25mg/mlである。ある実施例においては、コラーゲン溶液は、ネマチック液晶状態にある。ある実施例においては、コラーゲン層は、濃縮液体コラーゲン溶液のせん断によって製造される。
【0026】
ある実施形態において、バイオポリマー溶液は、コラーゲンタイプI、II、III、VIおよびXIの少なくとも1種を有しているがこれらに限定されない(生物学的又は化学的に改変されたコラーゲン等を含む)濃縮液体コラーゲン溶液、および所望により、これらに限定されないが、例えば、前記コラーゲンの配向または接着を促進することのできる添加剤等の1種以上の添加剤を含む。ある実施形態においては、添加剤はATPである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面を通して同一の参照記号は同一の部分を表す添付の図面と共に、以下の詳細な記載を考慮すれば、本発明の上述および他の目的は明らかになるであろう。
【図1】図1は、腱の階層構造を描いた概略図である。
【図2】図2A〜2Cは、それぞれ、ブタの僧房弁から取った腱索内のクリンプしたコラーゲン繊維のらせん特性を示すSEM写真、数学モデルでFreedおよびDoeringが用いたつる巻きばねの図、およびらせん状コラーゲン繊維の応力伸び曲線の図である。
【図3】図3A〜図3Fは、本発明の実施形態に従って形成された種々のコラーゲンフィルムまたは材料を示した原子間力顕微鏡(atomic force microscope (AFM))写真である。
【図4】図4A、図4Bは、それぞれ、ソコダラの腱のSEM画像、および新規なウシコラーゲン1マトリックスのAFM画像である。
【図5】図5A〜図5Cは、本発明の実施形態に従って形成された種々のコラーゲンフィルムまたは材料を示したAFM写真である。
【図6】図6A、図6Bは、それぞれ、ブタ僧房弁のSEM画像、および本発明の腱様バイオポリマーマトリックスのAFM画像である。
【図7】図7A、図7Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従う単一コラーゲン擬繊維、およびコラーゲン糸を示す写真である。
【図8】図8A〜図8Cは、右巻きおよび左巻きの配向またはクリンプを示すダブルスーパーへリックス構造を図示したものである。
【図9】図9は、本発明の方法を実施するために用いることができる装置の一実施形態の概略図である。
【図10】図10は、本発明のある実施形態に従う整列編み配向を有した、ヘリカル、非入れ子状態のバイオポリマー材料のAFM画像である。
【図11】図11は、本発明のある実施形態に従うダブルクリンプバイオポリマー材料のAFM画像である。
【図12】図12A〜図12Cは、それぞれ、本発明の実施形態に従うバイオコンポジットの構造物を形成する、配向したコラーゲン層上の、ヒト繊維芽細胞、MSCおよび筋肉細胞を示す写真である。
【図13】図13は、本発明の方法を実施し、本発明の実施形態に従う擬繊維を形成するために用いることのできる装置の一実施形態の概略図を示す。
【図14】図14は、配向したコラーゲン擬繊維上に播かれ5日後の増殖し擬繊維から遊走する、本発明の実施形態に従う細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述の一般的記載および以下の詳細な記載の双方は、例示および説明のみを目的とするものであり、本明細書に記載の組成物、フィルムおよび方法を制限するものではないと理解されるべきである。本出願において、特に言及のない限り、単数の使用は複数を含む。また、特に言及のない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。同様に、「含む」、「包含する」は限定をすることを目的とするものでない。用語「層」または「フィルム」または「薄膜」または「マトリックス」は、本明細書を通じて同義的に用いることができる。
【0029】
一般的に、本発明は、バイオコンポジットの材料および構造物、ならびにこれらの作成方法および使用方法に関する。ある実施形態において、本発明は、配向したコラーゲンによるバイオコンポジットの材料および構造物、ならびに作成方法に向けられている。ある実施形態において、コラーゲンが様々な形態(整列された形態、ねじれた形態、編まれた形態またはこれらの組み合わせ)に配列された、コラーゲンに基づくフィルムの形成方法が提供される。コラーゲンに基づくフィルムは、溶媒空気界面で水性溶媒および力を連続的に適用することにより、個々の擬繊維へと転換または形成され得る。ある実施形態において、このような擬繊維は、その強度を高めるために架橋することができ、また、成長因子を貯蔵する能力を高めるためおよび/または水和作用を高めるためにヘパリン等の種々の因子または材料で処理することができる。
【0030】
以下の限定されない定義が本明細書において用いられる。「フィブリルバイオポリマー」は、様々な種類のコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、絹、他のポリペプチドおよびこれらの組み合わせを指す。
【0031】
「配向したフィブリルバイオポリマーの材料」は繰り返しパターンを有した材料を指す。特に、これは、結晶性のフィブリルバイオポリマーまたは半結晶性のフィブリルバイオポリマーであってよい。ある実施形態において、バイオポリマーは、その表面が繰り返しパターンを有していれば、「配向したもの」と言及される。特に、表面パターンは、17種の結晶群のうちの1種により決定することができる。配向は、偏光分析法、偏光顕微鏡法、レーザー回折法、X線回折法、原子間プローブ顕微鏡、電子顕微鏡のいずれかで評価することができる。
【0032】
「フィブリルバイオポリマー溶液およびゲル」は、濃度、温度、pH、イオン強度および添加剤に依存して、種々の相をとる。ある実施形態において、これらの相は、長期の配向秩序(例えば、等方性、コレステリック、スメスチック、ネマチック、六角形)を有した液晶相である。偏光顕微鏡で見ると、異なる液晶相は異なる模様を有していることがわかるであろう。異なる相は、光の回折および散乱、ミュラーマトリックス偏光分析法、密度変化および示差熱測定により認識することができる。コラーゲン、ラミニン、DNA、多くのポリペプチドおよび他のフィブリルバイオポリマーは、リオトロピック液晶材料の良い例である。少量の無機添加剤(例えば、オルトバナジン酸)が相転移を変化させ得る。コラーゲン相形成についての包括的な情報が、Mosser G,Anglo A,Helary C,Bouligand Y,Giraud−Guille MM.2006;Dense tissue−like collagen matrices formed in cell−free conditions;Matrix Biology.25:3−13に示されており、そのすべてが本明細書に参照によって組み込まれる。
【0033】
安定(層状)流条件を特定の液体相に適用すると、パターンが形成される。言い換えると、ある実施例において、バイオポリマーの溶液またはゲルは層状方式または層状様式に流される。このような流れの条件の限定されない例として:クエット流、テイラー‐クエット流、平面および線対称のポアズイユ流が挙げられる。
【0034】
環境条件(湿度、温度、UV、X線、電子線、電場、磁場)またはpHおよびイオン強度のようなフィブリルバイオポリマーの主要なパラメータの変化は、自己組織化工程をもたらし、配向した材料の液体/ゲル相から固相への転移を引き起こし得る。典型的な実施形態において、液体/ゲル相から固相への転移は、乾燥工程によって達成される。結果として得られる固相でのバイオポリマーのパターンは、液相におけるパターンおよび自己組織化工程に依存する。一実施形態において、コラーゲン溶液の高速乾燥工程により、径の小さいらせん状フィブリル(透明材料)が形成され、遅い乾燥工程により、径の大きいらせん状フィブリル(曇った材料)が形成される。薄いコラーゲン層(例えば、数ミクロン厚)の場合、得られる配向は実質的に、基板の化学的特性および物理的特性に依存する。ある実施形態において、配向を制御するために基板の機能化を用いることができる。
【0035】
「擬繊維」は、配向したコラーゲンの独立したリボンが、リボンの長軸の周囲に縦に巻き上げられ、静電力により決まった場所に安定して保持される場合に産出される。
【0036】
「糸」は、複数の擬繊維、典型的には3本以上の擬繊維を編み合わせることにより産出される。
【0037】
本明細書において「生分解性マトリックス」は、自然に分解することができ、生理環境で再吸収されることができる材料を指す。ここで、生分解性マトリックスは、バイオポリマーを互いに結合するために用いられる生分解性材料である。
【0038】
参考文献で議論された靱帯および腱の構造を簡単にレビューすることは有益である。分子レベルのコラーゲンの特性は、広範囲にわたって研究されており、よく理解されているが、腱および靱帯レベルでの特性および構造の理解が明らかではない。
【0039】
本発明のある実施形態において、哺乳類の体に見出される腱および靱帯と同じ構造を有した、製造された足場製品が記載されている。その方法は、分子グレードのコラーゲン、典型的にはタイプIから始め、独自の工程を用いて再構成し足場とする。この工程は細胞材料または他の生物学的材料なしに足場を形成する。これらの更なる成分は存在しないため、結果として得られる足場およびその基本的な幾何学的構造のより明確な画像を獲得することが可能である。そうすることにより、哺乳類動物のこれらの部位がいかに組織され、いかに形成されたかに関する、今日まで文献に報告されていなかった洞察が得られた。
【0040】
靱帯および腱の構造を記載する際、それぞれのレベルで明確な特性を有した組織の階層構造が存在する。それぞれのレベルがいかに定義されるかにより、研究者は、6、7または8つのレベルを特定する。以下の表1は、8つのレベルを記載するために典型的に用いられる用語を示す(“Tissue Mechanics”by Cowin & Doty,2007参照)。

【0041】
6つのレベル、すなわち、レベル2、3、4、5、7および8が図1に示される。本発明の教示を補助するため以下に説明をする。レベル1において、コラーゲン分子を構成するそれぞれのポリペプチドα鎖は、約1000アミノ酸残基からなる。それぞれの鎖は、直径約1.2nmの左巻きらせんで巻かれている。
【0042】
レベル2において、トロポコラーゲンすなわち「コラーゲン分子」は、およそ長さ300nmおよび直径1.5nmである。これは3つのポリペプチドα鎖からなる。これらの3つの左巻きらせんは、右巻きコイルへと撚り合わされ、三重らせんとなる。この三重らせんは、3つの左巻きらせんを含む右巻きコイルであるため、「スーパーへリックス」である。
【0043】
レベル3において、ミクロフィブリルは、5本鎖のコラーゲン分子により形成される。それぞれの一本鎖は、それらの間に不連続的な隙間をもって端部どうしが結合したコラーゲン分子を含んでなる。静電力により3本鎖が撚り合わされて左巻きのスーパースーパーへリックスとなり、直径3.5〜4nmのミクロフィブリルを形成する。
【0044】
レベル4において、サブフィブリルは10〜20nmの直径を有し、ミクロフィブリルのクラスターからなる。
【0045】
レベル5において、フィブリルは、サブフィブリルが縒り合わさり、ピッチが約1090nm、直径30〜500nmの右巻きスーパースーパースーパーヘリックスとなることによって形成される。ミクロフィブリルのコラーゲン分子の端部間の隙間が配列し、特徴的な67nmの「Dバンド」周期を形成する。
【0046】
レベル6において、繊維は、1〜20μmの直径を有し、フィブリルのクラスターからなる。
【0047】
レベル7において、繊維束は、波状の、うねりのある、波型またはジグザグと記載されてきたクリンプパターンに組織化された構造へと集められた繊維を含んでなる。クリンプの機能は、靱帯、腱、心膜等の張力を受ける組織に必要な弾性を提供することである。これらのクリンプは、圧縮力を大きく受ける骨コラーゲンでは起きない。細胞内殖は繊維束レベルで起きる。
【0048】
レベル8において、靱帯および腱は繊維束の束を含んでなる。繊維束の間には横方向の結合が存在しないため、互いに自由に滑動可能であり、これにより、滑らかに機能する機械的なアセンブリーが生み出される。
【0049】
例えば、A.D.Freed and T.C.Doering in Freed AD and Doehring TC.2005;Elastic Model for Crimped Collagen Fibril.J.Biomech.Eng.127.587−593による研究のような、腱および靱帯の機械的挙動に関する膨大な研究が存在する。これらの研究では、柔らかい受動的な組織は、荷重運搬の観点から、プロテオグリカンゲルに浸された主に2つの弾力性物質、コラーゲンおよびエラスチンを含んでなることが述べられている。また、繊維束はフィブリルの束を含んでなることが述べられており、中間の形態の「繊維」の考察はない。これらの研究では、クリンプの形成が、フィブリルのわずかなアスペクト比に関連していると提唱しており、繊維組織が外部荷重を受けない場合はいつでもエラスチンマトリックスの内部の回復力の下でバックリングする。このしわくちゃの構成はクリンプとして公知である。本発明はクリンプを生産する異なる機構を記載する。この機構はコラーゲン再生方法によるものであり、既存のコラーゲンバックリング現象とは異なる。
【0050】
単純化の仮定として、クリンプを形成するフィブリルは機械的なコイルばねと考えられると提唱している。この仮定は、クリンプコラーゲン組織の観察された非線形応力/ひずみ挙動によく合う。ここで、ばねは、図2Cに示される応力/ひずみ曲線の低応力(つま先領域)においてはコイルが引き伸ばされるまで線形な挙動を示す。その時点で、コイルは次第に堅くなり始め、曲線の傾きが連続的に増加する(かかと領域)。コイルが完全に引き伸ばされた後、挙動は再び線形になるが、傾きはずっと急になる(線形領域)。この曲線は、その形から「J」曲線として知られている。提唱された数学的モデルは、実験データによく合っている。
【0051】
図2Aは、ブタの僧房弁から取った腱索内のクリンプしたコラーゲン繊維のらせん特性を示すSEM写真である。図2Bは、数学モデルでFreedおよびDoeringが用いたつる巻きばねの図である。これは、らせんの中心線に沿って作用する中心力がらせんの他の領域にいかに移動されることを示している。なお、図2AのSEM写真は、左巻きらせんを示している一方、図2Bの図は右巻きらせんを示している。論文のどこにも、図の相違の記述はなく、また、右巻きか左巻きかの概念を議論しておらず、先行技術の理解および教示を欠いていることを例証している。
【0052】
この文献には腱および靱帯のクリンプのらせん特性に関する多くの参考文献があるが、右巻き左巻きについての議論を見出すことはできなかった。FreedおよびDoeringは、右巻き左巻きの記述がいかに見過ごされたかの具体例である。
【0053】
本発明のある実施形態において、精製したモノマーコラーゲンの溶液から作成されたマトリックス様の、生物学的同等性の再構成された腱の製造が記載されている。これらの新規なマトリックスは、以下に限られないが、a)生体適合性、b)フィブリル方向の高い機械的強度および「J」弾性特性、c)広い領域(2インチ×10インチ)にわたって欠陥がない、d)生体模倣(すなわち、ナノスケール〜マクロスケールにおいて自然の靱帯構造を近似させる)、そしてe)架橋の程度に応じた生分解性のいずれか1つまたはそれ以上の利点を含む。図3A〜図3Fは、本発明の実施形態に従うコラーゲンフィルムまたは膜のいくつかの例を示す。図4A、図4Bは、ソコダラの腱と本発明の実施形態に従って形成されたコラーゲンマトリックスとの比較を示す。マトリックスの複雑なクリンプおよび整列編み構造は、生体機能性を増大させるために所望の空間的勾配を備えた成長因子を含むことができる。フィブロブラスト、マイオブラスト、ニューロンおよび間葉系幹細胞は、これらのマトリックス上で良好な増殖、遊走および配列を示す。腱様マトリックスは、繊維構造または複層コンポジットの足場のいずれかに形成され得る。これらの足場は、患者の幹細胞および患者の血小板由来の因子に再配置することでき、実質的に治癒時間を減少させ効率を向上させることができる。本発明の実施形態により、体外で天然の組織の足場を産出することが可能となる。
【0054】
本発明のある態様において、バイオポリマー材料、層および/または構造物の製造法が提供される。ある実施形態において、基板上の多領域の半結晶性のフィブリルバイオポリマーが、主に短肢の溶液から形成され、これは、以下のステップを含む:基板と少なくとも1つの固体手段の間のせん断流を生み出し、溶液中での長期間の分子および繊維の配向を誘起し、溶液の初期pHおよび温度を制御し、せん断流内で溶液のpHおよび温度を制御し、および溶液の制御されたpH、温度および/または蒸発速度の下で溶液を乾燥させる。
【0055】
バイオポリマー層は所望の配向に形成することができる。特定の配向は、以下に詳細に議論されるように、バイオポリマー組織に依存してあるパラメータおよび定義により特徴づけることができる。
【0056】
ある実施形態において、配向の範囲も制御される。配向の範囲とは、同じ角度の配向の局所領域間の最大の距離として定義される結晶学用語である。この場合、その範囲は、皮膚様配向として10nmほどの小ささから、腱様配向として0.5メートルほどの大きさであり得る。
【0057】
本発明の方法の実施形態には、可変のpHで乾燥する間、せん断荷重および自己組織化の下、低pHでの液晶溶液の分子配向が長い範囲となる等の利点がある。特に、ある実施形態において、乾燥工程は、7.4±0.2に調整された中性のpHに保つことができる。本発明者は、乾燥工程注に溶液のpH、温度および/または蒸発速度を制御することは、せん断流を適用することに加えて、コラーゲンの自己組織化工程に役立つことを見出した。
【0058】
種々のタイプのフィブリルバイオポリマーを用いることができる:フィブリルコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、絹等。
【0059】
この方法により、短い範囲および長い範囲の配向を有した単領域および多領域の半液晶層の双方の生産が可能となる。これらの相違は、表2に概略が示され、図5A〜図5Cに示されている。

【0060】
上述の方法により調製されたコラーゲン層の例が図6Bに示されている。それぞれのフィブリルは、垂直の方向に伸び、特徴的な周期を有した波の形状である。近接するフィブリルの周期はほぼ等しい。フィブリルは共に入れ子となり、近接するフィブリルの束によって形成される「クリンプ」パターンを形成する。クリンプパターンは水平方向に広がる。
【0061】
図6Aは、あらゆる腱に見られる特徴的なクリンプパターンを示すブタの僧房状の心臓弁の腱構造のSEM写真である。囲み枠内の領域は、図6Bに示される形成された物質と同じ大きさである。図6Bの人工マトリックスのクリンプパターンは、図6Aの実際の腱のクリンプパターンと類似していることがわかる。
【0062】
上記のクリンプパターンの形態は、コラーゲンのらせんフィブリルの入れ子により形成される。このらせん構造は、右巻きおよび左巻きヘリックスが互いに入れ子になり、図8A〜図8Cに関連して示されるように二重スーパーヘリックス構造を形成する。図に示されるように、「より暗い」影のあるフィブリルは右巻きであり、「より薄い」影のあるフィブリルは左巻きである。
【0063】
なお、クリンプは、実際は、入れ子になったヘリックスの頂点のクラスターである。暗いヘリックスの頂点は右巻きのクリンプを形成する。薄いヘリックスの頂点は左巻きのクリンプを形成する。
【0064】
これらの入れ子になったヘリックスはつる巻きばねのアレイとして作動する。このアレイがおよそ同じ数の右巻きと左巻きのばねを含んでなるという事実は、アレイのばね定数に影響を与えない。しかし、アレイが伸びておらず曲がっている場合、右巻きおよび左巻きのばねは互いに釣り合いをとろうとする。一方のアレイが伸びると、他方のアレイは圧縮される。右巻きおよび左巻きのばねはかみ合い、互いに釣り合いをとろうとし、自然な安定性を形成する。
【0065】
図8A〜図8Cは、いくつかの視点からの単一の二重スーパーヘリックスを示す。
【0066】
特定のバイオポリマー組織に依存し、「配向」の定義は、以下の表3に記載の異なる意味をとるであろう。

【0067】
図10に示された腱様と整列編み構成との重要な相違は、ヘリックスの充填密度である。腱様においては、ヘリックスは密に充填されているが、整列編みにおいては、ヘリックスは緩く充填されている。図11は、本発明のある実施形態に従う二重クリンプのバイオポリマー材料のAFM画像である。
【0068】
クリンプ構造のこのより完全な理解に基づき、靱帯の階層構造は以下の表4に示されるように修正することができる。

【0069】
これらのフィルムは配向した繊維構造を有し、いくらかの異方性の機械的強度を有し、処理、改変、中性化および/または架橋等の前後のいずれにおいても基板から取り除くことができることが見出された。
【0070】
このような改変の1つの例として、イオン交換反応が挙げられる。例えば、これは、オルトバナジン酸塩またはピロリン酸塩溶液にコラーゲンフィルムを浸すことによる処理である。別の例は、ヘパリン溶液にコラーゲンを浸すことである。このような改変は、水和させる能力、タンパク質を結合させる能力またはフィルムに適用される細胞の挙動を増強する能力等のフィルムの特性を変化させる。細胞の挙動を制御するためこれらのコラーゲンマトリックスの能力のいくつかの例が、図12A〜図12Cに示されている。一般的に、整列した繊維は、その軸に沿って細胞を整列させる。神経細胞の場合、細胞それ自体が高い配列を示していないが、これらが産出する神経突起の工程では、高度に伸ばされ、繊維と配列される。細胞の挙動を制御するマトリックス構造のこのような現象は、種々の幹細胞にも拡張される。
【0071】
ある態様において、精製されたモノマーコラーゲン溶液から腱様コラーゲンマトリクスを製造する工程が提供される。この工程の実施形態は、とりわけ、離液性液晶材料に適している。ある実施形態によれば、液晶状態の分子コラーゲン溶液は、米国特許公報第2008/0115724号(および特に図1に示されるように)に示され、そしてより完全に記載されるように、精密なアプリケータ―ヘッドにより光学精度でガラスおよびプラスチック上に堆積することができる。例示的な実施形態において、ガラス基板は、固定アプリケーターヘッドの下で、リニアアクチュエータにより運搬されるステージ上に乗せられる。ヘッドは異なるコーティング厚のバイオポリマーマトリックスを産出するために調整可能である。一実施例において、清潔なガラス基板および10mm/秒〜1000mm/秒の範囲のコーティング速度を用いて、所望のクリンプ構造が産出される。最初の実験では、いくつかの商用の原料のいずれかから精製されたコラーゲンI溶液が用いられた。結果として得られたマトリックスは、ガラスから剥離することができ、図3A〜図3Fに示されるように種々の生体内原位置の構造をとり得る。2つのコラーゲンマトリックスを、これらを共に結合させる薄いヘパリン層と交差する配向で含んでなる3層構造を作製することができる。この試料はWollensak G.,Wilsch M.,Spoerl E.,Seiler T.2004.Collagen fiber diameter in the rabbit cornea after collagen crosslinking by riboflavin/UVA.Cornea.23.5:503−507に記載の手続きに従い、リボフラビンに暴露することにより更に架橋され得る。架橋のために、2種類のポリマー、即ち、デキストランおよび活性化されたポリエチレングリコールが用いられた。以下により詳細に記載されるように、薄い腱様コラーゲンマトリックスは自発的に擬繊維へと転換され得る。腱様コラーゲン偽繊維(直径125μm)の予備的な力学的評価では、少なくとも60グラムの強度が示された。この構築物は、架橋なしでも双方の方向においてかなりの強度を有している。
【0072】
図9を参照し、装置100の別の実施形態が示される。この実施形態において、装置100は、ステンレス鋼等の固い材料からなるプリズム102を含んでよい。プリズム102は滑らかな基板104(例えばガラス)上に正確に位置し、隙間112を形成する。ある実施形態において、プリズム102の成分は、ある実施形態においては円柱形状のはめ込み外側面108、このはめ込み外側面と滑らかに調和される、高度に平らに磨かれた平らな面106および隙間112の出口で変わり目を形成する鋭い縁110を含む。正確な隙間を形成するために基板上にプリズムを位置させる方法がここでは議論されていない。ある実施形態において、コラーゲン溶液液体の狭いストリップが基板に堆積しパドル114を形成する。一定の実施形態において、この液体は十分に高い粘性を有し独立したパドルを形成する。ある実施形態において、プリズムは固定された状態に維持され、液体をはめ込み外側面ゾーンへ引きずりながら基板は左から右へ動き、これにより、出口に到達するまで液体が隙間を満たす。この隙間は5〜50ミクロンの範囲であってよく、コーティング速度は10〜100mm/秒の範囲であってよい。狭い隙間においてであるが、液体は十分に長期間高いせん断力を受け、これにより配向する。出口の鋭い縁は、もし大き過ぎれば仕上がったフィルム上に許容できないストリーキングを引き起こすであろう自然に起きるメニスカスのサイズを最小化するのに役立つ。これに代わる実施形態において、プリズムは基板に関連して動かすことができる。
【0073】
ある実施形態において、本発明のバイオコンポジットは、(i)平行なくさび状のレールの形態を有し、その土台が基板と同一平面内に存在する、少なくとも2つの長軸方向の縦材;(ii)少なくとも1つの平らな面を有し、少なくとも1点で前記レールのそれぞれと接する前記縦材の間のブリッジの形態を有した交差部材;および(iii)前記レール上の予め設定されたいずれの位置でもブリッジが厳密に固定されることを確保するクランプ装置、ここで、前記ブリッジは、前記ブリッジの平らな面が基板の平面と10分角以内のある一定の二面角をなし、前記平らな面と前記基板の面の間の隙間が0〜50ミクロンの幅であるように前記レールの双方に沿って動かすことができる、を含むリキッドフィルムアプリケータ―を用いて形成される。
【0074】
他の製造方法も本発明の方法に従って教示される。例えば、せん断ゾーンが円柱形状であるチューブ状の実施形態が提供される。円柱形状は数多くの手段のいずれによっても形成され得るが、一実施形態においては、円柱形状はその内部に中実の円柱心棒を位置させた中空円柱を含んでなる。せん断隙間は中空円柱の内径と中実心棒の外径の直径の差によって形成される。バイオポリマー材料は高圧の力の下で隙間から押し出され、そうすることによって、クエット流、テイラー‐クエット流、平面または線対称のポアズイユ流等の流れを作り、配向した足場構造が形成される。隙間の巧妙な制御は、中空の円柱および中実の心棒の双方を僅かなテーパー角で製作することによって達成することができる。中空の円柱に関して心棒を軸方向に配置することにより、隙間は巧妙に調整されるであろう。上記において、チューブは、心棒および円柱成分の中心軸に平行なフィブリルの平均方向に形成されるであろう。コラーゲンチューブが押し出される間、一成分の中心軸まわりの差動的回転速度を他の成分に対して与えることにより、フィブリルの平均方向は、チューブに沿うらせん経路に従い、中心軸に対してある角度をなすであろう。
【0075】
上記のように生産された不連続なまたは連続なバイオポリマーフィルムは、移動され、配向したバイオポリマー(コラーゲン)擬繊維とすることができる。これは、本発明の目的の一つであり、図13に示されているような装置によって形成することができる。薄いコラーゲンフィルム(例えば、2〜6μm厚、1インチ幅)は、図13に示されるような適した溶液(例えば、PBS溶液)に完全にまたは部分的に浸すことができる。フィルムは、溶液から取り除かれたときに、図7Aに示されるような気液界面で擬繊維に折りたたまれる。この擬繊維は、機械的なおよび熱的な処理を用いてまたは用いずに乾燥することができる。いくつかの擬繊維を編み、直径および強度の異なる糸を産出することができる。このような糸および擬繊維の例が図7Bに示されている。本発明の実施形態により、コラーゲンフィブリルの種々の配置を有したプラスチックまたはガラス上にコラーゲン堆積物を産生することにより、最終的な擬繊維の弾性率の制御が可能となる。例えば、これに代わる条件の下で堆積したコラーゲンは、擬繊維内によじれまたは折りたたみ、およびJ型の機械的伸展を有した糸を産出する最終的な糸を産出することができる。整列された繊維の束により更により大きな弾性が支持されるような編まれた構造に、コラーゲンを堆積させることにより、より大きな弾性を生み出すことさえできる。
【0076】
特定の好都合なフィルムのなかで、本発明に従って産出された繊維および擬繊維が、細胞の付着、遊走および増殖を補助するために用いられ得る。一般的に、培地内の細胞懸濁液内に擬繊維を置くことにより、擬繊維に細胞を適用することができる。それに代わり、対象の細胞含有培地を乾燥懸濁された擬繊維に適用することができ、その長さ方向に下降させることができる。培地内の細胞は、特に血清の存在下でコラーゲン擬繊維に結合する。この工程は、結合した細胞の数を増加させるために繰り返される。幹細胞を組織内に送達するための配向したコラーゲン擬繊維の使用についての一つの例が図14に示されている。
【0077】
典型的には、特定の組織に送達される細胞は、幹細胞、神経細胞、筋細胞、誘導多能性幹細胞、杯幹細胞または修復、再生または機能を改善すると期待される細胞のいずれかであろう。組織への適用は、医師および当業者に周知のように、パッチとしてか、またはカテーテルまたは注射針を用いて擬繊維を傷害組織の部位内に挿入することにより可能である。
【0078】
コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンまたは合成繊維等の材料は、ガラスまたはプラスチック上に堆積された場合、その上に細胞を置き、次いで細胞の付着、遊走、増殖が存在するか否かを観察することにより細胞応答を試験するための装置としての役割を果たすことができる。更に、細胞行動を刺激する因子の豊富な源である多血小板血漿等の成長因子または生体物質を種々の基板に取り込むことができる。用いることのできる一つの機構としては、吸着が挙げられる。別の機構としては、ヘパリンまたは静電的に結合する他のグリコサミノグリカン類が挙げられる。基板のある領域に因子を結合することもでき、種々の成長因子に対する親和性を有し得る。同様に、バナジン酸塩、マイナスに帯電した抗炎症剤またはエチレンジアミン四酢酸もしくはクエン酸塩を含むアンチプロテアーゼ等の生理活性物質は、プラスに帯電したコラーゲン基板と強く結合する。細胞行動の改変能および、細胞による物質分解能は、細胞培養内で容易に試験される。更に、このような改変された基板は、とりわけ、神経細胞、幹細胞および腫瘍細胞を含む改変された基板上の細胞行動を評価するための種々の分析において有用である。
【0079】
更なる利点のうち、本発明の実施形態は、機能化されたおよび/または改変されたバイオコンポジットの構造物の形成を可能にする方法を提供する。ある状況においては、細胞培養研究のために、基板に強く結合することが必要である。これは、イオン結合または共有結合の形成のいずれかにより堆積されたバイオポリマーと結合する機能化された表面を用いて達成することができる。堆積された材料の除去が望まれる場合、更なる処理のための堆積物の開放を容易とする種々の堆積表面を用いることができる。
【0080】
ある実施形態においては、このようなバイオポリマーの機能特性は、所望される用途に依存して改変または改善させることができる。このような改変として、とりわけ、堆積したバイオポリマーの架橋および基板上に堆積した場合または更なる操作の後に材料の殺菌をすることが挙げられる。
【0081】
ある実施形態において、コラーゲン出発溶液は以下のように調製される。モルキュラーグレード(Molecular grade)液体コラーゲン溶液は、典型的には3mg/mlの範囲の濃度で、BD等の数多くの商業的供給源から得られる。コラーゲンの哺乳類供給源は、ソコダラ、ウシ、ブタ、ヒト等であってよい。溶液は、スペクトラムラボ社(Spectrum Labs.)から得られる12,000〜14,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量の透析膜チューブ内に置かれる。このチューブは、容器内に置かれ、分子量20,000のポリエチレングリコール(PEG)ですべての側面が覆われ、4℃に冷やされる。PEGの分子量は透析管(dialysis tube)のカットオフ分子量より大きくなければならない。容器およびその内容物は、PEGによりコラーゲン溶液から水分が取り除かれ、濃度が増加するのに十分な時間4℃の環境に置かれる。チューブ内のコラーゲン容積および外部のPEGの飽和に依存して時間は変わるであろうが、10分〜3時間でありうる。濃縮されたコラーゲンは次にチューブから取り除かれ、バイアルに置かれ、これを4℃で遠心し、閉じ込められたいずれの空気をも除去される。
【0082】
コラーゲン溶液は、粉末形態のコラーゲンからも調製することができる。典型的な方法では、HClまたは酢酸等の酸を4℃でこの粉末に加え、18時間4℃で放置させ、終濃度まで希釈させる。
【0083】
コラーゲン溶液を、底部に透析型の膜を搭載した商業的に設計されたバイアル内に置き、所望の濃度が達成されるまで4℃で遠心することにより高い濃度を達成することもできる。このようなバイアルの例として、Sartorius Stedim製Vivaspinが挙げられる。10,000以上のこの膜の種々の分子量カットオフが利用可能である。コラーゲンの典型的な終濃度は20mg/ml〜100mg/mlの範囲であり得る。好ましい濃度は40mg/ml〜75mg/mlの範囲であり、所望のフィブリル配向および種々の供給元からのコラーゲン出発物質の特質に依存して異なり得る。
【0084】
離液性の液晶の相を定義する1つの重要なパラメータは濃度である。濃度を調整する方法は上述されている。2つの他の重要なパラメータはイオン強度およびpHである。液体コラーゲンIおよびラミニンのpHの使用される範囲は2〜9である。pHの好ましい範囲は2から5である。イオン強度の使用される範囲は0.001M〜0.5Mである。イオン強度の好ましい範囲は0.1M〜0.3Mである。
【0085】
相転移の標準的な工程は、空気ナイフ乾燥(air−knife drying)、真空、高温および低温条件を伴いうる蒸発法である。薄いバイオポリマー層にとって、UV処理は、バイオポリマー溶液が例えばリボフラビン等のUV感受性添加物により活性化された場合に有効でありうる。このUV処理においてバイオポリマーの架橋が開始され得る。
【0086】
多くのフィブリルバイオポリマーにおける自己組織化工程は、例えばアンモニア蒸発により調節することができるイオン強度およびpHに大きく依存する。導電/金属基板上へのバイオポリマーの堆積の場合、イオン強度は電界をかけることにより調整することができる。
【0087】
例えばPET等のいくつかのポリマー材料は、コラーゲンおよびラミニンとの付着性が低く、それ故、この種の材料は、目的が基板から配向したバイオポリマーを取り除くことである場合は、表面機能化のために用いることができる。標準的な粘着テープをこの手続きに用いることができる。
【0088】
アミノシリル化ガラス機能化により、ガラス表面に堆積した配向したコラーゲン薄膜の構造において実質的な変化が引き起こされる。これにより、ガラス処理なしで作製された図3Dに示された皮膚様編みパターンの代わりに図3Bに示された垂直のフィブリルの形成が得られる。
【0089】
さらに、インシュリン、インシュリン様成長因子、VEGF、PDGF等のある成長因子は、細胞内のチロシンキナーゼ受容体ドメインを介した細胞プロセスを刺激する、細胞表面上に結合する。典型的には、キナーゼ領域は受容体上のチロシン残基をリン酸化し、受容体を「活性」状態にするであろう。ある細胞内ホスファターゼによるこれらのリン酸残基の酵素的除去により、受容体の「活性」およびその細胞行動における活性が止まる。オルトバナジン酸は、これらのホスファターゼを抑制し、受容体のリン酸化および活性を増強することができる。
【0090】
成長因子およびオルトバナジン酸塩等の因子をコラーゲン構造物内に取り入れ、安定性を増強し、細胞応答を刺激することができる。会合した配位子なしにコラーゲンマトリックスの実際の構造に取り入れられたオルトバナジン酸塩は、その保持力を確保し、隣接する分子を結合させるイオン橋としての役割を果たすことによりマトリックス溶解が最小化する。この形態において、コラーゲン/オルトバナジン酸塩コンポジットは、細胞マトリックス相互作用を増強させ、内在性および外因的に添加されたチロシンキナーゼ成長刺激物質に対する細胞応答、特に細胞生存、遊走、増殖および分化を増加させる。オルトバナジン酸塩の毒性の報告があるが、会合したリガンドの存在なしに、コラーゲン分子との強固なイオン会合に取り入れられていることにより、オルトバナジン酸塩の拡散は制限され、その全身暴露は限定され、細胞が構築物へ入りまたは接触する活動は制限される。
【0091】
溶液から精製されたコラーゲンを、いくつかある態様のうち特に、コラーゲンが種々の形態に配列された(整列された形態、ねじれた形態、編まれた形態またはこれらの組み合わせ)フィルムに調製する方法が上述されている。このような材料は溶媒空気界面で水性溶媒および力を連続的に適用することにより個々の擬繊維へと転換することができる。このような擬繊維は、その強度を高めるために架橋されることができ、また、成長因子を保存する能力を増強し水和を高めるために、ヘパリン他等の種々の因子により処理されることができる。処理を必要とする細胞への適用は、当該技術に精通した医師に周知の標準的な手続きによる。
【0092】
本明細書に記載の実施例および実施形態は、説明の目的のみにあり、それを鑑みた種々の改変または変更は当業者に示唆されるであろうし、これらは本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲内に含まれるものとする。本明細書に引用されたすべての出版物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は説明の目的のみに提供され、本発明の範囲をいずれにも制限することを目的としていない。
【0094】
細胞培養の研究は、繊維芽細胞および間葉系幹細胞(マウス脂肪由来およびヒト骨髄由来)を用いて行った。以下の細胞増殖培地を用いた:繊維芽細胞に10%FBSの低グルコースDMEM、脂肪由来幹細胞に10%FBSの高グルコースDMEM、ヒト間葉系幹細胞に20%FBSのアルファ−MEM(すべての培地は1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび2mMのL−グルタミンで補充した)。
【0095】
実施例1:ガラスチップ上の腱様構造で配向したコラーゲンフィルム(マトリックス)上に細胞播種
繊維芽細胞および間葉系幹細胞(マウス脂肪由来およびヒト骨髄由来)を用いた。FBS不含増殖培地内で、6ウェルの細胞培養プレート内に置かれたガラスチップ上のコラーゲン基板上に4〜6,000細胞/cmで細胞を播き、付着させた。次に、培地を完全増殖培地(10%FBS)に変え、そのなかで細胞を最大1週間維持した。細胞は基板のパターンに従って整列した。図2A参照。モノマーシートを形成するまで細胞を観察した(最大1週間)。
【0096】
実施例2:コラーゲン擬繊維上の細胞播種
繊維芽細胞を用いた。高濃度細胞懸濁液(10細胞/ml)内の配向したコラーゲン擬繊維上に細胞を播いた:
3cmの擬繊維を1mlの細胞懸濁液と15mlのFalconチューブに置き、振盪機上でCOインキュベータにて30分間37℃でインキュベートした。細胞播種された擬繊維は、次に、6ウェルの培養プレートのウェル内にその端部をガラスチップで固定して置いた。図14に示されるように、細胞付着は播種後光学顕微鏡で確認し、擬繊維からの細胞遊走を光学顕微鏡および蛍光顕微鏡モニターした。
【0097】
実施例3:コラーゲンリボンを塩化ナトリウムバッファーを有したオルトバナジン酸塩の酸性溶液に浸す
イオン交換反応の結果として、オルトバナジン酸塩はコラーゲンフィブリルを架橋し、コラーゲン−バナジン酸塩コンポジットマトリックスを形成するであろう。これは構造的特性を保存する。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液中での中和および脱イオン水中での水洗により過剰のオルトバナジン酸塩が除去される。
【0098】
本発明の特定の実施形態についての上記の記載は、説明および記載の目的のためになされている。これらは、包括的であること、または開示されたまさにその形態に発明を限定することを意図せず、上記の教示に鑑み、明らかに多くの改変および変形が可能である。実施形態は、発明の原理およびその実際の適用を最もよく説明し、これにより他の当業者が、本発明および種々の変形とともに種々の実施形態を、具体的な使用に適していると考えられるよう最もよく利用することが可能となるように選択され記載された。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義されるものとする。
【0099】
本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、刊行物、および参考文献は、それぞれの個別の出版物または特許出願が、あたかも参照により組み込まれて具体的かつ個別に示されたものと同程度に参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の相のフィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを調製し;
実質的に層流様式または方式でフィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを流し;および、
フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルを液相から固相へと変換させ配向したフィブリルバイオポリマーの材料を形成するステップを含む、
配向したフィブリルバイオポリマー材料の作成方法。
【請求項2】
前記フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルが、濃度、温度、pH、イオン強度または添加物のうち1種以上を調整することにより調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流すステップにより、長周期の配向秩序を有した特定のパターンが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変換させるステップが、フィブリルバイオポリマーの自己組織化を促進させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相が液晶相である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変換させるステップが転換の間に環境条件を変化させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記環境条件が、周囲湿度、温度、または静電気的な条件のいずれか1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィブリルバイオポリマー溶液またはゲルが、外部の蒸発により調整可能なイオン強度およびpHを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記液晶相が機能化された基板上に堆積した、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
機能化は、基板への付着性が低くなるように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
機能化は、基板への付着性が高くなるように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
機能化は、固相における最終的な配向に影響するように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記配向したフィブリル材料が更に架橋されおよび殺菌される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
配向したフィブリル材料が低い付着性で基板から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記配向したフィブリル材料がリボンの形態を有している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記相が離液性の液晶相である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
配向したバイオポリマー材料を溶液に浸し;および、
該材料が気液界面で擬繊維に折りたたまれるように該溶液から該配向したバイオポリマー材料を取り出すステップを含む、
リボンからフィブリルバイオポリマー擬繊維を産出する方法。
【請求項18】
前記フィブリルバイオポリマー擬繊維を乾燥させることを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィブリルバイオポリマー擬繊維を架橋することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記配向したバイオポリマー材料は1種類以上のリボンを含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記溶液のpHは中性である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液のpHは2〜9の範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
層表面に平行ないずれかの方向の平均的なフィブリル配向を有した層の形態である、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項24】
層表面に垂直な方向の平均的なフィブリル配向を有している層を含んでなる、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項25】
チューブの軸とある角度をなしている平均的なフィブリルの配向を有したチューブを含んでなる、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項26】
シングルクリンプパターンを有している、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項27】
クリンプ構成間に任意の角度を有したダブルクリンプパターンを有している、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項28】
左巻きらせんおよび右巻きらせんのフィブリルによって形成されるクリンプパターンを有した、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項29】
実質的に等しい錯角で実質的に平行な線のV字型の形態のクリンプパターンを有している、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項30】
少なくとも1つの配向したフィブリルバイオポリマーの材料および生分解性の生体適合性のマトリックスを含む、バイオコンポジットの構造物。
【請求項31】
任意の配向を有している複数の配向したフィブリルバイオポリマーの材料、および前記複数のフィブリルバイオポリマーの材料を共に結合する生分解性の生体適合性のマトリックスを含む、バイオコンポジットの構造物。
【請求項32】
細胞および組織培養用途におけるマトリックスおよび基板として使用されるように構成された、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項33】
インビボで細胞をガイドする足場として用いられるように構成された、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項34】
多血小板血漿の成分を送達するように構成された、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項35】
組織修復および組織再生のために生きた細胞を送達するように構成された、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項36】
組織修復および組織再生のために生きた細胞および多血小板血漿の成分を送達するように構成された、請求項17に従って形成されたフィブリルバイオポリマー擬繊維または複数の擬繊維。
【請求項37】
ペプチド、薬剤、成長因子および小分子を送達するように構成されている、請求項1に従って形成された配向したフィブリルバイオポリマー材料。
【請求項38】
前記生体適合性のマトリックスが、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン類、バナジン酸塩、リン酸カルシウム、生きた細胞、成長因子およびその組み合わせからなる、請求項30に記載のバイオコンポジットの構造物。
【請求項39】
フィブリルコラーゲン溶液またはゲルを実質的に層状様式で流すこと、および所望の様式に配向すること、および、該溶液またはゲルを実質的に液相から固相へと変換させ、配向したコラーゲンによる材料を形成することを特徴とする、配向したコラーゲンによる材料の形成方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−500203(P2012−500203A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523126(P2011−523126)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/053486
【国際公開番号】WO2010/019625
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(511033243)フィブラリン コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】FIBRALIGN CORP.
【Fターム(参考)】