説明

バイオフィルム除去剤組成物

【課題】バイオフィルムを効果的に除去するバイオフィルム除去剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)
[-(CH2m-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-]n (1)
(式中、mは5〜10、nは4〜20の数を示す。)
で表わされる化合物又はその塩を含有するバイオフィルム除去剤組成物、及び該除去剤組成物をバイオフィルムに接触させる、バイオフィルムの除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム除去剤組成物に関するものであり、より詳細には、微生物が関与するさまざまな分野において、殺菌剤の効果を低下させているバイオフィルムを効果的に除去し得るバイオフィルム除去剤組成物、及びこれを用いるバイオフィルムの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムは生物膜やスライムとも言われ、一般に水系で微生物が物質の表面に付着・増殖することによって微生物細胞内から多糖やタンパク質などの高分子物質を産生して構造体を形成したものを指す。バイオフィルムが形成すると、微生物を原因とする危害が発生して、様々な産業分野で問題を引き起こす。例えば、食品プラントの配管内にバイオフィルムが形成されると、このバイオフィルムが剥がれ落ち製品内への異物混入につながるだけでなく、微生物由来の毒素で食中毒の原因となる。さらに、金属表面へのバイオフィルム形成は金属腐食の原因となり、設備の老朽化を促進する。
更に、バイオフィルムを形成した微生物集合体に対しては、水系に分散浮遊状態にある微生物と比較して、殺菌剤・静菌剤のような微生物制御薬剤の十分な効果が出せないことも多い。例えば医療の面では近年、内視鏡等の医療機器の狭い隙間や空孔内に微生物が残存してバイオフィルムを形成し、これを原因とする院内感染例が数多く報告されている。
【0003】
バイオフィルムを除去する方法として、例えばカンジタバイオフィルム除去剤などが開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、口腔内でのバイオフィルムの除去に関する技術であり、食品プラントの配管や医療機器用途等の様々な領域において、有効なバイオフィルムの除去方法の開発が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、様々な領域において微生物ならびに微生物産生物質からなるバイオフィルムを効果的に除去し得るバイオフィルム除去剤組成物、及びバイオフィルムの除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、バイオフィルムを効果的に除去するバイオフィルム除去剤組成物を得るべく鋭意研究を行ったところ、特定のグアニジン誘導体に優れたバイオフィルムの除去作用があることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)下記一般式(1)
[-(CH2m-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-]n (1)
(式中、mは5〜10、nは4〜20を示す。)
で表わされる化合物又はその塩を含有するバイオフィルム除去剤組成物を提供するものである。
【0008】
さらに、本発明は、このバイオフィルム除去剤組成物をバイオフィルムに接触させる、バイオフィルムの除去方法をも提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、様々な領域において微生物ならびに微生物産生物質からなるバイオフィルムを効果的に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、一般式(1)で表される化合物(A)又はその塩を含有する。本発明に用いられる(A)の化合物は、式中のmが5〜10であるが、好ましくは5〜8、特に好ましくは5〜6であり、更に好ましくは6である。nは4〜20であるが、好ましくは6〜15であり、更に好ましくは8〜14である。また、化合物(A)の末端は、水素原子等が挙げられる。本発明に用いられる化合物(A)としては、ポリペンタメチレンビグアニジン、ポリヘキサメチレンビグアニジン、ポリオクタメチレンビグアニジン等が挙げられるが、バイオフィルムの除去効果の観点から、ポリヘキサメチレンビグアニジンが好ましい。
また、組成物中の化合物(A)は、単独(化合物(A)そのもの)として存在していたり、塩として存在していてもよく、組成物のpHによっては、例えば、組成物が酸性状態では、組成物中に配合される酸と化合物(A)との塩を形成していたり、或いは、組成物がアルカリ状態では、組成物中に化合物(A)が単独で存在している場合が考えられる。
化合物(A)の塩とするための酸としては、有機酸又は無機酸が挙げられ、好ましくは塩酸、グルコン酸、酢酸であり、より好ましくは塩酸である。
なお、ポリヘキサメチレンビグアナイドについては、特開2007−126581号に記載されているが、カチオン性界面活性剤の一例として記載されているにすぎず、バイオフィルムの除去効果については何の記載も存しない。
【0011】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物中の成分(A)の濃度は、コスト及びバイオフィルム除去効果の観点から、0.001〜10重量%が好ましく、0.002〜5重量%がより好ましく、0.005〜3重量%がさらに好ましく、0.01〜1重量%がさらにより好ましい。
【0012】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、成分(A)の溶解性を高める、あるいはバイオフィルム除去性能を向上させる目的で、更に(B)界面活性剤を配合することが好ましい。当該界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましく、さらに非イオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0013】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン(以下、POAと記す)アルキルエーテル(好ましくは炭素数8〜18のアルキル基を有し、オキシアルキレン基が平均3〜30モル付加したPOAアルキルエーテル)、POAアルキルアミン(好ましくは炭素数8〜18のアルキル基を有し、オキシアルキレン基が平均3〜30モル付加したPOAアルキルアミン)、POAアルキルフェニルエーテル(好ましくは炭素数8〜18のアルキル基を有し、オキシアルキレン基が平均3〜30モル付加したPOAアルキルフェニルエーテル)、POAアリールフェニルエーテル(好ましくはオキシアルキレン基が平均3〜30モル付加したPOAアリールフェニルエーテル)、POAスチレン化フェニルエーテル(好ましくはオキシアルキレン基が平均3〜30モル付加したPOAスチレン化フェニルエーテル)、POAトリベンジルフェニルエーテル(好ましくはオキシアルキレン基が平均3〜30モル付加したPOAトリベンジルフェニルエーテル)等の1価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤; (ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POAソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド(好ましくは炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド)、脂肪酸アルカノールアミド(好ましくは炭素数8〜18のアルキル基を有する脂肪酸アルカノールアミド)等の多価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤等が挙げられ、中でもPOAアルキルエーテル、POAアルキルアミン、アルキルポリグリコシドが好ましく、POAアルキルアミン、アルキルポリグリコシドがより好ましく、POAアルキルアミンがさらに好ましい。POAとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンが挙げられ、バイオフィルムの除去性能の観点から、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが好ましく、ポリオキシエチレンがより好ましい。また、上記POA系非イオン界面活性剤におけるアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、3〜30モルが好ましく、3〜20モルがより好ましく、3〜10モルがさらに好ましい。また、アルキル基の炭素数としては、バイオフィルムの除去性能の観点から、8〜18が好ましく、10〜18がより好ましく、10〜14がさらに好ましい。
【0014】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、等が挙げられ、中でもアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルヒドロキシスルホベタインが好ましく、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイドがより好ましく、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタインがさらに好ましい。アルキル基の炭素数としては、バイオフィルムの除去性能の観点から6〜24が好ましく、8〜20がより好ましく、10〜18がさらに好ましく、10〜14がさらにより好ましい。
【0015】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチル塩化ベンザルコニウム等が挙げられ、中でもアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチル塩化ベンザルコニウムが好ましい。アルキル基の炭素数としては、バイオフィルムの除去性能の観点から、6〜20が好ましく、8〜18がより好ましく、10〜16がさらに好ましい。これらの塩としては、ハロゲン化物が好ましく、塩化物、臭化物がより好ましい。
【0016】
また、本発明のバイオフィルム除去剤中の成分(B)の濃度は、コスト及びバイオフィルム除去効果の観点から、から0.001〜20重量%が好ましく、0.002〜10重量%がより好ましく、0.005〜5重量%がさらに好ましく、0.005〜2重量%がさらにより好ましく、0.01〜1重量%が特に好ましい。
これらの(B)界面活性剤は成分(A)と目的に応じて任意の割合で併用することができる。成分(A)と成分(B)との割合は、成分(A)の溶解性、バイオフィルム除去性能の観点から、重量比で、成分(A)/成分(B)=90/10〜1/99が好ましく、70/30〜10/90がより好ましく、60/40〜20/80がさらに好ましい。
【0017】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、バイオフィルム除去性能の観点から、さらに成分(C)として、アルカリ剤を配合することが好ましい。成分(C)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム、一号珪酸ナトリウム、二号珪酸ナトリウム、三号珪酸ナトリウム等の珪酸塩類;リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸塩類;炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩類;ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウムなどの有機酸の塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸類;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、スペルミン、スペルミジンなどとポリアミン類が挙げられる。これらアルカリ剤は、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらのアルカリ剤のうち好ましいものとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、モノエタノールアミンであり、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0018】
これらアルカリ剤は本発明のバイオフィルム除去剤組成物の使用時の作用系中のpHをアルカリ性にするために用いられ、作用時の濃度におけるpHはバイオフィルム除去性能の観点から好ましくは9.0以上、更に好ましくは10.0〜13.5がよく、より好ましくは、11.0〜13.5となるように配合する。さらにより好ましくは12.0〜13.0となるように配合する。
pHは、本発明のバイオフィルム除去剤組成物の原液(25℃)を測定することによって求めることができる。
従って、本発明のバイオフィルム除去剤組成物中の成分(C)の濃度は、pH調整、コスト及びバイオフィルム除去効果の観点から、から0.001〜20重量%が好ましく、0.002〜10重量%がより好ましく、0.005〜5重量%がさらに好ましく、0.005〜2重量%がさらにより好ましく、0.01〜1重量%が特に好ましい。
アルカリ剤はバイオフィルム除去剤組成物中に安定に配合できる範囲内で、目的に応じて任意の割合で併用することができる。好ましい割合は、バイオフィルム除去効果の観点から、重量比で、成分(A)/成分(C)=99/1〜10/90であり、より好ましくは80/20〜20/80であり、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。また、好ましくは、バイオフィルム除去効果の観点から、重量比で、[成分(A)+成分(B)]/成分(C)=99/1〜10/90であり、より好ましくは、80/20〜30/70であり、さらに好ましくは、70/30〜40/60である。
【0019】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物はその効果を高める目的で、さらに成分(D)としてキレート剤を配合することができる。キレート剤としては、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸ジ酢酸、アミノメチルグリシンジ酢酸などのアミノカルボン酸誘導体及び/又はそれらの塩;クエン酸、酒石酸、グルコン酸など有機酸の塩;ポリアクリル酸及び/又はその塩、ポリアクリル酸/マレイン酸共重合体及び/又はその塩などの高分子電解質系化合物;トリポリリン酸塩、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩などのリン酸系化合物;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸及び/又はその塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)及び/又はその塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及び/又はその塩などのホスホン酸系化合物;A型ゼオライト、B型ゼオライトなどのアルミノケイ酸などが挙げられ、中でもニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、トリポリリン酸塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸及び/又はその塩が好ましい。
【0020】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物中の成分(D)の濃度は、コスト及びバイオフィルム除去効果の観点から、0.001〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜5重量%、さらに好ましくは0.005〜3重量%である。
【0021】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物の剤型としては、用途、目的に応じて、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶剤に溶かした溶液、あるいは固体、ゲル状、乳化・分散状、粉末状、エアゾールなどが挙げられ、これらから適宜選択することができる。
【0022】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物の製品形態中の濃度としては、用途、剤型により適宜決定することができるが、製品化難易度と効果の観点から、(A)成分及び(B)成分を含有する場合は、(A)及び(B)成分の合計で0.01〜60重量%が好ましく、0.02〜40重量%がより好ましく、0.02〜20重量%がさらに好ましく、0.02〜10重量%がさらにより好ましく、0.02〜2重量%が特に好ましい。
また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する場合は、(A)、(B)及び(C)成分の合計で0.01〜60重量%が好ましく、0.02〜40重量%がより好ましく、0.02〜20重量%がさらに好ましく、0.02〜10重量%がさらにより好ましく、0.02〜2重量%が特に好ましい。
【0023】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物成物の剤型としては、用途、目的に応じて、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶剤に溶かした溶液、あるいは固体、ゲル状、乳化・分散状、粉末状、エアゾールなどが挙げられ、これらから適宜選択することができ、作用濃度に合わせた製品形態はもちろんのこと、高濃度の製品形態にしておき、使用場面において希釈する、あるいは使用場面において、必要により、界面活性剤やアルカリ剤を配合し使用することも可能である。
【0024】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、増粘剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、蛍光剤、賦形剤、ソイルリリース剤、漂白剤、漂白活性化剤、粉末化剤、造粒剤、コーティング剤などを配合することができる。
【0025】
本発明のバイオフィルム除去剤組成物はバイオフィルムの危害が懸念される広い分野に使用することが可能である。例えば菌汚染リスクの高い食品製造又は飲料製造プラント用洗浄剤、台所、厨房、浴室、便器、台所又は厨房などの排水溝、排水管に応用できる。また、産業用の冷却タワーなどの冷却水系、脱塩装置、パルプ及び紙製造系や浴槽、プール、人工池などの循環水系路に応用できる。バイオフィルムが形成しやすい医療機器、例えば内視鏡やカテーテル、人工透析機等の洗浄剤にも応用できる。更に、入れ歯ケア剤、コンタクトレンズ洗浄剤などに使用することも可能である。
【0026】
本発明のバイオフィルムの除去方法としては、バイオフィルムを形成した面にバイオフィルム除去剤組成物を接触させることにより行うことができる。接触させる方法としては、浸漬、塗布あるいは散布するなどがある。さらに、スポンジ、タオル、ブラシ、水流などの物理力を加えてもよい。また、バイオフィルム除去剤組成物を作用させておく時間は、付着しているバイオフィルムの量、バイオフィルム除去剤組成物を作用させる濃度、作用温度、物理力の有無により異なるが、通常は数秒から数時間の範囲であり、作業性も考慮すると、好ましくは10秒以上、より好ましくは10秒〜1時間であり、さらに好ましくは10秒〜30分であり、さらにより好ましくは20秒〜20分である。作用後は流水などにより、除去されたバイオフィルムを速やかにすすぎ流すことが望ましい。
また、バイオフィルム除去剤組成物を作用させておく温度は、0〜98℃で使用できるが、作業環境、作業性等の観点より0〜60℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
本発明のバイオフィルム除去剤組成物は水希釈系で用いてもよく、該組成物の水希釈物を一定量溜めて対象物を浸漬して使用したり、対象物が広範に亘る場合には、スプレー機器を用いてミストを吹き付けたり、発泡機を用いて泡状にしたものを吹き付けたりしてもよい。又、該組成物の水希釈液を流したり、はけ等により塗布してもよい。
その他、タオルなどに該水希釈液を含浸させて、対象物を拭き取っても良い。該組成物の水希釈液は、その使用時の成分(A)の重量濃度が0.005〜5重量%となるのが好ましく、0.01〜3重量%となるのがより好ましく、0.02〜2重量%となるのが好ましい。
【実施例】
【0027】
実施例1
<バイオフィルム除去能の検定>
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)、および環境単離菌であるアシネトバクター(Acinetobacter baumannii)をそれぞれLB培地[日本ベクトン・ディッキンソン(株)製]を用いて、37℃、18時間の前培養して増殖した菌液1mLを99mLのMHB培地[日本ベクトン・ディッキンソン(株)製]に加えて菌液を調製した。この菌液を96ウェルノントリートメントプレート平底[ベクトン・ディッキンソン(株)製]の各穴に150μL注入し、37℃、18時間培養してバイオフィルムを形成させた。その後、菌液を抜き出し、イオン交換水200μL注入し3分後に抜き出す。このすすぎ工程操作を3回繰り返し、試験に用いるバイオフィルムサンプルを調製した。
その後、表1に示すバイオフィルム除去剤組成物を200μL注入し、20℃で10分間静置後試験液を抜き出す。その後、イオン交換水200μL注入し、抜き出す、すすぎ工程を1回行った。
洗浄されなかったバイオフィルムを定量するために、0.1%クリスタルバイオレット200μL注入し、5分後に抜き出す。更にイオン交換水200μLを注入して抜き出すすすぎ工程を3回行う。
最後にエタノール200μLを注入し、Wellreader[生化学工業(株)製]を用
いてこの溶液の570nmでの吸光度を測定した。同様にバイオフィルム除去剤組成物を作用させていないウェルについて0.1%クリスタルバイオレットで処理後、吸光度を測定し初期値とした。また、96ウェル中にミューラーヒントン培地を各150μL注入するが菌が存在しないものを同様に行い、吸光度を測定してブランク値とした。各試験は8回行い平均した値を用いた。除去率は下記の式にて算出した。表中の濃度は全量に対する有効分濃度(重量%)で示した。
【0028】
除去率(%)=100×[{(初期値−ブランク値)−(測定値−ブランク値)}/(初期値−ブランク値)]
【0029】
得られたバイオフィルム除去率を表1に示した。
【表1】

【0030】
実施例2
バイオフィルム作成は実施例1と同様の方法で行った。
その後、表2で示すバイオフィルム除去剤組成物を200μL注入し、20℃で所定時間静置後試験液を抜き出す。その後、イオン交換水200μL注入し、抜き出すすすぎ工程を1回行った。
バイオフィルム残存量の判定は実施例1と同様の方法で行った。
結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
以上の結果より、本発明のバイオフィルム除去剤組成物を用いることによりバイオフィルムを良好に除去できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
[-(CH2m-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-]n (1)
(式中、mは5〜10、nは4〜20の数を示す。)
で表わされる化合物又はその塩を含有するバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項2】
成分(A)が、ポリヘキサメチレンビグアニジン又はその塩である請求項1記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項3】
さらに(B)界面活性剤を含有する請求項1又は2記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項4】
さらに(C)アルカリ剤を含有する請求項1〜3いずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項5】
組成物のpHが9以上である請求項1〜4いずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項6】
(B)の界面活性剤が、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5いずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載のバイオフィルム除去剤組成物をバイオフィルムに接触させる、バイオフィルムの除去方法。

【公開番号】特開2010−275395(P2010−275395A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128138(P2009−128138)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】