バイオコークス製造装置及び製造方法
【課題】容器内に成形されたバイオコークスの排出を円滑に行い、バイオコークスを短時間で且つ効率的に製造することを可能としたバイオコークス製造装置及び製造方法を提案する。
【解決手段】バイオマス細粒体が充填される反応容器2を備え、反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体19を製造するバイオコークス製造装置において、前記反応容器2が筒状に形成され、反応容器底部に蓋部9が配設され、該蓋部9を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段10が設けられ、蓋部9には、スライド移動方向の先端で且つ反応容器底部から離間した位置に突起部9aが形成され、成形体19の排出時、突起部9aにより成形体19を押圧して落下させる構成とした。
【解決手段】バイオマス細粒体が充填される反応容器2を備え、反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体19を製造するバイオコークス製造装置において、前記反応容器2が筒状に形成され、反応容器底部に蓋部9が配設され、該蓋部9を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段10が設けられ、蓋部9には、スライド移動方向の先端で且つ反応容器底部から離間した位置に突起部9aが形成され、成形体19の排出時、突起部9aにより成形体19を押圧して落下させる構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを製造するためのバイオコークス製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO2排出の削減が推進されている。特に、製鉄業界に於いて鋳造炉(キュウポラ炉)や高炉などでは、主たる燃料や還元剤に化石燃料である石炭コークスが用いられている。また、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多い。この化石燃料は、CO2排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
【0003】
そこで、化石燃料の代替として、大気中のCO2量に影響を与えないバイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、農作物に基づく厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用し地球環境保全に貢献することができる。
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて固体及び液体の燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
【0004】
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
【0006】
そこで、近年石炭コークスの代替として、特許文献3(特許第4088933号公報)に基づくバイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後に、加圧を維持した状態で冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス細粒体中の主成分であるリグニン、セルロース及びヘミセルロースのうち、ヘミセルロースを熱分解させると共にセルロース及びリグニンの骨格を保持しつつ低温反応させて半炭化或いは半炭化前固形物を得る圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高圧密されたバイオコークスが製造できる。
【0007】
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス細粒体の繊維成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、バイオマス細粒体に含まれる自由水がこの加圧、加熱条件下での作用によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高圧密されたバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0008】
図14に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.52に高圧密され、最高圧縮強度20〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【特許文献3】特許第4088933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、バイオコークスは未だ研究段階であり、特許文献3には加圧手段や加熱、冷却手段等の具体的な装置構成やその制御については開示されておらず、バイオコークスを短時間で且つ効率的に製造する技術については言及されていなかった。
また、特許文献3に示されるように筒状容器でバイオコークスを製造する場合、成形されたバイオコークスを容器底部より落下させて排出することが考えられるが、このとき筒状容器の底部にバイオコークスが引っかかりバイオコークスを円滑に排出できない惧れがある。バイオコークスが容器底部に引っかかった時、人手により容器からバイオコークスを取る作業を行うと、連続運転する場合には運転を毎回停止しなければならず、生産性の低下を引き起こしてしまう。
そこで本発明は、容器内に成形されたバイオコークスの排出を円滑に行い、バイオコークスを短時間で且つ効率的に製造することを可能としたバイオコークス製造装置及び製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が形成され、前記加圧成形された成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とする。
【0012】
本発明は、反応容器底部の蓋部が駆動手段によりスライド移動して底部が開閉するようにし、また蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、反応容器底部に成形体が引っかかり落下しない場合に該突起部により成形体を押圧して傾け、反応容器底部より離間させて落下させることにより、成形体を確実に排出することが可能となる。突起部による押圧は、蓋部の閉止操作の一環であるため、押圧した後にそのままスライド移動して反応容器底部を閉止し、次のバイオマス細粒体充填工程に移れるため、操作時間の短縮化が図れる。
【0013】
また、前記突起部の設置位置及び長さは、反応容器底下端から該突起部までの高さ方向距離をx、前記反応容器の内径をR、前記突起部の長さをyとした場合、高さ方向距離xが(1/3)R<x<(2/3)Rで、且つ突起部長さyが(1/20)R<y<(1/5)Rとなるように設定したことを特徴とする。
このように突起部の設置位置及び長さを設定することにより、反応容器底部に引っかかった成形体を突起部により傾けて反応容器底部より離間させ、成形体を確実に落下させることが可能となる。
【0014】
さらに、前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする。
これにより、成形体の排出時に、成形体が反応容器底部に引っかかり排出されないことを極力回避することが可能となる。
【0015】
また、バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする。
本発明は、反応容器底部の蓋部を駆動手段によりスライド移動して底部が開閉するように構成し、加圧体を下降させて開放した底部から成形体を押出し排出するようにし、このとき反応容器下端がテーパ状に切り欠かれているため、成形体が反応容器底部に引っかかり排出されないことを極力回避することが可能となる。
【0016】
また、有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記蓋部をスライド移動して反応容器底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出するようにし、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、前記成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とする。
【0017】
これは、バイオマス細粒体を加圧体により加圧するとともにこれに連動させて加熱手段を作動させ、略密閉状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧してバイオマス細粒体を反応させ、所定時間保持した後に加圧体の加圧状態は保持したまま加熱手段から冷却手段に切り替えて冷却を行い、バイオコークス成形体を製造するようにしている。このように、加圧体と加熱手段及び冷却手段を連動させて制御することにより、短時間で且つ効率的にバイオコークスを製造することが可能となる。
さらに、成形体の排出時、反応容器底部の蓋部を開閉し加圧体で成形体を押出し排出する際に、蓋部先端に設けられた突起部にて成形体を押圧することにより、反応容器底部に成形体が引っかかり落下しない場合にも、新たに装置を追加することなく簡単に成形体を落下させ排出することが可能となる。さらにまた、突起部による押圧は、蓋部の閉止操作の一環であるため、押圧した後にそのままスライド移動して反応容器底部を閉止し、次のバイオマス細粒体充填工程に移れるため、操作時間の短縮化が図れる。
【0018】
また、有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の下端の内周縁が下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれ、前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記反応容器の底部に配置される蓋部をスライド移動して底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出することを特徴とする。
【0019】
これは、上記した方法の発明と同様に、加圧体と加熱手段及び冷却手段を連動させて制御することにより、短時間で且つ効率的にバイオコークスを製造することが可能となる。
さらに、成形体の排出時、反応容器底部の蓋部を開閉し加圧体で成形体を押出し排出する際に、反応容器下端がテーパ状に切り欠かれているため、反応容器底部に成形体が引っかかり排出操作が滞ることなく成形体を円滑に落下、排出させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、反応容器底部の蓋部が駆動手段によりスライド移動して底部が開閉するようにし、また蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、反応容器底部に成形体が引っかかり落下しない場合に該突起部により成形体を押圧して傾け、反応容器底部より離間させて落下させることにより、成形体を確実に排出することが可能となる。突起部による押圧は、蓋部の閉止操作の一環であるため、押圧した後にそのままスライド移動して反応容器底部を閉止し、次のバイオマス細粒体充填工程に移れるため、操作時間の短縮化が図れる。
【0021】
また、突起部の高さ方向位置を、反応容器底部から該突起部までの高さ方向距離が反応容器直径の1/2より大きい位置に設定することにより、反応容器底部に引っかかった成形体を突起部により傾けて反応容器底部より離間させ、成形体を確実に落下させることが可能となる。
さらに、反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることにより、成形体の排出時に、成形体が反応容器底部に引っかかり排出されないことを極力回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るバイオコークス製造装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排出工程の動作を説明する図である。
【図3】加圧体が最下端に位置する時の排出部の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)蓋部の開放状態を示す排出部の側断面図、(b)蓋部による押圧状態を示す排出部の側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る排出部の構成を説明する拡大断面図である。
【図6】排出部の各設定値を算出した表である。
【図7】図4を応用させた排出部の側断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)排出部の側断面図、(b)切欠部の拡大断面図である。
【図9】加圧用油圧機構の油圧回路図である。
【図10】冷熱媒回路の一例を示すシステム構成図である。
【図11】本発明の実施形態に係るバイオコークス製造方法の全工程を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る充填工程の動作を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係る反応工程の動作を説明する図である。
【図14】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の種類、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
本実施形態において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー滓や茶滓等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
本実施形態では、必要に応じて所定の含水率になるように水分調整されたバイオマス細粒体を原料としている。バイオマス細粒体は、茶滓やコーヒー滓等のように小粒径のバイオマスをそのまま用いてもよいし、廃木材等の大粒径のバイオマスを予め所定粒径以下まで粉砕したものであってもよい。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
図1に示すように、バイオコークス製造装置1はバイオマス細粒体11が投入される円筒形の反応容器2を有している。該反応容器2の上部にはバイオマス細粒体11を受け入れる漏斗状のホッパ3が設けられ、下端には成形されたバイオコークスを排出する排出部5が設けられている。また、反応容器2は、内容物を所定温度まで加熱する加熱手段と、加熱後に内容物を冷却する冷却手段とを備える。さらに、反応容器2の上方には、該シリンダ2内のバイオマス細粒体11を所定圧力まで加圧する加圧手段が設けられている。さらにまた、加圧ピストン6の上下方向の位置を検出する位置センサ20が設けられていることが好ましい。
【0025】
次いで、各装置、部位の詳細な構成を以下に記載する。
前記反応容器2の上部に設けられたホッパ3は、該ホッパ3にバイオマス細粒体11を供給する原料供給部(不図示)を備えている。該原料供給部は、バイオマス細粒体11を定量計量してホッパ3に投入する装置であってもよいし、又はバイオマス細粒体11をホッパ3に連続投入する装置であってもよい。
前記反応容器2の排出部5は反応容器2の径と同一径の開口からなり、その下方には該排出部5を開閉する排出装置が設けられている。該排出装置は、排出部5を閉止する底面蓋部9と、該底面蓋部9に設けられた突起部9aと、前記底面蓋部9を水平方向にスライドさせて排出部5の閉止、開放を制御する排出用油圧機構10とから構成される。この排出装置は、反応容器2内にて反応工程が終了した後に、油圧機構10を駆動させ底面蓋部9をスライドさせて排出部5を開放し、シリンダ2内のバイオコークスを落下させて排出するようになっている。この排出装置については後に詳述する。
【0026】
前記反応容器2が備える加圧手段は、加圧シリンダ7により駆動されて反応容器2の内周面を上下摺動する加圧ピストン(加圧体)6と、該加圧シリンダ7内の作動油の給排を制御する加圧用油圧機構8とからなる(図9参照)。加圧ピストン6及び加圧シリンダ7は、反応容器2と同軸上に配置される。加圧ピストン6は、反応容器2の底面付近まで下降する。該加圧ピストン6は、所定時間だけこの加圧状態を保持できる構成となっている。
【0027】
図9に、加圧用油圧機構の油圧回路図の一例を示す。加圧シリンダ7に供給される作動油は、ポンプ77によりタンク76から汲み上げられ、電磁弁78により供給量を制御されて加圧シリンダ7に供給される。該電磁弁78は制御装置100により開度制御され、この開度に基づいて加圧ピストン6の圧力値が調整されるようになっている。加圧ピストン6の圧力段階は、バイオマス細粒体11を反応させて半炭化或いは半炭化前固形物を得る圧力範囲より低圧で、バイオマス細粒体11を充填時加圧する第1の圧力段階P1と、充填時加圧したバイオマス細粒体11を前記圧力範囲で加圧する第2の圧力段階P2と、の少なくとも2段階を有する。
また、電磁弁78と加圧シリンダ7の間の作動油通路には逆止弁71、72が設けられている。このうち、電磁弁78と加圧シリンダ7の背圧室7aの間の作動油通路に配置された逆止弁72の作動油圧力が圧力検知センサ75によって背圧として検知される。
【0028】
図1に戻り、前記反応容器2が備える加熱手段及び冷却手段は、同一の温度調整手段としてもよい。本実施形態では、温度調整手段として、反応容器2にジャケットを設けた二重管構造とし、内筒と外筒の間に冷熱媒通路4を設けた構成としている。冷熱媒通路4には、熱媒若しくは冷媒(以後、冷熱媒と称する)が通流し、該冷熱媒による伝熱によりシリンダ内筒に充填されたバイオマス細粒体11に熱エネルギの授受を行うようになっている。冷熱媒通路4の下方側には冷熱媒入口4aが設けられ、上方側には冷熱媒出口4bが設けられている。これらの冷熱媒入口4a及び冷熱媒出口4bは、後述する冷熱媒回路に接続されている(図10参照)。冷熱媒通路4、冷熱媒入口4a、冷熱媒出口4b、冷熱媒回路を含み、冷熱媒の切り替えにより反応容器2の温度制御を行う機構を冷熱媒循環機構と称する。
【0029】
図10を参照して、冷熱媒循環機構が備える冷熱媒回路30の一例につき説明する。この冷熱媒回路30を用いることにより、熱効率が高く且つ安全性の高い温度調整手段とすることが可能であるが、もちろん他の構成の冷熱媒回路を用いてもよい。この冷熱媒回路30では、冷媒及び熱媒にシリコンオイルを用いることが好ましい。
反応容器2の冷熱媒入口4aと出口4bは、同図に示される冷熱媒回路30に夫々接続されている。該冷熱媒回路30は、冷媒回路と熱媒回路とが組み合わされた構成となっている。冷熱媒出口4bは、冷熱媒排出ライン41に接続され、該排出ライン41上の三方バルブ45を介して熱媒戻りライン42と、冷媒戻りライン43に分岐している。
熱媒戻りライン42は熱媒タンク31に接続されている。該熱媒タンク31は、加熱器31aと、撹拌機31bを具備しており、冷却された熱媒を昇温するようになっている。必要に応じてN2ボンベからN2ガスが供給されるようにし、タンク内を不活性雰囲気に保持して安全性を確保することが好ましい。熱媒タンク31の出口側は、三方バルブ46を介して冷熱媒供給ライン40に接続されている。
このような構成を用いて、反応容器2の加熱時には、三方バルブ45、46を制御することにより熱媒タンク31側に熱媒が循環するようにし、熱媒タンク31、冷熱媒供給ライン40、冷熱媒通路4(反応容器2)、冷熱媒排出ライン41、熱媒戻りライン42からなる熱媒回路を形成する。
【0030】
冷媒戻りライン43は、冷媒熱交換器36に接続されている。該冷媒熱交換器36は、上水等の冷却水と冷媒とを熱交換し、冷媒を冷却する構成となっている。
さらに、好適には冷媒戻りライン43の冷媒熱交換器36より上流側に、冷媒タンク35を設ける。この冷媒タンク35は、少なくとも冷媒温度を水の沸点以下、好適には80℃以下まで冷却する能力を有するものとする。さらに、冷媒タンク35は、撹拌機35aを具備することが好ましく、これにより冷媒タンク35出口の冷媒温度変化を軽減し冷却能力を向上させる。
このような構成を用いて、反応容器2の冷却時には、三方バルブ45、46を制御することにより冷媒タンク35側に切り替えて、該冷媒タンク35側に冷媒が循環するようにし、冷媒タンク35、冷媒熱交換器36、冷熱媒供給ライン40、冷熱媒通路4(反応容器2)、冷熱媒排出ライン41、冷媒戻りライン43からなる冷媒回路を形成する。
このように、反応容器2内のバイオマス細粒体11の加熱手段、冷却手段として、冷熱媒回路30を備えた冷熱媒循環機構を用いることにより、バイオマス細粒体11の加熱又は冷却が迅速に行え、また加熱から冷却への切替を円滑に行うことが可能となる。
【0031】
図1に戻り、上記した加圧用油圧機構8、排出用油圧機構10及び冷熱媒循環機構は、制御装置100により制御される。該制御装置100は、中央処理装置
(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。さらに、制御装置100は、加圧用油圧機構8の加圧ピストン6の充填回数等をカウントするカウンタ101、所定の制御における継続時間を計測するタイマ102を備えている。
【0032】
上記した構成を備えるバイオコークス製造装置1では、反応容器2内にバイオマス細粒体11を充填して充填時加圧する充填工程を行った後、バイオマス細粒体11を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形して一定時間保持し、加圧を維持した状態で冷却してバイオコークス成形体を生成する反応工程を行い、最後に反応容器2内に生成されたバイオコークス成形体を排出する排出工程を行う。前記温度範囲、圧力範囲は、バイオマス細粒体中の主成分であるリグニン、セルロース及びヘミセルロースのうち、ヘミセルロースを熱分解させると共にセルロース及びリグニンの骨格を保持しつつ低温反応させて半炭化或いは半炭化前固形物を得る圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス細粒体中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する温度範囲及び圧力範囲である。
【0033】
本実施形態は、前記排出工程にて、反応容器2の下端にバイオコークス成形体が引っかかって排出されない事態を解消する構成を備えている。
図2は本発明の実施形態に係る排出工程の動作を説明する図である。
反応工程が終了した後、図2(i)に示すように加圧シリンダ7の高圧を抜き、図2(ii)に示すように油圧機構10を駆動させて底面蓋部9をスライド移動させ、排出部5を開放する。そして、図2(iii)に示すように加圧ピストン6を低圧下降させて反応容器2内に成形されたバイオコークス成形体19を押出し排出する。
【0034】
図3に示すように、加圧ピストン6の最下端位置は、反応容器下端との間に数mmの隙間dが残るように設定されている。これは、加圧ピストン6が反応容器下端より下方に突出すると、加圧ピストン6が故障して上昇しなかった場合に、突出した加圧ピストン6が底面蓋部9に当たる惧れがあるためである。
しかしながら、この隙間dを設けることにより、バイオコークス成形体19が隙間dに引っかかって落下しない場合がある。バイオコークス成形体19が引っかかった状態で底面蓋部9が閉まると、硬いバイオコークス成形体19を反応容器2に垂直に押し付けることになり、反応容器2が歪む可能性がある。
【0035】
従って、本実施形態では、図4乃至図8に示す構成を備えることによりバイオコークス成形体19を確実に落下させるようにしている。
図4は、本発明の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)蓋部の開放状態を示す排出部の側断面図、(b)蓋部による押圧状態を示す排出部の側断面図である。
同図に示すように、底面蓋部9に突起部9aを設けている。該突起部9aは、底面蓋部9のスライド移動方向先端で且つ反応容器2下端から離間した下方位置に設けられる。該突起部9aは、例えば底面蓋部9に連結された棒状体と、該棒状体の先端に設けられた球状体とから構成される。
【0036】
そして、図4(a)に示すように底面蓋部9を開放した状態から図4(b)に示すように底面蓋部9を閉側へスライド移動し、反応容器2下端に引っかかった状態のバイオコークス成形体19を突起部9aにて押圧することにより、バイオコークス成形体19が傾いて反応容器2下端より離間し、落下する。このとき、バイオコークス成形体19を反応容器2下端より離間した下方にて突起部9aにより点で押圧しているため、押圧力が反応容器2の下端2aを支点とした回転力となり、バイオコークス成形体19を傾けることが可能である。従って、バイオコークス成形体19を反応容器2側面に垂直に押し付けて反応容器2を変形させることを防止できる。
【0037】
好適には、前記突起部9aの設置位置及び長さは、反応容器底下端から該突起部9aまでの高さ方向距離をx、前記反応容器の内径をR、前記突起部の長さをyとした場合、高さ方向距離xが(1/3)R<x<(2/3)Rで、且つ突起部長さyが(1/20)R<y<(1/5)Rとなるように設定する。
このように突起部9aの高さ方向位置を設定することにより、反応容器2底部に引っかかったバイオコークス成形体19を突起部9aにより傾けて反応容器2底部より離間させ、成形体19を確実に落下させることが可能となる。
【0038】
さらに好適には、前記突起部9aの高さ方向位置は、以下のようにして設定されるとよい。
図5において、19は反応容器2に引っかかった状態のバイオコークス成形体、19’は傾いた状態のバイオコークス成形体19を表す。
突起部9aの高さ方向位置は、反応容器2の直径R、反応容器2へのバイオコークス成形体19の差込高さt(加圧ピストン6下端位置から反応容器2下端までの隙間)、傾いたバイオコークス成形体19’の上端から突起部9aまでの高さ方向距離(押位置)x、傾いたバイオコークス成形体19’の水平方向に対する傾斜角θ、反応容器2の下端から傾いたバイオコークス成形体19’上端までの傾斜隙間a、突起部9aの押し込み距離y、を用いて演算式により算出される。算出結果を図6の表に示す。
排出時の差込長さtは、実験で5mmである。実験の反応容器内径R=100mmより、押位置X=50mmの場合は、底面蓋部9を閉めるときに、成型後のバイオコークス19の上部が反応容器2の端から外れるのに必要な押距離yは図6の例1で計算される。この結果より、実験誤差を含めて上記したような突起部9aの相互の必要長さが決定される。
【0039】
また、前記突起部9aを応用した構成を図7に示す。同図に示すように、底面蓋部9の下方側を上方側より突出させた形状にし、該突出させた突起部9aにてバイオコークス成形体19を押圧するようになっている。突起部9aによりバイオコークス成形体19は、反応容器2底部より離間した位置にて、点又は水平方向の線で押圧され、押圧力が反応容器2の下端2aを支点とした回転力となり、バイオコークス成形体19を傾けることが可能となる。
【0040】
さらにまた、排出部5の別の実施形態を図8に示す。図8は本発明の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)排出部の側断面図、(b)切欠部の拡大断面図である。
本実施形態は、反応容器2の下端に切欠部2aを設けた構成となっている。該切欠部2aは、反応容器2の内周縁を下方側に拡径したテーパ状に切り欠かいて形成される。該切欠部2aの具体的な構成は、例えば反応容器2の肉厚が10mmの場合、切欠部2aの縦方向の長さL1を3mm、横方向の幅L2を1mmとする。
このように反応容器2の下端に切欠部2を設けることにより、バイオコークス成形体19の排出時に、該成形体19が反応容器底部に引っかかることを防止し、バイオコークス成形体19を円滑に排出することが可能となる。
この切欠部2aは、図4乃至図7に示した突起部9aと組み合わせて用いてもよい。
【0041】
次に、図11を参照して、バイオコークス製造方法の全工程のフローを説明する。
まず、充填工程において、制御装置100により充填操作を起動させる(S1)。これは、加圧用油圧機構8や排出用油圧機構10を含む各油圧機構、及び冷熱媒循環機構を起動させ(S2)、カウンタ101の充填回数をリセットする(S3)。即ち、充填回数をX(回)とすると、X0=0に設定する。このとき、図12(i)に示すように、加圧ピストン6は反応容器2上部の初期位置H0に設定しておく。
そして、原料であるバイオマス細粒体11をホッパ部3より反応容器2内に投入する(S4)。バイオマス細粒体11を投入後、図12(ii)に示すように、加圧用油圧機構8により加圧シリンダ7を低圧で下降側に駆動して加圧ピストン6を下降させる(S5)。低圧下降時の圧力は、後述する反応工程の圧力より低い第1の圧力段階P1とする。この時、カウンタ101の充填回数を+1増加させて、X0=X0+1とする(S6)。低圧下降時に制御装置100では、加圧シリンダ7の油圧Pが予め設定された所定圧力P1より大きいか否かを監視する(S7)。加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1以下の状態にて、タイマ102にて計測される加圧時間が予め設定された所定時間以上経過した場合は、S5に戻り再度加圧シリンダ7を下降側に駆動する。好適には、充填時加圧を行う第1段階の圧力P1は14MPaとし、所定時間は10秒とする。
【0042】
一方、加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1より大きい状態で所定時間以上経過した場合は、次いで反応容器2内のバイオマス細粒体11の充填量を検出する。これは、バイオコークスを目的とする大きさに成型するために行われる。
バイオマス細粒体11の充填量検出は以下のように行う。
図12(ii)に示すように、位置センサ20により下降時の加圧ピストン6の高さ方向位置Hを検出する。そして、検出された高さ方向位置Hが、目的とする高さ設定値H1以上であるか否か(H≧H1)を判断する(S8)。
【0043】
また、バイオマス細粒体11の充填量検出の別の方法として、加圧ピストン6が初期位置H0から加圧時の高さ方向位置Hまで下降する下降時間Tをタイマ102により検出して充填量を推定するようにしてもよい。この場合、予め初期位置H0から目的とする高さ設定値H1までの加圧ピストン6の下降時間を取得しておき、これを指定時間T1とする。そして検出された下降時間Tが指定時間T1以下であるか否か(T≦T1)を判断する(S8)。
このように、位置センサ20又は加圧ピストン6の下降時間Tを用いることにより、簡単にバイオマス細粒体11の充填量を検出することが可能となる。特に、位置センサ20を用いる場合は精度の高い検出が可能となり、下降時間Tを用いる場合は装置を安価にできる。
【0044】
反応容器2内の充填位置Hが充填目的位置H1に到達していない場合(H<H1)、若しくは加圧シリンダ7の下降時間Tが指定時間T1より長い場合(T>T1)は、充填量が不足していると判断し、加圧シリンダ7を上昇側に駆動し(S11)、加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1より大きいか否かを判断し(S12)、大きい場合にはS11に戻りさらに加圧シリンダ7を上昇側に駆動し、小さい場合には図12(iii)に示すように再度バイオマス細粒体11を投入して(S4)、S4以降の加圧シリンダ7の充填工程を繰り返し行う。この操作は、図12(iv)に示すように、加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1より大きく、且つバイオマス細粒体11の充填量が予め設定された充填量設定値H1以上となったら終了する。
上記したように充填工程を行うことにより、反応容器2にバイオマス細粒体11を投入する際に予め計量する必要がなく、一定の大きさのバイオコークスを得ることが可能となる。また、バイオマスは細粒体状で反応容器2に投入されるため嵩密度が低く、そのままの状態だと反応容器2の容積を大きくしなければならないが、充填工程にて加圧ピストン6により低圧で充填時加圧を行うことで、より多くのバイオマス細粒体11を投入することが可能となり、反応容器2の小型化が可能となる。
【0045】
S8にて反応容器2内のバイオマス細粒体11が目的とする充填量に達していると検出された場合には、カウンタ101にてカウントされる充填回数X0が所定の充填回数Xa未満であるか否かを判断し(S9)、充填回数X0が所定の充填回数Xa未満である場合には、加圧ピストン6が反応容器2の入口付近に引っかかるなどの異常が発生した事により加圧ピストン6が適切に下降しなかったものと推測し、装置を停止する(S10)。充填回数X0が所定の充填回数Xa以上である場合には、反応工程に移行する。このように、カウンタ101にて充填回数X0をカウントすることにより、充填時加圧における異常を簡単に且つリアルタイムで把握することが可能となる。
【0046】
反応工程では、図13に示すように、加圧シリンダ7を高圧にて下降側に駆動して加圧ピストン6を下降させ(S13)、バイオマス細粒体11を反応させるために必要とされる所定の圧力範囲P2(第2の圧力段階)で該バイオマス細粒体11を加圧する。また、熱媒を反応容器2の冷熱媒通路4に循環させ所定の温度範囲でバイオマス細粒体11を加熱する(S14)。所定の圧力範囲P2は、上記したようにバイオマス細粒体中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。好適には、圧力範囲P2を8〜25MPa、温度範囲を115〜230℃とする。反応容器2内のバイオマス細粒体11は、上記した加圧、加熱状態を一定時間保持する。例えば、シリンダ径が50mmの場合、保持時間は10〜20分間で、150mmの場合は30〜60分間とする。
そして、タイマ102にて熱媒循環時間が終了したか否かを判断し(S15)、終了したら冷熱媒循環機構を熱媒から冷媒に切り替えて、冷熱媒通路4への冷媒循環を開始する(S16)。同様にタイマ102にて冷媒循環時間が終了したか否かを判断し(S17)、終了したら冷媒循環を停止し、排出工程に移行する。
【0047】
排出工程では、図2(i)に示すように加圧シリンダ7の高圧を抜き(S18)、図2(ii)に示すように排出用油圧機構10を駆動して底面蓋部9をスライドして排出部5を開放する(S19)。次いで、図2(iii)に示すように加圧シリンダ7を低圧で下降側に駆動させ、反応容器2内に製造されたバイオコークス成形体19を加圧ピストン6により押出し排出する(S20)。バイオコークス成形体19が反応容器2底部に引っかかった場合には、底面蓋部9に設けられた突起部9aにてバイオコークス成形体19を押圧して落下させる。
このとき、位置センサ20により検出される加圧ピストン6の位置が下降端位置まで到達したか否かを判断し(S21)、到達した場合には加圧シリンダ7を低圧で上昇側に駆動させ加圧ピストン6を上昇させる(S22)とともに底面蓋部9を閉鎖し(S23)、加圧ピストン6を上昇端まで移動させる(S24)。そして、制御装置100に通常運転停止命令が入力された場合には(S25)、運転を終了する(S26)。停止命令が入力されていない場合には(S25)、S3まで戻り、充填回数をリセットした後、原料投入(S4)移行のステップを繰り返し行う。
【0048】
上記したように本実施形態では、充填工程にて、先ず加圧ピストン6を低圧の第1の圧力段階で作動させてバイオマス細粒体11の充填時加圧を行い、次いで反応工程で加圧ピストン6の圧力を上昇させるとともにこれに連動させて冷熱媒通路4に熱媒を通流させ、反応容器2内でバイオマス細粒体11を略密閉状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲(第2の圧力段階)で加圧しながら加熱し、所定時間保持した後に、加圧状態は保持したまま冷熱媒通路4を熱媒から冷媒に切り替えて冷却を行い、バイオコークス成形体19を製造するようにしている。このように、制御装置100により加圧用油圧機構8、排出用油圧機構10及び冷熱媒循環機構を連動させて制御することにより、短時間で且つ効率的にバイオコークスを製造することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本実施形態に係るバイオコークス製造装置及び製造方法を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高密度のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施形態にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ炉、高炉等における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 バイオコークス製造装置
2 反応容器
2b 切欠部
4 冷熱媒通路
5 排出部
6 加圧ピストン(加圧体)
7 加圧シリンダ
8、10 油圧機構
9 底面蓋部
9a 突起部
11 バイオマス細粒体
30 冷熱媒回路
100 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを製造するためのバイオコークス製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO2排出の削減が推進されている。特に、製鉄業界に於いて鋳造炉(キュウポラ炉)や高炉などでは、主たる燃料や還元剤に化石燃料である石炭コークスが用いられている。また、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多い。この化石燃料は、CO2排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
【0003】
そこで、化石燃料の代替として、大気中のCO2量に影響を与えないバイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、農作物に基づく厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用し地球環境保全に貢献することができる。
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて固体及び液体の燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
【0004】
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
【0006】
そこで、近年石炭コークスの代替として、特許文献3(特許第4088933号公報)に基づくバイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後に、加圧を維持した状態で冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス細粒体中の主成分であるリグニン、セルロース及びヘミセルロースのうち、ヘミセルロースを熱分解させると共にセルロース及びリグニンの骨格を保持しつつ低温反応させて半炭化或いは半炭化前固形物を得る圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高圧密されたバイオコークスが製造できる。
【0007】
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス細粒体の繊維成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、バイオマス細粒体に含まれる自由水がこの加圧、加熱条件下での作用によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高圧密されたバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0008】
図14に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.52に高圧密され、最高圧縮強度20〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【特許文献3】特許第4088933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、バイオコークスは未だ研究段階であり、特許文献3には加圧手段や加熱、冷却手段等の具体的な装置構成やその制御については開示されておらず、バイオコークスを短時間で且つ効率的に製造する技術については言及されていなかった。
また、特許文献3に示されるように筒状容器でバイオコークスを製造する場合、成形されたバイオコークスを容器底部より落下させて排出することが考えられるが、このとき筒状容器の底部にバイオコークスが引っかかりバイオコークスを円滑に排出できない惧れがある。バイオコークスが容器底部に引っかかった時、人手により容器からバイオコークスを取る作業を行うと、連続運転する場合には運転を毎回停止しなければならず、生産性の低下を引き起こしてしまう。
そこで本発明は、容器内に成形されたバイオコークスの排出を円滑に行い、バイオコークスを短時間で且つ効率的に製造することを可能としたバイオコークス製造装置及び製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が形成され、前記加圧成形された成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とする。
【0012】
本発明は、反応容器底部の蓋部が駆動手段によりスライド移動して底部が開閉するようにし、また蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、反応容器底部に成形体が引っかかり落下しない場合に該突起部により成形体を押圧して傾け、反応容器底部より離間させて落下させることにより、成形体を確実に排出することが可能となる。突起部による押圧は、蓋部の閉止操作の一環であるため、押圧した後にそのままスライド移動して反応容器底部を閉止し、次のバイオマス細粒体充填工程に移れるため、操作時間の短縮化が図れる。
【0013】
また、前記突起部の設置位置及び長さは、反応容器底下端から該突起部までの高さ方向距離をx、前記反応容器の内径をR、前記突起部の長さをyとした場合、高さ方向距離xが(1/3)R<x<(2/3)Rで、且つ突起部長さyが(1/20)R<y<(1/5)Rとなるように設定したことを特徴とする。
このように突起部の設置位置及び長さを設定することにより、反応容器底部に引っかかった成形体を突起部により傾けて反応容器底部より離間させ、成形体を確実に落下させることが可能となる。
【0014】
さらに、前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする。
これにより、成形体の排出時に、成形体が反応容器底部に引っかかり排出されないことを極力回避することが可能となる。
【0015】
また、バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする。
本発明は、反応容器底部の蓋部を駆動手段によりスライド移動して底部が開閉するように構成し、加圧体を下降させて開放した底部から成形体を押出し排出するようにし、このとき反応容器下端がテーパ状に切り欠かれているため、成形体が反応容器底部に引っかかり排出されないことを極力回避することが可能となる。
【0016】
また、有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記蓋部をスライド移動して反応容器底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出するようにし、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、前記成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とする。
【0017】
これは、バイオマス細粒体を加圧体により加圧するとともにこれに連動させて加熱手段を作動させ、略密閉状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧してバイオマス細粒体を反応させ、所定時間保持した後に加圧体の加圧状態は保持したまま加熱手段から冷却手段に切り替えて冷却を行い、バイオコークス成形体を製造するようにしている。このように、加圧体と加熱手段及び冷却手段を連動させて制御することにより、短時間で且つ効率的にバイオコークスを製造することが可能となる。
さらに、成形体の排出時、反応容器底部の蓋部を開閉し加圧体で成形体を押出し排出する際に、蓋部先端に設けられた突起部にて成形体を押圧することにより、反応容器底部に成形体が引っかかり落下しない場合にも、新たに装置を追加することなく簡単に成形体を落下させ排出することが可能となる。さらにまた、突起部による押圧は、蓋部の閉止操作の一環であるため、押圧した後にそのままスライド移動して反応容器底部を閉止し、次のバイオマス細粒体充填工程に移れるため、操作時間の短縮化が図れる。
【0018】
また、有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の下端の内周縁が下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれ、前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記反応容器の底部に配置される蓋部をスライド移動して底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出することを特徴とする。
【0019】
これは、上記した方法の発明と同様に、加圧体と加熱手段及び冷却手段を連動させて制御することにより、短時間で且つ効率的にバイオコークスを製造することが可能となる。
さらに、成形体の排出時、反応容器底部の蓋部を開閉し加圧体で成形体を押出し排出する際に、反応容器下端がテーパ状に切り欠かれているため、反応容器底部に成形体が引っかかり排出操作が滞ることなく成形体を円滑に落下、排出させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、反応容器底部の蓋部が駆動手段によりスライド移動して底部が開閉するようにし、また蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、反応容器底部に成形体が引っかかり落下しない場合に該突起部により成形体を押圧して傾け、反応容器底部より離間させて落下させることにより、成形体を確実に排出することが可能となる。突起部による押圧は、蓋部の閉止操作の一環であるため、押圧した後にそのままスライド移動して反応容器底部を閉止し、次のバイオマス細粒体充填工程に移れるため、操作時間の短縮化が図れる。
【0021】
また、突起部の高さ方向位置を、反応容器底部から該突起部までの高さ方向距離が反応容器直径の1/2より大きい位置に設定することにより、反応容器底部に引っかかった成形体を突起部により傾けて反応容器底部より離間させ、成形体を確実に落下させることが可能となる。
さらに、反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることにより、成形体の排出時に、成形体が反応容器底部に引っかかり排出されないことを極力回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るバイオコークス製造装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排出工程の動作を説明する図である。
【図3】加圧体が最下端に位置する時の排出部の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)蓋部の開放状態を示す排出部の側断面図、(b)蓋部による押圧状態を示す排出部の側断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る排出部の構成を説明する拡大断面図である。
【図6】排出部の各設定値を算出した表である。
【図7】図4を応用させた排出部の側断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)排出部の側断面図、(b)切欠部の拡大断面図である。
【図9】加圧用油圧機構の油圧回路図である。
【図10】冷熱媒回路の一例を示すシステム構成図である。
【図11】本発明の実施形態に係るバイオコークス製造方法の全工程を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態に係る充填工程の動作を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係る反応工程の動作を説明する図である。
【図14】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の種類、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
本実施形態において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー滓や茶滓等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
本実施形態では、必要に応じて所定の含水率になるように水分調整されたバイオマス細粒体を原料としている。バイオマス細粒体は、茶滓やコーヒー滓等のように小粒径のバイオマスをそのまま用いてもよいし、廃木材等の大粒径のバイオマスを予め所定粒径以下まで粉砕したものであってもよい。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
図1に示すように、バイオコークス製造装置1はバイオマス細粒体11が投入される円筒形の反応容器2を有している。該反応容器2の上部にはバイオマス細粒体11を受け入れる漏斗状のホッパ3が設けられ、下端には成形されたバイオコークスを排出する排出部5が設けられている。また、反応容器2は、内容物を所定温度まで加熱する加熱手段と、加熱後に内容物を冷却する冷却手段とを備える。さらに、反応容器2の上方には、該シリンダ2内のバイオマス細粒体11を所定圧力まで加圧する加圧手段が設けられている。さらにまた、加圧ピストン6の上下方向の位置を検出する位置センサ20が設けられていることが好ましい。
【0025】
次いで、各装置、部位の詳細な構成を以下に記載する。
前記反応容器2の上部に設けられたホッパ3は、該ホッパ3にバイオマス細粒体11を供給する原料供給部(不図示)を備えている。該原料供給部は、バイオマス細粒体11を定量計量してホッパ3に投入する装置であってもよいし、又はバイオマス細粒体11をホッパ3に連続投入する装置であってもよい。
前記反応容器2の排出部5は反応容器2の径と同一径の開口からなり、その下方には該排出部5を開閉する排出装置が設けられている。該排出装置は、排出部5を閉止する底面蓋部9と、該底面蓋部9に設けられた突起部9aと、前記底面蓋部9を水平方向にスライドさせて排出部5の閉止、開放を制御する排出用油圧機構10とから構成される。この排出装置は、反応容器2内にて反応工程が終了した後に、油圧機構10を駆動させ底面蓋部9をスライドさせて排出部5を開放し、シリンダ2内のバイオコークスを落下させて排出するようになっている。この排出装置については後に詳述する。
【0026】
前記反応容器2が備える加圧手段は、加圧シリンダ7により駆動されて反応容器2の内周面を上下摺動する加圧ピストン(加圧体)6と、該加圧シリンダ7内の作動油の給排を制御する加圧用油圧機構8とからなる(図9参照)。加圧ピストン6及び加圧シリンダ7は、反応容器2と同軸上に配置される。加圧ピストン6は、反応容器2の底面付近まで下降する。該加圧ピストン6は、所定時間だけこの加圧状態を保持できる構成となっている。
【0027】
図9に、加圧用油圧機構の油圧回路図の一例を示す。加圧シリンダ7に供給される作動油は、ポンプ77によりタンク76から汲み上げられ、電磁弁78により供給量を制御されて加圧シリンダ7に供給される。該電磁弁78は制御装置100により開度制御され、この開度に基づいて加圧ピストン6の圧力値が調整されるようになっている。加圧ピストン6の圧力段階は、バイオマス細粒体11を反応させて半炭化或いは半炭化前固形物を得る圧力範囲より低圧で、バイオマス細粒体11を充填時加圧する第1の圧力段階P1と、充填時加圧したバイオマス細粒体11を前記圧力範囲で加圧する第2の圧力段階P2と、の少なくとも2段階を有する。
また、電磁弁78と加圧シリンダ7の間の作動油通路には逆止弁71、72が設けられている。このうち、電磁弁78と加圧シリンダ7の背圧室7aの間の作動油通路に配置された逆止弁72の作動油圧力が圧力検知センサ75によって背圧として検知される。
【0028】
図1に戻り、前記反応容器2が備える加熱手段及び冷却手段は、同一の温度調整手段としてもよい。本実施形態では、温度調整手段として、反応容器2にジャケットを設けた二重管構造とし、内筒と外筒の間に冷熱媒通路4を設けた構成としている。冷熱媒通路4には、熱媒若しくは冷媒(以後、冷熱媒と称する)が通流し、該冷熱媒による伝熱によりシリンダ内筒に充填されたバイオマス細粒体11に熱エネルギの授受を行うようになっている。冷熱媒通路4の下方側には冷熱媒入口4aが設けられ、上方側には冷熱媒出口4bが設けられている。これらの冷熱媒入口4a及び冷熱媒出口4bは、後述する冷熱媒回路に接続されている(図10参照)。冷熱媒通路4、冷熱媒入口4a、冷熱媒出口4b、冷熱媒回路を含み、冷熱媒の切り替えにより反応容器2の温度制御を行う機構を冷熱媒循環機構と称する。
【0029】
図10を参照して、冷熱媒循環機構が備える冷熱媒回路30の一例につき説明する。この冷熱媒回路30を用いることにより、熱効率が高く且つ安全性の高い温度調整手段とすることが可能であるが、もちろん他の構成の冷熱媒回路を用いてもよい。この冷熱媒回路30では、冷媒及び熱媒にシリコンオイルを用いることが好ましい。
反応容器2の冷熱媒入口4aと出口4bは、同図に示される冷熱媒回路30に夫々接続されている。該冷熱媒回路30は、冷媒回路と熱媒回路とが組み合わされた構成となっている。冷熱媒出口4bは、冷熱媒排出ライン41に接続され、該排出ライン41上の三方バルブ45を介して熱媒戻りライン42と、冷媒戻りライン43に分岐している。
熱媒戻りライン42は熱媒タンク31に接続されている。該熱媒タンク31は、加熱器31aと、撹拌機31bを具備しており、冷却された熱媒を昇温するようになっている。必要に応じてN2ボンベからN2ガスが供給されるようにし、タンク内を不活性雰囲気に保持して安全性を確保することが好ましい。熱媒タンク31の出口側は、三方バルブ46を介して冷熱媒供給ライン40に接続されている。
このような構成を用いて、反応容器2の加熱時には、三方バルブ45、46を制御することにより熱媒タンク31側に熱媒が循環するようにし、熱媒タンク31、冷熱媒供給ライン40、冷熱媒通路4(反応容器2)、冷熱媒排出ライン41、熱媒戻りライン42からなる熱媒回路を形成する。
【0030】
冷媒戻りライン43は、冷媒熱交換器36に接続されている。該冷媒熱交換器36は、上水等の冷却水と冷媒とを熱交換し、冷媒を冷却する構成となっている。
さらに、好適には冷媒戻りライン43の冷媒熱交換器36より上流側に、冷媒タンク35を設ける。この冷媒タンク35は、少なくとも冷媒温度を水の沸点以下、好適には80℃以下まで冷却する能力を有するものとする。さらに、冷媒タンク35は、撹拌機35aを具備することが好ましく、これにより冷媒タンク35出口の冷媒温度変化を軽減し冷却能力を向上させる。
このような構成を用いて、反応容器2の冷却時には、三方バルブ45、46を制御することにより冷媒タンク35側に切り替えて、該冷媒タンク35側に冷媒が循環するようにし、冷媒タンク35、冷媒熱交換器36、冷熱媒供給ライン40、冷熱媒通路4(反応容器2)、冷熱媒排出ライン41、冷媒戻りライン43からなる冷媒回路を形成する。
このように、反応容器2内のバイオマス細粒体11の加熱手段、冷却手段として、冷熱媒回路30を備えた冷熱媒循環機構を用いることにより、バイオマス細粒体11の加熱又は冷却が迅速に行え、また加熱から冷却への切替を円滑に行うことが可能となる。
【0031】
図1に戻り、上記した加圧用油圧機構8、排出用油圧機構10及び冷熱媒循環機構は、制御装置100により制御される。該制御装置100は、中央処理装置
(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。さらに、制御装置100は、加圧用油圧機構8の加圧ピストン6の充填回数等をカウントするカウンタ101、所定の制御における継続時間を計測するタイマ102を備えている。
【0032】
上記した構成を備えるバイオコークス製造装置1では、反応容器2内にバイオマス細粒体11を充填して充填時加圧する充填工程を行った後、バイオマス細粒体11を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形して一定時間保持し、加圧を維持した状態で冷却してバイオコークス成形体を生成する反応工程を行い、最後に反応容器2内に生成されたバイオコークス成形体を排出する排出工程を行う。前記温度範囲、圧力範囲は、バイオマス細粒体中の主成分であるリグニン、セルロース及びヘミセルロースのうち、ヘミセルロースを熱分解させると共にセルロース及びリグニンの骨格を保持しつつ低温反応させて半炭化或いは半炭化前固形物を得る圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス細粒体中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する温度範囲及び圧力範囲である。
【0033】
本実施形態は、前記排出工程にて、反応容器2の下端にバイオコークス成形体が引っかかって排出されない事態を解消する構成を備えている。
図2は本発明の実施形態に係る排出工程の動作を説明する図である。
反応工程が終了した後、図2(i)に示すように加圧シリンダ7の高圧を抜き、図2(ii)に示すように油圧機構10を駆動させて底面蓋部9をスライド移動させ、排出部5を開放する。そして、図2(iii)に示すように加圧ピストン6を低圧下降させて反応容器2内に成形されたバイオコークス成形体19を押出し排出する。
【0034】
図3に示すように、加圧ピストン6の最下端位置は、反応容器下端との間に数mmの隙間dが残るように設定されている。これは、加圧ピストン6が反応容器下端より下方に突出すると、加圧ピストン6が故障して上昇しなかった場合に、突出した加圧ピストン6が底面蓋部9に当たる惧れがあるためである。
しかしながら、この隙間dを設けることにより、バイオコークス成形体19が隙間dに引っかかって落下しない場合がある。バイオコークス成形体19が引っかかった状態で底面蓋部9が閉まると、硬いバイオコークス成形体19を反応容器2に垂直に押し付けることになり、反応容器2が歪む可能性がある。
【0035】
従って、本実施形態では、図4乃至図8に示す構成を備えることによりバイオコークス成形体19を確実に落下させるようにしている。
図4は、本発明の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)蓋部の開放状態を示す排出部の側断面図、(b)蓋部による押圧状態を示す排出部の側断面図である。
同図に示すように、底面蓋部9に突起部9aを設けている。該突起部9aは、底面蓋部9のスライド移動方向先端で且つ反応容器2下端から離間した下方位置に設けられる。該突起部9aは、例えば底面蓋部9に連結された棒状体と、該棒状体の先端に設けられた球状体とから構成される。
【0036】
そして、図4(a)に示すように底面蓋部9を開放した状態から図4(b)に示すように底面蓋部9を閉側へスライド移動し、反応容器2下端に引っかかった状態のバイオコークス成形体19を突起部9aにて押圧することにより、バイオコークス成形体19が傾いて反応容器2下端より離間し、落下する。このとき、バイオコークス成形体19を反応容器2下端より離間した下方にて突起部9aにより点で押圧しているため、押圧力が反応容器2の下端2aを支点とした回転力となり、バイオコークス成形体19を傾けることが可能である。従って、バイオコークス成形体19を反応容器2側面に垂直に押し付けて反応容器2を変形させることを防止できる。
【0037】
好適には、前記突起部9aの設置位置及び長さは、反応容器底下端から該突起部9aまでの高さ方向距離をx、前記反応容器の内径をR、前記突起部の長さをyとした場合、高さ方向距離xが(1/3)R<x<(2/3)Rで、且つ突起部長さyが(1/20)R<y<(1/5)Rとなるように設定する。
このように突起部9aの高さ方向位置を設定することにより、反応容器2底部に引っかかったバイオコークス成形体19を突起部9aにより傾けて反応容器2底部より離間させ、成形体19を確実に落下させることが可能となる。
【0038】
さらに好適には、前記突起部9aの高さ方向位置は、以下のようにして設定されるとよい。
図5において、19は反応容器2に引っかかった状態のバイオコークス成形体、19’は傾いた状態のバイオコークス成形体19を表す。
突起部9aの高さ方向位置は、反応容器2の直径R、反応容器2へのバイオコークス成形体19の差込高さt(加圧ピストン6下端位置から反応容器2下端までの隙間)、傾いたバイオコークス成形体19’の上端から突起部9aまでの高さ方向距離(押位置)x、傾いたバイオコークス成形体19’の水平方向に対する傾斜角θ、反応容器2の下端から傾いたバイオコークス成形体19’上端までの傾斜隙間a、突起部9aの押し込み距離y、を用いて演算式により算出される。算出結果を図6の表に示す。
排出時の差込長さtは、実験で5mmである。実験の反応容器内径R=100mmより、押位置X=50mmの場合は、底面蓋部9を閉めるときに、成型後のバイオコークス19の上部が反応容器2の端から外れるのに必要な押距離yは図6の例1で計算される。この結果より、実験誤差を含めて上記したような突起部9aの相互の必要長さが決定される。
【0039】
また、前記突起部9aを応用した構成を図7に示す。同図に示すように、底面蓋部9の下方側を上方側より突出させた形状にし、該突出させた突起部9aにてバイオコークス成形体19を押圧するようになっている。突起部9aによりバイオコークス成形体19は、反応容器2底部より離間した位置にて、点又は水平方向の線で押圧され、押圧力が反応容器2の下端2aを支点とした回転力となり、バイオコークス成形体19を傾けることが可能となる。
【0040】
さらにまた、排出部5の別の実施形態を図8に示す。図8は本発明の実施形態に係る排出部の構成を示す図で、(a)排出部の側断面図、(b)切欠部の拡大断面図である。
本実施形態は、反応容器2の下端に切欠部2aを設けた構成となっている。該切欠部2aは、反応容器2の内周縁を下方側に拡径したテーパ状に切り欠かいて形成される。該切欠部2aの具体的な構成は、例えば反応容器2の肉厚が10mmの場合、切欠部2aの縦方向の長さL1を3mm、横方向の幅L2を1mmとする。
このように反応容器2の下端に切欠部2を設けることにより、バイオコークス成形体19の排出時に、該成形体19が反応容器底部に引っかかることを防止し、バイオコークス成形体19を円滑に排出することが可能となる。
この切欠部2aは、図4乃至図7に示した突起部9aと組み合わせて用いてもよい。
【0041】
次に、図11を参照して、バイオコークス製造方法の全工程のフローを説明する。
まず、充填工程において、制御装置100により充填操作を起動させる(S1)。これは、加圧用油圧機構8や排出用油圧機構10を含む各油圧機構、及び冷熱媒循環機構を起動させ(S2)、カウンタ101の充填回数をリセットする(S3)。即ち、充填回数をX(回)とすると、X0=0に設定する。このとき、図12(i)に示すように、加圧ピストン6は反応容器2上部の初期位置H0に設定しておく。
そして、原料であるバイオマス細粒体11をホッパ部3より反応容器2内に投入する(S4)。バイオマス細粒体11を投入後、図12(ii)に示すように、加圧用油圧機構8により加圧シリンダ7を低圧で下降側に駆動して加圧ピストン6を下降させる(S5)。低圧下降時の圧力は、後述する反応工程の圧力より低い第1の圧力段階P1とする。この時、カウンタ101の充填回数を+1増加させて、X0=X0+1とする(S6)。低圧下降時に制御装置100では、加圧シリンダ7の油圧Pが予め設定された所定圧力P1より大きいか否かを監視する(S7)。加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1以下の状態にて、タイマ102にて計測される加圧時間が予め設定された所定時間以上経過した場合は、S5に戻り再度加圧シリンダ7を下降側に駆動する。好適には、充填時加圧を行う第1段階の圧力P1は14MPaとし、所定時間は10秒とする。
【0042】
一方、加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1より大きい状態で所定時間以上経過した場合は、次いで反応容器2内のバイオマス細粒体11の充填量を検出する。これは、バイオコークスを目的とする大きさに成型するために行われる。
バイオマス細粒体11の充填量検出は以下のように行う。
図12(ii)に示すように、位置センサ20により下降時の加圧ピストン6の高さ方向位置Hを検出する。そして、検出された高さ方向位置Hが、目的とする高さ設定値H1以上であるか否か(H≧H1)を判断する(S8)。
【0043】
また、バイオマス細粒体11の充填量検出の別の方法として、加圧ピストン6が初期位置H0から加圧時の高さ方向位置Hまで下降する下降時間Tをタイマ102により検出して充填量を推定するようにしてもよい。この場合、予め初期位置H0から目的とする高さ設定値H1までの加圧ピストン6の下降時間を取得しておき、これを指定時間T1とする。そして検出された下降時間Tが指定時間T1以下であるか否か(T≦T1)を判断する(S8)。
このように、位置センサ20又は加圧ピストン6の下降時間Tを用いることにより、簡単にバイオマス細粒体11の充填量を検出することが可能となる。特に、位置センサ20を用いる場合は精度の高い検出が可能となり、下降時間Tを用いる場合は装置を安価にできる。
【0044】
反応容器2内の充填位置Hが充填目的位置H1に到達していない場合(H<H1)、若しくは加圧シリンダ7の下降時間Tが指定時間T1より長い場合(T>T1)は、充填量が不足していると判断し、加圧シリンダ7を上昇側に駆動し(S11)、加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1より大きいか否かを判断し(S12)、大きい場合にはS11に戻りさらに加圧シリンダ7を上昇側に駆動し、小さい場合には図12(iii)に示すように再度バイオマス細粒体11を投入して(S4)、S4以降の加圧シリンダ7の充填工程を繰り返し行う。この操作は、図12(iv)に示すように、加圧シリンダ7の油圧Pが所定圧力P1より大きく、且つバイオマス細粒体11の充填量が予め設定された充填量設定値H1以上となったら終了する。
上記したように充填工程を行うことにより、反応容器2にバイオマス細粒体11を投入する際に予め計量する必要がなく、一定の大きさのバイオコークスを得ることが可能となる。また、バイオマスは細粒体状で反応容器2に投入されるため嵩密度が低く、そのままの状態だと反応容器2の容積を大きくしなければならないが、充填工程にて加圧ピストン6により低圧で充填時加圧を行うことで、より多くのバイオマス細粒体11を投入することが可能となり、反応容器2の小型化が可能となる。
【0045】
S8にて反応容器2内のバイオマス細粒体11が目的とする充填量に達していると検出された場合には、カウンタ101にてカウントされる充填回数X0が所定の充填回数Xa未満であるか否かを判断し(S9)、充填回数X0が所定の充填回数Xa未満である場合には、加圧ピストン6が反応容器2の入口付近に引っかかるなどの異常が発生した事により加圧ピストン6が適切に下降しなかったものと推測し、装置を停止する(S10)。充填回数X0が所定の充填回数Xa以上である場合には、反応工程に移行する。このように、カウンタ101にて充填回数X0をカウントすることにより、充填時加圧における異常を簡単に且つリアルタイムで把握することが可能となる。
【0046】
反応工程では、図13に示すように、加圧シリンダ7を高圧にて下降側に駆動して加圧ピストン6を下降させ(S13)、バイオマス細粒体11を反応させるために必要とされる所定の圧力範囲P2(第2の圧力段階)で該バイオマス細粒体11を加圧する。また、熱媒を反応容器2の冷熱媒通路4に循環させ所定の温度範囲でバイオマス細粒体11を加熱する(S14)。所定の圧力範囲P2は、上記したようにバイオマス細粒体中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。好適には、圧力範囲P2を8〜25MPa、温度範囲を115〜230℃とする。反応容器2内のバイオマス細粒体11は、上記した加圧、加熱状態を一定時間保持する。例えば、シリンダ径が50mmの場合、保持時間は10〜20分間で、150mmの場合は30〜60分間とする。
そして、タイマ102にて熱媒循環時間が終了したか否かを判断し(S15)、終了したら冷熱媒循環機構を熱媒から冷媒に切り替えて、冷熱媒通路4への冷媒循環を開始する(S16)。同様にタイマ102にて冷媒循環時間が終了したか否かを判断し(S17)、終了したら冷媒循環を停止し、排出工程に移行する。
【0047】
排出工程では、図2(i)に示すように加圧シリンダ7の高圧を抜き(S18)、図2(ii)に示すように排出用油圧機構10を駆動して底面蓋部9をスライドして排出部5を開放する(S19)。次いで、図2(iii)に示すように加圧シリンダ7を低圧で下降側に駆動させ、反応容器2内に製造されたバイオコークス成形体19を加圧ピストン6により押出し排出する(S20)。バイオコークス成形体19が反応容器2底部に引っかかった場合には、底面蓋部9に設けられた突起部9aにてバイオコークス成形体19を押圧して落下させる。
このとき、位置センサ20により検出される加圧ピストン6の位置が下降端位置まで到達したか否かを判断し(S21)、到達した場合には加圧シリンダ7を低圧で上昇側に駆動させ加圧ピストン6を上昇させる(S22)とともに底面蓋部9を閉鎖し(S23)、加圧ピストン6を上昇端まで移動させる(S24)。そして、制御装置100に通常運転停止命令が入力された場合には(S25)、運転を終了する(S26)。停止命令が入力されていない場合には(S25)、S3まで戻り、充填回数をリセットした後、原料投入(S4)移行のステップを繰り返し行う。
【0048】
上記したように本実施形態では、充填工程にて、先ず加圧ピストン6を低圧の第1の圧力段階で作動させてバイオマス細粒体11の充填時加圧を行い、次いで反応工程で加圧ピストン6の圧力を上昇させるとともにこれに連動させて冷熱媒通路4に熱媒を通流させ、反応容器2内でバイオマス細粒体11を略密閉状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲(第2の圧力段階)で加圧しながら加熱し、所定時間保持した後に、加圧状態は保持したまま冷熱媒通路4を熱媒から冷媒に切り替えて冷却を行い、バイオコークス成形体19を製造するようにしている。このように、制御装置100により加圧用油圧機構8、排出用油圧機構10及び冷熱媒循環機構を連動させて制御することにより、短時間で且つ効率的にバイオコークスを製造することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本実施形態に係るバイオコークス製造装置及び製造方法を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高密度のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施形態にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ炉、高炉等における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 バイオコークス製造装置
2 反応容器
2b 切欠部
4 冷熱媒通路
5 排出部
6 加圧ピストン(加圧体)
7 加圧シリンダ
8、10 油圧機構
9 底面蓋部
9a 突起部
11 バイオマス細粒体
30 冷熱媒回路
100 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が形成され、前記加圧成形された成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記突起部の設置位置及び長さは、反応容器底下端から該突起部までの高さ方向距離をx、前記反応容器の内径をR、前記突起部の長さをyとした場合、高さ方向距離xが(1/3)R<x<(2/3)Rで、且つ突起部長さyが(1/20)R<y<(1/5)Rとなるように設定したことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項5】
有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記蓋部をスライド移動して反応容器底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出するようにし、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、前記成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とするバイオコークス製造方法。
【請求項6】
有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の下端の内周縁が下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれ、前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記反応容器の底部に配置される蓋部をスライド移動して底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出することを特徴とするバイオコークス製造方法。
【請求項1】
バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が形成され、前記加圧成形された成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記突起部の設置位置及び長さは、反応容器底下端から該突起部までの高さ方向距離をx、前記反応容器の内径をR、前記突起部の長さをyとした場合、高さ方向距離xが(1/3)R<x<(2/3)Rで、且つ突起部長さyが(1/20)R<y<(1/5)Rとなるように設定したことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
バイオマス細粒体が充填される反応容器を備え、前記反応容器内のバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造装置において、
前記反応容器が筒状に形成され、
前記反応容器の底部に蓋部が配設され、該蓋部を水平方向にスライド移動して反応容器底部を開閉する駆動手段が設けられ、
前記反応容器の下端の内周縁が、下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれていることを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項5】
有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記蓋部をスライド移動して反応容器底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出するようにし、
前記蓋部には、スライド移動方向の先端側で且つ反応容器底部より離間した下方位置に突起部が設けられ、前記成形体の排出時に、前記突起部により該成形体を押圧して落下させることを特徴とするバイオコークス製造方法。
【請求項6】
有底筒状の反応容器に充填したバイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークス成形体を製造するバイオコークス製造方法において、
前記反応容器の下端の内周縁が下方側に拡径したテーパ状に切り欠かれ、前記反応容器の底部に、水平方向にスライド移動して開閉する蓋部が設けられ、
前記バイオマス細粒体を、反応容器上部から挿入した加圧体により前記圧力範囲にて加圧するとともに加熱手段により前記温度範囲に加熱して保持した後、前記加熱手段から冷却手段に切り替えて前記反応容器内に生成された成形体を冷却し、
前記加圧体の圧力を低下させた後、前記反応容器の底部に配置される蓋部をスライド移動して底部を開放し、前記加圧体を下降させて前記開放した底部より成形体を押出し排出することを特徴とするバイオコークス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−100808(P2010−100808A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83888(P2009−83888)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度〜平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構・イノベーション実用化開発費(大学発事業創出実用化研究開発事業)「鋳造コークス代替となる高硬度固形バイオ燃料の量産機開発と実証」交付規程第7条第1項第二号の規定・助成研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度〜平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構・イノベーション実用化開発費(大学発事業創出実用化研究開発事業)「鋳造コークス代替となる高硬度固形バイオ燃料の量産機開発と実証」交付規程第7条第1項第二号の規定・助成研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】
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