バイオセンサー較正方法、測定方法、及び、バイオセンサー
【課題】 屈折率の異なる複数の較正液を用いてバイオセンサー較正する場合に、より正確に較正することを目的とする。
【解決手段】 ステップS10で、液量算出プログラムにより、各較正液(第1較正液〜第5較正液)間で、バッファー液の濃度が等しくなるように、各較正液での、DMSO、バッファー液、水、の各々の液量が算出される。ステップS12で、ヘッド78Bへ、水の供給指示信号が出力され、較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量の水が供給される。ステップS14で、バッファー液の供給指示信号が出力され、較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のバッファー液が供給される。ステップS16で、DMSOの供給指示信号が出力され、較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のDMSOが供給され、第1較正液A〜第5較正液Eが調製される。
【解決手段】 ステップS10で、液量算出プログラムにより、各較正液(第1較正液〜第5較正液)間で、バッファー液の濃度が等しくなるように、各較正液での、DMSO、バッファー液、水、の各々の液量が算出される。ステップS12で、ヘッド78Bへ、水の供給指示信号が出力され、較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量の水が供給される。ステップS14で、バッファー液の供給指示信号が出力され、較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のバッファー液が供給される。ステップS16で、DMSOの供給指示信号が出力され、較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のDMSOが供給され、第1較正液A〜第5較正液Eが調製される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーを較正するバイオセンサー較正方法、このバイオセンサー較正方法を用いた測定方法、及び、前記バイオセンサー較正方法を用いて較正されるバイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エバネッセント波を利用した測定装置の1つとして、表面プラズモンセンサーが知られている(特許文献1参照)。一般的に、表面プラズモンセンサーは、プリズムと、このプリズムの一面に配置され被解析分子が固定される金属膜と、光ビームを発生させる光源と、光ビームをプリズムに対して、プリズムと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、界面で全反射した光ビームの強度を検出する光検出手段と、を備え、光検出手段の検出結果に基づいて、被解析分子についての解析を行なうものである。
【0003】
この表面プラズモンセンサーによる測定では、金属膜の上に固定化された被解析分子に対して解析分子を含む反応液を供給すると共に、金属膜の反応液が供給されている側と逆側の面へ光ビームを入射し、その反射光から得られる屈折率から得られる情報に基づいて、被解析分子と反応液中の解析分子との相互作用が測定される。
【0004】
このように、屈折率から得られる情報を用いて、被解析分子と反応液中の解析分子との相互作用を測定する場合には、通常、被解析分子の固定されている測定領域の他に、被解析分子の固定されていない参照領域を設け、参照領域から得られる屈折率情報を用いて、測定領域から得られる屈折率情報を補正し、解析分子と被解析分子との相互作用を示す正確なデータを得る。
【0005】
ところで、前述の反応液を調製する際に、屈折率の大きい物質が用いられることがある。例えば、疎水性の解析分子を溶解させるために、有機溶剤として、ジメチル・スルホキシド(DMSO)が用いられるが、DMSOは屈折率が大きく、また、測定領域には被解析分子の膜厚があることから、参照領域と測定領域とで、DMSO濃度の変化に対する屈折率変化が異なってしまう。そのため、非特許文献1では、DMSO濃度の異なる複数の較正液を用いて、測定セル毎に、DMSO濃度と屈折率との関係を求め、当該測定セルの初期較正が行なわれている。
【0006】
この初期較正を行なうに際しては、複数のDMSO濃度の異なる較正液を調製することが必要であり、非特許文献1には、この調整方法が示されている。非特許文献1に記載の方法で調整した複数の較正液では、DMSO濃度と共にバッファー能を有する物質の濃度も異なってしまっている。
【非特許文献1】Biacore Application Trainingテキスト
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バッファー能を有する物質としては、通常、屈折率への影響が小さいものが選択されるが、バッファー能を有する物質が静電吸着などにより参照領域や測定領域に付着されることも考えられ、屈折率に変化をもたらすこともある。したがって、複数の較正液間においてバッファー能を有する物質の濃度が異なると、較正の精度が低下してしまう。
【0008】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、屈折率の異なる複数の較正液を用いてバイオセンサー較正する場合に、より正確に較正することの可能な、バイオセンサー較正方法、このバイオセンサー較正方法を用いた測定方法、及び、前記バイオセンサー較正方法を用いて較正されるバイオセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のバイオセンサー較正方法は、被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーを、屈折率の異なる複数の較正液を用いて較正するバイオセンサー較正方法であって、較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、及び、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なる共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製し、調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得し、
取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する、ものである。
【0010】
また、請求項5に記載のバイオセンサーは、被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーであって、較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なると共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製する、較正液調製手段と、調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得する屈折率情報取得手段と、取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する屈折率較正手段と、を備えたものである。
【0011】
ここで、屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質とは、その物質自体の屈折率が大きく、較正液の調製に用いられた場合に、較正液の屈折率を大きくする物質をいう。また、バッファー能を有するバッファー能物質とは、PHバッファー能を有するイオン性物質をいう。
【0012】
請求項1に記載のバイオセンサー較正方法、及び、請求項5に記載のバイオセンサーによれば、調製された複数の較正液間でバッファー能物質の濃度が等しいので、参照領域と測定領域における、バッファー能物質の濃度に起因する較正の誤差がなくなり、正確に解析分子供給時における測定領域での光の屈折率を較正することができる。
【0013】
請求項2に記載のバイオセンサー較正方法、及び、請求項6に記載のバイオセンサーは、前記屈折率変化物質の25℃における屈折率が1.4以上であること、を特徴とするものである。
【0014】
通常、屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定する場合には、調液精度より屈折率の精度を高くする等の理由から、較正液の屈折率範囲を大きくしておく必要がある。そこで、少量の添加で屈折率が大きく変わるように、屈折率変化物質として、屈折率の大きいものを選択することが好ましい。
【0015】
請求項3に記載のバイオセンサー較正方法、及び、請求項7に記載のバイオセンサーは、前記屈折率変化物質が、非イオン性物質であること、を特徴とするものである。
【0016】
屈折率変化物質がイオン性物質であると、参照領域及び測定領域に付着して屈折率に影響を与えてしまうので、各較正液間で濃度を異ならせている屈折率変化物質は、非イオン性物質であることが好ましい。
【0017】
請求項4に記載の測定方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバイオセンサー較正方法を用いて、被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するものである。
【0018】
請求項4に記載の測定方法によれば、正確な較正が行なわれているので、より高い精度の測定を行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、より正確な較正、測定を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態のバイオセンサー70は、、金属膜の表面に発生する表面プラズモンを利用して、被解析分子Mの特性を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。バイオセンサー70では、被解析分子Mに、各種の反応液を供給して、被解析分子Mと反応液中の物質との結合の有無、結合速度、結合量、等を測定する。被解析分子Mとしては、蛋白質、核酸、脂肪酸などの生理活性物質を解析対象とすることができる。
【0022】
図1及び図2に示すように、バイオセンサー70は、トレイ保持部72、搬送部74、反応液プレート保持部76、液体供給部78、光学測定部80、較正液調整部84、及び、制御部90を備えている。
【0023】
トレイ保持部72は、載置台72A、及び、ベルト72Bを含んで構成されている。載置台72Aは、矢印I方向に架け渡されたベルト73に取り付けられており、ベルト72Bの回転により矢印I方向に移動可能とされている。載置台72A上には、トレイ30が2枚、位置決めして載置される。トレイ30には、センサースティック40が8本収納されている。センサースティック40は、測定対象となる被解析分子Mの固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台72Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材74Cの位置まで押し上げる、押上機構72Dが配置されている。
【0024】
センサースティック40は、被解析分子Mが固定されるものである。図3及び図4に示すように、センサースティック40は、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0025】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備ている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図5にも示すように金属膜50が形成されている。この金属膜50上に、バイオセンサー70で解析する解析分子が固定される。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとしても機能し、バイオセンサー70での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0026】
金属膜50の表面の一部で、後述する液体流路45に露出された部分の下流側に位置する測定領域E1には、図6にも示すように、被解析分子Mを固定するための固定化担体50Aが形成されている。固定化担体50Aの反応基との共有結合により、被解析分子Mがこの部分に固定される。固定化担体50Aとしては、デキストラン、カルボキシメチル基、NTAなどを用いることができ、被解析分子Mに応じて選択される。
【0027】
金属膜50上の液体流路45に露出された部分の上流側に位置する領域は、参照領域E2とされている。参照領域E2は、被解析分子Mの固定された測定領域E1から得られる光の屈折率データを補正するために設けられた領域であり、この参照領域E2にも、光ビームが入射される。なお、参照領域E2は、各種のアナライトとの結合が阻止されるように、例えばアルキルチオール、アミノアルコール、アミノエーテル等で処理しておくことが好ましい。
【0028】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材52と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが、各々7箇所に形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0029】
流路部材44は、誘電体ブロック42のプリズム部42Aと略同じ長さの棒状とされ、図5に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50との間に、液体流路45を構成する。液体流路45は、流路部材44の流路壁44Aと金属膜50とで囲まれて構成されており、供給された液体を金属膜50上で貯留可能とされている。流路部材44には、液体流路45と連通された供給口45A及び排出口45Bが形成されている。液体流路45は、流路部材44の長手方向に6個並んで配置されている。したがって、1本のセンサースティック40には、独立した6個の液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0030】
なお、液体流路45には、蛋白質を含む液体が供給されることが想定されるので、流路壁44Aへので蛋白質の固着を防止するため、流路部材44の材料としては、蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましい。また、流路部材44は、金属膜50との密着性を確保して液漏れを防止するため、弾性を有することが好ましい。具体的にはシリコン、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0031】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0032】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Bを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0033】
なお、この蒸発防止部材54も、スリット49DからピペットチップCPを挿入できるように、弾性を有する材料で構成されることが好ましく、具体的にはシリコンまたはポリプロピレン等を用いることができる。
【0034】
図1及び図2に示すように、バイオセンサー70の搬送部74は、上部ガイドレール74A、下部ガイドレール74B、及び、スティック保持部材74C、を含んで構成されている。上部ガイドレール74A及び下部ガイドレール74Bは、トレイ保持部72及び光学測定部80の上部で、矢印I方向と直交する矢印J方向に水平に配置されている。上部ガイドレール74Aには、スティック保持部材74Cが取り付けられている。スティック保持部材74Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール74Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材74Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール74Bとが係合され、スティック保持部材74Cが矢印J方向に移動することにより、図2に示すように、センサースティック40が光学測定部80上の測定部82に搬送される。この測定部82で、センサースティック40に固定された被解析分子Mの測定が行われる。測定部82では、下部ガイドレール74Bが測定のために一部離間されている
反応液プレート保持部76は、載置台76A、及び、ガイドレール76Bを含んで構成されている。ガイドレール76Bは、矢印J方向に沿って配置されている。載置台76Aは、ガイドレール76Bに取り付けられ、反応液がセットされた反応液プレート77を載置可能とされている。載置台76Aは、ガイドレール76Bに沿って移動可能とされている。
【0035】
液体供給部78は、上部ガイドレール74A、及び、ガイドレール76Bよりも上方で、矢印I方向に架け渡された横断レール78A、及び、ヘッド78Bを含んで構成されている。ヘッド78Bは、横断レール78Aに取り付けられ、図2に示すように、測定部82と反応液プレート77との間を移動可能とされている。また、ヘッド78Bは、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド78Bは、先端部に交換可能なピペットチップCPが取り付けられ、いわゆるピペットとしての機能を有している。
【0036】
較正液調整部84には、調製用トレイ86、及び、原液用トレイ88が載置されている。原液用トレイ88には、水を貯留する水容器88A、バッファー液を貯留するバッファー液容器88B、及び、有機溶剤を貯留する溶剤容器88Cが、矢印I方向に並ぶように収納されている。本実施形態では、有機溶剤として、ジメチル・スルホキシド(DMSO)が用いられている。DMSOの屈折率は、25℃で1.48程度である。各容器には、ヘッド78に取り付けられたピペットチップCPを差し込んで容器内の液を吸引するための開口Hが形成されている。なお、バッファー液としては、リン酸緩衝食塩水(PBS)などの、PHバッファー能を有するものが、解析分子に応じて適宜選択され使用される。
【0037】
調製用トレイ86には、5種類のDMSO濃度の異なる較正液を各々調製して貯留しておくことの可能な、5個の較正液容器86A〜86Eが、矢印I方向に並ぶように収納されている。これらの容器にも、ヘッド78に取り付けられたピペットチップCPを差し込んで容器内に液を注入、及び容器内の液を吸引するための開口Hが形成されている。
【0038】
光学測定部80は、図7に示すように、光源80A、第1光学系80B、第2光学系80C、受光部80D、信号処理部80E、を含んで構成されている。光源80Aからは、光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系80Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、測定部82に配置された誘電体ブロック42の測定領域E1と参照領域E2に入射される。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含んで、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、第2光学系80Cを経て受光部80Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部80Eへ出力される。信号処理部80Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2の全反射減衰角が屈折率データとして求められる。この屈折率データが制御部90へ出力される。
【0039】
制御部90は、バイオセンサー70の全体を制御する機能を有し、図7に示すように、光源80A、信号処理部80E、及び、バイオセンサー70の図示しない駆動系と接続されている。制御部90は、図8に示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU90A、ROM90B、RAM90C、メモリ90D、及び、インターフェースI/F90E、を有し、各種の情報を表示する表示部92、各種の指示、情報を入力するための入力部94と接続されている。
【0040】
メモリ90Dには、バイオセンサー70を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。また、メモリ90Dには、後述する初期較正で使用する、複数の較正液を調製する際に、各液の量を算出するための液量算出プログラムが記憶されている。液量算出プログラムは、各較正液間でのバッファー濃度が一定になるように、較正液の調製に使用する各液の液量を算出するためのものである。本実施形態では、DMSO、及びバッファー液の原液情報、各較正液の使用量、DMSO濃度、バッファー濃度などの情報に基づいて、各較正液間におけるバッファー濃度が等しくなるように、DMSO、バッファー液、水、の各々の使用量が算出される。
【0041】
なお、算出の基礎となる、DMSO、及びバッファー液の原液情報、各較正液の使用量、各較正液のDMSO濃度、バッファー濃度などの情報は、ユーザーが入力部94から入力してもよいし、予め登録しておいてもよい。
【0042】
次に、バイオセンサー70での、初期較正用の較正液の調製について説明する。初期較正用の較正液としては、DMSO濃度の異なる複数の較正液が調製される。
【0043】
ユーザーは、予め、水容器88Aに水を、バッファー液容器88Bにバッファー液を、溶剤容器88CにDMSOを準備しておき、入力部94から、原液となるDMSO、及びバッファー液の情報を登録しておく。これらの情報は、メモリ90Dに記憶される。
【0044】
次に、入力部94から、各較正液の使用量、DMSO濃度、バッファー液濃度を入力する。この入力は、例えば、表示部92に表示される図9に示すような入力画面96から行なうことができる。入力画面96には、測定範囲を入力するための測定範囲ウインドウ96A、各較正液の使用量を入力するための使用量入力ウインドウ96B、バッファー液の濃度を入力するためのバッファー液濃度入力ウインドウ96C、複数の較正液についてのDMSO濃度を入力するためのDMSO濃度入力ウインドウ96D、及び、予め登録されている汎用パターンを入力するための汎用パターン入力ウインドウ96Eが表示されている。ユーザーは、使用量入力ウインドウ96Bから各較正液の使用量を入力し、バッファー液濃度入力ウインドウ96Cから所望のバッファー液濃度を入力し、DMSO濃度入力ウインドウ96Dから各較正液のDMSO濃度を入力する。
【0045】
なお、ユーザーは、必ずしもDMSO濃度入力ウインドウ96DからDMSO濃度を入力する必要はなく、測定範囲ウインドウ96Aから測定範囲を入力することにより、測定範囲に対応させて予め登録されているDMSO濃度が自動的に選択されるようにすることもできる。また、すべての較正液についてのDMSO濃度を入力するのではなく、測定の際に基準となるバッファー液(ランニングバッファー液)のDMSO濃度を入力することにより、このDMSO濃度の前後に所定値振られたDMSO濃度が自動的に選択されるようにすることもできる。
【0046】
また、ユーザーは、予め汎用のバッファー液濃度、DMSO濃度を対応させて汎用パターンとして登録しておき、この汎用パターンの登録番号を汎用パターン入力ウインドウ96Eから入力することにより、バッファー液濃度、DMSO濃度の入力を省略することもできる。
【0047】
入力の完了後、入力部94から調製開始指示を入力すると、制御部90では、図10に示す較正液調製処理が実行される。
【0048】
ステップS10で、液量算出プログラムにより、各較正液(第1較正液〜第5較正液)間で、バッファー液の濃度が等しくなるように、各較正液での、DMSO、バッファー液、水、の各々の液量が算出される。例えば、図9に示すように、使用量100ml、バッファー液濃度10%、DMSO濃度4%、4.5%、5%(ランニングバッファー液)、5.5%、6%の情報が入力された場合には、図11の表に示すように、各較正液に使用されるDMSO、バッファー液、水、の量が算出される。
【0049】
次に、ステップS12で、ヘッド78Bへ、水の供給指示信号が出力される。これにより、ヘッド78Bで水容器88Aから較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量の水が供給される。
【0050】
次に、ステップS14で、ヘッド78Bへ、バッファー液の供給指示信号が出力される。これにより、ヘッド78Bでバッファー液容器88Bから較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のバッファー液が供給される。
【0051】
次に、ステップS16で、ヘッド78Bへ、DMSOの供給指示信号が出力される。これにより、ヘッド78Bで溶剤容器88Cから較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のDMSOが供給され、較正液調製処理は終了する。各較正液容器86A〜86Eには、DMSO濃度が異なり、バッファー液濃度が等しい、第1較正液A〜第5較正液Eが調製される。
【0052】
上記較正液調製処理によれば、自動的に各較正液間でバッファー液の濃度が等しくなるように、複数の較正液を調製することができる。
【0053】
次に、バイオセンサー70での、測定について説明する。
【0054】
まず、バイオセンサー70の載置台72Aに被解析分子Mの固定化されたセンサースティック40入りのトレイ30をセットする。また、載置台76Aに反応液の入った反応液プレート77をセットする。反応液プレート77には、各種の解析分子Nを含む反応液Sが貯留されている。
【0055】
測定時には、押上機構72Dにより、プレート30にセットされた1のセンサースティック40がスティック保持部材74Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材74Cにより保持される。そして、スティック保持部材74Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール74Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部82へ搬送する。
【0056】
測定部82での測定は、1つの液体流路45ずつ順に行なわれる。そして、測定に先立ち、液体流路45毎に初期較正が行なわれる。初期較正は、以下の手順で行なわれる。
【0057】
入力部94から初期較正の開始指示が入力されると、制御部90では、まず、図12に示す屈折率情報取得処理が実行される。屈折率情報取得処理は、光ビームLを測定領域E1及び参照領域E2に入射させて、反射光から得られる各々の領域の屈折率に関する情報を得るものである。
【0058】
まず、ステップS22で、光源80Aへ光ビームLの出射指示信号を出力する。これにより、光源80Aから光ビームLが出射される。出射された光ビームLは、第1光学系80Bで2本の光ビームL1、L2となり、液体流路45の測定領域E1、参照領域E2へ各々入射される。また、ステップS24で、受光部80D及び信号処理部80Eへ、作動指示信号を出力する。これにより、測定領域E1、参照領域E2で全反射され第2光学系80Cを経た光ビームL1、L2は、受光部80Dで受光され、受光された光は、測定領域E1、参照領域E2毎に光電変換されて光検出信号が信号処理部80Eへ出力される。信号処理部80Eでは、光検出信号に所定の処理が加えられ、測定領域E1、参照領域E2の各々についての屈折率データが生成され、屈折率データが継続して制御部90へ出力される。
【0059】
制御部90では、ステップS26で、所定時間経過したかどうかを判断し、所定時間の経過後、ステップS28で、入力された屈折率データを測定領域E1、参照領域E2毎にメモリ90Dへ記憶する。これにより、測定領域E1、参照領域E2の屈折率データが時間毎に記録される。
【0060】
一方、上記の屈折率情報取得処理中に、液体流路45へ各較正液の供給が順に行なわれる。制御部90は、屈折率情報取得処理中の所定のタイミングで、図13に示す較正液供給処理を実行する。
【0061】
まず、ステップS40で、第1較正液Aの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、屈折率情報取得処理実行中の液体流路45へ第1較正液Aが供給される。第1較正液Aの供給は、具体的には以下のように行なわれる。まず、ヘッド78Bが第1較正液Aのセットされた較正液容器86A上部に移動すると共に下降して、ヘッド78Bに取り付けられているピペットチップCPの先端を第1較正液Aが貯留された較正液容器86Aの開口Hへ挿入し、ピペットチップCP内に第1較正液Aを吸引する。次に、ヘッド78Bを上昇させて測定部82の上部に移動すると共に下降して、ピペットチップCPの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入する。そして、液体流路45へ、吸引していた第1較正液Aを注入する。これにより、液体流路45に供給されていたバッファー液(被解析分子Mの維持用に予め充填されていたもの)が、排出口45Bから排出され、バッファー液が第1較正液Aで置換される。これにより、液体流路45が第1較正液Aで満たされ、第1較正液Aについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。
【0062】
ここで、供給口45Aから液体流路45へ第1較正液Aが注入されると、液体流路45に充填されていたバッファー液は、排出口45Bから排出され、センサースティック40の上面に溢れる。そこで、ステップS42で、廃液回収指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bは、排出口45Bの上部に移動し、溢れたバッファー液を吸引し、吸入された排出液を図示しない廃液セルへ廃棄する。
【0063】
次に、ステップS44で、第2較正液Bの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第1較正液Aで満たされている液体流路45へ第2較正液Bが供給され、液体流路45の第1較正液Aは、第2較正液Bで置換される。第2較正液Bの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第2較正液Aで満たされ、第2較正液Aについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS46で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第1較正液Aを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0064】
次に、ステップS48で、第4較正液Dの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第2較正液Bで満たされている液体流路45へ第4較正液Dが供給され、液体流路45の第2較正液Bは、第4較正液Dで置換される。第4較正液Dの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第4較正液Dで満たされ、第4較正液Dについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS50で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第2較正液Bを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0065】
次に、ステップS52で、第5較正液Eの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第4較正液Dで満たされている液体流路45へ第5較正液Eが供給され、液体流路45の第4較正液Dは、第5較正液Eで置換される。第5較正液Eの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第5較正液Eで満たされ、第5較正液Eについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS54で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第4較正液Dを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0066】
次に、ステップS56で、第3較正液C(ランニングバッファー液)の供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第5較正液Eで満たされている液体流路45へ第3較正液Cが供給され、液体流路45の第5較正液Eは、第3較正液Cで置換される。第3較正液Cの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第3較正液Cで満たされ、第3較正液Cについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS58で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第4較正液Dを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0067】
すべての較正液の供給が終了したら、較正液供給処理を終了する。
【0068】
図12の屈折率情報取得処理では、ステップS30で、較正液供給処理が終了したかどうかを判断し、終了した場合には、ステップS32で、第1〜第5較正液の、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データに基づいて、補正係数αを算出する。この補正係数αは、反応液を液体流路45へ供給して測定する際に、参照領域E2から得られる屈折率データを補正するための係数である。
【0069】
上記屈折率情報取得処理では、バッファー液濃度が等しい複数の較正液か用いられているので、正確な補正係数αを得ることができる。
【0070】
次に、バイオセンサー70での、被解析分子Mの測定処理について説明する。ここでの測定は、前述の初期較正に続いて行なわれる。
【0071】
図14に示す、ステップS22〜ステップS28については、前述の屈折率情報取得処理と同様に行なわれる。ステップS60で、補正係数αで、参照領域E2からの光検出信号により得られる屈折率データを補正して補正後屈折率データを求め、ステップS62で、測定領域E1からの光検出信号により得られる屈折率データを、補正後屈折率データで補正して、被解析分子Mと反応液中の物質との結合状態を示す結合状態データを生成する。そして、ステップS64で、結合状態データを表示部92へ出力する。これにより、所定時間毎の結合状態データがメモリ90Dへ記憶されると共に、表示部92へ表示される。この測定処理は、測定処理終了信号を受けるまで継続される。
【0072】
一方、上記の測定処理中に、液体流路45へ反応液Sの供給が行なわれる。制御部90は、測定処理中の所定のタイミングで、図15に示す反応液供給処理を実行する。
【0073】
まず、ステップS70で、反応液Sの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、測定中の液体流路45へ反応液Sが供給される。
【0074】
反応液Sの供給は、具体的には以下のように行なわれる。まず、ヘッド78Bが反応液Sのセットされた反応液プレート77の上部に移動すると共に下降して、ヘッド78Bに取り付けられているピペットチップCPの先端を反応液Sが貯留されたセルへ挿入し、ピペットチップCP内に反応液Sを吸引する。次に、ヘッド78Bを上昇させて測定部82の上部に移動すると共に下降して、ピペットチップCPの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入する。そして、液体流路45へ、吸引していた反応液Sを注入する(図16(A)参照)。これにより、被解析分子Mへ解析分子Nが供給され、相互作用を観察することができる。
【0075】
ここで、供給口45Aから液体流路45へ反応液Sが注入されると、液体流路45に充填されていたランニングバッファー液は、排出口45Bから排出され、センサースティック40の上面に溢れる。そこで、ステップS72で、廃液回収指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bは、排出口45Bの上部に移動し、溢れたバッファー液を吸引し、吸入された排出液を図示しない廃液セルへ廃棄する。
【0076】
その後、ステップS74で、所定の反応時間T1が経過するまで待機する。この反応時間T1は、反応液Sに含まれる解析分子Nと被解析分子Mとの相互作用が飽和状態となるのに十分な時間であり、予めメモリ90Dへ記録しておいてもよいし、前述の結合状態データに基づいて相互作用が飽和状態かどうかを判断してもよい。反応時間T1中も、測定処理は実行されている。このとき、液体流路45では、供給された反応液Sの流れが停止された状態(反応液Sの送液がない状態)で測定処理は行なわれている。
【0077】
反応時間T1の経過後、ステップS76で、測定終了指示信号を出力し、反応液供給処理を終了する。
【0078】
一方、測定処理も、測定終了指示信号を受けて終了される。
【0079】
本実施形態によれば、正確な補正係数αを用いて参照領域E2の屈折率データが補正され、補正後の屈折率データにより測定領域E1の屈折率データが補正されて結合状態データが求められているので、より正確な結合状態データを得て正確な測定を行なうことができる。
【0080】
なお、本実施形態では、液体流路45から排出された液体を、液体を供給したピペットチップCPを排出口45Bまで移動させて吸引することにより回収したが、排出された液体の回収は他の方法で行なうこともできる。例えば、図17に示すように、供給口45Aから1つのピペットチップCPを挿入して液体を供給すると共に、排出口45Bへ他のピペットチップCPを挿入して液体を吸引することにより、液体流路45内の液置換を行なうことができる。
【0081】
また、本実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではなく、測定領域における屈折率を用いて測定を行なう、あらゆるバイオセンサー、例えば、二面偏波式干渉計を用いた解析装置などに、本実施形態での較正方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図において、ヘッドが測定部付近に位置している状態を示す図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図5】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図6】本実施形態のセンサースティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図7】本実施形態のバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図8】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図9】本実施形態の入力画面を示す図である。
【図10】本実施形態の較正液調製処理のフローチャートである。
【図11】本実施形態での液量算出結果の一例を示す表である。
【図12】本実施形態の屈折率情報取得処理のフローチャートである。
【図13】本実施形態の較正液供給処理のフローチャートである。
【図14】本実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図15】本実施形態の反応液供給処理のフローチャートである。
【図16】本実施形態での液体流路の反応液供給手順を説明する図である。
【図17】液置換の他の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
40 センサースティック
45 液体流路
70 バイオセンサー
80 光学測定部
84 較正液調整部
90D メモリ
90 制御部
L 光ビーム
E1 測定領域
E2 参照領域
S 反応液
M 被解析分子
N 解析分子
α 補正係数
A 第1較正液
B 第2較正液
C 第3較正液
D 第4較正液
E 第5較正液
【技術分野】
【0001】
本発明は、被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーを較正するバイオセンサー較正方法、このバイオセンサー較正方法を用いた測定方法、及び、前記バイオセンサー較正方法を用いて較正されるバイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エバネッセント波を利用した測定装置の1つとして、表面プラズモンセンサーが知られている(特許文献1参照)。一般的に、表面プラズモンセンサーは、プリズムと、このプリズムの一面に配置され被解析分子が固定される金属膜と、光ビームを発生させる光源と、光ビームをプリズムに対して、プリズムと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、界面で全反射した光ビームの強度を検出する光検出手段と、を備え、光検出手段の検出結果に基づいて、被解析分子についての解析を行なうものである。
【0003】
この表面プラズモンセンサーによる測定では、金属膜の上に固定化された被解析分子に対して解析分子を含む反応液を供給すると共に、金属膜の反応液が供給されている側と逆側の面へ光ビームを入射し、その反射光から得られる屈折率から得られる情報に基づいて、被解析分子と反応液中の解析分子との相互作用が測定される。
【0004】
このように、屈折率から得られる情報を用いて、被解析分子と反応液中の解析分子との相互作用を測定する場合には、通常、被解析分子の固定されている測定領域の他に、被解析分子の固定されていない参照領域を設け、参照領域から得られる屈折率情報を用いて、測定領域から得られる屈折率情報を補正し、解析分子と被解析分子との相互作用を示す正確なデータを得る。
【0005】
ところで、前述の反応液を調製する際に、屈折率の大きい物質が用いられることがある。例えば、疎水性の解析分子を溶解させるために、有機溶剤として、ジメチル・スルホキシド(DMSO)が用いられるが、DMSOは屈折率が大きく、また、測定領域には被解析分子の膜厚があることから、参照領域と測定領域とで、DMSO濃度の変化に対する屈折率変化が異なってしまう。そのため、非特許文献1では、DMSO濃度の異なる複数の較正液を用いて、測定セル毎に、DMSO濃度と屈折率との関係を求め、当該測定セルの初期較正が行なわれている。
【0006】
この初期較正を行なうに際しては、複数のDMSO濃度の異なる較正液を調製することが必要であり、非特許文献1には、この調整方法が示されている。非特許文献1に記載の方法で調整した複数の較正液では、DMSO濃度と共にバッファー能を有する物質の濃度も異なってしまっている。
【非特許文献1】Biacore Application Trainingテキスト
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バッファー能を有する物質としては、通常、屈折率への影響が小さいものが選択されるが、バッファー能を有する物質が静電吸着などにより参照領域や測定領域に付着されることも考えられ、屈折率に変化をもたらすこともある。したがって、複数の較正液間においてバッファー能を有する物質の濃度が異なると、較正の精度が低下してしまう。
【0008】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、屈折率の異なる複数の較正液を用いてバイオセンサー較正する場合に、より正確に較正することの可能な、バイオセンサー較正方法、このバイオセンサー較正方法を用いた測定方法、及び、前記バイオセンサー較正方法を用いて較正されるバイオセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のバイオセンサー較正方法は、被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーを、屈折率の異なる複数の較正液を用いて較正するバイオセンサー較正方法であって、較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、及び、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なる共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製し、調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得し、
取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する、ものである。
【0010】
また、請求項5に記載のバイオセンサーは、被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーであって、較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なると共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製する、較正液調製手段と、調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得する屈折率情報取得手段と、取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する屈折率較正手段と、を備えたものである。
【0011】
ここで、屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質とは、その物質自体の屈折率が大きく、較正液の調製に用いられた場合に、較正液の屈折率を大きくする物質をいう。また、バッファー能を有するバッファー能物質とは、PHバッファー能を有するイオン性物質をいう。
【0012】
請求項1に記載のバイオセンサー較正方法、及び、請求項5に記載のバイオセンサーによれば、調製された複数の較正液間でバッファー能物質の濃度が等しいので、参照領域と測定領域における、バッファー能物質の濃度に起因する較正の誤差がなくなり、正確に解析分子供給時における測定領域での光の屈折率を較正することができる。
【0013】
請求項2に記載のバイオセンサー較正方法、及び、請求項6に記載のバイオセンサーは、前記屈折率変化物質の25℃における屈折率が1.4以上であること、を特徴とするものである。
【0014】
通常、屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定する場合には、調液精度より屈折率の精度を高くする等の理由から、較正液の屈折率範囲を大きくしておく必要がある。そこで、少量の添加で屈折率が大きく変わるように、屈折率変化物質として、屈折率の大きいものを選択することが好ましい。
【0015】
請求項3に記載のバイオセンサー較正方法、及び、請求項7に記載のバイオセンサーは、前記屈折率変化物質が、非イオン性物質であること、を特徴とするものである。
【0016】
屈折率変化物質がイオン性物質であると、参照領域及び測定領域に付着して屈折率に影響を与えてしまうので、各較正液間で濃度を異ならせている屈折率変化物質は、非イオン性物質であることが好ましい。
【0017】
請求項4に記載の測定方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバイオセンサー較正方法を用いて、被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するものである。
【0018】
請求項4に記載の測定方法によれば、正確な較正が行なわれているので、より高い精度の測定を行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、より正確な較正、測定を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態のバイオセンサー70は、、金属膜の表面に発生する表面プラズモンを利用して、被解析分子Mの特性を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。バイオセンサー70では、被解析分子Mに、各種の反応液を供給して、被解析分子Mと反応液中の物質との結合の有無、結合速度、結合量、等を測定する。被解析分子Mとしては、蛋白質、核酸、脂肪酸などの生理活性物質を解析対象とすることができる。
【0022】
図1及び図2に示すように、バイオセンサー70は、トレイ保持部72、搬送部74、反応液プレート保持部76、液体供給部78、光学測定部80、較正液調整部84、及び、制御部90を備えている。
【0023】
トレイ保持部72は、載置台72A、及び、ベルト72Bを含んで構成されている。載置台72Aは、矢印I方向に架け渡されたベルト73に取り付けられており、ベルト72Bの回転により矢印I方向に移動可能とされている。載置台72A上には、トレイ30が2枚、位置決めして載置される。トレイ30には、センサースティック40が8本収納されている。センサースティック40は、測定対象となる被解析分子Mの固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台72Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材74Cの位置まで押し上げる、押上機構72Dが配置されている。
【0024】
センサースティック40は、被解析分子Mが固定されるものである。図3及び図4に示すように、センサースティック40は、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。
【0025】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42A、及び、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aと一体的に形成された被保持部42Bを備ている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図5にも示すように金属膜50が形成されている。この金属膜50上に、バイオセンサー70で解析する解析分子が固定される。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとしても機能し、バイオセンサー70での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0026】
金属膜50の表面の一部で、後述する液体流路45に露出された部分の下流側に位置する測定領域E1には、図6にも示すように、被解析分子Mを固定するための固定化担体50Aが形成されている。固定化担体50Aの反応基との共有結合により、被解析分子Mがこの部分に固定される。固定化担体50Aとしては、デキストラン、カルボキシメチル基、NTAなどを用いることができ、被解析分子Mに応じて選択される。
【0027】
金属膜50上の液体流路45に露出された部分の上流側に位置する領域は、参照領域E2とされている。参照領域E2は、被解析分子Mの固定された測定領域E1から得られる光の屈折率データを補正するために設けられた領域であり、この参照領域E2にも、光ビームが入射される。なお、参照領域E2は、各種のアナライトとの結合が阻止されるように、例えばアルキルチオール、アミノアルコール、アミノエーテル等で処理しておくことが好ましい。
【0028】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材52と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが、各々7箇所に形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0029】
流路部材44は、誘電体ブロック42のプリズム部42Aと略同じ長さの棒状とされ、図5に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50との間に、液体流路45を構成する。液体流路45は、流路部材44の流路壁44Aと金属膜50とで囲まれて構成されており、供給された液体を金属膜50上で貯留可能とされている。流路部材44には、液体流路45と連通された供給口45A及び排出口45Bが形成されている。液体流路45は、流路部材44の長手方向に6個並んで配置されている。したがって、1本のセンサースティック40には、独立した6個の液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
【0030】
なお、液体流路45には、蛋白質を含む液体が供給されることが想定されるので、流路壁44Aへので蛋白質の固着を防止するため、流路部材44の材料としては、蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましい。また、流路部材44は、金属膜50との密着性を確保して液漏れを防止するため、弾性を有することが好ましい。具体的にはシリコン、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0031】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0032】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Bを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0033】
なお、この蒸発防止部材54も、スリット49DからピペットチップCPを挿入できるように、弾性を有する材料で構成されることが好ましく、具体的にはシリコンまたはポリプロピレン等を用いることができる。
【0034】
図1及び図2に示すように、バイオセンサー70の搬送部74は、上部ガイドレール74A、下部ガイドレール74B、及び、スティック保持部材74C、を含んで構成されている。上部ガイドレール74A及び下部ガイドレール74Bは、トレイ保持部72及び光学測定部80の上部で、矢印I方向と直交する矢印J方向に水平に配置されている。上部ガイドレール74Aには、スティック保持部材74Cが取り付けられている。スティック保持部材74Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール74Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材74Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール74Bとが係合され、スティック保持部材74Cが矢印J方向に移動することにより、図2に示すように、センサースティック40が光学測定部80上の測定部82に搬送される。この測定部82で、センサースティック40に固定された被解析分子Mの測定が行われる。測定部82では、下部ガイドレール74Bが測定のために一部離間されている
反応液プレート保持部76は、載置台76A、及び、ガイドレール76Bを含んで構成されている。ガイドレール76Bは、矢印J方向に沿って配置されている。載置台76Aは、ガイドレール76Bに取り付けられ、反応液がセットされた反応液プレート77を載置可能とされている。載置台76Aは、ガイドレール76Bに沿って移動可能とされている。
【0035】
液体供給部78は、上部ガイドレール74A、及び、ガイドレール76Bよりも上方で、矢印I方向に架け渡された横断レール78A、及び、ヘッド78Bを含んで構成されている。ヘッド78Bは、横断レール78Aに取り付けられ、図2に示すように、測定部82と反応液プレート77との間を移動可能とされている。また、ヘッド78Bは、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド78Bは、先端部に交換可能なピペットチップCPが取り付けられ、いわゆるピペットとしての機能を有している。
【0036】
較正液調整部84には、調製用トレイ86、及び、原液用トレイ88が載置されている。原液用トレイ88には、水を貯留する水容器88A、バッファー液を貯留するバッファー液容器88B、及び、有機溶剤を貯留する溶剤容器88Cが、矢印I方向に並ぶように収納されている。本実施形態では、有機溶剤として、ジメチル・スルホキシド(DMSO)が用いられている。DMSOの屈折率は、25℃で1.48程度である。各容器には、ヘッド78に取り付けられたピペットチップCPを差し込んで容器内の液を吸引するための開口Hが形成されている。なお、バッファー液としては、リン酸緩衝食塩水(PBS)などの、PHバッファー能を有するものが、解析分子に応じて適宜選択され使用される。
【0037】
調製用トレイ86には、5種類のDMSO濃度の異なる較正液を各々調製して貯留しておくことの可能な、5個の較正液容器86A〜86Eが、矢印I方向に並ぶように収納されている。これらの容器にも、ヘッド78に取り付けられたピペットチップCPを差し込んで容器内に液を注入、及び容器内の液を吸引するための開口Hが形成されている。
【0038】
光学測定部80は、図7に示すように、光源80A、第1光学系80B、第2光学系80C、受光部80D、信号処理部80E、を含んで構成されている。光源80Aからは、光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系80Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、測定部82に配置された誘電体ブロック42の測定領域E1と参照領域E2に入射される。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含んで、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、第2光学系80Cを経て受光部80Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部80Eへ出力される。信号処理部80Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2の全反射減衰角が屈折率データとして求められる。この屈折率データが制御部90へ出力される。
【0039】
制御部90は、バイオセンサー70の全体を制御する機能を有し、図7に示すように、光源80A、信号処理部80E、及び、バイオセンサー70の図示しない駆動系と接続されている。制御部90は、図8に示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU90A、ROM90B、RAM90C、メモリ90D、及び、インターフェースI/F90E、を有し、各種の情報を表示する表示部92、各種の指示、情報を入力するための入力部94と接続されている。
【0040】
メモリ90Dには、バイオセンサー70を制御するための各種プログラムや、各種データが記録されている。また、メモリ90Dには、後述する初期較正で使用する、複数の較正液を調製する際に、各液の量を算出するための液量算出プログラムが記憶されている。液量算出プログラムは、各較正液間でのバッファー濃度が一定になるように、較正液の調製に使用する各液の液量を算出するためのものである。本実施形態では、DMSO、及びバッファー液の原液情報、各較正液の使用量、DMSO濃度、バッファー濃度などの情報に基づいて、各較正液間におけるバッファー濃度が等しくなるように、DMSO、バッファー液、水、の各々の使用量が算出される。
【0041】
なお、算出の基礎となる、DMSO、及びバッファー液の原液情報、各較正液の使用量、各較正液のDMSO濃度、バッファー濃度などの情報は、ユーザーが入力部94から入力してもよいし、予め登録しておいてもよい。
【0042】
次に、バイオセンサー70での、初期較正用の較正液の調製について説明する。初期較正用の較正液としては、DMSO濃度の異なる複数の較正液が調製される。
【0043】
ユーザーは、予め、水容器88Aに水を、バッファー液容器88Bにバッファー液を、溶剤容器88CにDMSOを準備しておき、入力部94から、原液となるDMSO、及びバッファー液の情報を登録しておく。これらの情報は、メモリ90Dに記憶される。
【0044】
次に、入力部94から、各較正液の使用量、DMSO濃度、バッファー液濃度を入力する。この入力は、例えば、表示部92に表示される図9に示すような入力画面96から行なうことができる。入力画面96には、測定範囲を入力するための測定範囲ウインドウ96A、各較正液の使用量を入力するための使用量入力ウインドウ96B、バッファー液の濃度を入力するためのバッファー液濃度入力ウインドウ96C、複数の較正液についてのDMSO濃度を入力するためのDMSO濃度入力ウインドウ96D、及び、予め登録されている汎用パターンを入力するための汎用パターン入力ウインドウ96Eが表示されている。ユーザーは、使用量入力ウインドウ96Bから各較正液の使用量を入力し、バッファー液濃度入力ウインドウ96Cから所望のバッファー液濃度を入力し、DMSO濃度入力ウインドウ96Dから各較正液のDMSO濃度を入力する。
【0045】
なお、ユーザーは、必ずしもDMSO濃度入力ウインドウ96DからDMSO濃度を入力する必要はなく、測定範囲ウインドウ96Aから測定範囲を入力することにより、測定範囲に対応させて予め登録されているDMSO濃度が自動的に選択されるようにすることもできる。また、すべての較正液についてのDMSO濃度を入力するのではなく、測定の際に基準となるバッファー液(ランニングバッファー液)のDMSO濃度を入力することにより、このDMSO濃度の前後に所定値振られたDMSO濃度が自動的に選択されるようにすることもできる。
【0046】
また、ユーザーは、予め汎用のバッファー液濃度、DMSO濃度を対応させて汎用パターンとして登録しておき、この汎用パターンの登録番号を汎用パターン入力ウインドウ96Eから入力することにより、バッファー液濃度、DMSO濃度の入力を省略することもできる。
【0047】
入力の完了後、入力部94から調製開始指示を入力すると、制御部90では、図10に示す較正液調製処理が実行される。
【0048】
ステップS10で、液量算出プログラムにより、各較正液(第1較正液〜第5較正液)間で、バッファー液の濃度が等しくなるように、各較正液での、DMSO、バッファー液、水、の各々の液量が算出される。例えば、図9に示すように、使用量100ml、バッファー液濃度10%、DMSO濃度4%、4.5%、5%(ランニングバッファー液)、5.5%、6%の情報が入力された場合には、図11の表に示すように、各較正液に使用されるDMSO、バッファー液、水、の量が算出される。
【0049】
次に、ステップS12で、ヘッド78Bへ、水の供給指示信号が出力される。これにより、ヘッド78Bで水容器88Aから較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量の水が供給される。
【0050】
次に、ステップS14で、ヘッド78Bへ、バッファー液の供給指示信号が出力される。これにより、ヘッド78Bでバッファー液容器88Bから較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のバッファー液が供給される。
【0051】
次に、ステップS16で、ヘッド78Bへ、DMSOの供給指示信号が出力される。これにより、ヘッド78Bで溶剤容器88Cから較正液容器86A〜86Eへ各々算出された量のDMSOが供給され、較正液調製処理は終了する。各較正液容器86A〜86Eには、DMSO濃度が異なり、バッファー液濃度が等しい、第1較正液A〜第5較正液Eが調製される。
【0052】
上記較正液調製処理によれば、自動的に各較正液間でバッファー液の濃度が等しくなるように、複数の較正液を調製することができる。
【0053】
次に、バイオセンサー70での、測定について説明する。
【0054】
まず、バイオセンサー70の載置台72Aに被解析分子Mの固定化されたセンサースティック40入りのトレイ30をセットする。また、載置台76Aに反応液の入った反応液プレート77をセットする。反応液プレート77には、各種の解析分子Nを含む反応液Sが貯留されている。
【0055】
測定時には、押上機構72Dにより、プレート30にセットされた1のセンサースティック40がスティック保持部材74Cの位置まで押し上げられ、スティック保持部材74Cにより保持される。そして、スティック保持部材74Cは、センサースティック40を保持したまま下部ガイドレール74Bに沿って移動して、センサースティック40を測定部82へ搬送する。
【0056】
測定部82での測定は、1つの液体流路45ずつ順に行なわれる。そして、測定に先立ち、液体流路45毎に初期較正が行なわれる。初期較正は、以下の手順で行なわれる。
【0057】
入力部94から初期較正の開始指示が入力されると、制御部90では、まず、図12に示す屈折率情報取得処理が実行される。屈折率情報取得処理は、光ビームLを測定領域E1及び参照領域E2に入射させて、反射光から得られる各々の領域の屈折率に関する情報を得るものである。
【0058】
まず、ステップS22で、光源80Aへ光ビームLの出射指示信号を出力する。これにより、光源80Aから光ビームLが出射される。出射された光ビームLは、第1光学系80Bで2本の光ビームL1、L2となり、液体流路45の測定領域E1、参照領域E2へ各々入射される。また、ステップS24で、受光部80D及び信号処理部80Eへ、作動指示信号を出力する。これにより、測定領域E1、参照領域E2で全反射され第2光学系80Cを経た光ビームL1、L2は、受光部80Dで受光され、受光された光は、測定領域E1、参照領域E2毎に光電変換されて光検出信号が信号処理部80Eへ出力される。信号処理部80Eでは、光検出信号に所定の処理が加えられ、測定領域E1、参照領域E2の各々についての屈折率データが生成され、屈折率データが継続して制御部90へ出力される。
【0059】
制御部90では、ステップS26で、所定時間経過したかどうかを判断し、所定時間の経過後、ステップS28で、入力された屈折率データを測定領域E1、参照領域E2毎にメモリ90Dへ記憶する。これにより、測定領域E1、参照領域E2の屈折率データが時間毎に記録される。
【0060】
一方、上記の屈折率情報取得処理中に、液体流路45へ各較正液の供給が順に行なわれる。制御部90は、屈折率情報取得処理中の所定のタイミングで、図13に示す較正液供給処理を実行する。
【0061】
まず、ステップS40で、第1較正液Aの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、屈折率情報取得処理実行中の液体流路45へ第1較正液Aが供給される。第1較正液Aの供給は、具体的には以下のように行なわれる。まず、ヘッド78Bが第1較正液Aのセットされた較正液容器86A上部に移動すると共に下降して、ヘッド78Bに取り付けられているピペットチップCPの先端を第1較正液Aが貯留された較正液容器86Aの開口Hへ挿入し、ピペットチップCP内に第1較正液Aを吸引する。次に、ヘッド78Bを上昇させて測定部82の上部に移動すると共に下降して、ピペットチップCPの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入する。そして、液体流路45へ、吸引していた第1較正液Aを注入する。これにより、液体流路45に供給されていたバッファー液(被解析分子Mの維持用に予め充填されていたもの)が、排出口45Bから排出され、バッファー液が第1較正液Aで置換される。これにより、液体流路45が第1較正液Aで満たされ、第1較正液Aについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。
【0062】
ここで、供給口45Aから液体流路45へ第1較正液Aが注入されると、液体流路45に充填されていたバッファー液は、排出口45Bから排出され、センサースティック40の上面に溢れる。そこで、ステップS42で、廃液回収指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bは、排出口45Bの上部に移動し、溢れたバッファー液を吸引し、吸入された排出液を図示しない廃液セルへ廃棄する。
【0063】
次に、ステップS44で、第2較正液Bの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第1較正液Aで満たされている液体流路45へ第2較正液Bが供給され、液体流路45の第1較正液Aは、第2較正液Bで置換される。第2較正液Bの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第2較正液Aで満たされ、第2較正液Aについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS46で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第1較正液Aを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0064】
次に、ステップS48で、第4較正液Dの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第2較正液Bで満たされている液体流路45へ第4較正液Dが供給され、液体流路45の第2較正液Bは、第4較正液Dで置換される。第4較正液Dの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第4較正液Dで満たされ、第4較正液Dについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS50で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第2較正液Bを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0065】
次に、ステップS52で、第5較正液Eの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第4較正液Dで満たされている液体流路45へ第5較正液Eが供給され、液体流路45の第4較正液Dは、第5較正液Eで置換される。第5較正液Eの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第5較正液Eで満たされ、第5較正液Eについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS54で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第4較正液Dを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0066】
次に、ステップS56で、第3較正液C(ランニングバッファー液)の供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、第5較正液Eで満たされている液体流路45へ第3較正液Cが供給され、液体流路45の第5較正液Eは、第3較正液Cで置換される。第3較正液Cの供給は、第1較正液Aの供給と同様にして行なわれる。これにより、液体流路45が第3較正液Cで満たされ、第3較正液Cについての、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データが得られる。そして、ステップS58で、廃液回収信号を出力して、センサースティック40上面に溢れた第4較正液Dを回収する。回収は、ステップS42と同様にして行なわれる。
【0067】
すべての較正液の供給が終了したら、較正液供給処理を終了する。
【0068】
図12の屈折率情報取得処理では、ステップS30で、較正液供給処理が終了したかどうかを判断し、終了した場合には、ステップS32で、第1〜第5較正液の、測定領域E1、参照領域E2での屈折率データに基づいて、補正係数αを算出する。この補正係数αは、反応液を液体流路45へ供給して測定する際に、参照領域E2から得られる屈折率データを補正するための係数である。
【0069】
上記屈折率情報取得処理では、バッファー液濃度が等しい複数の較正液か用いられているので、正確な補正係数αを得ることができる。
【0070】
次に、バイオセンサー70での、被解析分子Mの測定処理について説明する。ここでの測定は、前述の初期較正に続いて行なわれる。
【0071】
図14に示す、ステップS22〜ステップS28については、前述の屈折率情報取得処理と同様に行なわれる。ステップS60で、補正係数αで、参照領域E2からの光検出信号により得られる屈折率データを補正して補正後屈折率データを求め、ステップS62で、測定領域E1からの光検出信号により得られる屈折率データを、補正後屈折率データで補正して、被解析分子Mと反応液中の物質との結合状態を示す結合状態データを生成する。そして、ステップS64で、結合状態データを表示部92へ出力する。これにより、所定時間毎の結合状態データがメモリ90Dへ記憶されると共に、表示部92へ表示される。この測定処理は、測定処理終了信号を受けるまで継続される。
【0072】
一方、上記の測定処理中に、液体流路45へ反応液Sの供給が行なわれる。制御部90は、測定処理中の所定のタイミングで、図15に示す反応液供給処理を実行する。
【0073】
まず、ステップS70で、反応液Sの供給指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bで、測定中の液体流路45へ反応液Sが供給される。
【0074】
反応液Sの供給は、具体的には以下のように行なわれる。まず、ヘッド78Bが反応液Sのセットされた反応液プレート77の上部に移動すると共に下降して、ヘッド78Bに取り付けられているピペットチップCPの先端を反応液Sが貯留されたセルへ挿入し、ピペットチップCP内に反応液Sを吸引する。次に、ヘッド78Bを上昇させて測定部82の上部に移動すると共に下降して、ピペットチップCPの先端を液体流路45の供給口45Aへ挿入する。そして、液体流路45へ、吸引していた反応液Sを注入する(図16(A)参照)。これにより、被解析分子Mへ解析分子Nが供給され、相互作用を観察することができる。
【0075】
ここで、供給口45Aから液体流路45へ反応液Sが注入されると、液体流路45に充填されていたランニングバッファー液は、排出口45Bから排出され、センサースティック40の上面に溢れる。そこで、ステップS72で、廃液回収指示信号をヘッド78Bへ出力する。これにより、ヘッド78Bは、排出口45Bの上部に移動し、溢れたバッファー液を吸引し、吸入された排出液を図示しない廃液セルへ廃棄する。
【0076】
その後、ステップS74で、所定の反応時間T1が経過するまで待機する。この反応時間T1は、反応液Sに含まれる解析分子Nと被解析分子Mとの相互作用が飽和状態となるのに十分な時間であり、予めメモリ90Dへ記録しておいてもよいし、前述の結合状態データに基づいて相互作用が飽和状態かどうかを判断してもよい。反応時間T1中も、測定処理は実行されている。このとき、液体流路45では、供給された反応液Sの流れが停止された状態(反応液Sの送液がない状態)で測定処理は行なわれている。
【0077】
反応時間T1の経過後、ステップS76で、測定終了指示信号を出力し、反応液供給処理を終了する。
【0078】
一方、測定処理も、測定終了指示信号を受けて終了される。
【0079】
本実施形態によれば、正確な補正係数αを用いて参照領域E2の屈折率データが補正され、補正後の屈折率データにより測定領域E1の屈折率データが補正されて結合状態データが求められているので、より正確な結合状態データを得て正確な測定を行なうことができる。
【0080】
なお、本実施形態では、液体流路45から排出された液体を、液体を供給したピペットチップCPを排出口45Bまで移動させて吸引することにより回収したが、排出された液体の回収は他の方法で行なうこともできる。例えば、図17に示すように、供給口45Aから1つのピペットチップCPを挿入して液体を供給すると共に、排出口45Bへ他のピペットチップCPを挿入して液体を吸引することにより、液体流路45内の液置換を行なうことができる。
【0081】
また、本実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではなく、測定領域における屈折率を用いて測定を行なう、あらゆるバイオセンサー、例えば、二面偏波式干渉計を用いた解析装置などに、本実施形態での較正方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本実施形態のバイオセンサーの全体斜視図において、ヘッドが測定部付近に位置している状態を示す図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図5】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図6】本実施形態のセンサースティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図7】本実施形態のバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図8】本実施形態の制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図9】本実施形態の入力画面を示す図である。
【図10】本実施形態の較正液調製処理のフローチャートである。
【図11】本実施形態での液量算出結果の一例を示す表である。
【図12】本実施形態の屈折率情報取得処理のフローチャートである。
【図13】本実施形態の較正液供給処理のフローチャートである。
【図14】本実施形態の測定処理のフローチャートである。
【図15】本実施形態の反応液供給処理のフローチャートである。
【図16】本実施形態での液体流路の反応液供給手順を説明する図である。
【図17】液置換の他の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
40 センサースティック
45 液体流路
70 バイオセンサー
80 光学測定部
84 較正液調整部
90D メモリ
90 制御部
L 光ビーム
E1 測定領域
E2 参照領域
S 反応液
M 被解析分子
N 解析分子
α 補正係数
A 第1較正液
B 第2較正液
C 第3較正液
D 第4較正液
E 第5較正液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーを、屈折率の異なる複数の較正液を用いて較正するバイオセンサー較正方法であって、
較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、及び、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なる共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製し、
調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得し、
取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する、バイオセンサー較正方法。
【請求項2】
前記屈折率変化物質の25℃における屈折率が1.4以上であること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー較正方法。
【請求項3】
前記屈折率変化物質が、非イオン性物質であること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオセンサー較正方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバイオセンサー較正方法を用いて、被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定する測定方法。
【請求項5】
被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーであって、
較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なると共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製する、較正液調製手段と、
調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得する屈折率情報取得手段と、
取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する屈折率較正手段と、
を備えた、バイオセンサー。
【請求項6】
前記屈折率変化物質の25℃における屈折率が1.4以上であること、を特徴とする請求項5に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記屈折率変化物質が、イオン性物質でないこと、を特徴とする請求項5または請求項6に記載のバイオセンサー。
【請求項1】
被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーを、屈折率の異なる複数の較正液を用いて較正するバイオセンサー較正方法であって、
較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、及び、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なる共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製し、
調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得し、
取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する、バイオセンサー較正方法。
【請求項2】
前記屈折率変化物質の25℃における屈折率が1.4以上であること、を特徴とする請求項1に記載のバイオセンサー較正方法。
【請求項3】
前記屈折率変化物質が、非イオン性物質であること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオセンサー較正方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバイオセンサー較正方法を用いて、被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定する測定方法。
【請求項5】
被解析生体分子の固定された測定領域での光の屈折率を用いて被解析分子と解析分子との間の相互作用を測定するバイオセンサーであって、
較正液の屈折率の変化に寄与する屈折率変化物質、バッファー能を有するバッファー能物質を含む複数の較正液を、各較正液間で、前記屈折率変化物質の濃度が異なると共に、前記バッファー能物質の濃度が等しくなるように調製する、較正液調製手段と、
調製した前記複数の較正液の各々について、前記測定領域及び被解析生体分子の固定されない参照領域における屈折率情報を取得する屈折率情報取得手段と、
取得した複数の較正液の屈折率情報に基づいて、前記解析分子供給時における前記測定領域での光の屈折率を較正する屈折率較正手段と、
を備えた、バイオセンサー。
【請求項6】
前記屈折率変化物質の25℃における屈折率が1.4以上であること、を特徴とする請求項5に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記屈折率変化物質が、イオン性物質でないこと、を特徴とする請求項5または請求項6に記載のバイオセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−266851(P2006−266851A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84993(P2005−84993)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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