説明

バイオフィルムの処置

本発明は、被験体のバイオフィルム関連感染症の治療に用いるペプチドまたはペプチド模倣薬に関し、当該ペプチドまたはペプチド模倣薬は、
a)正味の正電荷を帯び、
b)1〜6アミノ酸の長さであるか、または同等の大きさのペプチド模倣薬であり、
c)両親媒性の性質を持ち、1つ以上の親油基を有し、当該親油基の1つが少なくとも7個の非水素原子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム関連感染症を治療する方法、ならびに医療および環境の分野において、バイオフィルム形成の抑制またはバイオフィルムの除去に関する。特に、本発明は、上記方法における細胞溶解性を有するペプチドおよびペプチド模倣薬の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な用語においては、バイオフィルムは、細胞外ポリマー(当該分野では糖衣としても公知である)のマトリクスに囲まれた微生物の集合体または群集である。これらの細胞外ポリマーは、典型的には、多糖類であり、とりわけ、該生物自体により産生された多糖類であるが、他の生体高分子も同様に含有し得るものである。バイオフィルムは、典型的には、不活性表面または生体表面に付着するが、相互に付着した微生物または何らかの界面に付着した微生物からバイオフィルムが形成され得ることも観察されている。そのような成長様式は微生物を保護し、それらの除去または根絶を困難にする。バイオフィルムは、商業、産業、および医療において、感染、汚染、汚損、および損傷等に関する重大な問題を生じる。
【0003】
バイオフィルム群集中の微生物は、そのプランクトン様(浮遊性)の同等物が共有しない細胞レベルの性質(表現型)を示す。そのような固着微生物は、プランクトン様浮遊性細胞とは大きく異なると思われる。また、さらなる相違点が群集レベルで観察でき、その相違点は、細胞外マトリクスの影響によるものである。恐らく、最も顕著であるのは、バイオフィルム環境中の微生物が、例えば、抗生物質、抗真菌剤、および殺菌剤等の抗菌剤、ならびに宿主免疫防御またはクリアランス機構に対して同じ感受性を示さないというよく観察される現象である。この抵抗性は、細胞外マトリクスの障壁効果および/または微生物自体の表現型変化によるものと考えられる。また、バイオフィルム中の微生物は、成長がより遅くなり、結果として、抗菌剤の取り込みがより遅くなると思われる。
【0004】
バイオフィルムの形成は、典型的には、浮遊性微生物が表面に付着することで始まる。この最初のコロニストは、まず、弱い可逆的ファンデルワールス力で表面に付着し得る。コロニストは、表面からすぐに離れない場合には、線毛等の細胞接着構造を用いて、自身をより恒久的にしっかりと固着することができる。この最初のコロニストは、典型的には、より多様な接着場所を提供するとともに、バイオフィルムをまとめるマトリクスの構築を開始することにより、他の細胞の出現を容易にする。それ自体では表面に付着できない種も存在するが、マトリクスに固着したり、先に存在するコロニストに直接固着したりできる場合が多い。このコロニーの形成時に、上記細胞は、菌対数感知機構により情報伝達を行うことができる。コロニー形成が一旦開始されると、バイオフィルムは、細胞分裂と細胞動員との組み合わせにより成長し得る。バイオフィルム形成の最終段階は、発達として知られ、バイオフィルムが確立され、形状および大きさのみが変化し得る段階である。このバイオフィルムの発達により、細胞は抗生物質耐性をより強くすることができる。「発達」段階のバイオフィルムは、「成熟」バイオフィルムと呼ばれることがある。
【0005】
バイオフィルムは、表面上に容易に形成され、水に触れた表面(「湿潤」表面)上に確立された微生物コロニーは、バイオフィルム構造として存在し得る。さらに、バイオフィルムは細菌感染の場合(すなわち、感染宿主内またはその上)にも形成し得ることが現在では明らかになってきており、そのことがますます文書化されてきている。よって、バイオフィルム形成は、「生理学的な」表面上、すなわち、有生もしくは生物表面、または感染宿主生物(例えば、ヒトまたは非ヒト動物被験体)上の表面もしくはその内部の表面上、例えば、体内もしくは体外表面または外部もしくは内部組織表面上でも発生し得る。そのような体組織上でのバイオフィルム形成(または感染)は、例えば、自然弁心内膜炎(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁(tricupsid)、肺性心弁)、急性中耳炎(中耳)、慢性細菌性前立腺炎(前立腺)、嚢胞性線維症(肺)、肺炎(気道)、歯周炎(歯を支える組織;例えば、歯肉、歯周靭帯、歯槽骨(alvelor bone)を含む様々な感染症の一因となるとますます考えられるようになってきている。医療器具が埋め込まれる場合には、バイオフィルムニッチ(biofilm niches)が存在し、そのような埋め込み(「留置」)器具の表面にバイオフィルムが形成されることで、その部位における人工弁心内膜炎や、例えば、子宮内避妊具、コンタクトレンズ、人工器官(例えば、人工関節)等の器具による感染等の感染、ならびにカテーテル挿入部位における、例えば、中心静脈または尿道カテーテルによる感染等の臨床上の問題が生じることがある。
【0006】
そのようなバイオフィルム感染の重大な問題およびリスクは、微生物(より特定的には、微小コロニー)がバイオフィルムから剥がれるか分離し、重大な場合には、血液循環を含む、他の組織内に入り得ることである。そのような循環するバイオフィルム由来の微生物は、さらなる感染を引き起こすとともに、重大な臨床上の問題を生じ得るが、これは、特に、分離した循環微生物は親群集の全ての抵抗特性を有することがあるためである。
【0007】
死滅もしくは損傷(例えば、壊死または炎症)した体表面または組織表面は、特にバイオフィルム感染を生じやすい。創傷は感染しやすく、短時間で治癒しない創傷にはバイオフィルム形成が発生し得る。創傷は、その汚染に対する感受性ならびにバイオフィルム付着のための基質および表面としての利用可能性のため、バイオフィルムの形成にとって理想的な環境である。創傷の感染は治癒をさらに遅らせる場合が多く、それにより、その創傷がバイオフィルム形成および確立した感染をより起こし易くすることが問題である。治癒が遅れた慢性創傷は、バイオフィルム形成が特に懸念される部位の典型である。慢性創傷は、炎症状態にあり、炎症性サイトカインのレベルが上昇する。そのサイトカインの効果は、免疫細胞(好中球およびマクロファージ)であふれた領域を産生することである。この防御系の作用が何らかの理由により遅れた場合、細菌または他の微生物には、表面に付着し、バイオフィルムの成長状態に入る時間がある。慢性および急性創傷の両方がバイオフィルム感染部位となり得る証拠が、創傷、特に、慢性創傷に多様な微生物群集または個体群が存在する(慢性創傷内の嫌気性細菌を含む)という証拠とともにますます増加している。慢性創傷感染は、健常な自然および適応免疫反応を有する個体においても宿主免疫系によって排除されない持続感染、ならびに全身および局所抗菌薬に対する抵抗性といった、他のバイオフィルム感染と2つの重要な属性を共有するものである。従って、バイオフィルムに基づく感染は、治療が非常に困難であり、バイオフィルム汚染は根絶が非常に困難である。
【0008】
慢性創傷は、世界的に主要な健康問題であり、臨床的資源の重大な浪費原因の典型である。慢性創傷の3つの基本的種別は、糖尿病性足潰瘍、静脈性下肢潰瘍、および褥瘡性潰瘍であるが、外科的創傷を含む他の創傷が慢性化することがある。そのような創傷の手当ては、材料費および患者の負担が莫大となるため、効果的な抗バイオフィルム治療、あるいは実際には、バイオフィルムの処置を補助または容易にし、それによって創傷の治癒を促進または容易にするあらゆる治療が非常に大きな影響を有する。
より詳細には、バイオフィルムは、慢性創傷感染および医療器具による感染に関係していることが多い、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS:coagulase negative staphylococci)により生じる重篤感染の発症において中心的な役割を果たす。
【0009】
バイオフィルム中で増殖した細菌は、それらのプランクトン様の対応物よりも抗菌薬に対する耐性がある。プランクトン様細菌の感受性試験では、器具による感染の抗菌薬に対するin vivo抵抗を予測できないことがある。
【0010】
よって、有効な抗菌性を有するとともに、バイオフィルムとして存在する微生物に対しても効果を発揮することができる薬剤が必要とされている。
【0011】
従来の抗生物質に対して抵抗力がある細菌分離株による感染が増加したことで、新規な抗生物質が徹底的に研究されるようになった。カチオン性抗菌ペプチド(CAP:Cationic antimicrobial peptide)は、自然界に広く存在し、先天性免疫の一部として重要な役割を果たす。一般に、CAPは、正味の正電荷を帯びるとともに、約50%の疎水性残基を含有する、かなり大きな分子である。その作用機序には、微生物膜上の負に帯電した構造分子に結合することが含まれる。一旦結合すると、CAPは、細胞膜透過性を増大させ、最終的に、細胞溶解を引き起こす細孔を形成する。また、細胞内標的との相互作用および自己分解酵素の活性化等の他の抗菌機構に関する証拠もある。CAPは、幅広い抗菌活性を有し、抵抗性発現は稀である。CAPの修飾の結果、SAMPと呼ばれる、極めて短い合成抗菌ペプチド模倣薬が開発された(ハウグら(Haug)著、[2008年]、「ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)」、第51巻、p.4306−4314)。SAMPは、CAPの効果を模倣するが、薬物動態特性が改善されている場合がある。
【0012】
ベクロフら(Beckloff)は、「アンチマイクロバイアル・エージェンツ・アンド・ケモセラピー(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)」、[2007年]、p.4125〜4132において、バイオフィルムに対する活性剤としての小分子メタ−フェニレンエチニレンの使用を記載しているが、この分子は、本発明に従って用いるペプチド系分子とは構造的に非常に異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、特定のCAP型分子およびSAMPが抗バイオフィルム剤として優れた活性を有することを見出した。
【0014】
よって、1つの態様において、本発明は、バイオフィルム関連感染症の治療に用いるペプチドまたはペプチド模倣薬であって、
a)正味の正電荷を帯び、
b)1〜6アミノ酸の長さ、好ましくは、少なくとも1もしくは2アミノ酸の長さで、最大で4、5もしくは6アミノ酸の長さ、例えば、2〜5もしくは2〜6アミノ酸の長さであるか、または同等の大きさのペプチド模倣薬であり、
c)両親媒性の性質を持ち、1つ以上の親油基を有し、当該親油基の1つが少なくとも7個の非水素原子を含む、ペプチドまたはペプチド模倣薬を提供する。
【0015】
「バイオフィルム」とは、基質もしくは界面に付着するかまたは相互に付着し、細胞外ポリマー(より詳細には、それらが産生した細胞外ポリマー)のマトリクスに埋め込まれ、(例えば、その「非バイオフィルム」または浮遊性もしくはプランクトン様の対応物と比較して)増殖速度および遺伝子転写に関して表現型が変化した細胞を特徴とする微生物の付着群集を意味する。
【0016】
ヒトおよび非ヒト動物被験体にとって問題となる細菌感染におけるバイオフィルムの蔓延に関しては現在評価中である。これらは、特に慢性創傷感染および医療器具による感染に関与している。よって、好適な実施形態では、本発明は、慢性創傷感染に関連するバイオフィルムまたは医療器具による感染に関連するバイオフィルムに対する治療に用いる本明細書中に規定のペプチドおよびペプチド模倣薬を提供する。
【0017】
別の観点からは、本発明は、バイオフィルム関連感染症の治療薬の製造における本明細書中に規定のペプチドまたはペプチド模倣薬の使用を提供する。
【0018】
別の観点からは、本発明は、被験体のバイオフィルム関連感染症を治療する方法であって、本明細書中に規定のペプチドまたはペプチド模倣薬を上記被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本研究で用いるSAMPの化学構造を示す。構造1は、化合物A:R=iPr、化合物B:R=(CHPh、および化合物C:R=n−C13の構造である。
【図2】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルムにおける、クリスタルバイオレット(CV:Crystal Violet)を用いたバイオマス定量(上段)およびアラマーブルー(AB:Alamar blue)を用いた代謝活性の定量(下段)を示す。CVとABの間には明確な相関関係を見ることができる。
【図3A】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、リファンピシンを用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、抗生物質(バンコマイシン、リネゾルド(linezold)、テトラサイクリン)濃度5mg/L、50mg/L、および500mg/Lでの処理を表す。リファンピシンについては、濃度は、0.01mg/L、0.1mg/L、および1mg/Lであった。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図3B】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、リネゾリドを用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、抗生物質(バンコマイシン、リネゾルド(linezold)、テトラサイクリン)濃度5mg/L、50mg/L、および500mg/Lでの処理を表す。リファンピシンについては、濃度は、0.01mg/L、0.1mg/L、および1mg/Lであった。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図3C】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、テトラサイクリンを用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、抗生物質(バンコマイシン、リネゾルド(linezold)、テトラサイクリン)濃度5mg/L、50mg/L、および500mg/Lでの処理を表す。リファンピシンについては、濃度は、0.01mg/L、0.1mg/L、および1mg/Lであった。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図3D】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、バンコマイシンを用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、抗生物質(バンコマイシン、リネゾルド(linezold)、テトラサイクリン)濃度5mg/L、50mg/L、および500mg/Lでの処理を表す。リファンピシンについては、濃度は、0.01mg/L、0.1mg/L、および1mg/Lであった。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図4A】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、3つの異なるSAMP(化合物A)を用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、濃度が5mg/L、50mg/L、および500mg/LのSAMPでの処理を表す。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図4B】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、3つの異なるSAMP(化合物B)を用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、濃度が5mg/L、50mg/L、および500mg/LのSAMPでの処理を表す。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図4C】6つの異なるブドウ球菌株から形成後24時間のバイオフィルム上における、3つの異なるSAMP(化合物C)を用いた24時間処理の効果を示すグラフである。各株について、棒は、左から右方向に、陰性対照、陽性対照、濃度が5mg/L、50mg/L、および500mg/LのSAMPでの処理を表す。数値は、3回の実験の平均±SDである。*は、代謝活性の強い抑制を意味する。**は、代謝活性の完全抑制を意味する。
【図5A】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。未処理のバイオフィルム。
【図5B】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。バンコマイシン50mg/Lで24時間処理したバイオフィルム。
【図5C】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。バンコマイシン500mg/Lで24時間処理したバイオフィルム。
【図5D】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。テトラサイクリン50mg/Lで24時間処理したバイオフィルム。
【図5E】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。テトラサイクリン500mg/Lで24時間処理したバイオフィルム。
【図5F】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。化合物1 50mg/Lで24時間処理したバイオフィルム。
【図5G】カバースライドディスク(cover slide discs)上で成長後48時間の溶血性連鎖球菌51−07バイオフィルムを示す写真である。当該バイオフィルムは、LIVE/DEAD染色により染色するとともに、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて調べた。化合物1 500mg/Lで24時間処理したバイオフィルム。
【図6】A)非被覆アミノメチル化ポリスチレンHL粒子、B)表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)との24時間培養後の非被覆アミノメチル化ポリスチレンHL粒子、C)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−ポリスチレン粒子、D)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−アミノヘキサノイル−ポリスチレン粒子、E)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−ポリスチレン粒子、F)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−アミノヘキサノイル−ポリスチレン粒子の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「バイオフィルム関連感染症」は、微生物がバイオフィルムとして存在することが既知であるかまたはその疑いがある被験体の微生物感染である。典型的には、バイオフィルムの存在が臨床状況、例えば、診断もしくは予後、治療計画、感染の重篤度、治療時までのもしくは将来予測される感染期間に関係する感染である。「治療」は、予防的治療を含むとともに、バイオフィルムの縮小、バイオフィルム内での生きた微生物数の低減、およびバイオフィルム内の微生物の離脱および新たなバイオフィルムコロニーの形成の予防またはその傾向の減少を包含する。また、治療は、上記感染に関連する症状の1つ以上において臨床医または患者により観察される改善を含む。
【0021】
バイオフィルム中の微生物の大きさ、構造、完全性、および数は、任意の便宜的方法により分析することができる。例えば、走査型透過電子顕微鏡法を用いてバイオフィルムの大きさ、完全性、および構造を評価する場合が多い。バイオフィルムの分析については、本発明の実施例において説明する。
【0022】
本発明に従って治療し得るバイオフィルムは、それらが含有する微生物に関して限定されることはなく、本明細書中に記載の溶解性分子は、細胞膜を標的とするため、かなりの非特異的活性を有する。従って、上記バイオフィルムは、任意の綱、属または種の微生物、すなわち、バイオフィルムを形成し得るあらゆる微生物を含み得る。そのような微生物は、典型的には、細菌を含み、それにはあらゆる属または種の細菌が含まれる。よって、上記細菌は、グラム陽性もしくはグラム陰性、またはグラム染色試験非応答性であってもよい。これらは、好気性または嫌気性であってもよい。上記細菌は、病原性または非病原性であってもよい。
【0023】
本明細書中に規定する分子が成熟バイオフィルム中の細菌を殺菌することができることは特に驚くべきことであり、そのようなバイオフィルムに対しての治療が特に好ましい。
上記バイオフィルムは、グラム陽性細菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/または真菌を含み得る。グラム陽性細菌を含むか、またはそれで構成されるバイオフィルムは、標的として好ましい。
【0024】
ブドウ球菌(Staphylococcus)を含むバイオフィルムは、標的として好ましく、溶血性連鎖球菌(S.haemolyticus)を含むバイオフィルムが特に好ましい。
【0025】
また、バイオフィルムは真菌、藻類、および寄生原虫等の他の生物を含み得る。混合コロニーバイオフィルムは公知であり、本明細書に記載の方法により治療可能である。
慢性創傷については上述しており、それらは好適な治療標的であり、糖尿病性足潰瘍、静脈性下肢潰瘍および褥瘡性潰瘍、ならびに慢性化した外科的創傷(術後創感染)を含む。
医療器具は、バイオフィルムが形成し得る表面の特定の種類であり、本発明に係るさらに好適な治療標的の典型である。
【0026】
このようなものとしては、カテーテル(例えば、中心静脈および尿道カテーテル)を含むあらゆる種類のライン、人工装具、例えば、心臓弁、人工関節、義歯、歯科クラウン、歯科キャップ、および軟組織インプラント)が挙げられる。また、あらゆる種類の埋め込み型(または「留置」)医療器具も挙げられる(例えば、ステント、子宮内避妊具、ペースメーカー、挿管チューブ、人工器官もしくは人工装具、ラインもしくはカテーテル)。「留置」医療器具は、そのいずれかの部分が体内に納まった器具を含み得、すなわち、当該器具は、全体的または部分的に体内に留置されていてもよい。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、上記ペプチドおよびペプチド模倣薬は、自然弁心内膜炎、急性中耳炎、慢性細菌性前立腺炎、肺炎、歯垢、歯周炎、嚢胞性線維症を含み得る呼吸器疾患におけるバイオフィルム感染、および埋め込み型もしくは人工医療器具に関連する器具による感染、例えば、人工弁心内膜炎、またはラインもしくはカテーテルまたは人工関節もしくは組織置換の感染の治療に用いられ得る。
【0028】
創傷は、急性または慢性であってもよい。急性創傷は、認識される3つの段階からなる治癒過程(すなわち、炎症段階、増殖段階、および再形成フェーズ)を通して、遷延化することなく、順序正しく進行する創傷である。しかしながら、慢性創傷は、規則的にならんだ生化学的事象を終えることがない創傷であり、これは、創傷が治癒段階の1つに止まるためである。代替的には、慢性創傷は、少なくとも40日、好ましくは少なくとも50日、より好ましくは少なくとも60日、最も好ましくは少なくとも70日以内には治癒しない創傷である。
【0029】
治療される創傷は、例えば、外科的切開または外傷により生じた組織の損傷または剥離、例えば、機械的外傷、熱傷、電気的外傷、化学的外傷、または放射線外傷;皮膚潰瘍等の自然に形成される病変(例えば、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、または褥瘡性潰瘍);水疱(例えば、摩擦もしくは熱による水疱、または水疱瘡等の病原体感染により生じた水疱);裂肛、または口腔内潰瘍であり得る。
【0030】
慢性創傷の治療は、本発明の特に好適な態様である。
【0031】
現在では、バイオフィルムは医学的状態の一因となることがより広く認識されているが、これらはまた、表面の微生物コロニー形成によって生じる非医学的問題にも関与する。これは、例えば、表面が細菌汚染されないようにする必要がある家庭内環境、工業環境、研究の場、または病院内であり得る。
【0032】
上述したように、上記バイオフィルムは表面上に存在していてもよい。当該表面は特に限定されるものではなく、微生物が発生し得るいずれの表面も含み、特に、上述したように、水または湿気に曝された表面を含む。上記表面は、生物的でも非生物的であってもよく、無生物(または非生物)表面は、微生物と接触し得るかまたは汚染され得るいずれの表面も含む。よって、特に、機械、とりわけ、工業機械の表面、または水性環境に曝されるあらゆる表面(例えば、舶用機器、または船舶もしくはボートまたはその一部もしくは構成要素)、または上記環境のいずれかの部分に曝されるあらゆる表面、例えば、配管または建造物が含まれる。微生物に接触するかまたは汚染されるそのような無生物表面は、特に、食品または飲料の加工、調製、貯蔵または分配吐出の機械または機器、空調機器、例えば、化学または生物工学処理の工場における工業機械、貯蔵タンク、および医用または外科用の機器のいずれかの部分を含む。水または湿気に曝され得る材料を搬送、運搬、または送達する任意の装置または機器には、バイオフィルムが形成され易い。そのような表面は、特に、配管(本明細書中ではあらゆる導管またはラインを含む広義の意味で本用語を用いる)を含む。代表的な無生物または非生物表面は、食品の加工、貯蔵、分配吐出または調製の機器または表面や、タンク、コンベヤー、床、排水管、冷却器、冷凍器、機器表面、壁、弁、ベルト、配管、空調導管、冷却装置、食品または飲料の分配吐出ライン、熱交換器、船体またはボート構造における水に曝される部分、歯科用送水管、石油掘削管、コンタクトレンズおよび貯蔵ケースを含むがこれらに限定されない。
【0033】
よって、さらなる態様において、本発明は、バイオフィルム形成を抑制するかまたはバイオフィルムを除去する方法であって、上記バイオフィルムを本明細書中に規定のペプチドまたはペプチド模倣薬に接触させる工程を含む、方法を提供する。上記バイオフィルムは、上述したいずれの表面上にあってもよい。
【0034】
「接触させる」という用語は、上記ペプチドまたはペプチド模倣薬を上記バイオフィルムに直接または間接的に送達する任意の手段、および上記ペプチドまたは模倣薬を上記バイオフィルムに塗布するかまたは上記バイオフィルムを上記ペプチドまたは模倣薬に曝す手段、例えば、上記ペプチドまたは模倣薬を上記バイオフィルムに直接塗布する手段を含む。
【0035】
上記ペプチドまたはペプチド模倣薬は、正味電荷が少なくともプラス2またはプラス3であれば有利である。
【0036】
好適なペプチドは、2〜4アミノ酸の長さであり、最も好ましくは、3アミノ酸の長さである。
【0037】
好適なペプチド模倣薬は、同等の大きさであり、ペプチドの好適な特徴は、必要な変更を加えた、上記ペプチド模倣薬の好適な特徴であると説明できる。
【0038】
上記分子は、少なくとも9、10、11または12個の非水素原子を持つ親油基を有することが好ましい。非水素原子が7個または8個のみの親油基を分子に組み込む場合、当該分子は、非水素原子を少なくとも3個、典型的には、少なくとも6個有するさらなる親油基を含むことが好ましい。
【0039】
最大の親油基は、典型的には、アミノ酸のR基であるが、N末端修飾の一部、好ましくは、C末端修飾の一部として存在し得る。上記親油基を提供する適切な遺伝的にコードされたアミノ酸は、フェニルアラニン(非水素原子7個)、トリプトファン(非水素原子10個)、およびチロシン(非水素原子8個)である。これ以降、アミノ酸に言及する場合、標準的な1文字でのアミノ酸の略語または標準的な3文字のアミノ酸コードを用いる場合がある。
【0040】
上記親油基の1つは、通常、芳香族であり得る環状基を含み、縮合したまたは縮合していない環状基を2つ有する親油基が好ましい。上記親油基は、O、N、SまたはF等のヘテロ原子を含有し得るが、典型的には、ヘテロ原子は1つのみであり、窒素が好ましい。上記親油基には、好ましくは、極性基が2つのみであり、より好ましくは、0または1つ、最も好ましくは0個である。
【0041】
上記親油基を供する好適な非遺伝的アミノ酸は、トリブチルトリプトファン(Tbt)、ビフェニルアラニンもしくはジフェニルアラニンであるか、またはBip(4−(2−ナフチル))、Bip(4−(1−ナフチル))、Bip(4−n−Bu)、Bip(4−Ph)、もしくはBip(4−T−Bu)またはPhe(4−(2’−ナフチル))、Phe(4−(1’−ナフチル))、Phe(4−n−ブチルフェニル)、Phe(4−4’−ビフェニル)もしくはPhe(4’−t−ブチルフェニル)等のビフェニルアラニン誘導体である。
【0042】
上記ペプチドは、典型的には、1、2または3個のカチオン性アミノ酸、好ましくは、2個のカチオン性アミノ酸、好ましくは、リジンまたはアルギニン、場合によっては、ヒスチジン、またはpH7.0の正に帯電した任意の非遺伝的にコードされたアミノ酸または修飾アミノ酸を含む。
【0043】
カチオン性アミノ酸を提供することができる適切な非遺伝的にコードされたアミノ酸および修飾アミノ酸は、ホモリジン、オルニチン、ジアミノ酪酸、ジアミノピメリン酸、ジアミノプロピオン酸およびホモアルギニン、ならびにトリメチルリジンおよびトリメチルオルニチン、4−アミノピペリジン−4−カルボン酸、4−アミノ−1−カルバムイミドイルピペリジン−4−カルボン酸(4−amino−1−carbamimidoylpiperidine−4−carboxylic acid)、および4−グアニジノフェニルアラニン等のリジン、アルギニンおよびヒスチジンの類似体を含む。
本発明に係る使用に好適な分子は、3個のアミノ酸部分を含む化合物、好ましくは、ペプチドであり、任意の順で、上記アミノ酸部分の2つはカチオン性アミノ酸であり、好ましくは、リジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンまたはpH7.0の正に帯電した任意の非遺伝的にコードされたアミノ酸もしくは修飾アミノ酸であってもよく、上記アミノ酸の1つは大きな親油R基を有するアミノ酸であり、当該R基は、14〜27個の非水素原子を有するとともに、好ましくは、2以上、例えば、2または3個の縮合または結合し得る環状基を含有し、これらの環状基は、典型的には、5または6個の非水素原子、好ましくは、6個の非水素原子を含む。縮合環またはコース(or course)の場合、上記非水素原子は共有されてもよい。
【0044】
これらの好適な化合物は、3アミノ酸の長さ、すなわち、トリペプチドであってもよい。しかしながら、最大で6アミノ酸の長さ、好ましくは、4または5アミノ酸の長さの化合物も含まれる。3アミノ酸の長さよりも大きな化合物は、上記トリペプチドのNおよび/またはC末端にさらなるアミノ酸を含み得る。あるいは、またはさらに、上記3アミノ酸の長さよりも大きな化合物は、上述したトリペプチドのアミノ酸を直線状配列において1つ以上のさらなるアミノ酸により分けられた状態で含んでもよい。
好ましくは、上記化合物が3アミノ酸の長さよりも大きい場合、上記さらなるアミノ酸は、カチオン性または親油アミノ酸のいずれかである。4アミノ酸の長さのペプチドは、典型的には、2個のカチオン性アミノ酸および2個の親油アミノ酸を含み、5アミノ酸の長さのペプチドは、典型的には、3個のカチオン性アミノ酸および2個の親油アミノ酸、または2個のカチオン性アミノ酸および3個の親油アミノ酸を含む。3アミノ酸の長さよりも大きい、好適な化合物群は、フェニルアラニンをC末端アミノ酸として有する。
必要に応じて、本発明において用いる化合物は、固形支持体に固定され、バイオフィルムがその上にまたは当該固形支持体の周囲環境に形成されることを予防するようにしてもよい。本発明の文脈においては、「固形支持体」および「表面」という用語は相互に置き換え可能である。
【0045】
よって、さらなる態様では、本発明に従って用いる本明細書中に記載の化合物が固定された固形支持体が提供される。そのような固形支持体は、上述した表面を含むがこれに限定されない。バイオフィルムが形成し得る表面は、水または他の流体等を搬送する医療器具、容器、運搬具またはダクトを含む。医療器具は、バイオフィルムが形成し得る特定の種類の表面であり、本発明において用いる化合物が固定される好適な表面を表す。
「医療器具」という用語は、カテーテル(例えば、中心静脈および尿道カテーテル)を含むあらゆる種類のライン、人工装具、例えば、心臓弁、人工関節、義歯、歯科クラウン、歯科キャップ、および軟組織インプラント)を含む。あらゆる種類の埋め込み型(または「留置」)医療器具が含まれる(例えば、ステント、子宮内避妊具、ペースメーカー、挿管チューブ、人工器官もしくは人工装具、ラインもしくはカテーテル)。「留置」医療器具は、そのいずれかの部分が体内に納まった器具を含み得るが、すなわち、当該器具は、全体的または部分的に留置され得る。
【0046】
本発明において用いる化合物は、当該分野で公知の任意の手段により、固形支持体に固定させることができる。上記化合物は、上記固形支持体に直接または間接的に固定させてもよく、すなわち、結合基によって固定させてもよい。好ましくは、上記化合物は、上記固形支持体に直接固定されるが、後述するように、上記化合物の修飾が固定を可能にするために必要である。典型的には、上記化合物は、共有結合により所望の固形支持体に固定される。それゆえ、必要に応じて、本発明において用いる化合物は、当該固形支持体に対して共有結合による固定を可能にする化学基を含む。あるいは、上記化合物は、上記固形支持体に対して共有結合による固定が可能になるように修飾される。
【0047】
「修飾された」または「修飾」という用語は、本発明において用いる化合物の化学基を上記支持体に対する共有結合による固定を可能にする化学基に置き換えることを含む。また、この用語は、既存の化学基を、上記支持体に対する共有結合による固定を可能にする化学基にさらに置換することも含む。また、この用語は、本発明において用いる予め存在する化合物の化学基を置き換えたり、さらに置換したりすることなく、上記化合物が、上記固形支持体に対して共有結合による固定を可能にするような化学基を含むように設計されるとともに、この形態で調製される場合も含む。
【0048】
上記支持体に対する共有結合による固定を可能にする化学基の正確な性質は、上記化合物が固定されている上記所望の表面の化学的性質に依存する。同様に、上記固形支持体の表面を、固定が可能となるように修飾してもよい。各種の適切な化学基が当該分野で周知であり、固定に適した基は、当業者には容易に判断可能である。例示のみを目的とするが、表面に対する共有結合による固定を可能にする化学基は、カルボキシル基等の酸素含有基、アミド基等の窒素含有基、およびチオール基等の硫黄含有基を含むヘテロ原子含有基であってもよい。本発明において用いる化合物と上記所望の支持体との間に存在し得る共有結合は、エーテル結合、エステルアミド結合、アミン結合、硫化物結合、チオエーテル結合、およびチオエステル結合を含むがこれらに限定されない。よって、例えば、支持体上のアルコール部分および本発明において用いる化合物内のカルボン酸部分から、またはその逆から、エステル結合が形成されていてもよい。あるいは、表面に対する本発明において用いる化合物の共有結合による固定を、ヘテロ原子を伴わない結合により、例えば、アルケン基またはビニル基を用いて行ってもよく、その場合には、アルケン基またはビニル基のいずれかが本発明において用いる化合物内にあり、他方の必要な基が所望の表面上にある。付加環化反応を用いて、所望の表面に対する本発明において用いる化合物の共有結合による固定を行ってもよい。
【0049】
好ましくは、上記共有結合による固定は、上記化合物のC末端と上記支持体との間である。よって、好ましくは、上記化合物は、そのC末端に、上記支持体に対する共有結合による固定を可能にする化学基を含有するかまたはそれを含有するように修飾される。
必要に応じて、上記修飾は、上記支持体との共有結合を可能にする化学基を含有する1つ以上の親油基をC末端において組み込むことである。例えば、上記親油基が固定される形態は、−NHCH(CH)CO−、−NH(CHCO−、−NH(CH2)CO−、−NH(CHCO−、および−NHCHCH(CH)CO−からなる群から選択され得るが、−NHCH(CH)CO−または−NH(CHCO−が最も好ましい。これらの基のカルボキシル基は、上記化合物が共有結合により上記支持体に固定されることを可能にする。
【0050】
好適な分子は、その内容を本明細書において参考として援用する国際公開第01/66147号において定義されるものである。
【0051】
特に好適な分子群は、同様にその内容を本明細書において参考として援用する英国特許出願第0724951.9号に記載されている。
【0052】
よって、本発明に従って用いる好適な分子は、式(I)の化合物、好ましくは、ペプチドである。
AA−AA−AA−X−Y−Z (I)
ここで、任意の順で、上記AA(アミノ酸)部分の2つはカチオン性アミノ酸であり、好ましくは、リジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンまたはpH7.0の正に帯電した任意の非遺伝的にコードされたアミノ酸もしくは修飾アミノ酸であってもよく、上記AAの1つは、大きな親油R基を有するアミノ酸であり、当該R基は、14〜27個の非水素原子を有するとともに、好ましくは、2以上、例えば、2または3個の縮合または結合し得る環状基を含有し、これらの環状基は、典型的には、5または6個の非水素原子、好ましくは、6個の非水素原子を含み;
Xは、分岐鎖または非分岐鎖C〜C10アルキルまたはアリール基、例えば、メチル、エチルまたはフェニルと置換されてもよいが、好ましくは、非置換のN原子であり、この基は、N、OおよびSから選択されたヘテロ原子を最大で2個組み込んでもよく;
Yは、−R−R−、−R−Rb−Rb−、および−Rb−Rb−R−から選択された基を表し、ここで、
は、C、O、S、NまたはF、好ましくはCであり、
は、Cであり;RおよびRの各々は、例えば、C〜Cアルキル基またはカルボキシル基と置換されるかまたは非置換であり、好ましくは、Yは、−R−R−であり(RはCであることが好ましい)、好ましくは、この基は非置換であり、Yが−R−R−R−、またはR−R−R−である場合、好ましくは、RとRの1つ以上が置換され;
Zは、各々が5または6個の非水素原子(好ましくはC原子)の1〜3個の環状基を含む基であり、上記環状基の2つ以上は縮合していてもよく;当該環の1つ以上は置換されてもよく、これらの置換は、極性基を含んでもよいが、典型的には含んでおらず、適切な置換基は、ハロゲン類、好ましくは、フッ素、およびC〜Cアルキル基を含み、上記Z部分は、非水素原子を最大で15個、好ましくは、5〜12個組み込み、最も好ましくは、フェニルであり;
上記YとZ間の結合は、YのRまたはRとZの上記環状基の1つの非水素原子との共有結合である。
【0053】
特に好適な実施形態では、上記化合物は、好ましくは、式(II)のペプチドである。
AA−AA−AA−X−Y−Z (II)
ここで、
AAはカチオン性アミノ酸、好ましくは、リジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンまたはpH7.0の正に帯電した任意の非遺伝的にコードされたアミノ酸または修飾アミノ酸であってもよく;
AAは、大きな親油R基を有するアミノ酸であり、当該R基は、14〜27個の非水素原子を有するとともに、好ましくは、2以上、例えば、2または3個の縮合または結合し得る環状基を含有し、これらの環状基は、典型的には、5または6個の非水素原子、好ましくは、6個の非水素原子を含み;
X、YおよびZは上記で規定したとおりである。
【0054】
さらに有用な化合物は、式(III)および(IV)の化合物を含む:
AA−AA−AA−X−Y−Z (III)
AA−AA−AA−X−Y−Z (IV)
AA、AA、X、YおよびZは、上記で規定したとおりである。
【0055】
上記化合物のうち、特定のものが好ましい。特に、本明細書中において便宜上AAと呼ぶ上記大きな親油R基を有するアミノ酸がトリブチルトリプトファン(Tbt)、またはBip(4−(2−ナフチル))、Bip(4−(1−ナフチル))、Bip(4−n−Bu)、Bip(4−Ph)もしくはBip(4−T−Bu、)、等(Bip(4−(2−ナフチル))およびTbtが最も好ましい)のビフェニルアラニン誘導体である化合物である。他の好適な化合物群は、Yが上記で規定した−R−R−であるものであり、好ましくは、RおよびRは非置換であり、最も好ましくは、RおよびRはともに炭素原子である。
【0056】
さらに好適な化合物群は、−X−Y−Zが全体として−NHCHCHPh基のものである。
【0057】
上記化合物は、DおよびLアミノ酸と、アミノ酸のR基およびYまたはZ部分内のキラル中心から生じる鏡像異性体との両方の全ての鏡像異性体の形態を含む。
【0058】
特に好適な化合物は以下のものである:
【0059】
【化1】

【0060】
【化2】

【0061】
本発明に従って用いられる好適な分子のさらなる群は、式(V)の化合物、好ましくはペプチドである。
AA−AA−AA−R−R (V)
ここで、任意の順で、上記AA(アミノ酸)部分の2つはカチオン性アミノ酸であり、好ましくは、リジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンまたはpH7.0の正に帯電した任意の非遺伝的にコードされたアミノ酸もしくは修飾アミノ酸であってもよく、上記AAの1つは、大きな親油R基を有するアミノ酸であり、当該R基は、14〜27個の非水素原子を有するとともに、好ましくは、2以上、例えば、2または3個の縮合または結合し得る環状基を含有し、これらの環状基は、典型的には、5または6個の非水素原子、好ましくは、6個の非水素原子を含み;
は、分岐鎖または非分岐鎖C〜C10アルキルまたはアリール基、例えば、メチル、エチルまたはフェニルと置換されてもよいが、好ましくは、非置換のN原子であり、この基は、N、O、S、およびF(Fが最も優先度が低い)から選択されたヘテロ原子を最大で2個組み込んでもよく;
は、2〜20個の非水素原子を有する脂肪族部分であり、好ましくは、これらは炭素原子であるが、酸素、窒素、または硫黄原子を組み込んでもよく、好ましくは、Rは、3〜10、最も好ましくは、3〜6個の非水素原子を含み、上記部分は、直鎖、分岐鎖、または環状であってもよい。上記R基が環状基を含む場合、これは、Rの窒素原子に直接固定されることが好ましい。
【0062】
好適な化合物は、直鎖または分岐鎖のR基、特に、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびその異性体、ヘキシルおよびその異性体を含む、直鎖または分岐鎖アルキル基を組み込み、プロピル、イソプロピル、ブチル、およびイソブチルは特に好適である。
環状基を含むR基のうち、Rがシクロヘキシルまたはシクロペンチルである分子が好ましい。
【0063】
カチオン性アミノ酸を提供し得る適切な非遺伝的にコードされたアミノ酸および修飾アミノ酸は、ホモリジン、オルニチン、ジアミノ酪酸、ジアミノピメリン酸、ジアミノプロピオン酸およびホモアルギニン、ならびにトリメチルリジンおよびトリメチルオルニチン、4−アミノピペリジン−4−カルボン酸、4−アミノ−1−カルバムイミドイルピペリジン−4−カルボン酸および4−グアニジノフェニルアラニン等のリジン、アルギニンおよびヒスチジンの類似体を含む。
【0064】
上記大きな親油性R基は、O、N、SまたはF等のヘテロ原子を含有してもよいが、典型的には、ヘテロ原子はわずかに1つだけであり、好ましくは、窒素である。このR基は、好ましくは、極性基がわずかに2つだけであり、より好ましくは、0または1つ、最も好ましくは0個である。
【0065】
特に好適な実施形態では、上記化合物(好ましくは、ペプチド)は、式(VI)のものである。
AA−AA−AA−R−R (VI)
ここで、
AAは、カチオン性アミノ酸、好ましくは、リジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンまたはpH7.0の正に帯電した任意の非遺伝的にコードされたアミノ酸もしくは修飾アミノ酸であってもよく;
AAは、大きな親油R基を有するアミノ酸であり、当該R基は、14〜27個の非水素原子を有するとともに、好ましくは、2以上、例えば、2または3個の縮合または結合し得る環状基を含有し、これらの環状基は、典型的には、5または6個の非水素原子、好ましくは、6個の非水素原子を含み;
およびRは上記で規定したとおりである。
【0066】
さらに有用な化合物は、式(VII)および式(VIII)の化合物を含む:
AA−AA−AA−R−R (VII)
AA−AA−AA−R−R (VIII)
ここで、AA、AA、R、およびRは上記で規定したとおりである。
【0067】
上記化合物のうち、特定のものが好ましい。特に、本明細書中において便宜上AAと呼ぶ上記大きな親油R基を有するアミノ酸がトリブチルトリプトファン(Tbt)、またはPhe(4−(2’−ナフチル))、Phe(4−(1’−ナフチル))、Phe(4’−n−ブチルフェニル)、Phe(4−4’−ビフェニル)もしくはPhe(4’−t−ブチルフェニル)等のビフェニルアラニン誘導体(Phe(4−(2’−ナフチル))およびTbtが最も好ましい)である化合物である。
【0068】
さらに好適な化合物群は、−R−Rが全体として、−NHCH(CH、−NH(CHCH、−NH(CHCH、−NH(CHCH、−NHCHCH(CH、−NHシクロヘキシル、および−NHシクロペンチルの群から選択されたものであり、−R−Rが−NHCH(CH基または−NH(CHCH基である化合物が最も好ましい。
【0069】
上記化合物は、DおよびLアミノ酸と、アミノ酸のR基およびR内のキラル中心から生じる鏡像異性体との両方の全ての鏡像異性体の形態を含む。
【0070】
特に好適な化合物は、下記表内の化合物、特に、化合物1および化合物2であり、上記化合物は、式VI、式VIIまたは式VIII、好ましくは、式VI、特に、式がArg−AA−Arg−R−Rのものである。
【0071】
【表1】

【0072】
上記では、カチオン性が2個と親油性が1個の3個のアミノ酸からなる好適なモチーフがより長いペプチドまたはペプチド模倣薬にどのようにして拡張または延長されるかを一般的な言葉で論じている。式(I)〜式(VIII)の好適な化合物は、上述のように、特に、4または5個のアミノ酸からなるペプチドに拡張または延長してもよく、これらは、本発明に従って用いられるさらに好適な化合物群を表す。
【0073】
ペプチド模倣薬は、典型的には、そのペプチド同等物の極性、3次元サイズ、および官能性(生物活性)を保つことを特徴とするが、上記ペプチド結合は、より安定した連鎖と置き換えられることが多い。「安定した」とは、加水分解酵素による酵素分解に対してより耐性があることを意味する。一般に、上記アミド結合(アミド結合サロゲート)と置き換わる結合は、アミド結合の特徴の多く、例えば、立体配座、立体的かさ高さ、静電特性、水素結合の可能性等を保存する。「ドラッグデザイン・アンド・ディベロップメント(Drug Design and Development)」、クログスガード(Krogsgaard)、ラーセン(Larsen)、リリェフォシュ(Liljefors)およびマドセン(Madsen)編、1996年、ホーウッド・アカデミック・パブリッシャーズ(Horwood Acad.Pub)の14章には、ペプチド模倣薬の設計および合成技術の一般的に論じられている。このケースでは、分子は、酵素の特定の活性部位ではなく膜と反応し、親和性および有効性または基質機能を正確に模倣することに関して記載された問題のいくつかは無関係であり、ペプチド模倣薬は、所与のペプチド構造または必要な官能基のモチーフに基づいて容易に調製可能である。適切なアミド結合サロゲートは以下を含む:N−アルキル化基(R.シュミットら(Schmidt,R.)著、「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)」、1995年、第46巻、p.47)、レトロインバースアミド(retro−inverse amide)基(M.ホレフ(Chorev,M)およびM.グッドマン(Goodman,M.)著、「アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ(Acc.Chem.Res)」、1993年、第26巻、p.266)、チオアミド基(D.B.シャーマン(Sherman D.B.)およびA.F.スパトーラ(Spatola,A.F.)著、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)」、1990年、第112巻、p.433)、チオエステル基、ホスホン酸塩基、ケトメチレン基(R.V.ホフマン(Hoffman,R.V.)およびH.O.キム(Kim,H.O.)著、「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)」、1995年、第60巻、p.5107)、ヒドロキシメチレン基、フルオロビニル基(T.アルメンディンガーら(Allmendinger,T.)著、「テトラハイドロンレターズ(Tetrahydron Lett.)」、1990年、第31巻、p.7297)、ビニル基、メチレンアミノ基(Y.ササキ(Sasaki,Y)およびJ.アベ(Abe J.)著、「ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Chem.Pharm.Bull.)」、1997年、第45巻、p.13)、メチレンチオ基(A.F.スパトーラ(Spatola,A.F.)著、「メソッズ・ニューロサイ(Methods Neurosci)」、1993年、第13巻、p.19)、アルカン基(S.ラヴィーユら(Lavielle,S.)、「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプチド・アンド・プロテイン・リサーチ(Int.J.Peptide Protein Res.)」、1993年、第42巻、p.270)、およびスルホンアミド基(G.ルイージら(Luisi,G.)著、「テトラへドロンレターズ(Tetrahedron Lett.)」、1993年、第34巻、p.2391)。
【0074】
本発明のペプチド模倣化合物は、典型的には、アミノ酸、好ましくは、カチオン性アミノ酸および親油アミノ酸と大きさおよび機能がほぼ同じである同定可能なサブユニットを有する。このように、本明細書では、「アミノ酸」という用語は、ペプチド模倣化合物の同等のサブユニットに言及する際に便宜的に用いられ得る。さらに、ペプチド模倣薬は、アミノ酸のR基と等価の基を有し得るものであり、本明細書中における適切なR基ならびにNおよびC末端修飾基の説明は、必要な変更を加えることにより、ペプチド模倣化合物にも適用される。
【0075】
上記で参照したテキストで説明されるように、アミド結合の置換に加えて、ペプチド模倣薬は、より大きな構造部分とジペプチド模倣薬構造またはトリペプチド模倣薬構造との置換も伴い得るが、この場合、アゾール由来模倣薬等のペプチド結合を伴う模倣薬部分は、ジペプチド置換として用いられ得る。
【0076】
しかしながら、上述のようにアミド結合のみが置き換えられているペプチド模倣薬、ひいてはペプチド類似骨格は好ましい。
適切なペプチド模倣薬は、還元剤、例えば、ボラン、または水素化アルミニウムリチウム等のヒドリド試薬を用いた処理によりアミド結合がメチレンアミンに還元された還元ペプチドを含む。そのような還元には、分子の全体的なカチオン性を増大させるという利点がさらにある。
【0077】
他のペプチド模倣薬は、例えば、アミド官能性ポリグリシンの段階的合成により形成されたペプトイドを含む。ペプチド類似骨格には、完全メチル化されたペプチド等、それらのペプチド前駆体から容易に入手可能なものがあり、適切な方法は、J.M.オストレッシュら(Ostresh,J.M.)著、「プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)」、(1994年)、第91巻、p.11138−11142に記載されている。強塩基性条件は、O−メチル化よりもN−メチル化に有利に働き、ペプチド結合の窒素原子およびN末端窒素のいくつかまたは全てがメチル化される。
【0078】
好適なペプチド類似骨格は、ポリエステル、ポリアミン、およびそれらの誘導体、ならびに置換アルカンおよびアルケンを含む。上記ペプチド模倣薬は、好ましくは、本明細書中に記載されたように修飾され得るNおよびC末端を有する。
【0079】
βおよびγアミノ酸、ならびにαアミノ酸は、N−置換グリシンと同様に、「アミノ酸」という用語に含まれる。本発明の化合物は、βペプチドおよびデプシペプチドを含む。
【0080】
医療用途の場合、上記ペプチドおよびペプチド模倣薬は、任意の便宜的形態で、または任意の便宜的手段で、例えば、局所経路、経口経路、非経口経路、経腸経路、非経口経路、または吸入により被験体に投与され得るが、局所経路、経口経路、または非経口経路が好ましい。
【0081】
当業者は、当該分野で公知であるとともに、広く文献に記載された従来法のいずれかに従って、本発明の分子を、これらの投与経路に適合した医薬組成物に調合することができる。
【0082】
活性成分は、必要に応じて、他の活性剤と、1つ以上の従来の担体、希釈剤、および/または賦形剤とともに組み込み、タブレット、丸薬、粉末(例えば、吸入用粉末)、トローチ剤、袋剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ剤、噴霧剤(固形としてまたは液状媒体中において)、軟膏、軟質および硬質ゼラチンカプセル、座薬、無菌注射液、無菌包装粉末等の従来のガレヌス製剤を製造するようにしてもよい。口腔面、頬面および歯の表面に対しては、具体的には、練り歯磨きおよび口内洗浄液が適用される。
【0083】
適切な担体、賦形剤、および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、不活性アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ剤、水、水/エタノール、水/グリコール、水/ポリエチレン、高張食塩水、グリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、もしくはハードファット等の脂肪物質、またはそれらの適切な混合物がある。好適な賦形剤および希釈剤は、マンニトールおよび高張食塩水(生理食塩水)である。
【0084】
該組成物は、滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、甘味料、香料等をさらに含んでいてもよい。
【0085】
非経口で投与可能な形態、例えば静脈内注射用溶液は、無菌であるとともに、生理学的に許容不可能な薬剤が含まれていない形態とし、さらに投与時の刺激または他の悪影響を最小化するために低浸透圧とすべきであり、ひいては溶液は、等張またはわずかに高張である、例えば、高張食塩水(生理食塩水)であることが好ましい。適切なビヒクルには、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル液、ならびに「レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第15版、イーストン(Easton):マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Co.)、p.1405−1412、およびp.1461−1487(1975年)、ならびに「ザ・ナショナル・フォーミュラリー(The National Formulary)XIV」、第14版、ワシントン(Washington):アメリカン・ファーマシューティカル・アソシエーション(American Pharmaceutical Association)、(1975年)に記載されるような他の溶液等の非経口溶液を投与するために習慣的に使用されている水性ビヒクルが含まれる。上記溶液は、生体高分子と適合するとともに、製品の製造、貯蔵、または使用を妨げない非経口溶液、賦形剤、および他の添加物に従来用いられる保存料、抗菌剤、緩衝液、および抗酸化剤を含有するようにすることができる。
【0086】
局所投与のために、上記ペプチドまたはペプチド模倣薬を、クリーム、軟膏、ゲル、経皮パッチ等の中に組み込むことができる。上記分子は、医療用被覆材、例えば、創傷被覆材(例えば、織(例えば、布)被覆材、または不織被覆材(例えばゲル、またはゲル成分を有する被覆材))中に組み込むこともできる。
【0087】
適切であると考えられるさらなる局所系は、例えば、固体、半固体、非晶質、または液体結晶ゲルマトリクスがin situで形成されるとともに、当該マトリクスからの活性剤の放出を制御するように好都合に設計することができ、例えば、選択した一定期間にわたり放出を遅延および/または持続させることができるゲルのようなin situ薬物送達システムである。そのような系は、生物学的組織または流体と接触しただけで、ゲルを形成し得る。典型的には、ゲルは生体接着性を有する。
【0088】
無生物表面上のバイオフィルムの場合、上記ペプチドまたは模倣薬を、任意の便宜的組成物もしくは製剤で、または任意の便宜的手段により、治療すべき表面に塗布し得る。例えば、液体、ゲル、ゲル−ゾル、半固体、または固体の形態(例えば、溶液、懸濁液、ホモジネート、乳化液、ペースト、粉末、エアロゾル、蒸気)。典型的には、そのような無生物表面のバイオフィルムを治療する組成物は、薬学的に許容可能ではない組成物である。組成物の形態の選択は、バイオフィルム構造ならびにコロニーの組成および位置により影響される。例えば、バイオフィルムの位置が流体ラインである場合、流体組成物を適用することが好都合な場合がある。当業者は、その通常の一般知識により、適切な組成物を容易に調製することができる。
【0089】
医療用途では、上記ペプチドまたは模倣薬は、5〜500mg/l、好ましくは、20〜100mg/l、例えば、40〜60mg/lの濃度で好都合に投与され得る。
【0090】
次に、以下の非限定的な実施例および図面を参照して本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0091】
材料および方法
ペプチド合成
化学物質
保護アミノ酸Boc−Arg−OHおよびBoc−4−フェニル−Pheをバッヘム・アーゲー(Bachem AG)から購入し、Boc−4−ヨードフェニルアラニンをアルドリッチ(Aldrich)から購入した。ペプチドのC末端を構成するイソプロピルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、ブチルアミン、ヘキサデシルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、およびシクロペンチルアミンをフルカ(Fluka)から購入した。ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−HOBt)、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyCloP)、およびO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)をフルカから購入した。4−n−ブチルフェニルボロン酸、4−t−ブチルフェニルボロン酸、4−ビフェニルボロン酸、2−ナフチルボロン酸、トリオルソ−トリルホスフィン、臭化ベンジル、および酢酸パラジウムをアルドリッチから購入した。溶剤をメルク(Merck)、リーデル・デ・ヘーン(Riedel−de Haen)、またはアルドリッチから購入した。
【0092】
アミノ酸の調製
Boc−2,5,7−トリ−tert−ブチルトリプトファン−OHの調製:H2N−Trp−OH(1.8g、8.8mmol)、t−BuOH(4.7g、63.4mmol)のトリフルオロ酢酸(19mL)混合液を70℃で3時間撹拌する。その結果得られた中間的な褐色系の半透明の溶液を室温で30分間ロータリーエバポレーターにかけて還元させた後、60mLの7%(重量)NaHCO3を滴下して粉末にする。次いで、得られた灰色/白色粒状固体を真空ろ過により回収し、室温で24時間かけて真空乾燥させる。生成物を結晶化により近沸点40%エタノール混合水から分離する。体積は、典型的には、粗生成物1グラムあたり20mL程度である。
【0093】
粗生成物からの最初の結晶化により、サンプル中の他の全ての物質に対して純度80〜83%(HPLC)で、公知のTBT類似体に対して純度94〜95%程度の分離生成物を生成する。この段階での収量は60〜65%の範囲である。
【0094】
Boc−4−ヨードフェニルアラニンのベンジル化。Boc−4−ヨードフェニルアラニン(1等量)を90%メタノール水中に溶解し、弱アルカリ性pHになるまで(リトマス紙により判定)炭酸セシウムを加えて中和した。溶剤を回転蒸発により除去し、Boc−4−ヨードフェニルアラニンのセシウム塩中の残留水分を、トルエンとの共沸蒸留を繰り返してさらに低減させた。その結果得られた乾燥塩をジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、臭化ベンジル(1.2等量)を加え、その結果得られた混合物を6〜8時間撹拌した。反応の終わりに、DMFを減圧下で除去し、標記化合物を含有する油が形成される。この油を酢酸エチル中に溶解し、その結果得られた溶液を等量のクエン酸溶液(3回)、重炭酸ナトリウム溶液、および塩水で洗浄した。ジクロロメタン:酢酸エチル(95:5)を溶離剤として用いて、標記化合物をフラッシュクロマトグラフィにより85%の収率で淡黄色の油として分離した。結晶ベンジルBoc−4−ヨードフェニルアラニンをn−ヘプタンからの再結晶により得ることができた。
【0095】
鈴木カップリングの基本手順:ベンジルBoc−4−ヨードフェニルアラニン(1等量)、アリールボロン酸(1.5等量)、炭酸ナトリウム(2等量)、酢酸パラジウム(0.05等量)、およびトリオルソ−トリルホスフィン(0.1等量)を、ジメトキシエタン(6ml/mmolベンジルBoc−4−ヨードフェニルアラニン)と水(1ml/mmolベンジルBoc−4−ヨードフェニルアラニン)の脱気混合液に加えた。その反応混合液をアルゴン雰囲気下に保持し、80℃まで4〜6時間かけて加熱した。室温まで冷却した後、当該混合液をシリカゲルと炭酸ナトリウムのショートパッドに通してろ過する。このろ過ケーキを酢酸エチルでさらに洗浄した。ろ液を混ぜて、その溶剤を減圧下で除去した。酢酸エチルとn−ヘキサンの混合物を溶離剤として用いて、フラッシュクロマトグラフィにより生成物を分離した。
【0096】
Boc−Phe(4−4’−ビフェニル)−OBnの調製:鈴木カップリングの基本手順を用いて、4−ビフェニルボロン酸から61%の収率で標記化合物を調製した。Boc−Phe(4−4’−ビフェニル)−OBnをn−ヘプタンからの粗生成物の再結晶により分離した。
【0097】
Boc−Phe(4−(2’−ナフチル))−OBnの調製:鈴木カップリングの基本手順を用いて、2−ナフチルボロン酸から68%の収率で標記化合物を調製した。Boc−Phe(4−(2’−ナフチル))−OBnをn−ヘプタンからの粗生成物の再結晶により分離した。
【0098】
ベンジルエステル類の脱エステル化の基本手順:ベンジルエステルをDMF中に溶解し、10%炭素上パラジウムを触媒として用いて、周囲圧力で2日間かけて水素化する。反応の最後に、その触媒をろ過により除去し、その溶剤を減圧下で除去する。ジエチルエーテルからの再結晶により遊離酸を分離する。
Boc−Phe(4−4’−ビフェニル)−OHの調製:脱エステル化の基本手順を用いて、Boc−Phe(4−4’−ビフェニル)−OBnから61%の収率で標記化合物を調製した。
【0099】
Boc−Phe(4−(2’−ナフチル))−OHの調製:脱エステル化の基本手順を用いて、Boc−Phe(4−(2−ナフチル))−OBnから68%の収率で標記化合物を調製した。
【0100】
HBTUを用いた液相ペプチド合成の基本手順。下記の基本手順に従ったBoc保護戦略を用いて、段階的アミノ酸結合により溶液中で上記ペプチドを調製した。遊離アミノ基(1等量)およびBoc保護アミノ酸(1.05等量)を有するC末端ペプチド部分ならびに1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−HOBt)(1.8等量)をDMF(2〜4ml/mmolアミノ成分)中に溶解した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4.8等量)を加えた。この混合液を氷冷し、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)(1.2等量)を加えた。この反応混合液を周囲温度で1〜2時間振盪した。この反応混合液を酢酸エチルで希釈し、クエン酸、重炭酸ナトリウム、および塩水で洗浄した。溶剤を真空下で除去し、その結果得られたペプチドのBoc保護基を、95%TFAまたは塩化アセチル無水メタノール溶液を用いて暗所で脱保護した。
【0101】
PyCloPを用いた液相アミド生成。Boc−Arg−N(CHPh)の合成。Boc−Arg−OH(1等量)、NH(CHPh)(1.1等量)、およびPyCloP(1等量)の乾燥DCM(アルミナでろ過したもの)(2ml)とDMF(1ml)の溶液。この溶液を氷冷し、DIPEA(2等量)を撹拌しながら加えた。その溶液を1時間室温で撹拌した。その反応混合液を蒸発させ、酢酸エチル中に再度溶解し、クエン酸、重炭酸ナトリウム、および塩水で洗浄した。上記溶剤を真空下で除去し、その結果得られたペプチドのBoc保護基を、95%TFAを用いて暗所で脱保護した。
【0102】
ペプチド精製および分析。Delta−Pak(ウォーターズ(Waters))C18カラム(100Å、15μm、25×100mm)で逆相HPLCを用い、水とアセトニトリル(ともに0.1%TFAを含有)の混合液を溶離剤として上記ペプチドを精製した。そのペプチドを、Delta−Pak(ウォーターズ)C18分析カラム(100Å、5μm、3.9×150mm)でのRP−HPLC、およびVG Quattro四重極質量分析計(ブイジー・インストゥルメンツ・インク(VG Instruments Inc.)、オルトリンガム(Altringham)、英国(UK))での陽イオンエレクトロスプレー質量分析により分析した。
【0103】
菌株および成長条件
本研究において用いた6つのブドウ球菌株(2つの表皮ブドウ球菌、2つの溶血性連鎖球菌、および2つの黄色ブドウ球菌)は、それらの以前より公知のバイオフィルム形成能(表1)に基づいて選択した。
陽イオン調整ミューラーヒントンII液体培地(MHIIB)で細菌を37℃で一晩成長させた。
【0104】
【表2】




【0105】
抗生物質、SAMP、およびプランクトン様成長条件下での感受性試験
我々は、E−test(アーベー・バイオディスク(AB Biodisk)、ソルナ(Solna)、スウェーデン(Sweden))を用いて、オキサシリン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、バンコマイシン、およびリネゾリドのMICを判定するとともに、微量液体希釈アッセイを用いてリファンピシンのMICを判定した。ブレイクポイントは、EUCASTの基準に従ってに解釈した。我々は、以前より公知の抗菌活性に基づいて3つの異なるSAMP(化合物A、B、およびC;リティクス・バイオファーマ(Lytix Biopharma)、トロムソ(Tromsoe)、ノルウェー(Norway)、図1参照)選択し、微量液体希釈アッセイでそれらの正確なMICを判定した。3つのSAMPの全てがそれらのカチオン性部分を提供する2つのアルギニン残基を有するトリペプチドである(図1)。親油性バルクが修飾トリプトファン誘導体により提供される。上記化合物間の相違点は、C末端修飾の大きさであり、化合物Aは、C末端修飾が最小であり、化合物Bは最大である(図1)。SAMPの分子量は、700〜800ダルトンの範囲である。
【0106】
バイオフィルム形成およびバイオフィルムに対する活性の定量化
96ウェル平底マイクロタイタープレート(ヌンクロン・サーフェス(Nunclon Surface)、ヌンク(NUNC)、ロスキレ(Roskilde)、デンマーク(Denmark))中でバイオフィルム形成を誘発した。まず、一晩培養物をMHIIB(表皮ブドウ球菌および溶血性連鎖球菌)またはトリプティックソイブロス(TSB)において、5%ブドウ糖および5%NaCl(黄色ブドウ球菌)で1:100に希釈した。各ウェルにこの細菌懸濁液(10cfu/ml)を200μl加え、37℃で24時間かけて培養した。24時間後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でウェルを入念に2度洗浄してプランクトン様細菌を除去した。この洗浄手順を、下記で詳述するアラマーブルー法でPBSの代謝活性を測定して評価した。DNA抽出およびicaオペロンのマーカーとしてのicaDのPCRを、以前より報告されているように実施した(デ・シルバら(de Silva)著、ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(J.Clin.Microbiol.)、[2002年]、第40巻:p.382−388)。
洗浄したバイオフィルムを異なる濃度の抗生物質またはSAMPで処理した。テトラサイクリン(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)、バンコマイシン(アルファーマ(Alpharma))およびリネゾリド(ファイザー(Pfizer))の原液をMHIIBで5mg/L、50mg/L、および500mg/Lに希釈し、リファンピシン(シグマ・アルドリッチ)をMHIIBで0.01mg/L、0.1mg/L、および1mg/Lに希釈した。上記SAMPのトリフルオロ酢酸塩を滅菌水中に溶解し、MHIIBで5mg/L、50mg/L、および500mg/Lに希釈した。各ウェルに200μlの抗生物質またはSAMPを異なる濃度で加え、37℃で24時間かけて培養した。陽性対照は、200μlのMHIIBのみを加えた未処理のバイオフィルムであった。陰性対照は、200μlのMHIIBのみで、細菌は加えなかった。
【0107】
我々は、これまでにペティットら(Pettit)により、「アンチマイクロバイアル・エージェンツ・アンド・ケモセラピー(Antimicrob.Agents Chemother.)」、2005年;第49巻:p.2612−7において記載された方法をわずかに変更してバイオフィルムの代謝活性を定量化した。簡潔に説明すると、上記ウェルをPBSで2回洗浄した。次いで、我々は、250μlのMHIIBを5%アラマーブルー(AB;インビトロジェン(Invitrogen)、カールズバッド(Carlsbad)、カリフォルニア(CA)、米国(USA))とともに各ウェルに加えた。ABは、化学還元に応じて蛍光を発するとともに変色する酸化還元指示薬である。還元の度合いは、細菌細胞生存性を反映する。37℃での1時間の培養後、Versamaxチューナブルマイクロプレートリーダー(モレキュラー・デバイス(Molecular Devices)、サニーヴェール(Sunnyvale)、カリフォルニア(CA)、米国(USA))を用いて570および600nmでの吸光度を記録した。全てのアッセイは8つの類似物を用いて3回行った。各回の最高値および最低値を分析から除外し、残りの18個の値を平均した。
【0108】
この代謝活性を定量化するバイオフィルム法を96ウェルマイクロタイタープレートにおける標準的な半定量的生物量の定量法と比較した。この実験のために、我々は、6つのブドウ球菌株全ての24時間バイオフィルムを成長させ、上述したように、ABを用いて代謝活性を分析した。24時間バイオフィルム上の生物量の定量は、当該バイオフィルムをクリスタルバイオレット(CV)で染色して行った。染色後、各ウェルにエタノール:アセトン(70:30)を加えて、残りのクリスタルバイオレットをウェルの壁に沿って溶解した。次いで、分光光度計を用いて570nmでの光学密度(OD:optical density)を記録した。
【0109】
バイオフィルムの画像化
MHHBで希釈した一晩培養物の1mlアリコートを用いて溶血性連鎖球菌TUH 51−07バイオフィルムを24ウェルディッシュ(Falcon3047、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー(NJ)、米国(USA))中のプラスティックカバースライド(Thermanox、片側を細胞培養処理、ヌンク、ロスキレ、デンマーク)上に24時間かけて成長させた。次いで、このカバースライドをPBSで入念に洗浄し、新たなプレートに移し、24時間かけて50mg/Lと500mg/Lのテトラサイクリン、50mg/Lと500mg/Lのバンコマイシン、または50mg/Lと500mg/Lの化合物Aで処理した。カバースライドを9%NaClで再度洗浄し、製造者の使用説明書に従ってLIVE/DEADキット(インビトロジェン・モレキュラー・プローブズ(Invitrogen Molecular Probes)、ユージーン(Eugene)、オレゴン(Oregon)、米国(USA))で染色した。この染色剤は、SYTO9(緑色蛍光)およびヨウ化プロピジウム(PI;赤色蛍光)を含有し、これらはともにDNAと結合する。単独で用いる場合、SYTO9は、一般に、個体群中の全ての細菌(膜が無傷のものと、膜が損傷しているものの両方)を染色する。対照的に、PIは、膜が損傷した細菌だけに浸透し、両方の染料が存在する場合には、SYTO9染色剤の緑色蛍光を低減させる。我々は、処理したバイオフィルムおよび未処理のバイオフィルムをLeica TCS SP5(ライカ・マイクロシステムズ・ツェーエムエス・ゲーエムベーハー(Leica Microsystems CMS Gmbh)、マンハイム(Mannheim)、ドイツ(Germany))共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)で観察した。63X 1.2 NA HCXPL APO水浸レンズを用いて画像を得た。SYTO9(緑色チャネル)の検出のために、我々は、488nmラインのアルゴンレーザーおよび495〜515nmの検出帯域幅を用いた。PI検出(赤色チャネル)については、我々は、561nmラインおよび615〜660nmの検出帯域幅を用いた。これら2つの蛍光信号を400Hzで連続して採取した。Leica LAS AFバージョン1.8.2を用いて画像の解析および出力を行った。
【0110】
統計的分析および評価
製造者の公式(インビトロジェン、カールズバッド、米国)に従ってABの低減パーセントを計算した。我々は、反復測定全ての平均値および標準偏差(SD)を計算した。6つのブドウ球菌株全ての平均データに基づいてピアソンの両側相関をAB法とCV法(図2)間に関して計算した。SPSS for Windowsのソフトウェアバージョン14.0を用いて統計的分析を行った。
【0111】
我々は、陽性および陰性対照を含む、AB低減に関する未加工のパーセント値を提示する(図3および図4)。我々は、代謝活性の2つのレベルの抗菌抑制を定義した。陰性対照について調整後の特定の濃度の薬剤がABを陽性対照と比べて≧75%低減させた場合に、強い抑制が得られた。特定の濃度の薬剤がABを≦陰性対照の値+2SD低減させた場合に、完全抑制が得られた。
【0112】
結果
上記表1は、抗生物質およびSAMPのMICをまとめたものである。6つの株全てがバンコマイシン、リネゾリド、リファンピシン、バンコマイシン、およびテトラサイクリンに対して感受性を示した。2つの黄色ブドウ球菌株は、ゲンタマイシンおよびオキサシリンに対して感受性を示したが、他の4つのブドウ球菌株はこれらの薬剤に耐性があった。SAMPのMICは、一般に、抗生物質のMICより高かった。
CV染色で定量化した生物量と形成後24時間のバイオフィルムにおけるAB低減で定量化したバイオフィルム代謝活性(図2)との間には強い相関関係(R0.939、p=0.002)があった。洗浄後のPBSにおける代謝活性はごくわずかしかなく、プランクトン様細菌がウェルからほぼ完全に除去されたことを示す(データの記載なし)。
図3および図4は、未処理および処理済のバイオフィルムにおけるAB低減のパーセンテージを示す。ほとんど例外なく、試験を行った抗生物質は、MIC近傍の濃度で全ての株の代謝活性を低減させた。抗生物質濃度を高くする(概ね10〜20×MIC)ことで、全ての抗生物質が黄色ブドウ球菌PIA9を除いて代謝活性を強く抑制した。しかしながら、1つの株(黄色ブドウ球菌PIA90)における代謝活性を完全に抑制したのはテトラサイクリンだけであった。黄色ブドウ球菌PIA9バイオフィルムにおいてABを≧50%低減した抗生物質はなかった。この株は、バンコマイシンに対して完全な耐性を持つバイオフィルムを生成したようであった。
【0113】
化合物A、化合物B、および化合物Cは、50mg/Lの濃度で、黄色ブドウ球菌PIA9を除く全てのバイオフィルムにおける代謝活性を強くまたは完全に抑制した。いくつかの株では、5mg/Lの濃度でも十分に完全抑制がなされた。
図5は、LIVE/DEAD染色を用いた溶血性連鎖球菌TUH51−07バイオフィルムの共焦点顕微鏡写真を示す。予想どおり、未処理のバイオフィルムは、無傷の細胞膜を有する緑色の細胞を示した。50mg/L、特には、500mg/Lの濃度の化合物Aで処理したバイオフィルムでは、ほぼ全ての細胞が赤色に染色され、細菌が死んでいることが示される。500mg/Lテトラサイクリンで処理したバイオフィルムでは、細胞のかなりの部分がなお緑色であり、細胞膜が無傷である細菌が生きていることが示される。臨床診療で得られたピーク値近傍の濃度のバンコマイシン(50mg/L)を用いたバイオフィルムの処理(図5d)では、大部分が緑色の細胞(生きた生物)が示された。
試験を行ったSAMPの全ては、抗生物質と比べて低い濃度で、ブドウ球菌バイオフィルムにおける代謝活性の低減に明らかにより効果的であったが、一般には、プランクトン様成長条件下ではMICが高かった。プランクトン様成長条件では、本研究に用いられた全ての株が、バンコマイシン、リネゾリド、リファンピシン、およびテトラサイクリンに対して感受性があった。ブドウ球菌バイオフィルム上のバンコマイシンは抗菌活性が低いことが以前より報告されている。我々の研究では、50mg/Lのバンコマイシンは、試験を行った6株中4つにおいて成熟バイオフィルムにおける代謝活性に対して強い抑制力を発揮した。それでもなお、この濃度では多くの細菌が殺されなかったことがCLSMで確認された。一般に、抗生物質は、代謝活性を完全に抑制することはほとんどない。対照的に、SAMPは、代謝活性を完全に抑制できることが多く、効果的に殺菌できることが示されている。CLSMによって得られた画像は、この知見をさらに裏付けている。500mg/Lの化合物Aを用いた処理では、全ての細胞の膜が損傷し、溶血性連鎖球菌バイオフィルムにおける細胞溶解が示されている。500mg/Lテトラサイクリンで処理したバイオフィルムは、LIVE/DEAD染色で記録される、かなりの数の生きた細胞をなおも含有していたが、対応するバイオフィルムアッセイでは、測定可能な代謝活性はほとんどなかった。
【実施例2】
【0114】
ポリスチレン粒子のペプチド表面修飾
被覆粒子の調製
1.
20mLペプチド反応装置に、560mg(0.5mmol)のアミノメチル化ポリスチレンHL粒子(100〜200メッシュ、0.90mmol/g置換)を加えた後、8mLのDCMで10分間ずつ2回洗浄した。次いで、さらに8mLのDCMを加え、上記粒子を1時間かけて膨張させた後、最初の結合の前に反応装置の内部を排出した。
【0115】
2.
8mLのDMFに、3等量のBocアミノ酸および683mg(3.6等量)のO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム(HBTU)カップリング試薬を加えた。この混合液を反応装置に移す直前に、0.855mL(10等量)のN−エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)を加え、その混合液を上記反応装置に一度で移した。次いで、反応装置を適度に掻き混ぜながら、一晩の間室温で反応を行った。
【0116】
3.
次いで、粒子を8mLのDMFで15分間ずつ3回洗浄するとともに、8mLのDCMで10分間ずつ2回洗浄した。
【0117】
4.
この時点で、小サンプルを反応装置から取り出し、結合していないアミンが残っていないかを判断するためにカイザーテストを行った。
【0118】
5.
カイザーテストの結果が陽性であった場合、上記ポイント2から、それを含む手順を同じアミノ酸で繰り返した。テストが陰性(結合していないアミンが残っていない)の場合には、8mLのTFA/DCM(1:1)を反応装置に加えて、新たに結合したアミノ酸からBoc基を除去し、反応装置を1時間適度に掻き混ぜた。
【0119】
6.
次いで、粒子を8mLのDCMで15分ずつ3回洗浄するとともに、8mLのDMFで10分ずつ2回洗浄した。
【0120】
7.
ここで、上記ポイント2からポイント6までを含む上記手順を次に結合すべきアミノ酸に対して繰り返した。
【0121】
8.
最後のアミノ酸単位が上記手順のステージ5を終えると、粒子を8mLのDCMで15分ずつ4回洗浄し、反応装置内において窒素気流下で30分間かけて乾燥させた後、真空下において室温で24時間かけて乾燥させた。次いで、上記粒子を、密閉したバイアル内において4℃で貯蔵した。
上記の方法で、下記のペプチド被覆粒子をほぼ定量的収率で調製したが、これには以下の適切なアミノ酸を用いた:
アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−ポリスチレン(本発明に係るペプチド)
アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−アミノヘキサノイル−ポリスチレン(本発明に係るペプチド)
アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−ポリスチレン(本発明に係るペプチド)
アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−アミノヘキサノイル−ポリスチレン(本発明に係るペプチド)
表面被覆粒子の細菌コロニー形成の低減
表皮ブドウ球菌を用いて上記で調製した粒子を24時間かけて培養した。標準的な手順に従ってSyto9によりバイオフィルムを形成する細菌を染色した後、細菌表面上の細菌コロニー形成量を蛍光顕微鏡法(励起周波数485nm、放射周波数498nm)により判定した。
【0122】
ポリスチレン粒子の顕微鏡写真を目視して、コロニー形成に対する効果を判定した。図6は、下記のものの顕微鏡写真を示す:
A)非被覆アミノメチル化ポリスチレンHL粒子
B)表皮ブドウ球菌との24時間培養後の非被覆アミノメチル化ポリスチレンHL粒子
C)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−ポリスチレン粒子
D)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−アミノヘキサノイル−ポリスチレン粒子
E)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−ポリスチレン粒子
F)表皮ブドウ球菌との24時間培養後のアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−アミノヘキサノイル−ポリスチレン粒子
図B)のポリスチレン粒子のバイオフィルムコロニー形成は、図A)のポリスチレン粒子の滑らかな表面と比較して、粒子の表面がふわふわしたような線毛のようなもの(Fluffy)により容易に観察できる。図C)、図D)、図E)および図F)は、表皮ブドウ球菌によるコロニー形成に対する4つのペプチド被覆の効果を示す。アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル(図C))、アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−アミノヘキサノイル(図D)、アルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル(図E))、およびアルギニニル−(2,5,7−トリ−tert−ブチル)トリプトファニル−アルギニニル−フェニルアラニニル−アミノヘキサノイル(図F))での被覆は、それぞれ、細菌コロニー形成を妨げることにより、バイオフィルム形成の予防に効果的であることが示されている。
【実施例3】
【0123】
バイオフィルム形成およびバイオフィルムに対する活性の定量化
96ウェル平底マイクロタイタープレート(ヌンクロン・サーフェス、ヌンク)中でバイオフィルム形成を誘発した。まず、一晩培養物をMHIIB(表皮ブドウ球菌および溶血性連鎖球菌)またはトリプティックソイブロス(TSB)において、5%ブドウ糖および5%NaCl(黄色ブドウ球菌)で1:100に希釈した。各ウェルにこの細菌懸濁液(107cfu/ml)を200ml加え、37℃で24時間かけて培養した。24時間後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でウェルを入念に2度洗浄してプランクトン様細菌を除去した。この洗浄手順を、下記で詳述するアラマーブルー法でPBSの代謝活性を測定して評価した。
【0124】
洗浄したバイオフィルムを異なる濃度の上記化合物で処理した。それら化合物のトリフルオロ酢酸塩を滅菌水中に溶解し、MHIIB中で5mg/L、50mg/L、および500mg/Lに希釈した。各ウェルに上記化合物200μlを異なる濃度で加え、37℃で24時間かけて培養した。陽性対照は、200μlのMHIIBのみを加えた未処理のバイオフィルムであった。陰性対照は、200μlのMHIIBのみで、細菌は加えなかった。
【0125】
これまでにペティットら(Pettit)著、「アンチマイクロバイアル・エージェンツ・アンド・ケモセラピー(Antimicrob.Agents Chemother.)」、2005年;第49巻:p.2612−7に記載された方法をわずかに変更してバイオフィルムの代謝活性を定量化した。簡潔に説明すると、抗菌薬との培養の24時間後に、上記ウェルを再度PBSで2回洗浄し、次いで、250mlのMHIIBを5%アラマーブルー(AB;バイオソース(Biosource)、カマリロ(Camarillo)、カリフォルニア(CA)、米国(USA))とともに各ウェルに加えた。ABは、化学還元に応じて蛍光を発するとともに変色する酸化還元指示薬である。還元の度合いは、細菌細胞生存性を反映する。37℃での1時間の培養後、Versamaxチューナブルマイクロプレートリーダー(モレキュラー・デバイス、サニーヴェール、カリフォルニア、米国)を用いて570および600nmでの吸光度を記録した。全てのアッセイは8つの類似物を用いて3回行った。各回の最高値および最低値を分析から除外し、残りの18個の値を平均した。
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオフィルム関連感染症の治療に用いるペプチドまたはペプチド模倣薬であって、該ペプチドまたはペプチド模倣薬は、
a)正味の正電荷を帯び、
b)1〜6アミノ酸の長さであるか、または同等の大きさのペプチド模倣薬であり、
c)1つ以上の親油基を有する両親媒性の性質を持ち、該親油基の1つが少なくとも7個の非水素原子を含む、ペプチドまたはペプチド模倣薬。
【請求項2】
被験体のバイオフィルム関連感染症を治療する方法であって、該被験体にペプチドまたはペプチド模倣薬を投与する工程を包含し、該ペプチドまたはペプチド模倣薬は、
a)正味の正電荷を帯び、
b)1〜6アミノ酸の長さであるか、または同等の大きさのペプチド模倣薬であり、
c)1つ以上の親油基を有する両親媒性の性質を持ち、該親油基の1つが少なくとも7個の非水素原子を含む、方法。
【請求項3】
バイオフィルム関連感染症の治療薬の製造における、
a)正味の正電荷を帯び、
b)1〜6アミノ酸の長さであるか、または同等の大きさのペプチド模倣薬であり、
c)1つ以上の親油基を有する両親媒性の性質を持ち、該親油基の1つが少なくとも7個の非水素原子を含む、ペプチドまたはペプチド模倣薬の使用。
【請求項4】
前記感染は、慢性創傷感染、自然弁心内膜炎、急性中耳炎、慢性細菌性前立腺炎、肺炎、歯垢、歯周炎、呼吸器疾患におけるバイオフィルム感染、または埋め込み型もしくは人工医療器具に関連した器具による感染である、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、請求項2に記載の方法、あるいは請求項3に記載の使用。
【請求項5】
バイオフィルム形成を抑制するかまたはバイオフィルムを除去する方法であって、該バイオフィルムをペプチドまたはペプチド模倣薬に接触させる工程を包含し、該ペプチドまたはペプチド模倣薬は、
a)正味の正電荷を帯び、
b)1〜6アミノ酸の長さであるか、または同等の大きさのペプチド模倣薬であり、
c)1つ以上の親油基を有する両親媒性の性質を持ち、該親油基の1つが少なくとも7個の非水素原子を含む、方法。
【請求項6】
前記バイオフィルムは医療器具上に存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドまたはペプチド模倣薬は少なくとも+2の正味電荷を有する、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドもしくはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項8】
前記ペプチドは3アミノ酸の長さであるか、または前記ペプチド模倣薬は同等の大きさである、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項9】
前記親油基は9〜12個の非水素原子を有する、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項10】
前記親油基は、随意に芳香族となる環状基を含む、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項11】
前記親油基は、随意に縮合される2つ以上の環状基を含む、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項12】
前記親油基はアミノ酸のR基である、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項13】
前記アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、トリブチルトリプトファン(Tbt)、ビフェニルアラニン、ジフェニルアラニン、およびビフェニルアラニン誘導体を含む群から選択される、請求項12に記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項14】
前記親油基は極性基を2つ以下含む、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項15】
前記親油基は極性基を含まない、請求項14に記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項16】
前記ペプチドは3つのアミノ酸部分を含み、任意の順で、該アミノ酸部分の2つはカチオン性アミノ酸であり、該アミノ酸の1つは、親油R基を有するアミノ酸であり、該R基は、14〜27個の非水素原子を有する、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチド、方法、あるいは使用。
【請求項17】
前記ペプチドは下記式(V)を有し、
AA−AA−AA−R−R (V)
任意の順で、該AA(アミノ酸)部分の2つはカチオン性アミノ酸であり、該AAの1つは、親油R基を有するアミノ酸であり、該R基は、14〜27個の非水素原子を有し;
は、分岐鎖または非分岐鎖C〜C10アルキルまたはアリール基と置換され得るN原子であり、該基は、N、O、およびSから選択されたヘテロ原子を最大で2個組み込んでもよく;
は、2〜20個の非水素原子を有する脂肪族部分であり、該部分は、直鎖、分岐鎖、または環状である、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチド、方法、または使用。
【請求項18】
前記バイオフィルムはグラム陽性細菌を含む、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項19】
前記グラム陽性細菌はブドウ球菌を含む、請求項18に記載のペプチドまたはペプチド模倣薬。
【請求項20】
前記ブドウ球菌は溶血性連鎖球菌である、請求項19に記載のペプチドまたはペプチド模倣薬。
【請求項21】
前記ペプチドまたはペプチド模倣薬は固形支持体に付着する、先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬、方法、あるいは使用。
【請求項22】
先行する請求項のいずれか1つに記載のペプチドまたはペプチド模倣薬を含む固形支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−504587(P2012−504587A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529620(P2011−529620)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002364
【国際公開番号】WO2010/038040
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(508285259)リティックス バイオファーマ エイエス (6)
【Fターム(参考)】