説明

バイオ燃料の製造方法

【課題】少ない酵素量でも極めて短時間での反応により、油脂からバイオ燃料として有用なエステルを高転換率で製造することが可能なバイオ燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中に分散されている廃白土に酵素の存在下で低級一価アルコールを反応させてエステルとするバイオ燃料の製造方法において、前記反応を、ゼオライト、炭酸ソーダ或いはアルミナの共存下で行なうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ燃料の製造方法に関するもので、より詳細には廃白土中の油脂を利用したバイオ燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂を利用した環境に優しい燃料が、バイオ燃料などの名称で知られている。このバイオ燃料は、使用済みの天ぷら油に苛性ソーダ及びメタノールを作用させることにより、バイオ燃料として使用されるメチルエステルを得るというものである。
【0003】
上記のような方法では、一般に、アルカリ触媒法または酸触媒法によりエステル化が行なわれるが、この方法は、工程数が多く、しかも用いたアルカリ、酸及び副生するグリセリン、石鹸が反応系に残留するため、これを除去するための煩雑な操作が必要となるという問題がある。
【0004】
上記のような不都合を回避するための方法としては、リパーゼ等の酵素を触媒として使用して油脂をメタノールと反応させてバイオ燃料として使用されるメチルエステルを製造する方法が知られている。例えば、特許文献1,2には、油脂を酵素及びゼオライトの存在下でメタノールと反応させる方法が提案されている。また、油脂を酵素及びアルカリ性物質(炭酸ナトリウム等)の存在下でメタノールと反応させる方法も提案されている(特許文献3)。更に、本発明の出願人は、先に、油脂精製の分野において副生する廃白土にメタノールと共にリパーゼ等の酵素を作用させて廃白土に担持されている油脂分をメチルエステルに転換させる方法を提案した(特許文献4)。
【0005】
上記特許文献1〜4に記載されているように、酵素を触媒として用いる方法は、油脂分に遊離脂肪酸が含まれている場合にも、脂肪酸がメチルエステルに転換されるため、脂肪酸を分離する必要がなく、また、酸やアルカリを反応系から除去する工程が不要であるという利点がある。
【特許文献1】特開昭59−28482号公報
【特許文献2】特開平2−203790号公報
【特許文献3】特開平2−203789号公報
【特許文献4】特開2003−336082号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1で提案されている方法は、ゼオライトを脱水剤として使用することにより、生成したメチルエステルの加水分解を抑制し、これにより、高転換率でメチルエステルを得ることができるというものであり、特許文献2,3では、多孔性物質(ゼオライト等)またはアルカリ性物質(炭酸ナトリウム等)を添加することで酵素の延命効果があるというものであり、特許文献4では、油脂類の精製工程で副生し、本来廃棄される多量の廃白土を油脂源として使用するものであり、資源の再利用などの観点から工業的に有用であるという利点がある。
【0007】
しかしながら、上記先行技術に示されているような酵素を触媒として使用する方法では、高転換率でメチルエステルを得るために高価な酵素を多量に使用しなければならず、製造コストが著しく高価になってしまうという大きな問題がある。例えば、製造コストを低減させるために酵素の量を少なくすると、80%以上の転換率でメチルエステルを製造しようとすると、反応を著しく長時間行わなければならず、結局、原料コストが安価になるだけで、トータルの製造コストは低減されない。
【0008】
従って、本発明の目的は、少ない酵素量でも極めて短時間での反応により、油脂からバイオ燃料として有用なエステルを高転換率で製造することが可能な遊離アルカリを含まないバイオ燃料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、酵素を触媒として油脂をバイオ燃料に転換させる方法について鋭意検討した結果、油脂源として廃白土を使用した場合には、特定の無機化合物がエステル化反応を促進する反応促進剤として作用し、このような反応促進剤を、廃白土、酵素及び低級一価アルコールと共存させた状態で、この廃白土中の油脂分をバイオ燃料(低級一価アルコールのエステル化物)に転換させるときには、酵素量を著しく少なくした場合にも、短時間で80%以上の高転換率でバイオ燃料が得られるという意外な知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、有機溶媒中に分散されている廃白土に酵素の存在下で低級一価アルコールを反応させてエステルとするバイオ燃料の製造方法において、
前記反応を、アルカリ性無機化合物及びアルミニウム酸化物乃至水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の反応促進剤の共存下で行なうことを特徴とするバイオ燃料の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の製造方法においては、
(1)前記廃白土100重量部当り、酵素を0.01乃至1.0重量部及び前記反応促
進剤を0.1乃至10重量部の量で前記有機溶媒中に添加すること、
(2)前記アルカリ性無機化合物として、周期律表1族及び/または2族の金属含有ア
ルカリ性無機化合物を使用すること、
(3)前記アルカリ性無機化合物として、ゼオライトまたは炭酸ナトリウムを使用する
こと、
(4)前記ゼオライトとして、A型ゼオライトを使用すること、
(5)前記ゼオライトとして、860℃での強熱減量が15重量%以上のものを使用す
ること、
(6)前記アルミニウム酸化物乃至水酸化物として、BET比表面積が100m/g
以上のアルミニウム酸化物乃至水酸化物を使用すること、
(7)前記反応を20乃至50℃で行うこと、
(8)酵素としてリパーゼを使用すること、
(9)低級一価アルコールとして、メタノールを使用すること、
(10)前記有機溶媒、廃白土、酵素、低級一価アルコール及び反応促進剤を、反応容
器に投入して攪拌混合することにより、該廃白土中の油脂分を低級一価アルコールと反
応させてエステルを生成せしめること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、有機溶媒中に分散されている廃白土に酵素の存在下で低級一価アルコールを反応させてエステルを生成させるが、かかる反応に際して、アルカリ性無機化合物(例えばゼオライト)及びアルミニウム酸化物乃至水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種を反応促進剤として共存させることが重要な特徴であり、これにより、酵素量を著しく低減させた場合にも著しく短時間で80%以上の高転換率でバイオ燃料となるエステルを製造することができ、製造コストを大幅に低減させることが可能となる。例えば、後述する実施例の実験結果に示されているように、100重量部の廃白土に対し、僅か0.1重量部の酵素(リパーゼ)の使用により、僅か72時間程度の反応時間で80%の転換率で廃白土中の油脂からメチルエステルを得ることができるのである(実施例1参照)。
【0013】
本発明において、ゼオライト等のアルカリ性無機化合物やアルミニウム酸化物乃至水酸化物を共存させることにより、酵素量を著しく低減させることが可能である理由は正確には解明されていないが、本発明者等は次のように推定している。
【0014】
即ち、油脂は脂肪酸のトリグリセリドであり、酵素の存在下でメタノール等の低級一価アルコールを作用させることにより、エステル交換(具体的にはアルコーリシス)により脂肪酸の低級一価アルコールエステルが生成する。或いは、一旦、油脂が加水分解して脂肪酸が生成し、この脂肪酸が低級一価アルコールと脱水縮合してエステルが生成するものとされている。酵素は、上記のエステル交換或いは油脂の加水分解及びエステル化などの反応に対して触媒作用を有しているものである。
【0015】
ところで、ゼオライトを酵素と共存させて油脂からメチルエステルを製造することは、特許文献1,2に記載されているように公知である。この場合、ゼオライトは脱水剤として作用するものであり、生成したメチルエステルの加水分解を抑制し、これにより、高転換率でメチルエステルが得られるというものである。しかるに、後述する比較例5に示されているように、油脂そのものをゼオライト及び酵素の存在下でメタノールと反応させた場合、油脂当り0.3重量%の酵素(リパーゼ)量では、わずか1.2%の転換率でしかメチルエステルを得ることができない。これに対して、油脂源として廃白土(油脂分含量;30重量%)を使用し、これをゼオライト及び酵素の存在下でメタノールと反応させた場合には、油脂分当り0.3重量%の酵素(リパーゼ)量で、80%以上の転換率でメチルエステルが得られる(実施例3)。
これは、炭酸ナトリウムやアルミニウム酸化物乃至水酸化物を用いた場合でも同様であり、これらは、油脂そのものを酵素の存在下でメタノールと反応させる系に共存させたときには、メチルエステルへの転換率は著しく低いが(比較例7及び比較例8参照)、廃白土を油脂源として用いた系に共存させた場合には、メチルエステルへの転換率は、著しく向上することとなる(実施例4、実施例8参照)。
【0016】
上記の実験結果から理解されるように、本発明において、ゼオライトに代表されるアルカリ性無機化合物やアルミニウム酸化物乃至水酸化物から選択される反応促進剤は、脱水剤として機能しているのではなく、油脂分を担持している廃白土が反応促進剤とともに、エステル交換や油脂の加水分解および加水分解で生成した脂肪酸のエステル化に対して、直接的に触媒として或いは酵素の助触媒として、又は酵素の阻害要因を抑制する機能を有し、これらの相乗効果によって油脂から脂肪酸の低級一価アルコールエステルへの転換反応が著しく促進されるのではないかと推定している。
【0017】
また、本発明で用いる反応促進剤が脱水機能に由来して転換率を向上させるというものではないことは、脱水機能をほとんど有していないゼオライトを反応促進剤として用いた場合にも、メチルエステルへの転換率が著しく向上することからも理解される。即ち、脱水機能を示すゼオライトは、焼成等の高温での熱処理に供されたものであり、吸着水分や結晶水などが熱処理により除去されているため、その強熱減量は著しく少なく、例えば860℃での強熱減量は10重量%以下である。しかるに、本発明では、上記のような熱処理が行なわれておらず、強熱減量(860℃)が15重量%以上のゼオライトを用いた場合にも一価アルコールエステルへの転換率を著しく向上させることができるのである。例えば、後述する実施例1で使用されているゼオライトは、焼成されておらず、その強熱減量(860℃)は22.3重量%である。
【0018】
このように、本発明のバイオ燃料の製造方法は、本来、廃棄されるべき廃白土を油脂源として使用し、しかも高価な酵素の使用量を著しく低減させて短時間且つ高転換率で低級一価アルコールエステルを製造できるため、省資源、製造コスト等の観点から工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の製造方法は、概説すると、廃白土中の油脂分に酵素及び反応促進剤の存在下で低級一価アルコールを作用させて該油脂分を脂肪酸の低級一価アルコールエステル、即ちバイオ燃料に転換するものである。
【0020】
<廃白土>
本発明の方法に用いる廃白土は、漂白土を油脂類の脱色乃至精製に用い、この工程で分離副生するものであり、油分を包蔵しており、これを廃棄することは環境汚染の点から許されず、その有効利用が熱望されていたものである。Ca型ベントナイトや酸性白土のごときモンモリロナイトを主成分とする粘土、あるいはこの粘土を酸処理及び/又はアルカリ処理して得られる活性白土、さらにはアタパルジャイトを漂白土という。
【0021】
即ち、脱色乃至精製すべき油脂に、漂白土を粉末の状態で脱色剤乃至精製剤として添加し、両者を均一に攪拌することにより、油脂中に含有される着色成分や不純物を漂白土粒子に吸着させる。脱色乃至精製処理後分離される廃白土中には、用いた漂白土の吸油量に相当する量の油脂が保持されている。
【0022】
油脂の脱色乃至精製処理は、それ自体公知の条件であり、例えば油脂当たり重量基準で0.1乃至5%の漂白土を脱色乃至精製剤として添加し、90乃至150℃の温度で5乃至30分間、両者の組成物を撹拌することにより、脱色乃至精製処理を完了することができる。
【0023】
脱色乃至精製処理を終えた混合物は、これを任意の濾過機、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、オリバーフィルター、アメリカンフィルター、遠心濾過機等の減圧乃至は加圧式濾過機に供給して、精製油脂と使用済みの脱色乃至精製剤である所謂廃白土が得られる。この廃白土には、精製する原料油の種類にもよるが、粒子に保持されている油脂分を、一般に20乃至60重量%程含有している。また、この油脂分には油脂100重量%中にグリセリドと共に1乃至40重量%程度の遊離脂肪酸も含まれているが、本発明においては、酵素を触媒として油脂を低級一価アルコールエステルに転換させるため、遊離脂肪酸も同時にエステル化されることとなり、従って、このような遊離脂肪酸を除去する等の工程は不要である。
【0024】
即ち、油脂類の脱色、精製には、Ca型ベントナイトやアタパルジャイトなどの粘土或いはこれら粘土の酸処理物が脱色乃至精製用漂白土として使用され、特に、Ca型ベントナイトや酸性白土などのモンモリロナイトを主成分とする粘土やその酸処理物が、特に多用されている。本発明で油脂源として用いる廃白土は、その使用済み物質である。
【0025】
酸性白土等の主成分であるモンモリロナイトは、二つのSiO4の四面体層がAlO6八面体層を間に挟んでサンドイッチされた三層構造を基本単位としており、この基本単位の三層構造がさらにC軸方向に多数積層されて層状結晶構造を構成しているアルミノケイ酸塩である。この層状結晶構造はモンモリロナイトを含むスメクタイト族粘土鉱物に共通している。
【0026】
モンモリロナイトを主成分とする粘土の内でも本邦において広く産出する酸性白土は、風化により、モンモリロナイトの基本単位である三層構造中のAlO6八面体層のAl原子の一部がマグネシウムや鉄等で置換され、その原子価を補うように水素イオンが結合している。したがって、酸性白土を食塩水溶液中に懸濁させてそのpHを測定すると、前記水素イオンがナトリウム(Na)イオンで置換され、酸性を示す。一方、ベントナイトは交換性陽イオンが大部分ナトリウム(Na)であるため、pHも中性から微アルカリ性を示し、水膨潤性も大きいのに対して、酸性白土ではナトリウムイオンがアルカリ土類金属で置換され、アルカリ金属成分が少なく、しかも水膨潤性も低下しており、またケイ酸分の含有量も高いため、吸着性の点で極めて有利である。かくして、モンモリロナイトを主成分とする粘土としては、本邦で産出する任意の酸性白土が広く使用されており、また、世界的にはCa型ベントナイトと呼ばれる粘土が使用されている。
【0027】
下記に、油脂の脱色乃至精製に用いる酸性白土(100℃乾燥品)の一般的化学組成の一例を示す。
酸性白土の化学組成:
SiO:61.0〜74.0(重量%)
Al:12.0〜23.0
Fe:2.0〜3.5
MgO:3.0〜7.0
CaO:1.0〜4.0
O:0.3〜2.0
NaO:0.3〜2.0
Ig.loss:5.0〜10.0
【0028】
酸性白土を用いるに際して、その中に含有される岩石類のクリストバライト、石英、長石等は、比重差を利用した分離方法(水簸や風簸等の分級手段)で容易に分離することができる。また、この中で結晶性ケイ酸のクリストバライトはアルカリと容易に反応してケイ酸アルカリに転化できるので、この方法でも除去することができる。これらの方法によって、層状結晶構造物の純度を向上させることができる。
【0029】
一方、酸性白土の酸処理物は、一般に油脂類等の精製剤である活性白土として知られている。この酸処理物は、酸性白土を硫酸や塩酸等の鉱酸溶液で処理して、含有する塩基性成分の一部を溶出せしめ、洗浄することによって容易に調製される。この酸処理によって、本来酸性白土が持っていた層状結晶構造の一部は破壊されるが、ケイ酸(SiO)の含有率は増加し、このことによって、比表面積は増大し、吸着能等の物性は向上する。酸性白土の酸処理物、一般に市販されている活性白土ならびにその製造中間品は、優れた特性を有する精製剤となる。
【0030】
この酸処理物の化学組成は、原料酸性白土の種類や酸処理条件等によっても相違するが、一般に下記に示す組成を有する。
活性白土(酸性白土の酸処理物)の化学組成;
SiO:65.0〜83.0(重量%)
Al:5.0〜12.0
Fe:1.0〜3.5
MgO:1.0〜7.0
CaO:0.5〜4.0
O:0.2〜2.0
NaO:0.2〜2.0
Ig.loss:5.0〜10.0
【0031】
上記のような酸性白土や活性白土を油脂の脱色乃至精製に使用した後、回収された廃白土中には油脂分が担持されており、本発明においては、このような廃白土、厳密には漂白土に担持されている油脂分を油脂源として用いる訳である。このような油脂分は、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とするものであり、例えばサフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などの植物油や、牛脂、鯨油及び魚油などの動物性油などである。
【0032】
上記の油脂分は、一般に廃白土中に20乃至60重量%程度の量で含まれている。この中には、油脂100重量%中1乃至40重量%程度の量で遊離の脂肪酸も含まれている。
【0033】
<酵素>
本発明において、酵素としては、油脂分に対してエステル交換或いは加水分解及び加水分解によって生成した脂肪酸の脱水縮合によって低級一価アルコールのエステル(バイオ燃料)を生成し得るものであれば、何れをも用いることができるが、一般にはリパーゼが用いられる。リパーゼとしては、その由来等は特に限定されず、微生物由来のリパーゼ、植物由来のリパーゼ、動物膵臓由来のリパーゼ等が使用される。また、用いるリパーゼは適切な担体に固定化されたものであってもよい。
【0034】
リパーゼの具体的な例として、Alcaligenes sp由来のリパーゼQLM(名糖産業)、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(名糖産業)、Candida rugosa由来のリパーゼTypeVII(シグマ)、Rhizopus arrhizus由来のリパーゼType11(シグマ)、Rhizopus oryzae由来のリパーゼF−AP15(天野エンザイム)、Rhizopus japonicus NR400由来のリパーゼA−10FG(ナガセ)、Aspergillus niger由来のSumizymeNLS(新日本化学)、Phycomyces nitens NRRL 2444由来のリパーゼPN(和光)、Porcine pancreas由来のリパーゼTypeII(シグマ)、Pseudomonas cepacia由来のリパーゼ(シグマ)、Mucor javanicus由来のリパーゼ(シグマ)、アルカリリパーゼ(NOVO)などを挙げることができるが、これらは説明のための例示であり、如何なる意味でもこれに限定されない。
【0035】
<反応促進剤>
本発明において、上述した酵素と共に、反応促進剤として、アルカリ性無機化合物及びアルミニウム酸化物乃至水酸化物の少なくとも1種が使用される。これら以外のもの、例えばイオン交換樹脂や酸性乃至中性の無機化合物などは、反応促進剤としての機能は全く有していない。反応促進剤は、廃白土100重量部当り0.1乃至10重量部、好ましくは1乃至10重量部の量、さらに好ましくは1乃至5重量部の量で添加される。
【0036】
上記のアルカリ性無機化合物、即ち水に溶解乃至分散させたときにアルカリ性を呈する無機化合物としては、周期律表1族及び/または2族の金属を含有するアルカリ性無機化合物が好ましい。即ち、このようなアルカリ性無機化合物を共存させて酵素を触媒としての反応を行うことにより、少ない酵素量でも反応を著しく促進させ、短時間且つ高転換率でバイオ燃料となる低級一価アルコールエステルを得られるわけである。
【0037】
本発明において、上記のようなアルカリ性金属を含有するアルカリ性無機化合物の例としては、例えば5重量%濃度での水溶液若しくは水分散液で測定したときのpH(25℃)が8.5以上のもの、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属化合物、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、シリカとマグネシアとの複合酸化物、及び1族及び/または2族の金属を含むA型、Y型、X型、モルデナイト、クリノプチロライト等のゼオライトなどを例示することができる。本発明において、特に効果的なものは、A型ゼオライト、Y型ゼオライト及び炭酸ナトリウムである。この場合、pHが上記よりも低いアルカリ性無機化合物として、NaHCO3があるが、反応の促進に寄与する効果は少ない。
【0038】
また、先にも述べたが、ゼオライトとしては、焼成などの熱処理がされておらず、強熱減量(860℃)が15重量%以上、特に20重量%以上のものが好適である。即ち、本発明で用いるゼオライトは、脱水機能により反応を促進させるものではないため、強熱減量の多いゼオライトを使用することができ、しかもこのようなゼオライトは、熱処理が行なわれたとしても乾燥程度の軽度の熱処理でよいため、その生産コストが安価であるという利点を有している。更にゼオライトが優れている点として、バイオ燃料中にゼオライトのNa分が溶出しない事が挙げられる。エンジンにNaを含有するバイオ燃料を使用すると、装置の金属腐食が起きてしまう。しかしながら、本発明において反応促進剤としてゼオライトを用いた場合でも、Na分はほとんど溶出しない(実施例1参照)。
【0039】
また、本発明においては、アルミニウム酸化物乃至水酸化物も反応促進剤として使用することができ、アルミニウム酸化物乃至水酸化物を用いた場合にも、メチルエステルへの高い転換率を得ることができる。このようなアルミニウム酸化物乃至水酸化物としては、非晶質水酸化アルミニウム;非晶質水酸化アルミニウムを加熱・焼成して得られるベーマイト、擬ベーマイト、ダイアスポア、ギブサイトおよびバイヤライトなどの結晶性水酸化アルミニウム;アルミナ水和物の脱水過程で生成するγ―アルミナ・η―アルミナ・χ―アルミナ・α―アルミナなどがあげられる。特に好ましいのはベーマイト、擬ベーマイトおよびγ―アルミナである。アルミニウム酸化物乃至水酸化物はその比表面積が大きいものほど効果的であり、例えばBET比表面積が100m/g以上、特に180乃至400m/gの範囲にあるアルミニウム酸化物乃至水酸化物が最も好適である。比表面積が100m2/gよりも小さいものは、反応の促進に寄与する効果はやや低い。
【0040】
<低級一価アルコール>
エステル化に用いる低級一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール等の炭素数8以下のアルコールを挙げることができるが、特に炭素数7以下が好ましく、中でも反応性及びコストの点でメタノールが好ましい。
【0041】
<反応>
本発明において、上述した酵素、反応促進剤の存在下で廃白土中の油脂分に低級一価アルコールを作用させるエステル化反応は、有機溶媒、廃白土、酵素、低級一価アルコール及び反応促進剤を、反応容器に投入し、酵素が失活しないような温度範囲、例えば20乃至50℃、特に20乃至40℃の室温程度の温度範囲で攪拌混合することにより行われる。即ち、反応形態としては、例えば酵素や反応促進剤をカラムに充填し、このカラムに廃白土や低級一価アルコールを連続的に供給する方法も採用し得るが、本発明においては、著しく短時間で高い転換率を得ることができるため、上記のようなバッチ法が最も好適である。
【0042】
有機溶媒としては、上記反応を阻害せず、反応に供する低級一価アルコールや廃白土中の油脂分及び生成するエステルを溶解し得るものであれば特に制限されないが、一般的には、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、軽油、灯油等が使用される。
【0043】
有機溶媒の量は、廃白土が流動化する量で充分であるが、これに規定されない。
【0044】
酵素の使用量は、廃白土中に含有される油脂分量に応じて設定されるが、本発明では、特に反応促進剤の併用により、反応が促進されるため、コストや目的とする転換率、該転換率を得るための反応時間を考慮して酵素の使用量を決定するのがよい。酵素の使用量の上限は、特に制限されないが、酵素は非常に高価であり、多量に酵素を使用することは製造コストの大幅な上昇をもたらす。従って、一般的には、酵素の使用量は、廃白土100重量部当り、0.01乃至1.0重量部とするのがよい。
【0045】
また、反応促進剤の使用量は、廃白土に含まれる油脂分量によっても多少異なるが、一般的には廃白土100重量部当り0.1乃至10重量部の範囲がよい。即ち、上記範囲よりも多量に反応促進剤を使用した場合には、反応促進効果のさらなる増大は望めず、コストの増大がもたらされるに過ぎない。また、上記範囲よりも少ない場合には、十分な反応促進効果が得られず、酵素量を少なくしたときに、所望の転換率を達成するまでの反応時間が長くなってしまう。
【0046】
低級一価アルコールは、廃白土に担持されている油脂分から生成する脂肪酸(遊離脂肪酸も含む)に対して当量以上の量で用いるのがよく、特に脂肪酸:アルコール(モル比)が1:3乃至1:6、好ましくは1:3.5乃至1:5の量がよい。アルコールの量がこれよりも多いと、酵素が失活してしまう。
【0047】
各成分の添加順序は任意であり、例えば低級一価アルコールと廃白土とを混合し、この混合物に有機溶媒を加えて廃白土を均一に分散させた後、酵素の粉末や反応促進剤を添加してもよいし、始めに廃白土を有機溶媒に分散させた後に、低級一価アルコール、酵素及び反応促進剤を一括で添加することもできる。また、低級一価アルコール、酵素及び反応促進剤などは、その種類によっては、水溶液の形態で添加することもできるが、一般的には、反応系への過剰な水分の導入を避けることが望ましい。過剰な水分の導入は、生成したエステルを加水分解せしめる要因となり、エステルの転換率を低下せしめる傾向があるからである。
【0048】
上記のようにして反応を行い、生成した脂肪酸のエステルは、遠心分離、蒸留、抽出等のそれ自体公知の精製手段で分離回収することができる。尚、廃白土を油脂源として利用する本発明では、副生するグリセリンが廃白土に吸着されるため、グリセリンの分離工程を省略できるという利点もある。
【0049】
また、エステルを分離した後の廃白土残渣には未反応のグリセリド或いは酵素が残留する場合がある。この残渣に含まれるグリセリドを抽出し、これを前述した反応工程に循環使用することもできる。また、必要に応じて廃白土残渣に含まれる酵素は再利用することもできる。
【0050】
上述した本発明では、少ない酵素量でも短時間での反応により高転換率で低級一価アルコールのエステルを得ることができ、製造コストを大幅に低減させ、工業的に極めて有用である。
【0051】
尚、油脂類の脱色や精製処理には、シリカとマグネシアとの複合酸化物の粉末であるシリカ・マグネシア製剤も使用されることがある(例えば特開2005−8676号等参照)。上述した本発明を利用して、外食産業などから排出される使用済みの廃シリカ・マグネシア製剤を油脂源として用い、酵素の存在下でメタノール等の低級一価アルコールを反応させて燃料となるエステルを製造することができる。また、使用済みの廃シリカ・マグネシア製剤混入廃白土を油脂源として用い、酵素の存在下でメタノール等の低級一価アルコールを反応させて燃料となるエステルを製造することもできる。この場合には、シリカ・マグネシア製剤中のマグネシア成分が、本発明における反応促進剤(アルカリ性無機化合物)としての機能を有するため、反応促進剤を別途添加することなく、高い転換率を確保することができる。
【実施例】
【0052】
本発明の優れた効果を、次の実施例及び比較例により説明する。なお、測定は以下の方法で行った。
【0053】
(1)廃白土中の油脂分の測定方法
社団法人 日本油化学会制定 基準油脂分析法 1.5−1996に準拠し、有機溶媒試薬としてn−ヘキサンを用いて廃白土中の油脂分を求めた。
【0054】
(2)メチルエステル濃度測定方法
反応液は遠心分離後にメンブレンフィルターで濾過し、500mgを軽油5gと混合して試料液とした。
これを送液ポンプLC−20AD、オートサンプラーSIL−20A、カラムオーブンCTO−20A、示差屈折率検出器RID−10Aおよびコントローラ−CM−20A(それぞれ島津製作所製)およびデータ処理装置で構成された高速液体クロマトグラフシステムを用いて下記条件で測定し、試料のメチルエステルピーク面積を得た。
カラム:Luna 5u Silica(2)100A
(Phenomenex製)
カラム温度:40℃
溶離液:0.4体積%2−プロパノールと99.4体積%n−ヘキサン混合液溶離液
流量:1.0ml/分
注入量:10μl
検量線については、ステアリン酸標準品(和光純薬製)を各10mg、50mg、100mg、500mgと軽油5gの混合液を標準液として同様に測定し、ピーク面積から軽油中のメチルエステル濃度検量線を得た。
検量線より試料中のメチルエステル濃度(重量%)を求めた。
【0055】
(3)メチルエステル変換率の計算方法
下記の計算式により、メチルエステルの変換率を求めた。
メチルエステル変換率(%)=(試料メチルエステル濃度/反応前油脂濃度)×100
ここで反応前油脂濃度とは、反応時に添加される有機溶媒と廃白土中の油脂が均一になっているとした場合の油脂分濃度であり、次の計算式で計算される。
反応前油脂濃度(%)=[A/(A+B)]×100
Aは、漂白土中油脂重量(g)
Bは、反応前に添加した有機溶媒重量(g)
【0056】
(4)ゼオライトの強熱減量
強熱減量は、試料を860℃で30分間焼成後放冷し、減量から定量した。
実施例及び比較例で用いた各ゼオライトの強熱減量は、以下の通りである。
強熱減量
4A型ゼオライト 22.3重量%
5A型ゼオライト 21.7重量%
Y型ゼオライト 25.7重量%
【0057】
(5)BET比表面積
Micromeritics社製Tri Star 3000を用いて測定を行った。比圧が0.05から0.35以下の吸着枝側窒素吸着等温線からBET法で解析した。
【0058】
(比較例1)
500ml三角フラスコにパーム油精製に用いた油脂分33重量%の廃白土68g、メタノール3.1g、軽油54.7gとリパーゼ(名糖産業製 Lipase−QLM)0.068gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。24時間毎に試料をサンプリングし、メチルエステル変換率を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例1)
比較例1と同じ処方に4A型ゼオライトを1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表1に示す。また、得られたバイオ燃料中のNa分を、基準油脂分析試験法(日本油化学会編)2.6.2−1996に準拠して求めた。その結果、Na分は検出限界(5ppm)未満であった。
【0060】
(実施例2)
比較例1と同じ処方に試薬炭酸ナトリウムを1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2)
比較例1と同じ処方に陽イオン交換樹脂(ダウケミカル社製 DOWEX 50W)を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例3)
比較例1と同じ処方に陰イオン交換樹脂(ロームアンドハース社製 IRA−400J)を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例4)
比較例1と同じ処方に試薬重炭酸ナトリウムを1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(比較例5)
パーム油精製に用いた廃白土200gとヘキサン1kgをよく混合した後にヘキサン相を分離し、ロータリーエバポレーターでヘキサンを留去して廃白土抽出油を得た。得られた抽出油28gにメタノール3.6g、軽油51g、リパーゼ(名糖産業製 Lipase−QLM)0.084g、4A型ゼオライト1.9gを加えて混合し、25℃で攪拌しながら反応させた。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例6)
比較例5と同じ処方でリパーゼ添加量を0.84gとして同様に反応した。結果を表2に示す。
【0067】
(比較例7)
比較例5と同じ処方で4A型ゼオライトの代わりに試薬炭酸ナトリウム1.9gを加えて同様に反応した。結果を表2に示す。
【0068】
(実施例3)
比較例5に用いた廃白土93.4g(油脂含有量28g)とメタノール3.6g、軽油51g、リパーゼ0.084g、4A型ゼオライト1.9gを混合し比較例5と同様に反応した。結果を表2に示す。
【0069】
(実施例4)
実施例3と同じ処方で4A型ゼオライトの代わりに試薬炭酸ナトリウムを1.9g加え同様に反応した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
(実施例5)
500ml三角フラスコに、パーム油精製に用いた油脂分34重量%の廃白土68g、メタノール3.1g、軽油54.7gとリパーゼ(名糖産業製 Lipase−QLM)0.068g、4A型ゼオライト1.4gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。24時間毎に試料をサンプリングし、メチルエステル変換率を測定した。結果を表3に示す。
【0072】
(実施例6)
実施例5と同じ処方で4A型ゼオライト添加量を3.4gとして同様に反応をおこなった。結果を表3に示す。
【0073】
(実施例7)
実施例5と同じ処方で4A型ゼオライト添加量を6.8gとして同様に反応をおこなった。結果を表3に示す。
【0074】
(実施例8)
実施例5と同じ処方で4A型ゼオライト添加量を13.6gとして同様に反応をおこなった。結果を表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
(比較例8)
比較例5と同じ処方で4A型ゼオライトの代わりにγ−アルミナ(水澤化学工業製MGA(BET比表面積194m/g))1.9gを加えて同様に反応した。結果を表4に示す。
【0077】
(実施例9)
実施例3と同じ処方で4A型ゼオライトの代わりにγ−アルミナ(水澤化学工業製MGA(BET比表面積194m/g))を1.9g加え同様に反応した。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
(実施例10)
比較例1と同じ処方にベーマイト(BET比表面積88m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0080】
(実施例11)
比較例1と同じ処方に擬ベーマイト(SASOL製CATALOX(BET比表面積184m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0081】
(実施例12)
比較例1と同じ処方にベーマイト(SASOL製CATAPAL C(BET比表面積243m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0082】
(実施例13)
比較例1と同じ処方にベーマイト(富田製薬製トミタAD220P(BET比表面積290m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0083】
(実施例14)
比較例1と同じ処方にγ−アルミナ(日本軽金属製C20(BET比表面積198m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0084】
(実施例15)
比較例1と同じ処方にγ−アルミナ(水澤化学工業製GP−20(BET比表面積243m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0085】
(実施例16)
比較例1と同じ処方にγ−アルミナ(水澤化学工業製MGA(BET比表面積194m/g))を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0086】
(実施例17)
比較例1と同じ処方にシリカとマグネシアとの複合酸化物(水澤化学工業製ミズカライフF−2G(重量比SiO:MgO=78:22)を1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0087】
(実施例18)
比較例1と同じ処方に5A型ゼオライトを1.4g加え、比較例1と同様に反応した。結果を表5に示す。
【0088】
【表5】

【0089】
(比較例9)
500ml三角フラスコにパーム油精製に用いた油脂分36重量%の廃白土68g、メタノール3.4g、軽油54.7gとリパーゼ(名糖産業製 Lipase−QLM)0.068gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。168時間後に試料をサンプリングし、メチルエステル変換率を測定した。結果を表6に示す。
【0090】
(実施例19、20)
比較例9と同じ処方にA型ゼオライトまたはY型ゼオライトを1.4g加え、比較例9と同様に反応した。結果を表6に示す。
【0091】
(比較例10〜12)
比較例9と同じ処方にX型ゼオライト、天然モルデナイトまたは天然クリノプチロライトを1.4g加え、比較例9と同様に反応した。168時間後のメチルエステル変換率(%)を表6に示す。
【0092】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中に分散されている廃白土に酵素の存在下で低級一価アルコールを反応させてエステルとするバイオ燃料の製造方法において、
前記反応を、アルカリ性無機化合物及びアルミニウム酸化物乃至水酸化物からなる群より選択された少なくとも1種の反応促進剤の共存下で行なうことを特徴とするバイオ燃料の製造方法。
【請求項2】
前記廃白土100重量部当り、酵素を0.01乃至1.0重量部及び前記反応促進剤を0.1乃至10重量部の量で前記有機溶媒中に添加する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ性無機化合物として、周期律表1族及び/または2族の金属含有アルカリ性無機化合物を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ性無機化合物として、ゼオライトまたは炭酸ナトリウムを使用する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライトとして、A型ゼオライトを使用する請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトとして、860℃での強熱減量が15重量%以上のものを使用する請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム酸化物乃至水酸化物として、BET比表面積が100m/g以上のアルミニウム酸化物乃至水酸化物を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記反応を20乃至50℃で行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
酵素としてリパーゼを使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
低級一価アルコールとして、メタノールを使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒、廃白土、酵素、低級一価アルコール及び反応促進剤を、反応容器に投入して攪拌混合することにより、該廃白土中の油脂分を低級一価アルコールと反応させてエステルを生成せしめる請求項1に記載のバイオ燃料の製造方法。

【公開番号】特開2009−138185(P2009−138185A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286622(P2008−286622)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000193601)水澤化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】