説明

バイオディーゼル燃料の製造方法

【課題】本発明は、収率の高いバイオディーゼル燃料の製造方法を提案すること。
【解決手段】下記(1)〜(3)の工程を、この順序で包含することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法は、(1) 油脂原料をアルカリ触媒法により低級アルコールとエステル交換反応させる工程、または遊離脂肪酸を低級アルコールでエステル化させる工程、(2) 反応液中の過剰アルコールを除去する工程、(3) 反応混合液を軽液と重液に比重分離させ、軽液を抽出し、アルカリ触媒法によりエステル交換反応の場合には、軽液抽出後に、吸着剤と混合若しくは通過接触させるか、または反応混合液を比重分離する前に中和する工程を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高収率、高純度のバイオディーゼル燃料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、バイオディーゼル燃料は植物性油脂類や動物性油脂類をメチルエステル化させたものを含む燃料であり、硫黄分等をほとんど含まないことから黒煙などの有害排気ガスの排出がすくない。また植物由来であることから、京都議定書に示された規定上、炭酸ガスの排出がゼロカウントである。このようなことから、環境負荷の少ない軽油代替燃料として注目され、欧米では既に規格、法制度も整備され、大豆や菜種油から年間250万トン以上が生産され使用されている。
このような状況下、その供給量の確保という側面から、あらゆる脂肪酸誘導体、即ち、酸価状態の低い油脂から高い油脂に至る全ての油脂原料を効率よく使用することのできる技術が望まれている。
【0003】
ところで、油脂類のエステルの主成分はモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド等であるが、これらをアルキルアルコールとエステル交換反応させることは広く知られている。また油脂類に含まれる遊離脂肪酸とアルキルアルコールとをエステル化反応することも種々知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
エステル交換反応及びエステル化反応を利用して、油脂類からバイオディーゼル燃料油を製造する技術についても様々な検討がされてきた(例えば、特許文献1、2、3、及び4を参照)。これらの方法においては、上記エステル交換、又はエステル化の効率を高め、不純物をなるべく残存しないようにすることの工夫が試みられている。
【0004】
しかしながら、エステル交換反応において遊離脂肪酸が多く含まれていると、これらがまず触媒であるアルカリ金属と反応し、アルカリ石鹸を生成してしまう。このような鹸化は反応収率を低下させ、更に精製においてもエマルジョンの発生の原因となる。従って、アルカリ触媒下でのエステル交換反応による脂肪酸アルキルエステル燃料の製造においては、原料油中の遊離脂肪酸量を制限する必要があると考えられてきた。
【0005】
また、遊離脂肪酸のエステル化反応は平衡反応であることから、一方の原料であるアルキルアルコールを過剰に用いること、また副反応物として生成する水を除去することによって平衡を生成系にずらして収率を上げることが考えられている。更に反応速度を速めるために触媒が使用される。脂肪酸のエステル化反応における工業化プロセスでは通常、酸性触媒が多用され、例えば、硫酸や燐酸等は、非芳香族カルボン酸類のエステル化触媒とされている。しかしながら、このような触媒の使用では、反応溶液中に触媒が均一に溶解した状態で存在するため、生成液からの触媒の分離、回収が困難であるという問題がある。
このような問題を解決するため、従来から固体酸触媒もよく使用されている。固体酸触媒としてはスルホン酸系イオン交換樹脂やヘテロポリ酸をシリカゲルや活性炭に担持したものがある。
【0006】
遊離脂肪酸を含む油脂類を原料油とする場合のバイオディーゼル燃料化法としては、先ず上記固体酸触媒によってエステル化し、その後アルカリ触媒によってエステル交換反応を行う方法が考えられる。しかしながら、反応が全く異なる性質の2触媒系を使用するために複雑となること、脂肪酸量によって第1反応を常時コントロールする必要があること等の点から操作性に欠ける。更に、油脂原料の遊離脂肪酸量が30質量%以上であれば、複雑なプロセスプラントを必要とし、基本的な大型投資をすればある程度採算が図れるが、10〜30質量%の範囲であれば、このような投資はかえって過剰投資になる。
このため、遊離脂肪酸量が10〜30質量%の範囲にあるような原料油の場合には、遊離脂肪酸を不純物として除去し、油脂原料を脂肪酸グリセリン誘導体とした後にアルカリ触媒法を使用してエステル交換反応を実施して得ることが好ましいとされる。
遊離脂肪酸を不純物として除去する場合の方法としては、通常、弱アルカリ水溶液による洗浄方法が挙げられる。しかし、このような方法ではアルカリ廃液が生じるため、これの処理にコストがかさむという不具合がある。更に洗浄後の原料中の水分や石鹸分をエステル交換反応に先立って除去する工程が必要となり二度手間となる。
【0007】
近年これらの課題を解決する目的で、酵素を利用した生化学的プロセスによるメチルエステル化及び超臨界メタノールを利用したメチルエステル化が報告されている(例えば、特許文献5を参照。)。生化学プロセスでは主にリパーゼを固定化した酵素触媒が用いられる。この反応系ではエステル化反応とエステル交換反応が同時に進行する。しかし、酵素がアルコールにより失活するため、多段階に分けてアルコール添加を行う必要があり、また変換率を98%以上とするには24時間以上の反応時間を要したり、反応後の生成物中のモノグリセリドやジグリセリドの量が1%以上とバイオディーゼル燃料の規格には適合しない。また、酵素は100サイクル連続使用可能としているが、サイクル毎に大きく変換効率が変化しており、工業生産法としては課題が多い。
【0008】
また、超臨界プロセスにおいては、同様にエステル交換反応とエステル化反応が進行するとしているが、エステル化反応は300℃以下でも10分程度で進行するがエステル交換反応は60分以上必要であり、10分間以下の時間で進行させるには350℃程度が必要である。従ってグリセリドと遊離脂肪酸の混合物を、実用的な反応温度である300℃10〜15分程度超臨界反応工程に供した場合、その変換率を制御することが困難であり、殆ど遊離脂肪酸のみがエステル化されグリセリドのエステル交換反応は起こらない。またそのエステル化も生じる水のため平衡状態となり変換率はせいぜいで98%程度ある。
【0009】
このようなことから前もってグリセリドを加水分解し油脂原料の全てを遊離脂肪酸としてから反応させることが検討されている。しかし、グリセリン共存下で超臨界反応を行うと反応が極めて複雑となり、モノグリセリド、ジグリセリドなどが副生する。変換率も極めて低くなる。また、これを防止するためにグリセリンを除去しようすると、そのままでは、極性分離及び蒸留分離などにより極めて困難となり、水による洗浄しか方法はなく、排水の環境問題が生じる。
【0010】
更に、遊離脂肪酸を除去した原料油等をアルカリ触媒法等のエステル交換法を使用して低級アルコール等の脂肪酸エステル等をバイオディーゼル燃料として生成する場合、その生成だけでなく、グリセリン等が副生成物として生成する。グリセリンはきわめて有用な化学物質であるため、グリセリンを高純度で得ることができれば有効利用が可能であり、バイオディーゼル燃料の製造上、総製造コストの低減にもつながる。しかしながら、上記従来の製造方法にあって、グリセリンの処理に関しては単に中和してボイラー燃料とするか一部は蒸留するのみである。このため、上記の方法では未だ効率的に純度の高いグリセリンを得ることを見出してはいない。
【0011】
【非特許文献1】「有機化学ハンドブック」技報堂出版、1988、p1407〜p1409
【特許文献1】特開2002−167356号公報
【特許文献2】特開2002−294277号公報
【特許文献3】特開2000−44984号公報
【特許文献4】特開2000−109883号公報
【特許文献5】特開2000−143586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、収率の高いバイオディーゼル燃料の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
アルカリ触媒法により油脂原料とアルコールとを反応させて、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンを得たとき、これらは比重の関係から反応混合液を静置させておくことで層分離することは広く知られていることであるが、本発明は、この現象の奥に以下の事実があることを見出したことに基づく。層分離した脂肪酸アルキルエステル層とグリセリン層とは、過剰アルコールの存在により、アルコールの界面活性作用から、問題を引き起こしている。例えば、反応混合液中で過剰のアルコールが副生成したグリセリン量の30質量%以上を占めると、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンとの比重差による分離が困難となり、またアルコールが5質量%程度まで存在した場合でもグリセリン層への脂肪酸アルキルエステルの溶解量が生成する脂肪酸アルキルエステルの10質量%にも及ぶのである。この過剰アルコールを、減圧留去により除去することで、脂肪酸アルキルエステル層中に混在していたグリセリンは脂肪酸アルキルエステル層から分離されてグリセリン層に移行し、逆にグリセリン層中に存在していた脂肪酸アルキルエステルはグリセリン層から脂肪酸アルキルエステル層に移行するので、脂肪酸アルキルエステルやグリセリンの収率を高め、これらを高純度に得ることができることが分かったのである。即ち、本発明は、下記(1)〜(3)の工程を、この順序で包含することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法:
(1) 油脂原料をアルカリ触媒法により低級アルコールとエステル交換反応させる工程、または遊離脂肪酸を低級アルコールでエステル化させる工程、
(2) 反応液中の過剰アルコールを除去する工程、
(3) 反応混合液を軽液と重液に比重分離させ、軽液を抽出し、アルカリ触媒法によりエステル交換反応の場合には、軽液抽出後に、吸着剤と混合若しくは通過接触させるか、または反応混合液を比重分離する前に中和する工程。
【発明の効果】
【0014】
過剰アルコールを除去することにより、収率が顕著に向上する。例えば、反応混合液中において、過剰のアルコールが副生成したグリセリン量の30質量%以上を占めると、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンとの比重差による分離が困難となり、またアルコールが5質量%程度まで存在した場合でもグリセリン層への脂肪酸アルキルエステルの溶解量が生成する脂肪酸アルキルエステルの10質量%にも及ぶ。
それとともに、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンの純度も高いものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明を実施する形態の一例であって、処理の流れを示す製造プロセス図である。
【図2】図1におけるエステル交換反応工程の詳細な処理の流れを示す製造プロセス図である。
【図3】図1におけるエステル交換反応工程の別の態様であって、その詳細な処理の流れを示す製造プロセス図である。
【図4】図1におけるエステル化反応工程の詳細に実施するための処理の流れを示す製造プロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[エステル交換反応工程を経由する場合]
本発明がエステル交換反応工程を経由する場合は、原料油脂の貯蔵、前処理工程、原料油脂の選択工程、触媒含有アルコール溶液調整工程、エステル交換反応工程、蒸留による過剰アルコールの留去工程、比重分離工程、軽液処理工程よりなる。以下、エステル交換反応工程を経由する場合から説明する。
【0017】
(原料油脂の貯蔵、前処理工程)
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法の工程を示す概略図である。図1に示すように、貯留工程1では油脂原料をそれぞれの酸価に応じて貯留できるようになっている。従って、油脂原料としては、植物、動物等の油脂類、前記油脂類の廃食油等を挙げることができ、具体的には、菜種油、ごま油、大豆油、トウモロコシ油、向日葵油、パーム油、パーム核油、椰子油、コーン油および紅花油等の植物油脂類、牛油、豚油、魚油等の動物油脂類、更にはその使用済みの廃食油等を原料とするものであり、本発明の製造方法にあっては、油脂原料中に遊離脂肪酸を広い濃度範囲で含む油脂類を原料とすることができる。
【0018】
尚、原料油脂貯留工程1では必要により油導入口などにフィルタが装着され、油脂原料(例えば、固形分1質量%以上、水分5質量%以上、臭気物質等の不純物であって前記固形分と水分を除くものの量2質量%以上で含む原料油等)が所定メッシュのフィルタを通過することにより、油脂原料に含まれる固形不純物が濾別される。そしてまた、油脂原料を4時間以上静置した後、原料に含まれる高比重不純物、その他のものや過剰水分などが比重差によって自然沈降させ、ドレイン排出口等から排出してもよい。更に、必要により油脂原料は熱交換器等により90〜100℃の範囲で加熱し、遠心分離器等によって更に比重分離処理してもよい。このような処理により、油脂原料は固形不純物を0.02質量%以下、水分を0.5質量%以下に抑えることができ、このような前処理工程は後段の工程での処理を容易にする。
【0019】
(原料油脂の選択工程)
図1に示すプロセス選択工程2では、図示しないが油脂原料中の遊離脂肪酸の濃度を測定し、遊離脂肪酸濃度が設定量未満、例えば、50質量%未満であれば、エステル交換反応工程3に油脂原料が流入される。一方、油脂原料中の遊離脂肪酸が設定量以上、例えば50質量%以上ではエステル化反応工程4がプロセス選択工程2で選別される。かかる油脂原料中の遊離脂肪酸量と選別との関係は、エステル交換反応工程3及びエステル化反応工程4の性能及び能力などによって適宜に設定することができる。
【0020】
(留去工程)
油脂原料中の遊離脂肪酸の濃度が極めて少ない場合、例えば、5質量%以下、好ましくは3質量%以下であれば、後述する留去工程3aを省略してエステル交換反応工程3を直接実行しても良い。また、それ以上の遊離脂肪酸を含む油脂原料の場合には、以下のように前段として留去工程3aを実行することが望ましい。
【0021】
エステル交換反応工程3においては、先ず、油脂原料が留去工程3aの多管式熱交換器等に通され、多管式熱交換器等を通過する間に後続の減圧処理で要求される温度まで加熱され、真空脱水・脱臭塔(図示せず)内へ導入される。導入の際に原料は霧状に分散導入されるか、或いはスパイラル状に導入されるなどして気液相界面が広くなる方法が選択される。原料が真空脱水・脱臭塔内を通過する間に、更なる脱水、脱臭、及び脱酸が行われる。
即ち、10mmHg以下、確実には1mmHg以下の減圧下で、温度が50から150℃までの範囲に加熱された原料はその油中の水、臭気物質等が速やかに気化され系外へ放出されると共に、遊離脂肪酸類が系内で所定の蒸気圧となり、これもまた殆どが系外へ放出される。尚、この場合の処理時に水分等の低沸点物質が多く残存すると、好ましい減圧下に到達させにくいため、上述したように、原料油脂貯蔵工程1での前処理工程は本実施の系において有効に作用する。
このような処理によって、油脂原料は、例えば水分含有量0.05質量%以下、臭気物質含有量0.01質量%以下、及び遊離脂肪酸量が3質量%以下、好ましくは1質量%以下になる。ここで生じた遊離脂肪酸は原料油脂貯留工程1又はプロセス選択工程2に戻されて再使用原料とされる。一方、原料は、熱交換器等によって反応温度まで冷却される。
【0022】
(触媒含有アルコール溶液調整工程〜過剰アルコールの減圧留去工程の概要)
図2に示すようにエステル交換反応工程3の一態様は、触媒溶液の調整工程11、反応混合工程12、及び減圧留去工程13とからなる。このうち、エステル交換反応工程3の触媒溶液の調整工程11では予め低級アルコールにアルカリ触媒を溶解させて調製した触媒含有アルコール溶液がバッチ調整され、触媒含有アルコール溶液は反応混合工程12で油脂原料と混合される、油脂原料はエステル交換され、その反応混合液は減圧留去工程13で過剰のアルコールが減圧留去される。過剰アルコールが除かれた反応混合液は液−液分離工程14で軽液と重液に比重分離され、その軽液が抽出される。この後、軽液は後段の燃料精製工程5で吸着剤と混合或いは通過接触させられ、更にフィルタ及び/又は比重分離操作によって処理されて、バイオディーゼル燃料となる。
【0023】
更に、エステル交換反応工程3の別の態様は図3に示すように、触媒溶液の調整工程11、反応混合工程12、中和工程15、及び蒸留工程16とからなる。ここで、調整工程11及び反応混合工程12での油脂原料は図2に示す態様と同様な処理がなされる。
反応混合工程12からのエステル交換反応された反応混合液は中和工程15において所定量の水で調節した希硫酸が加えられて中和し、中和した反応混合液には硫酸塩結晶が析出し、これが濾別される。濾液は蒸留工程16で蒸留される。蒸留された反応混合液は、燃料精製工程5で比重分離操作により高比重の精製グリセリン成分9を分離することができる。
【0024】
(触媒含有アルコール溶液調整工程)
図2及び図3に示す触媒溶液の調製工程11においては、例えば、触媒導入シュート、アルコール貯蔵タンク、アルコール計量ポンプ、冷却水ジャケットが付設された溶解撹拌槽からなる装置が用いられる。触媒としてのアルカリ塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩の水酸化物等を挙げることができるが、特に好ましくは水酸化カリウムである。
また、アルコールとしては低級アルコールであり、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等が挙げられるが、反応面及びコスト面からメチルアルコールが望ましい。
【0025】
調整工程11での触媒含有アルコール溶液の調製は、バッチ式操作によって行われ、計量して溶解撹拌槽内へアルコールが送り込まれ、次に、溶解撹拌槽内に導入されたアルコールを撹拌しながら、上記触媒をアルコールに対して所定の割合で溶解撹拌槽内へ投入され、触媒がアルコールに完全に溶解するまで撹拌される。
アルコールに触媒が溶解する時に発生する溶解熱は、冷却水ジャケット等で冷却することにより除去される。溶解撹拌槽内への触媒の供給速度は、例えばアルコールがメチルアルコールであるときは、触媒含有アルコール溶液の温度が64℃を超えないように制御される。触媒供給速度が速過ぎると、発生した溶解熱を除去するのが間に合わなくなる。そして、溶液の温度がアルコールの沸点温度以上になると、アルコールの蒸発が激しくなる。また、溶液の局部的過熱による突沸現象が起こることになって危険である。
溶解撹拌槽への所定量の触媒の投入が終わって、触媒がアルコールに完全に溶解した後に、溶解撹拌槽から所定の触媒含有アルコール溶液タンク等に移される。一方、溶解撹拌槽では、上記した手順と同様の手順によりアルコールと触媒とを導入し、同様の溶解撹拌操作を繰り返す。
【0026】
(エステル交換反応工程)
エステル交換反応工程12には、上記触媒含有アルコール溶液タンクから所定量の触媒含有アルコール溶液が導入される。一方、上述の処理した油脂原料をエステル交換反応処理部(攪拌機能を有した反応塔など)の底部から導入する。これにより上部へ流動する油脂原料と触媒含有アルコール溶液とを連続的に混合させる。
【0027】
(過剰アルコールの減圧留去工程)
アルカリ触媒法により油脂原料とアルコールとを反応させて、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンを得たとき、これらは比重の関係から反応混合液を静置させておくことで層分離するものの、過剰アルコールが存在することにより、アルコールの界面活性作用により、層分離が不完全である。例えば、反応混合液中で過剰のアルコールが副生成したグリセリン量の30質量%以上を占めると、アルキルエステルとグリセリンとの比重差による分離が困難となり、またアルコールが5質量%程度まで存在した場合でもグリセリン層へのアルキルエステルの溶解量が生成アルキルエステルの10質量%にも及ぶのである。この過剰アルコールを、この減圧留去工程で反応混合液から減圧留去により除去することで、アルキルエステル層中に混在していたグリセリンはアルキルエステル層から分離されてグリセリン層に移行し、逆にグリセリン層中に存在していたアルキルエステルはグリセリン層からアルキルエステル層に移行する。減圧留去においては、エステル交換反応工程12での反応容器そのものを減圧して容器を減圧留去処理装置と反応混合処理装置とに兼用しても良く、また別容器において減圧処理をしても良い。
【0028】
(比重分離工程、軽液処理工程)
図2に示す燃料精製工程5では、静置分離槽による分離、或いは必要により、遠心分離器による強制分離を行う。また、各処理工程が連続式の場合には遠心分離を行うと良い。この処理によってアルキルエステル層とグリセリン層とを分離する。目的生成物であるアルキルエステル層は、更に吸着剤の充填されたカラムを通過させることによってアルカリ性不純物等を除去することが好ましい。充填剤としては一般に油脂類の処理に良く用いられている活性白土が好適である。このほかに脱水用充填剤としてシリカゲルなどを用いることも出来る。
その後、充填剤の微粉末を除去するために遠心分離器処理を行う。この際、微量に残存するグリセリンも除去できる。その後最終的にフィルタ処理を必要により行う。
このようなバイオディーゼル燃料の製造方法にあっては、エステル転化率は90%以上、好ましくは95%以上である。また、その酸価は0.5mgKOH/g以下である。
【0029】
次に、図3に示す実施形態の製造方法のプロセスについて詳しく説明する。
図3に示す中和処理工程15では、反応混合処理部12から反応混合液に送液ポンプ等により硫酸が投入される。硫酸は、反応終了後の反応混合液に投入したアルカリ塩、例えば水酸化カリウムに対して、50〜55モル%の範囲で投入されることが好ましい。
上記範囲を下回る場合は、反応混合液は十分に中和されない一方、上記範囲を上回る場合には、反応混合液の反応状態が不安定となり目的物質の収率が低下する。
【0030】
上記硫酸を投入する際、生成する硫酸塩1モル当量に対して、1〜20モル当量の範囲、特に好ましくは2〜10モル当量の範囲の水で硫酸を希釈させることが好ましく、かかる希硫酸は反応混合液を攪拌させながら室温から65℃の環境下で滴下することが好ましい。
この際、反応混合液の粘度が高い場合には、その粘度調製剤として上述で添加したと同様な低級アルコール、例えば、メチルアルコール等を適宜量加えることが望ましい。これらの粘度調製剤は、反応混合溶液に対して50質量%以下の範囲で加えることが好ましい。
従って、上述の範囲の希硫酸の投入により、硫酸の中和塩、特に、アルカリ塩が水酸化カリウムであれば、硫酸塩・水和物として容易に析出して濾別されるので好ましい。
【0031】
中和された反応混合液はグラスフィルタなどに通流させられ、上述の硫酸塩・水和物が濾別される。濾別された反応混合液は蒸留工程16へと導入される。反応混合液は減圧蒸留され、例えば0.1〜100mmHgの範囲、及び温度50〜250℃の環境下で減圧蒸留することが好ましい。このように蒸留された反応混合液は、精製処理工程6で必要により遠心分離器などにより比重分離され、アルキルエステル層(軽液層:目的反応物)とグリセリン層(重液層:副反応物)に分離される。
【0032】
このようなバイオディーゼル燃料の製造方法にあっては、エステル転化率は90%以上、好ましくは95%以上であり、アルキルエステル層の脂肪酸エステルの純度99%以上である。
一方、グリセリン層にあっては、その収率が90%以上で得られる。このような範囲にあれば、十分な回収率が達成されることとなる。また、グリセリン層で得られるグリセリンの純度は99%以上であり、かかる収率及び純度であれば、精製グリセリンとして利用が可能となり、システム全体のコストを低減することができる。
【0033】
[エステル化反応工程を経由する場合]
次に、本発明がエステル化反応工程を経由する場合について、説明する。本発明がエステル化反応工程を経由する場合は、原料油脂の貯蔵、前処理工程、原料油脂の選択工程、触媒含有アルコール溶液調整工程、エステル化反応工程、過剰アルコールの減圧留去工程、比重分離工程、軽液処理工程よりなる。エステル交換反応工程より前の工程はエステル交換反応と同様であるので説明を省略する。但し、エステル化反応の油脂原料は、多量に遊離脂肪酸を含む油脂原料、又は上記の留去工程3aで分離された遊離脂肪酸配送部6の遊離脂肪酸を用いる。図4に示すようにエステル反応工程4は、アルコール供給工程18、第1反応工程19、第2反応工程20、及び蒸留工程21とからなる。
エステル化反応工程4においては、アルコール供給工程18からメチルアルコール等の低級アルコールを第1反応工程19に流通された遊離脂肪酸と混合し、加圧及び加熱して、添加アルコールの超臨界状態で且つ水が液体である亜臨界水状態として第1反応工程19でエステル化反応を行う。また、後段の第2反応工程20ではそのアルコールの超臨界状態で、且つ水がドライスチーム状態となる条件で反応させる。そして、更に後段の蒸留工程21においては、蒸留により反応液からアルコールを除去した後、燃料精製工程5で該蒸留液を遠心分離して比重分離操作によって高比重物質を除去する。尚、蒸留におけるグリセリド残渣は、燃料精製工程5(又は図示しないがエステル化反応工程4からでも良い。)からのグリセリド残渣配送工程7を介して油脂原料として再使用される。
【0034】
アルコール供給部18は、反応させるべきアルコールを前もって加熱及び加圧する装置である。ここで、反応させるべきアルコールは炭素数が1〜5の範囲にある低級アルコールであることが望ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等であり、特に、バイオディーゼル燃料用に使用するための脂肪酸アルキルエステル組成物にあってはメチルアルコールが好ましい。また、供給工程18における温度及び圧力は加えるアルコールの種類にもよるが好ましくは、240〜300℃、4〜40MPa、特に270〜290℃、10〜22MPaが好ましい。
【0035】
上記第1反応工程19及び第2反応工程20は主に流通式反応管の態様が選択され、第1反応工程では、上記遊離脂肪酸を240〜300℃、8〜40MPa、特に240〜270℃、15〜22MPaに昇温し、昇圧する。アルコール供給工程18で昇温、昇圧したアルコールを流通式反応管内に流入して混合させ、所定の反応時間をかけて流通管内を同条件で流通する。この場合、アルコールは超臨界状態であり、水分は亜臨界状態の領域での反応条件となる。
【0036】
第1反応部19と第2反応部20は直結しており、この場合、第1反応部19から第2反応部20にかけて管径を大径にすることが好ましい。管径を大径にすることによって、反応部19からの反応液を定温膨張させて降圧して、所定の反応時間をかけて流通管内を同一条件で流通させることができる。これにより、アルコールは超臨界状態にあり、且つ水分にあってはドライスチーム状態の領域での反応となる。
このように反応させた後、蒸留工程21では、反応終了後の反応液から過剰のアルコールを除去し、更に反応生成物を蒸留することが望ましい。そして、燃料精製工程5にあっては、遠心分離処理を行い精製することが望ましい。また、上述した残存する未反応物のグリセリド残渣はグリセリド残渣配送工程7を介して油脂原料としてエステル交換反応工程で再使用する。脂肪酸アルキルエステルは、その後、最終的に上述したようなフィルタ処理を行うことができる。
【0037】
このようにして得られる脂肪酸アルキルエステルにあっては、その純度が98質量%以上、好ましくは99質量%以上のものが得られる。かかる純度を満たさない場合は、遊離脂肪酸の酸価が0.6mgKOH/gを上回り、バイオディーゼル燃料としての規格を満たすことができなくなる。また、出発物質にもよるが、かかる組成物にあっては、その脂肪酸の炭素数は12〜22の範囲にある。
【0038】
(実施例)
以下、本発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法を実施例にて説明する。
図1に示した構成の製造プロセス図に従って、かかる遊離脂肪酸を含んだ酸性油脂類からのバイオディーゼル燃料の製造方法を実施例で説明する。
(実施例)
油脂原料はイエローグリース(酸価18mgKOH/g:遊離脂肪酸9質量%、ヨウ素価68、引火点238℃、水分10質量%、灰分3.5質量%)を原料油1とし、パーム油の精製の際に生じる副生成物である遊離脂肪酸を原料油2として用いた。(遊離脂肪酸80質量%、モノ、ジ、トリグリセライド10質量%、水分5質量%、その他不純物5質量%、ヨウ素価50)
【0039】
(実施例1)
この実施例は前処理と反応を同一タンクで行った場合を示す。以下の原料を使用し、エステル交換反応工程を選別する場合の製造方法の実施例を示す。
原料油1を、プロセス選別工程によってエステル交換反応工程へ導入した。反応工程に設けられた原料油一次貯蔵タンクにメッシュ120のフィルタを通して流し込み、4時間静置した。ドレインを除去後、上澄み液を熱交換器によって95℃まで加熱しこれを遠心分離器(遠心力:1000G、流量:毎分15リットル)に通した(前処理工程)。
【0040】
処理後の原料油を多管式熱交換器に通過させ145℃まで加熱した。この原料油を真空脱酸塔に投入した。真空塔の絶対圧力0.8mmHg、滞留時間15分であった(留去工程)。
図2に示すように、この原料油を熱交換器によって65℃にまで冷却し反応に用いた。触媒として水酸化カリウムを用い、前もって触媒をメチルアルコール(純度99.5質量%)100質量部に対し11質量部の割合で溶解させた後に、得られた溶液を原料油と混合し、15分間反応させた。反応後反応容器内の絶対圧力を100mmHgとし65℃で約20分間攪拌した。
【0041】
得られた生成物を遠心分離器(遠心力:1000G、流量:毎分15リットル)に通しアルキルエステル層(軽液)とグリセリン層(重液)とに分離した。アルキルエステル層を活性白土(アルキルエステル100質量部に対し1質量部の割合)を充填したカラムに毎分15リットル毎分の流速で通過させた。通過後のアルキルエステル層を再び遠心分離器(遠心力:1000G、流速:毎分15リットル毎分)にかけ固形物分離を行った。このアルキルエステルを最終的に1ミクロンのフィルタによって濾過して最終精製物を得た。最終生成物の収率は、グリセリド誘導体ベースで99.5質量%であった。これをサンプリングし性状分析を行った(実施例1−1サンプルとする。)。また真空脱酸塔から得られた遊離脂肪酸回収率は、97質量%であった。
【0042】
収率、実質収率、純度、及び酸価について測定を行い、下記表1に示した。
脂肪酸アルキルエステルの性状分析はガスクロマトグラフによる成分分析の他はJIS規格に定められた方法または通常の方法によって行った。ガスクロマトグラフによる成分分析に依存する、収率、実質収率及び純度は以下の定義による。収率は、原料油中の脂肪酸グリセリドに対する脂肪酸アルキルエステルの収量の百分率を示している。実際には、「収率=(脂肪酸アルキルエステル量/反応に使用した原料油中の脂肪酸グリセリド量)×100」で定義される。これに対し、(実質収率)は、収率の他に、本発明の方法により遊離脂肪酸中でエステル化されたものと、未反応物として残っていた、モノ、ジ、トリグリセリドのうち、エステル化されたものの寄与をも考慮したものである。即ち、実質収率={脂肪酸アルキルエステル量/(原料油中のモノ、ジ、トリグリセリドが全て脂肪酸エステルとなったとした量+原料油中の遊離脂肪酸が全てエステル化されたとした量)}×100で定義される。また純度は、ガスクロマトグラフにおいてアルコール以外であって、脂肪酸アルキルエステル類の保持時間より短いところにピークを有するものを臭気物質とし、ガスクロマトグラフの全ピーク面積の和に対する脂肪酸アルキルエステルのピーク面積の百分率で定義される。酸価は1gのサンプルを中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表した。
【0043】
次ぎに、ここで副生した遊離脂肪酸を原料油2にプロセス選択工程を経由して加えて原料油とした(遊離脂肪酸量83質量%、モノ、ジ、トリグリセライド量7質量%、水分量5質量%、その他不純物量5質量%、ヨウ素価50)。この原料油を、アルコール:脂肪酸=20モル:1モルの割合で反応させた。反応管は直径50mm長さ5000mmを第一反応管(No1)直径62.5mm長さ5000mmを第2反応管(No2)とした。それぞれの反応管の出口に圧力流量コントロールバルブを設け、圧力、流量、反応時間を調節した。反応条件は、反応温度270℃、反応圧力及び時間はそれぞれ、No1:19Mpa;10分間、No2:11Mpa;10分間、で行った。得られた反応混合物から過剰のメタノールを留去し、その後、減圧蒸留(0.8mmHg,〜200℃)、遠心分離処理をして最終生成物を得た。収率は遊離脂肪酸ベースで99.0質量%であった。これをサンプリング試料とした(実施例1−2サンプルとする。)。結果については表1に示した。
またグリセライド残渣の計量によって、その回収率は95質量%であった。ここで得られたグリセリド残渣を、プロセス選択工程を経由してエステル交換反応工程に配送し、上述のエステル交換反応を行ったところ、収率は99.5質量%であった。
以上の実施により本プロセス全体において、脂肪酸部位からの実質収率は98.9質量%である。
【0044】
(実施例2−1,2−2)
留去工程の真空脱酸塔から得られた遊離脂肪酸と、エステル化で得られたグリセリド残渣とを廃棄した以外は、実施例1−1と同一の原料を用い、実施例1−1と同様に、前処理工程、留去工程、エステル交換反応工程、燃料精製工程の各工程を実施した。エステル交換反応生成物の収率は、グリセリド誘導体ベースで99.5質量%であり、その性状分析結果は表1の実施例2−1に示す。
また、実施例1−2と同一の原料を用いながらも、遊離脂肪酸を廃棄した以外、実施例1−2と同様に行なった。遊離脂肪酸の廃棄に伴い、エステル化に用いた原料油は原料油2と同一であり、遊離脂肪酸80質量%、モノ、ジ、トリグリセリド10質量%、水分5質量%、その他不純物5質量%、ヨウ素価50である。エステル化反応生成物の収率は遊離脂肪酸ベースで99.0質量%であり、その性状分析結果は表1の実施例2−2に示す。この実施例2も実施例1と同様、収率は高い。しかしながら、実施例2における脂肪酸部位からの実質収率は89.0質量%である。実施例1−1,1−2の実質収率98.9質量%と較べ、大変な違いがある。この違いは、実施例が通常の収率の他に、遊離脂肪酸に基づくエステル化反応で生成された脂肪酸アルキルエステル量と、モノ、ジ、トリグリセリドからのエステル交換反応で生成された脂肪酸アルキルエステル量の寄与があるのに対し、実施例2−1,2−2ではこれらの寄与がないことによる。
【0045】
【表1】

【0046】
次に、蒸留による実施例を示す。
(実施例3)
原料油は実施例1と同様な前段の処理、または酸価が3以下の食品工場からの廃食油を使用して以下のエステル交換反応工程を図3に基づいておこなった。
原料油1000kgに対して触媒として水酸化カリウム13kgを前もってメチルアルコール(純度99.5質量%)122kgで溶解したものと混合した。反応混合処理部において温度65℃、15分間反応させた。
【0047】
水6.4kgで希釈した濃硫酸12kgを上記反応混合物に50℃以上にならないように攪拌しながら滴下した。その後50リットルのメチルアルコールで希釈した。反応混合液を約1時間静置して、硫酸カリウム水和物の結晶析出を確認した。反応槽の下部に取り付けたガラスフィルタを通じて、溶液を吸引濾過し、濾液を蒸留塔に移送した。蒸留塔を100mmHgまで減圧し、温度50℃〜100℃までの留分を初留とした。その後減圧度を10mmHgまでとし、温度100℃〜220℃までの留分を本留とした。本留を遠心分離器(遠心力:1000G、流量:毎分15リットル毎分)に通しアルキルエステル層(軽液)とグリセリン層(重液)とに分離した。これをそれぞれサンプリングし性状分析を行った。
【0048】
上記アルキルエステル層、及びグリセリン層の性状分析はガスクロマトグラフによった。その結果を表2及び3に示した。尚、グリセリンの収率については、反応に使用した原料油量をもとに脂肪酸がステアリン酸と仮定してグリセリン原料量を計算し、これに対する精製グリセリン量の百分率で示している。
【0049】
(実施例4)
上記した実施例3と同様の条件で行った。ただし加える水の量を硫酸カリウム1モル当量に対して10モル当量とした。結果を下記表2及び3に示した。
(実施例5)
上記した実施例3と同様の条件で行った。ただし加えるメチルアルコール量を100リットルとした。結果を下記表2及び3に示した。
【0050】
(実施例6)
上記した実施例2と同様の条件でおこなった。ただし、中和時に水を加えなかった。結果を下記表2及び3に示した。比較例と較べて純度、収率が低いのは、硫酸カリウムの除去が不十分であることによるものである。
(実施例7)
上記した実施例3と同様の条件で行った。ただしメチルアルコールを加えなかった。結果を下記表2及び3に示した。
【0051】
(比較例1)
上記した実施例6と同様の条件で行った。但し、反応混合液から過剰なアルコール等の減圧留去処理をせずに、遠心分離機によってメチルエステル層とグリセリン層とに分離し、硫酸12kgに水6.4kgを加えて、このグリセリン層に加え中和し、さらにメチルアルコール10リットルを加えて粘度を調節した。これをガラスフィルタで濾過し、濾液を実施例6の条件で蒸留して精製グリセリンを得た。結果を下記表2及び3に示した。メチルエステルは蒸留していない。
以上の結果から、軽液と重液とを分離した後に、軽液部分を中和した場合、副生成物であるグリセリンの収率、メチルエステルの収率ともに実施例より、若干悪くなる。メチルエステルの収率が悪いのは、かかる段階で、比重分離操作を行うと、グリセリン層にメチルエステルが溶解しているためであると考えられる。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法は、アルカリ触媒法による低級アルコールでエステル交換反応により原料油から脂肪酸エステルを生成する工程において、副生成物であるグリセリン及びグリセリン誘導体を高収率及び高純度で、その工程の流れの中で精製してその有効利用を可能とすることにより総製造コストを低減するので、その製造方法として極めて産業上利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)の工程を、この順序で包含することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法:
(1) 油脂原料をアルカリ触媒法により低級アルコールとエステル交換反応させる工程、または遊離脂肪酸を低級アルコールでエステル化させる工程、
(2) 反応液中の過剰アルコールを除去する工程、
(3) 反応混合液を軽液と重液に比重分離させ、軽液を抽出し、アルカリ触媒法によりエステル交換反応の場合には、軽液抽出後に、吸着剤と混合若しくは通過接触させるか、または反応混合液を比重分離する前に中和する工程。
【請求項2】
過剰アルコールの除去が、減圧留去でなされることを特徴とする請求項1のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
過剰アルコールの除去が、蒸留でなされることを特徴とする請求項1のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
中和が、希硫酸により中和し、析出物である硫酸塩・水和物を濾別することを特徴とする請求項3のバイオディーゼル燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−120847(P2009−120847A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21243(P2009−21243)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【分割の表示】特願2004−175903(P2004−175903)の分割
【原出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(504229815)株式会社シー・ディー・エムコンサルティング (12)
【Fターム(参考)】