説明

バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置

【課題】流動層方式の炭化炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する際に、バイオマス炭の収率を効率的に向上可能な、バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置を提供すること。
【解決手段】流動層方式の炭化炉10を用いてバイオマス1を炭化してバイオマス炭を製造する方法であって、炭化炉10から排出される炭化の際に発生するタールを含有する排出ガス3を用いてバイオマス炭を気流搬送して炭化物充填槽21に回収して炭化物充填槽21にバイオマス炭の充填層29を形成し、バイオマス炭の充填層29の上部から下部に排出ガス3が通過することによりタールをバイオマス炭に接触させて、タールの少なくとも一部をバイオマス炭に付着させることを特徴とするバイオマス炭2の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化防止の観点からCO2排出量削減が緊急の課題である。CO2排出量削減の方法として、インプットの炭素量を削減する、アウトプットのCO2を回収する、従来の石炭・石油等をカーボンフリーの炭素源に代替する等の技術開発が行われている。カーボンフリーの炭素源としてはバイオマスが知られている。バイオマスとしては、建築家屋の解体で発生する木材廃棄物、製材所発生の木質系廃棄物、森林等での剪定廃棄物、農業系廃棄物などがある。その処理利用方法としては、埋立て、放置、焼却、燃料等が主なものである。また、燃料利用を目的としたバイオ燃料作物も知られている。
【0003】
一方で、このようなバイオマスを熱分解して可燃性ガスや炭化物(バイオマス炭)を製造して再利用する技術も知られている。
【0004】
特許文献1には、バイオマスを加熱乾留することにより得られる炭化物に対し、加熱時に発生する揮発分を循環吸収させて高発熱量炭化物を製造する方法として、バイオマスを200〜500℃で加熱乾留することにより得られる炭化物と揮発分とを分離回収した後、冷却により生成した液状揮発分に120〜350℃の炭化物を浸漬して、揮発分を吸収させる高発熱量炭化物の製造方法や、バイオマスを200〜500℃で加熱乾留することにより得られる炭化物と揮発分とを分離回収した後、ガス状の揮発分に250℃以下に冷却した炭化物を接触させて、水より高沸点の揮発分を吸収させる高発熱量炭化物の製造方法などが記載されている。また、バイオマスを200〜500℃で加熱乾留することにより得られる炭化物と揮発分とを分離回収し、冷却した揮発分に冷却した炭化物を接触させた後、120〜350℃で加熱することにより水分を除去して高発熱量炭化物を製造する方法も記載されている。
【0005】
特許文献2には、有機物を燃焼用空気の非供給下で熱分解して無定形炭素(炭化物)を生成し、熱分解途上の有機物から発生する可燃性ガスと気体状のタールとを含む未処理ガスを、高温で無定形炭素に流通させて、タールをほぼ完全に熱分解してタールが除去された処理ガスを得る有機物の処理方法が記載されている。特許文献2においては熱分解炉としてロータリーキルンを用い、ロータリーキルンの出口付近で有機物の熱分解で発生したガスを炭化物に接触させてタールの分解を行なうものである。この技術は、炭化物にタールを接触させて、1000℃付近の高温でタールを分解して可燃性ガスを得ようとするものである。
【0006】
バイオマスを乾留、あるいは熱分解して炭化物を得るためには、上記のように炭化炉が使用される。運転方式、炉の形式や形状などで、バッチ方式、連続式に分類され、ロータリーキルン方式、流動層方式等による各種の炉が炭化炉として使用されている。特許文献3には、流動層にて廃棄物を熱分解して炭化し、炭化物を製造する流動層炭化装置が記載されている。
【0007】
また加熱熱源としてはバイオマス乾留により得られる発生ガス、タールを燃焼させ、それを熱源とすることが知られている。加熱の方式としては、バイオマスを前記燃焼ガスなどの高温ガスで直接加熱する方式(熱風循環式)や、ロータリーキルン等のように炉外部から間接加熱する方式(外熱式)、炉内部で発生ガスを燃焼させ直接加熱する方式(内熱式)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−213273号公報
【特許文献2】特許第3781379号公報
【特許文献3】特開2003−213270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
流動層方式の炭化炉は炉内温度が均一であり、製造される炭化物の成分や発熱量が安定して、性状にばらつきの少ない炭化物を製造することができる。流動層方式の炭化炉内で内容物を加熱して炭化すると、乾留による熱分解により、炭化物の生成と同時にガス、タール等も発生する。これらのガスやタールも有効利用することは可能であるので、特許文献2に記載の技術のように積極的にガス化を促進する場合もあるが、炭化物の製造という観点では、原料中の炭素分がガスやタール化することで、炭化物の収率が低下することになる。特許文献2に記載のように1000℃近い温度でタールを熱分解すると、ほとんどがガスに転化し、タールから得られる炭化物の収率はせいぜい数mass%である。
【0010】
炭化物であるバイオマス炭の収率を向上させるために、上記の特許文献1に記載のようにバイオマスの炭化時に発生するタールやガスを炭化物に吸収させる方法がある。しかし、特許文献1に記載のように揮発分を分離回収する方法は効率的でない。また、特許文献1に記載の方法を、そのまま流動層方式の炭化炉に適用して実施することは困難である。
【0011】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、流動層方式の炭化炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する際に、バイオマス炭の収率を効率的に向上可能な、バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)流動層方式の炭化炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法であって、
前記炭化炉から排出される前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを用いてバイオマス炭を気流搬送して炭化物充填槽に回収して該炭化物充填槽にバイオマス炭の充填層を形成し、該バイオマス炭の充填層の上部から下部に前記排出ガスが通過することにより前記タールを前記バイオマス炭に接触させて、前記タールの少なくとも一部を前記バイオマス炭に付着させることを特徴とするバイオマス炭の製造方法。
(2)炭化物充填槽から排出されたガス中からタールを分離し、該分離したタールを前記炭化物充填槽および/または炭化炉に供給することを特徴とする(1)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(3)炭化物充填槽を通過したガスを空気比1未満で燃焼させて熱風を発生させて、該発生した熱風を炭化炉に供給することを特徴とする(1)または(2)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(4)流動層方式の炭化炉と、
前記炭化炉の上部から排出されて気流搬送されるバイオマス炭と、前記炭化炉からの排出ガスとバイオマス炭とを接触させる炭化物充填槽と、
前記炭化物充填槽を通過したガスを空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機と、
前記部分燃焼機の燃焼で発生したガスを炭化炉の下部に供給するガス流路と、を備えることを特徴とするバイオマス炭の製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流動層方式の炭化炉を用いて、バイオマスを炭化してバイオマス炭を効率的に製造することができ、バイオマス炭の収率を向上させることが可能となる。
【0014】
また、タールが有効利用され、タール処理の負担も軽減する。乾留生成物を軽質化でき、排ガス処理工程も軽減可能となる。これにより、バイオマスの再利用が促進されて、CO2排出量削減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のバイオマス炭の製造方法の一実施形態を示す図。
【図2】実施例1における比較例のバイオマス炭の製造方法を示す図。
【図3】実施例2で用いたバイオマス炭の製造方法を示す図。
【図4】炭化物充填槽の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
バイオマスとは、ある一定量集積した動植物資源とこれを起源とする廃棄物の総称(ただし、化石資源を除く)であり、本発明で用いるバイオマスには、農業系、林業系、畜産系、水産系、廃棄物系等の、熱分解して炭化物を生成するあらゆるバイオマスを用いることができる。有効発熱量の高いバイオマスを用いることが好ましく、木質系バイオマスを用いることが好ましい。木質系バイオマスとしては、パルプ黒液、チップダスト等の製紙副産物、樹皮、のこ屑等の製材副産物、枝、葉、梢、端尺材等の林地残材、スギ、ヒノキ、マツ類等の除間伐材、食用菌類の廃ホダ木等の特用林産からのもの、シイ、コナラ、マツ等の薪炭林、ヤナギ、ポプラ、ユーカリ、マツ等の短伐期林業等の林業系バイオマスや、市町村の街路樹、個人宅の庭木等の剪定枝条等の一般廃棄物や、国や県の街路樹、企業の庭木等の剪定枝条、建設・建築廃材等の産業廃棄物等が挙げられる。農業系バイオマスに分類される、廃棄物・副産物を発生源とする籾殻、麦わら、稲わら、サトウキビカス、パームヤシ等や、エネルギー作物を発生源とする米糠、菜種、大豆等の農業系バイオマスの一部も木質系バイオマスとして好適に用いることができる。
【0017】
本発明では、炭化炉として流動層方式の反応器を用いてバイオマスを炭化して、炭化物であるバイオマス炭を製造する。流動層方式の炭化炉は、加熱した流動媒体により形成される流動層にてバイオマス等の原料を熱分解して炭化し、炭化物を製造する装置である。流動層を形成する高温の流動媒体としては、雰囲気ガス、流動砂等を用いることができる。
【0018】
バイオマスを炭化する際の炭化とは、空気(酸素)の供給を遮断または制限して加熱し、気体(木ガスとも呼ばれる)、液体(タール)、固体(炭)の生成物を得る技術を言う。加熱温度、加熱時間を変化させることで、得られる気体、液体、固体の成分や割合が変化する。本発明ではバイオマスを粉砕して流動層に投入して加熱して炭化させ、炭化の際に発生する排出ガス中のタールを、排出ガスおよび炭化物とともに炭化物充填槽に回収し、排出ガスがバイオマス炭の充填槽の上部から下部を通過することにより炭化物充填槽内でタールの少なくとも一部を炭化物に接触させて、付着させる。ここで、バイオマス炭の充填槽の上部および下部とは、相対的に上下関係にあれば良いが、排出ガス中のタールと炭化物の接触効率を向上させるためにできるだけその距離を確保する方が良い。なお、上部とは充填槽中でバイオマス炭が充填されていない上部空間であり、下部とは充填槽の底部または側方の下部分であることが好ましい。これによりタールがバイオマス炭として回収され、バイオマスの炭素収率が向上する。なお、一般的に、バイオマスを熱分解して得られるタールとは、熱分解して得られる液体を言う。
【0019】
バイオマスを粉砕することで、生成される炭化物も微細化し、比表面積が増大する。これにより、タール分が炭化物に付着しやすくなるため、炭素収率が従来以上に向上する。バイオマスは、粒径2mm以下に粉砕することが好ましい。粒径1mm以下とすることが更に好ましい。特に好ましくは粒径1〜0.5mmである。バイオマスを微粉砕しすぎると、炭化物充填槽のフィルターに目詰まりが発生する恐れがある。なお、ここで粒径2mm以下とは目開き2mmの篩を通過する篩下を意味するものであり、粒径1〜0.5mmとは目開き1mmの篩下であって、かつ目開き0.5mmの篩上となるもののことである。
【0020】
炭化物充填槽を通過したガスは、空気比1未満で燃焼(いわゆる不完全燃焼)後に、熱風として流動層式炭化炉に吹き込むことが好ましい。また、炭化物充填槽を通過したガス中からタール分を一部分離してから、熱風と共に流動層式炭化炉に吹き込んでも良い。熱風と共に吹き込まれたタールはバイオマスに付着し、炉内で加熱されることで炭化され、製造されるバイオマス炭はタールが付着しただけの状態に比べて、より酸素含有率が低く、発熱量が高くなり、反応性が低く発火性も低下して安全性が高まり、品質が向上する。
【0021】
流動層式の炭化炉に吹き込む熱風には、外部発生のタールを追加することも可能である。外部発生のタールとしては、炭化する余地のある、バイオマス由来のタールを用いることが好ましく、バイオマスを700℃以下で熱分解して発生するタールを用いることが特に好ましい。
【0022】
炭化物充填槽から吸引した吸引ガスは、部分燃焼機で空気比1未満で燃焼後、別途燃焼機等で燃焼させて高温の廃ガスとして、熱回収などに利用することができる。
【0023】
炭化炉中の流動層の高さ(熱風吹き込み位置から流動層表面までの高さ)は、2m以上、15m未満とすることが好ましい。バイオマスが加熱される部分の高さが低すぎると、熱交換が非効率で、タールによる収率向上の効果も少ない。一方で、バイオマスが加熱される部分の高さが高すぎると、圧力損失が大きくなりすぎ、設備コストが増大する。
【0024】
本発明の一実施形態を図1を用いて説明する。
【0025】
炭化炉10は、流動層11を有する流動層式の反応器である。炭化炉10には、原料1が供給され、炉内で流動媒体と共に充填層11を形成する。
【0026】
原料1は、熱風5により加熱されることで熱分解され、熱分解生成物が生成し、炉外に排出される。熱分解生成物には、炭化物、ガス、タールが含まれる。上述した排出ガスは、炭化炉を通過した熱風と熱分解生成物中のガスとタールからなるものであり、炭化炉からは排出ガスおよび炭化物(バイオマス炭)3が排出される。
【0027】
熱分解生成物は、炭化物充填槽21に供給され、固体である炭化物と、ガスおよびタールに分けられる。炭化物充填槽の一例を図4に示す。炭化物充填槽21の底部にはフィルター41が備えられ、フィルター41を通してガス及びタールを吸引し、吸引ガス4を得る。また、炭化物は炭化物層29を形成してフィルター上に堆積し、炭化物2として適宜切り出し部(ロータリー弁)42より切り出される。以上により、炭化物充填槽21では固体と気体(一部液状のタールを含む)の分離と、炭化物へのタールの付着および冷却とが行なわれる。なお、炭化物充填槽は上記の機能を有すれば、どのような形態のものであっても良い。
【0028】
吸引ガス4は、空気25と共に部分燃焼器22に送られ、燃焼される。ここで、空気25の量は空気比1未満で、無酸素或いは極めて低酸素(例えば、1vol%未満)の熱風26を発生させる。熱風を所定の温度まで昇温させるのにあたって、通常のバイオマス原料を使用すれば空気比1未満で可能であるが、0.5以上であることが好ましい。また、熱風中にタールを残すためには、空気比0.8以下であることが好ましい。
【0029】
部分燃焼器22で発生した熱風26の一部は、炭化炉10に熱風5として送られ、炭化の為の熱源とする。
【0030】
部分燃焼器22で発生した熱風26の一部は、燃焼器23にて、空気27と混合して残留する可燃ガス成分を燃焼させ、廃ガス28を排出する。
【0031】
原料1には、上記のような各種の木質系バイオマスを用いることが好ましい。もちろん、熱分解して炭化物を生成するものであれば、木質系バイオマス以外であっても良い。
【0032】
原料1の形態としては、熱分解を受けて炉外に気流搬送されるように粉砕された状態とする必要があり、粉砕されたものとする。原料1のバイオマスの粒径は、2mm以下であるものが好ましい。
【0033】
熱風5の温度は400〜1200℃とする。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは600〜1000℃である。
【0034】
生成する熱分解生成物の温度は300〜700℃程度とする。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは400〜700℃であり、更に好ましくは400〜600℃である。
【0035】
炭化物充填槽21で、炭化物層29を通してガス及びタールを通気させる際に、タールが炭化物層29内の炭化物に吸着して炭化物2の収率が向上する。
【0036】
吸引ガス4からタールを分離して、炭化物充填槽21内に供給したり、炭化炉10に供給したり、熱風5に混合して炭化炉10に吹き込んだりすることで、炭化物にタールを吸着させて、炭化物の収率を一層向上させることができる。炭化炉10に供給されたタールは、炭化炉10内で炭化されて、炭化物上に析出する。タールは炭化により酸素含有率が低く、発熱量が高くなり、反応性が低く発火性も低下して安全性が高まり、品質の向上したものになる。タールの分離は、吸引ガス4を、分離機にてガス、酢液、タールに分離することで行なうことが好ましい。ここで得られるタールは、バイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物である。分離機の形態としては、酢液の凝縮温度以下の温度で、酢液およびタールを液相に、ガスを気相に分離させることができ、液相を水相(酢液相)と油相(タール相)に分離させることが出来る構造であれば、特に限定しない。水相には水溶性の有機物も含まれる。分離機では、必要に応じて冷却することで、分離効率を高めることが出来る。
【0037】
炭化物2の収率向上を効果的なものにするために、炭化物充填槽21内のガスおよびタール温度は50〜200℃とすることが好ましく、70〜150℃に制御されることがさらに好ましい。温度が高すぎるとタールの吸着の効率が低下し、温度が低すぎると水分の凝縮が顕著になり支障が生じるためである。
【0038】
廃ガス28の熱は、原料1の乾燥等に利用することが出来る。
【0039】
本発明の他の一実施形態を図1を用いて説明する。
【0040】
炭化炉10は、流動層11を有する流動層式の反応器である。上記の実施形態では流動層11が流動媒体を原料として形成されているのに対して、本実施形態では微粉砕された原料1と熱分解途中の炭化物のみにより充填層を形成するものである。流動媒体を用いないため、流動層より炭化物を共に飛散してくる流動媒体を炭化物充填槽で炭化物と分離する必要が無く装置構成が簡単になるという利点がある。
【0041】
上記の本発明方法に用いる装置としては、流動層によりバイオマスを炭化して炭化物を製造する炭化炉と、該炭化炉の上部から気流搬送された、炭化炉で炭化の際に発生する排出ガスと炭化物とを充填する炭化物充填槽と、該炭化物充填槽から吸引したガスを空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機とを有し、該部分燃焼機の燃焼で発生したガスを炭化炉の下部に供給するガス流路を備えることを特徴とするバイオマス炭の製造装置を用いることができる。ここでのガス流路は、部分燃焼機で発生するガスの少なくとも一部を炭化炉下部に供給する配管(ダクト、煙道)等であれば良い。
【実施例1】
【0042】
図1に示すものと同様の設備を用いて、バイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0043】
炭化物充填槽21で炭化物層29を通してガスを吸引するようにしてタールを炭化物充填槽21内でバイオマス炭に付着させてから、吸引ガス4を部分燃焼機22に供給した場合(本発明例)と、炭化物充填槽21から炭化物層29を通過させない状態で分離したガスを部分燃焼機22に供給した場合(比較例)とで、炭化物2の収率を比較した。
【0044】
原料1として、パーム油を生成する過程で発生するアブラヤシの空果房(EFB)からなるバイオマス系の残渣を用いた。EFBの含水率は10mass%であった。このバイオマスを粒径2mm以下に粉砕した。炭化炉10の炭化温度は400℃とした。
【0045】
(本発明例)熱分解生成物は炭化物充填槽21に送られ、炭化物層29が形成され、その炭化物層29を通してガスが通過するように吸引ガス4を吸引した。炭化物充填槽21内の温度は140℃であった。吸引ガス4を部分燃焼機22で燃焼して発生した熱風5の温度は1040℃であった。
【0046】
乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造された炭化物2の質量流量は0.27であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は27%であった。
【0047】
(比較例)熱分解生成物は炭化物充填槽21に送られたが、タールを含むガスは、図2に示すように炭化物層29を通らないまま部分燃焼機22に送られた。送られたガスを部分燃焼機22で燃焼して発生した熱風5の温度は1020℃であった。
【0048】
乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造された炭化物6の質量流量は0.24であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は24%であった。
【0049】
本発明方法を用いることで、炭化物収率が向上した。
【実施例2】
【0050】
図3に示すものと同様の設備を用いて、実施例1の本発明例の場合と同様にして、更に吸引ガス4中からタールを分離機にてガス、酢液、タール30に分離して、タール30を熱風5とともに炭化炉10に吹き込んだ。その結果、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造された炭化物2の質量流量は0.28であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は28%であった。
【0051】
タールを炭化炉10内のバイオマスに付着させて炭化させることで、炭化物収率が一層向上した。
【0052】
なお、炭化物充填槽の一例として図4に示す形態のものが使用できる他、上記の炭化物充填槽での機能を有すればどのような形態のものであっても良いことは、上記した図1における説明の場合と同様である。
【実施例3】
【0053】
バイオマスを粒径1mm以下に微粉砕して、実施例1の本発明例と同様にしてバイオマス炭の製造試験を行なった。
【0054】
乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造された炭化物2の質量流量は0.30であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は30%であった。
【0055】
バイオマスを微粉砕することで、炭化物比表面積が増大し、よりタール分が炭化物表面に付着し易くなり、結果的に炭素収率が増加する収率が一層向上した。
【0056】
一方で、バイオマスを粗粒径(5mm程度)とした場合には流動層炭化炉内で生成される炭化物は排出ガスと共に飛散はせず、流動媒体内に留まった。この場合、炭化炉に吹き込む熱風にタールを混合することでバイオマスにタールを付着させ、炭化物収率を向上させることができた。しかしこの場合は、炭化物の排出は流動媒体と共に炭化炉下部より抜き出すことが必要となった。炭化物と流動媒体とが混合状態で排出されるため、両者の分離には比重分離などの新たな機構が必要となる。したがって、バイオマスの微細化は収率向上と共に装置の簡素化としても有効であることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0057】
1 原料
2 炭化物
3 排出ガスおよび炭化物
4 吸引ガス
5 熱風
10 炭化炉(流動層方式)
11 流動層
21 炭化物充填槽
22 部分燃焼器
23 燃焼器
25 空気
26 熱風
27 空気
28 廃ガス
29 炭化物層
30 タール
41 フィルター
42 切り出し部(ロータリー弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層方式の炭化炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法であって、
前記炭化炉から排出される前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを用いてバイオマス炭を気流搬送して炭化物充填槽に回収して該炭化物充填槽にバイオマス炭の充填層を形成し、該バイオマス炭の充填層の上部から下部に前記排出ガスが通過することにより前記タールを前記バイオマス炭に接触させて、前記タールの少なくとも一部を前記バイオマス炭に付着させることを特徴とするバイオマス炭の製造方法。
【請求項2】
炭化物充填槽から排出されたガス中からタールを分離し、該分離したタールを前記炭化物充填槽および/または炭化炉に供給することを特徴とする請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項3】
炭化物充填槽を通過したガスを空気比1未満で燃焼させて熱風を発生させて、該発生した熱風を炭化炉に供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項4】
流動層方式の炭化炉と、
前記炭化炉の上部から排出されて気流搬送されるバイオマス炭と、前記炭化炉からの排出ガスとバイオマス炭とを接触させる炭化物充填槽と、
前記炭化物充填槽を通過したガスを空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機と、
前記部分燃焼機の燃焼で発生したガスを炭化炉の下部に供給するガス流路と、
を備えることを特徴とするバイオマス炭の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222473(P2010−222473A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71483(P2009−71483)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】