説明

バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置

【課題】竪型炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する際に、バイオマス炭の収率を向上可能であって、しかもバイオマス炭の品質の低下の少ない、バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置を提供すること。
【解決手段】バイオマス炭の製造方法は、バイオマス1を炭化し、バイオマス炭と、タールを含有する排出ガス3とを生成し、排出されたガス3中のタールの少なくとも一部をバイオマス1及び/又はバイオマス炭に接触させ、タール4が付着して炭化物として析出したバイオマス炭2を製造することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止の観点から二酸化炭素の排出量削減が緊急の課題である。二酸化炭素排出量削減の方法として、以下の技術開発が行われている。
・インプットの炭素量を削減する。
・アウトプットの二酸化炭素を回収する。
・従来の石炭・石油等をカーボンフリーの炭素源に代替する。
【0003】
カーボンフリーの炭素源としてはバイオマスが知られている。バイオマスとしては、建築家屋の解体で発生する木材廃棄物、製材所発生の木質系廃棄物、森林等での剪定廃棄物、農業系廃棄物などがある。その処理利用方法としては、埋立て、放置、焼却、燃料等が主なものである。また、燃料利用を目的としたバイオ燃料作物も知られている。
【0004】
一方、鉄鋼業において、特に製銑工程は石炭を還元材として鉄鉱石を還元するプロセスである。また、製鋼工程では精練に必要な熱を石炭等で供給している。従って、鉄鋼業では炭素源の使用が必須である。一方、バイオマスは炭素、酸素、水素から構成されているが、バイオマス自体は高含水率、低廃熱量(例えば、水分15mass%、発熱量16.2MJ/kg−乾燥基準)であり、直接鉄鋼プロセスで使用することは効率面で有利ではない。そのため、バイオマスを乾留し、脱水、脱炭酸等の処理を施し、水分を除去、発熱量を高めて鉄鋼プロセスで使用する方法がある。乾留により脱水、脱ガス(脱炭酸、脱メタン、タール発生等)が起き、バイオマス中の炭素分が、ガスおよびタール分として発生するため、固体として残留する炭素分(バイオマス炭)は少ない。鉄鋼プロセスで石炭代替として、このような乾留後に固体として残留する炭素分をバイオマス炭として効率よく利用するためには、高収率でバイオマス炭を製造する必要がある。
【0005】
このようなバイオマスを熱分解して可燃性ガスや炭化物(バイオマス炭)を製造して再利用する技術も知られている。
【0006】
特許文献1は、バイオマスを加熱乾留することにより得られる炭化物に対し、加熱時に発生する揮発分を循環吸収させて高発熱量炭化物を製造する方法を開示している。
【0007】
特許文献2は、有機物を燃焼用空気の非供給下で熱分解して無定形炭素を生成し、熱分解途上の有機物から発生する可燃性ガスと気体状のタールとを含む未処理ガスを、大気圧下で800〜1000℃の温度で無定形炭素に流通させて、タールをほぼ完全に熱分解してタールが除去された処理ガスを得る有機物の処理方法を開示している。
【0008】
特許文献3は、竪型炉に投入された廃棄物をガス吹き込みノズルより吹き込まれた加熱ガスの接触で熱分解させ、炉内で炭化物と熱分解ガスに分離させるようにした廃棄物の熱分解処理装置を開示している。
【0009】
特許文献4は、箱状炉の炉体の中に木炭の原料を充填して、加熱し乾燥、乾留、炭化し、木炭を製造する木炭製造装置を開示している。
【0010】
特許文献5は、原料の装入口と炭の排出口とを有する箱型の炉本体と、該本体内に設けられた横断面が四角形の炭化室と、該炭化室内の木質材が加熱されて発生する可燃ガスをその上部空間で燃焼させる燃焼室と、該燃焼室内に空気を吹き込む羽口と、該羽口からの空気吹込み量を調節する手段と、前記炭化室の側面又は底面とに設けられた伝熱壁とを有する炭化炉を開示している。
【0011】
特許文献6は、ロータリーキルンまたはロータリードライヤーで木材を300〜1000℃、酸素濃度10%以下で加熱し、加熱で発生するガスを前記ロータリーキルンまたは前記ロータリードライヤーと連結した燃焼炉で燃焼させる木材の炭化方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−213273号公報
【特許文献2】特許第3781379号公報
【特許文献3】特開2001−131557号公報
【特許文献4】特開平03−122191号公報
【特許文献5】特開2007−146016号公報
【特許文献6】特開2002−241762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の方法でバイオマス炭を製造すると、バイオマス炭の収率は付着したタール等の分だけ向上する。しかし、液状揮発分を吸収させる方法で得られる炭化物の表面は粘着性で、取り扱いが困難なものであると考えられる。一般的に、バイオマスを熱分解して得られるタールは、熱分解して得られる液体であるが、バイオマスの炭化物の発熱量が約30MJ/kgであるのに対し、タールは最大約10MJ/kgであり重油の半分以下である。また、バイオマスを熱分解して炭化物が得られる際に、バイオマス中の酸素分の多くはタール分や揮発分としてバイオマスから脱離するために、炭化物中の酸素含有率は10mass%未満であるのに対し、タール中の酸素含有率は20mass%を超え、40mass%近くなる場合もある。酸素分の高い、反応性の高いタールは発火性も高く、安全上の問題もある。
【0014】
以上のように、タール分は炭化物と比較すると、酸素含有率が高く、発熱量が低く、高粘性で、反応性が高く安定性が低いため、バイオマス炭に付着させることはバイオマス炭の品質を低下させることになる。
【0015】
特許文献2は、無定形炭素と可燃性ガスとを生成するにあたり、タールを水蒸気改質によらずに分解することで、可燃性ガスの収量を増大することを目的としている。炭化物の製造という観点では、原料中の炭素分がガスやタール化することで、炭化物の収率が低下することになる。特許文献2に記載のように1000℃近い温度でタールを熱分解すると、ほとんどがガスに転化し、タールから得られる炭化物の収率はせいぜい数mass%である。
【0016】
特許文献3は、竪型炉でバイオマス等を炭化して炭化物を製造している。通常、炉下部から無酸素の高温ガスを送風して内容物を加熱することで行なうが、この乾留による熱分解により、炭化物の生成と同時にガス、タール等も発生する。これらのガスやタールも有効利用することは可能であるので、炭化物の製造という観点では、原料中の炭素分がガスやタール化することで、炭化物の収率が低下することになる。
【0017】
特許文献4〜6に記載の従来技術においては、以下の(a)〜(d)の課題がある。
【0018】
(a)バッチ方式およびロータリーキルン方式とも加熱温度、雰囲気条件等を制御することでのみバイオマスを炭化する方法である。炭化されたバイオマス(バイオマス炭)の収率は、バッチ方式で約25mass%、ロータリーキルン方式で約20mass%であり、それ以上にバイオマス炭の収率を向上させることは難しい。
【0019】
(b)発生するガスおよびタールを燃焼させ、バイオマスの乾留の熱源とすると、ガスやタール分はバイオマス炭として回収できない。発生するタールは積極的にバイオマス炭に変換することが望ましい。
【0020】
(c)特許文献4、5のバッチ方式においては、連続プロセスでないため、炭化に5時間以上を要し、経済的でない。
【0021】
(d)バイオマス乾留生成物中には、軽質ガス以外に木酢および重質炭化水素(タール)成分も発生し、タール成分を完全燃焼するためには空気比、温度等の管理が必要となる。また、燃焼処理を行わず、乾留生成物を別途利用するためにはタール除去等の排ガス処理が必要となる。
【0022】
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、竪型炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する際に、バイオマス炭の収率を向上可能であって、しかもバイオマス炭の品質の低下の少ない、バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)バイオマスを炭化させてバイオマス炭とし、
前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出し、
前記排出ガス中の前記タールの少なくとも一部を前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触させ、
前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触した前記タールの少なくとも一部を炭化物に転化させることからなる、
バイオマス炭の製造方法。
(2)(1)に記載のバイオマス炭の製造方法において、
竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを投入し、
前記竪型炉の底部または前記排出ガスの排出位置より下方である側方下部から熱風を吹き込み、
前記竪型炉内で前記バイオマスを炭化させてバイオマス炭とし、
前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを前記竪型炉の頂部または側方上部から排出し、
前記排出ガス中の前記タールの少なくとも一部を前記竪型炉に吹き込んで前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触させ、
前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触した前記タールの少なくとも一部を炭化物に転化させることからなる、
バイオマス炭の製造方法。
(3)前記排出ガス中の前記タールの少なくとも一部を前記熱風とともに前記竪型炉に吹き込むことからなる、(2)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(4)前記竪型炉の底部または側方下部から冷却用ガスを供給することからなる、(2)または(3)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(5)前記冷却用ガスは前記排出ガスを循環して使用するものである、(4)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(6)前記タールの一部を前記冷却用ガスとともに炉内に供給することからなる、(4)または(5)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(7)前記排出ガスから前記タールを分離し、分離された前記タールを竪型炉に吹き込むことからなる、(2)ないし(6)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(8)前記排出ガスを空気比1未満で燃焼させて、熱風として竪型炉に吹き込むことからなる、(2)ないし(7)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(9)前記バイオマス炭の炭化温度は300〜700℃である、(2)ないし(8)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(10)前記排出ガスの温度は50〜300℃である、(2)ないし(9)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(11)前記熱風は、無酸素または低酸素であって温度が400〜1200℃である、(2)ないし(10)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(12)前記バイオマスの炭化が、竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを前記竪型炉に投入し、竪型炉の底部または側方下部から熱風を吹き込むことにより行われ、
前記排出ガスの排出が、竪型炉の頂部または側方上部から前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出することにより行なわれ、
前記タールの少なくとも一部の接触が、前記炭化の際に発生する排出ガス中のタールの少なくとも一部を前記竪型炉に吹き込むことにより行なわれる、
(1)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(13)(1)に記載のバイオマス炭の製造方法において、
バイオマスを乾留して乾留バイオマスとし、
前記乾留バイオマスに、前記バイオマスの乾留により発生したガスとタールとを接触させて、前記ガスおよび前記タール中の炭素分を前記乾留バイオマスに付着析出させる、
バイオマス炭の製造方法。
(14)前記乾留バイオマスの比表面積が10m2/g以上である(13)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(15)バイオマスの乾留温度が450℃〜700℃であり、ガスとタール中の炭素分を乾留バイオマスに付着析出させる際の温度が450〜700℃である(13)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(16)前記乾留が、ロータリーキルン式乾留炉で行われる、(13)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(17)前記タール中の炭素分の乾留バイオマスへの付着析出が、充填層あるいは移動層方式コーキング炉で行われる、(13)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(18)前記バイオマスの炭化が、バイオマスを乾留し、乾留バイオマスとタールを含有する排出ガスを生成し、前記乾留バイオマスをコーキングすることからなり、
前記タールの少なくとも一部の接触が、前記乾留バイオマスに前記タールを含有する排出ガスを接触させて、前記ガスおよび前記タール中の炭素分を前記乾留バイオマスに付着析出させることからなる、
(1)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(19)互いに接続された2基の乾留炉を有する2塔式の充填移動層方式の炉を用いてバイオマスを乾留してバイオマス炭を製造する方法であって、
一方の乾留炉でのバイオマスの乾留により発生したガスとタールとを他方の乾留炉内のバイオマスに接触させ、
前記他方の乾留炉内のバイオマスの乾留の際に前記ガスおよび前記タール中の炭素分を前記他方の乾留炉内のバイオマスに付着析出させる、
(1)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(20)乾留炉内でのバイオマスの乾留温度を400℃〜800℃とする(19)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(21)乾留炉内でのバイオマスの滞留時間を30分以上とする(19)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(22)前記バイオマスの炭化が、第1の乾留炉でバイオマスを乾留し、ガスとタールを発生させことからなり、
前記タールの少なくとも一部の接触が、第1の乾留炉で発生したガスとタールを第2の乾留炉内のバイオマスに接触させて、第2の乾留炉内のバイオマスの乾留の際に前記ガスおよび前記タールを第2の乾留炉内のバイオマスに付着析出させることからなる、
(1)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(23)バイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する竪型炉と、
前記竪型炉の頂部または側方上部に設けられたバイオマスの投入口と、
前記竪型炉の頂部または側方上部に設けられた排出ガスの排出口と、
前記竪型炉の底部、または前記排出口より下方である側方下部に設けられた熱風の吹き込み口と、
前記排出ガスの少なくとも一部を空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機と、
を有するバイオマス炭の製造装置。
(24)さらに、排出ガスから少なくともガス成分とタールとを分離する分離機を有する、(23)に記載のバイオマス炭の製造装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、竪型炉を用いて、バイオマスを炭化してバイオマス炭を効率的に製造することができ、バイオマス炭の収率を向上させることが可能となる。製造されるバイオマス炭の品質も、タールが単に付着したバイオマス炭に比べて向上する。
【0025】
また、タールが有効利用され、タール処理の負担も軽減する。乾留生成物を軽質化でき、排ガス処理工程も軽減可能となる。これにより、バイオマスの再利用が促進されて、CO2排出量削減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1のバイオマス炭の製造装置の一実施形態を示す図。
【図2】実施の形態1のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【図3】実施の形態1のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【図4】実施の形態1のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【図5】実施の形態1のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【図6】実施の形態1のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【図7】実施の形態2の一実施形態の説明図。
【図8】実施の形態2の他の一実施形態の説明図。
【図9】実施の形態3に係わる2塔式の充填移動層方式の炉を用いたバイオマス炭製造装置の概略図。
【図10】図9の乾留炉の断面図。
【図11】図9の装置を用いた本発明の一実施形態の説明図。
【図12】実施の形態3の実施例で用いた2塔式の充填移動層方式の炉の概略図。
【図13】実施の形態3の他の一実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施の形態1]
バイオマスとは、ある一定量集積した動植物資源とこれを起源とする廃棄物の総称である。ただし、化石資源はバイオマスから除かれる。実施の形態1で用いるバイオマスには、農業系、林業系、畜産系、水産系、廃棄物系等の、熱分解して炭化物を生成するあらゆるバイオマスを用いることができる。有効発熱量の高いバイオマスを用いることが好ましく、木質系バイオマスを用いることが好ましい。
木質系バイオマスとして、以下のものが挙げられる。
・パルプ黒液、チップダスト等の製紙副産物、樹皮、のこ屑等の製材副産物、
・枝、葉、梢、端尺材等の林地残材、
・スギ、ヒノキ、マツ類等の除間伐材、
・食用菌類の廃ホダ木等の特用林産からのもの、
・シイ、コナラ、マツ等の薪炭林、ヤナギ、ポプラ、ユーカリ、マツ等の短伐期林業等の林業系バイオマスや、
・市町村の街路樹、個人宅の庭木等の剪定枝条等の一般廃棄物や、
・国や県の街路樹、企業の庭木等の剪定枝条、
・建設・建築廃材等の産業廃棄物。
【0028】
農業系バイオマスに分類される、廃棄物・副産物を発生源とする籾殻、麦わら、稲わら、サトウキビカス、パームヤシ等や、エネルギー作物を発生源とする米糠、菜種、大豆等の農業系バイオマスの一部も木質系バイオマスとして好適に用いることができる。
【0029】
実施の形態1では、炭化炉として竪型炉を用いてバイオマスを炭化して、炭化物であるバイオマス炭を製造する。竪型炉としては、シャフト炉を用いることが好適である。
【0030】
バイオマスを炭化する際の炭化とは、空気(酸素)の供給を遮断または制限して加熱し、気体(木ガスとも呼ばれる)、液体(タール)、固体(炭)の生成物を得ることを言う。加熱温度、加熱時間を変化させることで、得られる気体、液体、固体の成分や割合が変化する。
【0031】
実施の形態1では炭化の際に発生する排出ガス中のタールを気体とともに回収し、そのタールの少なくとも一部を熱風とともに、バイオマスの炭化を行なう竪型炉に吹き込むことで、タールをバイオマス炭に付着させ、さらにタールの炭化物をバイオマス炭上に析出させて、バイオマス炭の収率を向上させる。バイオマスの炭化で生成したタールが再度竪型炉内で炭化されてバイオマス炭上に析出することで、バイオマス炭はタールが付着しただけの状態に比べて、より酸素含有率が低く、発熱量が高くなり、反応性が低く発火性も低下して安全性が高まり、品質が向上する。
【0032】
ここで言う「タールの炭化物がバイオマス炭上に析出する」とは、「バイオマス炭上でタールの熱分解反応あるいは重合反応が進むことで、バイオマス炭上でタールが炭化物に転化する」ことである。このような熱分解反応あるいは重合反応が起きるには、バイオマス炭の上にタールがまず付着して、そのタールが付着したバイオマス炭が加熱されより高温になることが必要である。実施の形態1の竪型炉内では、タールは炉上部の低温部でバイオマス炭に付着し、そのタールが付着したバイオマス炭が炉下部に降りてきて加熱されてより高温となるので、タールの炭化物がバイオマス炭上に析出することが起きる。
【0033】
バイオマスの炭化で生成したタールが再度竪型炉内で炭化されてバイオマス炭上に析出することで、バイオマス炭はタールが付着しただけの状態に比べて、より酸素含有率が低く、発熱量が高くなり、反応性が低く発火性も低下して安全性が高まり、品質が向上する。実施の形態1のバイオマス炭は従来のタールを付着させないバイオマス炭と同様の30MJ/kg程度の発熱量が得られる。
【0034】
例えば、特許文献1に示すような方法でタールを付着させると、タールの発熱量が10MJ/kg程度であることから、特許文献1における実施例のエネルギー収率向上の割合からタールの付着量を想定して計算すると、14〜20MJ/kg程度の発熱量しか得られないことになる。仮に、特許文献1において、付着したタールがバイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物であったとしても、酢液が除去されたタールの発熱量は最大約20MJ/kgとなり、結果としてバイオマス炭の発熱量は23〜27MJ/kgにとどまる。
【0035】
上記のようにバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造するために、実施の形態1では竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを投入して炉内に充填層を形成し、竪型炉の底部または側方下部から熱風を吹き込むことによりバイオマスを炭化し、竪型炉の上部から炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出し、このタールの少なくとも一部を熱風とともに竪型炉に吹き込みながらバイオマスの炭化を行なう。以下、頂部または側方上部を総称して「上部」と記す。以下、底部または側方下部を総称して「下部」と記す。タールが付着して炭化物として析出したバイオマス炭を竪型炉の下部から排出する。尚、熱風を吹き込む位置は、排出ガスの排出位置より下方とする。バイオマスは熱風の顕熱によって炭化される。なお、ここで側方上部とは竪型炉の高さ方向で上半分の側部を指すが、上方1/4以上であると更に良い。同様に、側方下部とは竪型炉の高さ方向で下半分の側部を指すが、下方1/4以下であると更に良い。
【0036】
タールは排出ガスから分離して、少なくともその一部を竪型炉に吹き込む。排出ガスから分離されたタールの10〜100%を竪型炉に吹き込み、前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触させるのが好ましい。10%以上にすると、炭化収率向上の効果が大きい。排出ガスから分離されたタールの50〜100%を竪型炉に吹き込むのがより好ましい。吹き込む方法は任意であるが、バイオマス充填層(熱風吹き込み位置から充填層表面まで)の下半分の位置に吹き込むことが好ましい。タールを熱風に混合することで熱風とともに吹き込むようにすると、タールが炭化物に転化する効率が高くなり、また設備的にも簡便で好ましい。前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触した前記タールの10〜100%を炭化物に転化させるのが好ましい。10%以上が炭化収率向上の上から望ましい。20〜100%がより望ましい。または、タールを含有する排出ガスのまま部分燃焼させて、少なくともその一部を熱風として用いることで、熱風とともに吹き込むことができる。
【0037】
尚、熱風は任意の発生源のものを用いることが可能であり、熱風炉等で発生させた熱風を用いることも、排出ガスからタールや水を分離したものを部分燃焼させたものを循環して用いることも、排出ガスをそのまま部分燃焼させたものを循環して用いることもできる。
【0038】
竪型炉中のバイオマス炭は高温であるため、切り出して排出したバイオマス炭は冷却することが好ましい。この冷却を容易にするために、竪型炉の下部から炉内に冷却用ガスを供給することが好ましい。冷却用ガスとしては、排出ガスを循環して使用することが好ましく、排出ガスからタールや水を分離した残部のガスを部分燃焼させたものの一部を冷却して用いることもできる。冷却用ガスも、空気(酸素)の供給を遮断または制限したものである必要がある。
【0039】
上記の冷却用ガスには、バイオマスの炭化の際に発生したタールの一部を混合し、竪型炉内に冷却用ガスとともにタールを供給することが好ましい。冷却されるバイオマス炭にタールが付着し、バイオマス炭の収率が向上する。熱風とともに吹き込まれるタールに比較するとその割合は少ないが、冷却用ガスとともに供給されたタールの一部も、炉内で炭化されてバイオマス炭上に析出する。排出ガスを循環して冷却用ガスに使用する場合には、タールは予め冷却用ガスに混合されている状態で吹込まれることになる。
【0040】
熱風や冷却用ガスとともに吹込まれるタールには、外部発生のタールを追加することも可能である。外部発生のタールとしては、炭化する余地のある、バイオマス由来のタールを用いることが好ましく、バイオマスを700℃以下で熱分解して発生するタールを用いることが特に好ましい。
【0041】
排出ガスの残部は、燃料として用いることや、別途燃焼機等で燃焼させて、高温の廃ガスとして、熱回収やバイオマスの乾燥用などに利用することができる。
【0042】
竪型炉中のバイオマスの充填層の高さは、熱風吹き込み位置から充填層表面までの高さである。この充填層の高さは、2m以上、15m未満とすることが好ましい。バイオマスが加熱される部分の高さが低すぎると、熱交換が非効率で、タールによる収率向上の効果も少ない。一方で、バイオマスが加熱される部分の高さが高すぎると、圧力損失が大きくなりすぎ、設備コストが増大する。
【0043】
実施の形態1の一実施形態を図1を用いて説明する。
【0044】
竪型炉である炭化炉10には、木質系バイオマス等の原料1が上部の投入口から供給される。また、熱風5が熱風の吹き込み口である熱風入口11から供給される。熱風5は、炉内充填物の燃焼を招かず、炭化させるために無酸素或いは低酸素である。低酸素とは、例えば、1vol%未満の酸素含有量である。熱風5には、タール4を混合することが出来る。
【0045】
原料1は、炭化炉10内で充填層12を形成し、熱風5により加熱されることで炭化され、下部の切り出し装置13から炭化物2となって排出される。熱風入口11に回転機構等を設置することで、炭化物の切り出しを促すことが出来る。一方、充填層12から発生した排出ガス3は、炉上部の排出口より排出される。発生ガスは、ほぼ無酸素状態であり、タールが混入している。
【0046】
原料1の形態としては、充填層のガス流通に支障が生じないような形態、すなわち5mm〜200mm程度が主体(90mass%以上)の大きさの塊状物とすることが好ましい。なお、ここでの粒径は、200mm以下とは目開きが200mmの篩を通過する篩下であり、5mm以上とは5mmの篩の篩上の状態を言う。
【0047】
原料1が炭化炉10に供給される際に、充填層12の上面はある程度ならされた平坦化状態とすることが好ましい。これは、ガスの偏流を防ぎ効率的な炭化を実現するためである。
【0048】
熱風5の温度は400〜1200℃であるのが望ましい。吹き込み温度が低すぎると原料の炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは600〜1200℃であり、更に好ましくは600〜1000℃である。
【0049】
炭化により生成する炭化物温度は300〜700℃程度が望ましい。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは400〜700℃であり、更に好ましくは400〜600℃である。切り出し装置13で切り出される際に、水冷ジャケットなどの間接冷却或いは水噴霧による直接冷却により安全な温度で炭化物2を切り出すことが出来る。
【0050】
充填層12上部の排出口から排出される排出ガスの温度は、50〜300℃程度が望ましい。温度が低すぎると、水分が充填層から十分に排出されなくなるためであり、温度が高すぎるとタール分の充填層からの排出が過大になり炭化物の収率が低下し、下流でタールトラブルが起きやすくなるためである。好ましくは70〜200℃程度である。
【0051】
熱風5には、タール4を混合する。タール4には排出ガス3から分離したものを使用することが好ましい。熱風5にタール4を混合することにより、タール4の一部が炭化物2に付着して、炭化物として回収されるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。熱風5として排出ガス3の一部をそのまま用いることで、タールが混合された状態の熱風を吹き込むこともできる。
【0052】
タール4は、熱風5と混合され炉内充填層12に供給され、充填層内の炭化物に吸着することで炭化物2の収率向上に寄与する。タール4の大部分は、充填層12内で熱分解してチャー分が生成し、即ち炭化物となる。
【0053】
熱風5は、図示したように炉下部から熱風入口を通して供給されるが、炉の横からノズルを使って供給されるようにしても良い。
【0054】
本発明の他の一実施形態を図2を用いて説明する。
【0055】
炭化炉10には、原料1が上部から供給される。また、熱風21が炉内中段部に供給される。熱風21には、タール22を混合する。また、冷風23が冷風入口25から炉内に供給される。冷風23には、タール24を混合することが出来る。熱風21および冷風23は、炉内充填物の燃焼を招かず、炭化させるために無酸素或いは低酸素である。
【0056】
原料1は、炉内で充填層12を形成し、熱風21により加熱されることで炭化され、炭化後に冷風23により冷却され、下部の切り出し装置13から炭化物2となって排出される。冷風入口25は回転機構等を設置することで、炭化物の切り出しを促すことが出来る。 一方、充填層12から発生した排出ガス3は、炉上部より排出される。
【0057】
原料1の形態としては、充填層のガス流通に支障が生じないような形態、すなわち5mm〜200mm程度が主体(90mass%以上)の大きさの塊状物とすることが好ましい。なお、ここでの粒径は、200mm以下とは目開きが200mmの篩を通過する篩下であり、5mm以上とは5mmの篩の篩上の状態を言う。
【0058】
原料1が炭化炉10に供給される際に、充填層12の上面はある程度ならされた平坦化状態とすることが好ましい。これは、ガスの偏流を防ぎ効率的な炭化を実現するためである。
【0059】
熱風21の温度は400〜1200℃として送風するものとする。送風温度が低すぎると原料の炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは600〜1000℃である。
【0060】
充填層中段の熱風21入口付近の炭化物温度は300〜700℃程度が望ましい。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは400〜700℃であり、更に好ましくは400〜600℃である。
【0061】
冷風23の温度は200℃以下であるのが望ましい。好ましくは100℃以下である。温度が高すぎると冷却が効率的でないためである。
【0062】
切り出し装置13で切り出される際に、水冷ジャケットなどの間接冷却或いは水噴霧による直接冷却により安全な温度で炭化物2を切り出すことが出来る。
【0063】
充填層12上部から排出される排出ガスの温度は、50〜300℃程度が好ましい。温度が低すぎると、水分が充填層から十分に排出されなくなるためであり、温度が高すぎるとタール分の充填層からの排出が過大になり炭化物の収率が低下し、下流でタールトラブルが起きやすくなるためである。より好ましくは70〜200℃程度である。
【0064】
熱風21に、タール22を混合する際には、タール22には排出ガス3から分離したものを使用する。熱風21にタール22を混合することにより、タール22の一部が炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率を向上させることができる。熱風21として排出ガス3の一部をそのまま用いることでも、タールが混合された状態の熱風を吹き込むことができる。
【0065】
冷風23にも、タール24を混合することができ、タール24には排出ガス3から分離したものを使用することが好ましい。冷風23にタール24を混合することにより、タール24の一部が生成炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率を向上させることができる。
【0066】
タール22あるいはタール24は、熱風21あるいは冷風23と混合され炉内充填層12に供給され、充填層内の炭化物に吸着することで炭化物2の収率向上に寄与する。タール22あるいは24は、さらに、充填層12内で熱分解してチャー分が生成し、即ち炭化物となり炭化物2の収率向上に寄与する。タール24には、炉内で熱分解してチャー分を生成するもの以外に、炭化物に付着したまま炉外に排出されるものもある。
【0067】
タール22あるいはタール24は、図示したように熱風21や冷風23と混合され炉内に供給されるが、熱風や冷風と混合させずに炉内充填層12に直接供給しても良い。
【0068】
冷風23は、図示したように炉下部から熱風入口を通して供給されるが、炉の横からノズルを使って供給しても良い。
【0069】
本発明の他の一実施形態を図3を用いて説明する。
【0070】
炭化炉10には、原料1が上部から供給され、炉内で充填層12を形成し、熱風5により加熱されることで炭化され、炭化物2となって排出される。
【0071】
充填層12で発生した排出ガス3は、分離機311にてガス32、酢液33、タール34に分離される。ここで得られるタールは、バイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物を言う。この場合のタールの発熱量は、酢液を除去することにより、最大約20MJ/kgとなる。分離機311の形態としては、酢液の凝縮温度以下の温度で、酢液およびタールを液相に、ガスを気相に分離させることができ、液相を水相(酢液相)と油相(タール相)に分離させることが出来る構造であれば、特に限定しない。水相には水溶性の有機物も含まれる。分離機311では、必要に応じて冷却することで、分離効率を高めることが出来る。
【0072】
分離機311で分離されたガス32と、分離されたタール34の一部は、部分燃焼機312にて、空気35によりいわゆる不完全燃焼させる。ここで、空気35の量は空気比1未満で、無酸素或いは極めて低酸素の熱風36を発生させる。熱風を所定の温度まで昇温させるのにあたって、通常のバイオマス原料を使用すれば空気比1未満で可能であるが、0.5以上であることが好ましい。また、熱風中にタールを残すためには、空気比0.8以下であることが好ましい。
【0073】
分離機311で分離された酢液は、廃棄するか、溶け込んでいる水溶性有機物等の有効利用を図る。場合によっては、燃焼機313にて燃焼処理され廃ガス38として放出される。
【0074】
部分燃焼機312で発生した熱風36の一部は、炭化炉10に熱風5として送られ、炭化の為の熱源とする。
【0075】
分離機311で分離されたタール34の一部は、タール4として熱風5と共に炭化炉10に送られる。
【0076】
部分燃焼機312で発生した熱風の一部は、燃焼機313にて、空気37と混合して残留する可燃ガス成分を燃焼させ、廃ガス38を排出する。
【0077】
原料1の形態等は、図1、2を用いた実施形態にて説明したものと同様である。
【0078】
熱風5の温度は400〜1200℃が好ましい。温度が低すぎると原料の炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。より好ましくは600〜1000℃とする。
【0079】
生成する炭化物温度は300〜700℃程度が望ましい。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは400〜700℃であり、更に好ましくは400〜600℃である。
【0080】
充填層12上部から排出される排出ガス3の温度は、50〜300℃程度が望ましい。温度が低すぎると、水分が充填層から十分に排出されなくなるためであり、温度が高すぎるとタール分の充填層からの排出が過大になり炭化物の収率が低下し、下流でタールトラブルが起きやすくなるためである。好ましくは70〜200℃程度である。
【0081】
熱風5には、分離機311で分離されたタール34の一部のタール4を混合する。熱風5にタール4を混合することにより、タール4の一部が炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0082】
タール4は、熱風5と混合され炉内充填層12に供給され、充填層内の炭化物に吸着することで炭化物2の収率向上に寄与する。タール4は、さらに、充填層12内で熱分解してチャー分が生成し、即ち炭化物となり炭化物2の収率向上に寄与する。
【0083】
タール4は、図示したように熱風5と混合され炉内に供給されるが、熱風5と混合させずに炉内充填層12に直接供給しても良い。
【0084】
分離機311で、タール34を分離することにより、タールを有効利用して炭化物2の収率を向上させることができる。
【0085】
分離機311で酢液33を分離することにより、酢液を分離しない場合に比べ、部分燃焼機312に供給される酢液分を減少させることが出来るので、以下の効用がある。
第一に、同じ空気比における部分燃焼機312の温度を上昇させることができ、炭化炉10に必要な熱を供給し易くなる。
第二に、熱風5に含まれる水蒸気を減少させることが出来るため、炭化炉内での水蒸気による炭素消費反応を抑制する効果があり、炭化物収率の向上につながる。
【0086】
廃ガス38の熱は、原料1の乾燥等に利用することが出来る。
【0087】
本発明の他の一実施形態を図4を用いて説明する。
【0088】
炭化炉10には、原料1が上部から供給される。また、熱風21が炉内中段部に供給され、熱風21には、タール22を混合することが出来る。また、冷風23が炉内に供給され、冷風23には、タール24を混合することが出来る。熱風21および冷風23は、炉内充填物の燃焼を招かず、乾留させるために無酸素或いは低酸素である。
【0089】
原料1は、炉内で充填層12を形成し、熱風21により加熱されることで炭化され、炭化後に冷風23により冷却され、炭化物2となって排出される。
【0090】
充填層から発生した排出ガス3は、炉上部より排出され、分離機311にてガス32、酢液33、タール34に分離される。分離機311の形態としては、酢液の凝縮温度以下の温度で、酢液およびタールを液相に、ガスを気相に分離させることができ、液相を水相と油相(タール相)に分離させることが出来る構造であれば、特に限定しない。分離機311では、必要に応じて冷却することで、分離効率を高めることが出来る。
【0091】
分離機311で分離されたガス32と、分離されたタール34の一部は、部分燃焼機312にて、空気35によりいわゆる不完全燃焼させる。ここで、空気35の量は空気比1未満で、無酸素或いは極めて低酸素の熱風36を発生させる。熱風を所定の温度まで昇温させるのにあたって、通常のバイオマス原料を使用すれば空気比1未満で可能であるが、0.5以上であることが好ましい。また、熱風中にタールを残すためには、空気比0.8以下であることが好ましい。
【0092】
分離機311で分離された酢液は、廃棄するか、溶け込んでいる水溶性有機物等の有効利用を図る。場合によっては、燃焼機313にて燃焼処理され廃ガス38として放出される。
【0093】
部分燃焼機312で発生した熱風36の一部は、炭化炉10に熱風21として送られ、炭化の為の熱源とする。
【0094】
部分燃焼機312で発生した熱風36の一部は、冷却機411にて冷却され、炭化炉10に冷風23として送られ、炭化物の冷却に利用される。
【0095】
部分燃焼機312で発生した熱風の一部は、燃焼機313にて、空気37と混合して残留する可燃ガス成分を燃焼させ、廃ガス38を排出する。
【0096】
原料1の形態等は、図1、2を用いた実施形態にて説明したものと同様である。
【0097】
熱風21の温度は400〜1200℃が好ましい。温度が低すぎると原料の炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下した上に、設備がコスト高になるためである。より好ましくは600〜1000℃である。
【0098】
充填層中段の熱風21入口付近の炭化物温度は300〜700℃程度が好ましい。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下した上に、設備がコスト高になるためである。より好ましくは400〜700℃であり、最も好ましくは400〜600℃である。
【0099】
冷風23の温度は200℃以下が好ましい。より好ましくは100℃以下である。温度が高すぎると冷却が効率的でないためである。
【0100】
充填層12上部から排出される排出ガスの温度は、50〜300℃程度が好ましい。温度が低すぎると、水分が充填層から十分に排出されなくなるためであり、温度が高すぎるとタール分の充填層からの排出が過大になり炭化物の収率が低下し、下流でタールトラブルが起きやすくなるためである。より好ましくは70〜200℃程度である。
【0101】
熱風21には、タール22を混合する。タール22には分離機311で分離されたタール34を使用する。熱風21にタール22を混合することにより、タール22の一部が炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0102】
冷風23には、タール24を混合することができ、タール24に分離機311で分離されたタール34を使用することが好ましい。冷風23にタール24を混合することにより、タール24の一部が生成炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0103】
タール22あるいはタール24は、熱風21あるいは冷風23と混合され炉内充填層12に供給され、充填層内の炭化物に吸着することで炭化物2の収率向上に寄与する。タール22または24は、さらに、充填層12内で熱分解してチャー分が生成し、即ち炭化物となり炭化物2の収率向上に寄与する。タール24には、炉内で熱分解してチャー分を生成するもの以外に、炭化物に付着したまま炉外に排出されるものもある。
【0104】
タール22あるいはタール24は、図示したように熱風21や冷風23と混合され炉内に供給されるが、熱風5と混合させずに炉内充填層12に直接供給しても良い。
【0105】
冷風23は、図示したように炉下部から熱風入口を通して供給されるが、炉の横からノズルを使って供給しても良い。
【0106】
分離機311で、タール34を分離することにより、タールを有効利用して炭化物2の収率を向上させることができる。
【0107】
分離機311で酢液33を分離することにより、酢液を分離しない場合に比べ、部分燃焼機312に供給される酢液分を減少させることが出来るので、次の効用がある。第一に、同じ空気比における部分燃焼機312の温度を上昇させることができ、炭化炉10に必要な熱を供給し易くなる。第二に、熱風5に含まれる水蒸気を減少させることが出来るため、炭化炉内での水蒸気による炭素消費反応を抑制する効果があり、炭化物収率の向上につながる。
【0108】
廃ガス38の熱は、原料1の乾燥等に利用することが出来る。
【0109】
本発明の他の一実施形態を図5を用いて説明する。
【0110】
図5は、図4において、冷風23およびタール24の代わりに、排出ガス3の一部を冷風523として用いるようにしたものである。
【0111】
排出ガス3には、発生タールが含まれ、なおかつ低温であるため、炭化炉10にて炭化物の冷却と炭化物2の収率向上に寄与できる。
【0112】
図4の場合に比べ、図5の方が、より設備を簡略化することができ、低コストである。
【0113】
本発明の他の一実施形態を図6を用いて説明する。
【0114】
図6は、図5において、分離機311を省略したものである。
【0115】
排出ガス3には、発生タールが含まれ、なおかつ低温であるため、炭化炉10にて炭化物の冷却と炭化物2の収率向上に寄与できる。
【0116】
図5の場合に比べ、図6の方が、より設備を簡略化でき、低コストである。
【0117】
[実施の形態2]
実施の形態2では、バイオマス乾留時に発生する乾留生成物(ガス、タール)をバイオマス乾留により得られた乾留バイオマスに高温で接触させることにより、乾留生成物中の炭素を乾留バイオマス上に析出させたバイオマス炭を得ることができる。これにより、バイオマス乾留時の発生タールおよびガス量を最小とし、バイオマス炭の収率を向上させることができる。実施の形態2で得られたバイオマス炭はタール等がそのまま付着しているのとは異なりコーキング化して炭素の状態として付着しているため、酸素含有率が低く、発熱量が高くなり、揮発分が少なく、反応性が低く発火性も低下して安全性が高まり、高品質であり、鉄鋼プロセス、特に製銑、製鋼工程、焼結炉における炭材として好適に利用することができる。
【0118】
バイオマスとは、ある一定量集積した動植物資源とこれを起源とする廃棄物の総称である。ただし、化石資源はバイオマスから除かれる。実施の形態2で用いるバイオマスには、農業系、林業系、畜産系、水産系、廃棄物系等の、熱分解して炭化物を生成するあらゆるバイオマスを用いることができる。有効発熱量の高いバイオマスを用いることが好ましく、木質系バイオマスを用いることが好ましい。木質系バイオマスとしては、パルプ黒液、チップダスト等の製紙副産物、樹皮、のこ屑等の製材副産物、枝、葉、梢、端尺材等の林地残材、スギ、ヒノキ、マツ類等の除間伐材、食用菌類の廃ホダ木等の特用林産からのもの、シイ、コナラ、マツ等の薪炭林、ヤナギ、ポプラ、ユーカリ、マツ等の短伐期林業等の林業系バイオマスや、市町村の街路樹、個人宅の庭木等の剪定枝条等の一般廃棄物や、国や県の街路樹、企業の庭木等の剪定枝条、建設・建築廃材等の産業廃棄物等が挙げられる。農業系バイオマスに分類される、廃棄物・副産物を発生源とする籾殻、麦わら、稲わら、サトウキビカス、パームヤシ等や、エネルギー作物を発生源とする米糠、菜種、大豆等の農業系バイオマスの一部も木質系バイオマスとして好適に用いることができる。
【0119】
また、バイオマスの乾留とは、バイオマスの熱分解であり、空気(酸素)の供給を遮断または制限して加熱し、気体(木ガスとも呼ばれる)、液体(タール)、固体(炭)の生成物を得る技術である。バイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物をタールと呼ぶ場合もあるが、実施の形態2ではタールと酢酸とが混合された状態の液体をタールと呼ぶ。
【0120】
実施の形態2の一実施形態を図7を用いて説明する。110は乾留炉、120はコーキング炉、130はコーキング炉より発生する発生ガスの燃焼炉を示す。バイオマス101は図示しない供給装置により乾留炉110に供給され、乾留バイオマス(炭)102と乾留生成物(ガス、タール)103を生成する。乾留バイオマス102は図示していない供給装置によりコーキング炉120に供給され、同時に乾留生成物103もコーキング炉120に供給される。コーキング炉120内では乾留バイオマス102に乾留生成物103が接触し、乾留バイオマス102上に乾留生成物103中の炭素が析出する。炭素が析出したバイオマス炭105はコーキング炉120より排出され、鉄鋼プロセス等に利用される。一方、乾留生成物103はコーキング炉120内での炭素の析出により軽質化され、コーキング炉120より軽質ガス106として排出される。軽質ガス106は低級炭化水素および水素が主体であることから、燃焼装置130にて燃焼し、乾留炉110およびコーキング炉120の熱源として利用される。108は軽質ガス以外の外部から供給される燃料ガス、109は燃焼用空気を示す。
【0121】
バイオマスは加熱により熱分解され、バイオマス中の水分は蒸発し、炭素、水素と酸素は揮発分として放出される。水分の蒸発及び/又は揮発分の揮発により、バイオマス中に細孔が発現する。発生した細孔内表面には炭化水素等のタールを物理的・化学的に吸着可能なサイトが生成される。タールはこの細孔に侵入し、バイオマスに物理的・化学的に吸着される。このタールが吸着したバイオマスを、さらに加熱した場合、タールは脱水素反応を起こし、重質化し、最終的には炭化物となる。また、加熱によりバイオマス表面にもタールを吸着可能なサイトが生成し、バイオマス表面においても同様の現象がおこる。
【0122】
上記で記載されているように、乾留バイオマスへの炭素析出は、まずタールが乾留バイオマスに吸着し、続いて吸着したタールが脱水素し、炭素析出する。そのため、乾留バイオマスの比表面積、細孔容積、平均細孔径が重要となる。比表面積および細孔容積が充分に大きくても、平均細孔径が小さい場合にはタールは細孔内に侵入せず、吸着量が少ない。そのため、平均細孔径は1ナノメートル以上とすることが好ましく、このためには、乾留バイオマスの比表面積は10m2/g以上であることが好ましい。乾留バイオマスの比表面積が大きいほど、細孔容積が増加し、かつ平均細孔径が大きくなり、バイオマスの乾留により発生したガスとタールとの接触面積が大きくなり、効率的に多量の炭素分を乾留バイオマスに付着析出させることが可能となる。比表面積が10m2/g未満であると、細孔容積が少なく、かつ細孔径が1ナノメートル未満となり、タールの吸着量が少なく、炭素析出が少なくなる。
【0123】
バイオマスの乾留温度はバイオマスの脱水および乾留生成物が生成する温度範囲であればよく、乾留バイオマス102の比表面積10m2/g以上となる450〜800℃の範囲であればよい。バイオマス炭105の収率を考慮すると、450〜700℃で乾留することが、より好ましい。
【0124】
コーキング炉120の温度はコーキング炉120でバイオマス101が乾留しない条件であり、乾留炉110と同等の温度範囲が好ましい。また、コーキング炉120内での乾留バイオマス102の滞留時間は、析出炭素により乾留バイオマス102の細孔が閉塞するまでの時間とすることが好ましい。細孔が完全に閉塞した後に、さらに炭素を析出させると、乾留生成物103中の炭素は乾留バイオマス102の表面に析出し、乾留バイオマス102同士の由着、塊状化が発生するので、コーキング炉120内で荷下がり不良をきたす場合がある。滞留時間は乾留バイオマスの比表面積により、適宜決定される。
【0125】
乾留炉110はバイオマス101を乾留できるものであればよく、通常のバッチ式、ロータリーキルン式、竪型炉等を用いることができる。連続プロセスとして採用可能なロータリーキルン式を用いることが好ましい。
【0126】
コーキング炉120は乾留バイオマス102が乾留生成物103と均一に接触し、乾留生成物103を分解し、乾留バイオマス102上に炭素を析出させる必要があることから充填層あるいは移動層方式であることが好ましい。
【0127】
乾留炉110ならびにコーキング炉120の加熱方法はコーキング炉120より発生する軽質ガス106を燃焼し、加熱して行なってもよく、別途重油、プロパン等の燃料ガス8を燃焼させ加熱ガスとして用いてもよい。また、燃料ガスを燃焼させる方法以外に、電気加熱により加熱してもよい。電気加熱の場合であれば乾留炉110およびコーキング炉120をそれぞれ分割して温度制御することが可能である。
【0128】
乾留炉110内でバイオマス101を乾留した際に乾留バイオマス102が粉化することが考えられる。このような場合には、コーキング炉120内の圧力損失を軽減するために、得られた乾留バイオマス102中の粉を除去し、コーキング炉120に供給することもできる。粉の除去方法は従来知られている篩あるいは風力分級等の方法を用いればよい。篩粒度はコーキング炉120の操作条件により、決定される。
【0129】
コーキング炉120に供給される材料はバイオマスを乾留した乾留バイオマス102であるが、乾留バイオマスと同様の比表面積を有するものも、乾留バイオマス102に追加して使用することができる。例えば、別途乾留処理されたバイオマス炭、活性炭など鉄鋼プロセスで石炭代替となるものである。
【0130】
図8を用いて、実施の形態2の他の一実施態様を説明する。図7における乾留炉110がロータリーキルン150、コーキング炉120が竪型炉160の場合の発明例である。140はバイオマス定量供給装置であるスクリューフィーダー、150は間接加熱方式ロータリーキルン、160は竪型炉、111はコーキング部、112はバイオマス炭の冷却部である。ロータリーキルン150で乾留された乾留バイオマス102は竪型炉160に上部から供給され、乾留生成物103の炭素分が析出したバイオマス炭105は冷却部112で窒素113により冷却された後、下部から排出される。
【0131】
冷却ガス113は不活性ガスであればよい。また、冷却部112から排出されるバイオマス炭105は発火しない温度範囲であればよく、200℃以下であればよい。より好ましくは100℃以下とする。
【0132】
[実施の形態3]
実施の形態3では、バイオマスを乾留してバイオマス炭を製造する際に、2塔式の充填移動層方式の炉を用いる。2塔式の充填移動層方式の炉は、シャフト炉の一種であり、メルツ炉とも呼ばれる。メルツ炉は、互いに接続された2本の竪型シャフトで交互に燃焼と蓄熱を繰り返すことで、熱原単位を削減するとともに、安定して高品位な製品を生産することでき、ロータリーキルン等に比べて熱効率が良いことが知られている。従来、メルツ炉は石灰焼成炉等として用いられてきたものであり、各竪型シャフト内で上方から供給される空気により充填層内に挿入されたバーナランスから吹き込まれる燃料ガスが燃焼し、その燃焼熱により石灰石(CaCO3)等が焼成される。石灰石の場合は焼成されて、生石灰(CaO)となる。燃焼ガスは竪型炉の下方に移動し、他方の竪型炉内の石灰石等を予熱する。一方の竪型炉が焼成用、他方が予熱用となる。燃料の供給は、周期的にバーナランスを介して竪型シャフトの1つへ交互に行われる。
【0133】
このような互いに接続された2基の乾留炉を有する2塔式の充填移動層方式の炉を用いてバイオマスを乾留することで、一方の乾留炉でのバイオマスの乾留により発生したガスとタールとを他方の乾留炉内のバイオマスに接触させて、他方の乾留炉内のバイオマスの乾留の際にガスおよびタール中の炭素分を他方の乾留炉内のバイオマスに付着析出させることができる。すなわち、バイオマス乾留時に発生する乾留生成物(ガス、タール)を他方の乾留炉内のバイオマスやバイオマス乾留により得られた乾留バイオマスに高温で接触させることができ、乾留生成物中の炭素を析出させたバイオマス炭を効率的に得ることができる。これにより、バイオマス乾留時の発生タールおよびガス量を最小とし、バイオマス炭の収率を向上させることができる。乾留生成物の炭化を促進するために、乾留炉の下部のみを別途加熱することも好ましい。実施の形態3で得られたバイオマス炭はタール等がそのまま付着しているのとは異なりコーキング化した炭素の状態として付着しているため、揮発分が少なく、高品質であり、製鉄プロセス、特に製銑、製鋼工程、焼結炉における炭材として好適に利用することができるものである。
【0134】
また、バイオマスの乾留とは、バイオマスの熱分解であり、空気(酸素)の供給を遮断または制限して加熱し、気体(木ガスとも呼ばれる)、液体(タール)、固体(炭)の生成物を得る技術である。バイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物をタールと呼ぶ場合もあるが、実施の形態3ではタールと酢酸とが混合された状態の液体をタールと呼ぶ。
【0135】
実施の形態3の一実施形態を図9を用いて説明する。
【0136】
図9は2塔式の充填移動層方式の炉を用いたバイオマス炭製造装置である。図示しない破砕装置にて、乾留炉本体201に装入可能なサイズに破砕されたバイオマス202は、図示しない供給装置により、乾留炉本体201に供給される。乾留炉本体201は乾留炉A(図9の左側)203と乾留炉B(図9の右側)204が下部で接続された構造であり、乾留炉本体201に装入されたバイオマス202は、まず原料切替弁205により乾留炉B204に充填される。乾留炉B204に充填されたバイオマスのレベルが所定値となった時点で、原料切替弁205が乾留炉A203に切り替わり、乾留炉A203にバイオマス202が供給される。乾留炉A203に充填されたバイオマスのレベルが所定量になった時点で、一旦バイオマス202の装入を停止し、乾留を開始する。
【0137】
まず、乾留炉A203において乾留に必要な熱を供給するために、配置されたランスA206に燃料208を供給するとともに乾留炉A203の上部から空気209を送風し、ランスA206から排出する燃料208を燃焼させる。ランスA206は図10に示す乾留炉A203のX−X’断面(図9)のように配置されている。なお、後述するランスB207も同様に配置されている。燃焼ガスと乾留ガス・タール221はバイオマスに熱を供給しながら充填層210内を下方に移動し、乾留炉B204内に入り、乾留炉B204内のバイオマスを予熱しながら上方に向かってバイオマス充填層211を移動する。その際、乾留により発生した乾留ガス・タールの一部は乾留炉A203および乾留炉B204内のバイオマス炭あるいはバイオマスに接触し、吸着及び/又は吸収されて炭素分が付着析出する。バイオマスに熱を供給した燃焼ガスおよびタールが除去された乾留ガス212が乾留炉B204より排出され、1次集塵機213にて、ガス中のダスト分が除去される。1次集塵機213より排出された乾留ガス214はCOおよびメタン等の軽質炭化水素であり、乾留に必要な熱源として乾留炉A203に供給される。この際、初めに使用されていた燃料208は供給された乾留ガス214の熱量分だけ削減される。乾留炉A203および乾留炉B204の間に設置されている温度計の温度が所定温度となった時点で、充填層210内のバイオマス炭223は排出弁A215により排出され、排出弁216により系外に排出される。ここで、一旦、乾留炉A203への燃料供給、乾留ガスの供給は停止される。原料切替弁205が乾留炉A203側に切り替わり、乾留炉A203内にバイオマス202が装入される。次に、乾留炉B204内に配置されたランスB207に燃料208を供給するとともに空気209を送風し、ランスB207から排出する燃料208を燃焼させる。燃焼ガスは前述したように乾留炉B204内の予熱されたバイオマスを乾留し、バイオマス炭と乾留ガス・タールを発生させる。燃焼ガスと乾留ガス・タールはバイオマスに熱を供給しながらバイオマス充填層211内を下方に移動し、乾留炉A203内に入り、乾留炉A203内のバイオマスを予熱しながら上方に向かってバイオマス充填層210を移動する。その際、乾留により発生したタールは乾留炉B204および乾留炉A201内のバイオマス炭あるいはバイオマスに吸着及び/又は吸収される。バイオマスに熱を供給した燃焼ガスおよびタールが除去された乾留ガス212が乾留炉A203より排出され、1次集塵機213にて、ガス中のダスト分が除去される。1次集塵機213より排出された乾留ガス214はCOおよびメタン等の軽質炭化水素であり、乾留に必要な熱源として乾留炉B204に供給される。この際、初めに使用されていた燃料208は供給された乾留ガス214の熱量分だけ削減される。乾留炉B204および乾留炉A203の間に設置されている温度計の温度が所定温度となった時点で、乾留炉B204内のバイオマス炭は排出弁B217により排出され、排出弁216により系外に排出される。
【0138】
以上の操作を繰り返すことにより、バイオマスを乾留するとともに、乾留されたバイオマスにバイオマス乾留時に発生する乾留生成物中の炭素を析出させたバイオマス炭を製造する。
【0139】
乾留炉内でのバイオマスの乾留温度の下限は、バイオマスから乾留ガス・タールが発生する温度以上とすることが好ましい。一般的なバイオマスでは400℃以上とするのが好ましい。一方で、バイオマスの乾留ガス・タール中にはバイオマス付着水分に加えて、分解により発生する水分が含まれる。実施の形態3ではバイオマス中炭素の回収率を向上させることを目的としており、加熱・乾留温度の上限は水分発生の反応が顕著に起こらない温度以下とすることが好ましい。一般的なバイオマスでは800℃以下が好ましい。より好ましくは、450〜750℃である。
【0140】
バイオマスからバイオマス炭を高収率で製造するためには、前述の温度条件で行うことが好ましいが、特に低温で低昇温速度で実施するとともに、乾留炉内での滞留時間を長めに実施することが好ましい。滞留時間を長くすることにより、発生したタール成分等が乾留炉下部のバイオマス炭により付着しやすくなるからである。具体的には、図11に示すように乾留炉で1回の処理で製造したバイオマス炭を全量排出するのではなく、乾留炉内のバイオマスの50体積%を排出し、残留した50体積%のバイオマス炭の上部に新規のバイオマスを充填することによりバイオマス炭の収率を向上させることができる。図11の(a)〜(f)に示すようにバイオマス炭が製造される。
(a):乾留炉A203のバイオマスを乾留する。
(b):乾留炉A203で製造されたバイオマス炭の一部を排出する。
(c):乾留炉A203に新たにバイオマス202aを装入する。
(d):乾留炉B204のバイオマスを乾留する。
(e):乾留炉B204で製造されたバイオマス炭の一部を排出する。
(f):乾留炉B204にバイオマス202bを新たに装入する。
【0141】
バイオマス装入から排出までの乾留炉内での滞留時間は30分以上とすることが好ましい。30分未満の場合は炭化が不十分となり、バイオマス炭の低位発熱量が低くなる恐れがある場合がある。また、60分を超える滞留時間ではバイオマス炭の収率が低くなるとともに、乾留炉の容積を大きくする必要があるので、経済的でない。例えば上記の50体積%ずつ排出するケースで乾留炉内での滞留時間を30分とする場合は1回の乾留時間は7.5分となり、乾留7.5分→炭素分の付着析出(置き時間)7.5分→乾留7.5分→炭素分の付着析出(置き時間)7.5分となる。滞留時間を30分で一定として、1/3(33体積%)ずつ排出すると、乾留5分→置き時間5分→乾留5分→置き時間5分→乾留5分→置き時間5分となり、1/4(25体積%)ずつ排出すると、乾留3.75分→置き時間3.75分→乾留3.75分→置き時間3.75分→乾留3.75分→置き時間3.75分→乾留3.75分→置き時間3.75分となる。収率向上の点では、設備的に可能な範囲で、1回の乾留時間が短いことが好ましい。
【0142】
乾留炉内に設置しているランスは1本とすることも可能であるが、充填層内への熱供給を考慮した場合複数本配置することが好ましい。
【0143】
得られたバイオマス炭はそのままでも製鉄プロセスで使用可能であるが、必要に応じて成型あるいは微粉化して使用することが好ましい。成型は、傾斜した回転皿を用いて行う転動造粒、円筒状のダイスから押し出す押し出し成型、回転ロール表面のモールドに粉体を供給するブリケッティングロールの圧縮成型機等、通常使用されている成型機を用いて行なえば良い。微粉化は通常使用されているローラーミル、ロッドミル等を用いて行なえば良い。
【0144】
バイオマスの乾留の熱源に用いる、乾留炉においてランスから供給される燃料は、重油、天然ガス、液化石油ガス等を用いればよく、ランスから供給可能なものであればよい。
【0145】
乾留炉から回収されるバイオマス炭は、高温で処理された後に排出されることから、発火等の安全性を考慮して、不活性ガス等で冷却することが好ましい。冷却温度は200℃程度であればよく、より好ましくは100℃以下とする。
【0146】
図12に、本発明の他の一実施形態を示す。乾留ガス214を別途燃焼炉218で燃焼させ、乾留炉203、204に供給する場合である。
【実施例1】
【0147】
実施例1〜4は、実施の形態1についての実施例である。
【0148】
図3に示すものと同様の設備を用いて、バイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0149】
熱風5に、タール4を混合する場合としない場合について、炭化物2の収率の比較を行なった。原料1として、パーム油を生成する過程で発生するアブラヤシの空果房(empty fruit bunch:EFB)からなるバイオマス系の残渣を用いた。EFBの含水率は30mass%であった。
【0150】
熱風5にタール4を混合させる場合(本発明例)は、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、熱風5に混合させたタール4の質量流量を0.1とした。熱風5の吹込み温度は930℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0151】
熱風5にタール4を混合させない場合(比較例)は、熱風5の吹込み温度は910℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0152】
熱風5に、タール4を混合しない比較例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.25であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は25%であった。一方、タール4を混合した本発明例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量0.28であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は28%であった。本発明方法を用いることで、炭化物収率が1割以上向上した。
【実施例2】
【0153】
図4に示すものと同様の設備を用いて、実施例1と同様のバイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0154】
熱風21および冷風23に、タールを混合する場合としない場合について、炭化物2の収率の比較を行なった。
【0155】
熱風21および冷風23にタール22、24を混合させる場合(本発明例)は、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、熱風21に混合させたタール22の質量流量を0.1とし、冷風23に混合させたタール24の質量流量を0.03とした。熱風21の吹込み温度は990℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。冷風23の温度は80℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0156】
熱風21および冷風23にタール22、24を混合させない場合(比較例)は、熱風21の吹込み温度は910℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。冷風23の温度は80℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0157】
熱風21および冷風23に、タール22、24を混合しない比較例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.25であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は25%であった。一方、タール22、24を混合した本発明例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量0.29であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は29%であった。本発明方法を用いることで、炭化物収率が1.5割以上向上した。
【実施例3】
【0158】
図5に示すものと同様の設備を用いて、実施例1と同様のバイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0159】
熱風21および冷風523に、タールを混合する場合としない場合について、炭化物2の収率の比較を行なった。
【0160】
熱風21にタール22を混合させる場合(本発明例)は、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、熱風21に混合させたタール22の質量流量を0.1とした。熱風21の吹込み温度は990℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。冷風523に混合していたタールの質量流量は0.06であり、その温度は80℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0161】
熱風21にタール22を混合させない場合は、熱風21の吹込み温度は910℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。冷風523に混合していたタールの質量流量は0.06であり、その温度は80℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0162】
熱風21および冷風523にタールを混合させない場合を比較例とすると、上記の実施例2の比較例の場合がこれに相当する。この場合、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.25であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は25%であった。
【0163】
タール22を混合した本発明例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量0.29であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は29%であった。本発明方法を用いることで、炭化物収率が1割以上向上した。また、熱風21に、タール22を混合しない場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.26であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は26%であった。これにより、炭化物収率が約0.4割向上した。
【実施例4】
【0164】
図6に示すものと同様の設備を用いて、実施例1と同様のバイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0165】
排出ガス3を部分燃焼機で不完全燃焼させた熱風21にはタールが混合しており、その質量流量は0.04であった。また冷風523も排出ガスの一部を用いているので、タールが混合しており、その質量流量は0.06であった。
【0166】
排出ガスからタールを分離しないで熱風21および冷風523として用いる場合(本発明例)は、熱風21の吹込み温度は990℃であり、炭化温度、すなわち切り出される直前の炭化物温度は500℃であった。冷風523の温度は80℃であった。充填層上部から排出される排出ガス3の温度は100℃であった。
【0167】
熱風21および冷風523にタールを混合させない場合を比較例とすると、上記の実施例2の比較例の場合がこれに相当する。
【0168】
この場合、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.25であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は25%であった。一方、本発明例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量0.27であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は27%であった。本発明方法を用いることで、炭化物収率が0.8割向上した。
【実施例5】
【0169】
実施例5は、実施の形態2についての実施例である。
【0170】
図8に示すものと同様の設備を用いて、バイオマスの乾留ならびに発生ガスのコーキング試験を行った。但し、ロータリーキルン150および竪型炉(コーキング炉)160の加熱方法は3分割の電気加熱とし、竪型炉160から発生する軽質ガスは系外に排出した。ロータリーキルン150は内径15cm、長さ1.0m、傾斜角1度であり、乾留時間はロータリーキルン回転数を1.5rpmとし、約50分とした。竪型炉160は内径6.6cm、長さ40.0cmとし、炉上部に設置したロータリーバルブにより、乾留バイオマス102を供給し、下部に設置のロータリーバルブよりバイオマス炭105を排出した。竪型炉160の炉内充填物の滞留時間の調整は、初期充填量を調整することにより行った。バイオマスとしては3mm〜10mmに粉砕分級した杉を用いた。使用したバイオマスの組成を表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
ロータリーキルンへのバイオマス供給速度は1.0kg/hとし、乾留バイオマスをロータリーキルン150より回収し、竪型炉160に充填した。試験条件を表2に示すように変化させて、本発明例1〜8の試験を行い、製造されたバイオマス炭、ガス、タール、水分の収率、乾留バイオマスの比表面積、製造されたガス組成を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0173】
【表2】

【0174】
次に上記に従い、竪型炉160を用いない以外は上記と同様に試験を行い、比較例1〜6とした。乾留バイオマスの比表面積に加えて、細孔容積、平均細孔径も測定した。試験条件および結果を表2に併せて示す。
【0175】
表2によれば、竪型炉160を用いてロータリーキルンで発生したタールやガスを乾留バイオマスに付着させ、加熱して炭化させることで、バイオマス炭の収率が向上することが分かる。また、タール分はGC−MS(ガスクロマトグラフを直結した質量分析計)を用いた分析の結果、軽質化していることがわかった。ロータリーキルン乾留温度と竪型炉コーキング温度が400〜700℃の本発明例1〜5、7、8では23mass%以上の高い収率が得られたが、ロータリーキルン乾留温度と竪型炉コーキング温度が800℃の本発明例6では収率がやや低かった。
【0176】
また、ロータリーキルン乾留温度が400℃の比較例6では、乾留バイオマスの比表面積が10m2/g未満で平均細孔径は1ナノメートル未満であり、ロータリーキルン乾留温度と竪型炉コーキング温度が400℃の本発明例8では比較例6に比較してバイオマス炭の収率があまり増加しなかった。
【実施例6】
【0177】
実施例6は、実施の形態3についての実施例である。
【0178】
図13に示す設備を用いて、バイオマスの乾留試験を行った。乾留炉A203、乾留炉B204は内径100mm、長さ400mmであり、熱風発送装置225で窒素226を所定温度に加熱し、供給することで加熱した。
【0179】
使用したバイオマスの組成を表3に示す。
【0180】
【表3】

【0181】
表3に示すバイオマスを事前に粉砕し、乾留炉A203および乾留炉B204に充填した。所定温度に加熱した窒素226を乾留炉A203に送風し、7.5分間の乾留を実施し、加熱窒素の供給を停止し、乾留炉A203下部より、乾留炉A203の内容物の上面のレベルを測定しながら、1/2体積量を排出し、乾留炉A203に新規にバイオマス202を供給した。次に加熱窒素を乾留炉B204に供給し、同様に7.5分間の乾留を行い、乾留炉B204より1/2体積量を排出した。この操作を繰り返し行なった。バイオマスの乾留は2回に分けて行なうことになり、バイオマス装入から排出までの乾留炉内での滞留時間は30分である。バイオマスの供給速度は2.0kg/hとした。窒素226の加熱温度(熱風温度)を表4に示すように変化させて、本発明例11〜16の試験を行った。
【0182】
【表4】

【0183】
各試験において乾留炉A203、B204から排出された窒素+乾留ガスの温度を乾留ガス出口温度として表4に併せて示す。本操作を6時間行い、排出されたバイオマス炭223の性状(組成)を測定し、含有される灰分濃度よりバイオマス炭収率を算出した。また、回収されたガス、タール、水分の収率を測定した。結果を表4に併せて示す。
【0184】
次に、乾留炉より1/3体積量ずつ排出して、バイオマスの乾留炉内での1回の乾留時間を5分とした以外は上記の本発明例15と同様の条件で、本発明例17の試験を行った。バイオマスの乾留は3回に分けて行なうことになり、バイオマス装入から排出までの乾留炉内での滞留時間は30分である。結果を表4に併せて示す。
【0185】
さらに、乾留炉A203のみを用いてバイオマスの乾留を行なった場合の結果を、表4に比較例11として、併せて示す。
【0186】
表4によれば、乾留炉を2基接続した装置を用いた本発明方法によりバイオマス炭を製造することで、発生したタールやガスを乾留バイオマスに付着させ、加熱して炭化させることができ、乾留温度が低い方が、バイオマス炭の収率が向上することが分かる。また、バイオマス装入から排出までの乾留炉内での滞留時間が同じ場合、1回の乾留時間が短い方が収率が向上する。さらに、タール分はGC−MS(ガスクロマトグラフを直結した質量分析計)を用いた分析の結果、軽質化していることがわかった。
【符号の説明】
【0187】
1 原料
2 炭化物
3 排出ガス
4 タール
5 熱風
10 炭化炉
11 熱風入口
12 充填層
13 切り出し装置
21 熱風
22 タール
23 冷風
24 タール
25 冷風入口
32 ガス
33 酢液
34 タール
35 空気
36 熱風
37 空気
38 廃ガス
101 バイオマス
102 乾留バイオマス
103 乾留生成物(ガス、タール)
104 燃焼排ガス
105 バイオマス炭
106 軽質ガス
107 燃焼排ガス
108 軽質ガス以外の外部から供給される燃料ガス
109 燃焼用空気
110 乾留炉
111 コーキング部
112 冷却部
113 冷却ガス
120 コーキング炉
130 燃焼炉
140 バイオマス定量供給装置
150 間接加熱ロータリーキルン
160 竪型炉
201 乾留炉本体
202(202a、202b) バイオマス
203 乾留炉A
204 乾留炉B
205 原料切替弁
206 ランスA
207 ランスB
208 燃料
209 空気
210 バイオマス充填層
211 バイオマス充填層
212 乾留ガス
213 1次集塵機
214 乾留ガス
215 排出弁A
216 排出弁
217 排出弁B
218 燃焼炉
221 乾留ガス・タール
222 供給弁
223 バイオマス炭
225 熱風発生装置
226 窒素
311 分離機
312 部分燃焼機
313 燃焼機
411 冷却機
523 冷風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを炭化させてバイオマス炭とし、
前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出し、
前記排出ガス中の前記タールの少なくとも一部を前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触させ、
前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触した前記タールの少なくとも一部を炭化物に転化させることからなる、
バイオマス炭の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法において、
竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを投入し、
前記竪型炉の底部または前記排出ガスの排出位置より下方である側方下部から熱風を吹き込み、
前記竪型炉内で前記バイオマスを炭化させてバイオマス炭とし、
前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを前記竪型炉の頂部または側方上部から排出し、
前記排出ガス中の前記タールの少なくとも一部を前記竪型炉に吹き込んで前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触させ、
前記バイオマス及び/又は前記バイオマス炭に接触した前記タールの少なくとも一部を炭化物に転化させることからなる、
バイオマス炭の製造方法。
【請求項3】
前記排出ガス中の前記タールの少なくとも一部を前記熱風とともに前記竪型炉に吹き込むことからなる、
請求項2に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項4】
前記竪型炉の底部または側方下部から冷却用ガスを供給することからなる、
請求項2または請求項3に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項5】
前記冷却用ガスは前記排出ガスを循環して使用するものである、
請求項4に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項6】
前記タールの一部を前記冷却用ガスとともに炉内に供給することからなる、
請求項4または請求項5に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項7】
前記排出ガスから前記タールを分離し、分離された前記タールを竪型炉に吹き込むことからなる、
請求項2ないし請求項6のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項8】
前記排出ガスを空気比1未満で燃焼させて、熱風として竪型炉に吹き込むことからなる、
請求項2ないし請求項7のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項9】
前記バイオマス炭の炭化温度は300〜700℃である、
請求項2ないし請求項8のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項10】
前記排出ガスの温度は50〜300℃である、
請求項2ないし請求項9のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項11】
前記熱風は、無酸素または低酸素であって温度が400〜1200℃である、
請求項2ないし請求項10のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項12】
前記バイオマスの炭化が、竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを前記竪型炉に投入し、竪型炉の底部または側方下部から熱風を吹き込むことにより行われ、
前記排出ガスの排出が、竪型炉の頂部または側方上部から前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出することにより行なわれ、
前記タールの少なくとも一部の接触が、前記炭化の際に発生する排出ガス中のタールの少なくとも一部を前記竪型炉に吹き込むことにより行なわれる、
請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法において、
バイオマスを乾留して乾留バイオマスとし、
前記乾留バイオマスに、前記バイオマスの乾留により発生したガスとタールとを接触させて、前記ガスおよび前記タール中の炭素分を前記乾留バイオマスに付着析出させる、
バイオマス炭の製造方法。
【請求項14】
前記乾留バイオマスの比表面積が10m2/g以上である請求項13に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項15】
バイオマスの乾留温度が450℃〜700℃であり、ガスとタール中の炭素分を乾留バイオマスに付着析出させる際の温度が450〜700℃である請求項13に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項16】
前記乾留が、ロータリーキルン式乾留炉で行われる、請求項13に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項17】
前記タール中の炭素分の乾留バイオマスへの付着析出が、充填層あるいは移動層方式コーキング炉で行われる、請求項13に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項18】
前記バイオマスの炭化が、バイオマスを乾留し、乾留バイオマスとタールを含有する排出ガスを生成し、前記乾留バイオマスをコーキングすることからなり、
前記タールの少なくとも一部の接触が、前記乾留バイオマスに前記タールを含有する排出ガスを接触させて、前記ガスおよび前記タール中の炭素分を前記乾留バイオマスに付着析出させることからなる、
請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項19】
互いに接続された2基の乾留炉を有する2塔式の充填移動層方式の炉を用いてバイオマスを乾留してバイオマス炭を製造する方法であって、
一方の乾留炉でのバイオマスの乾留により発生したガスとタールとを他方の乾留炉内のバイオマスに接触させ、
前記他方の乾留炉内のバイオマスの乾留の際に前記ガスおよび前記タール中の炭素分を前記他方の乾留炉内のバイオマスに付着析出させる、
請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項20】
乾留炉内でのバイオマスの乾留温度を400℃〜800℃とする請求項19に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項21】
乾留炉内でのバイオマスの滞留時間を30分以上とする請求項19に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項22】
前記バイオマスの炭化が、第1の乾留炉でバイオマスを乾留し、ガスとタールを発生させことからなり、
前記タールの少なくとも一部の接触が、第1の乾留炉で発生したガスとタールを第2の乾留炉内のバイオマスに接触させて、第2の乾留炉内のバイオマスの乾留の際に前記ガスおよび前記タールを第2の乾留炉内のバイオマスに付着析出させることからなる、
請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項23】
バイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する竪型炉と、
前記竪型炉の頂部または側方上部に設けられたバイオマスの投入口と、
前記竪型炉の頂部または側方上部に設けられた排出ガスの排出口と、
前記竪型炉の底部、または前記排出口より下方である側方下部に設けられた熱風の吹き込み口と、
前記排出ガスの少なくとも一部を空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機と、
を有するバイオマス炭の製造装置。
【請求項24】
さらに、排出ガスから少なくともガス成分とタールとを分離する分離機を有する、請求項23に記載のバイオマス炭の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−248061(P2010−248061A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67803(P2010−67803)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】