説明

バイスタティックレーダ装置

【課題】送信側と受信側の距離が未知であって、かつ、時刻同期をとらなくても目標位置を同定できる安価なバイスタティックレーダ装置を提供する。
【解決手段】目標および第1レーダ装置に向けて電波を送信する第2レーダ装置と第1レーダ装置とを備え、第1レーダ装置は、第2レーダ装置を検出するモノスタティック検出器3aと、検出された第2レーダ装置までの距離R0・角度θ0を計測する第1測距器4a・第1測角器5aと、第2レーダ装置からの電波に基づき第2レーダ装置を検出するセミアクティブ検出器7aと、検出された第2レーダ装置までの距離・角度θ3を計測する第2測距器8a・第2測角器9aと、角度θ0および角度θ3に基づき算出した第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、距離R0と第2測距器で計測された距離との距離差ΔRおよび距離R0を用いて目標までの距離R1を算出して目標位置を同定する目標位置同定器6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信と受信を離れた地点で行うことにより目標を検出するバイスタティックレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のモノスタティックレーダ装置の構成を示すブロック図である。このモノスタティックレーダ装置は、アンテナ1、送受信器2、モノスタティック検出器3、測距器8および測角器9を備えている。
【0003】
アンテナ1は、送受信器2から電気信号として送られてくる送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。また、アンテナ1は、空中からの電波を受信して電気信号に変換し、送受信器2に送る。
【0004】
送受信器2は、上述したように送信パルス信号を生成してアンテナ1に送るとともに、アンテナ1から送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてモノスタティック検出器3に送る。
【0005】
モノスタティック検出器3は、送受信器2から送られてくる受信パルス信号に基づき目標を検出し、目標信号として測距器8に送る。
【0006】
測距器8は、モノスタティック検出器3から送られてくる目標信号に基づき目標までの距離(以下、「目標距離」という)を算出し、測角器9に送る。
【0007】
測角器9は、モノスタティック検出器3から測距器8を介して送られてくる目標信号に基づき、当該モノスタティックレーダ装置から見た目標の角度(以下、「目標角度」という)を算出し、測距器8から送られてくる目標距離とともに、目標情報として外部に出力する。
【0008】
次に、上記のように構成される従来のモノスタティックレーダ装置の動作を、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0009】
まず、送受信が行われる(ステップS51)。すなわち、送受信器2は、送信パルス信号を生成してアンテナ1に送る。アンテナ1は、送受信器2から送られてきた送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。そして、アンテナ1は、送信波が目標で反射されて戻ってくる反射波を受信して電気信号に変換して送受信器2に送る。送受信器2は、アンテナ1から送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてモノスタティック検出器3に送る。
【0010】
次いで、モノスタティック検出が行われる(ステップS52)。すなわち、モノスタティック検出器3は、送受信器2から送られてくる受信パルス信号に基づき目標を検出し、目標信号として測距器8に送る。次いで、測距が行われる(ステップS53)。すなわち、測距器8は、モノスタティック検出器3から送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出し、測角器9に送る。
【0011】
次いで、測角が行われる(ステップS54)。すなわち、測角器9は、モノスタティック検出器3から測距器8を介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出し、測距器8から送られてくる目標距離とともに、目標情報として外部に出力する。以上により、モノスタティックレーダ装置の動作は終了する。
【0012】
上記のように構成される従来のモノスタティックレーダ装置は、レーダ反射断面積(RCS;Radar Cross Section)が小さい目標の場合に、システム利得の高い大型のモノスタティックレーダ装置であればともかく、例えば、飛翔体に搭載されるような小型のモノスタティックレーダ装置の場合は、目標を検出することが困難であった。
【0013】
このような問題を解消するために、送信器と受信器とを離隔して配置して目標を検出するバイスタティックレーダ装置が知られている。例えば、特許文献1は、送受信ビームの先鋭化を行うことなく、高精度の測位を行うことができるバイスタティックレーダ装置を開示している。このバイスタティックレーダ装置は、モノスタティックレーダ局の他に、モノスタティックレーダ送信波の目標からの反射波を受信するバイスタティックレーダ局を、モノスタティックレーダ局から離隔して設置し、バイスタティックレーダ局での受信波と送信波との時間差またはモノスタティックレーダ局での受信波との到来時間差から得られる目標の位置情報と、モノスタティックレーダ局で得られる目標の位置情報との相関処理により、高精度の測位を行う。
【0014】
また、特許文献2は、バイスタティックレーダ装置において、送信側と受信側との同期をとるのに、タイミング同期専用のチャネルを設け、送信側の送信実信号を一部分配して受信側に送信し、送信タイミングを通知している。
【0015】
また、非特許文献1は、送信器と受信器を離隔して配置し、大きなバイスタティック角により電波を送受信すると、RCSが大きく観測されることを利用して目標を検出するマルチスタティックレーダ装置を開示している。
【特許文献1】特開平4−29080号公報
【特許文献2】特開平3−273183号公報
【非特許文献1】MERRILL I SKOLNIK, “Radar Handbook second Edition”, chap25, pp.25.1-25.29 (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述した従来のバイスタティックレーダ装置またはマルチスタティックレーダ装置において、目標位置を同定するためには、送信器と受信器との間の距離を正確に測定する必要がある他に、送信器と受信器との間で時刻同期をとる必要がある。この時刻同期をとるために、送信器および受信器に、例えば原子時計といった高価な時計を用いる必要があり、バイスタティックレーダ装置が高価になるという問題がある。
【0017】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、送信側と受信側の距離が未知であって、かつ、時刻同期をとらなくても目標位置を同定できる安価なバイスタティックレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、第1の発明は、第1レーダ装置と第2レーダ装置とを備え、第2レーダ装置は、目標および第1レーダ装置に向けて電波を送信し、第1レーダ装置は、第2レーダ装置から送信された電波に基づき目標位置を同定するバイスタティックレーダ装置であって、第1レーダ装置は、第2レーダ装置に向けて電波を送受信することにより該第2レーダ装置を検出するモノスタティック検出器と、モノスタティック検出器で検出された第2レーダ装置までの距離R0を計測する第1測距器と、モノスタティック検出器で検出された第2レーダ装置の基準方向からの角度θ0を計測する第1測角器と、第2レーダ装置から送信されて目標で反射された電波に基づき第2レーダ装置を検出するセミアクティブ検出器と、セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置までの距離を計測する第2測距器と、セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置の基準方向からの角度θ3を計測する第2測角器と、第1測角器で計測された角度θ0および第2測角器で計測された角度θ3に基づき算出した第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、第1測距器で計測された距離R0と第2測距器で計測された距離との距離差ΔR、および、第1測距器で計測された距離R0を用いて所定の演算を行うことにより目標までの距離R1を算出し、以て目標位置(R1およびθ1)を同定する目標位置同定器とを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、第2の発明は、第1レーダ装置と第2レーダ装置とを備え、第2レーダ装置は、目標および第1レーダ装置に向けて電波を送信することにより第1レーダ装置を検出するモノスタティック検出器と、モノスタティック検出器で検出された第1レーダ装置までの距離R0を計測する第3測距器と、モノスタティック検出器で検出された第1レーダ装置の基準方向からの角度θ0を計測する第3測角器と、第3測距器で計測された距離R0および第3測角器で計測された角度θ0を第1レーダ装置に送信する送信データリンク装置とを備え、第1レーダ装置は、第2レーダ装置から送信されて目標で反射された電波に基づき第2レーダ装置を検出するセミアクティブ検出器と、セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置までの距離を計測する第2測距器と、セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置の基準方向からの角度θ3を計測する第2測角器と、第2レーダ装置の送信データリンク装置から送信された距離R0および角度θ0を受信する受信データリンク装置と、受信データリンク装置で受信された角度θ0および第2測角器で計測された角度θ3に基づき算出した第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、受信データリンク装置で受信された距離R0と第2測距器で計測された距離との距離差ΔR、および、受信データリンク装置で受信された距離R0を用いて所定の演算を行うことにより目標までの距離R1を算出し、以て目標位置(R1およびθ1)を同定する目標位置同定器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、互いに距離や方向が未知であって、時刻同期がとれない場合であっても、モノスタティックレーダ装置では検出できないような小目標の位置を同定することができる安価なバイスタティックレーダ装置を提供できる。
【0021】
具体的には、第1の発明によれば、第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、第1レーダ装置から第2レーダ装置までの距離R0と第1レーダ装置から目標を経由する第2レーダ装置までの距離との距離差ΔR、および、第1レーダ装置から第2レーダ装置までの距離R0をそれぞれ計測し、これらを用いて所定の演算を行うことにより目標までの距離R1を算出し、目標位置(R1およびθ1)を同定するので、第1レーダ装置と第2レーダ装置との間の距離が未知で、かつ、時刻同期がとれない場合であっても、目標位置を同定できる。したがって、例えば原子時計といった高価な時計を用いる必要がなく、バイスタティックレーダ装置を安価に構成できる。
【0022】
また、第2の発明によれば、第2レーダ装置で電波を送受信することにより第1レーダ装置までの距離R0および第1レーダ装置の角度θ0を第1レーダ装置に送信し、第1レーダ装置では、第2レーダ装置から受信した距離R0および角度θ0に基づき算出した第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、第2レーダ装置から受信した第1レーダ装置から第2レーダ装置までの距離R0と第1レーダ装置から目標を経由する第2レーダ装置までの距離とに基づき算出した距離差ΔR、および、第2レーダ装置から受信した距離R0を用いて所定の演算を行うことにより目標までの距離R1を算出し、目標位置(R1およびθ1)を同定するので、第1レーダ装置と第2レーダ装置との間の距離が未知で、かつ、時刻同期がとれない場合であっても、目標位置を同定できる。しかも、第1レーダ装置は、電波を送信することなく、受信するだけで目標位置を同定できるので第1レーダ装置の秘匿性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の構成を示すブロック図である。このバイスタティックレーダ装置は、第1レーダ装置と第2レーダ装置とから構成されている。
【0025】
第1レーダ装置は、アンテナ1a、送受信器2a、モノスタティック検出器3a、第1測距器4a、第1測角器5a、セミアクティブ検出器7a、第2測距器8a、第2測角器9aおよび目標位置同定器6を備えている。
【0026】
アンテナ1aは、送受信器2aから電気信号として送られてくる送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。また、アンテナ1aは、空中からの電波を受信して電気信号に変換し、送受信器2aに送る。アンテナ1aで受信される電波には、アンテナ1aから空中に放射された送信波が第2レーダ装置で反射されて戻ってくる反射波と第2レーダ装置から放射された電波が含まれる。第2レーダ装置から放射された電波には、第2レーダ装置からの直接波および第2レーダ装置から放射された電波が目標で反射されてアンテナ1aに到達する反射波が含まれる。
【0027】
なお、このバイスタティックレーダ装置では、アンテナ1aから空中に放射された送信波が目標で反射されない場合であっても目標を検出することを想定しているので、ここでは、目標からの反射波はアンテナ1aで受信されないものとする。
【0028】
送受信器2aは、送信パルス信号を生成してアンテナ1aに送るとともに、アンテナ1aから送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてモノスタティック検出器3aおよびセミアクティブ検出器7aに送る。この際、アンテナ1aから空中に放射された送信波の反射波に基づく受信パルス信号は、モノスタティック検出器3aに送られ、第2レーダ装置から放射された電波に基づく受信パルス信号はセミアクティブ検出器7aに送られる。
【0029】
モノスタティック検出器3aは、送受信器2aから送られてくる、アンテナ1aから空中に放射された送信波の反射波に基づく受信パルス信号を用いて目標(第2レーダ装置)を検出し、目標信号として第1測距器4aに送る。
【0030】
第1測距器4aは、モノスタティック検出器3aから送られてくる目標信号に基づき、目標距離(第2レーダ装置までの距離)R0を算出し、第1測角器5aに送る。
【0031】
第1測角器5aは、モノスタティック検出器3aから第1測距器4aを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度(基準方向に対する第2レーダ装置の角度)θ0を算出し、第1測距器4aから送られてくる目標距離R0とともに、第1目標情報として目標位置同定器6に送る。測角方式としては、位相モノパルス測角方式を用いることができる。なお、位相モノパルス測角方式については、例えば『電子情報通信学会、“改訂レーダ技術”、pp.262-264(1996)』に説明されている。
【0032】
セミアクティブ検出器7aは、送受信器2aから送られてくる、第2レーダ装置から放射された電波に基づく受信パルス信号を用いて目標(第2レーダ装置)を検出し、目標信号として第2測距器8aに送る。
【0033】
第2測距器8aは、セミアクティブ検出器7aから送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出し、第2測角器9aに送る。
【0034】
第2測角器9aは、セミアクティブ検出器7aから第2測距器8aを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度(基準方向に対する目標の角度)θ3を算出し、第2測距器8aから送られてくる目標距離とともに、第2目標情報として目標位置同定器6に送る。
【0035】
目標位置同定器6は、第1測角器5aから送られてくる第1目標情報および第2測角器9aから送られてくる第2目標情報に基づき目標位置を同定する処理を実行する。この目標位置同定器6において行われる処理の詳細は後述する。
【0036】
第2レーダ装置は、アンテナ1b、送受信器2b、モノスタティック検出器3b、第3測距器4bおよび第3測角器5bを備えている。
【0037】
アンテナ1bは、送受信器2bから電気信号として送られてくる送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。また、アンテナ1bは、空中からの電波を受信して電気信号に変換し、送受信器2bに送る。
【0038】
送受信器2bは、上述したように送信パルス信号を生成してアンテナ1bに送るとともに、アンテナ1bから送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてモノスタティック検出器3bに送る。
【0039】
モノスタティック検出器3bは、送受信器2bから送られてくる受信パルス信号に基づき目標を検出し、目標信号として第3測距器4bに送る。第3測距器4bは、モノスタティック検出器3bから送られてくる目標信号に基づき目標距離を算出し、第3測角器5bに送る。
【0040】
第3測角器5bは、モノスタティック検出器3bから第3測距器4bを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出し、第3測距器4bから送られてくる目標距離とともに、目標情報として外部に出力する。
【0041】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の動作を、図2に示すフローチャート、ならびに、図3および図4に示す説明図を参照しながら説明する。
【0042】
第1レーダ装置においては、第2レーダ装置の位置を観測するために、以下の処理が行われる。まず、第1レーダ送受信が行われる(ステップS11)。すなわち、送受信器2aは、送信パルス信号を生成してアンテナ1aに送る。アンテナ1aは、送受信器2aから送られてきた送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。そして、アンテナ1aは、空中からの電波を受信して電気信号に変換し、送受信器2aに送る。送受信器2aは、アンテナ1aから送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号を生成する。この生成された受信パルス信号は、第2レーダ装置で反射されて戻ってくる反射波に対応するものである場合は、モノスタティック検出器3aに送られる。
【0043】
次いで、モノスタティック検出が行われる(ステップS12)。すなわち、モノスタティック検出器3aは、送受信器2aから送られてくる受信パルス信号に基づき目標(第2レーダ装置)を検出し、目標信号として第1測距器4aに送る。次いで、測距が行われる(ステップS13)。すなわち、第1測距器4aは、モノスタティック検出器3aから送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出する。これにより、図3に示すように、第1レーダ装置から第2レーダ装置までの距離R0が得られる。この第1測距器4aで算出された距離R0は、第1測角器5aに送られる。
【0044】
次いで、測角が行われる(ステップS14)。すなわち、第1測角器5aは、モノスタティック検出器3aから第1測距器4aを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出する。これにより、図3に示すように、基準方向から第2レーダ装置までの角度θ0が得られる。第1測角器5aは、第1測距器4aから送られてくる距離R0および自己が算出した角度θ0を第1目標情報として目標位置同定器6に送る。
【0045】
一方、第2レーダ装置においては、目標に対して電波を照射するために、第2レーダ送信処理が行われる(ステップS21)。具体的には、図示は省略するが、まず、送受信が行われる。すなわち、送受信器2bは、送信パルス信号を生成してアンテナ1bに送る。アンテナ1bは、送受信器2bから送られてきた送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。そして、アンテナ1bは、送信波が目標で反射されて戻ってくる反射波を受信して電気信号に変換して送受信器2bに送る。送受信器2bは、アンテナ1bから送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてモノスタティック検出器3bに送る。
【0046】
次いで、モノスタティック検出が行われる。すなわち、モノスタティック検出器3bは、送受信器2bから送られてくる受信パルス信号に基づき目標を検出し、目標信号として第3測距器4bに送る。次いで、測距が行われる。すなわち、第3測距器4bは、モノスタティック検出器3bから送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出し、第3測角器5bに送る。
【0047】
次いで、測角が行われる。すなわち、第3測角器5bは、モノスタティック検出器3bから第3測距器4bを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出し、第3測距器4bから送られてくる目標距離とともに、目標情報として外部に出力する。
【0048】
外部においては、図示しないレーダ制御装置は、第3測角器5bから出力される目標情報に基づき、第3測角器5bで算出された目標角度に第2レーダ装置のアンテナ1bを指向させる。その後、第2レーダ装置は、目標および第1レーダ装置に向けて電波を送信する。この際、目標に対して電波を送信できればよいので、送信ビーム幅が広い場合には、精度は低くてもよい。また、この目標角度を他のレーダ装置等から入手できれば、第2レーダ装置では、電波の送信のみを行うように構成することもできる。
【0049】
この状態で、第1レーダ装置においては、ステップS11の第1レーダ送受信において、送受信器2aは、アンテナ1aから送られてくる電気信号が、第2レーダ装置から放射された電波に対応するものである場合は、生成した受信パルス信号をセミアクティブ検出器7aに送る。この受信パルス信号には、第2レーダ装置から直接に受信されたパルス信号と目標で反射されたパルス信号が含まれる。この様子を図4(b)に示す。これらの距離差をΔRとする。
【0050】
次いで、セミアクティブ検出が行われる(ステップS15)。すなわち、セミアクティブ検出器7aは、送受信器2aから送られてくる、目標で反射されたパルス信号に基づき目標(第2レーダ装置)T0を検出し、目標信号として第2測距器8aに送る。次いで、測距が行われる(ステップS16)。すなわち、第2測距器8aは、セミアクティブ検出器7aから送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出する。これにより、図3に示すように、第1レーダ装置から目標T1を経由して第2レーダ装置までの距離R1+R2が得られる。この第2測距器8aで算出された距離R0+R2は、第2測角器9aに送られる。
【0051】
次いで、測角が行われる(ステップS17)。すなわち、第2測角器9aは、セミアクティブ検出器7aから第2測距器8aを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出する。これにより、図3に示すように、基準方向から目標T1までの角度θ3が得られる。第2測角器9aは、第2測距器8aから送られてくる距離R1+R2および自己が算出した角度θ3を第2目標情報として目標位置同定器6に送る。
【0052】
次いで、目標位置同定処理が行われる(ステップS18)。すなわち、目標位置同定器6は、まず、第2測角器9aから第2目標情報として送られてくる角度θ3から、第1測角器5aから第1目標情報として送られてくる角度θ0を減ずることにより、第1レーダ装置から観測した目標T1の角度θ1を算出する。また、第2測距器8aから第2測角器9aを介して第2目標情報として送られてくる距離R1+R2から、第1測距器4aから第1測角器5aを介して第1目標情報として送られてくる距離R0を減ずることにより、距離差ΔRを算出する。
【0053】
そして、これら距離R0、距離差ΔRおよび角度θ1を用いて、第1レーダ装置から目標T1までの距離R1を、下式を用いて算出する。
【数1】

【0054】
これをR1について展開すると、次の通りである。
【数2】

【0055】
ここで、
R0;第1レーダ装置と第2レーダ装置との間の距離
R1;第1レーダ装置と目標との間の距離
R2;目標と第2レーダ装置との間の距離
θ0;基準方向からの第2レーダ装置の角度
θ1;第2レーダ装置からの目標の角度
上記(2)式により、第1レーダ装置と目標との間の距離R1を算出できるため、第1レーダ装置からの目標位置(R1、θ1)を同定できたことになる。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置によれば、第1レーダ装置と第2レーダ装置との間の距離が未知で、かつ、時刻同期がとれない場合であっても、目標位置を同定できる。したがって、例えば原子時計といった高価な時計を用いる必要がなく、バイスタティックレーダ装置を安価に構成できる。
【実施例2】
【0057】
本発明の実施例2に係るバイスタティックレーダ装置は、実施例1に係るバイスタティックレーダ装置おいて、第1レーダ装置は、第2レーダ装置の位置を観測する代わりに、第2レーダ装置で観測された距離R0を得るようにしたものである。
【0058】
図5は、本発明の実施例2に係るバイスタティックレーダ装置の構成を示すブロック図である。このバイスタティックレーダ装置は、実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の第1レーダ装置からモノスタティック検出器3a、第1測距器4aおよび第1測角器5aが除去されるとともに、受信データリンク装置10が追加され、また、第2レーダ装置に送信データリンク装置10bが追加されて構成されている。
【0059】
第1レーダ装置の受信データリンク装置10aは、第2レーダ装置の送信データリンク装置10bから、例えば通信回線を介して送られてくる目標情報(第2レーダ装置から第1レーダ装置までの距離R0および角度θ0)を受信し、目標位置同定器6に送る。
【0060】
目標位置同定器6は、受信データリンク装置10aから送られてくる目標情報および第2測角器9aから送られてくる目標情報に基づき目標位置を同定する処理を実行する。この目標位置同定器6において行われる処理の詳細は後述する。
【0061】
第2レーダ装置の送信データリンク装置10bは、第3測角器5bから送られてくる目標情報(第1レーダ装置までの距離R0および角度θ0)を、例えば通信回線を介して第1レーダ装置の受信データリンク装置10aに送る。
【0062】
次に、上記のように構成される本発明の実施例2に係るバイスタティックレーダ装置の動作を、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
第2レーダ装置においては、第1レーダ装置の位置を観測するために、以下の処理が行われる。まず、第2レーダ送受信が行われる(ステップS21)。すなわち、送受信器2bは、送信パルス信号を生成してアンテナ1bに送る。アンテナ1bは、送受信器2bから送られてきた送信パルス信号を電波に変換し、送信波として空中に放射する。そして、アンテナ1bは、送信波が第1レーダ装置で反射されて戻ってくる反射波を受信して電気信号に変換し、送受信器2bに送る。送受信器2bは、アンテナ1bから送られてくる電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてモノスタティック検出器3bに送る。
【0064】
次いで、モノスタティック検出が行われる(ステップS22)。すなわち、モノスタティック検出器3bは、送受信器2bから送られてくる受信パルス信号に基づき目標(第1レーダ装置)を検出し、目標信号として第3測距器4bに送る。次いで、測距が行われる(ステップS23)。すなわち、第3測距器4bは、モノスタティック検出器3bから送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出する。これにより、図3に示すように、第2レーダ装置から第1レーダ装置までの距離R0が得られる。この第3測距器4bで算出された距離R0は、第3測角器5bに送られる。
【0065】
次いで、測角が行われる(ステップS24)。すなわち、第3測角器5bは、モノスタティック検出器3bから第3測距器4bを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出する。これにより、基準方向から第1レーダ装置までの角度θ0が得られる。第3測角器5bは、第3測距器4bから送られてくる距離R0および自己が算出した角度θ0を目標情報として送信データリンク装置10bに送る。
【0066】
次いで、データリンク送信が行われる(ステップS25)。すなわち、送信データリンク装置10bは、第3測角器5bから送られてくる目標情報を、第1レーダ装置の受信データリンク装置10aに送信する。その後、ステップS18の処理に進む。
【0067】
一方、第1レーダ装置においては、第1レーダ受信が行われる(ステップS11)。すなわち、アンテナ1aは、第2レーダ装置から放射された電波を受信し電気信号に変換して送受信器2aに送る。送受信器2aは、アンテナ1aからの電気信号に対して増幅などの処理を施し、受信パルス信号としてセミアクティブ検出器7aに送る。この受信パルス信号には、第2レーダ装置から直接受信されたパルス信号と目標で反射されたパルス信号が含まれる。この様子を図4(b)に示す。これらの距離差をΔRとする。
【0068】
次いで、セミアクティブ検出が行われる(ステップS15)。すなわち、セミアクティブ検出器7aは、送受信器2aから送られてくる、目標で反射されたパルス信号に基づき目標(第2レーダ装置)T0を検出し、目標信号として第2測距器8aに送る。次いで、測距が行われる(ステップS16)。すなわち、第2測距器8aは、セミアクティブ検出器7aから送られてくる目標信号に基づき、目標距離を算出する。これにより、図3に示すように、第1レーダ装置から目標T1を経由して第2レーダ装置までの距離R1+R2が得られる。この第2測距器8aで算出された距離R0+R2は、第2測角器9aに送られる。
【0069】
次いで、測角が行われる(ステップS17)。すなわち、第2測角器9aは、セミアクティブ検出器7aから第2測距器8aを介して送られてくる目標信号に基づき目標角度を算出する。これにより、図3に示すように、基準方向から目標T1までの角度θ3が得られる。第2測角器9aは、第2測距器8aから送られてくる距離R1+R2および自己が算出した角度θ3を目標情報として目標位置同定器6に送る。
【0070】
次いで、目標位置同定処理が行われる(ステップS18)。すなわち、目標位置同定器6は、まず、第2測角器9aから目標情報として送られてくる角度θ3から、第1レーダ装置の送信データリンク装置10bから受信データリンク装置10aを介して目標情報として送られてくる角度θ0を減ずることにより、第1レーダ装置から観測した目標の角度θ1を算出する。この場合、基準方向からの第2レーダ装置の角度は、第2レーダ装置から目標情報として送られてくる基準方向からの第1レーダ装置の角度θ0にほぼ等しいものとしている。また、第2測距器8aから第2測角器9aを介して目標情報として送られてくる距離R1+R2から、第2レーダ装置の送信データリンク装置10bから受信データリンク装置10aを介して目標情報として送られてくる距離R0を減ずることにより、距離差ΔRを算出する。
【0071】
そして、これら距離R0、距離差ΔRおよび角度θ1を用いて、第1レーダ装置から目標T1までの距離R1を上述した(1)式および(2)式を用いて算出する。この(2)式により、第1レーダ装置と目標との間の距離R1を算出できるため、第1レーダ装置からの目標位置(R1、θ1)を同定できたことになる。
【0072】
以上説明したように、実施例2に係るバイスタティックレーダ装置によれば、上述した実施例1に係るバイスタティックレーダ装置による効果に加え、第1レーダ装置では受信しか行われないので、第1レーダ装置の秘匿性を高めることができるという効果が得られる。
【0073】
なお、以上の実施例では、バイスタティックレーダ装置について説明したが、本発明は、送信源が複数存在するマルチスタティックレーダ装置で実現することもできる。送信源が複数存在するマルチスタティックレーダ装置の場合は、送信周波数を変えれば、各送信源を区別して受信できるため、平均値をとる等の処理を行うことにより、目標位置の精度を向上させることができる。
【0074】
また、図3には、飛翔体に搭載された第1レーダ装置および第2レーダ装置でバイスタティックレーダ装置を構成する場合を示しているが、地上に配置されたレーダ装置を用いてバイスタティックレーダ装置を構成することもできる。
【0075】
また、上述した第1レーダ装置および第2レーダ装置で送受信されるパルス信号は、パルス圧縮されたパルス信号を用いるように構成できる。なお、パルス圧縮については、『電子情報通信学会、“改訂レーダ技術”、pp.275-278(1996)』に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の動作を説明するための第1レーダ装置および第2レーダ装置と目標の位置関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係るバイスタティックレーダ装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例2に係るバイスタティックレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2に係るバイスタティックレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】従来のモノスタティックレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図8】従来のモノスタティックレーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1a、1b アンテナ
2a、2b 送受信器
3a、3b モノスタティック検出器
4a 第1測距器
4b 第2測距器
8a 第3測距器
5a 第1測角器
5b 第2測角器
9a 第3測角器
6 目標位置同定器
7a セミスタティック検出器
10a 送信データリンク装置
10b 受信データリンク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レーダ装置と第2レーダ装置とを備え、
前記第2レーダ装置は、目標および第1レーダ装置に向けて電波を送信し、
前記第1レーダ装置は、前記第2レーダ装置から送信された電波に基づき目標位置を同定するバイスタティックレーダ装置であって、
前記第1レーダ装置は、
前記第2レーダ装置に向けて電波を送受信することにより該第2レーダ装置を検出するモノスタティック検出器と、
前記モノスタティック検出器で検出された第2レーダ装置までの距離R0を計測する第1測距器と、
前記モノスタティック検出器で検出された第2レーダ装置の基準方向からの角度θ0を計測する第1測角器と、
前記第2レーダ装置から送信されて目標で反射された電波に基づき第2レーダ装置を検出するセミアクティブ検出器と、
前記セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置までの距離を計測する第2測距器と、
前記セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置の基準方向からの角度θ3を計測する第2測角器と、
前記第1測角器で計測された角度θ0および前記第2測角器で計測された角度θ3に基づき算出した第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、前記第1測距器で計測された距離R0と前記第2測距器で計測された距離との距離差ΔR、および、前記第1測距器で計測された距離R0を用いて所定の演算を行うことにより目標までの距離R1を算出し、目標位置(R1およびθ1)を同定する目標位置同定器と、
を備えたことを特徴とするバイスタティックレーダ装置。
【請求項2】
第1レーダ装置と第2レーダ装置とを備え、
前記第2レーダ装置は、
目標および第1レーダ装置に向けて電波を送信することにより前記第1レーダ装置を検出するモノスタティック検出器と、
前記モノスタティック検出器で検出された第1レーダ装置までの距離R0を計測する第3測距器と、
前記モノスタティック検出器で検出された第1レーダ装置の基準方向からの角度θ0を計測する第3測角器と、
前記第3測距器で計測された距離R0および前記第3測角器で計測された角度θ0を前記第1レーダ装置に送信する送信データリンク装置とを備え、
前記第1レーダ装置は、
前記第2レーダ装置から送信されて目標で反射された電波に基づき第2レーダ装置を検出するセミアクティブ検出器と、
前記セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置までの距離を計測する第2測距器と、
前記セミアクティブ検出器で検出された第2レーダ装置の基準方向からの角度θ3を計測する第2測角器と、
前記第2レーダ装置の送信データリンク装置から送信された距離R0および角度θ0を受信する受信データリンク装置と、
前記受信データリンク装置で受信された角度θ0および前記第2測角器で計測された角度θ3に基づき算出した第1レーダ装置から見た目標の角度θ1、前記受信データリンク装置で受信された距離R0と前記第2測距器で計測された距離との距離差ΔR、および、前記受信データリンク装置で受信された距離R0を用いて所定の演算を行うことにより目標までの距離R1を算出し、目標位置(R1およびθ1)を同定する目標位置同定器と、
を備えたことを特徴とするバイスタティックレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−270863(P2009−270863A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119876(P2008−119876)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】