バイオセンサー、及び、分子量分画方法
【課題】 簡易な構成で液体の分子量分画を行うことの可能なバイオセンサー、及び、分子量分画方法を提供する。
【解決手段】 金属膜50の表面には、分子量分画層70が形成されている。分子量分画層70は、誘電体ブロック42の長手方向に濃度勾配を有するゲルで構成されており、供給口45A側の濃度が高く、排出口45B側の濃度が低い、6段階の濃度のゲルで分画領域E1〜E6が構成されている。供給口45A側では分子量の小さい物質のみを分子量分画層70内へ進入させることができ、排出口45B側へ向かうにつれて徐々に分子量の大きい物質を分子量分画層70内へ進入させることができる。
【解決手段】 金属膜50の表面には、分子量分画層70が形成されている。分子量分画層70は、誘電体ブロック42の長手方向に濃度勾配を有するゲルで構成されており、供給口45A側の濃度が高く、排出口45B側の濃度が低い、6段階の濃度のゲルで分画領域E1〜E6が構成されている。供給口45A側では分子量の小さい物質のみを分子量分画層70内へ進入させることができ、排出口45B側へ向かうにつれて徐々に分子量の大きい物質を分子量分画層70内へ進入させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料に含まれる分子を分画すると共に、分画された分子を検出するバイオセンサー、及び、このバイオセンサーでの分子量分画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性物質の分析として、異なる分子量の物質の分子量分画を行って、対象物質の特定を行う方法として、電気泳動法が知られている(特許文献1参照)。この電気泳動法では、濃度勾配を持つゲルの両端に電極を配置して電圧を印加することにより、供給した試料の分子量分画が行われる。
【特許文献1】特開平5−203621号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的な電気泳動法では、ゲルの両端に電極を配置する必要があり、装置構成が複雑になってしまう。
【0004】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、簡易な構成で液体の分子量分画を行うことの可能なバイオセンサー、及び、分子量分画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のバイオセンサーは、液体試料の供給される供給口、及び前記液体試料の排出される排出口の形成された液体流路と、前記液体流路に表面が露出され、前記液体試料の進行方向に異なる部分で異なる分子量の分子を進入させる分子量分画層と、前記分子量分画層に進入した分子を検出する検出手段と、を含んで構成されている。
【0006】
本発明のバイオセンサーでは、液体流路内に予め緩衝液を供給しておき、緩衝液で満たされている液体流路へ供給口から液体試料を供給することにより、液体試料中の分子は、排出口側へと拡散される。また、液体試料中の分子は、液体流路に露出された分子量分画層の表面から分子量分画層内へ進入し拡散される。したがって、供給口側で分子量分画層内へ進入する分子量の分子は、排出口側へ拡散されにくく、供給口側で分子量分画層内へ進入できない分子量の分子は、液体流路の排出口側へ拡散されやすくなる。
【0007】
このように、液体試料中の分子の、供給口側から排出口側への拡散、及び、分子量分画層の表面から分子量分画層内への拡散を利用することにより、電極を用いることなく簡易な構成で分子量分画を行うことができる。
【0008】
なお、本発明のバイオセンサーは、請求項2に記載のように、前記検出手段が、非電気化学的検出であること、を特徴とすることができる。
【0009】
このように、非電気化学的検出を用いることにより、測定時に検出されるものと検出部との間に相互作用(電子移動など)が生じないため、検出物の回収などの操作を容易にすることができる。また、測定対象の荷電などをより現実に近いままで測定することができる。
【0010】
請求項3記載のバイオセンサーは、前記分子量分画層が、前記液体試料の進行方向に濃度勾配を持つゲルで形成されていること、を特徴とする。
【0011】
このように、分子量分画層を濃度勾配を持つゲルにより形成することで、異なる分子量の分子を分画することができる。
【0012】
なお、前記ゲルの濃度勾配は、請求項4に記載のように、前記供給口側の濃度を前記排出口側の濃度よりも高くすることにより、供給口側のゲル内へ分子量の小さい分子を進入させることができ、分子量の大きい分子を液体流路内の排出口側へ拡散させることができる。
【0013】
また、前記分子量分画層は、請求項5に記載のように、アガロース誘電体、または、アクリルアミド誘電体、を含んで構成することができる。
【0014】
請求項6に記載のバイオセンサーは、液体クロマトグラフィと接続されていること、を特徴とする。
【0015】
このように、液体クロマトグラフィと接続することにより、液体クロマトグラフィによって可能な液体試料の他の属性による分画と、分子量による分子量分画とを組み合わせて、実施することができる。
【0016】
請求項7記載のバイオセンサーは、前記分子量分画層が金属膜上に構成され、前記検出手段は、前記金属膜の前記分子量分画層と逆側の面へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して、前記分子量分画層へ進入した分子を検出すること、を特徴とする。
【0017】
このように、金属膜表面での全反射減衰を利用した検出として、表面プラズモン共鳴、漏洩モード検出を用いることができる。
【0018】
なお、前記金属膜は、請求項8に記載のように、誘電体ブロックの光反射面に形成され、前記検出は、前記誘電体ブロックを介して前記金属膜へ光ビームを入射させると共に入射させた光ビームを反射させて行なわれること、を特徴とすることができる。
【0019】
上記構成によれば、金属膜が誘電体ブロック上に直接形成されるので、金属膜と誘電体ブロックとが別体とされている場合と比較して、光学的なロスを少なくすることができる。また、金属膜と誘電体ブロックとが別体とされている場合には、誘電体ブロックと金属膜の形成された板との間に屈折率マッチングオイル等を注入する必要があるが、上記構成であれば屈折率マッチングオイル等を注入する必要はなく、回収装置の構成を簡単にすることができると共に、取り扱いも簡単になり、利便性が高まる。
【0020】
請求項9に記載の分子量分画方法は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載されたバイオセンサーを用いて液体試料の分子量分画を行う分子量分画方法であって、予め所定の緩衝液の供給されている前記液体流路へ、前記液体流路の容積よりも少ない量の液体試料を前記供給口から供給する液体試料供給ステップと、前記液体試料の供給後、前記検出手段で前記分子量分画層の前記進行方向の異なる複数箇所において前記進入した分子を検出する検出ステップと、を備えたものである。
【0021】
本発明の分子量分画方法では、まず、前記液体流路の容積よりも少ない量の液体試料を前記供給口から供給する。これにより、予め供給されている緩衝液が排出口側へ押し出されるが、供給される液体試料は液体流路の容積よりも少ない量なので、液体流路内に緩衝液は残る。したがって、供給された液体試料の分子は、分子量分画層内へ進入すると共に、緩衝液側、すなわち、排出口側へも拡散される。
【0022】
ところで、分子量分画層は、異なる分子量の分子を分画可能な層であるので、供給口側で分子量分画層内へ拡散される分子量の分子は、排出口側へ拡散されにくく、供給口側で分子量分画層内へ進入できない分子量の分子は、液体流路の排出口側へ拡散されやすくなる。したがって、供給口側の分子量分画層と排出口側の分子量分画層とで、異なる分子量の分子が進入し、分子量分画を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上記構成としたので、流路部材に非特異的に吸着したアナライトが回収されてしまうことがなく、不要な物質が回収物質に混入するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0025】
本発明のバイオセンサーは、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、液体中の物質が測定面に存在するかどうかを検出する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0026】
図1に示すように、バイオセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、押さえ部26、光学測定部54、及び、制御部60を備えている。
【0027】
トレイ保持部12は、載置台12A、及び、ベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、トレイTが2枚、位置決めして載置される。トレイTには、センサースティック40が収納されている。センサースティック40は、試料を流すための流路を備えたチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げる、押上機構12Dが配置されている。
【0028】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0029】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備えている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図4にも示すように金属膜50が形成されている。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0030】
金属膜50の表面には、図4に示すように、分子量分画層70が形成されている。分子量分画層70は、誘電体ブロック42の長手方向に濃度勾配を有するゲルで構成されている。ゲルとしては、アクリルアミド、アガロース、酢酸セルロース、デンプン、デキストランなどを用いることができる。濃度勾配は、流路部材44の後述する供給口45A側の濃度が高く、排出口45B側の濃度が低くなっている。これにより、供給口45A側では分子量の小さい物質のみを分子量分画層70内へ進入させることができ、排出口45B側へ向かうにつれて徐々に分子量の大きい物質を分子量分画層70内へ進入させることができる。
【0031】
なお、前述のゲルの濃度は、1%〜15%(質量%)の範囲であることが好ましい。
【0032】
分子量分画層70は、次のようにして形成することができる。まず、図5(A)に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50部分の外側にスペーサー板72を配置し、その上に蓋部材74を積層して、金属膜50と蓋部材74との間に空間を構成する。そして、図5(B)に示すように、誘電体ブロック42を鉛直方向に向けて、前記空間へ濃度の異なるゲルを順次充填する。所定時間おいてゲルを固め、スペーサー板72及び蓋部材74を除去することで、分子量分画層70を形成することができる。
【0033】
なお、架橋剤としては、「Electrophoresis」1989,2,220-228に記載されているが、アクリルアミドゲルでは、N,N'-メチレンビスアクリルアミドに代表される2価の重合架橋剤、水酸基含有のゲルであれば、ポリエポキシ化合物などが挙げられる。
【0034】
本実施形態では、6段階の濃度のゲルを順に充填して、異なる分子量の分子を進入させることの可能な6つの領域(以下各領域を「分画領域E1〜E6」という、図6参照)で分子量分画層70が形成されている。分画領域E1〜E6には、各々光ビームL1〜L6が入射される。
【0035】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材52と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0036】
流路部材44は、誘電体ブロック42よりもわずかに狭幅の直方体状とされ、図4に示すように、誘電体ブロック42の分子量分画層70上に配置されている。各々の流路部材44の下面には流路溝44Aが形成されており、上面に形成された供給口45A及び排出口45Bと連通されて、分子量分画層70との間に、液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0037】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0038】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Aを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0039】
図1に示すように、バイオセンサー10の搬送部14は、上部ガイドレール14A、下部ガイドレール14B、及び、スティック保持部材14C、を含んで構成されている。上部ガイドレール14A及び下部ガイドレール14Bは、トレイ保持部12及び光学測定部54の上部で、矢印Y方向と直交する矢印X方向に水平に配置されている。上部ガイドレール14Aには、スティック保持部材14Cが取り付けられている。スティック保持部材14Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール14Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材14Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール14Bとが係合され、スティック保持部材14Cが矢印X方向に移動することにより、センサースティック40が光学測定部54上の測定部56に搬送される。また、測定部56には、測定時にセンサースティック40を押さえる押さえ部材58が備えられている。押さえ部材58は、図示しない駆動機構によりZ方向に移動可能とされ、測定部56に配置されたセンサースティック40を上側から押圧する。
【0040】
容器載置台16には、試料プレート17、廃液回収容器18、バッファー液容器19が載置されている。試料プレート17には、各種の試料がストックされている。廃液回収容器18は、回収容器18A〜18Hで構成されており、回収容器18A〜18Hには、後述するピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。バッファー液容器19は、複数のストック容器19A〜19EH構成されており、回収容器と同様にピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
【0041】
液体吸排部20は、上部ガイドレール14A、及び、ガイドレール16Bよりも上方で、矢印Y方向に架け渡された横断レール22、及び、ヘッド24を含んで構成されている。横断レール22は、図示しない駆動機構により、矢印X方向移動可能とされている。また、ヘッド24は、横断レール22に取り付けられ、矢印Y方向に移動可能とされている。また、ヘッド24は、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド24は、図7に示すように、2本のピペット部24A、24Bを備えている。ピペット部24A、24Bには、先端部にピペットチップCPが取り付けられ、個々にZ方向の長さを調整可能とされている。ピペットチップCPは、図示しないピペットチップストッカーに多数ストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0042】
なお、本実施形態においてはセンサースティック40への液体供給はピペットチップCPにより行われるが、ピペットチップの代わりに、一端が上記各溶液プレートに接続され、他端がセンサースティック40に接続可能とされたインジェクションチューブを設け、送液ポンプにより液体の供給を行ってもよい。
【0043】
光学測定部54は、図8に示すように、光源54A、第1光学系54B、第2光学系54C、受光部54D、信号処理部54E、を含んで構成されている。光源54Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系54Bを介して、6本の光ビームL1〜L6となり、測定部56に配置された誘電体ブロック42の分画領域E1〜E6に各々入射される。分画領域E1〜E6において、光ビームL1〜L6は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1〜L6は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1〜L6も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1〜L6は、第2光学系54Cを経て受光部54Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、分画領域E1〜E6の全反射減衰角のデータ(以下「全反射減衰角データ」という)が求められる。この全反射減衰角データが制御部60へ出力される。
【0044】
制御部60は、バイオセンサー10の全体を制御する機能を有し、図8に示すように、光源54A、信号処理部54E、及び、バイオセンサー10の図示しない駆動系と接続されている。制御部60は、図9示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU60A、ROM60B、RAM60C、メモリ60D、及び、インターフェースI/F60E、を有し、各種の情報を表示する表示部62、各種の指示、情報を入力するための入力部64と接続されている。
【0045】
メモリ60Dには、バイオセンサー10を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。
【0046】
次に、バイオセンサー10での、分子量分画の手順について説明する。
【0047】
バイオセンサー10の載置台12Aには、液体流路45にバッファー液Cが充填されたセンサースティック40入りのトレイがセットされている。また、試料プレート17には試料TAが、バッファー液容器19にはバッファー液が、各々セットされている。
【0048】
まず、押上機構12Dにより、1のセンサースティック40がスティック保持部材14Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材14Cにより保持される。そして、スティック保持部材14Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール14Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部56へ搬送する。測定部56へ搬送されたセンサースティック40は、所定の測定位置に位置決めされて押さえ部材58により、上部から押圧され固定される。
【0049】
入力部64から測定開始の指示が入力されると、制御部60では、図10に示す測定処理が実行される。測定処理では、液体流路45にバッファー液が充填されている状態での全反射データを補正用全反射データとして取得し、その後、試料TAを供給して全反射データをプロファイルする。
【0050】
まず、ステップS12で、光源54Aへ光ビームLの出射指示信号を出力する。これにより、光源54Aから光ビームLが出射される。出射された光ビームLは、第1光学系54Bで6本の光ビームL1〜L6となり、液体流路45の分画領域E1〜E6へ各々入射される。また、ステップS14で、受光部54D及び信号処理部54Eへ、作動指示信号を出力する。これにより、分画領域E1〜E2で全反射され第2光学系54Cを経た光ビームL1〜L6は、受光部54Dで受光され、受光された光は、領域毎に光電変換されて光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、光検出信号に所定の処理が加えられ、補正用全反射減衰角データが生成され、制御部60へ出力される。
【0051】
制御部60では、ステップS16で、所定時間経過したかどうかを判断し、所定時間の経過後、ステップS18で、入力された補正用全反射減衰角データをメモリ60Dへ記憶する。
【0052】
次に、ステップS20で、試料TAの供給指示信号を出力する。これにより、ヘッド24で、液体流路45へ試料TAが供給される。試料TAの供給は、具体的には以下のように行なわれる。まず、ヘッド24が試料TAのセットされた試料プレート17の上部に移動し、ピペット部24Aが下側に長く、ピペット部24Bが短くなるように段差がつけられる(図7(C)参照)。そして、ヘッド24を下降させて、ピペット部24Aに取り付けられているピペットチップCPAの先端のみを試料TAが貯留されたセルへ挿入し、ピペットチップCPA内に試料TAを吸引する。次に、ヘッド24を上昇させて測定部56の上部に移動させ、ピペット部24Aとピペット部24Bとが同じ高さになるように長さを調整する(図7(A)参照)。そして、ヘッド24を下降させて、ピペット部24A側のピペットチップCPAの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入し、ピペット部24B側のピペットチップCPBの先端を液体流路45の排出口45Bへ挿入する(図14(A)参照)。そして、ピペットチップCPAから液体流路45へ試料TAを注入する。
【0053】
このとき、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間の容積と同程度の量の試料TAを注入する(図11(A)、図12(A)、図13(A)参照)。これは、試料TAを分画領域E1から分画領域E6側へと、液体流路45内で徐々に拡散させるためである。
【0054】
なお、試料TAの供給により排出口45Bから押し出されるバッファー液は、ピペットチップCPBで吸引する(図14(B)参照)。
【0055】
次に、ステップS22で、分画領域E1〜E6からの光検出信号により得られる全反射減衰角データを取得し、ステップS24で、全反射減衰角データを補正用全反射減衰角データで補正して、試料TA中の物質Yが分画領域E1〜E6への進入状態を示す進入状態データを生成する。進入状態データは、物質Yが分子量分画層70へ進入することにより、分子量分画層70の屈折率の変化に対応する値として求めることができる。
【0056】
そして、ステップS26で、進入状態データを記憶し、ステップ28で、進入状態データを表示部62へ出力する。これにより、所定時間毎の進入状態データがメモリ60Dへ記憶されると共に、表示部62へ表示される。
【0057】
次に、ステップS30で、試料TAから分子量分画に要する所定時間が経過したかどうかを判断し、この所定時間経過していれば、本処理を終了する。所定時間が経過していなければ、ステップS22へ戻る。ここでの所要時間は、試料TAが分画領域E6まで充分に拡散し、さらに、分画領域E1〜E6内への拡散も充分なされるために必要な時間である。
【0058】
上記測定処理により、各分画領域E1〜E6への試料TAに含まれる物質の進入状態をプロファイルすることができる。
【0059】
例えば、試料TAに含まれている物質Y1が、分画領域E1へ進入可能な低分子量の物質である場合には、図11(A)に示すように、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間に試料TAを供給すると、図11(B)に示すように、物質Y1は分画領域E1中へ進入する。また、物質Y1は、徐々に液体流路45中で拡散されて、分画領域E2、E3側へ移動し、分画領域E2、E3へも進入する。これにより、液体流路45中の物質Y1は、分画領域E6に近くなるにつれて少なくなる。したがって、分画領域E1〜E6の各々の進入状態データは、図11(C)に示すように、分画領域E1への進入度が最も高く、分画領域E6で進入度が低いものが得られる。なお、進入データとしては、各分画領域への進入度が最も特徴的に認められる所定時間経過後のものを採用する。
【0060】
また、試料TAに含まれている物質Y2が、分画領域E1、E2へは進入できず、分画領域E3〜E6へは進入可能な中分子量の物質である場合には、図12(A)に示すように、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間に試料TAを供給すると、図12(B)に示すように、物質Y2は分画領域E1、E2へは進入せず、液体流路45中を分画領域E1側から分画領域E3側へ拡散され、分画領域E3中へ進入する。さらに、物質Y2は、液体流路45中で拡散されて、分画領域E4、E5側へ移動し、分画領域E4、E5へも進入する。これにより、液体流路45中の物質Y2は、分画領域E6に近くなるにつれて少なくなる。したがって、分画領域E1〜E6の各々の進入状態データは、図12(C)に示すように、分画領域E1、E2への進入度は低く、分画領域E3への進入度が最も高く、分画領域E4、E5と徐々に進入度が低くなるものが得られる。
【0061】
また、試料TAに含まれている物質Y3が、分画領域E1〜E4へは進入できず、分画領域E5、E6へは進入可能な高分子量の物質である場合には、図13(A)に示すように、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間に試料TAを供給すると、図13(B)に示すように、物質Y3は分画領域E1〜E4へは進入せず、液体流路45中を分画領域E1側から分画領域E5側へ拡散され、分画領域E5中へ進入する。さらに、物質Y3は、液体流路45中で拡散されて、分画領域E6側へ移動し、分画領域E6へも進入する。したがって、分画領域E1〜E6の各々の進入状態データは、図13(C)に示すように、分画領域E1〜E4への進入度は低く、分画領域E5、E6への進入度が高いものが得られる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のバイオセンサーによれば、液体流路45内での物質Yの拡散、及び、分子量分画層70内への物質Yの拡散を利用するので、電圧印加のための電極等が必要なく、簡易な構成で分子量分画を行うことができる、これにより、試料TA中の物質の分子量分布を解析することができる。
【0063】
なお、本実施形態での分子量分画のみを行ったが、液体クロマトグラフィにより試料TAの他の属性、例えば親水性により分離した後、分子量分画を行うことにより、図15に示すように、二次元的な情報を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、金属膜50が、プリズムとして機能する誘電体ブロック42上に形成されているセンサースティック40を用いたが、図16に示すように、金属膜80Aが透明な平板82の一面に形成され、この金属膜80A上に分子量分画層70が積層されているセンサーチップ84を用いてもよい。この場合には、光学プリズムPを平版82の金属膜80Aが形成されていない面と密着させ、この光学プリズムPを介して金属膜80Aへ光ビームLを入射させると共に入射させた光ビームLを反射させる。この構成によれば、金属膜80Aの形成される平板82を、光学プリズムPと別体にして、センサーチップ84を簡易な構成とすることができる。
【0065】
一方、本実施形態のように、金属膜50が誘電体ブロック42上に形成された構成とすることにより、光学的なロスを少なくすることができる。また、金属膜と誘電体ブロックとが別体とされている場合には、プリズムと金属膜の形成された板との間に屈折率マッチングオイル等を注入する必要があるが、本実施形態のように、金属膜50が誘電体ブロック42上に形成された構成であれば、屈折率マッチングオイル等を注入する必要はなく、バイオセンサーの構成を簡単にすることができると共に、取り扱いも簡単になり、利便性が高まる。
【0066】
なお、本実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーを用いてのアナライトの回収に本発明は適用することができる。
【0067】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図5】本実施形態の分子量分画層の製造方法の説明図である。
【図6】本実施形態のセンサースティックの分画領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図7】本実施形態の液体供給部を構成するピペット部の側面図である。
【図8】本実施形態のバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図9】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図10】本実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図11】本実施形態の低分子物質の(A)(B)は分子量分画層への物質の進入状態を示す図であり、(C)は各分画層の進入データの一例を示すグラフである。
【図12】本実施形態の中子物質の(A)(B)は分子量分画層への物質の進入状態を示す図であり、(C)は各分画層の進入データの一例を示すグラフである。
【図13】本実施形態の高子物質の(A)(B)は分子量分画層への物質の進入状態を示す図であり、(C)は各分画層の進入データの一例を示すグラフである。
【図14】本実施形態の液体流路への試料供給動作を説明する図である。
【図15】本実施形態での分子量分画と液体クロマトグラフィによる親水性特性を組み合わせた二次元マップ上に測定結果をプロットした例である。
【図16】本発明が実施される他の形態のセンサーチップの概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 バイオセンサー
20 液体吸排部
40 センサースティック
42 誘電体ブロック
44 流路部材
45 液体流路
45A 供給口
45B 排出口
50 金属膜
54 光学測定部
70 分子量分画層
84 センサーチップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料に含まれる分子を分画すると共に、分画された分子を検出するバイオセンサー、及び、このバイオセンサーでの分子量分画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性物質の分析として、異なる分子量の物質の分子量分画を行って、対象物質の特定を行う方法として、電気泳動法が知られている(特許文献1参照)。この電気泳動法では、濃度勾配を持つゲルの両端に電極を配置して電圧を印加することにより、供給した試料の分子量分画が行われる。
【特許文献1】特開平5−203621号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般的な電気泳動法では、ゲルの両端に電極を配置する必要があり、装置構成が複雑になってしまう。
【0004】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、簡易な構成で液体の分子量分画を行うことの可能なバイオセンサー、及び、分子量分画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のバイオセンサーは、液体試料の供給される供給口、及び前記液体試料の排出される排出口の形成された液体流路と、前記液体流路に表面が露出され、前記液体試料の進行方向に異なる部分で異なる分子量の分子を進入させる分子量分画層と、前記分子量分画層に進入した分子を検出する検出手段と、を含んで構成されている。
【0006】
本発明のバイオセンサーでは、液体流路内に予め緩衝液を供給しておき、緩衝液で満たされている液体流路へ供給口から液体試料を供給することにより、液体試料中の分子は、排出口側へと拡散される。また、液体試料中の分子は、液体流路に露出された分子量分画層の表面から分子量分画層内へ進入し拡散される。したがって、供給口側で分子量分画層内へ進入する分子量の分子は、排出口側へ拡散されにくく、供給口側で分子量分画層内へ進入できない分子量の分子は、液体流路の排出口側へ拡散されやすくなる。
【0007】
このように、液体試料中の分子の、供給口側から排出口側への拡散、及び、分子量分画層の表面から分子量分画層内への拡散を利用することにより、電極を用いることなく簡易な構成で分子量分画を行うことができる。
【0008】
なお、本発明のバイオセンサーは、請求項2に記載のように、前記検出手段が、非電気化学的検出であること、を特徴とすることができる。
【0009】
このように、非電気化学的検出を用いることにより、測定時に検出されるものと検出部との間に相互作用(電子移動など)が生じないため、検出物の回収などの操作を容易にすることができる。また、測定対象の荷電などをより現実に近いままで測定することができる。
【0010】
請求項3記載のバイオセンサーは、前記分子量分画層が、前記液体試料の進行方向に濃度勾配を持つゲルで形成されていること、を特徴とする。
【0011】
このように、分子量分画層を濃度勾配を持つゲルにより形成することで、異なる分子量の分子を分画することができる。
【0012】
なお、前記ゲルの濃度勾配は、請求項4に記載のように、前記供給口側の濃度を前記排出口側の濃度よりも高くすることにより、供給口側のゲル内へ分子量の小さい分子を進入させることができ、分子量の大きい分子を液体流路内の排出口側へ拡散させることができる。
【0013】
また、前記分子量分画層は、請求項5に記載のように、アガロース誘電体、または、アクリルアミド誘電体、を含んで構成することができる。
【0014】
請求項6に記載のバイオセンサーは、液体クロマトグラフィと接続されていること、を特徴とする。
【0015】
このように、液体クロマトグラフィと接続することにより、液体クロマトグラフィによって可能な液体試料の他の属性による分画と、分子量による分子量分画とを組み合わせて、実施することができる。
【0016】
請求項7記載のバイオセンサーは、前記分子量分画層が金属膜上に構成され、前記検出手段は、前記金属膜の前記分子量分画層と逆側の面へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して、前記分子量分画層へ進入した分子を検出すること、を特徴とする。
【0017】
このように、金属膜表面での全反射減衰を利用した検出として、表面プラズモン共鳴、漏洩モード検出を用いることができる。
【0018】
なお、前記金属膜は、請求項8に記載のように、誘電体ブロックの光反射面に形成され、前記検出は、前記誘電体ブロックを介して前記金属膜へ光ビームを入射させると共に入射させた光ビームを反射させて行なわれること、を特徴とすることができる。
【0019】
上記構成によれば、金属膜が誘電体ブロック上に直接形成されるので、金属膜と誘電体ブロックとが別体とされている場合と比較して、光学的なロスを少なくすることができる。また、金属膜と誘電体ブロックとが別体とされている場合には、誘電体ブロックと金属膜の形成された板との間に屈折率マッチングオイル等を注入する必要があるが、上記構成であれば屈折率マッチングオイル等を注入する必要はなく、回収装置の構成を簡単にすることができると共に、取り扱いも簡単になり、利便性が高まる。
【0020】
請求項9に記載の分子量分画方法は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載されたバイオセンサーを用いて液体試料の分子量分画を行う分子量分画方法であって、予め所定の緩衝液の供給されている前記液体流路へ、前記液体流路の容積よりも少ない量の液体試料を前記供給口から供給する液体試料供給ステップと、前記液体試料の供給後、前記検出手段で前記分子量分画層の前記進行方向の異なる複数箇所において前記進入した分子を検出する検出ステップと、を備えたものである。
【0021】
本発明の分子量分画方法では、まず、前記液体流路の容積よりも少ない量の液体試料を前記供給口から供給する。これにより、予め供給されている緩衝液が排出口側へ押し出されるが、供給される液体試料は液体流路の容積よりも少ない量なので、液体流路内に緩衝液は残る。したがって、供給された液体試料の分子は、分子量分画層内へ進入すると共に、緩衝液側、すなわち、排出口側へも拡散される。
【0022】
ところで、分子量分画層は、異なる分子量の分子を分画可能な層であるので、供給口側で分子量分画層内へ拡散される分子量の分子は、排出口側へ拡散されにくく、供給口側で分子量分画層内へ進入できない分子量の分子は、液体流路の排出口側へ拡散されやすくなる。したがって、供給口側の分子量分画層と排出口側の分子量分画層とで、異なる分子量の分子が進入し、分子量分画を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上記構成としたので、流路部材に非特異的に吸着したアナライトが回収されてしまうことがなく、不要な物質が回収物質に混入するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0025】
本発明のバイオセンサーは、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、液体中の物質が測定面に存在するかどうかを検出する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0026】
図1に示すように、バイオセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、押さえ部26、光学測定部54、及び、制御部60を備えている。
【0027】
トレイ保持部12は、載置台12A、及び、ベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、トレイTが2枚、位置決めして載置される。トレイTには、センサースティック40が収納されている。センサースティック40は、試料を流すための流路を備えたチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げる、押上機構12Dが配置されている。
【0028】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0029】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備えている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図4にも示すように金属膜50が形成されている。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0030】
金属膜50の表面には、図4に示すように、分子量分画層70が形成されている。分子量分画層70は、誘電体ブロック42の長手方向に濃度勾配を有するゲルで構成されている。ゲルとしては、アクリルアミド、アガロース、酢酸セルロース、デンプン、デキストランなどを用いることができる。濃度勾配は、流路部材44の後述する供給口45A側の濃度が高く、排出口45B側の濃度が低くなっている。これにより、供給口45A側では分子量の小さい物質のみを分子量分画層70内へ進入させることができ、排出口45B側へ向かうにつれて徐々に分子量の大きい物質を分子量分画層70内へ進入させることができる。
【0031】
なお、前述のゲルの濃度は、1%〜15%(質量%)の範囲であることが好ましい。
【0032】
分子量分画層70は、次のようにして形成することができる。まず、図5(A)に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50部分の外側にスペーサー板72を配置し、その上に蓋部材74を積層して、金属膜50と蓋部材74との間に空間を構成する。そして、図5(B)に示すように、誘電体ブロック42を鉛直方向に向けて、前記空間へ濃度の異なるゲルを順次充填する。所定時間おいてゲルを固め、スペーサー板72及び蓋部材74を除去することで、分子量分画層70を形成することができる。
【0033】
なお、架橋剤としては、「Electrophoresis」1989,2,220-228に記載されているが、アクリルアミドゲルでは、N,N'-メチレンビスアクリルアミドに代表される2価の重合架橋剤、水酸基含有のゲルであれば、ポリエポキシ化合物などが挙げられる。
【0034】
本実施形態では、6段階の濃度のゲルを順に充填して、異なる分子量の分子を進入させることの可能な6つの領域(以下各領域を「分画領域E1〜E6」という、図6参照)で分子量分画層70が形成されている。分画領域E1〜E6には、各々光ビームL1〜L6が入射される。
【0035】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材52と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0036】
流路部材44は、誘電体ブロック42よりもわずかに狭幅の直方体状とされ、図4に示すように、誘電体ブロック42の分子量分画層70上に配置されている。各々の流路部材44の下面には流路溝44Aが形成されており、上面に形成された供給口45A及び排出口45Bと連通されて、分子量分画層70との間に、液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0037】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0038】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Aを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0039】
図1に示すように、バイオセンサー10の搬送部14は、上部ガイドレール14A、下部ガイドレール14B、及び、スティック保持部材14C、を含んで構成されている。上部ガイドレール14A及び下部ガイドレール14Bは、トレイ保持部12及び光学測定部54の上部で、矢印Y方向と直交する矢印X方向に水平に配置されている。上部ガイドレール14Aには、スティック保持部材14Cが取り付けられている。スティック保持部材14Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール14Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材14Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール14Bとが係合され、スティック保持部材14Cが矢印X方向に移動することにより、センサースティック40が光学測定部54上の測定部56に搬送される。また、測定部56には、測定時にセンサースティック40を押さえる押さえ部材58が備えられている。押さえ部材58は、図示しない駆動機構によりZ方向に移動可能とされ、測定部56に配置されたセンサースティック40を上側から押圧する。
【0040】
容器載置台16には、試料プレート17、廃液回収容器18、バッファー液容器19が載置されている。試料プレート17には、各種の試料がストックされている。廃液回収容器18は、回収容器18A〜18Hで構成されており、回収容器18A〜18Hには、後述するピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。バッファー液容器19は、複数のストック容器19A〜19EH構成されており、回収容器と同様にピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
【0041】
液体吸排部20は、上部ガイドレール14A、及び、ガイドレール16Bよりも上方で、矢印Y方向に架け渡された横断レール22、及び、ヘッド24を含んで構成されている。横断レール22は、図示しない駆動機構により、矢印X方向移動可能とされている。また、ヘッド24は、横断レール22に取り付けられ、矢印Y方向に移動可能とされている。また、ヘッド24は、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド24は、図7に示すように、2本のピペット部24A、24Bを備えている。ピペット部24A、24Bには、先端部にピペットチップCPが取り付けられ、個々にZ方向の長さを調整可能とされている。ピペットチップCPは、図示しないピペットチップストッカーに多数ストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0042】
なお、本実施形態においてはセンサースティック40への液体供給はピペットチップCPにより行われるが、ピペットチップの代わりに、一端が上記各溶液プレートに接続され、他端がセンサースティック40に接続可能とされたインジェクションチューブを設け、送液ポンプにより液体の供給を行ってもよい。
【0043】
光学測定部54は、図8に示すように、光源54A、第1光学系54B、第2光学系54C、受光部54D、信号処理部54E、を含んで構成されている。光源54Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系54Bを介して、6本の光ビームL1〜L6となり、測定部56に配置された誘電体ブロック42の分画領域E1〜E6に各々入射される。分画領域E1〜E6において、光ビームL1〜L6は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1〜L6は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1〜L6も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1〜L6は、第2光学系54Cを経て受光部54Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、分画領域E1〜E6の全反射減衰角のデータ(以下「全反射減衰角データ」という)が求められる。この全反射減衰角データが制御部60へ出力される。
【0044】
制御部60は、バイオセンサー10の全体を制御する機能を有し、図8に示すように、光源54A、信号処理部54E、及び、バイオセンサー10の図示しない駆動系と接続されている。制御部60は、図9示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU60A、ROM60B、RAM60C、メモリ60D、及び、インターフェースI/F60E、を有し、各種の情報を表示する表示部62、各種の指示、情報を入力するための入力部64と接続されている。
【0045】
メモリ60Dには、バイオセンサー10を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。
【0046】
次に、バイオセンサー10での、分子量分画の手順について説明する。
【0047】
バイオセンサー10の載置台12Aには、液体流路45にバッファー液Cが充填されたセンサースティック40入りのトレイがセットされている。また、試料プレート17には試料TAが、バッファー液容器19にはバッファー液が、各々セットされている。
【0048】
まず、押上機構12Dにより、1のセンサースティック40がスティック保持部材14Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材14Cにより保持される。そして、スティック保持部材14Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール14Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部56へ搬送する。測定部56へ搬送されたセンサースティック40は、所定の測定位置に位置決めされて押さえ部材58により、上部から押圧され固定される。
【0049】
入力部64から測定開始の指示が入力されると、制御部60では、図10に示す測定処理が実行される。測定処理では、液体流路45にバッファー液が充填されている状態での全反射データを補正用全反射データとして取得し、その後、試料TAを供給して全反射データをプロファイルする。
【0050】
まず、ステップS12で、光源54Aへ光ビームLの出射指示信号を出力する。これにより、光源54Aから光ビームLが出射される。出射された光ビームLは、第1光学系54Bで6本の光ビームL1〜L6となり、液体流路45の分画領域E1〜E6へ各々入射される。また、ステップS14で、受光部54D及び信号処理部54Eへ、作動指示信号を出力する。これにより、分画領域E1〜E2で全反射され第2光学系54Cを経た光ビームL1〜L6は、受光部54Dで受光され、受光された光は、領域毎に光電変換されて光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、光検出信号に所定の処理が加えられ、補正用全反射減衰角データが生成され、制御部60へ出力される。
【0051】
制御部60では、ステップS16で、所定時間経過したかどうかを判断し、所定時間の経過後、ステップS18で、入力された補正用全反射減衰角データをメモリ60Dへ記憶する。
【0052】
次に、ステップS20で、試料TAの供給指示信号を出力する。これにより、ヘッド24で、液体流路45へ試料TAが供給される。試料TAの供給は、具体的には以下のように行なわれる。まず、ヘッド24が試料TAのセットされた試料プレート17の上部に移動し、ピペット部24Aが下側に長く、ピペット部24Bが短くなるように段差がつけられる(図7(C)参照)。そして、ヘッド24を下降させて、ピペット部24Aに取り付けられているピペットチップCPAの先端のみを試料TAが貯留されたセルへ挿入し、ピペットチップCPA内に試料TAを吸引する。次に、ヘッド24を上昇させて測定部56の上部に移動させ、ピペット部24Aとピペット部24Bとが同じ高さになるように長さを調整する(図7(A)参照)。そして、ヘッド24を下降させて、ピペット部24A側のピペットチップCPAの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入し、ピペット部24B側のピペットチップCPBの先端を液体流路45の排出口45Bへ挿入する(図14(A)参照)。そして、ピペットチップCPAから液体流路45へ試料TAを注入する。
【0053】
このとき、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間の容積と同程度の量の試料TAを注入する(図11(A)、図12(A)、図13(A)参照)。これは、試料TAを分画領域E1から分画領域E6側へと、液体流路45内で徐々に拡散させるためである。
【0054】
なお、試料TAの供給により排出口45Bから押し出されるバッファー液は、ピペットチップCPBで吸引する(図14(B)参照)。
【0055】
次に、ステップS22で、分画領域E1〜E6からの光検出信号により得られる全反射減衰角データを取得し、ステップS24で、全反射減衰角データを補正用全反射減衰角データで補正して、試料TA中の物質Yが分画領域E1〜E6への進入状態を示す進入状態データを生成する。進入状態データは、物質Yが分子量分画層70へ進入することにより、分子量分画層70の屈折率の変化に対応する値として求めることができる。
【0056】
そして、ステップS26で、進入状態データを記憶し、ステップ28で、進入状態データを表示部62へ出力する。これにより、所定時間毎の進入状態データがメモリ60Dへ記憶されると共に、表示部62へ表示される。
【0057】
次に、ステップS30で、試料TAから分子量分画に要する所定時間が経過したかどうかを判断し、この所定時間経過していれば、本処理を終了する。所定時間が経過していなければ、ステップS22へ戻る。ここでの所要時間は、試料TAが分画領域E6まで充分に拡散し、さらに、分画領域E1〜E6内への拡散も充分なされるために必要な時間である。
【0058】
上記測定処理により、各分画領域E1〜E6への試料TAに含まれる物質の進入状態をプロファイルすることができる。
【0059】
例えば、試料TAに含まれている物質Y1が、分画領域E1へ進入可能な低分子量の物質である場合には、図11(A)に示すように、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間に試料TAを供給すると、図11(B)に示すように、物質Y1は分画領域E1中へ進入する。また、物質Y1は、徐々に液体流路45中で拡散されて、分画領域E2、E3側へ移動し、分画領域E2、E3へも進入する。これにより、液体流路45中の物質Y1は、分画領域E6に近くなるにつれて少なくなる。したがって、分画領域E1〜E6の各々の進入状態データは、図11(C)に示すように、分画領域E1への進入度が最も高く、分画領域E6で進入度が低いものが得られる。なお、進入データとしては、各分画領域への進入度が最も特徴的に認められる所定時間経過後のものを採用する。
【0060】
また、試料TAに含まれている物質Y2が、分画領域E1、E2へは進入できず、分画領域E3〜E6へは進入可能な中分子量の物質である場合には、図12(A)に示すように、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間に試料TAを供給すると、図12(B)に示すように、物質Y2は分画領域E1、E2へは進入せず、液体流路45中を分画領域E1側から分画領域E3側へ拡散され、分画領域E3中へ進入する。さらに、物質Y2は、液体流路45中で拡散されて、分画領域E4、E5側へ移動し、分画領域E4、E5へも進入する。これにより、液体流路45中の物質Y2は、分画領域E6に近くなるにつれて少なくなる。したがって、分画領域E1〜E6の各々の進入状態データは、図12(C)に示すように、分画領域E1、E2への進入度は低く、分画領域E3への進入度が最も高く、分画領域E4、E5と徐々に進入度が低くなるものが得られる。
【0061】
また、試料TAに含まれている物質Y3が、分画領域E1〜E4へは進入できず、分画領域E5、E6へは進入可能な高分子量の物質である場合には、図13(A)に示すように、液体流路45の供給口45Aから分画領域E1に至る間に試料TAを供給すると、図13(B)に示すように、物質Y3は分画領域E1〜E4へは進入せず、液体流路45中を分画領域E1側から分画領域E5側へ拡散され、分画領域E5中へ進入する。さらに、物質Y3は、液体流路45中で拡散されて、分画領域E6側へ移動し、分画領域E6へも進入する。したがって、分画領域E1〜E6の各々の進入状態データは、図13(C)に示すように、分画領域E1〜E4への進入度は低く、分画領域E5、E6への進入度が高いものが得られる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のバイオセンサーによれば、液体流路45内での物質Yの拡散、及び、分子量分画層70内への物質Yの拡散を利用するので、電圧印加のための電極等が必要なく、簡易な構成で分子量分画を行うことができる、これにより、試料TA中の物質の分子量分布を解析することができる。
【0063】
なお、本実施形態での分子量分画のみを行ったが、液体クロマトグラフィにより試料TAの他の属性、例えば親水性により分離した後、分子量分画を行うことにより、図15に示すように、二次元的な情報を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、金属膜50が、プリズムとして機能する誘電体ブロック42上に形成されているセンサースティック40を用いたが、図16に示すように、金属膜80Aが透明な平板82の一面に形成され、この金属膜80A上に分子量分画層70が積層されているセンサーチップ84を用いてもよい。この場合には、光学プリズムPを平版82の金属膜80Aが形成されていない面と密着させ、この光学プリズムPを介して金属膜80Aへ光ビームLを入射させると共に入射させた光ビームLを反射させる。この構成によれば、金属膜80Aの形成される平板82を、光学プリズムPと別体にして、センサーチップ84を簡易な構成とすることができる。
【0065】
一方、本実施形態のように、金属膜50が誘電体ブロック42上に形成された構成とすることにより、光学的なロスを少なくすることができる。また、金属膜と誘電体ブロックとが別体とされている場合には、プリズムと金属膜の形成された板との間に屈折率マッチングオイル等を注入する必要があるが、本実施形態のように、金属膜50が誘電体ブロック42上に形成された構成であれば、屈折率マッチングオイル等を注入する必要はなく、バイオセンサーの構成を簡単にすることができると共に、取り扱いも簡単になり、利便性が高まる。
【0066】
なお、本実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーを用いてのアナライトの回収に本発明は適用することができる。
【0067】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図5】本実施形態の分子量分画層の製造方法の説明図である。
【図6】本実施形態のセンサースティックの分画領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図7】本実施形態の液体供給部を構成するピペット部の側面図である。
【図8】本実施形態のバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図9】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図10】本実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図11】本実施形態の低分子物質の(A)(B)は分子量分画層への物質の進入状態を示す図であり、(C)は各分画層の進入データの一例を示すグラフである。
【図12】本実施形態の中子物質の(A)(B)は分子量分画層への物質の進入状態を示す図であり、(C)は各分画層の進入データの一例を示すグラフである。
【図13】本実施形態の高子物質の(A)(B)は分子量分画層への物質の進入状態を示す図であり、(C)は各分画層の進入データの一例を示すグラフである。
【図14】本実施形態の液体流路への試料供給動作を説明する図である。
【図15】本実施形態での分子量分画と液体クロマトグラフィによる親水性特性を組み合わせた二次元マップ上に測定結果をプロットした例である。
【図16】本発明が実施される他の形態のセンサーチップの概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 バイオセンサー
20 液体吸排部
40 センサースティック
42 誘電体ブロック
44 流路部材
45 液体流路
45A 供給口
45B 排出口
50 金属膜
54 光学測定部
70 分子量分画層
84 センサーチップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料の供給される供給口、及び前記液体試料の排出される排出口の形成された液体流路と、
前記液体流路に表面が露出され、前記液体試料の進行方向に異なる部分で異なる分子量の分子を進入させる分子量分画層と、
前記分子量分画層に進入した分子を検出する検出手段と、
を備えたバイオセンサー。
【請求項2】
前記検出手段が、非電気化学的検出であること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
前記分子量分画層は、前記液体試料の進行方向に濃度勾配を持つゲルで形成されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記ゲルの前記濃度勾配は、前記供給口側の濃度が前記排出口側の濃度よりも高いこと、を特徴とする請求項3に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
前記分子量分画層が、アガロース誘電体、または、アクリルアミド誘電体、を含んで構成されていること、を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
前記液体流路は、液体クロマトグラフィと接続されていること、を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記分子量分画層は金属膜上に構成され、
前記検出手段は、前記金属膜の前記分子量分画層と逆側の面へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して、前記分子量分画層へ進入した分子を検出すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
前記金属膜は、誘電体ブロックの光反射面に形成され、
前記検出は、前記誘電体ブロックを介して前記金属膜へ光ビームを入射させると共に入射させた光ビームを反射させて行なわれること、を特徴とする請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載されたバイオセンサーを用いて液体試料の分子量分画を行う分子量分画方法であって、
予め所定の緩衝液の供給されている前記液体流路へ、前記液体流路の容積よりも少ない量の液体試料を前記供給口から供給する液体試料供給ステップと、
前記液体試料の供給後、前記検出手段で前記分子量分画層の前記進行方向の異なる複数箇所において前記進入した分子を検出する検出ステップと、
を備えた分子量分画方法。
【請求項1】
液体試料の供給される供給口、及び前記液体試料の排出される排出口の形成された液体流路と、
前記液体流路に表面が露出され、前記液体試料の進行方向に異なる部分で異なる分子量の分子を進入させる分子量分画層と、
前記分子量分画層に進入した分子を検出する検出手段と、
を備えたバイオセンサー。
【請求項2】
前記検出手段が、非電気化学的検出であること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
前記分子量分画層は、前記液体試料の進行方向に濃度勾配を持つゲルで形成されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記ゲルの前記濃度勾配は、前記供給口側の濃度が前記排出口側の濃度よりも高いこと、を特徴とする請求項3に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
前記分子量分画層が、アガロース誘電体、または、アクリルアミド誘電体、を含んで構成されていること、を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
前記液体流路は、液体クロマトグラフィと接続されていること、を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記分子量分画層は金属膜上に構成され、
前記検出手段は、前記金属膜の前記分子量分画層と逆側の面へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して、前記分子量分画層へ進入した分子を検出すること、
を特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
前記金属膜は、誘電体ブロックの光反射面に形成され、
前記検出は、前記誘電体ブロックを介して前記金属膜へ光ビームを入射させると共に入射させた光ビームを反射させて行なわれること、を特徴とする請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載されたバイオセンサーを用いて液体試料の分子量分画を行う分子量分画方法であって、
予め所定の緩衝液の供給されている前記液体流路へ、前記液体流路の容積よりも少ない量の液体試料を前記供給口から供給する液体試料供給ステップと、
前記液体試料の供給後、前記検出手段で前記分子量分画層の前記進行方向の異なる複数箇所において前記進入した分子を検出する検出ステップと、
を備えた分子量分画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−47105(P2007−47105A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234128(P2005−234128)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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